説明

ヒューズ及びワイヤハーネス

【課題】1本の棒状端子と複数の電線各々との間にヒューズを接続することが必要である場合に、ヒューズの固定に要する工数を低減できるとともに、部品の種類を少なくしつつ電線の数の違いに適応することができること。
【解決手段】ヒューズ1において、一次側端子部10は、基部11と複数の傾斜壁部12とを有する。基部11は、正多角形の輪郭を形成し、中央に棒状端子が通される貫通孔11hが形成された平板状の部分である。複数の傾斜壁部12各々は、基部11における直線状の外縁111各々から斜め下方外側に張り出して形成された平板状の部分である。複数のヒューズ1各々における一次側端子部10は、基部11の外縁111が重なる状態で異なる向きで重ねられる。これにより、上下に隣接する2つの一次側端子部11どうしが面接触し、傾斜側壁部12は、複数の一次側端子部10が貫通孔11hを中心に相対的に回転することを制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等で用いられるヒューズ及びヒューズが接続された電線を備えるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に代表される車両で用いられるヒューズは、バッテリからモータなどの負荷へ至る電流経路の途中に設けられる。例えば、ヒューズが、起立した棒状端子であるバッテリの正極端子と、モータなどの負荷と電気的に接続された電線との間に接続される場合がある。棒状端子は、ネジ溝が形成された棒状の端子である。
【0003】
起立した棒状端子と電線との間に接続されるヒューズは、棒状端子が貫通する貫通孔が形成された導体である一次側端子部と、電線の端部に接続される導体である二次側端子部と、両端が一次側端子部及び二次側端子部に繋がった導体である溶断部とを備える。なお、一次側端子部は、貫通孔に貫通した棒状端子に締め付けられたナットによって棒状端子に固定される。
【0004】
また、ヒューズにおける、電線と接続された二次側端子部及び溶断部は、通常、絶縁材料からなる保護カバーによって覆われる。
【0005】
また、車両においては、複数のヒューズが、バッテリなどの電源における1つの正極端子と、負荷の系統ごとに設けられた複数の電線各々との間に接続される場合がある。この場合、通常、1つの正極端子と複数のヒューズ各々の一次側端子部とを中継するバスバーが設けられる。この場合、複数のヒューズが、一連のバスバーにおける複数の部位に対してボルトによって固定される。
【0006】
一方、特許文献1には、1つの正極端子と複数の電線との間に接続される多連ヒューズが示されている。特許文献1に示される多連ヒューズは、1つの正極端子(棒状端子)に接続される一次側端子部と、その一次側端子部に対して並列に繋がった複数の溶断部と、それら溶断部各々と繋がった複数の二次側端子部とを備える。
【0007】
即ち、特許文献1に示される多連ヒューズにおいては、複数の溶断部及び複数の二次側端子部が、1つの一次側端子部と一体に形成されている。特許文献1に示される多連ヒューズが採用されることにより、ヒューズを正極端子(棒状端子)に固定する工数が低減される。
【0008】
また、特許文献1に示される多連ヒューズにおいては、全ての溶断部及び二次側端子部が、一次側端子部の幅方向において並ぶ状態で、一次側端子部から同一方向へ張り出して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−182506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、複数のヒューズが、一連のバスバーにおける複数の部位に固定される場合、ヒューズの固定に要する工数が、ヒューズの数に比例して増大するという問題が生じる。
【0011】
一方、特許文献1に示される多連ヒューズは、予め定められた数の溶断部及び二次側端子部を備えるため、接続対象となる電線の数ごとに異なる種類の多連ヒューズが必要となる。即ち、特許文献1に示される多連ヒューズは、部品の種類を少なくしつつ、接続対象となる電線の数の違いに適応することができないという問題点を有している。
【0012】
