説明

ヒューマニア化抗B因子抗体

本発明は、ヒューマニア化抗B因子抗体と、免疫原性が低減された該ヒューマニア化抗B因子抗体の抗原結合断片とに関する。ヒューマニア化抗B因子抗体およびその抗原結合断片は、マウスモノクローナル抗体1379に由来し、この抗体は3番目のショートコンセンサスリピート(「SCR」)領域でB因子に選択的に結合し、C3bBb複合体の形成を防止することにより選択的に副補体経路の活性化を阻害する。また、本発明は、副補体経路の活性化が役割を果たす疾病または障害を治療する方法と、および副補体経路の活性化の選択的な阻害を必要とする個体において副補体経路の活性化を選択的に阻害する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年3月14に出願された米国仮出願第60/906,816号の優先権を主張する。該出願の開示は本明細書に援用する。
(連邦政府支援の研究または開発に関する記述)
本発明はその一部が、各々国立衛生研究所により授与された助成金番号AI47469、HL−36577、HL−61005、およびAI−31105と、環境保護庁により授与された助成金番号R825702とにより支援されている。したがって、米国政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
(発明の属する技術分野)
本発明は、補体タンパク質B因子に結合し、副補体経路を選択的に阻害するモノクローナル抗体およびその抗原結合断片の新規設計型に関する。また、本発明は包括的には、副補体経路が役割を果たす疾病を治療するためのそのような抗体および抗原結合断片の使用に関する。詳細には、本発明は、副補体経路の活性化を阻害し、かつ副補体経路の活性化が関与する疾病を治療するためのそのような抗体および抗原結合断片の使用に関する。そのような障害には、気道過敏症および気道炎症、虚血再潅流傷害、およびヒトを含む動物における関連する障害が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【背景技術】
【0003】
免疫系の特定の細胞は、その体内における異種タンパク質の存在に応じて細菌タンパク質またはウイルスタンパク質のような抗体または免疫グロブリン(「Ig」)と呼ばれるタンパク質を生産する。抗体は、体内で異種タンパク質に結合し、中和する。
【0004】
抗体は一般に、その標的タンパク質抗原にしっかりかつ特異的に結合するため、タンパク質発現の変更により特徴付けられる広範囲の疾病を治療するための潜在的に有用な治療薬となっている。非ヒト抗体分子を使用して、抗体媒介性疾病の治療に適した多くのタンパク質標的が同定されてきた。しかしながら、多くの治療的用途には、非ヒトIg分子自体が免疫原性であるため(すなわち免疫反応を引き起こす可能性がある)、非ヒト抗体の効能および安全性は損なわれている。したがって、抗体が治療的用途に承認可能となる前に、その免疫原性を減少または除去すべく通常抗体は改変しなければならない。抗体ヒューマニアリング(Antibody Humannering,米国商標)は、自身の標的抗原に結合する能力
を保持しつつ免疫原性を減少させるよう改変された抗体を生産する。
【0005】
本願は、B因子に結合し、かつ副補体経路を選択的にブロックするマウスモノクローナル抗体の「ヒューマニアリング」について説明する。IgA抗体および特定のIg軽鎖も副補体経路を活性化することが報告されてはいるが、副補体経路は、通常、細菌、寄生動物、ウイルスまたは菌類により活性化される。循環しているB因子が活性化C3(C3bまたはC3H2Oのいずれか)に結合した場合に、副補体経路の活性化が開始する。この
複合体はその後循環しているD因子により開裂され、酵素として活性な断片であるC3bBbまたはC3(H2O)Bbのいずれかを生成する。これらの2つの酵素は循環C3を
開裂させてC3bを生成することが可能であり、これは炎症を起こさせ、さらには活性化プロセスを増幅し、正のフィードバックループを生成する。B因子は副経路の活性化を可能にするために必要とされる。
【0006】
最近の研究で示されたのは、補体の副経路がいくつかの動物疾病モデルの病因に重要な役割を果たしているということである。虚血/再潅流傷害後の腎臓内の補体の活性化は副
経路によってほぼ排他的に媒介されており、副経路は関節炎の発症に重大な役割を果たす。恐らく最も驚くべきことは、副経路を欠損しているマウスは、古典的補体経路によって媒介されると従来仮定されていた疾病モデルである狼瘡腎炎のMRL/lprモデルにおける腎炎からおよび抗リン脂質媒介性胎児消失から保護されることを実証されたことである。
【0007】
本明細書で説明するヒューマニア化バリアントの元になっているマウス抗B因子抗体は、B因子欠損マウス(「fB−/−」)に免疫グロブリンに融合されたB因子の第2および第3のショートコンセンサスリピート(「SCR」)領域を含む融合タンパク質を注射することにより作製された。その後、マウスをB因子に対する抗体についてスクリーニングした。抗B因子抗体を生産する注射されたマウス由来の脾臓細胞を、当該技術分野で周知の標準的手順に従って骨髄腫細胞(ミエローマ)に融合した。得られたハイブリドーマ細胞の一つ(1379番)は、インビトロおよびインビボにおける副補体経路の活性化を完全に阻害するIgG1抗体(「mAb1379」)を生産したmAb1379の抗原結
合Fab’断片も、副補体経路の活性化を完全に阻害する。このmAb1379を生産するハイブリドーマ細胞株を、寄託番号PTA−6230の下、米国培養細胞株保存機関(「ATCC」)に寄託した。
【0008】
エピトープマッピングにより、mAb1379が3番目のSCR領域内のB因子に結合することが示された。さらなる実験により、mAb1379はC3bBb複合体の形成を防止することにより副補体の活性化を阻害することが実証された。最後に、mAB 1379は、マウス、ラット、ヒト、ヒヒ、アカゲザル、カニクイザル、ブタ、ウサギおよびウマを含む多くの異なる種由来の血清において副補体活性化を阻害するその能力によって示されているように、多数の哺乳類にわたって保存されたエピトープに結合する。抗B因子抗体mAb1379の生産および特徴付けは、本明細書に援用する特許文献1により詳細に説明されている。
【0009】
特許出願および刊行物を含む本明細書で引用する参考文献はすべて、その全体を本明細書に組み込むものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願出願公開第2005/0260198A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
1態様では、本発明は、3番目のショートコンセンサスリピート(「SCR」)領域でB因子に選択的に結合すると共にC3bBb複合体の形成を防止するマウスモノクローナル抗体1379(「mAb1379」)に由来するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片であって、約1.0×10-8Mから約1.0×10-10Mの間の平衡解離
定数(「KD」)を有するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片を提供す
る。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、約1.0×10-9Mから約9.0×10-9M間の、または約3.0×10-9Mから約7.0×10-9Mの間のKDを有する。特定の実施形態、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその
抗原結合断片は、約3.7×10-9M以下、約4.5×10-9M以下、約5.4×10-9M以下、または約6.5×10-9M以下のKDを有する。
【0012】
関連する態様では、本発明は、3番目のショートコンセンサスリピート(「SCR」)領域内のB因子に選択的に結合すると共にC3bBb複合体の形成を防止するマウスモノクローナル抗体1379(「mAb1379」)に由来するヒューマニア化抗B因子抗体
またはその抗原結合断片であって、約1.0×10-8Mから約1.0×10-10Mの間の
平衡解離定数(「KD」)を有するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片
を提供する。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14(TA10参照抗体)、配列番号16(TA101−1 Fab’)、配列番号18(TA102−4 Fab’)、および配列番号20(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択されたVκ領域ポリペプチドと、配列番号15(TA10参照抗体)、配列番号17(TA101−1 Fab’)、配列番号19(TA102−4 Fab’)、および配列番号21(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択されたV領域ポリペプチドとを有する。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14(TA10参照抗体)を有するVκ領域ポリペプチドと配列番号15(TA10参照抗体)を有するV領域ポリペプチドとを備え、6.55×10-9M以下のKDを有する。特定の実施形態では、ヒューマニ
ア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16を有するVκ領域ポリペプチド(TA101−1 Fab’)と配列番号17(TA101−1 Fab’)を有するV領域ポリペプチドとを備え、4.53×10-9M以下のKDを有する。特定の実施形
態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号18(TA102−4 Fab’)を有するVκ領域ポリペプチドと配列番号19(TA102−4 Fab’)を有するV領域ポリペプチドとを備え、5.40×10-9M以下のKDを有
する。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号20(TA103−2 Fab’)を有するVκ領域ポリペプチドと配列番号21(TA103−2 Fab’)を有するV領域ポリペプチドとを備え、3.73-9M以下のKDを有する。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結
合断片は、Fab’、(Fab’)2、Fv、scFv、および二重特異性抗体から成る
グループから選択される。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体の抗原結合断片はFab’である。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、約3.7×10-9M以下、約4.5×10-9M以下、約5.4×10-9M以下、または約6.5×10-9M以下のKDを有する。
【0013】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16(TA101−1 Fab’)、配列番号18(TA102−4、Fab’)、および配列番号20(TA103−2、Fab’)から成るグループから選択されたVκ領域ポリペプチドと、配列番号35(TA101−1 Fab’)、配列番号36(TA102−4 Fab’)、および配列番号37(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択されたV領域ポリペプチドとを備える。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16(TA101−1 Fab’)を有するVκ領域ポリペプチドと、配列番号35(TA101−1 Fab’)を有するV領域ポリペプチドとを備える。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号18(TA102−4、Fab’)を有するVκ領域ポリペプチドと、配列番号36(TA102−4、Fab’)を有するV領域ポリペプチドとを備える。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号20(TA103−2、Fab’)を有するVκ領域ポリペプチドと、配列番号37(TA103−2、Fab’)を有するV領域ポリペプチドとを備える。
【0014】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体または抗原結合断片は、配列番号14(TA10参照抗体)、配列番号16(TA101−1 Fab’)、配列番号18(TA102−4 Fab’)、および配列番号20(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択されたVκ領域ポリペプチドを有し、Vκ領域ポリペプチドのアミノ酸配列は、最も近いヒト生殖細胞系列Vκ領域ポリペプチドと約80%同一であり、最も近いヒト生殖細胞系列Vκ領域ポリペプチドと約85%同一であり、最も近いヒト生殖細
胞系列Vκ領域ポリペプチドと約90%同一であり、または最も近いヒト生殖細胞系列Vκ領域ポリペプチドと約95%同一である。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号15(TA10参照抗体)、配列番号17(TA101−1 Fab’)、配列番号19(TA102−4 Fab’)、および配列番号21(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択されたV領域ポリペプチドを有し、V領域ポリペプチドのアミノ酸配列は、最も近いヒト生殖細胞系列V領域ポリペプチドと約80%同一であり、最も近いヒト生殖細胞系列V領域ポリペプチドと約85%同一であり、最も近いヒト生殖細胞系列V領域ポリペプチドと約90%同一であり、または最も近いヒト生殖細胞系列V領域ポリペプチドと約95%同一である。
