説明

ヒドロゲル

本発明は、水とポリエチレングリコールジメタクリラートとを重合した形で含有するヒドロゲルに関するものであり、この際ポリメタクリラートブロックは非常に短いのでこれらは固有の相を形成しない。さらに本発明は、これらのヒドロゲルの製造方法に関する。これらのヒドロゲルは僅かな曇り度を有し、コンタクトレンズ材料、電気泳動ゲル、膜材料及び消音材として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリエチレングリコールジメタクリラートを基礎とするヒドロゲル、並びにこれらの製造、及びコンタクトレンズ、電気泳動ゲル、膜材料及び消音材としてのこれらのヒドロゲルの使用に関する。
【0002】
従来技術
今日、合成ヒドロゲルは、主としてポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及び例えばポリアクリルアミド又はポリヒドロキシエチルメタクリラートのようなそれらの誘導体、並びにポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンを基礎とする。US4684558によれば、ポリエチレングリコールヒドロゲルは、ポリエチレングリコール水溶液に高エネルギー放射を作用させて製造することができる。メタクリラートの優れた相溶性及び低い刺激作用ゆえに、ポリ(メタ)アクリラートの群の中でアクリラートがメタクリラートに置換される傾向がある。しかしながら、この際ポリメタクリラート鎖のより高い剛性が種々の適用の妨げとなる。それゆえに、US5397449において、例えばグリセリンモノメタクリラートのようなヒドロキシエステル、及び低い割合のポリエチレングリコールジメタクリラートを基礎とする電気泳動ゲルが記載される。しかしながら、このポリメタクリラート網目構造内でのたんぱく質の泳動は、従来使用されたポリアクリルアミドゲル内よりも明らかに遅い。
【0003】
コンタクトレンズ材料の領域においても、ポリメタクリラート鎖の剛性が問題を引き起こす。例えばDE3800529から公知のように、ヒドロゲルコンタクトレンズ及び眼内レンズは、これらが生体組織より柔らかい場合に相溶性が最も良い。たしかに、ポリヒドロキシエチルメタクリラートは水60〜90%により膨潤平衡の状態において非常に柔らかく調整できるが、しかしながら、可塑剤としての水のこの高い含有率が機械的強度を低くする要因となる。それ以外に、高含水量の材料の屈折率を低くするためには、とりわけ厚いレンズが必要である。このためより長くなった拡散経路が、角膜に向かう空中酸素の透過を阻害する。
【0004】
原則的に、ポリエチレングリコールジメタクリラートの高い含有率を有するヒドロゲルは、非常に柔らかいヒドロゲルを構成するのに適している。それというのも、約−50℃のガラス転移温度を有するポリエチレングリコール鎖は非常に動きやすいからである。それゆえに、例えばコンタクトレンズ用のヒドロゲルの製造の場合、ポリエチレングリコールジメタクリラートが僅かな量しか使用されないことは、ひと目見ただけでは理解できない。例えばJP61166516において、3質量%までのポリエチレングリコールジメタクリラートを有するコンタクトレンズが記載される。種々の適用において観察されうる、ヒドロゲル調製物におけるポリエチレングリコールジメタクリラートの少量への制限は、ポリエチレングリコールジメタクリラートの重合挙動から導き出すことができる。この場合、例えばA.Reicheの大学教授の資格論文を挙げることができる:「ポリマーゲル電解液における電荷移動」ハレ大学(Saale)2001(インターネット上でもhttp://sundoc.bibliothek.uni−halle.de/habil−online/01/01H056/t6.pdfで調べることができる)。厳密に言うと、これによればオリゴエチレングリコールメタクリラートのラジカル重合から均質構造は生まれない。重合の過程において、まずモノマーに溶けるミクロゲルが最初に生成する。その後の過程において、この凝集体は架橋してマクロゲルになる。
【0005】
たいていの場合、この複雑な重合過程は、可塑剤又は溶剤の添加により支配することができる。例えばReicheは、ポリエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレンカーボナートを可塑剤として添加している。