本発明は、バッテリの正極端子などの1本の棒状端子と複数の電線各々との間にヒューズを接続することが必要である場合に、ヒューズの固定に要する工数を低減できるとともに、部品の種類を少なくしつつ電線の数の違いに適応することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係るヒューズは、第一端子部と第二端子部と溶断部とを有する。第一端子部は、起立した棒状端子が貫通する貫通孔が形成され、前記棒状端子に固定される板状の導体である。第二端子部は、電線と接続される導体である。溶断部は、前記第一端子部の外縁の一部から張り出した導体であり、両端が前記第一端子部及び第二端子部の各々に繋がった部分である。第1発明に係るヒューズにおいて、前記第一端子部は、基部と回転規制部とを有する。前記基部は、正多角形の輪郭を形成し、中央に前記貫通孔が形成された平板状の部分である。前記回転規制部は、前記基部の外縁から下方に張り出して形成され、複数の当該ヒューズ各々における前記第一端子部が前記基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられたときに、上下に隣接する2つの前記第一端子部どうしが前記貫通孔を中心に相対的に回転することを制限する部分である。さらに、第1発明に係るヒューズにおいて、前記第一端子部は、複数の前記第一端子部が前記基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられたときに、上下に隣接する2つの前記第一端子部どうしが面接触する形状で形成されている。
【0014】
また、第2発明に係るヒューズは、第1発明に係るヒューズの一例である。第2発明に係るヒューズにおいて、前記第一端子部の前記回転規制部は、前記基部における前記複数の直線状の外縁各々に連なり、前記複数の直線状の外縁各々から斜め下方外側へ張り出した平板状の複数の傾斜壁部である。さらに、第2発明に係るヒューズにおいて、前記第一端子部は、前記基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられたときに、上下に隣接する2つの前記第一端子部における少なくとも複数の前記傾斜壁部どうしが面接触する形状で形成されている。
【0015】
また、本発明は、第1発明又は第2発明に係るヒューズを備えたワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。即ち、本発明に係るワイヤハーネスは、電線と、その電線と接続されたヒューズと、を備える。ここで、前記電線と接続された前記ヒューズは、第1発明又は第2発明に係るヒューズであり、前記電線は、前記ヒューズの前記第二端子部に接続されている。
【発明の効果】
【0016】
第1発明に係るヒューズの第一端子部(一次側端子部)は、正多角形の輪郭を形成するとともに中央に前記貫通孔が形成された平板状の基部を有している。この場合、複数のヒューズの第一端子部が、それぞれの基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられると、基部各々の中央に形成された貫通孔は、それぞれの位置が一致して連通する。そして、第1発明において、複数のヒューズの第一端子部は、それぞれの基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられた上で、起立した棒状端子に対して一括して固定される。即ち、複数のヒューズにおける複数の第一端子部全体が、1つのナットを締めつける作業によって1本の棒状端子に固定される。
【0017】
従って、第1発明によれば、バッテリの正極端子などの1本の棒状端子と複数の電線各々との間にヒューズを接続することが必要である場合に、ヒューズの固定に要する工数を低減することができる。
【0018】
ところで、従来の複数のヒューズが、第一端子部(一次側端子部)の貫通孔の位置が一致する状態で重ねられた場合、複数の第二端子部(二次側端子部)各々に接続された複数の電線、及び各溶断部と各第二端子部とを電気的に絶縁する絶縁カバーが、上下方向において相互に干渉する。そうすると、多くのヒューズが重ねられた場合、上側に重ねられた第一端子部が斜めに傾き、複数の第一端子部相互間で接触不良が生じる。
【0019】
一方、第1発明に係るヒューズが採用された場合、複数の第一端子部が、それぞれの基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられる。そのため、複数のヒューズ各々の溶断部及びこれに連なる第二端子部は、重ねられた複数の第一端子部々における異なる方向の外縁からそれぞれ重ならずに張り出した状態となる。そのため、複数の第二端子部各々に接続された複数の電線、及び各溶断部と各第二端子部とを電気的に絶縁する絶縁カバーは、相互に干渉しない。
【0020】
従って、第1発明によれば、多くのヒューズが重ねられた場合でも、複数の第一端子部相互間で接触不良が生じることは回避される。
【0021】
また、第1発明によれば、部品の種類を少なくしつつ電線の数の違いに適応することができる。即ち、第1発明によれば、1種類のヒューズが用意されるだけで、電線の数と同じ数のヒューズが重ねられることにより、電線の数の違いに適応することができる。