【0015】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14(TA10参照抗体)、配列番号16(TA101−1 Fab’)、配列番号18(TA102−4 Fab’)、および配列番号20(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択されたVκ領域ポリペプチドと、配列番号15(TA10参照抗体)、配列番号17(TA101−1 Fab’)、配列番号19(TA102−4 Fab’)、および配列番号21(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択されたV領域ポリペプチドとを有し、Vκ領域ポリペプチドのアミノ酸配列およびV領域ポリペプチドのアミノ酸配列は、最も近いヒト生殖細胞系列Vκ領域ポリペプチドおよび最も近いヒト生殖細胞系列V領域ポリペプチドと約80%同一であり、最も近いヒト生殖細胞系列Vκ領域ポリペプチドおよび最も近いヒト生殖細胞系列V領域ポリペプチドと約85%同一であり、最も近いヒト生殖細胞系列Vκ領域ポリペプチドおよび最も近いヒト生殖細胞系列V領域ポリペプチドと約90%同一であり、または最も近いヒト生殖細胞系列Vκ領域ポリペプチドおよび最も近いヒト生殖細胞系列V領域ポリペプチドと約95%同一である。
【0016】
関連する態様において、本発明は、3番目のショートコンセンサスリピート(「SCR」)領域でB因子に選択的に結合すると共にC3bBb複合体の形成を防止するマウスモノクローナル抗体1379(「mAb1379」)に由来するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片であって、約1.0×10-8Mから約1.0×10-10Mの間
の平衡解離定数(「KD」)を有するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断
片を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22(TA10参照抗体)、配列番号24(TA101−1 Fab’)26(TA102−4、Fab’)、および配列番号28(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択された、3番目の相補性決定領域(「CDR3」)および4番目のフレームワーク領域(「FR4」)に由来する結合特異性決定基(「BSD」)を有するVκ領域を備え、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片のV領域は、配列番号23(TA10参照抗体)、配列番号25(TA101−1 Fab’)、配列番号27(TA102−4、Fab’)、および配列番号29(TA103−2、Fab’)から成るグループから選択された、CDR3−FR4領域に由来するBSDを有する。
【0018】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22(TA10参照抗体)を有するVκ領域BSDポリペプチドと配列番号23(TA10参照抗体)を有するV領域BSDポリペプチドを備え、6.55×10-9MのKD
を有する。
【0019】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号24(TA101−1 Fab’)を有するVκ領域BSDポリペプチドと配列番号2
5(TA101−1 Fab’)を有するV領域BSDポリペプチドを備え、4.53×10-9MのKDを有する。
【0020】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号26(TA102−4、Fab’)を有するVκ領域BSDポリペプチドと配列番号27(TA102−4、Fab’)を有するV領域BSDポリペプチドを備え、5.40×10-9MのKDを有する。
【0021】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号28(TA103−2、Fab’)を有するVκ領域BSDポリペプチドと配列番号29(TA103−2、Fab’)を有するV領域BSDポリペプチドを備え、3.73×10-9MのKDを有する。
【0022】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、Fab’、(Fab’)2、Fv、scFv、および二重特異性抗体から成るグループから選択
される抗原結合断片を有する。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体の抗原結合断片はFab’である。
【0023】
別の態様では、本発明は、3番目のショートコンセンサスリピート(「SCR」)領域でB因子に選択的に結合すると共にC3bBb複合体の形成を防止するマウスモノクローナル抗体1379(「mAb1379」)に由来するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号14(TA10参照抗体)、配列番号16(TA101−1 Fab’)、配列番号18(TA102−4 Fab’)、および配列番号20(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択されたVκ領域ポリペプチドと、配列番号15(TA10参照抗体)、配列番号17(TA101−1 Fab’)、配列番号19(TA102−4、Fab’)、および配列番号21(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択されたV領域ポリペプチドとを備えたヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0024】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14(TA10参照抗体)を有するVκ領域ポリペプチドと、配列番号15(TA10参照抗体)を有するV領域ポリペプチドとを備える。
【0025】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16(TA101−1 Fab’)を有するVκ領域ポリペプチドと、配列番号17(TA101−1 Fab’)を有するV領域ポリペプチドとを備える。
【0026】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号18(TA102−4、Fab’)を有するVκ領域ポリペプチドと、配列番号19(TA102−4、Fab’)を有するV領域ポリペプチドとを備える。
【0027】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号20(TA103−2、Fab’)を有するVκ領域ポリペプチドと、配列番号21(TA103−2 Fab’)を含むV領域ポリペプチドとを備える。
【0028】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14(TA10参照抗体)、配列番号16(TA101−1 Fab’)、配列番号18(TA102−4、Fab’)、および配列番号20(TA103−2、Fab’)から成るグループから選択されたVκ領域ポリペプチドを備える。
【0029】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号15(TA10参照抗体)、配列番号17(TA101−1 Fab’)、配列番号19(TA102−4、Fab’)、および配列番号21(TA103−2、Fab’)から成るグループから選択されたV領域ポリペプチドを備える。
【0030】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、Fab’、(Fab’)2、Fv、scFv、および二重特異性抗体から成るグループから選択
された抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体の抗原結合断片はFab’である。
【0031】
別の態様では、本発明は、3番目のショートコンセンサスリピート(「SCR」)領域でB因子に選択的に結合すると共にC3bBb複合体の形成を防止するマウスモノクローナル抗体1379(「mAb1379」)に由来するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片であって、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片のVκ領域は、配列番号22(TA10参照抗体)、配列番号24(TA101−1 Fab’)26(TA102−4、Fab’)、および配列番号28(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択された、3番目の相補性決定領域(「CDR3」)および4番目のフレームワーク領域(「FR4」)に由来する結合特異性決定基(「BSD」)を有し、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片のV領域は、配列番号23(TA10参照抗体)、配列番号25(TA101−1 Fab’)、配列番号27(TA102−4、Fab’)、および配列番号29(TA103−2、Fab’)から成るグループから選択された、CDR3−FR4領域に由来するBSDを有する、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0032】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22(TA10参照抗体)を有するVκ領域BSDポリペプチドと配列番号23(TA10参照抗体)を有するV領域BSDポリペプチドを備える。
【0033】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号24(TA101−1 Fab’)を有するVκ領域BSDポリペプチドと配列番号25(TA101−1 Fab’)を有するV領域BSDポリペプチドを備える。
【0034】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号26(TA102−4、Fab’)を有するVκ領域BSDポリペプチドと配列番号27(TA102−4、Fab’)を有するV領域BSDポリペプチドを備える。
【0035】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号28(TA103−2、Fab’)を有するVκ領域BSDポリペプチドと配列番号29(TA103−2、Fab’)を有するV領域BSDポリペプチドを備える。
【0036】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22(TA10参照抗体)、配列番号24(TA101−1 Fab’)26(TA102−4、Fab’)、および配列番号28(TA103−2 Fab’)から成るグループから選択された、3番目の相補性決定領域(「CDR3」)および4番目のフレームワーク領域(「FR4」)に由来する結合特異性決定基(「BSD」)を有する。
【0037】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片のV領域は、配列番号23(TA10参照抗体)、配列番号25(TA101−1 Fab’)、配列番号27(TA102−4、Fab’)、および配列番号29(TA103−2、Fab’)から成るグループから選択された、CDR3−FR4領域に由来するBSDを有
する。
【0038】
特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、Fab’、(Fab’)2、Fv、scFv、および二重特異性抗体から成るグループから選択
される抗原結合断片を有する。特定の実施形態では、ヒューマニア化抗B因子抗体の抗原結合断片はFab’である。
【0039】
別の態様では、本発明は、副補体経路の活性化が役割を果たす疾病または障害を治療する方法であって、3番目のショートコンセンサスリピート(「SCR」)領域でB因子に選択的に結合すると共にC3bBb複合体の形成を防止するマウスモノクローナル抗体1379(「mAb1379」)に由来し、かつ約1.0×10-8Mから約1.0×10-10Mの間の平衡解離定数(「KD」)を有するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片を、該疾病または該障害に罹患しているかまたは該疾病または該障害を起こす危険性のある個体へ投与することからなる方法を提供する。
【0040】
特定の実施形態では、疾病または障害が気道過敏症(「AHR」)である。
特定の実施形態では、任意のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片が、該抗体またはその抗原結合断片の投与前と比較して前記個体においてAHRまたは気道炎症を低減するのに有効な量で前記個体に投与される。
【0041】
特定の実施形態では、AHRまたは気道炎症が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、気腫、気管支炎、アレルギー性気管支炎気管支拡張症、嚢胞性繊維症、結核、過敏性肺炎、職業性喘息、類肉腫、気道過敏症症候群、間質性肺疾患、好酸球増加症、鼻炎、副鼻腔炎、運動誘発性喘息、汚染誘発性喘息、咳変形喘息、寄生性肺疾患、呼吸器合胞体ウイルス(「RSV」)感染、パラインフルエンザウイルス(「PIV」)感染、ライノウイルス(「RV」)感染およびアデノウイルス感染から成るグループから選択された疾病に関連する。特定の実施形態では、AHRまたは前記気道炎症がアレルギー性炎、喘息、またはCOPDに関連する。
【0042】
別の態様では、本発明は、副補体経路の活性化が寄与する疾病もしくは障害、副補体経路の活性化が該疾病もしくは該障害の少なくとも1つの徴候を悪化させる該疾病もしくは該障害、または副補体経路の活性化が引き起こす該疾病もしくは該障害に罹患しているかまたは該疾病もしくは該障害を起こす危険性のある個体において該副補体経路の活性化を選択的に阻害する方法であって、本明細書に開示のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片を、該副補体経路の活性化の阻害を必要とする個体へ投与することからなる方法を提供する。
【0043】
別の態様では、本発明は、有効量の本明細書に開示のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片と、医薬として許容される担体とを含有する医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、医薬として許容される担体は、乾燥分散粉末;無水エタノール;小型カプセル;リポソーム;霧状スプレー;および注射可能な賦形剤;から成るグループから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】mAb1379を生産するハイブリドーマから単離したmRNAから調製した第1鎖cDNAの鋳型を使用した縮重V領域特異的プライマーにより生成した二本鎖cDNA生成物を示すアガロースゲル。
