ヒータ及びダイリップ調整装置
【課題】ヒートボルトの軸間ピッチを小さくし、ダイリップ部のリップ間隙の長手方向に亘ってリップ間隙を高精度に調整する。
【解決手段】シート2を押し出すTダイ3に設けられたダイリップ部3cの線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列され、熱膨張によってリップ間隙を調整するための複数のヒートボルト6を備えるダイリップ調整装置1における、ヒートボルト6の外周部に配され、ヒートボルト6を加熱する筒状のヒータ7である。ヒータ7は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされ、ヒータ7の中心を通りリップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された加熱部11と、隣接するヒータ7に対向して配された放熱部12と、を有する。
【解決手段】シート2を押し出すTダイ3に設けられたダイリップ部3cの線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列され、熱膨張によってリップ間隙を調整するための複数のヒートボルト6を備えるダイリップ調整装置1における、ヒートボルト6の外周部に配され、ヒートボルト6を加熱する筒状のヒータ7である。ヒータ7は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされ、ヒータ7の中心を通りリップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された加熱部11と、隣接するヒータ7に対向して配された放熱部12と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出し成形機においてダイリップ部を調整するためのヒートボルトを加熱するヒータ、及びこのヒータを備えるダイリップ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押出し成形機が備えるTダイのダイリップ部に設けられ、ダイリップ部のリップ間隙を調整するためのダイリップ調整装置が知られている。特許文献1には、本発明に関連するダイリップ調整装置が開示されている。本発明に関連するダイリップ調整装置は、ダイリップ部のリップ間隙を調整するための複数のヒートボルトと、ヒートボルトの外周部に配されたヒータと、を備えている。
【0003】
図13に、本発明に関連するダイリップ調整装置が備えるヒータの断面図を示す。本発明に関連するダイリップ調整装置101は、図13に示すように、ダイリップ部の直線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列された複数のヒートボルト106を用いることで、リップ間隙を長手方向にわたって調整している。ダイリップ調整装置101は、ヒートボルト106の外周部に配された円筒状のヒータ107を備えており、ヒータ107によってヒートボルト106を加熱することで、ヒートボルト106が熱膨張してヒートボルト106の長さが変化する。これにより、ヒートボルト106の一端部によって、弾性変形可能なフレキシブルリップを押し引きすることで、リップ間隙の寸法(リップ開度)の調整を行っている。
【0004】
そして、本発明に関連するダイリップ調整装置101では、複数のヒートボルト106の配列方向、すなわちTダイから押し出されるシートの幅方向に対して、複数のヒートボルト106が30mm程度のピッチPで配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−5243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、2軸延伸シートは、押し出されたシートを縦横方向である長さ方向及び幅方向に10倍程度に延ばして形成されるので、シートを押し出すTダイにおける、特に幅方向のシート厚みを高精度に調整する必要がある。
【0007】
このため、Tダイに設けられるダイリップ調整装置としては、リップ間隙を調整するための複数のヒートボルトの配列方向のピッチP、つまりシートの幅方向のピッチPが小さくされたダイリップ調整装置が求められている。
【0008】
ヒートボルトを加熱するヒータとして、ヒートボルトの外周部に配された円筒状のヒータを使用していたので、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくした場合、隣接するヒータ同士の外周部が接触してしまう問題がある。
【0009】