【0006】
DE69314184によれば、可塑剤としてのポリエチレンオキシドジメタクリラートとポリエチレングリコールとから構成されているポリオキシエチレン感圧接着剤が記載される。
【0007】
JP02102213によれば、ポリエチレングリコールジメタクリラートとエチレングリコールとからなる混合物を、過硫酸アンモニウムと混合した後、水漏れをシールするために例えばトンネルの中で使用する。この材料は無毒で優れた弾性を示す。
【0008】
課題と解決策
依然として、柔らかく弾性のあるヒドロゲルを構成するために、ポリエチレングリコール鎖の低いガラス転移温度(Tg:−50℃)及び該鎖の高い連鎖移動性を利用する、ポリエチレングリコールジメタクリラートを基礎とするほぼ可塑剤を含有しない均質で光学的に清澄なヒドロゲルに対する要求が存在する。この際とりわけ、ポリエチレングリコールジメタクリラートの水溶液の単なる重合により、ポリエチレングリコールジメタクリラートヒドロゲルを直接得ることが可能となる方法が所望される。
【0009】
ところで、ポリエチレングリコールジメタクリラートの水溶液の重合を、定義された、限られた条件下で実施し、この際極性媒体の水の中のポリエチレングリコールジメタクリラートの複雑な溶解挙動を考慮すると、主成分としてポリエチレングリコールジメタクリラートを基礎とする、良好な光学的及び機械的特性を有するヒドロゲルを実現できることが判明した。前試験が示すように(実施例を参照のこと)、ポリエチレングリコールジメタクリラートの水溶液は、種々の非イオン界面活性剤に関して公知の溶解挙動を示す。例えばポリエチレングリコールジメタクリラートは、低い温度の場合、水の中で非常に良く溶ける(ポリエチレングリコール鎖の水和作用ゆえに)。温度が上昇する場合、この水和作用はより弱まり分離が観察される。当然、分離の温度(=曇り点)はポリエチレングリコール鎖が長くなるにつれて高くなる。例えば平均鎖長n=9を有するポリエチレングリコールジメタクリラートの10%溶液は、38℃の曇り点を示す。n=23を有するポリエチレングリコールジメタクリラートにおいて相当する分離温度は、約90℃である。興味深いことに、これらの曇り点は水不溶性成分、例えばドデカンチオールのような水不溶性調節剤を少量添加することにより著しく低下する。非常に短鎖のポリエチレングリコールジメタクリラートの混合物は、類似の作用を示す。例えばn=23を有するポリエチレングリコールジメタクリラートの曇り点は、テトラエチレングリコールジメタクリラート12%の添加により約90℃から<25℃に下がる。
重合過程におけるこの分離傾向は、とりわけ重要であると見られる。例えばn=9を有するポリエチレングリコールジメタクリラートの10%溶液の重合により、25℃で沈殿重合において、光学的な適用に適さない白色のヒドロゲルが生じる(比較例1)。
【0010】
ところで、
A)式(1)によるポリエチレングリコールジメタクリラート80〜100部
(1)CH=CCHCOO−(−CH−CH−O−)−COCCH=CH n=7〜500、
B)(1)と共重合可能なビニルモノマーB20〜 0部及び、
C)水100〜10000部、
からなる混合物をラジカル生成剤の添加により重合し、この際重合を、(1)によるポリエチレングリコールジメタクリラートの10%溶液の曇り点を少なくとも15℃下回って水の中で実施する場合、良好な機械的及び光学的特性を有するヒドロゲルを得られることが判明した。
【0011】
重合を、10%溶液の曇り点を少なくとも40℃、又は有利に少なくとも60℃下回って実施する場合、特別な利点が生じる。有利に、ポリエチレングリコールジメタクリラートのエチレンオキシドの含有率は、式(1)によるn=8〜200の範囲で、又は有利に12〜100の間で存在する。とりわけ有利なのは、エチレンオキシドの含有率がn=16〜60、又はとりわけ20〜40の範囲で存在するポリエチレングリコールジメタクリラートである。一般的にこの記載値は平均値である。鎖長がある程度の分布幅を持つことは非常に有利である。それゆえに、エチレンオキシドの含有率が上記の範囲で存在するポリエチレングリコールジメタクリラート、また相当する市販製品も使用することができ、この際ポリエチレングリコールは一部、ポリエチレンオキシドとよばれ、相当してPEG又はPEOともよばれる。とりわけ、Degussa/Roehmメタクリラートの市販製品が特に重要である:
PEG400DMA=ポリエチレングリコール400−ジメタクリラート(n=9)、PEG600DMA=ポリエチレングリコール600−ジメタクリラート(n=14)並びにPEG1000DMA=ポリエチレングリコール1000−ジメタクリラート(n=23)もしくは水中で60%のこの製品の溶液(Plex6874−O)(R)
この際、例えばこれらのヒドロゲルを消音材として使用するために、これらの製品を混合することは非常に有利であり得る。とりわけ短鎖のポリエチレングリコールジメタクリラート(n<6又は有利にn<5)の含有率が<10%もしくは有利に<2%であることは重要である(そのつど調製物におけるポリエチレングリコールジメタクリラートの全含有率に対して)。
【0012】
ポリメタクリラートブロックの鎖長を重合調節剤の添加により限定するか、又は高いラジカル流(つまり高濃度の開始剤又は活性剤)により限定する場合、とりわけ高価なヒドロゲルが得られる。これは重合の過程における分離傾向を軽減するためにとりわけ有効な措置である。当業者に公知のように、遊離基は熱による酸化還元法もしくは光化学法を用いるか、又は高エネルギー放射を作用させて製造することができる。適切な熱開始剤は、とりわけアゾ化合物、ペルオキシド及び過硫酸塩である。ペルオキシド及び過硫酸塩を、アスコルビン酸又は亜硫酸水素塩化合物のような還元剤、及び場合により鉄のような遷移金属塩と組み合わせて使用する場合、遊離基の酸化還元生成は室温下でも行うことができる。ペルオキソ2硫酸アンモニウム/N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン(APS/TEMED)系は、遊離基生成剤系として特に重要である。
【0013】
通例、使用されるポリエチレングリコールジメタクリラートの量に対して、開始剤を0.1〜10質量%に相当する量で使用する。重合調節剤を使用しない場合には、ポリエチレングリコールジメタクリラート:開始剤のモル比が<200:1、有利には<50:1という規定が妥当である。
【0014】
重合調節剤の使用は特に注目に値する。このような連鎖移動調節剤として、可動性のH−原子を有する化合物、例えばクメンが挙げられるが、しかしまたハロゲンを含有する化合物も使用してよい。有利なのは、硫黄を含有する重合調節剤、とりわけメルカプタン、とりわけ有利なのは水溶性のメルカプタンである。この場合、例えばチオグリコール酸の誘導体、又はチオ乳酸が挙げられる。一般的に、例えばメルカプトエタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールのように単に1のSH−基のみを有するメルカプタンが使用されるが、しかしまた原則的に多価のメルカプタン、例えばジチオエリトリトールを使用することも可能である。この際、調節剤を、使用されるポリエチレングリコールジメタクリラートに対して有利に0〜30モル%の割合で使用する。調節剤のこの含有率が部分的に高いにも関わらず、このようにして製造されたヒドロゲルは一般的に全く無臭である。というのも状況により、この複雑な網目構造内で少なくとも重合が終わろうとする頃に、鎖長調節剤は重合混合物の最も可動性のある成分であり、従って完全に網目構造に組み込まれるからである。メルカプタンの使用により、メタクリルラート鎖の鎖長をかなり良好に制御することができる。例えば、より長い鎖のポリエチレングリコールジメタクリラート(つまり式(1)による多数のn)の場合、調節剤の含有率はより低くてもよい一方で、透明で弾性のあるヒドロゲルを得るためには、とりわけ短鎖のポリエチレングリコールジメタクリラート(つまり式(1)による少数のn)の場合、高い含有率の調節剤が必要であることが判明した。ポリエチレングリコールジメタクリラート:メルカプタンのモル比は、高くともポリエチレングリコールジメタクリラートにおけるエチレンオキシド基の数、つまりnと同程度の大きさであるべきと規定されている。ポリエチレングリコールジメタクリラート/メルカプタンのモル比が<0.5nの場合、とりわけ有利なヒドロゲルが得られ、従って、通例ポリエチレングリコールジメタクリラート/硫黄原子のモル比も<0.5nである。