【0022】
また、重ねられた複数の第一端子部が、起立した棒状端子に対してナットで固定される場合、重ねられた第一端子部が、ナットに対して連れ周りしやすい。第一端子部がナットに対して連れ周りすると、ヒューズの固定の作業性が悪化するとともに、溶断部及び第二端子部が誤った方向に向く状態でヒューズが固定されてしまう。
【0023】
一方、第1発明によれば、第一端子部が回転規制部を備えているため、第一端子部がナットに対して連れ周りする不都合は回避される。
【0024】
また、第2発明に係るヒューズにおいて、第一端子部は、1つの平板状の基部と基部における直線状の外縁に連なる複数の平板状の傾斜壁部とにより構成され、傾斜壁部が、回転規制部として機能する。このような形状の第一端子部は、構造が簡素であり、平坦な金属板の折り曲げ加工もしくは据え込み加工などの簡易な板金加工によって成形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るヒューズ1の斜視図である。
【図2】ヒューズ1の平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス2の平面図である。
【図4】ワイヤハーネス2の断面図である。
【図5】ワイヤハーネス2が備える絶縁カバーの斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るヒューズ1Xにおける一次側端子部の断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2Yの平面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るヒューズ1Zの平面図及び正面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス2Zの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0027】
<第1実施形態>
まず、図1から図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るヒューズ1及びそれを備えた本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス2の構成について説明する。なお、図4は、図3に示されるA−A平面における断面図である。
【0028】
<ヒューズ>
ヒューズ1は、一次側端子部10、二次側端子部20及び溶断部30を備えている。一次側端子部10、二次側端子部20及び溶断部30は、一連に連なった板状の導体からなり、例えば、銅などの金属の板材に錫メッキが施された導体からなる。
【0029】
図3及び図4に示されるように、一次側端子部10は、バッテリの正極端子などの起立した棒状端子6に対してナット5により固定される板状の導体である。一次側端子部10には、起立した棒状端子6が通される貫通孔11hが形成されている。なお、棒状端子6は、ネジ溝が形成された棒状の端子である。一次側端子部10は、ナット5で棒状端子6に固定されることにより、棒状端子6と電気的に接続される。なお、図3及び図4において、棒状端子6及びナット5は、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0030】
<一次側端子部>
ヒューズ1において、一次側端子部10は、棒状端子6が通される貫通孔11hが形成された平板状の基部11と、基部11の外縁に連なる複数の傾斜壁部12とを有する。基部11は、正多角形の輪郭を形成し、中央に棒状端子6が通される貫通孔11hが形成された平板状の部分である。
【0031】
本実施形態においては、基部11は、輪郭が正方形の平板状に形成されているため、基部11の周囲の四方各々において4つの直線状の外縁111が形成されている。
【0032】
各図に示される座標軸において、Y軸方向は、一次側端子部10から溶断部30及び二次側端子部20が張り出した方向を示し、X軸方向は、Y軸方向に直交し、基部11の表裏各面に沿う方向である。また、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向であり、基部11の厚み方向である。
【0033】
一方、傾斜壁部12は、基部11における複数の直線状の外縁111各々から斜め下方外側へ張り出した平板状の部分である。基部11の下面側において、基部11と複数の傾斜壁部12各々とがなす角度θは鈍角である。平板状の傾斜壁部12における下面及び上面は平行であるので、傾斜壁部12の下面及び上面は、いずれも基部11が沿う平面に対して(180°−θ°)の角度で斜め下方へ傾斜している。