あるいは、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくした場合、隣接するヒータ間の隙間が減少するので、隣接するヒータ間に冷却エアーが流れにくくなり、ヒータの冷却に要する時間が長くなり、リップ間隙の調整動作の応答性が低下する問題がある。
【0010】
また、ダイリップ調整装置を小型化することで、軸間ピッチを小さくすることも可能であるが、特に、ヒートボルトの外径を小さくした場合、ヒートボルトによるダイリップ調整装置のダイリップ部を押し引きする力が小さくなり、所望の性能を得ることができないという問題がある。
【0011】
以上のように、本発明に関連するダイリップ調整装置では、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくすることが困難であった。言い換えれば、ダイリップ調整装置は、円筒状のヒータを用いているので、ヒータの外径よりも軸間ピッチを小さくすることができないという問題がある。
【0012】
また、円筒状のヒータの径方向の厚みを薄く形成し、ヒータの外径を小さくすることによって、ヒートボルトの外径を変更せずに、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくすることが可能である。しかし、円筒状のヒータの径方向の厚みを薄く作製することが難しく、製造コストの増加を招く不都合があった。
【0013】
加えて、円筒状のヒータを用いた、本発明に関連するダイリップ調整装置では、ヒートボルトの外周部全体がヒータで覆われているので、ヒートボルトの温度がヒータの外部へ伝わり難く、ヒートボルトが放熱され難い。このため、本発明に関連するダイリップ調整装置は、特に、ヒートボルトを冷却してリップ間隙を調整する動作に時間を要し、ヒートボルトの冷却時の応答特性が乏しいという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくすることで、シートの幅方向に亘ってシートの厚みを高精度に調整することができるダイリップ調整装置のヒータ、及びダイリップ調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するため、本発明に係るヒータは、シートを押し出すTダイに設けられたダイリップ部の線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列され、熱膨張によってリップ間隙を調整するための複数のヒートボルトを備えるダイリップ調整装置における、ヒートボルトの外周部に配され、ヒートボルトを加熱する筒状のヒータである。ヒートボルトの軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、該長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされ、ヒータの中心を通りリップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された加熱部と、隣接するヒータに対向して配された放熱部と、を有する。
【0016】
また、本発明に係るダイリップ調整装置は、本発明の複数のヒータと、複数のヒートボルトと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくすることが可能になり、ダイリップ部のリップ間隙の長手方向に亘ってリップ間隙を高精度に調整することができる。その結果、シートの幅方向に亘ってシートの厚みを高精度に調整することができる。また、筒状のヒータが放熱部を有することで、ヒートボルトを効果的に冷却することが可能になり、ダイリップ部のリップ間隙の調整動作の応答性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】押出し成形機が備える第1の実施形態のダイリップ調整装置を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態のダイリップ調整装置を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態のダイリップ調整装置を、図2におけるA−A線に沿って示す断面図である。
【図4】第1の実施形態のダイリップ調整装置が備えるヒータを示す図である。
【図5】第1の実施形態のダイリップ調整装置における複数のヒータが配列された状態を示す図である。
【図6】第1の実施形態のダイリップ調整装置におけるヒータの配線状態を説明するための図である。
【図7】第2の実施形態のダイリップ調整装置を示す断面図である。
【図8】第2の実施形態のダイリップ調整装置を、図7におけるB−B線に沿って示す断面図である。
