説明

ヒータユニットの製造方法

【課題】発泡性樹脂の型内発泡に起因して発熱手段に部分的に浮き上がりが生じるのを容易にかつ確実に阻止することが出来る、発泡性樹脂を型内発泡させて発泡樹脂層からなる断熱層を一体成形するようにしたヒータユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】下型枠21の上に面発熱体20を配置した後、発泡性樹脂の発泡に起因して発熱手段に浮き上がりが生じると予測される箇所を少なくとも含むようにして面発熱体10の上にネット30を掛けるかクッション材を配置した状態で、発泡性樹脂の注入と発泡を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気式床暖房に用いるヒータユニット、特に、アルミ箔のような均熱板の上に線ヒータやリード線等からなる発熱手段を配設した面発熱体を、下型枠と周囲型枠と上型枠とで形成される型内に配置し、型内に発泡性樹脂を注入して型内発泡させることにより、面発熱体の発熱手段側に断熱層としての断熱層を一体成形するようにした、電気式床暖房に用いるヒータユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気式床暖房に用いるヒータユニットとして、図3に示すような面発熱体10が知られている。この面発熱体10は、アルミ箔のような均熱板1を有し、その上に、線ヒータ2が融着されている。アルミ箔1の上には、さらにサーモスタット3、そのリード線4、電源線5なども配置され、発熱手段を構成している(例えば、特許文献1等を参照)。このような面発熱体は、例えば特許文献2に記載されるように、床パネル本体の裏面に形成した収容凹部内に取り込まれ、その上にウレタン発泡体のような樹脂発泡体からなる断熱層を配置した後、緩衝材のような裏面板が取り付けられて、電気式床暖房用の床パネルとされる。
【0003】
図4に示すように、面発熱体10を、下型枠21と周囲型枠22と上型枠23とで形成される型20内に配置し、型内に発泡性ウレタン樹脂のように発泡性樹脂を注入して型内発泡させることにより、面発熱体10の発熱手段側に樹脂発泡体層からなる断熱層11を一体成形したヒータユニット12も知られている。特許文献3では、型として、床パネル本体を構成する表面板と額縁材と裏面板とからなる型を用いることにより、断熱層を積層したヒータユニットを内蔵した床パネルをウレタン発泡と同時に得るようにした床暖房パネルの製造方法も記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−205789号公報
【特許文献2】特開2002−106870号公報
【特許文献3】特開平7−180852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図3に示すような面発熱体10を、図4に示すように型20内に配置し、型内ウレタン発泡により断熱層11を一体成形しようとすると、サーモスタット3、そのリード線4、電源線5のように、アルミ箔1に融着できない部材の裏面側に発泡性ウレタン樹脂が回り込んで包み込んだ状態となり、ウレタン樹脂の発泡により浮き上がりが生じる場合がある。また、融着されている線ヒータ2にも同様な理由により部分的な浮き上がり(アルミ箔からの脱離)が生じる場合がある。
【0006】
そのような浮き上がりが生じると、発泡ウレタン樹脂で形成される断熱層11の表面に凹凸が生じ、床パネル本体内に取り込んだときに、相互間に接着不良が起こる可能性がある。また、アルミ箔(均熱板1)にサーモスタット3が接しない状態となると、サーモスタット3の作動が不安定となることが起こり得る。さらに、線ヒータ2が部分的に均熱板1から脱離した場合には、その部分での均熱板1への放熱が不十分となり、脱離箇所で異常発熱を起こすことが考えられる。
【0007】
そのような事態が生じるのを回避するために、図3に示すように、従来、アルミ箔テープや両面テープ6などを所要箇所に貼り付けて、アルミ箔に融着できない部分を上からアルミ箔1に押さえ付けるようにしている。しかし、このテープ貼り作業は製造工程を煩雑にすると共に、発泡性ウレタン樹脂を注入したときに、炭酸ガスのような発泡剤がテープの粘着剤層中に入り込むのを完全に阻止することはできず、不必要なふくれ(表面凹凸)が生じる一因となる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、発熱手段を均熱板の上に配設した面発熱体の発熱手段側に発泡性樹脂を型内発泡させて発泡樹脂層からなる断熱層を一体成形するようにしたヒータユニットの製造方法において、発泡性樹脂の型内発泡に起因して発熱手段に部分的に浮き上がりが生じるのを容易にかつ確実に阻止できるようにした、改良されたヒータユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための、本出願による第1の発明は、均熱板の上に線ヒータやリード線等からなる発熱手段を配設した面発熱体を下型枠と周囲型枠と上型枠とで形成される型内に配置し、型内に発泡性樹脂を注入して型内発泡させることにより面発熱体の発熱手段側に断熱層を一体成形するようにしたヒータユニットの製造方法であって、下型枠の上に発熱手段を上側として面発熱体を配置した後、発泡性樹脂の発泡に起因して発熱手段に浮き上がりが生じると予測される箇所を少なくとも含むようにして面発熱体の上にネットを掛け、該ネットを定着させた状態で、発泡性樹脂の注入と発泡を行うことを特徴とする。
【0010】
上記の方法よれば、発熱手段を構成する、発泡性樹脂の発泡に起因して浮き上がりが生じると予測される箇所は、定着したネットにより均熱板側に抑え付けられているので、発泡性樹脂を型内に注入しても、それが裏面にまで回り込んで、その個所が発泡性樹脂によって包み込まれてしまうのを確実に阻止することができる。それにより、発泡成形後の断熱層の表面に膨れが生じたり、あるいは、線ヒータの均熱板からの離脱により異常加熱が生じるのを確実に回避することができる。
【0011】
ネットを定着する手段は任意であってよいが、下型枠の上に配置した面発熱体の周縁と面発熱体の上に掛け渡したネットの周縁とを、下型枠と周囲型枠との間に挟み込んで、同時に下型枠に定着する方法は、工程数を少なくすることができ効果的である。
【0012】
本発明において、ネットの素材には、グラス繊維やオレフィン系樹脂などを用いることができる。目開きは、網目から部品が飛び出さない大きさであれば任意であるが、20メッシュ程度が好適である。また、ネットは、発泡性樹脂の発泡に起因して発熱手段に浮き上がりが生じると予測される箇所に少なくとも掛け渡してあれば、所期の目的を達成することができるが、作業性を考慮すると、発熱手段の全体を覆うように掛け渡すことが現実的である。
【0013】
課題を解決するための本出願による第2の発明は、均熱板の上に線ヒータやリード線等からなる発熱手段を配設した面発熱体を下型枠と周囲型枠と上型枠とで形成される型内に配置し、型内に発泡性樹脂を注入して型内発泡させることにより面発熱体の発熱手段側に断熱層を一体成形するようにしたヒータユニットの製造方法であって、下型枠の上に発熱手段を上側として面発熱体を配置した後、発泡性樹脂の発泡に起因して発熱手段に浮き上がりが生じると予測される箇所の全部または一部の上に、少なくとも上型枠の裏面に達する高さを備えたクッション材を配置した状態で、発泡性樹脂の注入と発泡を行うことを特徴とする。
【0014】
上記の方法よれば、発熱手段を構成する、発泡性樹脂の発泡に起因して浮き上がりが生じると予測される箇所の全部または一部は、その上に配置した少なくとも上型枠の裏面に達する高さを備えたクッション材により均熱板側に抑え付けられているので、上記した第1の発明の場合と同様、発泡性樹脂を型内に注入しても、それが裏面にまで回り込んで、その個所が発泡性樹脂によって包み込まれてしまうのを確実に阻止することができる。それにより、発泡成形後の断熱層の表面に膨れが生じたり、あるいは、線ヒータの均熱板からの離脱により異常加熱が生じるのを確実に回避することができる。
【0015】
本発明において、クッション材は、発泡性樹脂の型内発泡圧力により変形して抑え付け力が不安定になることがないことを条件に、任意の素材を採用することができ、例えば、オレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂のような有機系樹脂の発泡体、グラスファイバーのような無機系繊維の集合体、コルクのような木質系素材、等を用いることができる。
