説明

ヒータユニット

【課題】材質としてホウ素を用いず、構成部材同士の熱膨張差が小さいヒータユニットを提供する。
【解決手段】本発明によるヒータユニット1は、通電によって加熱するヒータ3と、該ヒータ3に結合されると共に、ヒータ3に通電して昇温させる電極5と、前記ヒータ3および電極5を結合させる締結手段と、を備えている。前記ヒータ3および電極5は、各々炭化ケイ素からなり、少なくともヒータ3および電極5における締結手段を用いて結合した結合部の周囲を、化学気相成長で形成させた炭化ケイ素の薄膜35で被覆している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックからなるヒータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハの各種熱処理にヒータユニットが用いられている。このヒータユニットは、通電によって熱を発するヒータと、該ヒータに通電して発熱させる電極とを備えている。
【0003】
前記ヒータと電極とは、種々の方法によって結合される。例えば、ヒータと電極とをネジによって締結したのち、ヒータユニット全体を窒化ホウ素(BN)の薄膜で被覆する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2702609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載された方法では、以下の問題点があった。即ち、まず、半導体に悪影響を及ぼすおそれがあるホウ素(B)を用いるため、好ましくない。また、グラファイトならなる電極と、窒化ホウ素からなる薄膜とでは、熱膨張差があるため、高温時においては熱応力が発生して変形や破損のおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、材質としてホウ素を用いず、構成部材同士の熱膨張差が小さいヒータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、通電によって加熱するヒータ(ヒータ3)と、該ヒータに結合されると共に、ヒータに通電して昇温させる電極(電極5)と、前記ヒータおよび電極を結合させる締結手段と、を備えたヒータユニット(ヒータユニット1)であって、前記ヒータおよび電極は、各々炭化ケイ素からなり、少なくともヒータおよび電極における締結手段を用いて結合した結合部の周囲を、化学気相成長で形成させた炭化ケイ素の薄膜(薄膜35)で被覆していることを要旨とする。
【0008】
このように、本実施形態による結合部の周囲はSiCの薄膜で被覆しているため、膨張と収縮を繰り返しても締結手段が緩みにくくなる。また、ヒータユニットにおけるヒータ、電極および薄膜はSiCからなりホウ素(B)が含まれていないため、半導体に悪影響を及ぼすおそれがない。また、ヒータ、電極および薄膜は、それぞれSiCから形成されているため、高温時(例えば、1400℃以上)における熱膨張率がほぼ等しく、熱応力割れ等が生じにくくなる。
【0009】
本発明の第2の特徴は、前記締結手段は、電極5の端部に設けられた雄ねじ部(雄ねじ部29)と、ヒータ(ヒータ3)の挿通孔(挿通孔33)から突出した雄ねじ部の先端部(先端部25)に螺合して締結されたナット(ナット31)と、から構成されていることを要旨とする。
【0010】
本発明の第3の特徴は、前記ナット(ナット31)の外周面(外周面39)におけるヒータ(ヒータ3)側の角を面取部(面取部41)に形成し、この面取部とヒータとの間隙に前記薄膜(薄膜35)を形成させたことを要旨とする。
【0011】
本発明の第4の特徴は、前記ヒータ(ヒータ3)、電極(電極5)、および締結手段の全体の周囲に前記薄膜(薄膜35)を形成していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るヒータユニットによれば、材質としてホウ素を用いず、構成部材同士の熱膨張差が小さいヒータユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態によるヒータユニットの分解斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】電極とヒータとの結合部近傍を拡大した断面図である。
【図4】ナットの面取部とヒータとの結合部近傍を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るヒータユニットの詳細を図面に基づいて説明する。具体的には、(1)ヒータユニットの全体構成、(2)電極とヒータとの結合部の詳細構成、(3)作用効果、(4)その他の実施形態について説明する。
【0015】
但し、図面は模式的なものであり、各材料層の厚みやその比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0016】
(1)ヒータユニットの全体構成
まず、本実施形態に係るヒータユニットの全体構成を図1、2を用いて説明する。図1は本発明の実施形態によるヒータユニットの分解斜視図、図2は図1の断面図である。
【0017】
ヒータユニット1は、通電によって加熱するヒータ3と、該ヒータ3に結合されてヒータ3に通電する棒状の電極5と、これらのヒータ3および電極5を収容する収容体7と、該収容体7の上部開口を封鎖する蓋面となるサセプタ9と、前記電極5を包囲する円筒状の中空円筒部11と、電極5の下端を支持する支持体13とを備えている。
【0018】
前記ヒータ3は、径方向中心部15から径方向外側に向けて連続して延びており、径方向中心部15を通る中心軸に対して線対称に形成されている。そして、外周縁部17の一端側で電極5に結合されている。
【0019】
前記電極5は、上下方向に細長く延びる棒状に形成されており、上端はヒータ3に結合され、下端は支持体13に結合されている。なお、ヒータ3と電極5とは、炭化ケイ素(SiC)からなる。
【0020】
前記収容体7は、円盤状の底面19と該底面19の外周縁から上方に延びる円筒状の側面21とから一体形成されている。底面19の端部には、電極5が挿通可能な貫通孔23が形成されており、上側は開口している。