【図9】第2の実施形態のダイリップ調整装置が備えるヒータを示す図である。
【図10】実施形態における他のヒータの構成例を示す図である。
【図11】実施形態における他のヒータの構成例を示す図である。
【図12】実施形態における他のヒータの構成例を示す図である。
【図13】本発明に関連するダイリップ調整装置が備えるヒータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、押出し成形機が備える実施形態のダイリップ調整装置の断面図を示す。図2に、実施形態のダイリップ調整装置の断面図を示す。図3に、実施形態のダイリップ調整装置の、図2におけるA−A線に沿った断面図を示す。
【0021】
(第1の実施形態)
図1に示すように、実施形態のダイリップ調整装置1は、押出し成形機が備えるTダイ3のダイリップ部3aに設けられている。Tダイ3は、一組のダイ部3a、3bを組み合わせて構成されており、シート2を押し出すダイリップ部3cを有している。ダイリップ部3cは、一方のダイ部3aに弾性変位可能に形成されたフレキシブルリップ3dを有している。また、押出し成形機は、Tダイ3のダイリップ部3cに対向して配置された成形ロール4を備えており、成形ロール4を回転させることによって、成形ロール4の周面に沿って、ダイリップ部3aから押し出された溶融状態のシート2が冷却、成形される。
【0022】
図2に示すように、ダイリップ調整装置1は、Tダイ3のダイリップ部3cを構成するフレキシブルリップ3dに隣接して設けられている。ダイリップ調整装置1は、図2及び図3に示すように、シート2を押し出すTダイ3に設けられたダイリップ部3cの直線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列され、熱膨張による伸縮でリップ間隙を調整するための複数の丸棒状のヒートボルト6と、ヒートボルト6の外周部に配され、ヒートボルト6を加熱する円筒状のヒータ7と、を備えている。
【0023】
また、ダイリップ調整装置1は、ヒートボルト6を冷却するための冷却部8を備えている。図2及び図3に示すように、冷却部8は、図示しないブロアから冷却風が供給される供給部8aと、供給部8aが配された第1のエアーダクト8bと、第1のエアーダクト8bと複数のエアー絞り穴8cを介して連通された第2のエアーダクト8dと、第2のエアーダクト8dとヒータ7の外周部の空間とを連通する複数のエアー穴8eと、を有している。
【0024】
第1のエアーダクト8bには、ダイリップ部3cのリップ間隙の長手方向の両側に配置された供給部8aから冷却風が供給されている。供給部8aの供給口の開口積は、複数のエアー絞り穴8cの開口面積の総計よりも大きくされており、第1のエアーダクト8b内での圧力が0.3MPa程度に高められている。したがって、第1のエアーダクト8bは、圧力チャンバーの役割を果たしており、エアー絞り穴8cの穴径を数mm程度に小さくしてエアー流動抵抗を高めて、ダイリップ部3cのリップ間隙の長手方向に対するエアー吹き出し量が均等にされている。
【0025】
また、冷却風の流れ方向の下流側に位置する複数のエアー穴8eの開口面積の総計は、流れ方向の上流側に位置する複数のエアー絞り穴8cの開口面積の総計よりも2倍〜4倍程度大きくされている。本実施形態では、図3に示すように、エアー絞り穴8cとエアー穴8eの穴径が同じに形成され、エアー穴8eの個数が、エアー絞り穴8cの個数よりも4倍多く設けられており、複数のエアー穴8eの開口面積の総計が、複数のエアー絞り穴8cの開口面積の総計よりも4倍大きく設定されている。
【0026】
第2のエアーダクト8dは、各ヒートボルト6に対向して複数のエアー穴8eが設けられているので、圧力が下がり、エアー穴8eから吹き出す冷却風の流速が遅くなり、ヒータ7の外周部の空気を換気する程度の流速で、ヒートボルト6の外周部に吹き付けられ、ヒータ7の外周部の温度が低温に保たれている。
【0027】
冷却部8は、エアー穴8eから吹き出す冷却風を、ヒータ7の外周部、及びヒートボルト6の外周部の一部に吹き付けることで、ヒータ7によって加熱されたヒートボルト6を冷却する。冷却部8は、図1に示すように、制御部9に電気的に接続されており、制御部9によってヒートボルト6の冷却動作が制御されている。
【0028】
図3に示すように、ヒータ7は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされている。ヒータ7は、リップ間隙の長手方向の外形が小さくされることで、長手方向に沿って配列される複数のヒータ7のピッチを小さくすることが可能になる。上述した本発明に関連するダイリップ調整装置におけるヒートボルトのピッチP(軸間ピッチ)が30mmであるのに比べて、本実施形態では、リップ間隙の長手方向に沿って配列される複数のヒートボルト6のピッチPが23mmに短縮されている。