【0015】
図1に図式的に描写されているように、上記の高いラジカル流もしくは調節剤の含有率によりヒドロゲルを実現する。この際有利に、重合されたメタクリラート鎖は非常に短いので、これらのメタクリラートオリゴマーは固有の相を形成しない。例えば図1によれば、ヒドロゲルの弾性及び可動性は主としてポリエチレングリコールブロックの長さにより規定される。一般的に、メタクリル酸エステルのためのメルカプタンは、1又は1より若干低い移動定数を有するので(例えば3−メルカプト−1,2−プロパンジオール/MMA系において0.6〜0.9)、使用されるメルカプタンの量により、使用されるポリエチレングリコールジメタクリラートの量に比例して、ポリメタクリラートブロックの長さをかなり良好に見積もることができる。ポリメタクリラートブロックは非常に短く、原則的にダイマー、トリマー等までである。このような短いブロックは、本発明によるヒドロゲルの均質性及び光学的透明度を保証する。程度の差はあるものの、ポリメタクリラートブロックは非常に短いので、これらは単にポリエチレングリコール連鎖を遮断する。この結果として、例えばn=23でも非常に粗い網目構造を実現することができ、この際短いメタクリラートブロックがそれ以外のポリエチレングリコール連鎖の臨界結晶化傾向を低減させる。図1は、ヒドロゲルの水含有率がポリエチレングリコールブロックの鎖長に依存していることも示す。n=10を有するヒドロゲルにおいて、1/1〜高くとも1/5の比のポリエチレングリコールジメタクリラート:水から出発する場合、n=20を有する鎖は、既に例えば1/2〜約1/20の明らかにより高い水含有率をもたらし、その一方、n=100を有する鎖はさらにより高い水含有率を可能にする。水/ポリエチレングリコールジメタクリラートの質量比が<n、有利に<0.5nであるべきと規定されている。一般的に、B型モノマーの含有率は、ポリエチレングリコールジメタクリラート100質量部当たり0〜20質量部に制限されている。まず第1に、モノマーBとして1〜18の炭素原子を有するメタクリル酸のアミド及び/又はエステル、例えばメチルメタクリラート又はグリセリンモノメタクリラートが考えられる。メタクリル酸エステルCH=CCHCO−O−(−CH−CH−O−)−Hは、モノマーBとして特に重要であり、この際n=7〜500であり、且つ一般的に、使用されるポリエチレングリコールジメタクリラートのnに相当する。さらに、例えばグリシジルメタクリラートのような反応基を有する重合可能な安定剤もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられるか、又はヒドロゲルの屈折率を高めることができるアリール基を有するモノマーが挙げられる。
【0016】
重合により一度固定されると、機械的及び光学的に優れた特性、例えば良好な弾性、優れた透明度(ASTM1003によれば、曇り度<30%、有利に<10%)、光の透過率>90%(DIN5306)、並びに低着色(黄色値<500、有利に<200及び非常に有利に<100APHA)を有するヒドロゲルが存在する。これらのヒドロゲルは、光学的及び機械的に良好な特性を失うことなく、問題なく本来の分離温度を(曇り点)より高い温度に加熱することもできる。
【0017】
発明は、重合した形で
A)式(1)のポリエチレングリコールジメタクリラート80〜100部
(1)CH=CCHCOO−(−CH−CH−O−)−COCCH=CH n=7〜500、
B)(1)と重合可能なビニル化合物B20〜 0部、
C)水100〜10000部、
を含有するヒドロゲルに関するものでもあり、ASTM1003によれば、これらのヒドロゲルは<30%の曇り度を有することを特徴とする。とりわけ興味深いのは、光の透過率>90%を有するヒドロゲルである。
【0018】
とりわけ本発明は、1:1〜1:0.5nの範囲の水:ポリエチレングリコールジメタクリラートの質量比を有するヒドロゲルに関する。
【0019】
有利なのは、硫黄原子を含有し、且つポリエチレングリコールジメタクリラート/硫黄のモル比が<0.5nであるヒドロゲルである。
【0020】
HO−(−CH−CH−O−)−H型 n=1〜100のポリエチレングリコールの割合が<5質量%、有利に<2質量%である場合、特別な利点が生じる。
【0021】
