説明

ヒドロキシプロピオン酸からの晶析により精製されるアクリル酸の調製方法及びそれに使用する装置

【課題】液相から、好ましくは、水性培養液を主成分とする液相から、アクリル酸を調製する方法の提供。アクリル酸の調製方法及びポリアクリレートの調製方法の提供。アクリル酸及びそのポリマーの調製装置の提供。
【解決手段】(a1)生物的材料から、ヒドロキシプロピオン酸を供給して、ヒドロキシプロピオン酸を含有する流体F1、特に水性相P1を得る段階と、(a2)ヒドロキシプロピオン酸を脱水して、アクリル酸を含有する流体F2、特に水性相P2を得る段階と、(a3)アクリル酸を含む流体F2、好ましくは水性相P2を懸濁晶析法又は層晶析法により精製して、精製相を得る段階を有してなる、アクリル酸の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸の調製方法、アクリル酸の調製装置、ポリアクリレートの調製方法、ポリアクリレートの調製装置、アクリル酸の使用、並びにアクリル酸、ポリアクリレート、並びにこれらを含む化学製品(特に超吸収体及びおむつ)に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸は、大きな技術的重要性を有する出発化合物である。とりわけポリアクリレートの調製、特に架橋された、部分的に中和されたポリアクリレートの調製において用いられる。上記ポリアクリレートは乾燥状態及び実質的に無水の状態において大量の水を吸収する能力を有する。この能力により、それ自身の重量の10倍以上を吸収することができる。その高い吸収能力ゆえに、吸収性ポリマーは、水を吸収する構造及び物体への取り込みに適している。例えば乳児用おむつ、排泄ケア用品又は生理用ナプキンへの取り込みが挙げられる。これらの吸収性ポリマーは、文字通り「超吸収体」とも呼ばれる。この点に関しては、”非特許文献1:Modern Superabsorbent Polymer Technology”,F.L.Buchholz,A.T.Graham,Wiley−VCH,1998において説明されている。
【0003】
アクリル酸は従来、2つの段階を経る気相酸化によって、プロピレンから得られる。すなわち、プロピレンを最初に酸化してアクロレインを得る段階と、次に更に反応させてアクリル酸を得る段階から構成される。しかしながら、アクリル酸の調製のためのこの二段階プロセスの不利な点として、2つの反応段階で使用される温度(通常では300〜450℃の間)により、望ましくないクラッキング生成物の形成が生じることが挙げられる。この結果、得られる不純物の量が望ましくない程度に増加し、またこれらが重合する事態も生じ得、超吸収体の調製の際、架橋剤の存在下で、それらがアクリル酸のラジカル重合によりポリマー主鎖に組み込まれうる。これは、超吸収体の特性を損ねる効果を生じさせる。アルデヒド(特に、例えばフルフラール、アクロレイン又はベンズアルデヒド)は更にラジカル重合においては阻害剤として作用し、その結果、重合反応に使用されるアクリル酸から適切な精製方法によってそれらを除去しない場合には、上記ポリマー中に顕著な量の可溶性成分が残留することとなる。
【0004】
また注意すべき点としては、超吸収体が衛生用品及び創傷治療用品で使用される場合、毒性に関する許容要件が非常に高いということである。これはすなわち、上記超吸収体の調製に供される抽出物も、可能な限り高い純度を有しなければならないことを意味する。したがって、超吸収体の調製において、可能な限り純粋な形で、安価な方法で主な抽出物としてアクリル酸を提供することが非常に重要となる。
【0005】
アクリル酸の調製における、従来法の更なる欠点としては、使用される抽出物(プロピレン)は原油から調製され、ゆえに非再生原料から調製されるということが挙げられ、経済面から、特に長期的な視点から考慮すると、原油の製造がますます困難かつ高価となるため、1つの欠点として挙げられる。
【0006】
そこで、この課題を克服するための若干の方法が、従来技術において既に開示されている。具体例としては、ヒドロキシプロピオン酸(例えば2−ヒドロキシプロピオン酸又は3−ヒドロキシプロピオン酸)を開始材料として、そのヒドロキシプロピオン酸を脱水に供し、アクリル酸を得る技術が公知である。
【0007】
バイオマス(例えばグルコース又は糖蜜)を用いた発酵による経路、及び化学合成経路による2−ヒドロキシプロピオン酸の調製が、特に非特許文献2:PEP Review 96−7”Lactic acid by Fermentation”by Ronald Bray of June 1998において公知である。
【0008】
特許文献1:国際公開第03/62173号は、3−ヒドロキシプロピオン酸の調製方法を開示しており、特にそれをアクリル酸合成用の開示材料として使用できることが開示されている。この場合、国際公開第03/62173号の教示によれば、最初に発酵によりピルビン酸からα−アラニンを形成させ、次に酵素2,3−アミノムターゼによってβアラニンに変換し、次にβ−アラニンを、β−アラニル−CoA、アクリロイル−CoA、3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを経て、又はマロン酸セミアルデヒドを経て、3−ヒドロキシプロピオン酸へ変換し、脱水の後、アクリル酸を得る。
【0009】
特許文献2:国際公開第02/42418号は、再生原料からの、例えば3−ヒドロキシプロピオン酸の調製のための更なるルートを記載している。この場合、ピルビン酸は最初に乳酸に変換され、更にラクチル−CoAをその後形成させる。ラクチル−CoAを次に、アクリロイルCoA及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを経て3−ヒドロキシプロピオン酸に変換する。国際公開第02/42418号に記載されている3−ヒドロキシプロピオン酸の調製のための更なるルートでは、グルコースを、プロピオン酸、プロピオニル−CoA、アクリロイルCoA及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを経て変換することを特徴とする。この刊行物はまた、ピルビン酸を、アセチルCoA及びマロニル−CoAを経て3−ヒドロキシプロピオン酸に変換する技術を記載している。特定のルートによって得られた3−ヒドロキシプロピオン酸は、脱水に供することによりアクリル酸に変換できる。
【0010】
特許文献3:国際公開第01/16346号は、グリセロールからの3−ヒドロキシプロピオン酸の発酵生産による調製方法を記載しており、当該方法は、Klebsiella pneumoniae由来の、dhaB遺伝子(グリセロールデヒドラーゼをコードする遺伝子)及びアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を発現する微生物を使用することを特徴とする。すなわち、グリセロールから3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを経て3−ヒドロキシプロピオン酸を形成させ、更に脱水に供することによってアクリル酸に変換することができる。
【0011】
ヒドロキシプロピオン酸の発酵生産系で使用される酵素に関係なく、かかる発酵プロセスの後、水溶性組成物が生じ、そこには、ヒドロキシプロピオン酸以外の、多数の副産物が含有される(例えば細胞、非変換バイオマス、塩及びヒドロキシプロピオン酸と共に生じた代謝生成物など)。
【0012】
アクリル酸の調製用の出発原料としてヒドロキシプロピオン酸を使用するためには、最初にこれを濃縮し、精製することが有利である。この場合、3−ヒドロキシプロピオン酸の精製の際、特許文献4:国際公開第02/090312号に開示されるように、最初に培養液にアンモニアを添加して中和し、3−ヒドロキシプロピオン酸をそのアンモニウム塩に変換する。このようにして得られた培養液を次に、高沸点の有機抽出剤と接触させ、混合物を加熱し、アンモニア及び水を真空内で除去し、形成された遊離3−ヒドロキシプロピオン酸を有機相から抽出する。このようにして3−ヒドロキシプロピオン酸を含む有機相を得た後、そこから3−ヒドロキシプロピオン酸を再抽出するか、又は、適切な触媒を添加した後に、3−ヒドロキシプロピオン酸をアクリル酸に変換することができる。一方、国際公開第02/090312号に記載されている「塩分解」プロセスの欠点として、特に、いわゆる「塩分解プロセス」により有効に精製を実施するためには、精製しようとする水性相が、少なくとも25重量%の量で3−ヒドロキシプロピオン酸を含有する必要があるということが挙げられる。かかる高い3−ヒドロキシプロピオン酸濃度は、現在公知の、発酵プロセスによる3−ヒドロキシプロピオン酸の調製では実現できないため、最初に培養液を濃縮して3−ヒドロキシプロピオン酸濃度を高める必要がある。これは従来、培養液から水を蒸発させることにより実施されてきた。一方、国際公開第02/090312号に記載の精製プロセスの更なる欠点としては、このプロセスでは、高沸点の有機溶媒を培養液へ添加することを特徴とするため、当該プロセス中に、3−ヒドロキシプロピオン酸から分離するという更なる工程を設ける必要があるという点、並びに、培養液からの3−ヒドロキシプロピオン酸の精製の際、培養液中に多数の有機副産物が含有されるため、これらの有機副産物が、有機溶媒中にも少なくとも部分的に抽出されるという点が挙げられる。この場合、塩分解において得られた有機相を更に精製し、満足な純度で3−ヒドロキシプロピオン酸を得る必要がある。
【0013】
水溶液からの2−ヒドロキシプロピオン酸(=乳酸)の精製に関しては、特許文献5:国際公開第95/024496号に記載のように、最初に上記水溶液を、少なくとも合計18個の炭素原子数の非水溶性のトリアルキルアミンを含有する抽出剤と、二酸化炭素の存在下、少なくとも345×10パスカルの分圧下で混合し水性層及び有機層を形成させ、次に有機相に存在する乳酸を、例えば水を用いて、有機相から抽出する。但し上記の精製プロセスの欠点としては、開始組成物として培養液を使用する場合、乳酸以外の他の副産物も有機相に溶存しており、それにより、水を用いた再抽出においては、純粋の高い乳酸溶液が得られないという点が挙げられる。
【0014】
ヒドロキシプロピオン酸を脱水してアクリル酸を調製する際にも、水が生じる。したがって、高濃度に濃縮されたヒドロキシプロピオン酸溶液又は比較的純粋なヒドロキシプロピオン酸を使用する場合であっても、脱水の間に得られるアクリル酸、ヒドロキシプロピオン酸及び任意に副産物を含有する混合水溶液の精製を実施する必要がある。
【0015】
特許文献6:国際公開第2004/76398号では、アクリル酸及び3−ヒドロキシプロピオン酸を含有する混合溶液の分離の際に、添加剤としてドデカノールを用いることを特徴とする、真空蒸留方法を提案している。しかしながらこの穏やかなプロセスは、ドデカノールを使用するため、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第03/62173号
【特許文献2】国際公開第02/42418号
【特許文献3】国際公開第01/16346号
【特許文献4】国際公開第02/090312号
【特許文献5】国際公開第95/024496号
【特許文献6】国際公開第2004/76398号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Modern Superabsorbent Polymer Technology”,F.L.Buchholz,A.T.Graham,Wiley−VCH,1998
【非特許文献2】PEP Review 96−7”Lactic acid by Fermentation”by Ronald Bray of June 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、従来技術に存在する欠点を軽減又は克服することを目的としてなされたものである。
【0019】
具体的には本発明は、液相から、好ましくは、水性培養液を主成分とする液相から、アクリル酸を調製する方法の提供を目的とするものであり、その方法により、可能な限り純粋なアクリル酸を、又は可能な限り純粋なアクリル酸水溶液を、可能な限り穏やかな条件下で、かつ簡便に得ることが可能となる。この精製方法では、有機溶媒の添加を最小限にできるか、又はその添加を行うことなく当該方法を実施できる。
【0020】
本発明は更に、アクリル酸の調製方法及びポリアクリレートの調製方法の提供の提供を目的とするものであり、上記方法により、特にバイオマスからのアクリル酸の調製が、可能な限り穏やかで、かつ簡便に実施できる。
【0021】
本発明はまた、アクリル酸及びそのポリマーの調製装置の提供を目的とするものであり、それを用いることにより、上記の方法が実施できる。
【0022】
結論としては、可能な限り純粋な最終生成物を得るための、可能な限り能率的かつ安価な具体的プロセス手順を設計するという目的が達成され、それは、可能な限りにおいて再生可能な原料を開始材料として使用することを特徴とするものである。それにより、従来の石油化学的な経路(通常プロピレンを経由する経路)に基づくアクリル酸の調製の場合のよりも、より持続的であり、かつ生態学上有利な、再生可能な原料に基づいたアクリル酸の調製が可能となるのみならず、また経済的にも有益な効果がもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の課題の解決は、本発明においては、アクリル酸の調製方法、アクリル酸の調製装置、ポリアクリレートの調製方法、ポリアクリレートの調製装置、並びにアクリル酸、ポリアクリレート及びこれらを含む化学生成物(具体的には超吸収体及びおむつ)、具体的には請求項1及び請求項2に記載の発明により解決される。更なる実施形態及び応用(それらは個々に用いてもよく、又は互いに組み合わせてもよい)は、従属請求項に包含される。
【0024】
本発明に係るアクリル酸の調製方法には、以下の処理段階が含まれる:
(a1) 生物的材料から、ヒドロキシプロピオン酸(好ましくは2−ヒドロキシプロピオン酸又は3−ヒドロキシプロピオン酸、最も好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸)を供給して、ヒドロキシプロピオン酸(好ましくは2−ヒドロキシプロピオン酸又は3−ヒドロキシプロピオン酸、最も好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸)を含有する流体F1、特に水性相P1を得る段階と、
(a2) ヒドロキシプロピオン酸(好ましくは2−ヒドロキシプロピオン酸若しくは3−ヒドロキシプロピオン酸、最も好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸)を脱水して、アクリル酸を含有する流体F2、特に水性相P2を得る段階と、
(a3) アクリル酸を含む流体F2(好ましくは水性相P2)を懸濁晶析法又は層晶析法(layer crystallization)により精製して、精製相を得る段階。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図面はダイアグラムにおいて示す。
【図1】図1は本発明に係るプロセスフローを示す。
【図2】本発明に係るプロセスフローの好ましい実施形態を示し、脱水が反応蒸留により実施される。
【図3】本発明に係るプロセスフローの更なる好ましい実施形態を示し、精製が3段階の晶析により実施される。
