説明

ヒューズ

【課題】過電流ヒューズにおいて、従来のように低融点金属を使用しなくとも所望の溶断特性を実現できる低コストなヒューズを提供する。
【解決手段】ヒューズ1Aは、電線2とその両端に加締め固定されたLA端子11を備えている。電線2は複数の導電材の素線を収束して形成され、中央箇所には他の箇所より小さな断面積のヒートスポット部3が設けられ、ヒートスポット部3の両側箇所にはジョイント端子を用いた放熱部材4が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流(定格値以上の電流)が通電されると溶断して通電を遮断するヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例のヒューズとしては、特許文献1に開示されたものがある。このヒューズ50は、図6に示すように、導電材のバスバー51と低融点金属60とから構成されている。バスバー51は、銅製である。バスバー51には、他の箇所よりも小断面積の幅狭部52が設けられている。バスバー51には、加締片部53と一対の堰き止め部54が一体に設けられている。低融点金属(例えば錫)60は、加締片部53によって幅狭部52上を跨るように配置されている。低融点金属60は、バスバー51に加締めによって固定され、且つ、バスバー51に溶着されている。一対の堰き止め部54は、低融点金属60の両外側に間隔を置いて配置されている。一対の堰き止め部54は、溶融した低融点金属60が広い範囲に流れるのを堰き止めるためのものである。
【0003】
上記構成において、バスバー51に過電流が通電されると、幅狭部52が他の箇所よりもジュール発熱量が多く、低融点金属60が溶融し、溶融した低融点金属60がバスバー(銅)51の中に拡散して銅の融点を低下させる。これにより、幅狭部52が溶断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−92727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のヒューズ50では、所望の溶断特性を実現するのにバスバー51の他に低融点金属60を使用するため、そのための材料費、加工費、設備費がかかる。又、低融点金属60をバスバー51に溶着するため、低融点金属60を溶着するための設備が必要である。以上より、コストが高いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、低コストなヒューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電線より形成され、前記電線には他の箇所より小さな断面積のヒートスポット部が設けられ、前記電線には前記ヒートスポット部とは異なる箇所に放熱部材が固定されていることを特徴とするヒューズである。
【0008】
前記ヒートスポット部は、前記電線の中央箇所に設けられ、前記放熱部材は、前記電線の前記ヒートスポット部の両側にそれぞれ固定されることが好ましい。
【0009】
前記放熱部材として端子が好ましい。前記放熱部材として端子と電線が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所望の溶断特性を電線と低コストな放熱部材にて実現でき、従来例のように低融点金属を使用しない。従って、低融点金属の材料費、加工費、設備費が必要なく、低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、ヒューズの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)はヒューズの平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、電線の中央箇所を圧延してヒートスポット部を作製した斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、溶断特性線図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示し、ヒューズの斜視図である。
【図6】従来例のヒューズの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示す。図1及び図2に示すように、ヒューズ1Aは、電線2と、この電線2の両端に加締めによって固定された2つのLA端子11とを備えている。
【0014】
電線2は、例えば、複数の導電材の素線が撚られ集束された軟銅線である。電線2は、所定の長さに設定されている。電線2の中央箇所には、他の箇所より小さな断面積のヒートスポット部3が設けられている。ヒートスポット部3は、電線2の中央箇所を圧延することによって作製される。電線2のヒートスポット部3の両側箇所には、放熱部材4が固定されている。放熱部材4としてジョイント端子(端子)が使用されている。ジョイント端子は、熱伝導率の良い材料より形成されている。ジョイント端子の固定された箇所は、熱容量が大きく、且つ、表面積が広くなっている。
【0015】
次に、ヒューズ1Aの製造方法を説明する。複数の導電材の素線が撚られた電線2を使用する。先ず、ボンダ装置を用いて、電線2の中央箇所を圧延して他の箇所より小さな断面積のヒートスポット部3を作製する(ヒートスポット作製工程)。
【0016】
