説明

ヒンジ装置

【課題】本体部が基部から不慮の事故によって外れることを確実に防止することができるヒンジ装置を提供する。
【解決手段】本体部3の後端部には、係合部材63を回動可能に設ける。係合部材63は、基部2及び本体部3の後端部どうしを係合させる係合位置と、係合を解除する解除位置との間を回動可能に設ける。本体部3には、ロック部材31を回動可能に設ける。ロック部材31は、係合部材63が係合位置から解除位置側へ回動することを阻止する阻止位置と、係合部材63が係合位置から解除位置側へ回動することを許容する許容位置との間を回動可能とする。取付部材4が開位置から閉位置側へ回動するとき、駆動機構40Aがロック部材31を許容位置から中間位置まで回動させ、カム機構40Bがロック部材31を中間位置から阻止位置まで回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筐体に扉を回動可能に取り付けるためのヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のヒンジ装置は、基部と、この基部に着脱可能に取り付けられた本体部と、この本体部に回動可能に連結された取付部材とを有している。そして、基部が筐体に取り付けられ、取付部材が扉に取り付けられる。したがって、本体部を基部に取り付けると、扉が筐体にヒンジ装置を介して開閉回動可能に支持される。
【0003】
基部と本体部との一端部間には、それらの一端部どうしを係脱可能に係合させる第1係合機構が設けられている。基部と本体部との他端部間には、それらの他端部どうしを係脱可能に係合させる第2係合機構が設けられている。そして、第1及び第2係合機構により基部と本体部との一端部どうし及び他端部どうしをそれぞれ係脱可能に係合させることにより、本体部が基部に着脱可能に取り付けられている。
【0004】
第2係合機構は、基部に係合位置と解除位置との間を回動可能に設けられた係合部材を有している。係合部材は、係合位置に回動すると、本体部の他端部に係合する。これにより、本体部の他端部が基部の他端部に係合される。その一方、係合部材を係合位置から解除位置まで回動させると、係合部材の本体部に対する係合が解除され、基部と本体部との他端部どうしが取り外し可能になる。本体部の他端部を基部の他端部から取り外すと、本体部の一端部が基部の一端部に対して取外し可能になる。本体部の他端部を基部の他端部から取り外した後、本体部の一端部を基部の一端部から取り外すことにより、本体部を基部から取り外すことができる。
【0005】
このように、係合部材を係合位置から解除位置まで回動させると、本体部が基部から取外し可能になるから、係合部材が不慮の事故によって係合位置から解除位置に回動すると、本体部が基部から外れ、ひいては扉が筐体から外れてしまうおそれがある。そこで、下記特許文献1に記載のものにおいては、本体部にロック部材が設けられている。
【0006】
ロック部材は、阻止位置と許容位置との間を回動可能であり、阻止位置に回動すると、係合部材を係合位置に位置固定する。したがって、ロック部材を阻止位置に回動させることにより、扉が筐体から外れるという事故を確実に防止することができる。なお、ロック部材を許容位置に回動させると、係合部材が係合位置から解除位置まで回動可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3771247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載のヒンジ装置においては、ロック部材を手で回動させるようになっている。このため、ロック部材を阻止位置に回動させることを忘れることがあり、そのような場合には扉が筐体から外れてしまうという事態を防止することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、基部と、本体部と、この本体部に閉位置と開位置との間を回動可能に連結された取付部材と、上記基部と上記本体部との一端部間に設けられ、当該一端部どうしを係脱可能に係合する第1係合機構と、上記基部と上記本体部との他端部間に設けられ、当該他端部どうしを係脱可能に係合する第2係合機構とを備え、上記基部と上記本体部との一端部どうし及び他端部どうしが上記第1係合機構及び上記第2係合機構によってそれぞれ係合させられることによって上記本体部が上記基部に着脱可能に取り付けられ、上記第2係合機構が、上記基部と上記本体部とのいずれか一方の他端部に、他方の他端部に係合する係合位置と、他方の他端部に対する係合が解除した解除位置との間を変位可能に設けられた係合部材を有し、上記基部と上記本体部とのいずれか一方にはロック部材が設けられ、上記取付部材が上記開位置に位置しているときには、上記ロック部材が、上記係合部材が上記係合位置から上記解除位置側へ変位することを阻止する阻止位置と、上記係合部材が上記係合位置から上記解除位置へ変位することを許容する許容位置との間を変位可能であるヒンジ装置において、上記取付部材の上記開位置から閉位置側への回動に伴って上記ロック部材が上記許容位置から上記阻止位置まで変位するよう、上記取付部材の上記開位置から上記閉位置側への回動に伴って上記ロック部材を上記許容位置から上記阻止位置側へ変位させる駆動機構を備えたことを特徴としている。
この場合、上記駆動機構が、上記取付部材の上記開位置側から閉位置側への回動に連動して上記ロック部材を上記許容位置から上記許容位置と上記阻止位置との間の中間位置まで変位させるものであり、上記駆動機構に加えて、上記ロック部材を上記中間位置から上記阻止位置まで変位させるカム機構をさらに備えていることが望ましい。