【0016】
第1と第2の発明において、断熱層を形成する発泡性樹脂は、発泡性ウレタン樹脂、特に1液型の発泡性ウレタン樹脂がコストや作業性等の観点から好ましいが、発泡性ポリオレフィン系樹脂のような発泡性樹脂も用いることができる。
【0017】
さらに、型内で成形されたヒータユニットは、型から取りだした後、別途用意する、裏面に収容凹部を形成した床パネル本体内に取り込まれ、適宜の裏面板が取り付けられて電気式床暖房用の床パネルとされるが、特許文献3に記載のように、型として、床パネル本体を構成する表面板と額縁材と裏面板とからなる型を用いることにより、発泡成形と同時に、断熱層を積層したヒータユニットを内蔵した電気式床暖房用の床パネルとすることもできる。なお、その際には、下型枠として床パネルの表面板が用いられ、周囲型枠として額縁材が用いられ、裏面板として床パネルの裏面板が用いられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、線ヒータ等からなる発熱手段を備えた面発熱体の発熱手段側に発泡性樹脂を型内発泡させて断熱層を一体成形してなるヒータユニットを、断熱層表面の凹凸や線ヒータ等の部分的な脱離のない状態で、製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は、本発明によるヒータユニットの製造方法の一態様を説明する図であり、図2は、本発明によるヒータユニットの製造方法の他の態様を説明する図である。なお、本発明において、用いる面発熱体は、図3に基づき説明したような従来知られた形態の面発熱体10であり、該面発熱体10の発熱手段側に断熱層を一体成形するのに用いる型も、例えば図4に基づき説明したような従来知られた型20であってよい。以下の説明では、同じ機能を奏する部材には、図3、図4と同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0020】
図1aに示す形態では、最初に、予め製造された面発熱体10が、発熱手段(線ヒータ2等)を上側として、型20の下型枠21の上に置かれる。その際、図3に示したような、発泡性樹脂の発泡に起因して発熱手段に浮き上がりが生じると予測される箇所にアルミ箔テープや両面テープ6などを貼り付けることは要しない。その代わりに、浮き上がりが生じると予測される箇所を少なくとも上から覆うようにして、ネット30を掛け渡す。なお、図示の例では、面発熱体10の全面を覆うようにして、20メッシュであり、厚みが0.6mmのグラス繊維製のネット30を掛け渡している。
【0021】
次に、面発熱体10およびネット30の周囲を押さえ付けるようにして、周囲型枠22を下型枠21の上に置き、上型枠23で閉鎖した後、閉鎖された空間内に、例えば1液型の発泡性ウレタン樹脂を注入して、型内発泡させる。注入した発泡性ウレタン樹脂が、発熱手段における均熱板1に融着されていない部分の裏側に回り込もうとするが、少なくともそのような部分はネット30により上から押さえ付けられているので、回り込みは阻止される。そのために、型内発泡の過程で発熱手段の一部が均熱板1から浮き上がることが生じない。
【0022】
注入した発泡性ウレタン樹脂の発泡が完了した後、上型枠23と周囲型枠22を取り除き、ヒータユニット12aを取り出す。図1bに示すように、製造されるヒータユニット12aは、均熱板1の上に線ヒータ2やリード線等からなる発熱手段を配設した面発熱体10の発熱手段側に、ネット30を介在させて、発泡ウレタンからなる断熱層11を一体成形した形態であり、ネット30が介在していることにより、発熱手段を構成する部材(例えば、サーモスタット3、そのリード線4、電源線5、線ヒータ2等)は、すべて均熱板1に密着した状態となっている。そのために、アルミ箔テープや両面テープ6などを貼り付ける作業を行うことなく、従来のこの種のヒータユニット12では生じがちであった、断熱層表面の膨れや、線ヒータの均熱板からの離脱による異常加熱等を完全に回避することができる。
【0023】
図2aに示す形態では、発泡性樹脂の発泡に起因して発熱手段に浮き上がりが生じると予測される箇所に、上型枠23の裏面に達する高さを備えたクッション材40を配置した状態で、発泡性樹脂の注入と発泡を行うようにしている。