【図2】mAb1379を生産するハイブリドーマ細胞株からクローニングされたVおよびVκcDNA配列に由来するアミノ酸配列の比較。
【図3】mAb1379から決定されたクローニングされたアミノ酸配列に対するクローニングされたVおよびVκcDNA配列から得られたクローニングしたアミノ酸配列の比較。
【図4】パパイン消化による、クローニングされたFab’TA003と、mAb1379由来のFab’との間のB因子結合の比較。
【図5】バイオレイヤー(bio-layer)干渉法によるForteBio Octetシステムで分析した組み換えヒトB因子に対するFab’断片結合の動力学。
【図6】ヒューマニア化抗体単離物TA101−1、TA102−4およびTA103−2の配列に由来するアミノ酸配列の、参照抗体TA10からのおよび最も近いヒト生殖細胞系の軽鎖および重鎖可変ドメイン遺伝子(「VL」および「VH」遺伝子)および連結セグメント(「J−セグメント」)からの対応する配列に対する比較。(ヒトVH1−02/JH4およびVκIV−B3/Jκ2)。
【発明を実施するための形態】
【0045】
補体B因子に選択的に結合すると共に副補体経路の活性化を選択的に阻害するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片が、ヒトを含む動物の副補体経路に関与する任意の疾病または障害を治療するために使用され得る。詳細には、そのような抗体またはその抗原結合断片は、副補体経路の活性化が役割を果たすヒトを含む動物の任意の疾病または障害を治療するために使用され得る。そのような疾病または障害には、例えば、アレルギー性喘息およびそれに伴う気道炎症および気道過敏症(「AHR」)、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、気腫、気管支炎、アレルギー性気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症、結核、過敏性肺炎、職業性喘息、類肉腫、気道過敏症症候群、間質性肺疾患、好酸球増加症、鼻炎、副鼻腔炎、運動誘発性喘息、汚染誘発性喘息、咳喘息、寄生性肺疾患、呼吸器合胞体ウイルス(「RSV」)感染、パラインフルエンザウイルス(「PIV」)感染、ライノウイルス(「RV」)感染、およびアデノウイルス感染、ならびに虚血再潅流傷害が含まれる。例えば、本明細書に援用する特許文献1を参照されたい。
【0046】
アレルギー性喘息は気道炎症およびAHRに関連する共通の徴候である。アレルギー性喘息の患者では、吸入したアレルゲンへの接触により、AHRおよび気道炎症の増加につながる。研究により、気管支肺胞洗浄(「BAL」)液中のタンパク質に、タンパク質の補体C3、C4およびC5ファミリー、特にC3aおよびC5aに由来する生物活性断片のレベルが上昇することが示された。これは、このような患者では、アレルゲンにより誘発される機構による補体経路の活性化がアレルゲンへの曝露の後に肺で起こることを示唆している。動物モデルは、アレルギー性気道疾病の進展に対する補体の役割のさらなる洞察を与えた。C3またはC3a受容体欠損動物は、アレルゲン誘発性気道疾病の進展から保護されているように思われる。例えば、本明細書に援用する特許文献1を参照されたい。
【0047】
定義
本明細書に使用する場合、用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、タンパク質の免疫グロブリン(「Ig」)スーパーファミリーの糖タンパク質のことを指す。抗体または免疫グロブリン(「Ig」)分子は四量体であり、2つの同一の軽鎖ポリペプチドと2つの同一の重鎖ポリペプチド(用語「軽鎖ポリペプチド」および「軽鎖」または「重鎖ポリペプチド」および「重鎖」は、Ig分子のポリペプチドを説明するために本明細書では互換的に使用する)を有する。2つの重鎖はジスルフィド結合により連結され、各重鎖がジスルフィド結合により軽鎖に連結される。各全長Ig分子は、特異的標的または抗原に対する少なくとも2つの結合部位を有する。
【0048】
免疫系は、いくつかの異なるクラスのIg分子(「アイソタイプ」)を生産し、それに
はIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが含まれるが、各々は存在する重鎖ポリペプチドの特定のクラスによって同定される。つまり、アルファ(「α」)がIgAに見出され、デルタ(「δ」)がIgDに見出され、イプシロン(「ε」)がIgEに見出され、ガンマ(「γ」)がIgGに見出され、ミュー(「μ」)がIgMに見出される。IgGでは少なくとも5つの異なるγ重鎖ポリペプチド(「アイソタイプ」)が見出される。対照的に、軽鎖ポリペプチドのアイソタイプはカッパー(「κ」)およびラムダ(「λ」)だけである。抗体アイソタイプの異なる特性は、重鎖の定常領域の配列により定義される。
【0049】
IgG分子は、ジスルフィド結合により共に結合された2つの軽鎖(κまたはλ型)と2つの重鎖(γ型)とを有する。IgG軽鎖のκ型とλ型はいずれも、可変領域(「VL
−」、「Vκ−」、または「Vλ−領域」等と様々に呼ばれる)と呼ばれる比較的可変なアミノ酸配列の領域と、定常領域(「C−領域」)と呼ばれる比較的保存されたアミノ酸配列の領域とを備えている。同様に、各IgG重鎖は、可変領域(「V領域」)と1つまたは複数の保存領域とを備える。すなわち、完全なIgG重鎖は3つの定常領域(「C1(−)」、「C2(−)」および「C3(−)領域」)と、ヒンジ領域とを備えている。各VL領域またはV領域内には、相補性決定領域(「CDR」)としても知
られる超可変領域が、比較的保存されたフレームワーク領域(「FR」)の間に散在する。一般に、軽鎖または重鎖のポリペプチドの可変領域は、ポリペプチドに沿って以下の順に配置された4つのFRと3つのCDRを含む:NH2−FR1−CDR1−FR2−C
DR2−FR3−CDR3−FR4−COOH。CDRとFRは共に、IgG結合部位の三次元構造を決定し、従って、IgG分子が結合する特定の標的タンパク質または抗原を決定する。各IgG分子は二量体であり、2つの抗原分子に結合することが可能である。プロテアーゼパパインによる備えた二量体IgGの開分裂により、2つの同一の抗原結合断片(「Fab’」)と、「Fc」断片とが生じる(Fcがこのように命名されているのは容易に結晶化するためである)。
【0050】
本明細書に使用する場合、用語「抗原結合断片」は、特にその同族抗原に結合する能力を保持する抗体または免疫グロブリン分子の断片を指す。抗原結合断片は、一般に、補体を固定する能力を与えると共に抗体依存的細胞媒介性細胞毒性(「ADCC」)を刺激する完全長抗体またはIg分子中に存在する1つまたは複数の機能的領域(ドメイン)の一部または全部を欠いている。抗原結合断片は、完全長抗体の単離物から調製することが可能である。分離する、パパイン(これは可変、抗体軽鎖の可変領域および定常領域と抗体重鎖の可変領域および第1の定常領域とを含む2つの同一の1価抗原結合断片(「Fab’」)を生成する)またはペプシン(これはそれらのカルボキシル末端付近で共有結合された一対のFab’断片を備えた一つの二価の抗原結合断片(「Fab’)2」を生成す
る)を含むプロテアーゼによる消化により、調製可能である。
【0051】
「Fv」断片、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、二特異性抗体(bi-specific antibody)、二重特異性抗体(diabody)、ヒト化抗体またはヒューマニア化抗体もしくはその
等価物等の他の抗原結合断片は、標準的組換えDNA法を用いて生産可能である。「Fv」断片は、完全な抗原認識および結合部位を有し、1つのV領域と1つのV領域からなる二量体を含む抗体断片である。「scFv」抗体断片は、一本のポリペプチド鎖にVと1つのV領域を含む。「二重特異性抗体」は、同じポリペプチド中で重鎖可変領域が軽鎖可変領域に接続された2つの抗原結合部位を備えた小さな抗体断片である。同じポリペプチドのV領域とV領域がペアを形成できないように非常に短いリンカーを使用することによって、領域は、第2のポリペプチドの相補的領域と対を形成し、2つの抗原結合部位を形成するようにされる。
【0052】
本明細書に使用する場合、用語「結合特異性決定基」すなわち「BSD」は、特定のI
g分子の抗原結合特異性を媒介する、IgG VまたはVポリペプチドの3番目の相補性決定領域(「CDR3」)と4番目のフレームワーク領域(「FR4」)ののアミノ酸配列の全部または一部を指す。BSDは、特定のBSDが同族のVH由来のCDR3−
FR4のアミノ酸配列と対を形成するV領域由来のCDR3−FR4のアミノ酸配列を含むように、重鎖および軽鎖対において機能する。
【0053】
本明細書に使用する場合、用語「エピトープ」は、抗体、免疫グロブリンまたは抗原結合断片が結合する所与のタンパク質、ポリペプチドまたは抗原(すなわちB因子)等の巨大分子上の部位であって、それに対する抗体が生産される部位を指す。用語「エピトープ」は、用語「抗原決定基」、「抗体結合部位」または所与のタンパク質、ポリペプチドまたは抗原の「保存された結合表面」と互換的に使用することが可能である。より詳細には、エピトープは、抗体結合に関与するアミノ酸残基により、および三次元空間でのそのコンホメーション(例えばコンホメーショナル(立体配置的)エピトープまたは保存された結合表面)により、定義することが可能である。エピトープは、たった約4−6個のアミノ酸残基の小さなペプチドに含まれる場合もあるし、タンパク質のより大きなセグメントに含まれる場合もあり、エピトープの三次元構造を参照する場合には、特に抗体結合エピトープに関しては、連続するアミノ酸残基で構成される必要はない。抗体結合エピトープは、連続的または直線エピトープというよりもしばしばコンホメーショナルエピトープであり、あるいは言い換えれば、抗体が結合するタンパク質またはポリペプチドの表面上に3次元に配置されたアミノ酸残基により定義されるエピトープである。上述したように、コンホメーショナルエピトープは、連続するアミノ酸残基の配列では構成されず、代わりに、残基は恐らく一次タンパク質配列では広く分離されており、タンパク質がその天然のコンホメーションに3次元に折り畳まれる方法によって結合表面を形成するために共に集合される。
【0054】
mAb1379により認識され、本明細書に記載するヒューマニア化バリアントにより共有されるエピトープは、B因子の3番目のSCR領域の一部分の三次元構造内に位置する直線エピトープではないコンホメーショナルエピトープである。例えば本明細書に援用する特許文献1を参照されたい。
【0055】
ヒトB因子は、その端末アミノ酸1−25にわたる25個のアミノ酸シグナルペプチドを含む764個のアミノ酸プレプロタンパク質として発現される。ヒトB因子プレプロタンパク質のアミノ酸配列は、NCBIデータベース悪セッション番号第P00751でも見出される。成熟ヒトB因子は、25個のアミノ酸シグナルペプチドがないアクセッション番号第P00751のアミノ酸配列(つまり配列番号30)を含む。成熟ヒトB因子の3番目のSCR領域はP00751の位置137から位置195まで延びている。エピトープを含む部分は配列番号30のアミノ酸位置Ala137−Ser192のほぼ全部(例えば少なくとも約90%)により定義されるB因子の三次元構造であるか、または天然完全長B因子配列で起こるようにコンホメーショナルに配置された非ヒトB因子配列の等価な位置である。
【0056】
マウスmAb1379、および本明細書に記載のヒューマニア化バリアントは、成熟ヒトB因子タンパク質(配列番号30)のTyr139位置からSer185位置までを含む配列の少なくとも一部を含むヒトB因子のエピトープを含む3番目のSCR領域の一部内にあるか少なくとも該配列を含むエピトープまたは保存された結合領域、成熟ヒトB因子タンパク質(配列番号30)のTyr139位置からSer141位置までを含む配列の少なくとも一部を含むヒトB因子のエピトープ、成熟ヒトB因子タンパク質(配列番号30)のGlu182位置からSer185位置までを含む配列の少なくとも一部を含むヒトB因子のエピトープ、非ヒトB配列における以下の1つまたは複数の位置またはその等価な位置を含むヒトB因子(配列番号30)の少なくとも一部を含むB因子のエピトー
プ:Ala137、Tyr139、Cys140、Ser141、Glu182、Gly184、またはSer185、もしくは非ヒト動物種の等価な位置の少なくとも一部分を含むエピトープに結合する。別の態様では、エピトープは、配列番号30の以下のアミノ酸位置または非ヒトB因子配列における該位置に等価な位置のうちの全部またはほぼ全部を含むB因子の3番目のSCR領域部分の一部内にあるか、該部分を含む:Ala137、Tyr139、Ser141、Glu182、Ser185、Thr189、Glu190およびSer192。
【0057】
当業者は、容易にヒトB因子の配列を別の動物種由来のB因子の配列と配列させ、SCR領域の位置と上記のアミノ酸位置に対応する3番目のSCR領域の特異的部分とを決定することが可能である。例えば、2つの特定の配列は、本明細書に援用するTatusova and
Madden, (1999), “Blast 2 sequences--a new tool for comparing protein and nucleotide sequences”, FEMS Microbial. Lett.174:247-250に記載されているようにBLA
ST 2を使用して互いに配列させることが可能である。
【0058】
本明細書に使用する場合、用語「選択的に結合する」とは、その結合レベルが任意の標準的測定法(例えば免疫測定法)で測定されるように測定のバックグラウンド対照より統計的に有意に高い、あるタンパク質の別のタンパク質(例えば抗体、その抗原結合断片、または抗原に対する結合パートナー)への特異的結合のことを指す。例えば、免疫測定法を行なう場合、対照は通常、抗体またはその抗原結合断片のみを含む(すなわち抗原がない)反応ウェルまたはチューブを備え、抗原がない状態での抗体または抗原結合断片による反応性の量(例えばウェルまたはチューブへの非特異的結合)がバックグラウンドシグナルであると考えられる。結合は当該技術分野における種々の方法を使用して測定することができ、それにはウェスタンブロット、イムノブロット、酵素結合免疫アッセイ(「ELISA」)、ラジオイムノアッセイ(「RIA」)、免疫沈降法、表面プラスモン共鳴、化学発光法、蛍光偏光、燐光、免疫組織化学分析法、飛行時間型マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(「MALDI−TOF」)質量分析法、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡法、蛍光活性化細胞選別法(「FACS」)およびフローサイトメトリーが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0059】