【0034】
本実施形態においては、4つの傾斜壁部12が、基部11における4つの直線状の外縁111各々に連なって形成されている。また、本実施形態においては、4つの傾斜壁部12各々における両側方の直線状の外縁が、それぞれ隣接する他の傾斜壁部12における側方の直線状の外縁と連なって形成されている。
【0035】
従って、本実施形態における複数の傾斜壁部12は、台形状に形成さている。また、一次側端子部10における基部11及び複数の傾斜壁部12の部分の輪郭形状は、正多角錐がその頭頂部と底面との間の位置において底面に平行な平面で2分割された場合における底面側の部分の輪郭形状と同じ形状である。
【0036】
なお、複数の傾斜壁部12各々における両側方の外縁と、それぞれに隣接する他の傾斜壁部12における側方の外縁との間に隙間が形成されていてもよい。但し、隣接する傾斜壁部12相互の側方の外縁が連なっている構造の方が、隣接する傾斜壁部12相互の側方の外縁の間に隙間が形成されている構造よりも、一次側端子部10の強度が高まる点において好ましい。
【0037】
一次側端子部10の基部11は、正多角形の輪郭を形成するとともに中央に貫通孔11hが形成された平板状に形成されている。そのため、複数のヒューズ1の一次側端子部10が、それぞれの基部11の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられると、基部11各々の中央に形成された貫通孔11hは、それぞれの位置が一致して連通する。
【0038】
そして、ヒューズ1は、同形状の他のヒューズ1と重ねられて使用される。より具体的には、複数のヒューズ1各々の一次側端子部10は、それぞれの基部11の外縁111が重なる状態で異なる向きで重ねられ、そのように重ねられた状態で棒状端子6に対して一括して固定される。
【0039】
以下の説明において、複数のヒューズ1が、それぞれの一次側端子部10における基部11の外縁111が重なるようにしてそれぞれ異なる向きで重ねられた状態のことを積み重ね状態と称する。
【0040】
本実施形態においては、基部11が正方形の平板状であるため、基部11における4つの直線状の外縁111は、基部11の中心から見て90°の整数倍の角度ずつ異なる方向に形成されている。従って、積み重ね状態において、複数の一次側端子部10各々の基部11は、それぞれ90°の整数倍の角度ずつ異なる向きで重ねられる。
【0041】
また、図4に示されるように、積み重ね状態において、上下に隣接する2つのヒューズ1各々における2つの一次側端子部10どうしは面接触する。本実施形態においては、基部11及び傾斜壁部12の部分における下面と上面とが同じ形状で形成されている。そのため、積み重ね状態において、上下に隣接する2つのヒューズ1における基部11どうしが面接触するとともに、傾斜壁部12どうしも面接触する。これにより、上下に隣接する2つのヒューズ1における一次側端子部10どうしが確実に短絡する。
【0042】
また、積み重ね状態において、傾斜壁部12は、上下に隣接する2つの一次側端子部10どうしが貫通孔11hを中心に相対的に回転することを制限する部分である。即ち、傾斜壁部12は、上下に隣接する2つの一次側端子部10どうしを導通させる短絡部であるとともに、上側の一次側端子部10と下側の一次側端子部10とが連れ周りすることを防止する回転規制部でもある。
【0043】
また、本実施形態において、一次側端子部10は、複数の傾斜壁部12のうちの1つにおける下方の縁に連なるとともに溶断部30にも連なる板状の中継部13が形成されている。ヒューズ1において、一次側端子部10の基部11と溶断部30とは、4つの傾斜壁部12のうちの1つと中継部13とを介して繋がっている。
【0044】
<二次側端子部>
一方、二次側端子部20は、電線9と接続される導体であり、溶断部30の一方の端部と繋がっている。本実施形態においては、二次側端子部20は、ネジ孔21が形成された平板状の端子であり、電線9の端部に設けられた圧着端子がネジ7によって固定される部分である。
【0045】
<溶断部>
溶断部30は、一次側端子部10の外縁の一部である中継部13の外縁から張り出し、両端が一次側端子部10の中継部13及び二次側端子部20に繋がった導体である。溶断部30は、一次側端子部10及び二次側端子部20の各々よりも細く形成されており、溶断部30の電気抵抗は、一次側端子部10及び二次側端子部20の各々の電気抵抗よりも高い。そして、予め定められた許容電流を超える電流が、一次側端子部10から溶断部30を経て二次側端子部20へ流れると、溶断部30が発熱して溶融し、一次側端子部10から二次側端子部20及びそれに接続された負荷への電流の供給が遮断される。