上記駆動機構が、上記取付部材の上記開位置側から閉位置側への回動に連動して上記ロック部材を上記許容位置から上記阻止位置まで変位させることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
扉を筐体に取り付ける場合には、筐体に基部を取り付け、扉に取付部材を取り付けておく。そして、取付部材を開位置に位置させた状態で、本体部を基部に取り付ける。このときロック部材が許容位置に位置していたとしても、扉及び取付部材を開位置から閉位置まで回動させると、変位機構がロック部材を許容位置から阻止位置まで変位させる。したがって、上記特徴構成を有するこの発明によれば、ロック部材を阻止位置に確実に変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、この発明に係るヒンジ装置の第1実施の形態を筐体及び扉に取り付けた状態で示す斜視図である。
【図2】図2は、同実施の形態を、取付部材を開位置に位置させた状態で示す斜視図である。
【図3】図3は、同実施の形態を、取付部材を閉位置に位置させた状態で示す斜視図である。
【図4】図4は、実施の形態を、取付部材を開位置に位置させた状態で示す平面図である。
【図5】図5は、同側面図である。
【図6】図6は、図4のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図7は、実施の形態を、取付部材を閉位置に位置させた状態で示す平面図である。
【図8】図8は、同側面図である。
【図9】図9は、図7のB−B線に沿う断面図である。
【図10】図10は、同実施の形態の基部を示す分解斜視図である。
【図11】図11は、同実施の形態の本体部から取付部材までの構成部材を示す分解斜視図である。
【図12】図12は、図11と異なる方向から見た分解斜視図である。
【図13】図13は、同実施の形態を、取付部材を開位置に位置させ、かつロック部材を許容位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図14】図14は、同実施の形態を、ロック部材が回動開始位置に位置するまで取付部材を開位置から閉位置に向かって回動させた状態で示す側面図である。
【図15】図15は、取付部材を閉位置に位置させ、かつロック部材を阻止位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図16】図16は、この発明の第2実施の形態を、取付部材を閉位置に位置させた状態で示す斜視図である。
【図17】図17は、同第2実施の形態の平面図である。
【図18】図18は、同第2実施の形態の側面図である。
【図19】図19は、図17のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図20】図20は、図17のB−B線に沿う拡大断面図である。
【図21】図21は、取付部材を開位置に位置させた状態で示す図19と同様の断面図である。
【図22】図22は、取付部材を開位置に位置させた状態で示す図20と同様の断面図である。
【図23】図23は、同第2実施の形態の基部を示す斜視図である。
【図24】図24は、同第2実施の形態の基部から取り外された本体部側の各構成を示す分解斜視図である。
【図25】図25は、同第2実施の形態の本体部と基部に取り付ける際の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図15は、この発明に係るヒンジ装置の第1実施の形態を示す。この実施の形態のヒンジ装置1は、前面が開口した筐体Aに当該筐体Aの前面開口部を開閉する扉Bを水平方向へ回動可能に連結するためのものであり、基部2、本体部3及び取付部材4を有している。
【0013】
基部2は、金属板をプレス成形することによって形成されており、特に図10に示すように、互いに対向し、かつ平行に延びる一対の側板部2a,2aと、この一対の側板部2a,2aの長手方向に沿う一側部どうしを連結する連結板部2bと、各側板部2aの他側部から互いに離間するように側板部2Aと直交する方向へ突出する固定板部2c,2cを有している。側板部2a,2a、連結板部2b、固定板部2c,2cは、一体に形成されている。基部2は、必ずしもこのような構造にする必要がなく、周知の他のヒンジ装置の基部と同様に他の構造にしてもよい。
【0014】
固定板部2c,2cは、それを貫通したビス(図示せず)を筐体Aの左側壁にねじ込んで締め付けることにより、左側壁の内面に固定されている。これにより、基部2が筐体Aの左側壁内面に取り付けられている。この場合、基部2は、側板部2aの長手方向を筐体Aの前後方向に向け、かつ一対の側板部2a,2aの対向方向を上下方向に向けた状態で筐体Aに取り付けられている。基部2は、筐体Aの右側壁内面に取り付けてもよく、あるいは上壁内面に取り付けてもよい。なお、以下においては、説明の便宜上、ヒンジ装置1の各構成を筐体Aの前後左右及び上下を用いて説明することとする。勿論、ヒンジ装置1の各構成は、それに限定されるものではない。
【0015】
本体部3は、金属板を成形してなるものであり、特に図11及び図12に示すように、互いに上下に対向し、かつ前後方向へ平行に延びる側板部3a,3aと、この側板部3a,3aの長手方向に沿う右側部どうしを連結する連結板部3bとにより、断面「コ」字状に形成されている。
【0016】
本体部3は、その開放部を筐体Aの左側壁内面と対向させた状態で配置されている。本体部3の内部には、基部2の側板部2a,2a及び連結板部2bが挿入されている。側板部3a,3aの互いに対向する内面どうしの間隔は、側板部2a,2aの外面どうしの間隔とほぼ同一に設定されている。したがって、本体部3の内部に基部2の側板部2a,2aが挿入された状態では、本体部3が基部2に対して上下方向へ移動不能になる。しかも、本体部3の前端部(一端部)及び後端部(他端部)は、基部2の前端部(一端部)及び後端部(他端部)に次に述べる第1及び第2係合機構5,6を介してそれぞれ係脱可能に係合させられている。基部2と本体部3との一端部どうし及び他端部どうしが係合した状態では、本体部3が基部2に対して前後方向及び左右方向へ移動不能になる。したがって、本体部3の内部に側板部2a,2a及び連結板部2bが挿入され、かつ基部2と本体部3との一端部どうし及び他端部どうしが係合した状態では、本体部3が基部2に位置固定状態で着脱可能に取り付けられる。以下、本体部3が基部2に取り付けられたときの基部2に対する本体部3の位置を取付位置という。
【0017】
第1係合機構5について説明すると、特に図10に示すように、基部2の側板部2aの前端面(図10において右端面)には、第1係合凹部51が形成されている。この第1係合凹部51は、前方に向かって開放されている。図11及び図12に示すように、本体部3の前端部(図11において右端部)には、軸線を上下方向に向けた第1係合軸52が固定されている。この第1係合軸52は、本体部3が基部2に対して取付位置に位置すると、第1係合凹部51の底部に突き当たるまで第1係合凹部51に入り込んで係合する。第1係合軸52が第1係合凹部51に係合することにより、本体部3の前端部が基部2の前端部に対して後方及び左右方向へ移動不能に係合する。
【0018】
次に、第2係合機構6について説明すると、図10に示すように、基部2の側板部2a,2aの後端部の右側面には、第2係合凹部61が形成されている。この第2係合凹部61は、右方(図10において上方)に向かって開放されている。一方、本体部3の側板部3a,3aの後端部には、図11及び図12に示すように、軸線を上下方向に向けた第2係合軸62が固定されている。この第2係合軸62は、第2係合凹部61にその開放部から底部に突き当たるまで入り込んで係合している。第2係合軸62が第2係合凹部61に係合することにより、本体部3の後端部が基部2の後端部に対して前後方向及び左右方向へ移動不能に係合する。
【0019】
図10に示すように、基部2の側板部2a,2aの後端部には、係合部材63が軸線を上下方向に向けた軸64を介して水平方向へ回動可能に取り付けられている。この係合部材63は、図6及び図9に示す係合位置と、この係合位置から図6において反時計方向へ所定角度だけ離間した解除位置との間を回動可能である。係合部材63は、本体部3が基部2から取り外された状態では、係合位置を越えて僅かな角度(例えば5°程度)だけ回転可能であり、その角度だけ回動すると、係合部材63の先端部が基部2の連結板部2bに突き当たる。それによって解除位置から係合位置に向かう方向への係合部材63の回動が阻止されている。以下、このときの係合部材63の位置を待機位置という。係合部材63は、コイルばねからなる回動付勢手段65により、待機位置から係合位置に向かう方向へ回動付勢されている。
【0020】
係合部材63の前側の端面には、凹部63aが形成されている。この凹部63aは、係合部材63が係合位置に位置しているときには、その長手方向を前後方向に向けるとともに、前方に向かって開放するように配置されている。係合部材63が係合位置に位置しているときには、凹部63aに第2係合軸62が入り込んでいる。しかも、係合部材63が回動付勢手段65によって解除位置から係合位置に向かって付勢されているので、凹部63aの底部が第2係合軸62に突き当たっている。換言すれば、凹部63aの底部が第2係合軸62に突き当たることにより、係合部材63の係合位置が定められている。
【0021】
係合部材63が係合位置に位置した状態においては、第2係合軸62が凹部63aに入り込んでいるので、第2係合軸62は、係合部材63が係合位置から解除位置へ回動しない限り、第2係合凹部61から抜け出ることができない。つまり、本体部3の後端部を基部2の後端部から取り外すことができない。ここで、係合部材63の回転中心たる軸64は、第2係合凹部61に対しその左方への延長上に配置されている。しかも、係合部材63が係合位置に位置しているときには、凹部63aの長手方向が前後方向を向いている。したがって、仮に本体部3の後端部に、当該後端部を右方へ移動させて、第2係合軸62を第2係合凹部61から抜き出そうとする外力が作用したとしても、その外力は軸64を介して基部2に受け止められ、その外力によって係合部材63が係合位置から解除位置側へ回動させられることがない。よって、本体部3に外力が作用したとしても、第2係合軸62が第2係合凹部61から抜き出ることがなく第2係合凹部61との係合状態を維持する。換言すれば、係合部材63を回動付勢手段65の付勢力に抗して係合位置から解除位置へ回動させない限り、第2係合凹部61と第2係合軸62との係合状態が解除されることがない。
【0022】
係合部材63には、傾斜面63bが形成されている。この傾斜面63bは、凹部63aの開口部に続いてその右側に配置されており、後方へ向かうにしたがって凹部63aから離間するように傾斜させられている。傾斜面63bは、次に述べるように、本体部3を基部2に取り付ける際に利用される。
【0023】
本体部3は、次のようにして基部2に取り付け、取り外すことができる。本体部3を基部2に取り付ける場合には、本体部3の前端部が後端部より基部2に接近するように、本体部3を予め傾斜させておく。また、第1係合機構5の第1係合軸52を第1係合凹部51より前方に位置させておく。その状態で本体部3を基部2に接近移動させ、本体部3の前端部の内部に基部2の側板部2a及び連結板部2bの前端部を挿入する。そして、第1係合軸52を第1係合凹部51に対して前後方向に対向させる。その後、本体部3を後方へ移動させ、第1係合軸52を第1係合凹部51にその底部に突き当たるまで挿入する。これにより、本体部3の前端部を基部2の前端部に係合させる。
【0024】
次に、第1係合軸52を中心として本体部3を回動させ、本体部3の後端部を基部2に接近させる。本体部3が取付位置に対して所定の角度だけ手前の位置まで回動すると、第2係合軸62が待機位置に位置している係合部材63の傾斜面63bに突き当たる。本体部3をさらに回動させると、第2係合軸62が傾斜面63bを左方へ押し、係合部材63を回動付勢手段65の付勢力に抗して待機位置から係合位置を越えて解除位置側へ回動させる。これと同時に、第2係合軸62が傾斜面63b上を凹部63aの開放部に向かって摺動するとともに、第2係合凹部61内に入り込む。本体部3を取付位置まで回動させると、第2係合軸62が第2係合凹部61の底部に突き当たり、それ以上本体部3が回転することができなくなる。しかも、このときには、第2係合軸62が凹部63aと前後方向に対向しており、第2係合軸62が凹部63aに入り込み可能になっている。したがって、係合部材63が回動付勢手段65によって係合位置側へ回動させられ、第2係合軸62が凹部63a内に入り込む。係合部材63が係合位置に達すると、第2係合軸62が凹部63aの底部に突き当たり、係合部材63が停止する。この状態では、係合部材63が本体部3の後端部に第2係合軸62を介して係合し、ひいては本体部3の後端部が基部2の後端部に係合する。この結果、本体部3の後端部が基部2の後端部に対して前後方向及び左右方向へ移動不能になる。
【0025】
このように、本体部3が基部2に対して取付位置に位置させられると、基部2及び本体部3の前端部どうしが第1係合機構5によって左右方向及び後方へ移動不能に係合させられるとともに、基部2及び本体部3の後端部どうしが第2係合機構6によって左右方向及び前後方向へ移動不能に係合させられる。これにより、本体部3が基部2に対して前後方向及び左右方向へ移動不能に取り付けられる。しかも、本体部3内に基部2の側板部2a,2aが挿入された状態では、本体部3が基部2に対して上下方向へ移動不能になっている。よって、本体部3は、基部2に位置固定状態で取り付けられる。
【0026】
本体部3を基部2から取り外す場合には、係合部材63を回動付勢手段65の付勢力に抗して係合位置から解除位置まで回動させる。すると、第2係合軸62が凹部63aから相対的に脱出し、第2係合軸62が第2係合凹部61から右方へ脱出可能になり、ひいては本体部3の後端部が基部2の後端部に対して右方へ離間移動可能になる。そこで、本体部3を第1係合軸52を中心として回動させて、本体部3の後端部を基部2の後端部から離間移動させる。本体部3の後端部を適宜離間移動させると、第2係合軸62が第2係合凹部61から抜け出る。したがって、本体部3が前方へ移動可能になる。本体部3を前方へ適宜距離だけ移動させると、第1係合軸52が第1係合凹部51から前方へ抜け出る。その結果、本体部3の前端部が基部2の前端部に対して右方へ移動可能になる。本体部3の前端部を基部2の前端部から右方へ離間距離だけ移動させることにより、本体部3を基部2から取り外すことができる。
【0027】
なお、本体部3を基部2に取り付けるに際しては、本体部3の後端部を基部2の後端部に接近回動させるときに、係合部材63を予め解除位置に回転させておいてもよい。その場合には、第2係合軸62が傾斜面63bに突き当たることがない。勿論、本体部3を取付位置まで回転させた後、係合部材63を回動付勢手段65によって解除位置から係合位置まで回転させる。これにより、本体部3が基部2に取り付けられる。
【0028】
図1に示すように、取付部材4は、扉Bに固定されている。しかも、取付部材4は、次に述べるように、本体部3に水平方向へ回動可能に取り付けられている。これにより、扉Bが筐体Aに対して水平方向へ回動可能に取り付けられている。したがって、扉Bを回転させると、取付部材4が扉Bと一体に閉位置と開位置との間を回動する。そこで、以下においては、扉Bが閉位置に位置しているときの取付部材4の位置も閉位置と称し、扉Bが開位置に位置しているときの取付部材4の位置も開位置と称する。
【0029】
取付部材4は、本体部3に次のようにして回動可能に取り付けられている。すなわち、本体部3の側板部3a,3aの長手方向の中間部であって、連結板部3b側の側部には、第1リンク7の一端部(図6及び図9において下端部)が軸線を上下方向に向けた軸8を介して回動可能に連結されている。第1リンク7の他端部には、第2リンク9の後端部が軸8と平行な軸10を介して回動可能に連結されている。第2リンク9の前端部は、取付部材4に軸8と平行な軸11を介して回動可能に連結されている。
【0030】
本体部3の側板部3a,3aの前端部には、第3リンク12の一端部が軸8と平行な軸13を介して回動可能に連結されている。第3リンク12の他端部は、第2リンク9の中間部に軸8と平行な軸14を介して回動可能に連結されている。第3リンク12の他端部であって軸14より前側の部位には、第4リンク15の後端部が軸8と平行な軸16を介して回動可能に連結されている。第4リンク15の前端部は、取付部材4に軸8と平行な軸17を介して回動可能に連結されている。このようにして取付部材4が本体部3に回動可能に連結されている。なお、符号18は、取付部材4のための補強部材である。この補強部材18は、軸11に外挿されたスリーブ19によって取付部材4に固定されている。スリーブ19の両端面は、リンク9の先端部の互いに対向する両内面にそれぞれ接している。
【0031】
本体部3と第3リンク12との間には、図6及び図9に示すように、停止機構20が設けられている。停止機構20は、取付部材4が開位置から閉位置へ向かって所定の停止位置まで回動したときに、取付部材4が停止位置から閉位置側へ回動することを所定の大きさの力で阻止するものであり、停止部材21を有している。停止部材21は、係合軸52及び軸13によって本体部3の側板部3a,3aの先端部に固定されている。停止部材21の外面には、軸13を中心とする円弧面21aと、この円弧面21の前側の端部から径方向内側へ延びる当接面21bが形成されている。
【0032】
一方、第3リンク12には、ばね受け22が軸14,16によって固定されている。このばね受け22には、コイルばねからなる付勢手段23が設けられている。また、第3リンク12には、軸8と平行な当接軸24が軸13に接近離間する方向(軸13の径方向)へ所定範囲移動可能に設けられている。この当接軸24は、コイルばねからなる付勢手段23により軸13に接近する方向へ付勢されている。
【0033】
図6に示すように、取付部材4が開位置に位置しているときには、当接軸24が当接面21bに対し前方に離間している。したがって、取付部材4は、停止位置と開位置との間をほとんど抵抗なく回動することができる。しかるに、取付部材4が開位置から閉位置に向かって回動して停止位置に達すると、当接軸24が後方へ移動して当接面21bに突き当たる。これによって、取付部材4が停止位置に停止させられる。ただし、当接面21bは、取付部材4の閉位置側への回動に伴って当接軸24が後方へ移動すると、当接軸24を付勢手段23の付勢力に抗して右方へ移動させるように傾斜している。したがって、当接面21bが当接軸24を付勢手段23の付勢力に抗して押し上げるのに必要な力より大きな力で取付部材4を閉位置側へ回動させることにより、取付部材を停止位置から閉位置側へ回動させることができる。
【0034】
取付部材4が停止位置から閉位置側へ回動させられると、それに伴って当接軸24が当接面21b上を円弧面21aに向かって摺動する。そして、取付部材4が停止位置から閉位置側へ所定の角度(例えば、5°程度)だけ回転すると、当接軸24が当接面21bを乗り越えて円弧面21aに押圧接触する。円弧面21aは、軸13を中心としている。しかも、当接軸24が設けられた第3リンク12が軸13を中心として回転する。したがって、取付部材4が停止位置(実際には、停止位置から閉位置側へ5°だけ離れた位置)と閉位置との間においては、当接軸24が円弧面21a上を摺動ないしは転動する。したがって、取付部材4は、当接軸24と円弧面21aとの間に発生する摺動摩擦抵抗又は転がり摩擦抵抗に抗して回動させることになり、停止位置と閉位置との間においては、それらの抵抗によって取付部材4を任意の位置に停止させることができる。
【0035】
上記のように、係合部材63を係合位置から解除位置に回動させることにより、本体部3を基部2から取り外すことができる。換言すれば、係合部材63が不慮の事故によって係合位置から解除位置まで回動させられると、本体部3が基部2から外れてしまうおそれがある。このような事態を未然に防止するために、本体部3の長手方向の中間部には、ロック部材31が設けられている。
【0036】
ロック部材31は、ピアノ線等の硬質金属線を「コ」字状に折り曲げ、さらにその両端部を互いに接近するように折り曲げてなるものであり、上下方向に延びる係止部31aと、この係止部31aの両端部から互いに平行に、かつ同一方向に延びる一対の腕部31b,31bと、各腕部31b,31bの先端部から互いに接近するように突出する軸部31c,31cとによって構成されている。
【0037】
ロック部材31の軸部31c,31cは、その軸線方向を上下方向に向けて配置されており、本体部3の側板部3a,3aの長手方向の中間部に回転可能に支持されている。これにより、ロック部材31が本体部3に軸部31c,31cを中心として水平方向へ回転可能に連結されている。ロック部材31は、図13に示す許容位置と、図15に示す阻止位置との間を回動可能である。許容位置は、取付部材4が開位置に位置しているときの第1リンク7の背面にロック部材31の係止部31aが突き当たることによって定められている。一方、阻止位置は、次のようにして定められている。すなわち、連結板部3bの後端部には、切欠き部3cが形成されている。この切欠き部3cは、連結板部3bを左右に貫通し、側板部2a,2aまで達している。切欠き部3cは、ロック部材31が許容位置から図13において反時計方向へ回転すると、ロック部材31の係止部31aが入り込むように配置されている。図15に示すように、係止部31aが切欠き部3cの底部に突き当たったときのロック部材31の位置が阻止位置である。
【0038】
上記係合部材63の中間部の右側部には、係止面63cが形成されている。係止面63cは、係合部材63が係合位置に位置し、かつロック部材31が阻止位置に位置しているときに、ロック部材31の係止部31aにほぼ接するように配置されている。したがって、係合部材63が係止位置から解除位置側へ回動しようとすると、係止面63cがロック部材31の係止部31aに突き当たる。これにより、係合部材63の係合位置から解除位置側への回動が阻止される。よって、ロック部材31を阻止位置に位置させると、係合部材63が不慮の事故によって係合位置から解除位置側へ回動することが防止され、ひいては本体部3が基部2から外れてしまうような事態を未然に防止することができる。
【0039】
このように、ロック部材31を阻止位置に位置させることにより、本体部3が基部2から外れることを防止することができるが、仮にロック部材31を阻止位置に回動させることを忘れると、ロック部材31の係合部材63に対するロック作用が全く機能せず、係合部材63が係合位置から解除位置に回動して本体部3が基部2から外れてしまうおそれがある。このような不具合を防止するために、このヒンジ装置1においては、変位機構40が採用されている。変位機構40は、取付部材4が開位置から閉位置まで回動すると、それに伴ってロック部材31を許容位置から阻止位置まで自動的に回動させる。
【0040】
変位機構40は、駆動機構40A及びカム機構40Bを有している。駆動機構40Aは、取付部材4の開位置から閉位置側への回動に伴ってロック部材31を許容位置から図14に示す中間位置まで回動させるためのものであり、第1リンク7及び第2リンク9によって構成されている。すなわち、第1リンク7は、取付部材4が開位置に位置しているときには、図13に示すように、本体部3から右方(図13において上方)へ離間するにしたがって前方へ向かうように傾斜しており、取付部材4が開位置から閉位置に向かって回動すると、軸8を中心として反時計方向へ回動する。したがって、取付部材4が開位置に位置し、かつロック部材31が許容位置に位置している状態において、取付部材4が閉位置側へ回動すると、第1リンク7の背面に突き当たったロック部材31が第1リンク7によって反時計方向へ回動させられる。ロック部材31が許容位置から中間位置より所定角度だけ手前の位置に達すると、第2リンク9の後端面が第1リンク7の背面を後方へ追い越し、ロック部材31の腕部31bに突き当たる。したがって、その後は取付部材4の閉位置側への回動に伴って第2リンク9がロック部材31を反時計方向へ回動させる。ロック部材31は、第2リンク9によって中間位置まで回動させられる。
【0041】
ロック部材31が許容位置から中間位置まで回動した後は、カム機構40Bがロック部材31を中間位置から阻止位置まで回動させる。カム機構40Bは、本体部3の各側板部3aに形成された突出部41を有している。突出部41は、ロック部材31の軸部31cの外周面に接するようにしてその右側に配置されている。したがって、突出部の外面には、ロック部材31の腕部31bが接触している。腕部31bが接触する突出部41の外面は、円弧面によって構成されている。この円弧面の中心線は、左右方向に延びており、軸部31cの中心線と直交している。したがって、側板部3aの外面に対する突出部41の突出量は、突出部41の前後方向の両端部において最も低くなっており、突出部41の外面の前後方向の両端部は、側板部3aの外面と交差している。突出部41の突出量は、前後方向の中央部において最も高くなっている。
【0042】
ロック部材31のアーム部31b,31bの間隔は、側板部3a,3aの外面どうしの間隔とほぼ等しい大きさに設定されている。したがって、アーム部31b,31bは、それらの間隔が広がるように突出部41によって弾性変形させられている。換言すれば、アーム部31bは、それ自体の弾性によって突出部41の円弧状をなす外面に押し付けられている。したがって、アーム部31b(ロック部材31)は、突出部41の前後方向の中央部から前後方向に離間した箇所に接触しているときには、突出部41の円弧状をなす外面によって突出部41の中央部から離間するような回動付勢力を受ける。ただし、アーム部31bが突出部41の外面の中央から前後方向へ所定角度(例えば10°)の範囲内に位置しているときには、その範囲での突出部41の前後方向に対する傾斜角度が小さいため、突出部41の円弧面によるアーム部31bに対する回転付勢力が、突出部41の外面とアーム部31bとの接触面間に発生する摩擦抵抗より小さい。したがって、その角度範囲においては、ロック部材31が突出部41の外面によって回動させられることがない。
【0043】
しかるに、アーム部31b上記範囲を前後方向に越えると、突出部41の外面を構成する円弧面の傾斜角度が大きくなり、円弧面によるアーム部31bに対する回動付勢力が大きくなる。そして、この回動付勢力により、アーム部31bが突出部41の中央から離間するように回動させられる。アーム部31bが突出部41の中央から上記所定角度だけ前方へ離間した位置が中間位置である。したがって、アーム部31bが第2リンク9によって中間位置まで回動させられると、突出部41の外面を構成する円弧面、この円弧面に接するアーム部31b及びこのアーム部31b自体の弾性力により、ロック部材31が中間位置から阻止位置まで回動させられる。
【0044】
なお、第2リンク9は、ロック部材31が中間位置を若干越えた位置までロック部材31を阻止位置側へ回動させようとする。しかし、突出部41の円弧面がロック部材31を中間位置から阻止位置側へ回動させる速度は、第2リンク9がロック部材31を中間位置から阻止位置側へ回動させる速度より速い。したがって、ロック部材31が中間位置に達した後は、ロック部材31がカム機構40Bによって阻止位置側へ回動させられる。
【0045】
上記構成のヒンジ装置1において、いま取付部材4が図13に示すように開位置に位置しているとともに、ロック部材31が許容位置に位置しているものとする。その状態において、取付部材4を開位置から閉位置に向かって回動させると、第1リンク7が軸8を中心として図13の反時計方向へ回動する。これにより、第1リンク7の背面に接触したロック部材31が許容位置から中間位置に向かって反時計方向へ回動させられる。その後、取付部材4をさらに閉位置側へ回転させると、第2リンク9がロック部材31を中間位置まで反時計方向へ回動させる。
【0046】
ロック部材31が中間位置に達すると、アーム部31bの弾性力及び突出部41の外面を構成する円弧面のカム作用により、アーム部31bが後方へ押され、ロック部材31が中間位置から阻止位置まで回動させられる。したがって、このヒンジ装置1によれば、扉Bを開位置から閉位置まで回動させることにより、ロック部材31を阻止位置まで自動的に位置させることができる。
【0047】
ロック部材31が阻止位置に位置すると、係合部材63が係合位置から解除位置に向かって回動することができなくなり、第2係合軸62が凹部63aから抜け出ることがない。したがって、第2係合軸62が第2係合凹部61から抜き出ることがなく、係合部材63が基部2の後端部に係合した状態が維持される。よって、本体部3が不慮の事故によって基部2から外れるような事態を確実に防止することができる。
【0048】
次に、図16〜図25に示すこの発明に係るヒンジ装置の第2実施の形態について説明する。なお、第2実施の形態のヒンジ装置1Aについては、上記第1実施の形態のヒンジ装置1と異なる構成だけを説明することとし、同様な部分には同一符号を付してその説明を省略する。また、図16〜図25では、ヒンジ装置1Aの前後の向きが図1〜図15に示すヒンジ装置1の前後の向きと逆になっている。
【0049】
この実施の形態のヒンジ装置1Aにおいては、上記ヒンジ装置1の基部2及び本体部3に代えて、基部2A及び本体部3Aが用いられている。基部2Aは、図23に示すように、金属製の平板からなるものであり、その外周面から離間した内側の部分を切り起こすことによって側板部2a,2aが形成されている。側板部2a,2aが平板の内側の部分を切り起こすことによって形成されているため、固定板部2c,2cの前後方向の両端部が互いに連結されることによって環状になっている。また、側板部2a,2aの側部どうしを連結する連結板部が形成されていない。
【0050】
本体部3Aの一対の側板部3a,3aは、基部2A側に位置する側部どうしが連結板部3bによって連結されている。側板部3a,3a及び連結板部3bは、基部2の側板部2a,2a間に連結板部3bを先にして挿入されている。側板部3a,3aの外面どうしの間隔は、基部2Aの側板部2a,2aの内面どうしの間隔とほぼ同等に設定されている。したがって、本体部3Aの側板部3a,3aが基部2Aの側板部2a,2a間に挿入されると、本体部3Aが基部2Aに対して上下方向へ移動不能になる。
【0051】
また、このヒンジ装置1Aにおいては、第1係合機構5の第1係合軸52が用いられておらず、第3リンク12の一端部を本体部3Aに回動可能に連結する軸13が第1係合機構5の第1係合軸として兼用されている。基部2Aの後端部(図16〜図25において右端部)と本体部3Aの後端部との間には、第2係合機構6に代わる第2係合機構6Aが設けられている。すなわち、図23に示すように、基部2Aの後端部には、軸線を上下方向に向けた第2係合軸62が固定されている。一方、本体部3Aの後端部には、特に図24及び図25に示すように、第2係合軸62が係合する第2係合凹部61が形成されている。また、本体部3の後端部には、係合部材63Aが軸64を介して水平方向へ回動可能に設けられている。係合部材63Aは、二つの部材63B,63Cからなるものであり、両部材63B,63Cは一体に挙動するように互いに固定されている。係合部材63Aの回動範囲は、待機位置から図19〜図22に示す係合位置を経て図21の矢印方向へ所定角度だけ係合位置から離間した解除位置までの間に定められている。
【0052】
図25に示すように、第1係合機構5の第1係合凹部51に軸13を係合させた状態で、本体部3Aを軸13を中心として図25の矢印方向へ回動させると、第2係合軸62が第2係合凹部61に相対的に入り込む。これと同時に、係合部材63Aの左端部に形成された傾斜面63bが第2係合軸62に突き当たる。本体部3をさらに回動させると、傾斜面63bが第2係合軸62によって相対的に押されることにより、係合部材63Aが回動付勢手段63の付勢力に抗して待機位置から係合位置を経て解除位置側へ向かう方向(図25において時計方向)回動させられる。本体部3が取付位置まで回動させられると、第2係合軸62が第2係合凹部61の底部に突き当たるとともに、第2係合軸62が傾斜面63bを乗り越えて凹部63aと対向する。すると、係合部材63Aが回動付勢手段65によって時計方向へ係合位置まで回動させられる。その結果、第2係合軸62が凹部63aにその底部に突き当たるまで相対的に入り込む。そして、係合部材63Aによって第2係合軸62が第2係合凹部61の底部に押し付けられた状態に維持される。このようにして、基部2A及び本体部3Aの後端部どうしがそれぞれ係脱可能に係合されている。勿論、基部2A及び本体部3Aの前端部どうしは、第1係合機構5によって係脱可能に係合されている。これにより、本体部3Aが基部2Aに着脱可能に取り付けられている。
【0053】
また、このヒンジ装置1Aにおいては、停止機構20に代えて停止機構20Aが用いられている。すなわち、図20及び図22に示すように、第4リンク15の第3リンク12側に位置する一端部には、軸16を中心とする大径円弧面25a及び小径円弧面25bが形成されている。大径円弧面25aと小径円弧面25bとの間には、軸16の径線にして傾斜した段差面25cが形成されている。また、第3リンク12には、当接軸26が軸16に接近、離間する方向へ所定範囲移動可能に、かつ回動可能に設けられている。この当接軸26は、コイルばねからなる付勢手段27により軸16に接近する方向へ付勢されて第4リンク15の一端部に押し付けられている。ここで、当接軸26、取付部材4が閉位置と中間位置との間に位置しているときには、大径円弧面25aに押し付けられ、取付部材4が開位置と中間位置との間に位置しているときには、小径円弧面25bに押し付けられている。したがって、取付部材4が、閉位置と中間位置との間、及び開位置と中間位置との間に位置しているときには、当接軸26が大径円弧面25a上又は小径円弧面25b上を転動するだけである。したがって、第4リンク15、ひいては取付部材4の回動が、大きな力で阻止されることがない。
【0054】
一方、取付部材4が開位置側から閉位置側へ閉回動して中間位置に達すると、当接軸26が段差面25cに突き当たる。この状態では、当接軸26を付勢手段27の付勢力に抗して段差面25c上を大径円弧面25aまで転がり上げない限り取付部材4が閉回動することができない。つまり、当接軸26が段差面25cに突き当たった状態では、付勢手段27の付勢力によって取付部材4の閉回動が阻止される。したがって、扉Bを開位置から閉位置側へ回動させるときには、中間位置において所定の力で停止させられる。勿論、扉Bを所定の大きさを越える力で閉回動させることにより、扉Bを中間位置から閉回動させることができる。
【0055】
また、このヒンジ装置1Aにおいては、第1リンク7の一端部(図24において左端部)が第1係合軸51を介して本体部3Aに回動可能に連結されている。また、第1リンク7、第2リンク9、第3リンク12及び第4リンク15の形状が、上記ヒンジ装置1の第1リンク7、第2リンク9、第3リンク12及び第4リンク15の形状と異なっているが、互いの連結形態並びに本体部3及び取付部材4に対する連結形態は、第1ヒンジ装置1におけるそれと同様である。そこで、第1リンク7、第2リンク9、第3リンク12及び第4リンク15の連結形態については、その説明を省略する。
【0056】
なお、この発明の上記の実施の形態に限定されるものでなく、各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、基部2及び本体部3の前端部どうしを第1係合機構5によって係脱可能に係合し、基部2及び本体部3の後端部どうしを第2係合機構6によって係脱可能に係合しているが、基部2及び本体部3の前端部どうしを第2係合機構によって係脱可能に係合し、基部2及び本体部3の後端部どうしを第1係合機構によって係脱可能に係合してもよい。その場合には、ロック部材31が本体部3の前端部に設けられる。また、係合部材63,63Aを回動可能に設けているが、係合位置と解除位置との間を直線移動可能に設けてもよい。
また、上記の実施の形態においては、ロック部材31が本体部3に設けられているが、基部2に設けてもよい。ロック部材31は、許容位置と阻止位置との間を回動変位するようになっているが、許容位置と阻止位置との間を直線変位させるようにしてもよい。その場合には、ロック部材31と異なる形状を有するロック部材が用いられる。
さらに、上記の実施の形態においては、変位機構40を駆動機構40Aとカム機構40Bとによって構成しているが、駆動機構だけで構成してもよい。例えば、第1又は第2リンク7,9に、取付部材4の閉位置から開位置までの間の回動に伴ってロック部材31を許容位置から阻止位置まで回動させる駆動部材を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明に係るヒンジ装置は、洋服タンスその他の筐体に扉を開閉回動可能に連結するためのヒンジとして利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ヒンジ装置
1A ヒンジ装置
2 基部
2A 基部
3 本体部
3A 本体部
4 取付部材
5 第1係合機構
6 第2係合機構
6A 第2係合機構
31 ロック部材
40 変位機構
40A 駆動機構
40B カム機構
63 係合部材
63A 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、本体部と、この本体部に閉位置と開位置との間を回動可能に連結された取付部材と、上記基部と上記本体部との一端部間に設けられ、当該一端部どうしを係脱可能に係合する第1係合機構と、上記基部と上記本体部との他端部間に設けられ、当該他端部どうしを係脱可能に係合する第2係合機構とを備え、上記基部と上記本体部との一端部どうし及び他端部どうしが上記第1係合機構及び上記第2係合機構によってそれぞれ係合させられることによって上記本体部が上記基部に着脱可能に取り付けられ、上記第2係合機構が、上記基部と上記本体部とのいずれか一方の他端部に、他方の他端部に係合する係合位置と、他方の他端部に対する係合が解除した解除位置との間を変位可能に設けられた係合部材を有し、上記基部と上記本体部とのいずれか一方にはロック部材が設けられ、上記取付部材が上記開位置に位置しているときには、上記ロック部材が、上記係合部材が上記係合位置から上記解除位置側へ変位することを阻止する阻止位置と、上記係合部材が上記係合位置から上記解除位置へ変位することを許容する許容位置との間を変位可能であるヒンジ装置において、
上記取付部材の上記開位置から閉位置側への回動に伴って上記ロック部材が上記許容位置から上記阻止位置まで変位するよう、上記取付部材の上記開位置から上記閉位置側への回動に伴って上記ロック部材を上記許容位置から上記阻止位置側へ変位させる駆動機構を備えたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
上記駆動機構が、上記取付部材の上記開位置側から閉位置側への回動に連動して上記ロック部材を上記許容位置から上記許容位置と上記阻止位置との間の中間位置まで変位させるものであり、上記駆動機構に加えて、上記ロック部材を上記中間位置から上記阻止位置まで変位させるカム機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
上記駆動機構が、上記取付部材の上記開位置側から閉位置側への回動に連動して上記ロック部材を上記許容位置から上記阻止位置まで変位させることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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