【図4】共晶点の測定のためのグラフを示す。
【図5】共晶点の測定のためのグラフを示す。
【図6】共晶点の測定のためのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書の用語「アクリル酸」、「ヒドロキシプロピオン酸」、「2−ヒドロキシプロピオン酸」及び「3−ヒドロキシプロピオン酸」は、本明細書全体を通じて、それらが所与のpH条件下で流体F1又はF2において存在する形態における、カルボン酸のことを指すものとする。したがって、当該用語は全体を通じて、純粋な酸の形態(アクリル酸、ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシプロピオン酸又は3−ヒドロキシプロピオン酸)、純粋な塩基の形態(アクリレート、ヒドロキシプロピオネート、2−ヒドロキシプロピオネート又は3−ヒドロキシプロピオネート)、並びにプロトン化及び非プロトン化形態の酸の混合物を包含するものとする。
【0027】
本発明のプロセスにおいては、本発明に係る方法のステップの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つを連続的に実施することが好ましく、常にバッチ反応のように中断され、再開されるような態様であってはならない。好ましくは、少なくとも脱水及び晶析ステップが、特に好ましくは全てのステップが連続的に実施される。
【0028】
本発明に係る調製プロセスの具体的実施形態では、最初に処理段階(a1)で導入される流体F1は、水性相P1である。この水性相P1は、好ましくは以下の処理段階を有してなる方法により得られる:
i) 水溶性組成物中の生物的材料からの、より好ましくは炭水化物からの、特に好ましくはグルコースからの、又はグリセロールからの、ヒドロキシプロピオン酸の調製、好ましくは発酵による調製により、ヒドロキシプロピオン酸及び微生物を含有する水性相を得る段階と、
ii) 任意に、微生物を殺菌する段階、好ましくはこの水性相を、少なくとも60秒間(例えば10分間及び/又は少なくとも30分間)、少なくとも100℃、特に好ましくは少なくとも110℃及び更に好ましくは少なくとも120℃の温度で加熱することにより殺菌する段階と、
iii) 任意に、水性相から固体分を、特に微生物又は未反応の生物的材料を、好ましくは沈殿、遠心分離又は濾過により分離する段階。
【0029】
好ましくは、組み換え微生物、特に好ましくは組み換え型の細菌、菌類又は酵母細胞を用いて、処理段階i)において、生物的材料から、ヒドロキシプロピオン酸を、好ましくは発酵により調製する。特に本発明において好適な組み換え微生物は、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、バチルス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、カンディダ属、ピキア属、クルベロマイセス属、サッカロミセス属、バチルス属、エシェリチア属及びクロストリジウム属のバクテリア、バチルス フラバム、バチルス ラクトファーメンタムであり、より好ましくはエシャリチア コリ、サッカロミセス セレビジエ、クルベロマイセス ラクティス、カンディダ ブランキ、カンディダ ルゴサ、コリネバクテリウム グルタミカム、コリネバクテリウム エフィシエンス及びピキア パストリスであり、最も好ましくはコリネバクテリウム グルタミカムである。
【0030】
この場合、本発明では、当該微生物が遺伝子組み換えされていることが更に好ましく、それにより、それらの野生型と比較し、生物的材料からの、好ましくは炭水化物(例えばグルコース若しくはグリセロール)からのヒドロキシプロピオン酸の形成が増加し、好ましくはその形成が少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも10倍、更に好ましくは少なくとも100倍、更に好ましくは少なくとも1,000倍、最も好ましくは少なくとも10,000倍増加する。この場合、このヒドロキシプロピオン酸の形成の増加は原則として、当業者に公知の全ての代謝経路を経て実施でき、3−ヒドロキシプロピオン酸の形成の場合、特に国際公開第03/62173号、国際公開第02/42418号及び国際公開第01/16346号に記載されているルートを経て、また特にバチルス属又はラクトバチルス属の細菌からの2−ヒドロキシプロピオン酸の形成の場合、例えば独国特許発明第4000942C2号に記載の方法を経て実施できる。ヒドロキシプロピオン酸(特に2−又は3−ヒドロキシプロピオン酸)の形成は、特に好ましくは組み換え微生物によって行われる。その場合、対応するヒドロキシプロピオン酸の形成に関連する1つ以上の酵素の活性が増加しており、当該酵素活性の増加は、当業者に公知の方法(特に突然変異又は遺伝子発現の増加)により可能となる。
【0031】
遺伝子組み換え微生物を、適切な栄養分を含有する培地と接触させ、連続的又は非連続的に培養(バッチ法(バッチ培養)又はフェドバッチ法(フィード培養)又は反復的フェドバッチ法(反復的フィード培養))することにより、ヒドロキシプロピオン酸を生産することができる。英国特許出願公開第1009370号に記載のような半連続培養法を用いてもよい。周知の培養方法は、Chmiel(”Bioprozesstechnik 1.Einfuehrung in die Bioverfahrenstechnik [Bioprocess technology 1.Introduction to bioprocess technology]”(Gustav Fischer Verlag,Stuttgart,1991))又はStorhas(”Bioreaktoren und periphere Einrichtungen [Bioreactors and peripheral equipment]”,Vieweg Verlag,Braunschweig/Wiesbaden,1994)において概説されている。
【0032】
使用する培地は、適切な方法においては、使用する具体的な細胞株に適合している必要がある。様々な微生物に適する培地に関しては、ハンドブック”Manual of Methods for General Bacteriology”of the American Society for Bacteriology(Washington D.C.,USA,1981)に記載されている。
【0033】
糖及び炭水化物(例えばグルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、澱粉及びセルロース)、油脂及び脂肪(例えば大豆油、ヒマワリ油、落花生油及びココナッツ脂)、脂肪酸(例えばパルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸)、アルコール(例えばグリセロール及びエタノール)、並びに有機酸(例えば酢酸)を、炭素源として、特に生物的材料として使用できる。これらの物質を個々に用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。炭水化物、特に単糖、オリゴ糖又は多糖類の使用(特に、米国特許第601494号及び米国特許第6136576号に記載のようにC5糖又はグリセロールの使用)が特に好ましい。
【0034】
窒素含有有機化合物(例えばペプトン、酵母抽出物、肉抽出物、麦芽エキス、コーンスティープリカー、大豆粉及び尿素)、又は窒素含有無機化合物(例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム)を、窒素源として使用できる。上記の窒素源を個々に使用してもよく、又は混合物として使用してもよい。
【0035】
リン酸、リン酸二水素カリウム又はリン酸水素二カリウム又は対応するナトリウム塩を、リン源として使用できる。上記の培地は更なる金属塩(例えば硫酸マグネシウム又は硫酸鉄)を、増殖のために含有する必要がある。最後に、必須栄養分(例えばアミノ酸及びビタミン)を、上記の物質に添加して使用することができる。適切な前駆物質を、更に培地に添加してもよい。上記の開始材料は、単一バッチの形態で培養液中に添加してもよく、又は適切な方法により、培養の間に供給してもよい。
【0036】
塩基性化合物(例えば水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア又はアンモニア水)又は酸性化合物(例えばリン酸又は硫酸)を、培養液のpHを制御するために適切な方法で使用してもよく、特にアンモニアの添加が好適である。消泡剤(例えば脂肪酸性ポリエチレングリコールエステル)を使用することにより、泡の増加を制御することができる。選抜に用いられる適切な物質(例えば抗生物質)を培地に添加することにより、プラスミドの安定性を維持することができる。酸素又は酸素含有混合ガス(例えば空気)を培養液に供給することにより、好酸素条件が維持される。培養液の温度は、通常20℃〜45℃であり、好ましくは25℃〜40℃である。
【0037】
本発明のこの具体的実施形態に係る方法においては、処理段階(a1)で調製される水性相P1は、以下を含んでなる組成物C1を有するのが好ましい:
(C1−1) 1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、最も好ましくは10〜20重量%のヒドロキシプロピオン酸(好ましくは2−又は3−ヒドロキシプロピオン酸、特に好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸、これらの酸の塩又はそれらの混合物)と、
(C1−2) 0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2.5重量%、最も好ましくは0.5〜1重量%の無機塩と、
(C1−3) 0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、最も好ましくは1〜10重量%のヒドロキシプロピオン酸とは異なる有機化合物と、
(C1−4) 0〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜20重量%、最も好ましくは1〜10重量%の固体分、特に微細な植物部分の固体分又は細胞及び/又は細胞断片(特に微生物又は未反応の生物的材料の断片)と、
(C1−5) 20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは40〜70重量%の水と、
を含んでなり、上記(C1−1)から(C1−5)の成分の合計が100重量%である。
【0038】
この液相は、5〜8、好ましくは5.2〜7、特に好ましくは5.5〜6.5の範囲のpHを有するのが好ましい。
【0039】
上記ヒドロキシプロピオン酸の塩は好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩又はそれらの混合物であり、アンモニウム塩が特に好適である。
【0040】
上記無機塩は、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸塩(例えばリン酸ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム又はリン酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、塩化カルシウム、硫酸カルシウム及びアンモニウム塩(例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム又は硝酸アンモニウム)からなる群から選択される。
【0041】
上記ヒドロキシプロピオン酸と異なる有機化合物は、特に、未反応の生物的材料を含んでなるものであり、例えば、炭水化物又はグリセロール、代謝産物(例えば乳酸、ピルビン酸又はエタノール)、抗生物質、消泡剤、有機緩衝化合物(例えばHEPES)、アミノ酸、ビタミン、ペプトン、尿素又は窒素含有化合物(例えば酵母抽出物、肉抽出物、麦芽エキス、コーンスティープリカー及び大豆粉に含まれるそれら)などが挙げられる。
【0042】
発酵の後に得られ、ヒドロキシプロピオン酸及び微生物を含む水性流体F1又は水性相P1(=培養液)を、更なる処理段階ii)において熱処理して、そこに含まれる微生物を殺菌することができる。この処理は、この水性相P1を少なくとも60秒、好ましくは少なくとも10分、更に好ましくは少なくとも30分間にわたり、少なくとも100℃、特に好ましくは少なくとも110℃、更に好ましくは少なくとも120℃の温度で加熱することによって実施するのが好ましく、当該加熱処理は、当業者に公知の装置(例えばオートクレーブ)において実施するのが好ましい。高エネルギー照射(例えば紫外線照射)により微生物を殺菌してもよいが、加熱による微生物の殺菌が特に好適である。
【0043】
本発明のこの具体的実施形態に係る方法においては、好ましくは、固体、特に微細な植物の部分又は細胞及び/又は細胞断片、特に微生物又は未反応の生物的材料を更に、発酵の後に得られる水性相P1から、処理段階ii)における微生物の殺菌処理の前、その間若しくは後に行われる更なる処理段階iii)において分離してもよい。上記の分離は、固体を液状組成物から分離するための、当業者に公知の全ての方法により実施することができるが、好ましくは沈殿法、遠心分離法又は濾過法、最も好ましくは濾過法により分離する。この場合、全ての濾過方法を使用することができ、それらの方法は”Filtrieren und Auspressen [Filtration and pressing off]” in ”Grundoperationen Chemischer Verfahrenstechnik [Basic operations of chemical process technology]”、Wilhelm R.A.Vauck and Hermann A.Mueller,WILEY−VCH−Verlag,11th revised and extended edition,2000,の4.1.3章に記載されており、固体(特に微生物)を培養液から分離する際、当業者が利用できる。
【0044】
このようにして得られ、任意に固体を除去された培養液を、水性相P1として、処理段階(a2)に供する前に、この水性相の含水量を0.8倍未満に、特に0.5倍未満、例えば0.3倍未満に減少させるのが好ましく、その操作は、蒸発又は蒸留、逆浸透、電気浸透、共沸蒸留、電気透析又は複数相分離などにより実施するのが好ましい。この場合、0.8倍未満に減少させる、とは、当該減少の後、培養液の含水量が、当該減少の前の培養液中の含水量に対して80%未満になることを意味する。
【0045】
特に、本発明では、培養液中のヒドロキシプロピオン酸又はその塩の濃度が、少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも20重量%、更に好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%となるように、水分含量を減少させるのが好ましい。
【0046】
本発明の変形形態では、流体F1又は水性相P1の調製方法は更に、培養液中の水の少なくとも一部を分離除去するための処理段階(iv)を有してなり、この分離除去は好ましくは、流体F1から(特に水性相P1から)第1相及び第2相を形成させることにより実施する。しかしながら、本発明に係る方法の場合、固体の分離除去iii)の代わりに、又はそれに加えて、処理段階iv)として更に精製を行うことが必要であると考えられる。当業者に公知の、あらゆる適切な手段を用いて精製を行うことが、原則として可能である。この手段としては、塩析、エステル化、膜処理及び吸着処理からなる群、又はそれらの2つの組合せから好ましくは選択される。膜処理としては、ミクロ濾過、超濾過若しくはナノ濾過、浸透(特に逆浸透)、又は電気透析、又はそれらの少なくとも2つの組合せが好適である。好適な吸着処理は、イオン交換、クロマトグラフィ又は抽出、好ましくは反応抽出又はこれらのうちの少なくとも2つの組合せである。抽出の場合、超臨界流体(例えばCO)の(通常アミンの存在下での)使用が公知である。このような第1相及び第2相の形成が、以下の分離プロセスのうちの少なくとも1つ、又は少なくとも2つ以上により行われることが更に好ましい:−蒸発又は蒸留、−逆浸透、−電気浸透、−共沸蒸留、−電気透析、−複数相分離。上記第1相及び第2相では、アクリル酸の濃度が異なり、これらの2つの相の形成の後、これらの相を各々単離し、アクリル酸を含有する精製相を得る。
【0047】
処理段階(iv)は、原則として処理段階(a2)の前に実施するが、あるいは、例えば後述する反応蒸留において、処理段階(a2)と同時に実施してもよい。処理段階(iv)によって、予め精製された第1相若しくは第2相が、流体F1から形成され、それを更に処理段階(a2)の脱水に供する。
【0048】
全ての装置に関する記載は、”Grundoperationen Chemischer Verfahrenstechnik [Basic operations of chemical process technology]”第10.1章の中の”Verdampfen[Evaporation]”、Wilhelm R.A.Vauck及びHermann A.Mueller,WILEY−VCH−Verlag,11th revised and extended edition,2000に存在し、それらは当業者が、固体を除去された培養液から水を蒸発させる際に適していると考えられ、蒸発装置として使用できる。
【0049】
逆浸透(また超濾過とも呼ばれる)は、半透膜を用いた圧力濾過に基づく方法であって、特に、自然に生じる浸透プロセスを逆転させるために圧力が用いられる。この場合、加えられる圧力は、濃度バランスをとるのに必要となる浸透現象により生じる圧力より大きくなければならない。浸透膜(液体キャリア(溶媒)のみ透過させ、溶融された物質(溶質)を保持する)は通常、この高い圧力に耐えられるように設計される必要がある。圧力差が浸透勾配の補償より大きいときには、フィルタのように、不純物分子が保持されたまま、溶媒分子が膜を通って流れる。浸透圧は、濃度差の増加と共に増加し、自然の浸透圧が予め設定された圧力に等しくなるときに停止する。連続処理においては、上記の濃縮物を連続的に除去する。フロースルー膜を使用できる。この場合、典型的には、流体F1を、2〜15MPaの圧力で孔膜(好ましくは酢酸セルロース又はポリアミド製)に対して押圧する(その圧力では、水は膜の孔を透過できるが、ヒドロキシプロピオン酸又はその塩は透過できない)。適切な膜の材料及び装置に関しては、特に、”Grundoperationen Chemischer Verfahrenstechnik [Basic operations of chemical process technology]”中の第10.7章”Permeation”、Wilhelm R.A.Vauck及びHermann A.Mueller,WILEY−VCH−Verlag,11th revised and extended edition,2000に記載されている。
【0050】
電気浸透法では、電気浸透圧(不純物(例えば水)とヒドロキシプロピオン酸との分離が同様に実施できる)が、平衡状態において確立される。電気浸透法でも同様に、半透膜を通って選択的に水溶性組成物から水が分離されるが、但し逆浸透とは対照的に、その水は、圧力を増加させることなく、典型的には6〜20Vの電圧を印加することによって半透膜を透過する。
【0051】
共沸蒸留又は共沸精溜においては、共沸混合物は、第3の成分の添加により分離される。精溜とは熱分離工程であり、蒸留の更なる発展形態又は多くの蒸留段階が連続したものを表す。精溜の基本的効果は、設置が連続的に行えるということと、分離の効果が蒸留と比較し高い場合が多いということであり、その理由としては、蒸気が液体と接触するという点が挙げられる。その結果、高沸点成分が濃縮され、液相中の揮発性の高い成分が、放出される凝結熱により蒸発する。蒸気相と液相との間の接触領域は、内部コンポーネント(例えば泡鐘トレイ)により提供される。蒸留の場合と同様に、通常条件下では、非共沸混合物のみが分離されうる。共沸混合物の分離が必要である場合、共沸点をシフトさせ、その設置の濃度範囲及び温度範囲から外れるようにすべきである。そのシフトは例えば、作業圧力を変化させること、又は特殊な補助剤の添加によって実施する。共沸蒸留は特に、共沸混合物を水と共に形成する連行剤として有機溶媒(例えばトルエン又はドデカノール)を使用して実施する。有機溶媒と接触させる水溶液をその後蒸留し、水と有機溶媒とを組成物から分離除去する。
【0052】
電気透析とは、電流の作用下で化合物を分裂させる方法として知られている。電気透析においては、2本の電極を水性相に浸し、陰極で水素の形成が生じ、陽極で酸素の形成が生じる。この方法で、2つの相(すなわち少なくとも一部の水が遊離した水性相と、水素及び酸素を含んでなる気相)が同様に形成される。この場合、特に、液相を含む成分(例えば水)のうちの1つがその成分に変換され、それらはガスとして、又は固体として(例えば電解反応の後でなされる沈殿反応又は電極での固体の濃縮によって)除去できる。
【0053】
複数相分離においては(例えば国際公開第号02/090312号に記載)、最初の処理段階では、流体F1(特に水性相P1)(ヒドロキシプロピオン酸が好ましくはアンモニアの添加によって、少なくとも部分的にアンモニウム塩に変換される)を、高沸点の、好ましくは非水溶性の有機溶媒と、又は高沸点溶媒の混合物と接触させる。高沸点(好ましくは不水溶性)有機溶媒と、又は高沸点溶媒混合物と接触させた組成物をその後、好ましくは20〜200℃(特に好ましくは40〜120℃)の温度で加熱し、組成物からアンモニウム及び水蒸気を除去し、ヒドロキシプロピオン酸を、高沸点有機溶媒中、又は高沸点溶媒混合物中に、酸の形で抽出し、ヒドロキシプロピオン酸を含有する有機相を得る。この処理(「塩分解」とも呼ばれる)は、国際公開第02/090312号に記載されている。このように得られた有機相を、処理段階(a2)において、流体F1として使用できる。
【0054】
この場合、国際公開第02/090312号において好適な抽出剤として言及される溶媒が、好適な有機溶媒として使用される。本発明における好適な高沸点有機溶媒は、有機アミン(特に少なくとも18の総炭素原子数の特定のトリアルキルアミンであり、少なくとも100℃(好ましくは少なくとも175℃)の沸点を常圧下で有し、例えばトリオクチルアミン、トリデシルアミン又はトリドデシルアミン、並びにこれらのトリアルキルアミンの溶媒混合物などが挙げられる)、高沸点炭素−酸素化合物(例えばアルコール)、高沸点リン−酸素化合物(例えばリン酸エステル)、並びに高沸点ホスフィンスルフィド若しくは高沸点アルキルスルフィドである。なお、「高沸点」とは、これらの化合物が好ましくは、常圧下で、少なくとも175℃の沸点を有することを意味する。
【0055】
流体F1(特に水性相P1であり、ヒドロキシプロピオン酸のアンモニウム塩を含有する)をこれらの溶媒又は溶媒混合物と接触させた後、国際公開第02/090312号に記載の手順に従い、得られた組成物を加熱し、水蒸気及びアンモニアを除去する。これらの成分(その温度条件下で少なくとも部分的にガス状である)の放出を、任意に、減圧によって促進することもできる。最後に、その酸の形態のヒドロキシプロピオン酸を含有し、次に処理段階(a2)における流体F1として使用されうる有機相が得られる。あるいは、ヒドロキシプロピオン酸を水で再抽出し、そのヒドロキシプロピオン酸水溶液を段階(a2)に供することも容易に想到できる。
【0056】
例えば国際公開第95/024496号に記載されているような、複数相分離が更に想起できる。この分離工程により、ヒドロキシカルボン酸溶液(塩基性化合物(例えば重炭酸ナトリウム)の添加により、ヒドロキシカルボン酸がヒドロキシプロピオネートとして存在する)を、任意に濾過し、水を蒸発除去した後で、少なくとも18の総炭素原子数の非水溶性トリアルキルアミンを含有する抽出剤を用いて、少なくとも345×10パスカルの二酸化炭素分圧下で混合して、水性相と有機相を形成させ、次に有機相に存在するヒドロキシプロピオン酸を、例えば水を用いて有機相から抽出する。また、この複数相分離工程においては、ヒドロキシプロピオン酸を含有する有機相と、ヒドロキシプロピオン酸を含有して、水で再抽出した後に得られた水性相との両方を、処理段階(a2)に供することができる。
【0057】
ヒドロキシプロピオン酸の脱水、すなわち処理段階(a2)におけるアクリル酸の合成反応は、好ましくは水性の培養液、又は複数相分離により得られた有機相若しくは水性相を加熱することによって実施される。当該培養液は、任意に微生物を除去され、任意に脱水され、またこの加熱処理は特に好ましくは触媒の存在下で実施される。
【0058】
酸触媒及びアルカリ触媒を、脱水触媒として使用できる。酸触媒は、オリゴマを形成する傾向が少ないため、特に好適である。脱水触媒は、均一系及び不均一系触媒のいずれも使用できる。脱水触媒が不均一系触媒である場合、脱水触媒が支持体xと接触しているのが好ましい。当業者が好適と考える全ての固体が、支持体xとして利用可能である。この場合、これらの固体は、脱水触媒との良好な結合及びその取り込みに適する、適切な孔容積を有するのが好ましい。総孔容積は、DIN 66133に従い測定した場合に、0.01〜3ml/gの範囲がより好適であり、0.1〜1.5ml/gの範囲が特に好適である。支持体xとして適切な固体は更に、DIN 66131に従いBET試験で測定した場合に、0.001〜1,000m/gの範囲、好ましくは0.005〜450m/gの範囲、更に好ましくは0.01〜300m/gの範囲の表面積を有するのが好ましい。一方では、0.1〜40mmの範囲、好ましくは1〜10mmの範囲、更に好ましくは1.5〜5mmの範囲の平均粒径を有するバルク材料を、脱水触媒の支持体として使用できる。脱水器の壁は更に、支持体としても機能しうる。更に、上記支持体は当然酸性若しくは塩基性であってもよく、又は、酸性若しくは塩基性脱水触媒を、不活性な支持体上に塗布することもできる。塗布する際の方法としては、具体的には、浸漬法若しくは含浸法、又は支持マトリックスへの取り込みが挙げられる。
【0059】
適切な支持体x(脱水触媒としての特性を有してもよい)は、具体的には、天然若しくは合成のシリカ系物質(例えば特にモルデナイト、モンモリロナイト、酸性ゼオライト)、酸性アルミニウムオキシド、γ−Al、支持物質(例えばオキシド系若しくはシリカ系物質、例えばAl、TiO、一塩基性、二塩基性若しくは多塩基性の無機酸(特にリン酸)又は無機酸の酸性塩でコーティングされている)、オキシド及び混合オキシド(例えばγ−AlとZnO−Alが混合されたヘテロポリ酸のオキシドが挙げられる。
【0060】
本発明の一実施形態では、支持体xは、少なくとも部分的にオキシド化合物を含んでなる。かかるオキシド化合物は、Si、Ti、Zr、Al及びPの元素のうちの少なくとも1つ、又は少なくとも2つの組合せを含むべきである。かかる支持体はまたそれ自身、それらの酸性若しくは塩基性の特性により、脱水触媒としても機能しうる。支持体xとして、また脱水触媒としても機能する化合物の、好適な種類としては、シリコン−アルミニウム−リンオキシドが挙げられる。脱水触媒、支持体xの両方として機能する好適な塩基性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタン、ランタノイド又はそれらのオキシド形(例えばLiO−、NaO−、KO−、CsO−、MgO−、CaO−、SrO−、又はBaO−、又はLa含有物質)のうちの少なくとも2つの組合せが挙げられる。かかる酸性若しくは塩基性の脱水触媒は、Degussa AG社、及びSuedchemie AG社から市販品として購入できる。イオン交換体は更なる代表的な一種である。これらは、塩基性若しくは酸性のどちらの形態であってもよい。
【0061】
使用可能な均一系脱水触媒は、具体的には無機酸、好ましくはリン含有酸、更に好ましくはリン酸である。これらの無機酸は、浸漬又は含浸によって支持体xに固定することができる。
【0062】
不均一系触媒の使用は、特に気相脱水において好適であることが判明している。しかしながら、液相脱水においては、均一系及び不均一系脱水触媒の両方が使用される。
【0063】
本発明に係る、アクリル酸の調製工程に使用される脱水触媒のH値は、+1〜−10barの範囲、好ましくは+2〜−8.2barの範囲、及び更に好ましくは、液相脱水の場合には+2〜−3barの範囲、また気相脱水の場合は−3〜−8.2barの範囲である。H値はハメットの酸度関数を指し、いわゆるアミン滴定及びインジケータの使用によって、又はガス状塩基の吸収により決定できる。”Studies in Surface Science and Catalytics”,vol.51,1989: ”New solid acids and bases,their catalytic properties”,K.Tannabeらを参照のこと。グリセロールからのアクロレインの調製に関する詳細は、更に、独国特許発明第4238493C1号に記載されている。
【0064】
本発明に係るアクリル酸の調製方法の具体的実施形態では、多孔質支持体(好ましくは少なくとも90重量%以下、更に好ましくは少なくとも95重量%以下、及び最も好ましくは少なくとも99重量%以下のシリコンオキシド、好ましくはSiOをベースとして形成され、無機酸(好ましくはリン酸と)又は超酸(例えば硫酸処理若しくはリン酸処理したジルコニウムオキシド)と接触させたもの)を、固体酸触媒として使用する。多孔質支持体を好ましくは、酸による支持体の含浸により無機酸と接触させ、この場合、好ましくは支持体の重量に対して10〜70重量%の範囲、好ましくは20〜60重量%の範囲、更に好ましくは30〜50重量%の範囲の量の支持体と接触させ、更に乾燥させる。乾燥させた後に、上記支持体を、好ましくは300〜600℃の範囲の温度、更に好ましくは400〜500℃の範囲の温度で加熱し、無機酸を固定化する。
【0065】
本発明に係る方法の具体的実施形態では、処理段階(a2)におけるヒドロキシプロピオン酸の脱水は、液相脱水により、最も好ましくはいわゆる「反応蒸留」により実施する。
【0066】
「反応蒸留」とは、1つの成分が蒸発除去される反応のことであり、それにより、この反応の化学平衡が影響を受ける。特に、1本のカラム(特に向流カラム)における、化学反応及び蒸留の同時処理のことを「反応蒸留」と称する。この上記反応と物質分離との同時処理は特に、化学平衡の成立のために、完全に所望の生成物に変換されない状態で抽出物が得られる反応の場合において有利である。またこれらのケースでは、反応空間からの反応生成物の分離を同時に実施することよって、ほぼ完全な反応が単一の装置内でなされる。反応蒸留の更なる効果としては、望ましくない副反応の抑制、反応時に生じる反応熱の、蒸留工程における再利用、及び次の作業における生成物の処理性の向上などが挙げられる。したがって、ヒドロキシプロピオン酸の脱水に関する用語「反応蒸留」とは、好ましくは、それヒドロキシプロピオン酸を含む流体F1又は水性相P1(処理段階(a1)において、任意に処理段階(i)から(iv)のうちの1つ又は全てによる更なる処理の後に、得られる)を、脱水を促進する触媒の存在下で、ヒドロキシプロピオン酸が少なくとも部分的にアクリル酸に変換される条件下で、かつ、反応溶液中の水が同時に蒸発除去される条件下で、加熱する方法のことを表す。この方法により、ヒドロキシプロピオン酸が脱水されてアクリル酸が得られるのと同時に反応混合物が精製され、また水が蒸留液として分離除去され、アクリル酸を含有する残渣生成物が生じる。
【0067】
反応蒸留の間に脱カルボキシル反応が生じるのを回避するため、この反応蒸留をCO雰囲気下で実施するのが更に有利である。これは更に、COが炭酸の形で少なくとも部分的に水性反応混合液に存在し、酸が同時に触媒として脱水を促進する場合において効果的である。この場合、用語「CO雰囲気」とは好ましくは、少なくとも10体積%、より好ましくは少なくとも25体積%、最も好ましくは少なくとも50体積%のCOを含有する雰囲気を意味するものとして理解される。
【0068】
当業者に公知の全ての蒸留又は精溜装置を、反応蒸留のための反応器として使用することができる。この場合、不均一系触媒の場合、当該触媒を、これらの蒸留又は精溜装置内部で適切な支持体(例えば構造化充填物(例えばSulzer−Chemtech社の「Katapak S(登録商標)」として市販されている)又は触媒でコーティングした熱シート)を用いて固定することができ、また、均一系触媒の場合、それを、適切な入口を経て蒸留装置又は精溜装置の内部に導入することができる。更に、例えば、中空の円筒形充填材料(例えばRASCHIGリング、INTOSリング、PALLリング、ワイヤメッシュリング、拡張ジャケットリング、コイル状リング、WILSONらせんリング又はPYMリング)、リール形の充填物(例えばHALTMEIERロール)、サドル形の充填物(例えばBERLサドル、INTALOXサドル又はワイヤメッシュサドル)、十字形の充填物(例えば双晶、プロペラ形)、又は星型の充填物、ボックス型の充填物(例えばHELI−PAK充填物又はOCTA−PAK充填物)、又は球状の充填物(例えばENVI−PAK充填物)などの充填物を含む充填塔、又は、棚段塔を、原則として使用することができ、また上記の充填物を、触媒で少なくとも部分的にコーティングすることが可能である。充填塔は、棚段塔と比較し、きわめて低い液体含量である。これは実際には、精溜において有利であることが多い。なぜなら、それにより物質の熱分解の危険性が低下するからである。しかしながら、充填塔の低い液体含量は、反応蒸留においては、特に反応速度が有限である反応である場合には不利である。したがって、所望の転換を遅い反応において実施するためには、液体の、装置中における長い保持時間を確保しなければならない。したがって、棚段塔の使用は、特に本発明においては有利である。これらは高い液体含量であり、実際、プレート上の二相の層、及び降下管の両方において高い液体含量である。両者の液体の割合は、特異的な方法で調節でき、建設方法(すなわちプレートの設計)によって、反応蒸留の具体的な要件に適合させることができる。触媒は更に、蒸留装置又は精溜装置の全体(すなわち底部の領域から最上部の領域)にわたり分布させることができる。しかしながら、上記触媒を特定の領域のみ(好ましくは蒸留装置若しくは精溜装置の下半分のみ、より好ましくは下1/3のみ、最も好ましくは下1/4のみ)に存在させることも想起できる。
【0069】
上記した反応蒸留の場合、本発明に係る方法は、好ましくは以下の処理段階を有してなる:
(a1) 生物的材料から、ヒドロキシプロピオン酸、好ましくは2−ヒドロキシプロピオン酸又は3−ヒドロキシプロピオン酸、最も好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸の調製により、ヒドロキシプロピオン酸、好ましくは2−ヒドロキシプロピオン酸又は3−ヒドロキシプロピオン酸、最も好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸を含有する水性相P1を得る処理段階であって、前記水性相P1の調製が、
i) 水性組成物中の、生物的材料から、より好ましくは炭水化物から、特に好ましくはグルコース又はグリセロールから、ヒドロキシプロピオン酸を調製、好ましくは発酵により調製して、ヒドロキシプロピオン酸及び微生物を含有する水性相を得るステップと、
ii) 任意に、微生物を、好ましくはこの水性相を少なくとも60秒(例えば10分及び/又は少なくとも30分間)、100℃以上、より好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上の温度で加熱することによって殺菌するステップと、
iii) 任意に、水性相から固体分(特に微生物又は未反応の生物的材料)を、好ましくは堆積、遠心分離又は濾過により分離するステップと、
iv) 任意に、少なくとも部分的に水を水性相から分離除去するステップと、を有してなる処理段階と、
(a2) ヒドロキシプロピオン酸、好ましくは2−ヒドロキシプロピオン酸若しくは3−ヒドロキシプロピオン酸、最も好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸を、反応蒸留によって、好ましくはCO雰囲気下で脱水して、残渣生成物としてアクリル酸を含有する流体F2(特に水性相P2)を得る処理段階と、
(a3) 懸濁晶析法又は層晶析法によって、アクリル酸を含有する残渣生成物を精製して、精製相を得る処理段階。
【0070】
脱水器中の流体F1又は水性相P1の、可能な限り長い保持時間を確保するために、蒸留又は精溜装置のほかに、少なくとも1つの更なる反応器を使用して、流体F1又は水性相P1が、更なる反応のために蒸留又は精溜装置に導入される前に、流体F1又は水性相P1に含有されるヒドロキシプロピオン酸の少なくとも一部をアクリル酸に変換することが有利でありうる。
【0071】
上記の本発明に係る方法に関連し、特に反応蒸留を行なう場合には、少なくとも2つの反応器において脱水が実施されること特に好ましく、その場合、第2の及び任意に更なる各々の反応器が、反応蒸留装置として設計されているのが好ましい。この場合、(好ましくは固体が除去された)水性相P1を、少なくとも1つの第1の反応装置R1(好ましくは蒸留又は精溜装置として設けられない)において、均一若しくは不均一系触媒(好ましくは無機酸、特に好ましくはリン酸)の存在下で加熱して、アクリル酸を含む第1の水性流体F1−1、好ましくはアクリル酸を含む第1の水性相P1−1を得る。この加熱は圧力Π1下で実施する。この流体F1−1又はこの水性相P1−1をその後、同様に均一若しくは不均一系触媒を含み、好ましくは蒸留カラム若しくは精溜カラムとして設けられた反応器R2に更に供給する。未反応のままで存在するヒドロキシプロピオン酸の更なる脱水を、この反応器R2において、均一若しくは不均一系触媒の存在下で、流体F1−1を加熱することによって更に実施し、アクリル酸を含む残渣生成物としての流体F1−2(好ましくはアクリル酸を含む水性相P1−2)を得る。この加熱は圧力Π2下で実施する。圧力Π2は通常、圧力Π1とは異なり、好ましい実施形態ではΠ1より低く、より好ましくはΠ1より少なくとも0.1bar低く、より好ましくは少なくとも1bar低く、より好ましくは少なくとも2bar低く、より好ましくは少なくとも4bar低く、より好ましくは少なくとも8bar低く、より好ましくは少なくとも10bar低い。本発明に係る方法の一実施形態では、第1反応装置R1の圧力は、4.5〜25barの範囲であり、好ましくは5〜20barの範囲であり、より好ましくは6〜10barの範囲であり、また更なる反応器R2の圧力は、1〜<4.5barの範囲であり、好ましくは2〜4barの範囲である。本発明に係る方法の一実施形態では、第1反応装置R1の圧力は、4.5〜25barの範囲であり、好ましくは5〜20barの範囲であり、及び更に好ましくは6〜10barの範囲であり、更なる反応器R2の圧力は、0.01〜<1barの範囲であり、好ましくは0.1〜0.8barの範囲である。この反応容器R2の蒸留液として、水が分離される。反応蒸留においては、オーバーヘッドから水が通常20重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上の量で分離される。残りの水は、反応蒸留の残渣生成物に依然存在する。上記の重量%は、いずれの場合も、反応カラムに供給される成分を100重量%としたときの数値である。
【0072】
この場合、流体F1、水性相P1、流体F1−1又は水性相P1−1の導入前に、反応器R1及び反応器R2にCOガスを供給して、上記の通り、脱水の間の脱カルボキシル化反応を回避するのが更に好ましい。
【0073】
反応器R1及びR2の触媒は同一であるか又は異なってもよく、個々の反応容器における転換レベル及び選択性を、特に触媒層における保持時間の調整、圧力の調整、温度の調整、及び第2の反応容器の場合には還流速度の調整により、制御することが可能である。均一系の、通常では液体の触媒(特にリン酸などの無機酸触媒)を使用する場合、少なくとも、この触媒の大部分の量を反応器R1に添加するのが好ましい。
【0074】
反応器R1(好ましくは封鎖された、圧力耐性を有する反応器)における脱水は、使用する触媒の性質及び量、並びに反応容器中の圧力に依存し、好ましくは80〜200℃の範囲、特に好ましくは120〜160℃の範囲で、一方、圧力は、1〜10barの範囲、好ましくは3〜8barの範囲(絶対圧)である。
【0075】
この反応器R1において得られた流体F1−1又は水性相P1−1を更に、蒸留カラム若しくは精溜カラムとして設けられた反応器R2に導入する。この場合、流体F1−1又は水性相P1−1を、蒸留塔の塔頂領域に導入することもでき、好ましくは蒸留カラム若しくは精溜カラムの上部1/3の領域に、特に好ましくは上部1/4の領域に、最も好ましくは上部1/4の領域に導入する。又は、蒸留カラム若しくは精溜カラムの側部領域に導入してもよく、好ましくは蒸留カラム若しくは精溜カラムの下部1/3と上部1/3との間の領域に、特に好ましくは下部1/4と上部1/4との間の領域に導入してもよい。
【0076】
流体F1−1又は水性相P1−1が蒸留カラム若しくは精溜カラムの塔頂領域に導入される場合、水は、向流除去されるのが好ましい。流体F1−1又は水性相P1−1が蒸留カラム若しくは精溜カラムの側部領域に導入される場合、好ましい態様としては、蒸留カラム若しくは精溜カラムが、下部反応領域(触媒が存在する)と、この反応領域に隣接する上部の蒸留領域(触媒を含まない)とを有し、並びに、流体F1−1若しくは水性相P1−1が、蒸留カラムにおける上記反応領域と蒸留領域との間に導入される。
【0077】
反応器R2の温度は、好ましくは反応器R1の温度と同じ範囲であるが、水の蒸留を可能にするために圧力を低くするのが好ましい。反応器R2の圧力は好ましくは、第1反応装置R1と比較し、1〜5bar低い。
【0078】
好ましくは、水性相P2としての、触媒成分を含まないアクリル酸水溶液(不均一系の触媒により脱水された場合に得られる溶液)、又は触媒を含むアクリル酸水溶液(均一系の触媒により脱水された場合に得られる溶液)は、反応混合物として、又は脱水の後に得られる流体F2として得られる。複数相分離において得られた有機相を、流体F1として使用した場合、アクリル酸を含む有機相(流体F2として)は好ましくは、脱水の後に得られる反応混合物として得られ、この有機相は、均一系若しくは不均一系の触媒が使用されたか否かに依存して、任意に触媒成分を含有する。
【0079】
事前に任意に固体を除去し、その含水量を任意に減少させた水性培養液を流体F1として使用した場合、処理段階(a2)で得られた流体F2は、以下を含有する組成物C3を含んでなる水性相P2であるのが好ましい:
(C3−1) 20〜95重量%、好ましくは30〜90重量%、最も好ましくは50〜85重量%のアクリル酸、その塩又はそれらの混合物と、
(C3−2) 0〜5重量%、好ましくは0.1〜2.5重量%、最も好ましくは0.5〜1重量%の無機塩と、
(C3−3) 0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、最も好ましくは1〜10重量%の有機化合物(アクリル酸、特にヒドロキシプロピオン酸とは異なる)と、
(C3−4) 0〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、好ましくは5〜20重量%、最も好ましくは1〜10重量%の細胞と、
(C3−5) 1〜90重量%、好ましくは50〜80重量%、最も好ましくは10〜70重量%の水(成分(C3−1)から(C3−5)の合計が100重量%である)。特に、ヒドロキシプロピオン酸の脱水が上記の反応蒸留プロセスにより実施された場合、アクリル酸を含有し反応蒸留の残渣生成物として得られる組成物C3は、好ましくは、水を25重量%未満、特に好ましくは10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満で含む(いずれの場合も、組成物C3の合計量に基づく重量%である)。
【0080】
更に好適な実施形態としては、処理段階(a2)又は(a3)の前に、流体F1又は流体F2の精製を、吸着プロセスによって、特に、市販のフィルタ(特に活性炭フィルタ)を用いた精製によって実施する。
【0081】
固体(例えば細胞)が未だ分離されていない場合、処理段階(a3)における晶析工程の前に、例えば限外濾過などの、上記の濾過工程によりこれらの固体を分離するのが有効でありえる。
【0082】
本発明に係る方法の処理段階(a3)において、流体F2に含まれるアクリル酸を晶析法により、好ましくは懸濁晶析法又は層晶析法により精製して、精製相を得る。懸濁晶析法は、特に好ましくは連続的に実施する。本発明に係る方法の一実施形態では、上記の晶析は、例えば第1反応装置R1における脱水の後に得られるような、アクリル酸及びヒドロキシプロピオン酸を含む、水含量の多い水性相P2(又は相F1−1)を用いても実施できる。本発明に係る方法の他の実施形態では、上記の晶析は、更なる反応器において行われ、相P2と比較し低い含水量である相F1−2を用いて実施する。相P2は通常、アクリル酸及びヒドロキシプロピオン酸以外にも、水を30重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上で含む。一方、相F1−2では通常、アクリル酸及びヒドロキシプロピオン酸以外にも、30重量%未満、好ましくは20重量%未満、特に好ましくは10重量%未満で含む。
【0083】
懸濁晶析法の場合、洗浄カラム(washing column)によって、結晶を母液から分離することが可能である。洗浄カラムを良好に操作するためには、洗浄しようとする結晶が充分な硬度を有し、特定の狭い粒度分布を有し、それにより、充填された若しくは充填されない濾床が適切な多孔性及び安定性を有する態様で形成されるのが好ましい。
【0084】
懸濁晶析法は、撹拌タンク式晶析装置、表面掻き取り式晶析装置、冷却ディスク式晶析装置、スクリュー式結晶装置(crystallizing screw)、ドラム式晶析装置、チューブ束式晶析装置等により好適に実施できる。特に、国際公開第99/14181号に記載の改良型の晶析装置を、上記の目的で使用できる。連続的に操作できる晶析装置が、本発明において特に有用性を発揮する。これらは好ましくは、冷却ディスク式晶析装置又は表面掻き取り式冷却器(Poschmannによる論文(14ページ))である。表面掻き取り式冷却器が、特に晶析に使用される。
【0085】
原則として、本発明に係る精製を連続的に実施できるいかなる洗浄カラムも、本発明に係る方法に使用できる。従来の実施形態では、懸濁液をカラムの上部の液圧洗浄カラムに導入する。フィルタを介して洗浄カラムから母液を除去し、高密度に詰まった結晶ベッドが形成される。母液が柱の基底部の方向へとクリスタル層中を流れ、流動抵抗により、これに対して下向きの力を発生させる。カラムの基底部には、可動式、好ましくは回転式の掻き取り装置又はスクレイパーが存在し、それにより高密度に詰まった結晶ベッドから再び懸濁液が生成し、また、水洗分解物(ウォッシュメルト:wash melt)が洗浄カラムの下部に導入される。この懸濁液を好ましくは、溶融装置(好ましくは熱交換器)からポンプで汲み出し、溶融させる。上記の溶融物の一部は、例えばウォッシュメルトとして用いることが可能であり、これを更にカラムにポンプで注入することにより、好ましくは反対方向に移動している結晶層が洗い落とされる(すなわち、晶析したアクリル酸が、再利用されたアクリル酸の向流により洗浄される)。収率を増加させる目的には反するが、分離された母液のリサイクルが特に有利である。ウォッシュメルトでは、一方では結晶が洗浄され、他方では当該メルトが少なくとも部分的に結晶表面上に晶析する。晶析エンタルピーにより放熱が生じ、カラムの洗浄領域に存在する結晶ベッドの温度が上昇する。以上より、結晶の発汗に類似した精製効果が得られる。
【0086】
したがって、精製においては、一方では、溶融した−すなわち既に精製されたアクリル酸によりアクリル酸の表面が洗浄され、他方では、既に存在するアクリル酸結晶上で、溶融した精製アクリル酸が晶析することにより浄化又は不純物の除去がなされる。これにより、非常に純度の高いアクリル酸の調製が可能となる。
【0087】
しかしながら、懸濁晶析によって得られた結晶を洗浄することは、原理的には、洗浄カラムにおける向流洗浄以外の方法でも実施できる。すなわち、例えば、上記の結晶を、適切な分離装置(例えばフィルタ)によって母液から分離した後で、ベルトフィルタで洗浄することができる。
【0088】
上記方法の他の実施形態では、水性相P2(好ましくは相F1−2)を、最大、アクリル酸、水及びヒドロキシプロピオン酸を含む組成物の、3元共晶点温度Tに冷却し、好ましくは、3元共晶点温度より最大6ケルヴィン、より好ましくは最大3ケルヴィン、最も好ましくは最大1ケルヴィン高い温度にまで冷却する
【0089】
好ましくは、晶析による精製において、以下を含有する第1の結晶相を得る:
少なくとも30重量%のアクリル酸、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%のアクリル酸と、
少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも49重量%の水と、
最大10重量%、好ましくは最大5重量%、最も好ましくは最大1重量%のヒドロキシプロピオン酸。
【0090】
流体F2からの、特に水性相P2からの晶析によるアクリル酸の精製は、1つ、2つ、3つ若しくはそれ以上の段階で実施してもよい。2段階の晶析の場合、第1の晶析段階において得られた結晶を、残存する母液から分離し、更に溶融させ、第2の晶析段階において再度晶析する。
【0091】
特に、アクリル酸、有機化合物(アクリル酸と異なる、例えば特に処理段階(a2)で脱水されなかったヒドロキシプロピオン酸)、及び任意の無機塩以外に、水を5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、最も好ましくは25重量%以上含む組成物C3を、本発明に係る方法の具体的実施形態にしたがって、流体F2として、好ましくは水性相P2として使用するときは、処理段階(a3)の晶析工程を、少なくとも2段階、好ましくは少なくとも3段階で実施するのが好ましい。少なくとも2段階での晶析においては、好ましい態様では、少なくとも2つの段階が連続するとき、かかる段階における主要成分(特定のフィード中に典型的には1重量%以上で含まれる)の実際の共晶が、晶析条件を変化させること(好ましくは温度を低下させること)によりなされる。晶析が3段階及びそれ以上の段階で実施される場合、好ましい態様では、フィード中の特定の主要成分(好ましくは水及びアクリル酸)の共晶が、晶析条件を変化させること(好ましくは温度を低下させること)によってなされる前の段階において、主要成分の共晶を、晶析条件を変化させる(好ましくは温度を低下させる)ことにより実施する段階を、少なくとも1段階、好ましくは少なくとも2段階で実施する。上記の段階においては、0.01〜10K/分の範囲、好ましくは0.05K/分〜5K/分の範囲、特に好ましくは0.1〜1K/分の範囲の冷却速度を採用するのが好ましい。
【0092】
更に好ましくは、処理段階(a3)は、以下の部分段階を有してなる(好ましくは各々直接に連続する):
(a3−1) 第1の晶析段階において、流体F2(特に水性相P2)を晶析、好ましくは懸濁晶析法若しくは層晶析法(最も好ましくは懸濁晶析法)により晶析して、結晶相K1と母液M1を得る段階であって、上記結晶相K1が、
5〜60重量%、特に好ましくは10〜55重量%、最も好ましくは15〜50重量%のアクリル酸と、
39.9〜95重量%、特に好ましくは44.6〜90重量%、最も好ましくは80〜99.5重量%の水と、
0.1〜10重量%、特に好ましくは0.4〜8重量%、最も好ましくは1〜6重量%の、水及びアクリル酸とは異なる副産物とを含んでなり、
アクリル酸、水及び副産物の合計重量が100重量%である段階と、
(a3−2) 好ましくは洗浄カラムを用いて、母液M1から結晶相K1を分離する段階であって、好ましくは当該結晶を、上記の条件及び方法により洗浄工程に供する段階と、
(a3−3) 第1の晶析段階からの結晶相K1を溶融させる段階と、
(a3−4) 第2の晶析段階において、溶融した結晶相を再度の晶析、好ましくは懸濁晶析又は層晶析(最も好ましくは懸濁晶析)に供し、結晶相CR2及び母液M2を得る段階であって、上記結晶相K2が、
8〜35重量%、特に好ましくは1〜28重量%、最も好ましくは0.4〜19.75重量%のアクリル酸と、
少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは80〜99.5重量%の水と、
最高5重量%、特に好ましくは最高2重量%、最も好ましくは0.1〜0.25重量%の、水及びアクリル酸とは異なる副産物とを含んでなり、アクリル酸、水及び副産物の合計重量が100重量%である段階と、
(a3−5) 好ましくは洗浄カラムによって、母液M2から結晶相K2を分離する段階と、
(a3−6) 第3の晶析段階において、母液M2を晶析、好ましくは懸濁晶析又は層晶析(最も好ましくは懸濁晶析)に供し、結晶相K3及び母液M3を得る段階であって、上記結晶相K3が、
少なくとも40重量%、特に好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは55〜70重量%のアクリル酸と、
最高70重量%、特に好ましくは最高57.5重量%、最も好ましくは45〜57.5重量%の水と、
最高5重量%、特に好ましくは最高2.5重量%、最も好ましくは0〜1.5重量%の、水及びアクリル酸とは異なる副産物とを含んでなり、アクリル酸、水及び副産物の合計重量が100重量%である段階と、
(a3−7) 好ましくは洗浄カラムによって、母液M3から結晶相K3を分離する段階であって、好ましくは当該結晶を、上記の条件及び方法により洗浄工程に供し、アクリル酸の結晶を含む精製相を最後に得る段階。
【0093】
処理段階(a3)において3段階で晶析を行う場合の、上記の本発明に係る方法の具体的実施形態では、特に好ましくは、第1の晶析段階において得られた、依然として非脱水ヒドロキシプロピオン酸を比較的多量に含む母液を、処理段階(a2)にフィードバックして、可能な限り完全に脱水を行う。
【0094】
懸濁晶析、並びにその後の液圧式若しくは機械式の洗浄カラムにおける結晶の洗浄に関する実施形態は、”Melt crystallization technology” by G.F.Arkenbout,Technomic Publishing Co.Inc.,Lancaster−Basle(1995),p.265−288に記載されており、また、廃水の前濃縮へのニロ凍結濃縮の使用に関する記事は、Chemie−Ingenieurtechnik(72)(1Q/2000),1231−1233に記載されている。
【0095】
当業者に公知の洗浄液を、意図する使用に応じて、洗浄液として使用できる(水溶液(例えば水))。既に示したように、晶析アクリル酸のうちの融解した結晶部分、晶析した水又は水及びアクリル酸の混合結晶は、それらを洗浄する際に特に好適に利用できる。この方法により、一方では、非常に純粋な生成物を生産するシステム中に、更なる物質を導入する必要がなくなり、他方では、融解した結晶がまた、洗浄カラム内の母液を正面に押し戻し、同時に発汗と同様の機構で、結晶の精製において影響を及ぼすこととなる。この場合、生成物のロスが生じない。なぜなら、洗浄液が、洗浄される結晶上で晶析し、その状態で生成物として回収されるからである(例えば、Niro Process Technology B.V.Crystallization and wash column separations set new standards in purity of chemical compoundsのパンフレットを参照のこと)。
【0096】
代替的な実施形態では、(a3−1)(a3−4)及び(a3−6)の少なくとも1つの処理段階における結晶の形成が、層において実施される。層晶析は、Sulzer AG,Switzerland(http://www.sulzerchemtech.com)の方法に従い実施される。適切な層晶析装置及び層晶析の間の手順が、例えば国際公開第00/45928号において記載されており、上記文献は参照により本願明細書に援用され、また層晶析に関するその記載内容は、本発明の一部をなす。
【0097】
最終的には、少なくとも50重量%、特に少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の純度を有するアクリル酸が、本発明に係るアクリル酸の調製方法により調製できる。
【0098】
本発明に係るポリアクリレートの調製方法には、本発明に係る方法により得られるアクリル酸の重合(好ましくはラジカル重合)が包含される。
【0099】
アクリル酸のラジカル重合は、当業者に公知の重合プロセスにより実施される。ポリマーが、架橋され、部分的に中和されたポリアクリレートである場合には、実際の手順に関しては”Modern Superabsorbent Polymer Technology”,F.L.Buchholz and A.T.Graham(editors),Wiley−VCH,New York,1998の第3章(69ページ以下)を参照のこと。
【0100】
更に、本発明に係るアクリル酸の調製方法によって得られるアクリル酸、及び本発明に係るポリアクリレートの調製方法によって得られるポリアクリレートを用いることによっても、上記の目的を達成できる。
【0101】
更に、本発明に係るポリアクリレートを含んでなる化学製品を用いることによっても、上記した目的を達成できる。好適な化学製品は、特に、フォーム、成形品、繊維、ホイル、フィルム、ケーブル、シーリング材、液体吸収衛生物品(特におむつ及び生理用ナプキン)、植物若しくは菌類の成長調整剤又は植物防疫用の活性物質に使用する担体、建材への添加剤、パッケージング材又は土壌添加物である。
【0102】
本発明に係るポリアクリレートの、化学製品、好ましくは上記した化学製品における使用、特に衛生物品(例えばおむつ又は生理用ナプキン)における使用、及び植物若しくは菌類の成長調整剤、又は植物防疫活性物質に使用する担体としての、超吸収体粒子における使用、によっても、上記の目的を達成できる。植物若しくは菌類の成長調整剤、又は植物防疫活性剤の担体としての用途では、植物若しくは菌類の成長調整剤又は植物防疫活性剤の放出が、担体の存在により、長期間にわたるように制御されるのが好ましい。
【0103】
本発明に係るアクリル酸の調製装置は、流体輸送ラインにより互いに連結している以下の装置を備えている:
生物的材料からヒドロキシプロピオン酸を調製し、ヒドロキシプロピオン酸(特に水性相P1)を含有する流体F1を与える合成装置と、
ヒドロキシプロピオン酸を脱水して、アクリル酸を含有する流体F2(特に水性相P2)を与える脱水ステージと、
懸濁晶析又は層晶析によって、アクリル酸を含有する流体F2を精製して、精製相を与える精製装置。
【0104】
本発明においては、「流体輸送ラインにより」とは、気体若しくは液体(懸濁液を含む)又はそれらの混合物が、対応するラインにより導入されることを意味すると理解される。特にパイプライン、ポンプ等が、この目的に使用できる。
【0105】
ヒドロキシプロピオン酸は、合成装置を用いて、再利用可能な原料から合成され、その後脱水ステージによりアクリル酸に変換される。アクリル酸は更に層晶析又は懸濁晶析を適宜組み合わせることにより精製される。従来公知のバイオリアクタに加えて、本発明に係る装置はまた、滅菌装置(発酵ブロス中に含まれる微生物を、発酵の終了後に殺菌できる)、濾過装置(発酵ブロスに含まれる固体を、濾過により、好ましくは限外濾過により分離除去できる)、プロトン化装置(任意に塩として存在するヒドロキシプロピオン酸の少なくとも一部を、その酸性形態に変換できる)、及び/又は、脱水装置、(少なくとも一部の水を分離除去できる)を備えてもよい。この場合、これらの装置は、合成装置と脱水ステージとの間に配置してもよく、また脱水ステージと精製装置との間に配置してもよく、少なくとも、殺菌装置及び濾過装置は、合成装置と脱水ステージとの間に配置されるのが好ましい。
【0106】
本発明に係る装置の好ましい実施形態では、脱水ステージは、圧力反応器(pressure reactor)として設置され、更に好ましくは、上記脱水ステージは、上記の脱水触媒の1つを含む蒸留又は精溜装置を有する。本発明に係るアクリル酸の調製方法に関連して記載されている反応蒸留は、かかる脱水ステージにより行うことができる。蒸留塔の構造に関する全ての公知の形状(特に充填塔及び棚段塔)が、本発明における装置として適切である。
【0107】
この場合、特に好ましくは、上記脱水ステージが少なくとも2つの脱水器R1及びR2を有する場合、それらは流体輸送ラインによって互いに連結され、それらの全ては上記の脱水触媒のうちの1つを含み、それらの一方は圧力Π1で加圧でき、他方は圧力Π2で加圧でき、それらの2つの圧力は異なり、圧力Π2は好ましくはΠ1より低い。好適な圧力差は、本発明に係る方法に関して既に上記した圧力差である。好ましくは、反応器R2は蒸留装置又は精溜装置として設置され、反応器R1はそうではない。この蒸留装置又は精溜装置を精製装置に連結することにより、蒸留又は精溜において得られた残渣生成物を、精製装置に供給することができる。
【0108】
脱水器R1によって、少なくとも一部のヒドロキシプロピオン酸がアクリル酸に変換される。上記脱水器には、好ましくは固体を除去され、任意に少なくとも部分的に脱水された培養液が導入される。この場合、好ましくは、第1の脱水器R1を第2の脱水器R2に連結し、それにより、ヒドロキシプロピオン酸、アクリル酸及び水を含み、第1反応装置R1において得られる水溶液が、第2の反応器の塔頂領域、好ましくは上部1/3領域に、特に好ましくは上部1/4領域に、及び最も好ましくは反応器R2の上部1/4領域に導入され、又は、反応器R2の側部領域、好ましくは下部1/3領域と上部1/3領域との間に、好ましくは特に反応器R2の下部1/4領域と上部1/4領域との間に導入してもよい。反応蒸留において、精溜に使用される充填塔の低い液体含量が好ましくない事情(特に反応速度が有限である反応の場合)は、反応器R1によって考慮することができる。所望の転換を遅い反応において実施する場合には、液体が装置内に長い保持時間で存在しうることを確保する必要がある。補助的に、カラムに加えて、1つ以上の外部タンク(反応器1、更なる外部タンク(反応器、R1’、R1’’など)を任意に存在させてもよい)を設置し、実際の反応の大部分をそこにおいて行わせることができる。これらのタンクからの液体の、カラムへのリサイクルは、各場合において、充填物の分割及び正確な液体の分配が必要となり、したがって、比較的高い液体含量である棚段塔を、反応蒸留に使用するのが好ましい。棚段塔は高い液体含量であり、実際、プレート上の二相の層、及び降下管の両方において高い液体含量である。両者の液体の割合は、特異的な方法で調節でき、建設方法(すなわちプレートの設計又は堰の高さ)によって、反応蒸留の具体的な要件に適合させることができる。反応用の棚段塔の適切な内部コンポーネントを設計する際、以下の側面が、重要な役割を果たす:
(i) 非常に高い液体含量(すなわち保持時間)の実現、
(ii) カラム全体における、所望のホールドアップ(静的液体内容物)の分布、
(iii) 均一系及び不均一系両方の触媒に対する適合性、
(iv) 触媒交換の簡便性、
(v) 実験室レベルからラージスケールの工業用カラムへのスケールアップの容易性。
【0109】
アクリル酸を含有する流体F2を、精製装置を用いて、懸濁晶析又は層晶析により精製し、精製相を得ることができる。
【0110】
本発明に係る装置の特に好適な実施形態では、上記精製装置は、流体輸送ラインによって互いに連結された以下の構成をとる:
(d1) 第1の晶析領域、第2の晶析領域、第3の晶析領域、第1の分離領域、第2の分離領域、第3の分離領域、少なくとも1つの溶融装置及び少なくとも6本の導管を有してなり、
(d2) 第1の晶析領域が、第1の導管を介して第1の分離領域に連結し、
(d3) 第1の分離領域が、第2の導管を介して少なくとも1つの溶融装置に連結し、
(d4) 少なくとも1つの溶融装置が、第3の導管を介して第2の晶析領域に連結し、
(d5) 第2の晶析領域が、第4の導管を介して領域を第2の分離領域に連結し、
(d6) 第2の分離領域が、第5の導管を介して第3の晶析領域に連結し、
(d7) 第3の晶析領域が、第6の導管を介して領域を第3の分離領域に連結する。
【0111】
この場合、脱水ステージが、流体輸送ラインによって、直接、好ましくは第1の晶析領域に連結するのが好ましく、脱水ステージが反応蒸留カラム若しくは精溜カラムである場合、これらのカラムは好ましくは第1の晶析装置に連結し、それにより、得られた残渣生成物が晶析装置に供給される。本発明に係る一実施形態では、幾つかの連続した晶析領域を有する、本発明に係るこの晶析装置は、第1反応装置R1の下流に配置することができる。このようにして非常に純粋なアクリル酸水溶液が得られ、その結果、このアクリル酸溶液を重合させる重合装置を直接晶析装置の後に配置することができる。
【0112】
懸濁晶析装置が晶析領域として使用され、洗浄カラムが分離領域として使用される場合、本発明に係る装置のこの具体的実施形態を用いることにより、アクリル酸を含有し、脱水ステージにおいて得られる流体F2が、第1の晶析領域において晶析され、水及びアクリル酸の結晶を得ることができる。次にこれらを洗浄カラム(第1の分離装置)で洗浄して、ヒドロキシプロピオン酸を含有し、残存する母液から分離することができる。分離された結晶(特に水及びアクリル酸を含む)を次に、少なくとも1つの溶融装置において溶融させ、更に第2の晶析領域において再度晶析させることができる。この第2の晶析領域において得られ、とりわけ水をベースとする結晶を更に、洗浄カラム(第2の分離装置)中において母液から分離することができる。残留する母液を次に、第3の晶析領域において晶析して、実質的にアクリル酸をベースとする結晶を得ることができ、これらの結晶を次に、更なる洗浄カラム(第3の分離装置)で洗浄し、残留する母液から分離する。
【0113】
上記の特に好適な実施態様の中でも、更に有利な実施態様では、本発明に係る装置は3つの晶析領域を有し、第1の分離装置及び第3の分離装置が、流体輸送ラインによって、それぞれ、第2及び第3の溶融装置に連結している。第1及び第3の分離装置において、母液から分離された結晶は、それぞれ、この第2及び第3の溶融装置で、少なくとも部分的に溶融することができ、得られた結晶溶融物を、例えば独国特許出願公開第10149353号に記載のように、特定の分離装置中に存在する結晶相を洗浄するための向流として使用できる。
【0114】
精製方法の関係上、このようにして調製されるアクリル酸は特に穏やかに処理し、その結果、その品質が良好なものとなる。精製装置は、比較的不純物含量の多いアクリル酸含有流体から、60重量%以上、特に99.5%重量以上の純度を有する非常に純粋なアクリル酸を得ることができ、またとりわけ、副産物としての水及びヒドロキシプロピオン酸が、約12重量%の含量に留まる。本発明では、50重量%〜95%重量のアクリル酸、好ましくは75重量%〜90重量%のアクリル酸を含有するアクリル酸含有流体を効率的に精製することができる。
【0115】
効率的な精製により、更なる熱処理工程(特に蒸留又は蒸発)を削減することが可能となり、それにより、アクリル酸及びそこで形成されるアクリル酸の熱への曝露が減少する。その結果、アクリル酸、及びアクリル酸の品質が改善される。
【0116】
更にアクリル酸の純度を増加させるため、装置は別の精製装置を備えている。この別の精製装置を用いることにより、最終生成物の更なる精製、特に溶融装置から出たアクリル酸の更なる精製が可能となる。
【0117】
収率を上昇させるため、第1の分離領域を脱水器に連結させるのが特に好ましく、それにより、分離領域において得られた母液を脱水ステージに再度導入して、可能な限り完全に、ヒドロキシプロピオン酸の転換を行うことが可能となる。
【0118】
本発明に係るアクリル酸の精製プロセスにおいては、1〜10barの圧力、−20〜+20℃、好ましくは−10〜+13℃の範囲の温度の条件が支配的となるように、分離領域全体を設定する。分離領域の下方領域が、分離領域の上方領域と比較し、低い温度及び低い圧力が支配的となるのが好ましい。分離領域の下部領域が、1〜2barの圧力、−20〜<12℃の条件が支配的となるのが好ましい。分離領域の上方領域では、少なくとも12℃の温度で、1〜10barの圧力、好ましくは3〜7barの圧力が支配的となる。好適には、−20〜20℃、好ましくは−12〜13℃の範囲の温度で、0.5〜10bar、好ましくは0.8〜2barの圧力が、晶析領域において支配的である。10〜50℃、好ましくは11〜10℃の範囲の温度で、1〜10barの圧力、好ましくは3〜7barの圧力が、少なくとも1つの溶融装置において支配的である。
【0119】
導管においては、アクリル酸、及び任意にこれらの導管内でこれに伴う物質の、信頼性が高く、支障のない輸送可能にする温度及び圧力条件が支配的となる。
【0120】
上記の装置では、比較的純度の低いアクリル酸(任意に大量の水及びヒドロキシプロピオン酸を依然含む)を出発原料として用いられることが可能であり、その結果、合成により生じるアクリル酸の蒸留のための予備的な出費を低くできる。特に、アクリル酸の熱への曝露(望ましくない重合、又はアクリル酸の不十分な形成を生じさせうる)...そこから生じる望ましくない重合が、それにより減少する。
【0121】
本発明の改変形態、特に、層晶析又は懸濁晶析による、本発明に係るアクリル酸の調製装置を用いた組み合わせに係る実施形態では、本発明に係るアクリル酸の調製装置は、流体輸送ラインによって互いに連結された以下の装置を備える:
生物的材料から3−ヒドロキシプロピオン酸を含む流体(特に水性)相を調製する、3−ヒドロキシプロピオン酸の合成装置と、
3−ヒドロキシプロピオン酸を脱水して、アクリル酸を含む流体(特に水性)溶液を調製する脱水ステージと、
脱水装置としての、以下の分離装置(S1)から(S5)のうちの少なくとも1つ:
(S1)逆浸透装置、
(S2)電気浸透装置、
(S3)共沸蒸留装置、
(S4)電気透析装置、
(S5)複数相分離装置。
【0122】
この改変形態は、特に精製装置の前の予備的段階として使用できる。特に好ましい形態では、分離装置(S1)から(S5)の少なくとも1つを、処理段階(a1)と(a3)の間、特に(a1)と(a2)の間に設け、予備的な精製としての効果を生じさせる。
【0123】
逆浸透装置は逆浸透の実施に適し、電気浸透装置は電気浸透の実施に適し、共沸蒸留装置は共沸蒸留の実施に適し、電気透析装置は電気透析の実施に適し、複数相分離装置は複数相分離の実施(特に上記した「塩分解」)に適している。
【0124】
更なる具体的な発達形態では、上記の装置は、固体を、特に粒子(微生物、細胞又はその部分など)を、液相から、流体溶液から、又はそれらの両方から分離するための、分離装置、特にフィルタを更に有してなる。既に上記したように、合成装置と脱水ステージとの間に、固体を分離するための更なる分離装置を配置するのが好ましい。固体を分離するための別の分離装置はまた、脱水ステージと精製装置又は分離装置(S1)から(S5)の間に配置することもできる。
【0125】
上記の装置は更に、ヒドロキシプロピオン酸のプロトン化手段を液相中に含有するのが好ましい。上記のプロトン化は特に、酸(例えば塩酸又は塩化アンモニウム)の添加によって実施できる。プロトン化手段はイオン交換器であってもよく、それにより、ヒドロキシプロピオン酸が遊離酸に変換される。
【0126】
プロトン化手段は特に、合成装置の下流に、すなわち、特に、合成ステージと脱水ステージとの間に、又は脱水ステージと脱水装置又は精製装置として機能する分離装置(S1)から(S5)のうちの1つとの間に配置される。プロトン化手段はまた、脱水ステージ又は精製装置又は分離装置(S1)から(S5)に直接配置することもでき、例えば酸などの、ヒドロキシプロピオン酸をプロトン化する試薬の供給口であってもよい。
【0127】
上記の装置に、吸着手段又は吸収手段(特に活性炭フィルタ)を設けて、液相若しくは流体溶液又はそれらの両方の更なる精製を行うことができる。懸濁液中の微粒子(例えば生物的残渣)を、吸着手段又は吸収手段を用いて液相又は溶液から除去することができ、この吸収手段は、合成装置と脱水ステージとの間、及び脱水ステージと精製装置との間の両方に配置することが可能である。
【0128】
本発明に係るポリアクリレートの調製装置は、本発明に係るアクリル酸の調製装置と、及びアクリル酸の重合のための重合反応器(特にアクリル酸のラジカル重合のための重合反応器)とを有してなる。
【0129】
本発明に係るアクリル酸の調製方法の好ましい実施形態では、上記の装置を使用する。
【0130】
本発明に係るポリアクリレートの調製プロセスでは、本発明に係る方法によって得られたアクリル酸を重合させ、またこの重合は、好ましくは架橋剤の存在下で実施する。上記のポリマーが、架橋され、部分的に中和されたポリアクリレート(いわゆる超吸収体)である場合、実際の手順に関しては、”Modern Superabsorbent Polymer Technology”,F.L.Buchholz and A.T.Graham(editors),Wiley−VCH,New York,1998の第3章(p69から)を参照のこと。
【0131】
本発明に係るポリアクリレートは好ましくは、少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、特に好ましくは少なくとも50、更に好ましくは少なくとも75、より更に好ましくは少なくとも85、より更に好ましくは少なくとも95の持続性係数を有することを特徴とする。この場合、上記持続性係数は、吸水性ポリマー構造が、非化石の再生可能な有機材料に基づいている割合を示す。持続性係数が100である場合、上記ポリマー構造は、非化石の再生可能な有機材料に基づく物質から完全に構成されていることを示す。
【0132】
本発明に係るポリアクリレートの調製方法によって得られたポリアクリレートは、好ましくは吸水性ポリマー構造である。この吸水性ポリマー構造は、以下の特性のうちの少なくとも1つを有するのが好ましい。
(β1)少なくとも20g/g、好ましくは少なくとも25g/g、最も好ましくは少なくとも30g/gのCRC(CRC=centrifugation retention capacity(無荷重下の吸収倍率))評価(ERT441.2−02に従い決定(ERT=edana(欧州不織布協会)が推奨する試験方法))であって、60g/g、好ましくは50g/gのCRC値を上回らない。
(β2)ERT442.2−02に従い決定、少なくとも16g/g、好ましくは少なくとも18g/g、最も好ましくは少なくとも20g/gの0.7psi(AAP)の加圧下吸収倍率であって、50g/g、好ましくは40g/gの値を上回らない。
【0133】
本発明に係る繊維、フィルム、成形組成物、織物及び革製品の補助剤(auxiliaries)、凝集剤、コーティング又はラッカーは、本発明に係る方法によって得られたアクリル酸、又は、その誘導体、例えばこのアクリル酸のエステルをベースとし、一方、本発明に係るアクリル酸の調製方法によって得られたアクリル酸又はその誘導体の、本発明に係る使用としては、繊維、フィルム、成形組成物、織物及び革製品の補助剤(auxiliaries)、凝集剤、コーティング又はラッカーへの使用が好ましい。
【0134】
各々の場合において使用でき、又は適宜組み合わせることもできる、有利な詳細及び実施態様を、以下の図面を用いて更に説明するが、それらは本発明を限定するものではなく、単に例示のみを目的とするものに過ぎない。
【0135】
図1は、本発明に係るプロセスフロー、及び本発明に係る装置を例示する。バイオマス(例えばアブラナ又はトウモロコシ)の供給部(フィード)1を経てこれを合成装置2に供給できる。合成装置2は好ましくはバイオリアクタである。合成装置2において、バイオマスが変換され、ヒドロキシプロピオン酸、好ましくは2−又は3−ヒドロキシプロピオン酸(より好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸)を含む水性相P1が形成される。この水性相P1を更に、放出口3を経て殺菌装置に供給することができる。当該殺菌装置は、例えば当業者に公知のオートクレーブ若しくは他の滅菌装置である。このようにして処理される水性相P1を次に、放出口5を経て濾過装置6に供給することができる。そこでは、水性相P1から固体(例えば微生物)が除去される。分離された固体を、放出口7を経て除去することができる。水性相P1に含まれる微生物を殺菌せずに、更なる合成サイクルで使用する場合には、濾過装置6において分離される固体を、合成装置(図1に示さない)に少なくとも一部フィードバックすることもできる(装置111、112、113及び114は、合成装置2と脱水ステージ9との間に個々に配置してもよく、又は組み合わせて配置してもよい。図1に示さない)。