【0024】
この場合も、図1aに示す形態と同様、最初に、予め製造された面発熱体10を型20の下型枠21の上に置く。次に、発泡性樹脂の発泡に起因して発熱手段に浮き上がりが生じると予測される箇所の上に、ウレタン樹脂発泡体のようなクッション材40を置く。クッション材40の高さは、周囲型枠22の上縁レベルから少し飛び出る高さとする。
【0025】
必要な箇所にクッション材40を置いた後、周囲型枠22と上型枠23をセットし、閉鎖された空間内に、図1aの場合と同様に、1液型の発泡性ウレタン樹脂のような発泡性樹脂を注入して、型内発泡させる。この場合も、注入した発泡性ウレタン樹脂が、発熱手段における均熱板1に融着されていない部分の裏側に回り込もうとするが、少なくともそのような部分はクッション40により上から押さえ付けられているので、回り込みは阻止される。そのために、この態様でも、型内発泡の過程で発熱手段の一部(例えば、サーモスタット3、そのリード線4、電源線5、線ヒータ2等)が均熱板1から浮き上がることが生じない。
【0026】
注入した発泡性ウレタン樹脂の発泡が完了した後、上型枠23と周囲型枠22を取り除き、ヒータユニット12bを取り出す。図2bに示すように、製造されるヒータユニット12bは、一体成形される断熱層11の中にクッション材40が含まれた状態となるが、クッション材40の材料を所要の断熱性を備えたものから選択することにより、格別の支障は生じない。好ましくは、断熱層を形成する発泡性樹脂が発泡性ウレタンの場合には、クッション材としてウレタン発泡体が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるヒータユニットの製造方法の一態様を説明する図であり、図1aは製造途中の状態を示し、図1bは製造されたヒータユニットを示している。
【図2】本発明によるヒータユニットの製造方法の他の態様を説明する図であり、図2aは製造途中の状態を示し、図2bは製造されたヒータユニットを示している。
【図3】面発熱体の一例を説明する図。
【図4】面発熱体の発熱手段側に断熱層を一体成形する態様を説明する図であり、図4aは製造途中の状態を示し、図4bは製造されたヒータユニットを示している。
【符号の説明】
【0028】
1…均熱板、2…線ヒータ、3…サーモスタット、4…リード線、5…電源線、6…アルミ箔テープまたは両面テープ、10…面発熱体、11…断熱層、12、12a、12b…ヒータユニット、20…型、21…下型枠、22…周囲型枠、23…上型枠、30…ネット、40…クッション材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
均熱板の上に線ヒータやリード線等からなる発熱手段を配設した面発熱体を下型枠と周囲型枠と上型枠とで形成される型内に配置し、型内に発泡性樹脂を注入して型内発泡させることにより面発熱体の発熱手段側に断熱層を一体成形するようにしたヒータユニットの製造方法であって、
下型枠の上に発熱手段を上側として面発熱体を配置した後、発泡性樹脂の発泡に起因して発熱手段に浮き上がりが生じると予測される箇所を少なくとも含むようにして面発熱体の上にネットを掛け、該ネットを定着させた状態で、発泡性樹脂の注入と発泡を行うことを特徴とするヒータユニットの製造方法。
【請求項2】
均熱板の上に線ヒータやリード線等からなる発熱手段を配設した面発熱体を下型枠と周囲型枠と上型枠とで形成される型内に配置し、型内に発泡性樹脂を注入して型内発泡させることにより面発熱体の発熱手段側に断熱層を一体成形するようにしたヒータユニットの製造方法であって、
下型枠の上に発熱手段を上側として面発熱体を配置した後、発泡性樹脂の発泡に起因して発熱手段に浮き上がりが生じると予測される箇所の全部または一部の上に少なくとも上型枠の裏面に達する高さを備えたクッション材を配置した状態で、発泡性樹脂の注入と発泡を行うことを特徴とするヒータユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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