次に、図3に示すように、電線2の両端部にLA端子11を加締めによって固定する。
【0017】
次に、図1に示すように、電線2のヒートスポット部3の両側箇所に放熱部材4のジョイント端子を加締めによって固定する。これで、完了する。尚、両端部を除いた電線2の全外周を絶縁保護層(図示せず)で被覆しても良い。
【0018】
このようにして製造されたヒューズ1Aの溶断特性は、加工しない電線W1や、ヒートスポット部3を有さないが放熱部材4を有する電線W2と比較すると、次のようになる。電線2としては、加工しない状態でレアショート領域(200%通電)での溶断特性が規格内で溶断するものを使用する。この加工無し電線W1の溶断特性線は、図4のW1特性線となる。ヒートスポット部3を有さず、放熱部材4のみを有する電線W2は、放熱部材4を固定した箇所において空気と電線2が接する表面積が大きいため、電線2の温度が上昇した場合の放熱が大きい。これにより、加工無しの電線W1と較べて、過電流の全通電領域で溶断時間が遅くなる。放熱部材4のみを有する電線W2の溶断特性線は、図4のW2特性線となる。これにより、デッドショート領域(600%通電)以外では、溶断時間が規格の範囲内になるが、デッドショート領域(600%通電)では、溶断時間が規格よりも遅くなる。
【0019】
本発明のヒューズ1Aは、放熱部材4のみを有する電線W2と比較して、ヒートスポット部3での発熱量が多くなるため、特に発熱量が多くなるデッドショート領域(600%通電)で溶断時間が早くなる。従って、本発明のヒューズ1Aの溶断特性線は、図4の1A特性線となる。これにより、デッドショート領域(600%通電)での溶断時間が規格の範囲内となる。本発明のヒューズ1Aは、低融点金属無しで溶断特性5水準の保護ができるものとなっている。
【0020】
以上説明したように、所望の溶断特性を電線2と、低融点金属に比べて低コストな放熱部材4を使用して実現でき、従来例のように低融点金属を使用しない。従って、低融点金属の材料費、加工費、設備費が必要なく、低コストである。
【0021】
ヒートスポット部3は、電線2の中央に設けられ、放熱部材4は、電線2のヒートスポット部3の両側にそれぞれ設けられている。従って、ヒートスポット部3の両外側箇所は放熱によって温度上昇が抑制されるため、ヒートスポット部3で確実に溶断する。
【0022】
放熱部材4は、ジョイント端子を使用している。ジョイント端子は、低コストで、入手容易な部材であり、且つ、電線2に容易に固定できる。
【0023】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態を示す。図5に示すように、この第2実施形態のヒューズ1Bは、前記実施形態のものと比較するに、放熱部材4Aの構成が相違する。つまり、放熱部材4Aとして、ジョイント端子(端子)4aと電線4bが使用されている。電線4bの一端側は、電線2にジョイント端子4aを加締め固定する際に共締めされることで固定されている。
【0024】
他の構成は、前記第1実施形態と同じであるため、図面の同一構成箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
この第2実施形態でも、前記第1実施形態と同様に、所望の溶断特性を電線2と放熱部材4Aを使用して実現でき、従来例のように低融点金属を使用しない。従って、低融点金属の材料費、加工費、設備費が必要なく、低コストである。
【0026】
この第2実施形態では、放熱部材4Aは、ジョイント端子4aと電線4bを使用しているので、ジョイント端子4aと電線4bの表面からも放熱できるため、前記第1実施形態よりも、放熱性が良い。ジョイント端子4aと電線4bは、低コストで、入手容易な部材であり、且つ、電線2に容易に固定できる部品組み合わせでもある。
【符号の説明】
【0027】
1A,1B ヒューズ
2 電線
2a 素線
3 ヒートスポット部
4,4A 放熱部材
4a ジョイント端子(端子)
4b 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線より形成され、前記電線には他の箇所より小さな断面積のヒートスポット部が設けられ、前記電線には前記ヒートスポット部とは異なる箇所に放熱部材が固定されていることを特徴とするヒューズ。
【請求項2】
請求項1記載のヒューズであって、
前記ヒートスポット部は、前記電線の中央箇所に設けられ、前記放熱部材は、前記電線の前記ヒートスポット部の両側にそれぞれ固定されたことを特徴とするヒューズ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のヒューズであって、
前記放熱部材は、端子であることを特徴とするヒューズ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のヒューズであって、
前記放熱部材は、端子と電線であることを特徴とするヒューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−37889(P2013−37889A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173019(P2011−173019)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】