【0136】
固体を除去された水性相P1は、放出口8を経て、次に脱水ステージ9に入り、そこでヒドロキシプロピオン酸がアクリル酸に変換(水が分離)される。アクリル酸と、任意の適当な未反応ヒドロキシプロピオン酸とを含有する水性相P2を次に、放出口10を経て、更なる構成装置において更に処理することができる。これらの更なる構成装置は例えば、更なる濾過装置111、プロトン化装置112、吸着装置113又は脱水装置114(例えば逆浸透装置、電気浸透装置、共沸蒸留装置、電気透析装置又は複数相分離装置)であってもよい。これらの装置装置は、脱水ステージ9と精製装置13との間に、個々に配置してもよく、又は直列に組み合わせて配置してもよい。合成装置2と脱水ステージ9との間(特に好ましくは濾過装置6と脱水ステージ9との間に、)に、これらの更なる構成装置11を1つ以上配置するか、あるいは、その代わりに、又はそれに加えて、脱水ステージ9と精製装置13との間に、配置することも更に有利であると考えられる(図1に示さない)。
【0137】
図2は、本発明に係るプロセスフロー、及び本発明に係る装置の好ましい実施形態を例示する。そこでは、脱水が反応蒸留により実施される。放出口8を経て、濾過装置6において固体を除去された水性相P1が除去され、この水性相P1が通常、膜90を経て、脱水を促進する触媒を含む第1の反応装置91に入り、そこで少なくともヒドロキシプロピオン酸の一部がアクリル酸に変換される。アクリル酸、水、未反応ヒドロキシプロピオン酸及び任意に更なる副産物を含有する水性相P2を次に、第2の反応器93に、放出ライン92を介して供給する。反応器93は、例えば蒸留カラム若しくは精溜カラムであり、同様に脱水を促進する触媒を含む。この第2の反応器93において、未反応のヒドロキシプロピオン酸を更にアクリル酸に変換し、同時に、水性相に含まれる水を、放出口94(反応蒸留)を経て分離する。第2の反応器93において得られた、アクリル酸を含む残渣生成物95を次に、放出ライン10を介して、更なる構成装置11に、又は直接精製装置14(図1を参照)に供給することができる。脱水の間、脱カルボキシル化反応を防止するため、第1反応装置及び第2の反応器に、供給ライン96を介して二酸化炭素を供するすることもできる。
【0138】
図3は同様に、本発明に係るプロセスフローの好ましい実施形態を示す。本実施形態では、精製は3段階の晶析により行われる。更なる構成装置11において処理される水性相P2、又は脱水ステージ9から直接に得られる水性相P2を、第1の晶析装置131(好ましくは懸濁晶析装置)に、供給12を経て導入する。しかしながら、他の晶析装置(例えば層晶析装置)の使用も可能である。好ましくは、水及びアクリル酸が晶析して析出するまで、アクリル酸を含む水性相P2を、第1の晶析装置131において冷却する。懸濁晶析装置を第1の晶析装置として使用する場合、このようにして得られたクリスタル懸濁液を、第1の分離領域133(好ましくは洗浄カラム)に、放出ライン132を介して供給し、そこで結晶を、残留する母液から分離する。層晶析装置を第1の晶析装置として使用する場合、分離装置の使用は必要不可欠ではない(図3に示さない)。なぜなら、この場合、層晶析装置の表面上に結晶を固定させるため、結晶を例えば洗浄カラムによって母液から分離する必要がなくなるからである。第1の分離装置の母液から分離された結晶は、更に純度を増加させるために、溶融装置134によって少なくとも部分的に溶融させ、それを使用して、輸送手段135(例えばポンプ)によって、融解した結晶を、独国特許出願公開第10149353号に記載のように、結晶を向流中で洗浄することができる。層晶析装置を第1の晶析装置131として使用する場合、有利な態様では、少なくとも部分的に結晶を溶融させ、その結晶溶融物を使用して結晶を向流中で洗浄する。
【0139】
第1の分離領域において、母液から分離した後で得られる、基本的に水及びアクリル酸を含んでなる結晶を次に、放出ライン136を介して溶融装置137に供給することができ、そこで、結晶が可能な限り完全に溶融する。好適なことに、残留し、依然として未反応のヒドロキシプロピオン酸を比較的多量に含みうる母液を、放出ライン1319を介して、脱水ステージ9にフィードバックすることができる。このようにして溶融させた結晶を次に、第2の晶析装置139に、放出ライン138を介して供給し、そこで、基本的に水を含んでなる結晶が形成されるまで温度を低下させる。この第2の晶析装置は同様に、好ましくは懸濁晶析装置であるが、層晶析装置を使用してもよい。懸濁晶析装置を第2の晶析装置139として使用する場合、第2の晶析装置139において得られたクリスタル懸濁液を次に、第2の分離領域132に、放出ライン1310を介して供給することができ、そこで、基本的に水をベースとする結晶を、放出1311を経て、基本的にアクリル酸及び水をベースとする母液から分離する。ここでもまた、層晶析装置を晶析装置として使用する場合には、別の分離装置(例えば洗浄カラム)の使用は必須ではない。
【0140】
第2の分離領域132において結晶から分離された母液を次に、第3の晶析装置1314に、放出ライン1313を介して供給することができ、そこで、基本的にアクリル酸をベースとする結晶が形成されるまで温度を低下させる。この第3の晶析装置1314は、同様に懸濁晶析装置又は層晶析装置であってもよい。懸濁晶析装置を第3の晶析装置において使用する場合、第3の晶析装置において得られる結晶懸濁液を、第3の分離領域1316に、放出ライン1315を介して供給することができ、そこで、アクリル酸の結晶を母液から分離する。第1の晶析段階と同様に、有利な実施形態として、第3の分離領域において、溶融装置1317によって少なくとも一部の結晶を溶融させ、次にその溶融物を、輸送手段1318(例えばポンプ)を介して、向流中での結晶の洗浄に用いる。第3の分離領域1316において得られたアクリル酸の結晶を次に、放出ライン14を介して除去することができる。層晶析装置を第3の晶析装置1314として使用した場合、結晶を少なくとも部分的に溶融させ、その融解した結晶を結晶の洗浄に使用するのが好ましい。
【0141】
以下の非限定的な実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0142】
調製例1:
試験組成物1の調製は、発酵ブロスをシミュレーションしたものであり、以下の組成である:1,000mlの水、100gの3−ヒドロキシプロピオン酸(10重量%)、9gのパン酵母、有機材料としての1gのグルコース、アンモニアによってpHを6.5〜7.5に調整。
【0143】
調製例2:
試験組成物2の調製は、発酵ブロスをシミュレーションしたものであり、以下の組成である:1,000mlの水100gの3−ヒドロキシプロピオン酸(10重量%)。
【0144】
脱水1:
最初に、図2に示される装置において、調製例1において得られた溶液から、メンブレン90(Amafilter社製の商品)を用いて酵母を除去し、第1の圧力反応器91(17mmの内径及び50cmの長さを有するフロースルー型の高グレードの鋼鉄製の反応チューブ)中で、140℃の温度、8分の保持時間にわたる8barの圧力、リン酸の存在下、抽出流5,000部あたりリン酸1部の濃度、の条件で加熱した。
【0145】
このようにして得られる反応混合物(特に水、未反応の3−ヒドロキシプロピオン酸及びアクリル酸を含む)を次に、反応カラム93(蒸留塔が装備されたオートクレーブ)に導入し、同様に、140℃の温度、3.7barの圧力、16分の保持時間、最初に使用した触媒としてのリン酸の存在、の条件下で加熱した。この手順の間、反応混合物に含まれる水を上部から分離し、アクリル酸が富化された残渣生成物を得た。
【0146】
脱水2:
以下の相違点を除いて、脱水1の手順を繰り返した:圧力反応器91から得られる反応混合物(特に水、未反応の3−ヒドロキシプロピオン酸及びアクリル酸を含む)を次に、反応カラム93(蒸留塔が装備されたオートクレーブ)に導入し、同様に、120℃の温度、500barの圧力、45分の保持時間、最初に触媒として使用したリン酸の存在、の条件下で加熱した。この手順の間、反応混合物に含まれる水を上部から分離し、アクリル酸が富化された残渣生成物を得た。
【0147】
脱水3:
以下の相違点を除いて、脱水1の手順を繰り返した:リン酸の代わりに、COを飽和に反応器91に導入した。
【0148】
脱水4:
試験組成物2を使用したことを除き、脱水1の手順を繰り返した。
【0149】
脱水5:
試験組成物2を使用したことを除き、脱水2の手順を繰り返した。
【0150】
脱水6:
試験組成物2を使用したことを除き、脱水3の手順を繰り返した。
【0151】
上記の脱水による残渣生成物は、表1に示す組成物を有していた。
【0152】
表1:
【表1】

【0153】
処理1:
脱水1の残渣生成物(アクリル酸が富化されている)を、懸濁晶析装置(MSMPR”mixed suspension mixed product removal” type as described in Arkenbout G.F.”Melt Crystallization Technology”,Lancaster,Technomic Publishing Company Inc.1995)に1Lの量で供給し、0.25K/分の温度変化で、0℃の平衡温度に冷却した。得られた結晶懸濁液(約50重量%の固形分含量)を、従来公知の実験室用の吸入フィルタを介して、結晶と混入する母液とを分離した。その後、結晶を、結晶/精製液体=5:1の重量比の精製アクリル酸(99.5重量%)で洗浄して、付着している不純物を除去した。精製された結晶を室温に加温し、溶融させた。以上の手順により、99.5重量%の純度を有するアクリル酸を得た。各相(フィード、結晶及び母液)の組成を、表2に示す。
【0154】
表2:
【表2】

【0155】
脱水7:
脱水生成物を、圧力反応器91の後で直接採取したことを除き、脱水4の手順を繰り返した。フィード1として示す組成(表3)を有していた。
【0156】
処理2:
段階A):
0.5K/分の温度変化によって、フィード1の水が富化されたアクリル酸混合物を、1Lの晶析装置に撹拌しながら導入し、−18℃(3元共晶点の付近)の温度に冷却した。懸濁液を次に、従来公知の実験室用吸入フィルタを通じて濾過した。得られた結晶を室温に加温し、溶融させた。結晶1及び母液1の組成を表1に示す。同様の晶析を数回実施し、以下の晶析段階に用いる生成物を適当量で得た。
【0157】
段階B):
主に水及びアクリル酸を含んでなる段階Aの結晶相1を、次に1Lの晶析装置に撹拌しながら導入し、0.25K/分の温度変化で、−10℃の温度に冷却した。2元共晶がなされる前に、この水及びアクリル酸の実質的な2元晶析操作を中断し、それにより、実質的に水が特異的に晶析した。その後、得られた懸濁液を晶析装置から排出し、実験室用吸入フィルタを用いて、結晶と母液とに分離した。母液2及び結晶相2の組成を、同様に表3に示す。同様の晶析を数回実施し、以下の晶析段階に用いる生成物を適当量で得た。
【0158】
段階C):
実質的に水及びアクリル酸の共晶組成を有する段階Bの母液2を、1Lの晶析装置に撹拌しながら導入し、0.25K/分の温度変化で、2元共晶点温度以下の、約−15℃の温度に冷却した。この手順により形成された水とアクリル酸との結晶の懸濁液を、実験室用吸入フィルタに通し、濾過した。母液3及び結晶相3の組成を、同様に表3に示す。
【0159】
表3
【表3】

【0160】
以上により、62%のアクリル酸含量及び38%の水含量のアクリル酸/水相を得た。
【0161】
260gのアクリル酸(62%)を含んでなる、晶析工程により得られたモノマー溶液を、水酸化ナトリウム溶液(202.054g、50%濃度のNaOH、160gの水(38%)、0.409gのポリエチレングリコール300ジアクリレート、及び1.253gのモノアリルポリエチレングリコール450モノアクリレート)で、70mol%の程度まで中和し、窒素を供給して溶存酸素を除去し、4℃の開始温度にまで冷却した。開始温度に達したとき、開始剤を含む溶液(10gのHO中に0.3gのナトリウムパーオキシジスルフェートを含む溶液、10gのHO中に0.07gの35%濃度の過酸化水素を含む溶液、及び2gのHO中に0.015gのアスコルビン酸を含む溶液)を添加した。約100℃の最終温度に達したとき、形成されたゲルをミートチョッパーで粉砕し、150℃で2時間、乾燥キャビネット中で乾燥させた。乾燥したポリマーを、2mmのConidur perforationを装着したSM 100切削ミルで粗く破砕し、磨り潰し、篩にかけ、粉末Aとして150〜850μmの粒径の粉末を得た。
【0162】
100gの粉末Aを、1.0gのエチレンカーボネート(EC)、0.6gのAl(SO・14HO及び3gの脱イオン水を含んでなる溶液と混合し、得られる溶液を0.45mmのカニューレを介して、シリンジによりミキサーのポリマー粉末に添加した。水溶液でコーティングした粉末Aを次に、185℃で30分間、空気循環キャビネット中で加熱した。粉末Bを得た(粒径:150μmメッシュ幅が13%、300μmメッシュ幅が15%、400μmメッシュ幅が12%、500μmメッシュ幅が15%、600μmメッシュ幅が20%、710〜850μm幅が25%)。この粉末の特性を表4に示す。
【0163】
表4:
【表4】

【0164】
試験方法:DSCによる融点の測定:
装置:
FRS5セラミックセンサ及び分銀炉(150〜700℃)を有するMettler Toledo社製のDSC 820。
【0165】
原理:
固体状態から液体状態への相転移温度(温度範囲)を測定する。実際には、分析する物質のサンプルを常圧下で加熱し、溶融の開始時及び完全に溶融した時の温度を測定する。示差走査熱量測定(DSC)法を使用する。DIN 51 005によると、同じ温度プログラムに同時に供した、サンプルと対照との間の、所定の熱伝導ゾーンの温度差を測定し、熱流の差異を定量的に記録することによる、温度分析法を意味するとして理解される。この熱流を測定し、対照サンプルの温度の関数としてプロットする。比例定数K(すなわち較正係数)は耐熱性に依存し、したがって温度に依存する。それは実験により測定する必要がある。溶融は、エンタルピー変化による吸熱と関係し、晶析(凍結、凝固)は、発熱変化と関係する。
【0166】
融点:
固体相と液体相との間の転移が常圧下で生じるときの温度を、融解温度と呼ぶ。理想的な条件下では、この温度は凍結温度に対応する。多くの物質においては、相転移が一定の温度範囲において生じるため、この転移はしばしば溶融範囲とも呼ばれる。純粋な物質は、1つの有効融点のみを有する(すなわち固体と液体が平衡状態となる温度が1つだけである)。全ての不純物及び他の成分(又は例えば第2若しくは第3の主要成分)との混合により、溶融範囲が変化し、特定の温度範囲にわたり、異なる組成において、2つの相(溶融相及び固体相)が同時に生じる。溶融の開始を、ここでは外挿開始温度によって示す。溶融範囲は、溶融相と固体相が熱力学的平衡の状態にある、有効二相領域を示す。但し、融点のみでは、物質の溶融を表現するのは不十分である。特に、物質が純粋ではなく、幾つかの類似物質、他の物質又は修飾物(多形)の混合物である場合、おそらく同時の融解を示す場合に、全ての溶融過程の記録が示される。広い微結晶溶融範囲を有するプラスチックも、溶融の全ての挙動を測定する必要がある。
【0167】
評価:
熱流差又はこれに割り当てられる温度差を、温度又は時間に対してプロットすることにより、DSC測定データを曲線で示す。この場合、吸熱プロセスからの熱流差を正の縦座標方向にプロットし、発熱プロセスからのそれらを負の縦座標方向にプロットする(DIN 51007を参照)。溶解ピークの評価の際、DIN 51004に従い、以下の温度を使用できる(図4を参照):ピーク開始温度、ピーク外挿開始温度、ピーク最大温度、ピーク外挿終了温度、ピーク終了温度(用語の定義についてはDIN 51005を参照)。ピーク外挿開始温度を、融解温度として計算する。ピーク最大温度(ピークフランクにおいて指数関数的に減少)は、完全(clear)融点(融点終了)に対応し、すなわち融解した物質が懸濁する結晶により濁らない温度である。あるいは最後の結晶融点又は液相点とも呼ばれる。
【0168】
ピークの特徴的な温度の定義(DIN51004より)(図4):
Ti:ピーク開始温度を示す。そこにおいて、外挿された最初のベースラインから測定曲線が離れる。
Te:外挿されたピーク開始温度を示す。そこにおいて、上向きのピークフランクを通る補助線が、外挿された最初のベースラインと交差する。
Tp:ピーク最大温度を示す。そこにおいて、測定曲線と内挿されたベースラインとの差の最大値が示される(必ずしも測定曲線の最大値の絶対値ではない)。
Tc:外挿されたピーク最終を示す。そこにおいて、下向きのピークフランクを通る補助線が、外挿された最終のベースラインと交差する。
Tf:ピーク最終温度を示す。そこにおいて、測定曲線が外挿された最終ベースラインに再度一致する。
【0169】
実際には、ベースラインを、様々な方法(DIN 51007を参照)により、ピーク開始温度とピーク終了温度との間に挿入した。外挿ピーク開始温度及びピーク終了温度を定義する際、ほとんどの場合、ピーク開始とピーク終了との間に直線的に挿入したベースラインを、充分な精度で使用できる。補助線を、変曲接線又は回帰直線として、2つのピークフランクの(ほとんど)直線部分として引いた。2つの方法間の差異は有意ではなく、較正の必要はない。なぜなら、生じた相違が、反復測定分散と比較し、非常に小さかったからである。溶融ピークを、従来法に従い、外挿ピーク開始温度により決定した。
【0170】
3成分混合物の相図の決定:
融点又は溶融範囲(すなわち二相の範囲)を、3成分系の様々な混合物に関して測定した後、これらを、三次元三角図にプロットすることができる。これは、適切な評価用ソフト(例えばWindows(登録商標) Excel(登録商標))を用いて視覚化することができる。測定の結果得られる融点領域は、共晶系においていわゆる共晶の「谷」を形成し、それは特定の位置で交差する(いわゆる3元共晶)。図5aは、三次元三角図による平面等温断面を示す。図5bは、3元共晶による相図の、対応する平面図を示す。図6は、三次元の図を示す。
【0171】
保持(retention)の測定:
保持(CRCと呼ばれている)は、ERT441.2−02に従い測定される。「ERT」は「EDANA推奨試験」を意味し、「EDANA」は「欧州不織布協会」を意味する。
【0172】
圧力に対する吸収力の測定:
0.7psiの圧力に対する吸収力(AAPと呼ばれる)は、ERT442.2−02に従い測定される。
【0173】
粒径の測定:
本発明では、粒径は、ERT420.2−02に従い測定し、本発明で言及した篩を用いた。
【0174】
相組成の測定:
晶析の間の相組成は、HPLCで測定し、%で示した。
【符号の説明】
【0175】
1:バイオマスのフィード
2:合成装置
3:培養液の出口
4:殺菌装置
5:殺菌した微生物を含む培養液の出口
6:濾過装置
7:分離した固体の放出口
8:固体を分離した培養液の出口
9:脱水ステージ
90:膜/フィルタ
91:第1の反応容器
92:少なくとも部分的に反応したヒドロキシプロピオン酸を含む水性相の放出ライン
93:蒸留装置として製造された第2の反応容器
94:水の放出口
95:水、未反応ヒドロキシプロピオン酸及びアクリル酸を含む残渣生成物
96:二酸化炭素の供給ライン
10:アクリル酸、水及び任意に未反応ヒドロキシプロピオン酸を含む水性相の出口
11:更なる構成装置、例えば、
111:更なる濾過装置
112:プロトン化手段
113:吸着手段
114:脱水装置
12:アクリル酸、水及び任意に未反応ヒドロキシプロピオン酸を含む水性相の供給ライン
13:精製装置
131:第1の晶析装置
132:第1の晶析装置において得られた結晶懸濁液の放出ライン
133:第1の分離領域
134:第1の晶析装置において得られた結晶の少なくとも一部を溶融させるための溶融装置
135:輸送手段(例えばポンプ)
136:第1の分離領域の母液から分離した、実質的に水及びアクリル酸を含んでなる結晶の放出ライン
137:溶融装置
138:溶融装置において得られた結晶溶融物の放出ライン
139:第2の晶析装置
1310:第2の晶析装置において得られた結晶懸濁液の放出ライン
1311:第2の分離領域で得られ、実質的に水を含んでなる結晶の放出口
1312:第2の分離領域
1313:第2の分離領域において結晶から分離された母液の放出ライン
1314:第3の晶析装置
1315:第3の晶析装置において得られた結晶懸濁液の放出ライン
1316:第3の分離領域
1317:第3の晶析装置において得られた結晶の少なくとも一部を溶融させるための溶融装置
1318:輸送手段(例えばポンプ)
1319:第1の分離領域において分離された母液の放出ライン
14:精製されたアクリル酸の放出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1) ヒドロキシプロピオン酸を含有する流体F1(特に水性相P1)を準備する段階と、
(a2) ヒドロキシプロピオン酸を脱水してアクリル酸を含有する流体F2(特に水性相P2)を得る段階と、
(a3) アクリル酸を含む流体F2(特に水性相P2)を、晶析によって精製して、精製相を得る段階とを有してなる、アクリル酸の調製方法。
【請求項2】
前記流体F1を、
i) 生物的材料から3−ヒドロキシプロピオン酸を調製して、ヒドロキシプロピオン酸及び微生物を含有する水性相を得る段階と、
ii) 任意に微生物を殺菌する段階と、
iii) 前記水性相から固体分を分離する段階とを有する方法によって得る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記流体F1が、水性溶液であり、特に、
(C1−1)1〜40重量%のヒドロキシプロピオン酸、その塩又はその混合物と、
(C1−2)0.1〜5重量%の無機塩と、
(C1−3)0.1〜30重量%のヒドロキシプロピオン酸とは異なる有機化合物と、
(C1−4)0〜50重量%の固体分と、
(C1−5)20〜90重量%の水と、
を含んでなり、成分(C1−1)から(C1−5)の合計が100重量%である組成を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記脱水が、反応蒸留を有してなる、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記脱水が、少なくとも2つの反応器において実施され、
均一系触媒若しくは不均一系触媒の存在下で、圧力Π1下で、少なくとも1つの第1反応装置R1中の水性相P1を加熱して、アクリル酸を含む第1の水性流体F1−1を得る段階と、
この流体F1−1を更なる反応器R2へ導入する段階と、
触媒の存在下で、圧力Π2下で、反応器R2に導入された流体F1−1を加熱して、流体F1−2を得る段階と、
を含む段階を有してなり、Π2とΠ1が等しくない、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
Π2がΠ1より低い、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ヒドロキシプロピオン酸の脱水を、CO雰囲気若しくは無機酸、又はその両方において実施する、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記晶析が、懸濁晶析又は層晶析である、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記水性相P2を、最大、アクリル酸、水及びヒドロキシプロピオン酸の組成物の3元共晶点温度Tにまで冷却する、請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
少なくとも5重量%のアクリル酸と、
少なくとも40重量%の水と、
最大10重量%のヒドロキシプロピオン酸とを含んでなる第1の結晶相を得る、請求項7又は8記載の方法。
【請求項11】
前記精製を、少なくとも2段階の晶析により実施する、請求項8から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
処理段階(a3)が、以下の部分段階:
(a3−1) 第1の晶析段階において流体F2を晶析して、結晶相K1及び母液M1を得る段階であって、前記結晶相K1が、
5〜60重量%のアクリル酸と、
39.9〜95重量%の水と、
0.1〜10重量%の、水及びアクリル酸とは異なる副産物と、を含んでなり、
アクリル酸、水及び副産物の合計重量が100重量%である段階と、
(a3−2) 母液M1から結晶相K1を分離する段階と、
(a3−3) 第1の晶析段階からの結晶相K1を溶融させる段階と、
(a3−4) 第2の晶析段階において融解した結晶相を再度晶析して、結晶相K2及び母液M2を得る段階であって、前記結晶相K2が、
8〜35重量%のアクリル酸と、
60〜90重量%の水と、
2〜5重量%の、水及びアクリル酸とは異なる副産物とを含んでなり、
アクリル酸、水及び副産物の合計重量が100重量%である段階と、
(a3−5) 好ましくは洗浄カラムにより、母液M2から結晶相K2を分離する段階と、
(a3−6) 第3の晶析段階において母液M2を晶析して、結晶相K3及び母液M3を得る段階であって、前記結晶相K3が、
25〜55重量%のアクリル酸と、
44.5〜70重量%の水と、
0.5〜5重量%の、水及びアクリル酸とは異なる副産物とを含んでなり、
アクリル酸、水及び副産物の合計重量が100重量%である段階と、
(a3−7) 母液M3から、得られるアクリル酸の結晶を含む精製相である結晶相K3を分離する段階とを有してなる、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記処理段階(a3−2)で得られた母液を、段階(a1)へフィードバックする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記精製相が、少なくとも40%の純度でアクリル酸を有する、請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
流体F1のヒドロキシプロピオン酸又は流体F2のアクリル酸を、少なくとも1つの処理段階(a2)又は(a3)を実施する前に、酸の添加によって、プロトン化形態に変換する、請求項1から15のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ヒドロキシプロピオン酸が、2−ヒドロキシプロピオン酸である、請求項1から15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ヒドロキシプロピオン酸が、3−ヒドロキシプロピオン酸である、請求項1から15のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
流体輸送ラインによって互いに連結された、
ヒドロキシプロピオン酸の調製用の合成装置と、
それに続く、ヒドロキシプロピオン酸のアクリル酸への変換用の脱水ステージと、
それに続く、晶析装置とを有する、アクリル酸の調製装置。
【請求項19】
前記脱水ステージが、圧力反応器として設けられている、請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記脱水ステージが、流体輸送ラインによって互いに連結された少なくとも2つの反応器R1及びR2を有し、それらの一方(R1)が、圧力Π1で加圧でき、他方(R2)が、圧力Π2で加圧でき、圧力Π1と圧力Π2が異なる、請求項15又は16記載の装置。
【請求項21】
前記晶析装置が、懸濁晶析装置又は層晶析装置である、請求項18から20のいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
前記精製装置が、流体輸送ラインによって互いに連結された以下の構成要素:
(d1) 第1の晶析領域、第2の晶析領域、第3の晶析領域、第1の分離領域、第2の分離領域、第3の分離領域、少なくとも1つの溶融装置及び少なくとも6本の導管を有してなり、
(d2) 第1の晶析領域が、第1の導管を介して第1の分離領域に連結し、
(d3) 第1の分離領域が、第2の導管を介して少なくとも1つの溶融装置に連結し、
(d4) 少なくとも1つの溶融装置が、第3の導管を介して第2の晶析領域に連結し、
(d5) 第2の晶析領域が、第4の導管を介して領域を第2の分離領域に連結し、
(d6) 第2の分離領域が、第5の導管を介して第3の晶析領域に連結し、
(d7) 第3の晶析領域が、第6の導管を介して領域を第3の分離領域に連結している、請求項18から21のいずれか1項記載の装置。
【請求項23】
前記第1の分離領域が、流体輸送ラインにより、脱水ステージに連結している、請求項22記載の装置。
【請求項24】
請求項18から23のいずれか1項記載のアクリル酸の調製装置と、アクリル酸の重合用の重合反応器、特にアクリル酸のラジカル重合用の重合反応器とを含んでなる、ポリアクリレートの調製装置。
【請求項25】
請求項18から24のいずれか1項記載の装置が使用される、請求項1から17のいずれか1項記載のアクリル酸の調製方法。
【請求項26】
請求項1から17、又は請求項25のうちのいずれか1項記載の方法で得られたアクリル酸を重合させる、ポリアクリレートの調製方法。
【請求項27】
請求項1から17、又は請求項25のいずれか1項記載の方法で得られたアクリル酸。
【請求項28】
請求項26記載の方法で得られたポリアクリレート。
【請求項29】
吸水性ポリマー構造である、請求項28記載のポリアクリレート。
【請求項30】
請求項1から17、又は請求項25のいずれか1項記載の方法で得られるアクリル酸又はその誘導体を主成分とする、繊維、フィルム、成形組成物、織物及び革製品用の補助剤、凝集剤、コーティング若しくはラッカー。
【請求項31】
請求項1から17、又は請求項25のいずれか1項記載の方法で得られるアクリル酸又はその誘導体の、繊維、フィルム、成形組成物、織物及び革製品用の補助剤、凝集剤、コーティング又はラッカーへの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−501526(P2010−501526A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525070(P2009−525070)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058744
【国際公開番号】WO2008/023039
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(508004236)エボニック・シュトックハウゼン・ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】