発明の特別な効果
本発明によるヒドロゲルの機械的及び光学的に優れた特性に基づいて、一連の技術的な適用が生じる。例えばこれらのヒドロゲルはコンタクトレンズ材料として適しており、この際とりわけ、非常に柔らかいレンズを製造することができる。この際屈折率は、水の含有率により、又は高屈折力を有するモノマーBの併用により調整することができる。その上さらに、着色の可能性が存在する。
【0022】
さらに、電気泳動ゲルが挙げられる。これに関して、ポリエチレングリコールブロックの長さ又は水の含有率によるポリエチレングリコール鎖の高い連鎖移動性、並びにほぼ任意の網目構造密度の構築の可能性が挙げられる。例えば小さい分子の分析のために、有利に高い固体含有率を有する網目構造及びnについて小さな値が選ばれ、その一方で有利に大きい分子の分離のために、メッシュ幅の広い網目構造が選ばれる。
【0023】
その上さらに、膜として、又は膜、例えば透析膜の構成要素としての適用が生じる。
【0024】
本発明によるヒドロゲルの高い可動性、網目構造密度の大きな変法可能性、及び水の可能な高い含有率により、これらのヒドロゲルを例えば消音材としての遮断材料として使用することもできる。
【0025】
全てのこれらの適用において、ポリエチレングリコールジメタクリラートの少ない毒性に基づいて、ヒドロゲルの合成を、例えば水溶液を適切な成形用の型に流し込むことで直接使用者において行えることは有利である。この際ヒドロゲルを、適用事例に応じて重合過程の後で成形用の型から取り出してよく、もしくは例えば広い表面積の消音材の適用の場合のように、直接型の中に例えば2枚のガラス板の間に留まってもよい。
【0026】
まさに、コンタクトレンズ又は電気泳動ゲルの製造にとっては、ポリエチレングリコールジメタクリラートの水溶液がオリゴマー調製物であり、この際重合可能な割合、つまり主としてメタクリル基が比較的少ないことは有利である。それゆえに、例えばポリエチレングリコール1000−ジメタクリラート(式(1)におけるn=23)10%を含有する調製物は、単に混合物1kg当たりメタクリラート単位0.17モルの含有率を持つにすぎない。これにより、断熱条件下でもわずか2.5℃の重合過程による加熱が算出される。10%のアクリルアミド調製物の場合、重合条件によるこの加熱の大きさは約10倍である。
【0027】
同様にして、重合収縮の場合の比率が存在する。これはメタクリラート単位の低い濃度に基づいて、非常に低い。両方の要因:低い重合熱及び低い重合収縮により流し込型の中でヒドロゲルの優れた成形が可能になる。一般的に、可能な限り低度に安定化されたポリエチレングリコールジメタクリラートを使用する。通例、例えばヒドロキノンモノメチルエーテルのような重合抑制剤の割合は、使用するポリエチレングリコールジメタクリラートに対して<400ppm、又は有利に200ppmもしくは全調製物に対して<100ppm、又は有利に<20ppmであるべきである。
【0028】
一般的に、流し込成形する前に重合混合物をガス抜きし、直接重合するか、又は保護ガス(例えば窒素)下で重合することが推奨される。しかしながら、多くの場合、ガス抜き、又は保護ガス下での作業は全く必要でない。有利に、可能な限り低い温度で酸化還元条件下において実施される本来の重合過程に引き続き、重合を完了させるためにヒドロゲルをテンパリングするか、又は数分間ないし例えば24時間まで室温で成形用の型に放置する。
【0029】
実施例
以下の実施例は本発明を詳細するものであるが、しかしながら制限として理解されるべきではない。
【0030】
前試験
以下の前試験は、水の中でのポリエチレングリコールジメタクリラートの複雑な溶解挙動を具体的に示す。これに関して、ポリエチレングリコールジメタクリラート1g又は相当するポリエチレングリコールジメタクリラート混合物を、水9gの中で溶解するかもしくは水9gと混合し分離温度(曇り点)まで加熱する。
【0031】
ポリエチレングリコールジメタクリラートの組成
【0032】
【表1】

【0033】
以下の実施例において、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの開始剤を、水中10%の溶液として使用する。実施例における記載値は、使用された固体に対するものである。ポリエチレングリコールジメタクリラート(DMA)/水の比に関する記載値は質量記載値であり、ポリエチレングリコールジメタクリラート(DMA)/調節剤の比に関する記載値はモルの記載値である。濁り(曇り度)は%(ASTM1003)で記載される。光の透過率の測定はDIN5036により行う。黄色度APHAは、DIN53409により測定する。
【0034】
比較例(本発明によらない)
水/DMA=6.0、 DMA/調節剤=7.2 0.5n−限界値:4.5
曇り点付近での重合。
水8.5gの中のポリエチレングリコールジメタクリラート(n=9)1.4g(2.5ミリモル)(=Degussa/RoehmメタクリラートのPEG400DMA)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.022g、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール0.038g(0.35ミリモル)の溶液を、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン0.022gと混合し、ガラス型に流し込み、且つガス抜きする(約30mbarの真空)。ガス抜き直後にバッチを、約25〜30℃の温度で重合する。光学的な適用に不適切な純白の、弾性のあるヒドロゲルが得られる。
【0035】
実施例1
水/DMA=8.7 DMA/調節剤=3.0 0.5n−限界値:11.5
曇り点を約85℃下回る重合。
Degussa/RoehmメタクリラートのPlex6874−O(R)1.760g(水の中のPEG1000DMAの60%の溶液)(=水0.704gの中のポリエチレングリコールジメタクリラート(n=23)1.056g(0.9ミリモル))、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.021g及び3−メルカプト−1,2−プロパンジオール0.033g(0.3ミリモル)とからなる混合物を、約5℃でN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン0.028gと混合し、ガス抜きし且つ5℃でアルゴン下において重合する。離型後、光学的な適用において且つ電気泳動ゲルとして適している無色透明で、輝きのある弾性のあるヒドロゲル(光の透過率>90%、曇り度<10%)が得られる。
【0036】
実施例2
水/DMA=3.9 DMA/調節剤=1.9 0.5n−限界値:12.5
曇り点を約80℃下回る重合。
水7.825gの中のポリエチレングリコールジメタクリラート(nが約25)2.0g(1.6ミリモル)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.026g及び3−メルカプト−1,2−プロパンジオール0.091g(0.84ミリモル)の溶液を、約5℃でN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン0.022gと混合し、ガス抜きし且つ5〜10℃で保護ガスとしてのアルゴン下において重合する。良好な強度及び弾性を示す無色で、ガラスのように明澄なヒドロゲルを得る。このヒドロゲルはよく切れ、これは電気泳動ゲルとして且つ光学的な適用のために適している。これは>90%の光の透過率及び<10%の曇り度を有する。
【0037】
実施例3
水/DMA=4.6 0.5n−限界値:11.5
曇り点を約70℃下回る酸化還元系による重合。
Degussa/RoehmメタクリラートのPlex6874−O(R)3.0g(水の中のPEG1000DMAの60%の溶液)(=水1.2gの中のポリエチレングリコールジメタクリラート(n=23)1.8g(1.54ミリモル))、水の中のペルオキソ二硫酸カリウムの1%の溶液3.0g、水の中の亜硫酸水素ナトリウムの1%の溶液1.0g及び水3.0gからなる混合物を、水の中の硫酸鉄(II)100ppmの溶液40μl及び1nの硫酸20μlと混合し、ガス抜きし且つ約20℃でアルゴン下において重合する。ガス抜き直後に重合が開始する。清澄で、安定したヒドロゲルが得られる。
【0038】
実施例4
水/DMA=3.4 DMA/調節剤=3.7 0.5n−限界値:4.5
曇り点を約20℃下回る重合。
ポリエチレングリコールジメタクリラート(n=9)2.261g(4.11ミリモル)(=Degussa/RoehmメタクリラートのPEG400DMA)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.021g、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール0.121g(1.12ミリモル)及び水7.887gを、氷水で冷却しながら混合し、ガス抜きし、アルゴンで被覆して15〜20℃で重合する。僅かな青味(ティンダル)を有する、機械的に良好な特性(弾性で、曲げ性のある)を有する清澄なヒドロゲルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明によるヒドロゲルの化学的構造を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合した形で
A)式(1)によるポリエチレングリコールジメタクリラート80〜100部
(1)CH=CCHCOO−(−CH−CH−O−)−COCCH=CH n=7〜500、
B)(1)と共重合可能なビニル化合物B20〜 0部及び、
C)水100〜10000部、
を含有するヒドロゲルにおいて、前記ヒドロゲルが曇り度<30%を有することを特徴とするヒドロゲル。
【請求項2】
前記ヒドロゲルが、水/ポリエチレングリコールジメタクリラートの質量比を1/1〜0.5n/1の範囲で有することを特徴とする、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項3】
前記ヒドロゲルが、硫黄を含有し、且つポリエチレングリコールジメタクリラート/硫黄原子のモル比が<0.5nであることを特徴とする、請求項1又は2記載のヒドロゲル。
【請求項4】
コンタクトレンズ材料としての、請求項1から3までのいずれか1項記載のヒドロゲルの使用。
【請求項5】
電気泳動ゲルとしての、請求項1から3までのいずれか1項記載のヒドロゲルの使用。
【請求項6】
膜材料としての、請求項1から3までのいずれか1項記載のヒドロゲルの使用。
【請求項7】
消音材としての、請求項1から3までのいずれか1項記載のヒドロゲルの使用。
【請求項8】
請求項1から3までのいずれか1項記載のヒドロゲルの製造方法において、
式(1)によるポリエチレングリコールジメタクリラート80〜100部
(1)CH=CCHCOO−(−CH−CH−O−)−COCCH=CH n=7〜500、
(1)と重合可能なビニル化合物B20〜 0部、及び
水100〜10000部からなる混合物をラジカル生成剤の添加下に重合し、この際重合を(1)によるポリエチレングリコールジメタクリラートの10%の溶液の曇り点を少なくとも15℃下回って水の中で実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のヒドロゲルの製造方法。
【請求項9】
ポリエチレングリコールジメタクリラート/開始剤のモル比が<200/1であることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
重合をメルカプタンの存在下で実施し、この際さらに、ポリエチレングリコールジメタクリラート/メルカプタンのモル比が<0.5nであることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項11】
調節剤として、ヒドロキシル基を含有する水溶性のメルカプタンを使用することを特徴とする、請求項10記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−506823(P2007−506823A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527330(P2006−527330)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010519
【国際公開番号】WO2005/030820
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (293)
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】