本明細書に使用する場合、疾病を「処理する」とは、TA101−1、TA102−4およびTA103−2のような上述のmAb1379ヒューマニア化バリアントまたはその抗原結合断片を、他の治療薬を併用するか併用せずに、疾病または疾病の兆候を一時的に抑えるか、改善するか、安定化するか、逆転させるか、減速させるか、防止するか、軽減するか、または除去するために、もしくは疾病または疾病の徴候の進行を遅延させるかまたは停止するために、投与することとして定義される。組成物の「有効量」とは、疾病を治療するのに十分な量である。
【0060】
本明細書に使用する場合、個人における副補体経路を「阻害する」とは、副補体経路の一部である少なくとも1つのタンパク質の発現および/または生物活性を阻害することを指す。そのようなタンパク質には、B因子、D因子、またはプロパージンが含まれるがそれらに限定されるわけではない。副補体経路を「選択的に」阻害するとは、本発明に記載の方法が副補体経路を優先的にまたは専ら排他的に阻害するが、古典的補体経路またはレクチン経路を含む他の補体活性化の経路は阻害しないか少なくとも本質的に阻害しないことを意味する。例えば、本発明のヒューマニア化B因子抗体およびその抗原結合断片は、選択的に副補体経路を阻害する試薬の1例である。この定義は副補体経路が選択的に阻害される他の方法にも適用される。
【0061】
「個体」とは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には家畜、娯楽動物、ペット、霊長類、マウスおよびラットが含まれるが、これらに限定
されるわけではない。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体はヒト以外の個体である。いくつかの実施形態では、個体は、副補体経路が関与する疾病に関する研究用の動物モデルである。治療を受ける個体は、現在は無症候であるが、副補体経路が役割を果たすか副補体経路の活性化が役割を果たす徴候的な障害を進展させる危険性のある固体を含む。
【0062】
「組成物」の包括的参照は、本発明の組成物を包含し、本発明の組成物に適用される。
本明細書に使用する場合、単数や数詞を特に複数に特定しない名詞は、他に明記されていない場合、複数も含む。例えば、用語「V領域」は、1つまたは複数のV領域を含む。
【0063】
値やパラメータについている「約」は、その値またはパラメータ自身に関する実施形態を含み、かつ説明している。例えば、「約X」という記載は、「X」の記載を含む。
本明細書で説明する本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「から成る」および/または「から本質的に成る」ことを含む。
1.導入
抗体ヒューマニリング(米国商標)は、参照抗体の結合特異性および親和性を保持しつつヒト生殖細胞系列配列に近い可変領域(「V領域」)配列を備えた人為設計されたヒト抗体を生成する。例えば米国特許出願出願公開第2005/0255552A1号または米国特許出願出願公開第米国2006/0134098A1号を参照されたい。プロセスは、参照抗体のV領域から、抗原に結合特異性を決定するのに必要な最小の配列情報を同定し、その情報を、ヒト抗体V領域のエピトープに焦点を当てたライブラリを生成するために部分的ヒトV領域遺伝子配列のライブラリに移す。ライブラリのメンバーは微生物に基づく分泌システムを使用して抗体Fab’断片として発現される。次にライブラリはコロニーリフト結合アッセイを使用して抗原結合Fab’についてスクリーニングされる。標的抗原に対して最も高い結合親和性を有するものを同定するために、陽性クローンをさらに特徴付ける。得られた人為設計Fab’ヒト断片は親のマウス抗体の結合特異性を保持しており、好ましくは親抗体と等しいかそれよりも高い抗原へ結合親和性を有している。好ましくは、人為設計Fab’断片は、最も近いヒト生殖細胞系列の抗体遺伝子と比較して、アミノ酸配列が高度に同一な重鎖および軽鎖V領域を有している。
【0064】
エピトープに焦点を当てたライブラリを生成するのに必要な最小の結合特異性決定基(「BSD」)は、通常、抗体重鎖のCDR3(「CDR3」)内の配列および抗体軽鎖のCDR3(「CDR3」)内の配列により表わされる。ある場合には、エピトープに焦点を当てたライブラリが、BSDを含むCDR3とFR4の交点で固有領域に連結されたヒトVセグメント配列(「Vセグメント」(「Vセグメント」はFR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3を含む)と、ヒト生殖細胞系列連結セグメント(「J−セグメント」)配列とから構築される。米国特許出願出願公開第2005/0255552A1を参照されたい。代わりに、ヒトVセグメントライブラリを、マウスVセグメントの一部のみを初めにヒト配列のライブラリにより置き換えることにより逐次カセット置換法により生成することも可能である。その後、残りのマウス配列のないようにおける抗原結合をサポートする同定されたヒト「カセット」が、完全なヒトVセグメントを生成するために第2のライブラリスクリーンに組み込まれる。米国特許出願出願公開第2006/0134098A1を参照されたい。どの場合でも、参照抗体からの特異性決定基を含む対になっている重鎖および軽鎖CDR3−FR4を使用して結合特異性をもたせ、ライブラリから得られた抗原結合Fab’断片が開始抗体(つまりmAb1379)のエピトープ特異性を保持するようにする。
【0065】
最適な結合動力学を有する抗体を同定するために、ライブラリの構築中に、各鎖のCDR3領域に追加の成熟的変化を導入してもよい。
得られたヒューマニア化抗体はヒト配列ライブラリに由来するVセグメント配列を有し、VおよびV鎖CDR3領域内からのショートBSD配列を保持し、ヒト生殖細胞系列FR4領域を有する。
【0066】
mAb1379のヒューマニア化のために、カセット置換がうまく使用された。B因子に対して高い親和性を有する多くのFab’断片が、このアプローチにより同定された。基準マウス抗体(すなわちmAb1379)よりもB因子に対して高い親和性を有する3つのヒューマニア化Fab’断片が同定された。
2.方法
2.1 mAb1379を生産するハイブリドーマからのマウスV領域のクローニング
マウスのV領域を、以下のようにmAb1379を生産するハイブリドーマからクローニングした。最初に、ハイブリドーマ細胞を確立されている手順により培養した。その後、細胞を収集し、伝令RNA(「mRNA」)を当業者に周知の標準的手順により細胞ペレットから抽出した。第1鎖の相補的DNA(「cDNA」)を、精製mRNAから、当業者に周知の標準的方法に従って逆転写酵素を用いてポリ−デオキシチミジン(「poly−dT」)によるプライマー伸張により生成した。その後、第1鎖cDNAを、本願に援用するChardes, T., et al., “Efficient amplification and direct sequencing of mounse variable regions from any immunoglobuline gine family, “FEBS lett. 452(3): 384-394(1999)”に詳細に説明されている標準的手順に従って縮重プライマーを使用した抗体V領域配列の増幅用の鋳型として使用した。重鎖可変領域(「V」)および軽鎖可変領域Vκ(「Vκ」)領域からのcDNAを配列決定し、Taligenにより生成された
アミノ末端ペプチド配列データに対して同一性を有するかチェックした。V領域をV−Fab’断片としてクローニングし、KaloBios社専有の発現ベクターから大腸菌(「E.coli」)で発現させた。精製Fab’タンパク質は、標準的方法に従って実施した酵素結合免疫アッセイ(「ELISA」)において、精製B因子タンパク質に結合することが示された。
【0067】
2.2 Fab’の精製
Fab’断片はKaloBios社専有のタンパク質発現ベクターを使用して、E.coliで発現させた。細菌を、600nmの波長で測定した光学濃度が0.6吸光度単位となるように、2×YT培地(蒸留した脱イオン化水(「ddH2O」)1リットル当たり16g Ba
cto−トリプトン、10g Bacto酵母エキスおよび5gのNaCl)中で37℃にて培養した。タンパク質発現は、イソプロピルβ−チオガラクトピラノシド(「IPTG」)を使用して、33℃で3時間誘導した。所望のタンパク質の最適な発現を得るのに適したIPTG濃度は当業者に周知の方法を使用して経験的に決定されるが、通常は0.01mMから5.0mMの間で変化する。組み立てられたFab’断片は原形質膜分画から得られ、当業者に既知の標準的方法に従って連鎖球菌タンパク質Gカラム(HiTrapTM Protein G HPカラム;ニュージャージー州ピスカタウェイ所在のGE Healthcare社から購入)でのアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。Fab’断片を、以下すべて製造業者の説明書に従って、20mMリン酸ナトリウム(pH=7.0)でカラムに結合させ、pH=約2.0で0.1Mグリシン中で溶出し、直ちに適量の1M Tris−HCl(pH=9.0)で中性のpH(約7.0)に調整した。精製されたFab’断片っをその後リン酸干渉溶液(「PBS」)でpH=7.4にて(1×PBS=137 mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4および2mM KH2PO4;PBSにはCa2+およびMg2+が含まれていない)に対して透析した。
【0068】
2.3 酵素結合免疫測定法(「ELISA」)
Taligenは、3mgの精製組換えヒトB因子を提供した。一般に、50ngの精製組換
えB因子を4℃で一晩96ウェルのマイクロタイタープレートに吸着された。プレートを5%(w/v)粉末無脂肪ミルクのPBST溶液(137mM NaCl、2.7mM
KCl、10mM Na2HPO4、2mM KH2PO4および0.1%(v/v)トゥ
イーン20TM)でブロックした。精製したヒューマニア化Fab’断片または参照Fab’(「TA10」)を1×PBSに希釈した。50mlの抗体断片をマイクロタイタープレートの各クウェルに追加した。33℃で1時間後、マイクロタイタープレートのウェルをPBSTで3回リンスした。0.1ng/mlPBSTに希釈したワサビペルオキシダーゼ(「HRP」)(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス所在)と共役させた50
nlの抗ヒトκ鎖抗体を各ウェルに添加し、プレートを33℃で40分インキュベートした。その後、マイクロタイタープレートのウェルを、PBSTで3回、1×PBSで1回洗浄した。その後、100μl TMB(3、3’、5、5’−テトラメチルベンジデン)基質(Sigma社)を各ウェルに添加し、プレートを約5分間室温(約25℃)でイン
キュベートした。最後に、100μl 0.2N硫酸(H2SO4)を各ウェルに添加して反応をを停止した。プレートを450nmの波長で分光光度計で読み取った。
【0069】
2.4 コロニーリフト結合アッセイ
ヒューマニア化Fab’断片ライブラリを、本願に援用する米国特許出願出願公開第2005/0255552A1の実施例5に実質的に記載しているように組換えヒトB因子でコーティングしたニトロセルロースフィルタを用いてスクリーニングした。米国特許出願出願公開第2006/0134098A1号も参照されたい。
【0070】
簡単に説明すると、抗体ライブラリを、大腸菌TOP10等の適切な細菌宿主に形質転換した。形質転換細菌細胞を、2×YT寒天(1リットル中、16g カゼインの膵消化物、10g 酵母エキス、5g NaClおよび15g 寒天)(DifcoTM、Becton Dickinson、ニュージャージー州フランクリンレーク)および適切な選択剤(すなわちライブ
ラリを構築するように使用された特定のタンパク質発現ベクターに基づいて選択された抗生物質)を含むプレート上にプレーティングした。1枚のプレート当たりのコロニー数を最大限にしつつ個別の細菌コロニーを生産するよう、プレーティング効率を調節することが可能である。最適の密度では、10cmの直径プレートは約4000個のコロニーを含み、15cmの直径プレートは約10,000個のコロニーを含み、25cmの直径プレートは約50,000のコロニーを含むだろう。
【0071】
8.2cm直径、13.2cm直径または20cm直径のニトロセルロースフィルター(Watman(米国登録商標)Schileicher & Schuell(米国登録商標)Protran(米国登録商標
(Sigma Aldrich社、ミズーリ州セントルイス所在)を、経験的決定した濃度(通常0.
5μg/mlから20μg/mlの間)で、抗原(すなわちヒトB因子)のPBS溶液でプレコーティングした。コーティング溶液の量はフィルタサイズによって異なり、8.2cm径フィルタには4mlを使用し、13.2cm径フィルタには8mlを使用し、20cm径フィルタには20mlを使用した。フィルタは、33℃で2−3時間抗原PBS溶液中に面を下にして配置し、時々振動させた。その後、フィルタを過剰量のPBSでリンスし、250℃2時間5%(w/v)無脂肪乾燥ミルクのPBS溶液で振動させながらブロックした。その後、フィルタを排水し、PBS+0.1%のトゥイーン20(米国商標)で一回リンスし、選択剤(すなわち適当な抗生物質)および転写誘導剤(すなわちIPTG)を補給した2×YT液体培地で2回リンスした。次に、フィルタを排水し、適切な抗生物質およびIPTGを補給した2×YT寒天プレート(「発現プレート」)上に配置した。
【0072】
適切なサイズのコーティングしていない乾燥ニトロセルロースフィルターを所望の抗体断片数を発現しているE.coliライブラリを含むプレート上に面を下にして配置した。一旦フィルタが濡れたことが眼で観察されたら(約20−30秒)、フィルタを素早く持ち上げて発現プレート上のコーティングされたフィルタ上にコロニー側を上にして配置した。フィルタを後の同定が容易となるように適切なプレートと方向を示すようにマークする。
【0073】
ニトロセルロースフィルターの「サンドイッチ」で覆われていた発現プレートを33℃で12−16時間置いた。その時間の間に、細菌コロニーは抗体断片を発現し分泌した。その後、抗体断片を、コロニーリフトを含む第1のニトロセルロースフィルターによって、下にある抗原コーティングフィルタ上に拡散した。標的抗原結合可能な抗体断片(すなわちヒトB因子)を、抗原フィルタ上に保持した。
【0074】
抗原に結合した抗体断片を、免疫法により検出した。簡単に説明すると、抗原に結合した抗体断片を含むフィルタを、発現プレートから除去し、5分間、3回各々PBSTで洗浄し、5%(w/v)無脂肪粉ミルクPBST溶液に1.5時間25℃ブロックした。その後、フィルタ上に保持された抗原抗体断片複合体を、適切な一次抗体(例えばHRPに共役したヤギ抗κ抗体およびその同等物)でインキュベートし、その後必要ならば適切な二次抗体でインキュベートした。ビオチン/ストレプトアビジンを含む他の標準免疫検出法や、種々の蛍光標識を含む他の検出方法をして使用してもよい。その後、フィルタを10分間、4回各々PBSTで洗浄し、ペルオキシダーゼ基質溶液でインキュベートし、感光性写真フィルムに露出させた。代わりに、陽性コロニーを視覚化するためにTyphoon(Amersham Biosciences, GE Healthcare社、ニュージャージー州ピスカタウェイ所在)やFX-Pro PhosphorImager(Biorad社、カリフォルニア州ヘラクレス)のような種々のイメー
ジングシステムを使用してもよい。その後、フィルム上のイメージをその後適切なプレートに配置し、陽性コロニー(すなわち所望の抗原(例えばヒトB因子)に結合可能な抗体断片を生産しているコロニー)は採取し、2×YT培地に選択剤を加えたものに接種し、実質的に同じ手順を使用してCLBAの後続の回でさらに分析した。
【0075】
2.5 親和性の測定
Fab’断片の結合動力学をForteBio Octetバイオセンサ(ForteBio, Inc.社、カリフォルニア州メンローパーク)を使用して分析した。組換えヒトB因子を、製造業者の説明書に従って、EZ結合ビオチン化システム(Pierce Biotechnology社、イリノイ州ロックフォード所在)でビオチン化した。その後、抗原を、製造業者の説明書に従って、ニュートラアビジンでコーティングしたセンサ(ForteBio, Inc. 、カリフォルニア州メンロー
パーク)に結合させた。次に、Fab’結合を、製造業者により提供されたBio-layer干
渉系分析およびソフトウェアを使用してリアルタイムでモニタした。抗原結合親和性を測定された会合(「Kassoc」)定数および解離(「Kdissoc」)定数に基づいて試験した
Fab’断片について計算した。好ましくは、ヒューマニア化抗体または抗体断片は、参照抗体(すなわちmAb1379)または抗体断片(すなわちTA10)と同じかそれより高い平衡解離定数を備えていた。
【0076】
3. 結果
3.1 mAb1379を生産するハイブリドーマからV領域のクローニングおよび発現
3.1.1. 第1鎖cDNAからのVおよびVκ鎖の増幅
抗体軽鎖(κアイソフォーム)および重鎖からの可変領域を、15番目のVと18番目のVκのプライマーセットを使用して、第1鎖cDNAから増幅した。各Vプライマープライマーは、γ重鎖(すなわちマウスγ1アイソフォーム)の4つの共通のマウスア
イソフォームの1つの定常領域に特異的な適切な逆方向プライマーと対になった、既知のマウス重鎖ファミリーに特異的な15番目の縮重順方向プライマーの一つを含んでいた。例えばChardes et al., FEBS Lett. 452(3):386-394(1999)を参照されたい。各Vκプラ
イマーセットは、マウス軽鎖のκアイソフォーム定常領域に特異的な逆方向プライマーと対になった、既知のマウスκファミリーに特異的な18番目の縮重順方向プライマーの1つを含んでいた。例えばChardes et al., FEBS Lett. 452(3):386-394(1999)を参照され
たい。
【0077】
2つのプライマーセットが重鎖に対するPCR産物を生産し、2つのプライマーセットが軽鎖に対するPCR産物を生産した。縮重順方向プライマーを個々のマウスの重鎖ファミリーと軽鎖ファミリーの比較的保存されたシグナル配列にハイブリダイズするように設計したが、生殖細胞系列シグナル配列は変わるため、すべてのプライマー対が期待された産物を増幅するわけではない。さらに、免疫グロブリンの座は、Vκ10プライマー対(次の段落参照)によって生じ産物の場合のように、予想されたサイズの産物を生産する可能性があるが予想されたオープンリーディングフレームをコードしない偽遺伝子をしばしば含む。図1は、mAb1379を生産するハイブリドーマから単離したmRNAから調製した第1鎖cDNAから増幅した二本鎖cDNA産物を示すために、エチジウムブロマイドで染色したアガロースゲルである。プライマー対Vκ4(配列番号1(順方向プライマー)と配列番号2(逆方向プライマー)およびVκ10(配列番号3(順方向プライマー)と配列番号4(逆方向プライマー))は、抗体軽鎖から予期されたサイズの産物を生成した。プライマー対V6(配列番号5(順方向プライマー)と配列番号6(逆方向プライマー))およびV7(配列番号7(順方向プライマー)と配列番号8(逆方向プライマー)は、抗体重鎖から予期されたサイズの産物を生成した。
【0078】
3.1.2. マウスのV領域アミノ酸配列
上2つのパラグラフに記載したようにして得られたVおよびVκcDNAクローンを、正確な産物が得られたかどうかを確認するために標準的方法によりシーケンスした。得られたV領域配列を図2に示す。CDR配列を強調してある。オリジナルのmAb1379抗体に対応するマウスの生殖細胞系列配列と異なる2つのグルタミン残基を影付きの灰色で示している。V6(配列番号10)およびV7(配列番号11)のプライマーで得られた産物は、アミノ酸配列が同一であった。Vκ10産物をタンパク質のオープンリーティングフレームを乱した再配置すなわちフレームシフトを含むcDNAから増幅したが、図示しない。Vκ4(配列番号9)産物は予期されたオープンリーディングフレームを含んでいた。その後、選択したマウスVクローンのうちの1つをヒトIgGH
1領域に取り付け、マウスVκ4クローンをヒトIgCκ領域に取り付け、基準Fab’(すなわちTA10)を形成した。ヒューマニア化Fab’バリアントはヒト定常領域配列も含んでいた。
【0079】
3.1.3. Taligenによって提供される、クローニングされたV領域およびアミノ末端基アミノ酸配列の比較
その後、mAb1379のアミノ末端基アミノ酸配列は、クローニングされたVおよびVκ配列の同じ部分と比較された。図3は、V鎖(トップ、「1379H」(配列番号31)を「TA−V6」(配列番号33)と比較する)から、その後VとVκの鎖(底、「1379ポンド」(配列番号32)を「TA−Vκ4−」(配列番号34)と比較する)から第1で、配列の提携した部分を示す。mAb1379のアミノ末端基配列およびクローニングされた配列は、4つの残基(示された暗くなった灰色)とは別に同一だった。それらの違いは、アミノを得るために使用されるEdman低下反応の間に導入された誤差に起因した−mAb1379のターミナルのペプチド配列。
【0080】
3.1.4. ELISAによる、クローニングされたV領域のB因子結合活性の確認
次に、クローニングされたVHκ配列およびVκ配列のB因子に対する結合能を分析した。クローニングされたV領域およびVκ領域を細菌中でFab’断片として発現し、精製し、および稀釈ELISAでB因子への結合について試験した。図4は、mAb1379に由来するFab’に対する、クローニングされたFab’TA003のB因子結合を比較している。予想通り、クローニングされたFab’とマウスFab’はいずれも抗体および抗原濃度の両方に依存する結合曲線を生成した。
【0081】
3.2 mAb1379 V領域のヒューマニア化
3.2.1.ライブラリ構築およびV領域カセット
エピトープに焦点を当てたライブラリを、BSDおよびヒト生殖細胞系列J−セグメント配列を含む固有のCDR3−FR4領域にヒトVセグメントライブラリ配列(脾臓から分離)を連結させることにより構築した。
【0082】
これらの「完全長」ライブラリは、マウスのVセグメントの一部のみがヒト配列のライブラリと最初に置換された「カセット」ライブラリの構築のための基礎として使用した。VおよびVκ鎖の両方のためのカセットを、FR2領域内の重複する共通配列を用いてブリッジPCRにより作製した。このように、「フロントエンドの」および「中間の」ヒトカセットライブラリを、ヒトV1、V3およびVκIVアイソタイプに対して構築した。通常、約10,000個の固有のFab’クローンを「フロントエンドの」および「中間の」ヒトカセットライブラリ間でスクリーニングし、参照抗体または抗体断片(すなわちmAb1379またはTA10)の結合親和性と少なくとも等しいかそれより大きい結合親和性で所望の抗原(すなわちヒトB因子)と結合する候補抗体断片のプールを同定する。
【0083】
B因子への結合をサポートした「フロントエンドの」および「中間の」カセットを、コロニーリフト結合アッセイにより同定し、ELISAおよびForteBio分析での親和性によって格付けした。本願に援用する米国特許出願出願公開第番号2005/0255552
A1の実施例5に本質的に記載されているように、コロニーリフト結合アッセイを上述のように行った。その後、最も高い親和性を有する「カセット」プール(好ましくはTA10のmAb1379由来のFab’に等しいかそれより大きい抗原結合親和性)を、第2ライブラリスクリーニングで共通のFR2配列により組み合わせ、完全なヒトVセグメントを生成した。
【0084】
高い親和性を有するプールの同定後、完全にヒューマニア化されたFab’断片と、親和性成熟ライブラリを構築した。ヒューマニア化Fab’クローンのパネルの共通BSD配列を、縮重PCRプライマーを使用してランダムに変異させ、ライブラリを生成した。これらの変異ライブラリをコロニーリフト結合アッセイによりスクリーニングした。選択されたFab’断片をELISAおよびForteBio分析での親和性によって格付けした。TA10のFab’断片に比べて等しいかそれより改良された抗原に対する結合親和性をサポートする変異型を同定した。
【0085】
ある場合には、ヒューマニア化プロセスによって、標的抗原に対して同じか非常に似た結合親和性を有する完全にプールに完全にヒューマニア化されたFab’断片のプールが単離された。そのような場合では、Fab’断片のプールをシーケンスし、最も近いヒト生殖細胞系列VおよびVL(すなわちVκ−)領域配列と比較し、ヒト生殖細胞系列に
対して最も高いアミノ酸配列同一性を有するヒューマニア化抗体断片をさらなる分析のために選択する。ヒト生殖細胞系列配列に対するアミノ酸配列同一性の程度が高いほど、ヒューマニア化抗体または抗体断片が免疫原性が低くなる。従って、免疫または炎症反応を刺激したり、既存の免疫または炎症反応を増大させたりする可能性が低い。mAb1379のヒューマニア化バリアントは、免疫または炎症反応が既に生じている状態(すなわち気道過敏症等のように副補体経路の活性化が役割を果たす状態)を治療するために使用され得るため、ヒューマニア化バリアントの免疫原性はできるだけ低減される必要がある。さらに、肺への(すなわち、本明細書で想定される場合吸入により)タンパク質の投与は、他の投与経路よりも免疫反応を引き起こす可能性が高いため、ヒューマニア化抗B因子バリアントの免疫原性が最小であることはさらに重要である。
【0086】
したがって、最も近いヒト生殖細胞系列配列に対してできるだけ高いアミノ酸配列同一
性を有するヒューマニア化バリアント(mAb1379に由来したバリアントの場合、最も近いヒト生殖細胞系列配列はVκIV−B3/Jκ2(配列番号12)およびV1−02/J4(配列番号13)である)を単離することが望ましい。好ましくは、ヒューマニア化バリアントは最も近いヒト生殖細胞系列VおよびVκ領域アミノ酸配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有し、より好ましくは最も近いヒト生殖細胞系列VおよびVκ領域アミノ酸配列に対して少なくとも85%と同一、さらにより好ましくは最も近いヒト生殖細胞系列VおよびVκ領域アミノ酸配列に対して少なくとも90%同一、もっと好ましくは最も近いヒト生殖細胞系列VおよびVκ領域アミノ酸配列に対して少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する。
【0087】
好ましくは、ヒューマニア化抗体バリアントは、参照抗体または抗体断片と等しいかそれより大きな結合親和性を有し、最も近いヒト生殖細胞系列配列に対して80%同一、最も近いヒト生殖細胞系列配列に対して85%同一、最も近いヒト生殖細胞系列配列に対して90%同一、または最も近いヒト生殖細胞系列配列に対して95%同一のアミノ酸配列を有するVおよびVκ領域をさらに備えるだろう。いずれの特性も備えたヒューマニア化抗体または抗体断片バリアントが必ずしも可能であるとは限らない。
【0088】
3.2.2.ForteBio Octet分析を用いたヒトB因子に対するFab’断片の結合親和性
完全ヒューマニア化Fab’断片を、コロニーリフトにより分離し、ELISAによりB因子結合材として確認した。ELISAによる強い陽性シグナルを示すヒューマニア化Fab’断片を精製し、mAb1379由来のマウスのV領域配列を有する参照Fab’断片TA10と比較してさらに特徴付けた。組換えヒトB因子に結合するFab’断片の動力学を、Bio-layer干渉法によりForteBio Octetを用いて分析し、タンパク質同士のリ
アルタイムな非標識のモニタリングを提供した。代表的な動力学分析は図5に示す通りである。測定された会合(Kassoc)定数と解離(Kdissoc)定数と、計算した平衡解離定
数(KD=Kdissoc/Kassoc)(すなわち結合親和性)を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
3つすべてのヒューマニア化抗体断片が、TA10参照抗体断片と等しいかそれより良好な平衡解離定数を有していることは明らかである。
3.3 ヒューマニア化Fab’断片の配列分析
3.3.1.参照Fab’とヒューマニア化Fab’のアミノ酸配列のアラインメント
動力学の特徴付けの後、上記3つのヒューマニア化抗体単離物をシーケンスした。抗体単離物TA101−1(配列番号16および17)、TA102−4(配列番号18およ
び19)、およびTA103−2(配列番号20と21)のVκおよびV領域配列由来のアミノ酸配列を、参照抗体TA10(配列番号14および15)由来の対応配列および最も近いヒト生殖細胞系列軽鎖および重鎖可変領域遺伝子(「Vκ」および「V」」)および連結セグメント(「J−セグメント」)(ヒトVκIV−B3/Jκ2(配列番号12)およびV1−02/JH4(配列番号13)と比較した。アラインメントした配列を図6に示す。配列CDR1、CDR2およびCDR3をボックスで囲み標識した。対応する生殖細胞系列位置(CDR3 BSD配列以外)と異なるアミノ酸残基を影付きの灰色で示している。ヒューマニア化バリアントTA101−1、TA102−4およびTA103−2のCDR3アミノ酸配列に対する親和性成熟変化を影付き灰色、太字で示す。
【0091】
特定の実施形態では、TA101−1(配列番号35)、TA102−4(配列番号36)およびTA103−2(配列番号37)のV領域配列を、ヒューマニア化抗B因子バリアントのアミノ末端グルタミン(Q)残基を、参照抗体(TA10)およびオリジナルmAb1379に見出されるグルタミン酸(E)残基に置換するように修飾する。この変更は、グルタミン(Q)残基の環化を防ぎ、ヒューマニア化バリアントを製造する場合のより均質な最終産物を促進する。最も近いヒト生殖細胞系列遺伝子(V1/J4(配列番号13)−02)もそのアミノ末端にグルタミン(Q)残基を有するが、この保守的なアミノ酸置換はバリアントの免疫原性に最小の影響しか及ぼさないものと思われる。
【0092】
3.3.2. ヒト生殖細胞系列配列に対する同一性パーセント
最後に、TA101−1、TA102−4およびTA103−2単離物に由来するV領域およびVκ領域アミノ酸配列およびTA10参照抗体を、CDR3 BSD配列を除くV領域にわたる単一のヒト生殖細胞系列抗体配列と比較した。表は生殖細胞系列配列ごとに対するアミノ酸同一性パーセントを示す。
【0093】
【表2】

【0094】
3つすべてのヒューマニア化Fab’断片のVκ領域とV領域は、参照Fab’断片TA10の約78%に比較して約96%パーセント同一性というヒト生殖細胞系列配列に対する高いアミノ酸配列同一性を共有していることは明らかである。
4.議論
mAB 1379のヒューマニア化に、カセット置換をうまく使用した。ヒトライブラリから単離された部分V領域カセットを、重鎖および軽鎖の各々の最終人為設計ヒトV領域を形成するために再結合した。
【0095】
Fab’断片クローン由来のV領域のアミノ酸配列を、上記のように提供する。Vセグ
メント配列を、各Fab’断片に対する2つのVカセットおよび2つのVκカセット(各VおよびVκポリペプチドに対して「フロントエンド」および「中間」カセット)の組換えにより単離した。ForteBio Octetバイオセンサを使用した動力学的分析により、参照Fab’より高い結合親和性を有する3つのFab’断片(TA101−1、TA102−4およびTA103−2)が同定された。この結合親和性の増加は、参照分子と比較した場合の3つのヒューマニア化バリアント(すなわちTA101−1、TA102−4およびTA103−2)における改善されたオフ割合に起因した。したがって、それはまた、ヒューマニア化VおよびVκポリペプチドと最も近いヒト生殖細胞系列VおよびVκ配列との間の%アミノ酸配列同一性と同様に、オフ割合(Kdissoc)の増加および/または結合親和性の増加に基づいてバリアントのスクリーニングを行うことも望ましい場合がある。
【0096】
Fab’断片クローンの3つの各々は、ヒトV1−02生殖細胞系列遺伝子に対して高度のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域(V)を有している。FR4セグメントはヒト生殖細胞系列J4配列により提供される。
【0097】
軽鎖VセグメントはVκIV−B3生殖細胞系列遺伝子に最も近い。FRL4は同じも
のがヒト生殖細胞系列J2セグメントにより提供される。ヒューマニア化Fab’断片VおよびV領域は、固有CDR3領域の外側の最も近い対応するヒト生殖細胞系列配列カセットに対して96%より高いアミノ酸配列同一性を示す。
5.本発明の特定の実施形態に関連する製剤、組成物、および方法
本発明の1態様は、一般に、副補体経路の活性化が寄与する疾病もしくは障害、副補体経路の活性化が該疾病もしくは該障害の少なくとも1つの徴候を悪化させる該疾病もしくは該障害、または副補体経路の活性化が引き起こす該疾病もしくは該障害に罹患しているかまたは該疾病もしくは該障害を起こす危険性のある動物において該副補体経路の活性化を選択的に阻害する組成物および方法に関連する。
5.1 本発明の特定の実施形態に関連する方法
本発明の特定の実施形態は、副補体経路の活性化が役割を果たす疾病または障害を治療する方法に関する。そのような方法は、TA101−1、TA102−4およびTA103−2等の上述のmAB1379のヒューマニア化バリアントまたはその抗原結合断片を、副補体経路の活性化が役割を果たす疾病に罹患しているかまたは該疾病を起こす危険性のある個体に投与する工程を含む。1態様では、ヒューマニア化抗体バリアントおよびその抗原結合断片は、経口、経鼻、局所、吸入、気管内、経皮、直腸、および非経口経路から成るグループから選択された経路を通じて投与される。別の態様では、ヒューマニア化抗体バリアントおよびその抗原結合断片は、乾燥分散粉末;無水エタノール;小型カプセル;リポソーム;霧状スプレー;および注射可能な賦形剤から成るグループから選択された医薬として許容される担体を用いて投与される。別の態様では、ヒューマニア化抗体バリアントおよびその抗原結合断片は、無水エタノール、乾燥粉末吸入システム;超音波吸入システム;圧力測定用量吸入器;および定量溶液装置から成るグループから選択された担体または装置にて投与される。別の態様では、ヒューマニア化抗体バリアントおよびその抗原結合断片は、副補体経路の活性化が役割を果たす疾病または障害を治療するのに有効な量で投与される。さらに別の態様では、ヒューマニア化抗体バリアントおよびその抗原結合断片は、単独でまたはコルチコステロイド、β−作動薬(作用は長くても短くてもよい)、ロイコトリエン改変剤、抗ヒスタミン剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミル、テオフィリン、サイトカイン拮抗薬、サイトカイン受容体拮抗薬、抗IgEおよびT細胞機能阻害剤から成るグループから選択された別の薬剤と組み合わせて投与される。
【0098】
本発明のさらに別の実施形態は、個人において気道過敏症(AHR)または気道炎症を低減または予防する方法に関する。方法は、TA101−1、TA102−4およびTA
103−2等の上述のヒューマニア化mAb1379またはその抗原結合断片を、炎症に関連する気道過敏症または気道炎症に離間しているか該炎症に関連する気道過敏症または気道炎症を起こす危険性のある個体に投与する工程を含む。1態様では、mAb1379のヒューマニア化バリアントまたはその抗原結合断片は、経口、経鼻、局所、吸入、気管内、経皮、直腸、および非経口経路から成るグループから選択された経路を通じて投与される。別の態様では、mAb1379またはその抗原結合断片のヒューマニア化バリアントは、抗体または抗原結合断片の投与前に比べて個体における気道過敏症を低減するのに有効な量で動物に投与される。別の態様では、mAb1379ヒューマニア化バリアントまたはその抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片が投与されなかった炎症を有する個体集団の気道過敏症のレベルと比較して、個体における気道過敏症を低減するのに有効な量で個体に投与される。別の態様では、mAb1379のヒューマニア化バリアントまたは抗原結合断片は、乾燥分散粉末;無水エタノール;小型カプセル;リポソーム;霧状スプレー;および注射可能な賦形剤から成るグループから選択された医薬として許容される担体を用いて投与される。別の態様では、mAb1379のヒューマニア化バリアントまたはその抗原結合断片は、無水エタノール、乾燥粉末吸入システム;超音波吸入システム;気圧測定用量吸入器;および定量溶液装置から成るグループから選択された担体または装置にて投与される。
さらに別の実施形態では、mAb1379のヒューマニア化バリアントまたは、コルチコステロイド、β−作動薬(作用は長くても短くてもよい)、ロイコトリエン改変剤、抗ヒスタミン剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミル、テオフィリン、サイトカイン拮抗薬、サイトカイン受容体拮抗薬、抗IgEおよびT細胞機能阻害剤から成るグループから選択された薬剤と共に個体に投与される。さらに別の実施形態では、気道過敏症または気道炎症は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、気腫、気管支炎、アレルギー性気管支炎気管支拡張症、嚢胞性線維症、結核、過敏性肺炎、職業性喘息、類肉腫、気道過敏症症候群、間質性肺疾患、好酸球増加症、鼻炎、副鼻腔炎、運動誘発性喘息、汚染誘発性喘息、咳変形喘息、寄生性肺疾患、呼吸器合胞体ウイルス(「RSV」)感染、パラインフルエンザウイルス(「PIV」)感染、ライノウイルス(「RV」)感染およびアデノウイルス感染から成るグループから選択された疾病に関連する。1態様では、気道過敏症はアレルギー性炎症に関連する。本発明の方法は、好ましい実施形態では哺乳動物に、より好ましくはヒトに投与することができる。
【0099】
本発明の別の実施形態は、個体における気道過敏症(AHR)または気道炎症を低減または予防する方法に関する。方法は、副補体経路を選択的に阻害する薬剤を、炎症に関連する気道過敏症または気道炎症に離間しているかまたは該疾患を起こす危険性のある個体に投与する工程を含む。ある態様では、試薬は、TA101−1、TA102−4およびTA103−2等のmAb1379のヒューマニア化バリアントまたはその抗原結合断片である。
【0100】
5.2 本発明の特定の実施形態に関連する製剤または組成物
本発明のヒューマニア化抗B因子抗体バリアントの特定の実施形態は、副補体経路の阻害剤、特に本明細書に記載した副補体経路の選択的阻害剤を含有する製剤または組成物を包含する。製剤または組成物は、本明細書に記載した任意の方法で、本明細書に記載した任意の試薬(例えば本明細書に記載のヒューマニア化B因子抗体バリアントTA101−1、TA102−4、およびTA103−2またはその抗原結合断片)を用いて使用可能である。1実施形態では、組成物は、動物における気道過敏症を低減または予防するのに有用である。別の実施形態では、組成物は、動物における虚血再潅流傷害を低減または予防するのに有用である。さらに別の実施形態では、組成物は、副補体経路の選択的阻害によって状態または疾病を治療または予防するのに有用である。製剤は(a)本明細書に記載した副補体経路の阻害剤および(b)医薬として許容される担体を含む。
【0101】
1実施形態では、製剤または組成物は、気道過敏症、特に炎症に関連する気道過敏症に離間しているかまたは該気道過敏症を起こす危険性のある動物における炎症を低減するのに適した抗炎症剤等の1つまたは複数の追加の薬剤を含んでもよい。抗炎症剤は、気道過敏症に関連する炎症状態を有する患者での炎症を低減するために使用するのに適した任意の抗炎症剤であってよく、それにはコルチコステロイド(経口、吸入、注入)、β−作動薬(作用は長くても短くてもよい)、ロイコトリエン改変剤(阻害剤または受容体拮抗薬)、サイトカインまたはサイトカイン受容体拮抗薬、抗IgE抗体、ホスホジエステラーゼ阻害剤、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミル、テオフィリンおよびT細胞機能阻害剤が含まれるがそれらに限定されるわけではない。本製剤に使用される特に好ましい抗炎症剤には、コルチコステロイド、ロイコトリエン改変剤およびサイトカインまたはサイトカイン受容体拮抗薬が含まれる。
【0102】
別の実施形態では、製剤または組成物は、動物における虚血再潅流傷害を予防または低減するのに適した追加の薬剤等の1つまたは複数の追加の薬剤を含んでもよい。そのような薬剤には、抗炎症剤または酸化およびフリーラジカル損傷の阻害剤が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0103】
別の実施形態では、製剤または組成物は、副補体経路の活性化に関連する別の疾病または状態を治療するのに適した追加の薬剤等の1つまたは複数の追加の薬剤を含んでもよい。
【0104】
本発明によれば、「医薬として許容される担体」には、適切な生体内部位への製剤または組成物の投与に使用するのに適した医薬として許容される賦形剤および/または医薬として許容される送達ベヒクルが含まれる。適切な生体内部位は、好ましくは、副補体経路を阻害可能な部位であればいかなる部位でもよい。1つの好ましい実施形態では、患者が気道過敏症および/または気道炎症に離間しているかまたは該疾患を起こす危険性を有する場合、適切な生体内部位は好ましくは肺組織または気道である。他の好ましい生体内部位には、副補体経路に関連する状態が集中する他の組織または器官が含まれる。別の好ましい実施形態では、適切な生体内部位は、虚血再潅流傷害が生じる任意の部位であってよく、例えば、心臓系または肺系、中枢神経系、手指または足指、内臓(例えば肺、肝臓または腸)、もしくは任意の移植器官または組織である。好ましい医薬として許容される担体は、本発明の製剤において使用されている薬剤を、患者での標的部位に薬剤が到達すると、薬剤が標的(例えば副補体経路の成分であるタンパク質)に作用することが可能であるように、そして好ましくは患者に治療の利益をもたらすような形式に維持することが可能である。
【0105】
本発明で使用される適切な賦形剤には、輸送を行うか輸送を支援するが、組成物を細胞または組織へ特異的に向けない賦形剤または製剤(本明細書では非標的性担体とも呼ぶ)が含まれる。医薬として許容される賦形剤には、水、リン酸塩緩衝塩類溶液(「PBS」)、リンゲル溶液、ブドウ糖溶液、含血清溶液、Hankの平衡塩類溶液(「HBSS」)および他の水溶性生理平衡溶液、油、エステルおよびエチレングリコールが含まれる。水性担体は、例えば化学的安定性および等浸透圧を高めることにより、レシピエントの生理条件に近づけるのに必要な適切な補助物質を含んでもよい。適切な補助物質には、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カリウム、および、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、ならびに重炭酸塩緩衝液を生成するのに使用される他の物質が含まれる。補助物質はさらに、チメロサール、m−クレゾールもしくはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコール等の防腐剤を含んでもよい。本発明の製剤は、従来の方法により滅菌および/または凍結乾燥することが可能である。
【0106】
医薬として許容される担体の1つの種類は、動物へ本発明の組成物をゆっくり放出させることが可能な制御放出製剤を含む。本明細書に使用する場合、制御放出製剤には、制御放出ビヒクルに入れた本発明の薬剤が含まれる。適切な制御放出ビヒクルには生体適合ポリマー、他の重合体マトリックス、カプセル、マイクロカプセル、マイクロパーティクル(微粒子)、ボーラス製剤、浸透圧ポンプ、拡散装置、リポソーム、リポスフェア、および経皮送達系が含まれるが、これらに限定されるわけではない。他の適切な担体には、送達される薬剤の半減期を延長させる、薬剤に結合可能であるか薬剤と共に組み込まれる任意の担体が含まれる。そのような担体には、生体内で送達された時にタンパク質の半減期を延長させる任意の適切なタンパク質担体または融合セグメントさえも含まれる。適切な送達ベヒクルについては先に記載したが、リポソーム、ウイルスベクター、またはリボザイムを含む他の送達ベヒクルが含まれるが、これらに限定されるわけではない。天然脂質を含む送達ベヒクルには、細胞および細胞膜が含まれる。人工脂質を含んでいる送達ベヒクルには、リポソームおよびミセルが含まれる。上述したように、本発明の送達ベヒクルは、患者における特定の部位を標的とし、それによりその部位で阻害剤を標的とし利用できるように改変することが可能である。適切な改変には、送達ベヒクルの脂質部分の化学式を操作することおよび/または送達ベヒクルを好ましい部位(例えば好ましい細胞種)へと特異的に目標付ける標的剤をビヒクルに導入することが含まれる。他の適切な送達ベヒクルには、金粒子、ポリ−L−リジン/DNA分子共役体、および人工染色体が含まれる。
【0107】
1実施形態では、本方法に有用な薬剤、肺または鼻を介した送達、特にエーロゾル送達に適した製剤の形(本明細書ではエーロゾル製剤とも称する)で投与される。そのような送達経路は、患者におけるAHRおよび/または気道炎症を阻害する方法に特に有用であるが、肺または気道への送達が望まれる他の状態で使用することも可能である。さらに、これらの製剤は抗体の送達に特に有用であり、そのような製剤は一般に担体を、好ましくは医薬として許容される担体を含む。本発明によるエーロゾル送達に特に有用な担体には、無水エタノール、乾燥分散粉末、小型カプセル(例えばマイクロカプセルまたはマイクロパーティクル)、リポソーム、注射可能な賦形剤、および霧状スプレーが含まれるがこれらに限定されるわけではない。タンパク質およびペプチドの送達用の無水エタノールについては、例えばChoi et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 98(20):11103-11107(2001)に記載されている。薬剤のエーロゾル送達に適した乾燥分散粉末については、例えばそ
の全体を本願に援用する米国特許第6,165,463号に詳述されている(Inhale Therapeutic Systems, Inc.つまり現在のNektar, and Quadrant Technology社の製品も参照
されたい)。エーロゾルで使用するのに適したリポソームはいかなるリポソームも含まれるが、特には本発明の方法でエーロゾルにより送達される程度に十分に小さい任意のリポソームである。
【0108】
マイクロカプセルおよびマイクロパーティクルについては当該技術分野では周知である。例えば、Alliance Pharmaceutical Corporation社は、マイクロパーティクルが同社独
占技術の噴霧乾燥プロセスにより製造され中空かつ多孔性に設計されるPulmoShereと呼ばれる粒子エンジニアリング(設計)技術を有している。Ventolin社の製品は、CFCベースの推進薬の混合物に懸濁された微粒子化アルブテロール(遊離塩基)粒子から成る。Proventil HFAは、微粒子化硫酸アルブテロールと、安定化オレイン酸を可溶化するための
低い割合のエタノール共溶媒とを含む。リポソーム中への薬剤の組み込みは、エーロゾル送達のためのいくつかの利点を有する。リポソームは比較的不溶であるため、肺におけるいくつかの薬剤の保持時間は、効能を増大させるよう延長することが可能である。リポソームは食細胞によっても主として吸収され、このことはリポソームを特定の薬剤の送達に特に適したものとしている。エーロゾル製剤の送達のための装置には、圧力測定用量吸入器(「MDI」)、乾燥粉末吸入器(「DPI」)、定量溶液装置(「MSI」)および超音波吸入器が含まれるがこれらに限定されず、噴霧器および吸入器である装置を含む。
かかる装置により送達される製剤において、タンパク質(例えばオリゴ乳酸、アシルアミド酸およびモノ官能化M−PEGS)の送達に特に有用な懸濁補助剤および安定化剤としての種々の薬剤を使用可能である。例えばMcKenzie and Oliver;2000, Formulating Therapeutic Proteins and Peptides in Pressurized Metered Dose Inhalers For Pulmonary
Delivery, #M Health Care Ltd., Morley Street, Loughborough, Leicesteshire LE11 1EP, US参照。
標的化できる医薬として許容される担体を、本明細書では「標的化送達ベヒクル」と呼ぶ。本発明の標的化送達ベヒクルは、患者内の標的部位に、阻害剤を含む製剤を送達することができる。「標的部位」は、治療製剤を送達したい患者内の部位のことを指す。例えば、標的部位は、本発明の抗体によって、またはリポソーム、ウイルスベクター、またはリボザイムを含む他の送達ベヒクルを使用した直接の注入または送達によって標的化される、任意の細胞または組織であってよい。本発明の送達ベヒクルまたは抗体は動物の特定部位を標的とするように改変されてよく、それによりかかる部位で特定の化合物、抗体、タンパク質または核酸分子を標的化および利用することが可能である。適切な改変には、送達ベヒクルの脂質部分の化学式を操作することおよび/または送達ベヒクルを好ましい部位(例えば好ましい細胞種)へと特異的に目標付ける標的剤をビヒクルに導入することが含まれる。特に、標的化とは、細胞表面上の分子へのビヒクル中の化合物を相互作用により特定の細胞へ送達ベヒクルを結合させることを指す。適切な標的化化合物には、特定の部位で別の分子に選択的に(すなわち特異的に)結合できるリガンドが含まれる。そのようなリガンドの例には抗体、抗原、受容体および受容体リガンドが含まれる。特に有用な例には、補体経路(例えばCR2、C3、C3d、C3dg、iC3b、C3b)に関連する任意のリガンドまたは細胞の種類、組織の種類、または処理される動物における部位に関連する任意のリガンドが含まれる。送達ベヒクルの脂質部分の化学式の操作は、送達ベヒクルの細胞外または細胞内標的化を調整できる。例えば、リポソームの脂質二分子膜の電荷を変更する化学物質をリポソームの脂質の式に加え、リポソームが特定の電荷特性を有する細胞と融合するようにさせることが可能である。
【0109】
様々な投与経路および薬剤に有用な1つの送達ベヒクルは、リポソームである。リポソームは、核酸分子や、本発明で述べたタンパク質または抗体さえも動物の好ましい部位へ送達するのに十分な時間の間だけ、動物中で安定であることが可能である。本発明によれば、リポソームは、動物における特定のすなわち選択された部位に本発明で述べた核酸分子、タンパク質、または抗体を送達することができる脂質組成物を含む。本発明のリポソームは、細胞へその内容を送達することができるよう標的細胞の原形質膜に融合することができる脂質組成物を含む。本発明で使用するのに適したリポソームには、いかなるリポソームも含まれる。本発明の好ましいリポソームは、例えば当業者に周知の遺伝子送達方法に一般に使用されるリポソームを含む。より好ましいリポソームは、ポリカチオン脂質組成物および/またはポリエチレングリコールに共役されたコレステロール骨格を有するリポソームを含む。本発明の核酸分子、タンパク質または抗体とのリポソームの複合体形成は、当該技術分野の標準的方法を使用して達成することができる。
【0110】
本発明によれば、当業者は、投与経路や動物に投与される薬剤の有効量を含む薬剤、組成物または製剤を投与するのに許容されるプロトコルの決定を遂行することができる。本発明の薬剤はインビボ(生体内)で投与されてもエキソビボ(生体外)で投与されてもよい。適切な生体内投与経路には、含むことができる、しかし制限されない、経口、経鼻、吸入、局所、気管内、経皮、直腸、および非経口経路が含まれる。好ましい非経口経路には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、および腹腔内経路が含まれるがこれらに限定されるわけではない。好ましい局所経路には、エーロゾルによる吸入{すなわち噴霧}または動物の皮膚への局所表面投与)が含まれる。好ましくは、薬剤は経鼻、気管内、局所、または全身性経路(例えば腹腔内、静脈内)により投与される。用語「エキソビボ」とは、患者の外部で投与工程の一部を行なうことを指す。抗体のための好ましい投与経路には、非経
口経路およびエーロゾル/経鼻/吸入経路が含まれる。
【0111】
静脈内投与、腹腔内投与および筋肉内投与は当該技術分野の標準的方法を使用して行なうことができる。エーロゾル(吸入)送達は当該技術分野の標準的方法を使用して行うことができる(例えばその全体を本明細書に援用するStribling et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 189:11277-11281(1992)参照。)エーロゾル送達に適した担体については上
述している。エーロゾル製剤の送達のための装置には、圧力測定用量吸入器(「MDI」)、乾燥粉末吸入器(「DPI」)、定量溶液装置(「MSI」)ならびに噴霧器および吸入器である装置が含まれるが、これらに限定されるわけではない。経口送達は、動物の消化管の消化酵素による分解に抵抗できる担体に対して本発明の治療用組成物を複合体形成することにより行うことが可能である。そのような担体の例には、当該技術分野で周知のプラスチックカプセルまたは錠剤が含まれる。直接的注入技術は、外科手術によってアクセス可能な細胞または組織、特には身体表面の上かその付近に組換え核酸分子を投与するのに有用である。標的細胞の領域への組成物の局所投与とは、好ましくは標的細胞または組織から数センチメートル、好ましくは数ミリメートル、組成物を注入することを指す。
【0112】
本明細書で説明した任意の方法に使用される、薬剤(タンパク質、小分子および抗体を含む)の好ましい一回量は、動物の体重1kg当たり約0.01μgから約10mgの間(すなわち約0.01μg/kg〜約10mg/kg)を含む。より好ましい薬剤の一回量は、動物の体重1kg当たり約1μgから約10mgの間を含む。さらにより好ましい薬剤の一回量は、動物体重1kg当たり約5μgから約7mgの間を含む。もっとさらにこのまし薬剤の一回量は、動物の体重1kg当たり約10μgから約5mgの間を含む。薬剤がエーロゾルで送達される場合、特に好ましい薬剤の一回量は、動物の体重1kg当たり約0.01mgから約1mgの間を含む。薬剤が非経口的で送達される場合、薬剤の特に好ましい一回量は、動物の体重1g当たり約1mgから約10mgの間を含む。
【0113】
1実施形態では、本明細書で説明した任意の方法で使用するための本発明の薬剤の適切な用量は、薬剤の投与がない場合に比較して、本明細書で説明したような副補体経路の少なくとも1つのタンパク質(例えばB因子、D因子またはプロパージン)の発現または活性を阻害するのに有効な用量である、タンパク質の発現または生物活性の測定方法は当該技術分野で周知であり、例えば)ノーザンブロッティング、ウェスタンブロット、リアルタイムRT−PCRおよびその同等物が含まれる。別の実施形態では、本発明の薬剤の適切な用量は、本発明の副補体経路を測定可能な程度に阻害する用量である。副補体経路の活性化およびその阻害は当該技術分野に周知の技術/アッセイを使用して測定することができる。例えば、同時係属の米国特許出願出願公開第2005/0260198A1の実施例に記載されているように、ザイモサンA粒子上のC3堆積物のインビトロ分析を行なうことができる。また、ヒト血清によって未感作赤血球溶解の薬剤による阻害能を試験することもできる。これらのアッセイに基づきインビトロの結果をインビボに外挿することは、当業者の能力の範囲内にある。
【0114】
ヒトでは、エーロゾル送達のために従来法を使用すると、吸入器を使用しても約10%の送達溶液しか気道深くに進入しないことが当該技術分野で知られている。エーロゾル化送達が直接吸入による場合、噴霧化方法により投与された量の約10%の用量が仮定され得る。最後に、当業者は相対成長のスケーリングを使用して、マウスの用量をヒトの用量に容易に変換することができるだろう。本質的に、マウスからヒトへの用量のスケーリングは化合物とマウス体表のクリアランス比に基づく。mg/kgの変換は、ヒト用量の濃度を得るべく「有害事象が観察されないレベル」(「NOEL」)の12分の1である。この計算は、マウスとヒト間の除去が同じ(抗体の場合当てはまると考えられる)であると仮定している。
【0115】
従って、抗体の好ましい一回量は、動物の体重1kg当たり約1ngから約1mg未満の間を含む。より好ましい抗体の一回量は、動物の体重1kg当たり約20ngから約600μgの間を含む。特に抗体製剤が噴霧によって送達される場合、さらに好ましい抗体の一回量は、動物の体重1kg当たり約20ngからと約600μgの間を含み、より好ましくは約20ngから約500μgの間、より好ましくは約20ngから約400μgの間、より好ましくは約20ngから300μgの間、より好ましくは約20ngから200μgの間、より好ましくは約20ngから約100μgの間、より好ましくは約20ngから50μgの間を含む。
【0116】
抗体の別の好ましい一回量は、特に抗体製剤が噴霧によって送達される場合、動物の体重1kg当たり約200ngから約600μgの間、より好ましくは約200ngから約500μgの間、より好ましくは約200ngから約400μgの間、より好ましくは約200ngから約300μgの間、より好ましくは約200ngから約200μgの間、より好ましくは約200ngから約100μgの間、より好ましくは約200ngから50μgの間を含む。
【0117】
抗体の別の好ましい一回量は、特に抗体製剤が吸入器からの直接吸入により送達される場合、動物の体重1kg当たり約2ngから約100μgの間、より好ましくは約2ngから約50μgの間、より好ましくは約2ngから約10μgの間、より好ましくは約2ngから約5μgの間、より好ましくは約2ngから約1μgの間、より好ましくは約2ngから約0.5μgの間、より好ましくは約2ngから約0.25μgの間、より好ましくは約2ngから約0.1μgの間を含む。