【0021】
前記サセプタ9は、円盤状に形成されており、前記収容体7の上部開口を塞ぐ蓋面であると共に、サセプタ9上に半導体ウエハを載置して半導体ウエハを加熱する機能を有する。
【0022】
前記中空円筒部11は、円筒状に形成され、その上端11aは前記収容体7における貫通孔23の周囲の下側に接合されている。また、下端11bは円盤状の支持体13に接合されている。
【0023】
(2)電極とヒータとの結合部の詳細構成
次に、電極とヒータとの結合部の詳細構成を図3〜図4を用いて説明する。図3は電極とヒータとの結合部近傍を拡大した断面図、および、図4はナットの面取部とヒータとの結合部近傍を示す拡大断面図である。
【0024】
電極5の先端部25は、本体部27よりも細径の雄ねじ部29に形成されており、雄ねじ部29の外周面には、雄ねじが形成されている。雄ねじ部29の長さは、図3に示すように、ヒータ3とナット31の合計厚さ程度である。ヒータ3には、雄ねじ部29が挿通する挿通孔33が形成されており、雄ねじ部29を挿通孔33に挿入すると、先端部25がヒータ3の上面3aよりも上方に突出する。そして、この突出した先端部25にナット31を螺合させることによって、ヒータ3と電極5とを締結させている。なお、本実施形態では、これらのナット31と雄ねじ部29とが締結手段となる。さらに、本実施形態においては、ヒータ3と電極5とをナット31で締結したのち、これらのヒータ3および電極5の表面全体に、化学気相成長で形成させた炭化ケイ素の薄膜35を形成している。具体的には、例えば、石英などで出来た反応管内にヒータ3と電極5のアッセンブリ体37を収容し、反応管内にSiCの成分を含む原料ガスを供給することによって、前記アッセンブリ体37の表面にSiCの薄膜35を堆積させる。
【0025】
また、図4に詳細に示すように、前記ナット31の外周面39におけるヒータ3側の角を面取部41に形成している。具体的には、ナット31の下端部の角を断面三角状に切り欠いて面取部41に形成している。そして、この面取部41とヒータ3との間に形成される断面三角状の間隙に前記薄膜35を形成させている。
【0026】
(3)作用効果
以下に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。本実施形態に係るヒータユニット1は、通電によって加熱するヒータ3と、該ヒータ3に結合されると共に、ヒータ3に通電して昇温させる電極5と、前記ヒータ3および電極5を結合させる締結手段と、を備えている。前記ヒータ3および電極5は、各々炭化ケイ素からなり、少なくともヒータ3および電極5における締結手段を用いて結合した結合部の周囲を、化学気相成長で形成させた炭化ケイ素の薄膜35で被覆している。
【0027】
このように、本実施形態による結合部の周囲はSiCの薄膜35で被覆しているため、膨張と収縮を繰り返しても締結手段が緩みにくくなる。また、ヒータユニット1におけるヒータ3、電極5および薄膜35はSiCからなりホウ素(B)が含まれていないため、半導体に悪影響を及ぼすおそれがない。また、ヒータ3、電極5および薄膜35は、それぞれSiCから形成されているため、高温時(例えば、1400℃以上)における熱膨張率がほぼ等しく、熱応力割れ等が生じにくくなる。
【0028】
前記締結手段は、電極5の端部に設けられた雄ねじ部29と、ヒータ3の挿通孔33から突出した雄ねじ部29の先端部25に螺合して締結されたナット31と、から構成されている。従って、簡単な構造で電極5とヒータ3とを確実に締結することができる。
【0029】
前記ナット31の外周面39におけるヒータ3側の角を面取部41に形成し、この面取部41とヒータ3との間隙に前記薄膜35を形成させている。
【0030】
従って、面取部41とヒータ3との間隙に薄膜35が入り込み、締結手段の緩みが生じにくい。
【0031】
なお、前記ヒータ3、電極5、および締結手段の全体の周囲に前記薄膜35を形成しているため、ヒータ3と電極5とを締結手段で締結したアッセンブリ体37をそのまま反応管内に配置して薄膜形成処理をすることができ、作業工数を低減できる。
【0032】
(4)その他の実施形態
なお、前述した実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0033】
本実施形態においては、前述したように、ヒータ3と電極5とを締結手段で締結したアッセンブリ体37をそのまま反応管内に配置することにより、アッセンブリ体37の全体の周囲に薄膜35を形成した。しかし、結合部近傍のみに薄膜35を形成しても良い。
【0034】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 ヒータユニット
3 ヒータ
5 電極
25 先端部
29 雄ねじ部
31 ナット
35 薄膜
39 外周面
41 面取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって加熱するヒータと、該ヒータに結合されると共に、ヒータに通電して昇温させる電極と、前記ヒータおよび電極を結合させる締結手段と、を備えたヒータユニットであって、
前記ヒータおよび電極は、各々炭化ケイ素を含む材料からなり、少なくともヒータおよび電極における締結手段を用いて結合した結合部の周囲を、化学気相成長で形成させた炭化ケイ素の薄膜で被覆したヒータユニット。
【請求項2】
前記締結手段は、電極の端部に設けられた雄ねじ部と、ヒータの挿通穴から突出した雄ねじ部の先端部に螺合して締結されたナットと、から構成された請求項1に記載のヒータユニット。
【請求項3】
前記ナットの外周面におけるヒータ側の角を面取部に形成し、この面取部とヒータとの間隙に前記薄膜を形成させた請求項1または2に記載のヒータユニット。
【請求項4】
前記ヒータ、電極、および締結手段の全体の周囲に前記薄膜を形成した請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒータユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate