説明

ヒュージブルリンクユニット

【課題】ヒュージブルリンクユニットに設けられている温度上昇抑制部位における温度の上昇を、簡素な構成で抑制することができるヒュージブルリンクユニットを提供する
【解決手段】バッテリー端子5に接続されるヒュージブルリンクユニット1において、第1のヒュージブルリンク19と、発熱部21を備えた第2のヒュージブルリンク23と、各ヒュージブルリンク同士をお互いに接続し、第2のヒュージブルリンクの発熱部で生じた熱の第1のヒュージブルリンクへの熱伝導を抑制する熱抵抗部25とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒュージブルリンクユニットに係り、特に、自動車等のバッテリー端子の近傍に設置されて使用されるヒュージブルリンクユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のヒュージブルリンクユニット(自動車用大電流ヒューズ)200の概略構成を示す斜視図である。
【0003】
特許文献1に示すヒュージブルリンクユニット200は、可溶ヒューズ(可溶部)202を有すると共に、端子接続部204,206を両端に有する導体板を樹脂ケース210にインサート成形してなるものである。
【0004】
ヒュージブルリンクユニット200では、樹脂ケース210の外面に、通電時に可溶ヒューズ202および導体板208で発生した熱を外気へ放出する放熱部212を設けてある。放熱部212は、樹脂ケース210に等間隔で配置された複数の薄板(フィン)214で構成されている。また、樹脂ケース210の強度を向上させるために、薄板214が通電方向(J方向)に平行に配置されている。
【0005】
そして、可溶ヒューズ202を導体板208の両端部から遠ざけるために、導体板208の中間部に相対向する一対の補助板を一体で形成すると共に、一体の補助板の間に可溶ヒューズ202を架設してある。一体の補助板の間に架設された可溶ヒューズ202は、導体板208への通電方向に対して直交している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−164111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のヒュージブルリンクユニット200では、温度上昇を抑制するために、樹脂ケース210にフィン214を設け、ヒュージブルリンクユニット200で発生する熱をフィン214により外気に逃がしている。
【0008】
そして、ヒュージブルリンクユニット200のほぼ全体を冷却することにより、ヒュージブルリンクユニット200の発熱部で生じた熱で、ヒュージブルリンクユニット200に設けられている温度上昇抑制部位(温度上昇を抑制すべき部位;温度上昇を低減させたい領域)の温度が上昇することを防いでいる。
【0009】
しかしながら、樹脂ケース210にフィン214を設けることによって、ヒュージブルリンクユニット200の構成が煩雑になるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ヒュージブルリンクユニットに設けられている温度上昇抑制部位における温度の上昇を、簡素な構成で抑制することができるヒュージブルリンクユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、バッテリー端子に接続されるヒュージブルリンクユニットにおいて、第1のヒュージブルリンクと、発熱部を備えた第2のヒュージブルリンクと、前記各ヒュージブルリンク同士をお互いに接続し、前記第2のヒュージブルリンクの発熱部で生じた熱の前記第1のヒュージブルリンクへの熱伝導を抑制する熱抵抗部とを有するヒュージブルリンクユニットである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、バッテリー端子に接続されるヒュージブルリンクユニットにおいて、第1の部位と、発熱部を備えた第2の部位と、前記各部位をお互いに接続し前記第2の部位の発熱部で発生した熱が前記第1の部位へ伝導することを抑制する熱抵抗部とを備えたバスバーと、前記バスバーを覆っている樹脂ボディとを有するヒュージブルリンクユニットである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、前記発熱部が前記第1の部位の下方に位置しているヒュージブルリンクユニットである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、前記熱抵抗部は、前記第1の部位と前記第2の部位との境界部に設けられた孔、切り欠きの少なくともいずれかで構成されているヒュージブルリンクユニットである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヒュージブルリンクユニットに設けられている温度上昇抑制部位における温度の上昇を、簡素な構成で抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るヒュージブルリンクユニットの概略構成を示すと共に、ヒュージブルリンクユニットをバッテリーのバッテリー端子に接続した状態を示す図である。
【図2】ヒュージブルリンクユニットに使用されているバスバーの概略構成を示す斜視図である。
【図3】熱抵抗部である貫通孔を設けた場合におけるバスバーの熱分布を示す図である。
【図4】熱抵抗部を設けていない場合におけるバスバーの熱分布を示す図である。
【図5】発熱部による空気の対流を示す図である。
【図6】従来のヒュージブルリンクユニットの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るヒュージブルリンクユニット1の概略構成を示すと共に、ヒュージブルリンクユニット1をバッテリー3のバッテリー端子5に接続した状態を示す図である。
【0018】
なお、図1では、ヒュージブルリンクユニット1は、バッテリー端子接続用スタッドボルト7を用いてバッテリー端子5に設置されている。また、ヒュージブルリンクユニット1には、スタータモータ端子(スタータモータ用配線)9とオルタネータ端子(オルタネータ用配線)11と、その他の電気機器の配線13とが接続されている。
【0019】
図2は、ヒュージブルリンクユニット1に使用されているバスバー15の概略構成を示す斜視図である。
【0020】
ヒュージブルリンクユニット1は、自動車等のバッテリー3のバッテリー端子5に接続されて固定され、たとえば、バッテリー3の近傍に配置されて使用されるものであり、第1のヒュージブルリンク19と第2のヒュージブルリンク23と熱抵抗部25とを備えて構成されている(図1参照)。
【0021】
第1のヒュージブルリンク19には、温度上昇を避けたい部位(温度上昇抑制部位;温度上昇を抑制すべき部位;温度上昇を低減させたい領域)17が設けられており、第2のヒュージブルリンク23には、発熱部21が設けられている。熱抵抗部25は、各ヒュージブルリンク19,23同士をお互いに電気的におよび機械的に接続していると共に、第2のヒュージブルリンク23の発熱部21で生じた熱が、第1のヒュージブルリンク19の温度上昇抑制部位17へ熱伝導することを抑制するものである。
【0022】
さらに詳しく説明すると、ヒュージブルリンクユニット1は、バスバー15とこのバスバー15の所定の領域を覆っている樹脂ボディ27,29とを備えて構成されている。
【0023】
バスバー15は、図2で示すように、金属等の導電性を備えた材料で構成されており、温度上昇抑制部位である第1の部位(たとえば、スタータモータ側平板状部)17と、発熱部21の例である可溶部(ヒューズエレメント)31を備えた第2の部位(たとえば、タブ端子側平板状部)33と、各部位17,33の間に設けられて各部位17,33をお互いに電気的におよび機械的に接続し、第2の部位33の発熱部21(可溶部31)で発生した熱が第1の部位17へ伝導することを抑制する熱抵抗部25とを備えて構成されている。
【0024】
なお、第2の部位の例であるタブ端子側平板状部33は、基端部側平板状部35と先端部側平板状部37とを備えており、基端部側平板状部35と先端部側平板状部37とを可溶部31がお互いにつないでいる。基端部側平板状部35は、スタータモータ側平板状部17側に位置しており、先端部側平板状部37は、電気機器の配線が接続されるタブ端子39を構成している。熱抵抗部25は、スタータモータ側平板状部17と基端部側平板状部35との間に設けられている。
【0025】
また、バスバー15には、バッテリー側平板状部41とオルタネータ側平板状部43とが設けられている。バッテリー側平板状部41とスタータモータ側平板状部17とは可溶部45によって接続されている。バッテリー側平板状部41とオルタネータ側平板状部43とは可溶部47によって接続されている。
【0026】
バッテリー側平板状部41の先端部側には、電気機器の配線が接続されるタブ端子39を構成する平板状部49が設けられており、この平板状部49とバッテリー側平板状部41とは、可溶部51によって接続されている。
【0027】
なお、バスバー15では、バッテリー側平板状部41と可溶部51と平板状部49とを間にして、一方の側に、可溶部45とスタータモータ側平板状部17と熱抵抗部25と第2の部位33とが位置しており、他方の側に可溶部47とオルタネータ側平板状部43とが位置している。
【0028】
また、スタータモータ側平板状部17と基端部側平板状部35との間、および、バッテリー側平板状部41の中間部には、屈曲部53が形成されており、この屈曲部53の内に存在している直線状の曲げ線55の箇所で、バスバー15が曲げられるようになっている。
【0029】
また、バスバー15は、平板状の金属等の素材をプレス成形することによって形成されており、絶縁性の樹脂材料で構成された樹脂ボディ27,29は、たとえばインサート成形によって、バスバー15に一体的に設けられて、屈曲部53やたとえば熱抵抗部25が露出するように、バスバー15の所定の領域を覆っている。
【0030】
なお、バスバー15への樹脂ボディ27,29の設置は、バスバー15が曲げ線55の箇所で曲げられておらず、プレス成形によってスタータモータ側平板状部17等が形成されてバスバー15が平板状になっている状態でなされる。これにより、インサート成形を容易に行うことができる。
【0031】
なお、すでに理解されるように、樹脂ボディ27と樹脂ボディ29とは熱抵抗部25や屈曲部53のところで、お互いに離れている。
【0032】
ところで、バスバー15のバッテリー側平板状部41の中央部には、バッテリー端子接続部(バッテリー端子接続用貫通孔;バッテリー側平板状部41の厚さ方向を貫通している孔)57が設けられており、スタータモータ側平板状部17の中央部には、スタータモータ端子接続部(スタータ端子接続用貫通孔;スタータモータ側平板状部17の厚さ方向を貫通している孔)59が設けられており、バスバー15のオルタネータ側平板状部43の中央部には、オルタネータ端子接続部(オルタネータ端子接続用貫通孔;オルタネータ側平板状部43の厚さ方向を貫通している孔)61が設けられている。
【0033】
そして、樹脂ボディ27は、可溶部45,47と各貫通孔57,59,61およびこの周辺部と、熱抵抗部25や屈曲部53のところでバスバー15が露出するようにして、バスバー15の一方の側でバスバー15を覆っている。
【0034】
また、樹脂ボディ29は、可溶部31,51とタブ端子39,49と熱抵抗部25や屈曲部53のところでバスバー15が露出するようにして、バスバー15の他方の側でバスバー15を覆っている。
【0035】
さらに、説明すると、バスバー15は、屈曲部53内に位置している曲げ線55のところで、バスバー15をこの厚さ方向に曲げた形状(たとえば、「L」字状)に形成される。なお、曲げ線55のところで、曲げる前にあっては、樹脂ボディ27,29が設けられたヒュージブルリンクユニット1は、ほぼ平板状に形成されており、曲げ線55のところで曲げることにより、ヒュージブルリンク19とヒュージブルリンク23とで、ヒュージブルリンクユニット1が「L」字状になる。
【0036】
熱抵抗部25は、第1の部位(スタータモータ側平板状部)17と第2の部位33(基端部側平板状部35)との境界部(屈曲部53の箇所もしくはこの近傍の箇所)に設けられた孔(たとえば、境界部の厚さ方向を貫通している貫通孔)63で構成されている。この貫通孔63が設けられていることにより、スタータモータ側平板状部17と基端部側平板状部35とは、これらの幅方向の両端部に存在する幅の狭い接続部65A,65Bでつながっている。
【0037】
そして、スタータモータ側平板状部17と基端部側平板状部35とをお互いに結ぶ方向に対して直交している平面による境界部の断面積(貫通孔63等が設けられている箇所65A,65Bの断面積)が、前記平面によるスタータモータ側平板状部17の断面積や基端部側平板状部35の断面積よりも小さくなっている。つまり、基端部側平板状部35からスタータモータ側平板状部17に流れる熱の流路を構成している前記境界部では、貫通孔63が設けられていることによって、前記境界部における熱流路の断面積が他の部位におけるものよりも小さくなっており、熱の伝導が抑制されている。
【0038】
貫通孔63は、細長い長方形状に形成されており、長手方向が曲げ線55の延伸方向でと一致するようにして、曲げ線55の近傍に設けられており、曲げ線55から僅かに離れていて曲げ線55とは干渉していないが、貫通孔63と曲げ線55とが干渉していてもよい。たとえば、貫通孔63の幅方向の中央部を曲げ線55が通っていてもよい。また、貫通孔63は、樹脂ボディ27,29で覆われていないが、貫通孔63の総てもしくは一部が、樹脂ボディ27もしくは樹脂ボディ29で覆われていてもよい。
【0039】
なお、貫通孔63に代えてもしくは加えて、切り欠き(前記境界部の厚さ方向を貫通している切り欠き孔)を設け、もしくは、前記境界部を熱伝導率の悪い別の材料で構成してもよい。境界部を熱伝導率の悪い別の材料で構成した場合には、スタータモータ側平板状部17と前記境界部とを溶接等の接合手段でお互いに接続し、前記境界部と基端部側平板状部35とを溶接等の接合手段でお互いに接続すればよい。
【0040】
また、ヒュージブルリンクユニット1がバッテリー端子5に設置された状態では、発熱部21が第1の部位(スタータモータ側平板状部)17や熱抵抗部25よりも、重力が作用する方向で下方に位置している。さらに、平面視においては、発熱部21が第1の部位17からたとえば僅かではあるが離れており、発熱部21の上に第1の部位17が位置していることはない。
【0041】
次に、ヒュージブルリンクユニット1をバッテリー端子5に設置して使用したときにおける熱の伝導について説明する。
【0042】
図3は、熱抵抗部25である貫通孔63を設けた場合におけるバスバー15における熱分布を示す図であり、図4は、熱抵抗部25を設けていない場合におけるバスバー15Zにおける熱分布を示す図である。なお、図3、図4は、平衡状態を示している。
【0043】
また、図3や図4のおけるエリアA1の温度が最も高く、エリアA1からエリアA5に向かうにしたがって温度が低くなる。
【0044】
図3や図4から理解されるように、貫通孔63を設けたことによって、第1の部位(温度上昇抑制部位)17(図3の示すXの部位)における温度の上昇が抑制されている。
【0045】
ヒュージブルリンクユニット1によれば、第1のヒュージブルリンク19と発熱部21を備えた第2のヒュージブルリンク23との間に熱抵抗部25を設けたことにより、従来のヒュージブルリンクユニット200のようにフィン214を設けることがなくなり、第1のヒュージブルリンク19の温度上昇抑制部位(第1の部位)17における温度の上昇を簡素な構成で抑制することができる。
【0046】
ヒュージブルリンクユニット1の構成が簡素になることで、ヒュージブルリンクユニット1が軽量化され、また、ヒュージブルリンクユニット1の製作に必要な材料費の上昇を抑えることができる。
【0047】
また、ヒュージブルリンクユニット1によれば、発熱部21が第1の部位17および熱抵抗部25よりも下方に位置しているので、図5に矢印で示すような外気(大気)の対流によって冷却がなされ、第1の部位17の温度上昇抑制部位における温度上昇を一層効率良く抑制することができる。すなわち、発熱部21によりこの周辺の空気が暖められて対流が発生し、この対流による影響で第1の部位17と発熱部21との間で発熱部21の上方に存在している部位(熱抵抗部25を含む部位であって、温度上昇抑制部位である第1の部位17と第2の部位の発熱部21との間の部位)35も冷却され、第1の部位17における温度上昇が一層効率良く抑制されるようになっている。
【0048】
また、ヒュージブルリンクユニット1によれば、熱抵抗部25が貫通孔63で構成されているので、バスバー15を変更するだけで(たとえば、バスバー15を成形する金型の一部を変更して、貫通孔63を設けるだけで)、熱抵抗部25を形成することができ、第1の部位17の温度上昇抑制部位における温度が上昇することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ヒュージブルリンクユニット
3 バッテリー
5 バッテリー端子
15 バスバー
17 第1の部位;温度上昇抑制部位
19、23 ヒュージブルリンク
21 発熱部
25 熱抵抗部
27、29 樹脂ボディ
63 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー端子に接続されるヒュージブルリンクユニットにおいて、
第1のヒュージブルリンクと;
発熱部を備えた第2のヒュージブルリンクと;
前記各ヒュージブルリンク同士をお互いに接続し、前記第2のヒュージブルリンクの発熱部で生じた熱の前記第1のヒュージブルリンクへの熱伝導を抑制する熱抵抗部と;
を有することを特徴とするヒュージブルリンクユニット。
【請求項2】
バッテリー端子に接続されるヒュージブルリンクユニットにおいて、
第1の部位と、発熱部を備えた第2の部位と、前記各部位をお互いに接続し前記第2の部位の発熱部で発生した熱が前記第1の部位へ伝導することを抑制する熱抵抗部とを備えたバスバーと;
前記バスバーを覆っている樹脂ボディと;
を有することを特徴とするヒュージブルリンクユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記発熱部が前記第1の部位の下方に位置していることを特徴とするヒュージブルリンクユニット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記熱抵抗部は、前記第1の部位と前記第2の部位との境界部に設けられた孔、切り欠きの少なくともいずれかで構成されていることを特徴とするヒュージブルリンクユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−251190(P2010−251190A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100959(P2009−100959)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】