別の実施形態では、抗体は、製剤1ml当たり約500μg未満の抗体の用量で投与され、製剤1ml当たり250μg未満の抗体、より好ましくは製剤1ml当たり約100μg未満の抗体、より好ましくは製剤1ml当たり約50μg未満の抗体、より好ましくは製剤1ml当たり約40μg未満の抗体、より好ましくは製剤1ml当たり約30μg未満の抗体、より好ましくは製剤1ml当たり約20μg未満の抗体、より好ましくは製剤1ml当たり約10μg未満の抗体、さらにより好ましくは製剤1ml当たり約5μgの抗体から焼く10μgの抗体の間で投与される。
気道過敏症および/または気道炎症もしくはそれらの疾患に関連する状態または疾患を低減または予防する方法に特に関連して、動物に投与するのに適した阻害剤の一回量は、適切な期間にわたって1回または複数回投与された動物において、気道過敏症および/または気道炎症を低減または予防することができる、または治療される疾病(例えば喘息)の少なくとも1つの他の症状を低減することができる用量である。患者がAHRに離間しているかAHRを起こす危険性を有する場合、薬剤の適切な一回量は、刺激剤の倍量によりAHRを改善するかまたは動物の静止呼吸機能を改善する用量を含む。
【0118】
本発明の方法によれば、動物に投与するAHR阻害薬剤の有効量は、動物にとって有毒ではない状態で気道過敏症(AHR)または気道炎症を低減することができる量を含む。動物に有毒な量は、動物の構造または機能に損害を引き起こす(すなわち有毒な)すべての量を含む。
【0119】
本発明の1実施形態では、AHRを有する動物において、動物に投与する薬剤の有効量は、薬剤を投与する前に比べて動物におけるAHRを測定可能な程度に低減する量である、別の実施形態では、動物に投与する薬剤の有効量は、薬剤投与しなかったAHRに関連する炎症を有する動物集団における気道AHRレベルと比較して、動物のAHRを測定可能な程度に低減する量である。薬剤は、該薬剤がAHRの物理的徴候の開始後に(すなわち急性発症AHR後に)投与された場合でも、動物中のAHRを好ましくは低減することができる。好ましくは、薬剤の有効量は、AHRが患者で検出されない点までAHRの徴
候を低減する量である。別の実施形態では、薬剤の有効量は、薬剤が無い場合にはAHRを誘導するのに十分な様式でアレルゲン等のAHR誘発刺激に患者を露出させる前に薬剤を投与した場合に、AHRの発症を予防または実質的に阻害する量である。
【0120】
当業者は、動物に投与される薬剤の用量が、気道過敏症の程度、AHRが徴候となっている基本的症状の程度、および処理に対する個々の患者の反応に依存することを決定できるだろう。さらに、医師は、動物におけるAHRを低減するのに有効な様式で薬剤送達のための適切なタイミングを決定することができるだろう。
【0121】
好ましくは、薬剤は、AHRを引き起こすのに有効な量のAHR誘導刺激に患者を露出させる前48時間以内に送達され、好ましくは36時間以内、より好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内、より好ましくはAHRを引き起こすのに有効な量のAHR誘導刺激に患者を露出させる前6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、または1時間以内に送達される。1実施形態では、患者がAHR誘導刺激、特に患者が感作されるAHR誘発刺激(すなわちアレルゲン)に露出されたか、AHR誘導刺激に露出されようとしていることを患者または医師が認識したらすぐに(すなわち即座に)、薬剤は投与される。別の実施形態では、薬剤は、AHRの発達の最初の兆候(すなわち急性発症AHR)の時に投与される、好ましくはAHRの徴候の発達の少なくとも2時間以内、より好ましくは少なくとも1時間以内、より好ましくは少なくとも30分以内、より好ましくは少なくとも10分以内、より好ましくはAHR徴候の発達の少なくとも5分間以内に薬剤は投与される。AHRの徴候およびかかる徴候を測定または検出するための方法については、上記に詳述した。好ましくは、AHRの低減の徴候が現われるまで、そして必要ならばAHRの徴候がなくなるまで、そのような投与がなされる。
【0122】
虚血再潅流傷害を阻害または予防する方法に特に関連して、動物に投与する有効量の薬剤、特に抗B因子抗体またはその抗原結合断片(すなわち抗原結合ポリペプチド)は、薬剤の投与がない場合に比較して、動物における酸化的損傷または細胞死を含めた組織学的損傷を測定可能な程度に阻害する量である。腎虚血再潅流傷害の場合、動物に投与する薬剤の有効量は、薬剤の投与がない場合に比較して、血清尿素窒素の増大を測定可能な程度に阻害する量または動物の腎組織への組織学的損傷を測定可能な程度に減少させる量である。
【0123】
動物へ投与する阻害剤の適切な一回量は、適切な期間にわたって1回または複数回投与された動物において、虚血再潅流傷害由来の少なくとも1つの徴候傷害の種類、または生じた損害を低減または予防することができる用量である。様々な投与経路に対するものを含む抗体の適切な用量は上記に詳述した。1態様では、動物への投与する虚血再潅流傷害を阻害する薬剤の有効量は、動物に有毒ではない状態で虚血再潅流傷害により引き起こされた少なくとも1つの徴候または損害を阻害することができる量を含む。
【0124】
本発明の任意の方法は、任意の動物、特には、霊長類、齧歯類、家畜および家庭の愛玩動物を含むがこれらに限定されない脊椎動物クラスの哺乳類(すなわち哺乳動物)の任意の動物に使用することができる。本発明の方法で処理するのに好ましい哺乳動物はヒトである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片であって、3番目のショートコンセンサスリピート(「SCR」)領域でB因子に選択的に結合すると共にC3bBb複合体の形成を防止するマウスモノクローナル抗体1379(「mAb1379」)に由来し、かつ約1.0×10-8Mから約1.0×10-10Mの間の平衡解離定数(「KD」)を有するヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
Dが約1.0×10-9Mから約9.0×10-9Mの間である請求項1に記載のヒューマ
ニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
Dが約3.0×10-9Mから約7.0×10-9Mの間である請求項1に記載のヒューマ
ニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
Dが約3.7×10-9M以下である請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体また
はその抗原結合断片。
【請求項5】
Dが約4.5×10-9M以下である請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体また
はその抗原結合断片。
【請求項6】
Dが約5.4×10-9M以下である請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体また
はその抗原結合断片。
【請求項7】
Dが約6.5×10-9M以下である請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体また
はその抗原結合断片。
【請求項8】
配列番号14、配列番号16、配列番号18、および配列番号20から成るグループから選択されたVκ領域ポリペプチドと、配列番号15、配列番号17、配列番号19、および配列番号21から成るグループから選択されたV領域ポリペプチドとを有する請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
配列番号14のVκ領域ポリペプチドと配列番号15のV領域ポリペプチドとを有する請求項8に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
配列番号16のVκ領域ポリペプチドと配列番号17のV領域ポリペプチドとを有する請求項8に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
配列番号18のVκ領域ポリペプチドと配列番号19のV領域ポリペプチドとを有する請求項8に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
配列番号20のVκ領域ポリペプチドと配列番号21のV領域ポリペプチドとを有する請求項8に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
抗原結合断片がFab’、(Fab’)2、Fv、scFv、および二重特異性抗体から
成るグループから選択される請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記断片がFab’である請求項13に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片のVκ領域は、配列番号22、配列番号24、配列番号26、および配列番号28から成るグループから選択されたCDR3−FR4領域に由来する結合特異性決定基(「BSD」)を有し、ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片のV領域は、配列番号23、配列番号25、配列番号27、および配列番号29から成るグループから選択されたCDR3−FR4領域に由来するBSDを有する請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
配列番号22のVκ領域BSDポリペプチドと配列番号23のV領域BSDポリペプチドとを有する請求項15に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
配列番号24のVκ領域BSDポリペプチドと配列番号25のV領域BSDポリペプチドとを有する請求項15に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
配列番号26のVκ領域BSDポリペプチドと配列番号27のV領域BSDポリペプチドとを有する請求項15に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
配列番号28のVκ領域BSDポリペプチドと配列番号29のV領域BSDポリペプチドとを有する請求項15に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
抗原結合断片がFab’、(Fab’)2、Fv、scFv、および二重特異性抗体から
成るグループから選択される請求項15に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
前記断片がFab’である請求項20に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片。
【請求項22】
副補体経路の活性化が役割を果たす疾病または障害を治療する方法であって、請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片を、該疾病または該障害に罹患しているかまたは該疾病または該障害を起こす危険性のある個体へ投与することからなる方法。
【請求項23】
前記疾病または前記障害が気道過敏症(「AHR」)または気道炎症である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片が、該抗体またはその抗原結合断片の投与前と比較して前記個体においてAHRまたは気道炎症を低減するのに有効な量で前記個体に投与される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記AHRまたは前記気道炎症が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、気腫、気管支炎、アレルギー性気管支炎気管支拡張症、嚢胞線維症、結核、過敏性肺炎、職業性喘息、類肉腫、気道過敏症症候群、間質性肺疾患、好酸球増加症、鼻炎、副鼻腔炎、運動誘発性喘息、汚染誘発性喘息、咳喘息、寄生性肺疾患、呼吸器合胞体ウイルス(「RSV」)感染、パラインフルエンザウイルス(「PIV」)感染、ライノウイルス(「RV」)感染およびアデノウイルス感染から成るグループから選択された疾病に関連する請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記AHRまたは前記気道炎症がアレルギー性炎に関連する請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記AHRまたは前記気道炎症が喘息に関連する請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記AHRまたは前記気道炎症がCOPDに関連する請求項24に記載の方法。
【請求項29】
副補体経路の活性化が寄与する疾病もしくは障害、副補体経路の活性化が該疾病もしくは該障害の少なくとも1つの徴候を悪化させる該疾病もしくは該障害、または副補体経路の活性化が引き起こす該疾病もしくは該障害に罹患しているかまたは該疾病もしくは該障害を起こす危険性のある個体において該副補体経路の活性化を選択的に阻害する方法であって、請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片を、該副補体経路の活性化の阻害を必要とする個体へ投与することからなる方法。
【請求項30】
有効量の請求項1に記載のヒューマニア化抗B因子抗体またはその抗原結合断片と、医薬として許容される担体とを含有する医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−521470(P2010−521470A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553636(P2009−553636)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/003381
【国際公開番号】WO2008/140653
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509243148)タリジェン セラピューティクス インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】TALIGEN THERAPEUTICS,INC.
【Fターム(参考)】