【0046】
本実施形態においては、溶断部30及びこれに連なる二次側端子部20は、基部11における複数の直線状の外縁111のうちの1つに直交する方向に沿って一次側端子部10から外側へ張り出して形成されている。
【0047】
<ワイヤハーネス>
続いて、図3から図5を参照しつつ、ヒューズ1を含むワイヤハーネス2について説明する。なお、図5は、ワイヤハーネス2が備える絶縁カバー8の斜視図である。また、図3及び図4には、ヒューズ1の一次側端子部10が棒状端子6に固定された状態における3つのワイヤハーネス2が示されている。
【0048】
図3及び図4に示されるように、ワイヤハーネス2は、電線9と、ヒューズ1と、絶縁カバー8とを備えている。ヒューズ1は、二次側端子部20の部分において、電線9の端部とネジ7によって接続されている。なお、便宜上、図3において、絶縁カバー8は、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0049】
絶縁カバー8は、ヒューズ1における、電線9との接続部分を覆う絶縁体からなる部材である。より具体的には、絶縁カバー8は、ヒューズ1における少なくとも溶断部30から二次側端子部20に亘る領域を覆う。絶縁カバー8は、例えば、樹脂の成形部材である。
【0050】
絶縁カバー8は、例えば図5に示されるように、ヒューズ1における中継部13の一部、溶断部30、二次側端子部20及び電線9の端部を収容する箱部81と、箱部81の開口を塞ぐ蓋部82とを有する。箱部81の側壁には、第一欠け部811及び第二欠け部812が形成されている。第一欠け部811は、ヒューズ1の一部である中継部13が箱部81の内側と外側とに亘って配置される空間を形成する部分である。また、第二欠け部812は、電線9の端部が箱部81の内側と外側とに亘って配置される空間を形成する部分である。箱部81と蓋部82とは、柔軟性を有する連結部83を介して繋がっている。
【0051】
また、箱部81及び蓋部82には、蓋部82が箱部81の開口を塞ぐ状態で、蓋部82を箱部81に固定するロック機構84,85が設けられている。図5に示されるロック機構84,85は、蓋部82の外縁から箱部81側へ突出して形成された爪部84と、箱部81の外縁に形成された枠部85とにより構成されている。爪部84が枠部85の中空部に挿入されることにより、爪部84の一部が枠部85に引っ掛かり、蓋部82が箱部81に固定される。
【0052】
なお、絶縁カバー8は、ヒューズ1における、複数の電線9各々との接続部分を覆う絶縁体からなる筒状の部材などであってもよい。
【0053】
<効果>
図3及び図4に示されるように、複数のヒューズ1各々の一次側端子部10が1つの棒状端子6に取り付けられる場合、複数のヒューズ1各々の一次側端子部10は、それぞれの基部11の外縁(複数の直線状の外縁111)が重なる状態で異なる向きで重ねられた上で、起立した棒状端子6に対して一括して固定される。即ち、複数のヒューズ1における複数の一次側端子部10全体が、1つのナット5を締めつける作業によって1本の棒状端子6に固定される。
【0054】
従って、ヒューズ1が採用されれば、バッテリの正極端子などの1本の棒状端子6と複数の電線9各々との間にヒューズを接続することが必要である場合に、ヒューズの固定に要する工数を低減することができる。
【0055】
ところで、従来の複数のヒューズが、一次側端子部の貫通孔の位置が一致する状態で重ねられた場合、複数の二次側端子部各々に接続された複数の電線9及び絶縁カバー8が、上下方向において相互に干渉する。そうすると、多くのヒューズが重ねられた場合、上側に重ねられた一次側端子部が斜めに傾き、複数の一次側端子部相互間で接触不良が生じる。
【0056】
一方、ヒューズ1が採用された場合、複数の一次側端子部10が、それぞれの基部11の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられる。そのため、複数のヒューズ1各々の溶断部30及びこれに連なる二次側端子部20は、図3に示されるように、重ねられた複数の一次側端子部10各々における異なる方向の外縁からそれぞれ重ならずに張り出した状態となる。そのため、複数の二次側端子部20各々に接続された複数の電線9、及び各溶断部30と各二次側端子部20とを電気的に絶縁する絶縁カバー8は、相互に干渉しない。
【0057】
従って、ヒューズ1がワイヤハーネス2に採用されることにより、多くのヒューズ1が重ねられた場合でも、複数の一次側端子部10相互間で接触不良が生じることは回避される。
【0058】
また、ヒューズ1が採用されることにより、部品の種類を少なくしつつ電線9の数の違いに適応することができる。即ち、1種類のヒューズ1が用意されるだけで、電線9の数と同じ数のヒューズ1が重ねられることにより、電線9の数の違いに適応することができる。
【0059】
また、重ねられた複数の一次側端子部10が、起立した棒状端子6に対してナット5で固定される場合、重ねられた一次側端子部10が、ナット5に対して連れ周りしやすい。一次側端子部10がナット5に対して連れ周りすると、ヒューズの固定の作業性が悪化するとともに、溶断部30及び二次側端子部20が誤った方向に向く状態でヒューズが固定されてしまう。
【0060】
一方、ヒューズ1においては、一次側端子部10が回転規制部として機能する傾斜壁部12を備えているため、一次側端子部10がナット5に対して連れ周りする不都合は回避される。
【0061】
ヒューズ1において、一次側端子部10は、1つの平板状の基部11と基部11における複数の直線状の外縁111に連なる複数の平板状の傾斜壁部12とにより構成され、傾斜壁部12が、回転規制部として機能する。このような形状の一次側端子部10は、構造が簡素であり、平坦な金属板の折り曲げ加工もしくは据え込み加工などの簡易な板金加工によって成形可能である。
【0062】
<第2実施形態>
次に、図6を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るヒューズ1Xについて説明する。図6は、重ねられた3つのヒューズ1Xの断面図である。なお、図示は省略されているが、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスは、ワイヤハーネス2におけるヒューズ1がヒューズ1Xに置き換えられた構成を有している。
【0063】
ヒューズ1Xは、図1から図3に示されたヒューズ1と比較して、一次側端子部の形状のみが若干異なる構成を有している。
【0064】
図6において、図1から図3に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ヒューズ1Xにおけるヒューズ1と異なる点についてのみ説明する。
【0065】
ヒューズ1Xは、ヒューズ1と比較して、一次側端子部10の基部11における上面の形状と下面の形状との関係が異なる。
【0066】
より具体的には、図6に示されるように、ヒューズ1Xにおいても、積み重ね状態において、上下に隣接する2つのヒューズ1X各々の一次側端子部10Aどうしは面接触する。しかしながら、ヒューズ1Xにおいて、基部11及び傾斜壁部12の部分における下面と上面とは同じ形状ではない。そのため、積み重ね状態において、上下に隣接する2つのヒューズ1における傾斜壁部12どうしは面接触するが、基部11どうしは接触しない。
【0067】
即ち、ヒューズ1Xにおいては、積み重ね状態において、上下に隣接する2つの一次側端子部10どうしが、傾斜壁部12の部分のみを通じて短絡する。傾斜壁部12の部分において十分な接触面積が確保される場合、ヒューズ1Xが採用された場合でも、ヒューズ1が採用された場合と同様の作用及び効果が得られる。
【0068】
<第3実施形態>
次に、図7を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るヒューズ1Y及び本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2Yについて説明する。ワイヤハーネス2Yは、ヒューズ1Yを備える。図7はヒューズ1Yの一次側端子部10Bの部分が重ねられた5つのワイヤハーネス2Yの平面図である。
【0069】
ヒューズ1Xは、図1から図3に示されたヒューズ1と比較して、一次側端子部の形状のみが異なる構成を有している。また、ワイヤハーネス2Yは、ワイヤハーネス2におけるヒューズ1がヒューズ1Yに置き換えられた構成を有している。
【0070】
図7において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ヒューズ1Yにおけるヒューズ1と異なる点についてのみ説明する。
【0071】
ヒューズ1Yは、ヒューズ1と比較して、一次側端子部10がこれと形状の異なる一次側端子部10Bに置き換えられた構成を有する。なお、便宜上、図7において、ワイヤハーネス2Yが備える絶縁カバー8は、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0072】
より具体的には、ヒューズ1Yの一次側端子部10Bは、正八角形の輪郭を形成し、中央に貫通孔11hが形成された平板状の基部11Bを有する。さらに、一次側端子部10Bは、基部11Bにおける8つの直線状の外縁111各々に連なり、8つの直線状の外縁111各々から斜め下方外側へ張り出した平板状の8つの傾斜壁部12Bを有する。
【0073】
ヒューズ1Yにおいて、一次側端子部10Bの中継部13は、8つの傾斜壁部12Bのうちの1つの下方の縁に連なって形成されている。さらに、ヒューズ1Yにおいて、溶断部30及びこれに連なる二次側端子部20は、基部11における8つの直線状の外縁111のうちの1つに直交する方向に沿って一次側端子部10から外側へ張り出して形成されている。
【0074】
図7に示されるように、複数のヒューズ1Y各々の一次側端子部10Bが1つの棒状端子6に取り付けられる場合、複数のヒューズ1Y各々の一次側端子部10Bは、それぞれの基部11Bの外縁(8つの直線状の外縁111)が重なる状態で異なる向きで重ねられた上で、起立した棒状端子6に対して一括して固定される。
【0075】
本実施形態においては、基部11Bが正八角形の平板状であるため、基部11Bにおける8つの直線状の外縁111は、基部11の中心から見て45°の整数倍の角度ずつ異なる方向に形成されている。従って、積み重ね状態において、複数の一次側端子部10B各々の基部11Bは、それぞれ45°の整数倍の角度ずつ異なる向きで重ねられる。
【0076】
ヒューズ1Yが採用された場合でも、ヒューズ1が採用された場合と同様の作用及び効果が得られる。特に、ヒューズ1Yが採用された場合、ヒューズ1,1Xが採用される場合よりも、より多くのヒューズを重ねて1つの棒状端子6に固定することが可能となる。その結果、複数のヒューズの固定に要する工数がより低減される。
【0077】
<第4実施形態>
次に、図8及び図9を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係るヒューズ1Z及び本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス2Zについて説明する。図8(a)はヒューズ1Zの平面図であり、図8(b)は、ヒューズ1Zの正面図である。また、図9は、ワイヤハーネス2Zの平面図である。
【0078】
ワイヤハーネス2Zは、ヒューズ1Zを備える。ヒューズ1Zは、図1から図3に示されたヒューズ1と比較して、一次側端子部の形状のみが異なる構成を有している。また、ワイヤハーネス2Zは、ワイヤハーネス2におけるヒューズ1がヒューズ1Yに置き換えられた構成を有している。
【0079】
図8及び図9において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ヒューズ1Zにおけるヒューズ1と異なる点についてのみ説明する。
【0080】
ヒューズ1Zは、ヒューズ1と比較して、一次側端子部10の傾斜壁部12が、突起部12Cに置き換えられた構成を有する。
【0081】
より具体的には、図8及び図9に示されるように、ヒューズ1Zの一次側端子部10Cは、貫通孔11hが形成された平板状の基部11と、その基部11における複数の直線状の外縁111各々から下方へ張り出した複数の突起部12Cとを有する。
【0082】
また、ヒューズ1Zにおいて、一次側端子部10Cの中継部13は、基部11における複数の直線状の外縁111のうちの1つに連なって形成されている。さらに、ヒューズ1Zにおいて、溶断部30及びこれに連なる二次側端子部20は、基部11における複数の直線状の外縁111のうちの1つに直交する方向に沿って一次側端子部10から外側へ張り出して形成されている。
【0083】
なお、図8及び図9に示される基部11は、正方形の平板状であるが、ヒューズ1Zにおいて、正方形以外の正多角形の平板状の基部が採用されてもよい。例えば、ヒューズ1Zにおいて、ヒューズ1Yにおける正八角形状の基部11Bが採用されてもよい。
【0084】
複数の突起部12C各々は、いずれも基部11の厚みよりも短い長さで基部11の外縁から下方へ突出して形成されている。さらに、複数の突起部12C各々は、基部11における複数の直線状の外縁111各々における異なる位置に形成されている。従って、複数のヒューズ1Z各々の一次側端子部10Cが重ねられた積み重ね状態において、複数のヒューズ1Z相互間において突起部12Cは干渉しない。
【0085】
そして、複数のヒューズ1Z各々の一次側端子部10Cが重ねられた積み重ね状態において、上下に隣接する2つの一次側端子部10Cにおける基部11どうしが面接触する。即ち、ヒューズ1Zにおいて、基部11は、上下に隣接する2つの一次側端子部10Cどうしを導通させる短絡部の一例である。
【0086】
また、一次側端子部10Cが重ねられた積み重ね状態において、突起部12C各々は、上下に隣接する2つの一次側端子部10Cどうしが貫通孔11hを中心に相対的に回転することを制限する。
【0087】
即ち、複数の突起部12Cは、積み重ね状態において、上側の一次側端子部10Cと下側の一次側端子部10Cとが連れ周りすることを防止する回転規制部の一例である。ヒューズ1Zが採用された場合でも、ヒューズ1,1X,1Yが採用された場合と同様の作用及び効果が得られる。
【0088】
<その他>
ヒューズ1,1X,1Y,1Zにおいて、一次側端子部10の基部11は、正方形又は正八角形以外の正多角形の輪郭を有する平板状であることも考えられる。
【0089】
また、ヒューズ1,1X,1Y,Zにおいて、中継部13が省略されることも考えられる。この場合、溶断部30は、基部11,11Bの外縁の一部又は傾斜壁部12における下方の外縁と連なって形成される。
【符号の説明】
【0090】
1,1X,1Y,1Z ヒューズ
2,2Y,2Z ワイヤハーネス
5 ナット
6 棒状端子
7 ネジ
8 絶縁カバー
9 電線
10,10A,10B,10X 一次側端子部
11,11B 基部
11h 貫通孔
12,12B 傾斜壁部
12C 突起部
13 中継部
20 二次側端子部
21 ネジ孔
30 溶断部
81 箱部
82 蓋部
83 連結部
84 爪部(ロック機構)
85 枠部(ロック機構)
111 基部の外縁
811 第一欠け部
822 第二欠け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立した棒状端子が通される貫通孔が形成され、前記棒状端子に固定される板状の導体である第一端子部と、
電線と接続される導体である第二端子部と、
前記第一端子部の外縁の一部から張り出した導体であり、両端が前記第一端子部及び第二端子部の各々に繋がった溶断部と、を有するヒューズであって、
前記第一端子部は、
正多角形の輪郭を形成し、中央に前記貫通孔が形成された平板状の基部と、
前記基部の外縁から下方に張り出して形成され、複数の当該ヒューズ各々における前記第一端子部が前記基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられたときに、上下に隣接する2つの前記第一端子部どうしが前記貫通孔を中心に相対的に回転することを制限する回転規制部と、を有し、
さらに、前記第一端子部は、複数の前記第一端子部が前記基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられたときに、上下に隣接する2つの前記第一端子部どうしが面接触する形状で形成されていることを特徴とするヒューズ。
【請求項2】
前記第一端子部の前記回転規制部は、前記基部における前記複数の直線状の外縁各々に連なり、前記複数の直線状の外縁各々から斜め下方外側へ張り出した平板状の複数の傾斜壁部であり、
前記第一端子部は、前記基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられたときに、上下に隣接する2つの前記第一端子部における少なくとも複数の前記傾斜壁部どうしが面接触する形状で形成されている、請求項1に記載のヒューズ。
【請求項3】
電線と、該電線と接続されたヒューズと、を備えるワイヤハーネスであって、
前記ヒューズは、
起立した棒状端子が貫通する貫通孔が形成され、前記棒状端子に固定される板状の導体である第一端子部と、
前記電線と接続された導体である第二端子部と、
前記第一端子部の外縁の一部から張り出した導体であり、両端が前記第一端子部及び第二端子部の各々に繋がった溶断部と、を有し、
前記ヒューズの前記第一端子部は、
正多角形の輪郭を形成し、中央に前記貫通孔が形成された平板状の基部と、
前記基部の外縁から下方に張り出して形成され、複数の前記ヒューズ各々における前記第一端子部が前記基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられたときに、上下に隣接する2つの前記第一端子部どうしが前記貫通孔を中心に相対的に回転することを制限する回転規制部と、を有し、
さらに、前記第一端子部は、複数の前記第一端子部が前記基部の外縁が重なる状態で異なる向きで重ねられたときに、上下に隣接する2つの前記第一端子部どうしが面接触する形状で形成されていることを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−89551(P2013−89551A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231520(P2011−231520)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】