【0029】
また、ヒータ7は、ヒータ7の軸線方向に直交する断面において、ヒータ7の中心(軸線)を通りリップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された一対の加熱部11と、隣接するヒータ7に対向して配された放熱部12と、を有している。
【0030】
ヒータ7は、制御部9に電気的に接続されており、制御部9によってヒートボルト6の加熱動作が制御されている。
【0031】
一対の加熱部11は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、ヒートボルト6を挟んで、リップ間隙の長手方向に直交する両側に配されている。加熱部11は、発熱部材としての複数の加熱線11aを有している。放熱部12には、加熱線11aが設けられていない。
【0032】
図4に、第1の実施形態のダイリップ調整装置1が備えるヒータ7を示す。図4において、(a)に、実施形態におけるヒータ7の軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、実施形態におけるヒータ7の側面図を示す。図4において、(c)に、実施形態におけるヒータ7の軸線方向に直交する横断面図を示す。
【0033】
図4(a)及び図4(b)に示すように、円筒状のヒータ7は、円環状の断面形状において、隣接するヒータ7に対向する両側が、軸線方向に平行な平面で切り欠かれた断面楕円状に形成されている。すなわち、ヒータ7は、軸線方向に沿って扁平側面を両側に有することで、複数のヒートボルト6の配列方向に平行な外径が小さくされている。また、ヒータ7は、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0034】
図4(b)及び図4(c)に示すように、ヒータ7は、加熱部11に電気的に接続された配線11bがヒートボルト6の径方向に延ばされて引き出される引き出し部13を有する。引き出し部13は、ヒータ7の軸線方向に直交する断面において、リップ間隙からシート2が押し出される方向である鉛直下方に対して、傾斜角θで傾斜された方向に延ばされている。傾斜角θは、ヒータ7の扁平側面に対する傾斜角であり、35度程度に設定されている。配線11bは、ヒータ7の軸線方向に直交して、ヒータ7の径方向に延ばされている。
【0035】
このように、引き出し部13は、傾斜角θで傾斜されることで、リップ間隙の長手方向に沿って配列された複数のヒータ7の引き出し部13から延ばされる配線11bを、引き出し部13に対して曲げて引き出す角度を小さく抑えることが可能になり、配線11bを引き回す処理を容易に行うことが可能になる。なお、傾斜角θは、25度程度から55度程度の範囲内に設定されることが好ましく、複数のヒータ7の引き出し部13から配線11bをスムーズに引き出すことが可能となる。
【0036】
また、複数のヒータ7の引き出し部13から延ばされた配線11bは、冷却部8に取り付けられた配線受け部材14に支持されている。
【0037】
図5に、第1の実施形態のダイリップ調整装置1における複数のヒータ7が配列された状態を示す。図6に、第1の実施形態のダイリップ調整装置1におけるヒータ7の配線状態を説明するための図を示す。
【0038】
図5に示すように、リップ間隙の長手方向に配列された複数のヒータ7において、この長手方向の中心線Cを挟んだ両側のヒータ7群は、引き出し部13が逆向きに傾斜されている。このように複数のヒータ7の引き出し部13を傾斜させることで、隣接するヒータ7の引き出し部から延ばされる配線11bが互いに干渉することが避けられ、リップ間隙の長手方向(複数のヒートボルト6の配列方向)に対する各ヒータ7の間隔PHを確保することができる。このため、隣接する各ヒータ7の間に、冷却部8から供給された冷却風を流通させることが可能になり、ヒートボルト6の冷却性を確保することができる。
【0039】
図6に示すように、ヒータ7は、一対の加熱部11を連結する連結部16を有しており、連結部16が、ヒータ7の周方向に沿って設けられている。加熱部11は、1つの加熱線11aを、ヒータ7の軸線方向に沿って2往復させてジグザグに延ばすことで、軸線方向に延ばされた4つの加熱線11aの部分を有している。また、加熱部11は、加熱線11aの周囲に、図示しないマグネシア粉末が充填されて構成されている。
【0040】
一対の加熱部11は、ヒータ7の一端の周方向に沿って配された連結部16を構成する配線ベース16aの渡り配線16bによって連結されている。なお、渡り配線16bも、加熱線11aによって形成されてもよい。ヒータ7の一端部に配線ベース16aが配されることで、配線ベース16aが位置する一端部側にて、隣接するヒータ7の間隙がやや狭くなるが、隣接するヒータ7の軸線方向に亘って間隙PHを確保することができる。このため、隣接する各ヒータ7の間に、冷却部8から供給された冷却風を流通させることが可能になり、ヒートボルト6の冷却性を確保することができる。
【0041】
また、制御部9は、シート2の厚みを測定するための図示しないシート厚測定部に電気的に接続されている。シート厚測定部は、シート2の幅方向の複数箇所に配置されており、シート2の測定値を制御部に出力する。制御部9は、シート厚測定部から出力された測定値に基づいて、各ヒータ7及び冷却部8を制御することによって、ヒートボルト6の軸方向の長さを調整し、リップ間隙を自動的に調整する。
【0042】
図2に示すように、ヒートボルト6の一端部には、ヒートボルト6を軸方向に移動させるための移動手段としての差動ネジ部10が設けられている。ヒートボルト6の一端部は、差動ネジ部10を介してヒートボルト6を支持する支持部材としてのサポート15に支持されている。
【0043】
サポート15は、ダイリップ部3cのリップ間隙の長手方向に亘って、Tダイ3に固定されて設けられており、差動ネジ部10を手動で回転操作することで、ヒートボルト6が軸方向に移動される。ヒートボルト6は、差動ネジ部10によって軸方向に移動されることによって、ダイリップ部3cのリップ間隙を変化させる。本実施形態における差動ネジ部10では、サポート15が、M20、ネジピッチ2mmのネジ穴を有し、ヒートボルトが、M12、ネジピッチ1.75mmのネジ部を有しており、1回転当たりヒートボルトを軸方向に0.25mmずつ移動させることが可能とされ、精密な調整量を得ることができる。
【0044】
また、ヒートボルト6の他端部は、図2に示すように、フック構造の止め具17を介して、ダイリップ部3cのフレキシブルリップに強固に固定されており、ヒートボルト6が熱膨張による伸縮でリップ間隙が変化する。止め具17は、断面略コ字状に形成されており、ヒートボルト6の他端部に形成された傾斜面と、楔状に係合されて、ボルトで連結されている。
【0045】
本実施形態におけるヒートボルト6は、図2に示すように、ヒータ7が設けられた部分と、フレキシブルリップ3dとの間の部分の長さが長く設定されており、ヒータ7の熱がフレキシブルリップ3d側に伝わることが抑えられており、ヒータ7の熱による影響が低減されている。また、ヒータボルト6の他端部側には、凹状の面取り部6aを有している。面取り部6aは、差動ネジ部10の調整を行うときに面取り部6aに工具を差し込むことで、ヒートボルト6の回転を止めるために利用されている。
【0046】
また、サポート15は、図2及び図3に示すように、ヒータ7の外周部に通じる通風路としての複数の通風穴15aを有しており、複数の通風穴15aが、リップ間隙の長手方向に沿って配列されている。通風穴15aは、ヒータ7の7外周部の空間から、鉛直上方に向かって延ばされている。
【0047】
また、サポート15は、Tダイ3にサポート15を固定する締結ボルト18が挿入される挿入穴15bを有している。挿入穴15bは、通風穴15aと交差して設けられており、冷却部8からヒータ7の外周部に供給された冷却風が、ヒータ7の外周部の空間にこもることが防止され、通風穴15a、挿入穴15bの両方を通ってサポート15の外部にスムーズに排気することができる。Tダイ3に対するサポート15の取り付け姿勢を変更した場合にも、通風穴15aによって鉛直上方に向かう空気の流れが確保されるので、冷却効率が高められている。
【0048】
図2に示すように、断面L字状に形成されたサポート15は、ヒートボルト6の熱膨張に伴う力に抗してヒートボルト6を支持しているが、上述のように通風穴15aと挿入穴15bを交差して設けることで、締結ボルト18と、差動ネジ部10を介してヒートボルト6を支える支持部との間の肉厚が十分に保たれており、曲げ強度が確保されている。
【0049】
また、Tダイ3には、図2に示すように、ヒートボルト6の軸方向の略中央部を支持するサポート20が取り付けられている。サポート20の軸穴とヒートボルト6の間には、所定の隙間が確保されており、ヒートボルト6の熱がサポート20側に伝わることを防いでいる。また、サポート15には、ヒートボルト6の外周部の空間に、断熱カバー19が設けられており、ヒートボルト6及びヒータ7の熱が、サポート15、20やTダイ3側に伝わることを防いでいる。また、ヒートボルト7の他端部側には、カバー29が、サポート20と止め具17とに跨って設けられており、フレキシブルリップ3d近傍において、シート2に塵埃が落下することを防ぎ、気流が整えられている。
【0050】
以上のように構成されたダイリップ調整装置1について、ダイリップ部3cのリップ間隙が調整される動作を説明する。
【0051】
まず、ダイリップ調整装置1では、ダイリップ部3cのリップ間隔を手動調整する場合、差動ネジ部10を回転操作することによって、ダイリップ部3cのリップ間隔が任意に調整される。
【0052】
ダイリップ調整装置1は、ダイリップ部3cから押し出されたシート2の厚み寸法がシート厚測定部で測定された測定値に基づいて、制御部9によってダイリップ調整装置1が自動制御される。
【0053】
また、ダイリップ調整装置1では、シート厚測定部が出力する測定値に基づいて制御部9が、ダイリップ部3cのリップ間隔を自動調整することで、シート2の幅方向の厚みにムラが生じることが抑えられている。リップ間隙の自動調整を行う場合、制御部9がヒータ7の加熱部11によってヒートボルト6を加熱することで、ヒートボルト6が軸方向に伸びる。軸方向に伸びたヒートボルト6によってダイリップ部3cが押圧されることで、ダイリップ部3cのリップ間隔が小さくなる。
【0054】
また、シート厚測定部が出力する測定値に基づいて制御部9がヒータ7の出力を下げることで、常時稼動している冷却部8によるエアー冷却が、ヒータ7による加熱よりも相対的に上回ることになり、ヒータ7の放熱部12からヒートボルト6の熱を効率的に放熱することで、ヒートボルト6の長さが縮む。ヒートボルト6によってダイリップ部3cが引っ張られることで、ダイリップ部3cのリップ間隔が大きくなる。
【0055】
上述したように、実施形態のダイリップ調整装置1は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、この長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされたヒータ7を備えることによって、ダイリップ部3cのリップ間隙の長手方向、つまり複数のヒートボルト6を配列方向に対して複数のヒータを近接して配置することが可能になる。
【0056】
要するに、本実施形態におけるヒータ7を用いることで、ダイリップ部3cから押し出されるシート2の幅方向に配列された複数のヒートボルト6のピッチPを小さくすることができる。その結果、シート2の幅方向に亘ってシート2の厚みを高精度に調整することができる。
【0057】
また、ヒータ7は、隣接するヒータ7に対向する部分に配された放熱部12を有することによって、ヒートボルト6の冷却効率が向上し、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を向上することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、サポートに対して、ヒートボルト6やヒータ7を組み込んでダイリップ調整装置1を予め組み立てた後、ダイリップ調整装置1全体をダイ3aに容易に組み付けることができるので、組立時の作業性が向上されている。
【0059】
(第2の実施形態)
図7に、第2の実施形態のダイリップ調整装置の断面図を示す。図8に、第2の実施形態のダイリップ調整装置の、図7におけるB−B線に沿った断面図を示す。第2の実施形態のダイリップ調整装置は、一部の構成を除いて第1の実施形態と同様に構成されているので、第1の実施形態と同一の構成部材には第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図7及び図8に示すように、第2の実施形態のダイリップ調整装置21は、ヒートボルト6の放熱性を更に向上するために、ヒータ27の構成が、第1の実施形態におけるヒータ7と異なっている。
【0061】
加えて、第2の実施形態のダイリップ調整装置は、第1の実施形態と比較して、ヒートボルトの冷却構造が簡素化されており、ブロアから冷却風が供給される供給部、エアーダクト等を有する冷却部が省かれて構成されている。
【0062】
ヒートボルト6及びヒータ27に対向する位置には、ヒータ27の引き出し部13から延ばされた配線を支持する配線受け板14を支持する支持部材28が設けられている。支持部材28は、例えば、ヒータ27の配列方向に幅が数cm程度の板状に形成されており、図8に示すように、リップ間隙の長手方向に沿って配列された4つのヒートボルト6毎のヒートボルト6の間の位置で、サポート25にねじ止め固定されている。本実施形態では、ヒートボルト6及びヒータ27の外周部が、押出し成形機の外部に露出されており、この外部を自然対流する空気が、ヒートボルト6の外周部に流れ込むように構成されている。
【0063】
また、図7に示すように、第2の実施形態におけるサポート25は、ヒータ27の外周部に通じる複数の第1の通気路25a、及び複数の第2の通気路25b、挿入穴25cが、ヒートボルト6の軸方向に並んで設けられている。複数の第1及び第2の通気路25a、25bは、それぞれリップ間隙の長手方向に沿って配列されており、ヒータ27の外周部の空間から、鉛直上方に向かって延ばされている。
【0064】
また、サポート25は、Tダイ3にサポート25を固定する締結ボルト18が挿入される挿入穴25cを有している。挿入穴25cは、第1及び第2の通風穴25a、25bと直交して設けられており、ヒータ27の外周部に流入した空気が、これらの第1及び第2の通風穴25a、25b、挿入穴25cのそれぞれを通ってサポート25の外部にスムーズに排気することができる。
【0065】
図9に、第2の実施形態のダイリップ調整装置が備えるヒータを示す。図9において、(a)に、実施形態におけるヒータの軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、本実施形態におけるヒータの軸線方向に直交する横断面図を示す。
【0066】
図8に示すように、第2の実施形態におけるヒータ27は、上述した実施形態におけるヒータ7が一対の加熱部11を有しているのと比べて、1つの加熱部22のみを有している点で異なっている。図9(a)及び図9(b)に示すように、ヒータ27は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向に直交する方向に配された加熱部22を有している。加熱部22は、円筒状のヒータ27の鉛直上方に配されており、空気の流れの下流側に位置している。加熱部22は、上述したヒータ7の放熱部11と同様に構成されている。
【0067】
図9(a)に示すように、ヒータ27の放熱部23は、ヒートボルト6の周面に通じる3つの開口部23aを有している。3つの開口部23aは、ヒートボルト6の軸方向に並んで設けられている。開口部23aは、ヒータ27の周方向に対して、全周の3/4程度に亘って形成されており、上述したヒータ7の放熱部11に比べて放熱性が更に向上されている。このため、ヒータ27を用いることで、ヒートボルト6の冷却効率が更に高められ、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を更に向上することができる。また、ヒータ27は、ヒータ27の中空部に差し込まれたヒートボルト6に、放熱部23の開口部23aの両側の配された4つのバンド状のリング部材(不図示)で固定されている。
【0068】
なお、ヒータ27は、加熱部23の面積が、ヒートボルト6の全周の1/4程度と少ない。このため、ヒータ27の出力kWを上述したヒータ7と同じに設定する場合には、ワット密度(単位面積当たりのワット数)が2倍され、ヒータ7よりも高い温度でヒートボルト6を加熱して温度調節が行われる。
【0069】
また、ヒータ27は、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0070】
本実施形態のように、自然対流する空気を利用してヒートボルト6やヒータ27を冷却する場合、ヒートボルト6やヒータ27の外周面の温度が高くなったとき、高温面から放出され放射熱は、自然対流する空気によって奪われるエアー冷却熱よりも大きくなる。ヒートボルト6やヒータ27の外周面の温度が300度程度で、エアー冷却熱と、高温面からの放射熱とがほぼ等しくなる(特許第4335847号の図4参照)。
【0071】
本実施形態では、ヒートボルト6の外周面が、ヒータ27の開口部23aを通して直接外気に晒されているので、ヒートボルト6の冷却速度が第1の実施形態よりも速くなり、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を更に向上することができる。
【0072】
第2の実施形態は、加圧エアーで強制冷却する冷却部を省き、放熱性が更に高められたヒータ27を用いることで、エネルギー消費の低減を図り、自然対流する空気によってヒートボルト6を効率的に冷却することができる。
【0073】
また、第2の実施形態においても、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、この長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされたヒータ27を備えることによって、リップ間隙の長手方向に配列された複数のヒートボルト6のピッチPを小さくすることができる。その結果、シート2の幅方向に亘ってシート2の厚みを高精度に調整することができる。
【0074】
また、第2の実施形態によれば、サポート25に対して、ヒートボルト6やヒータ27を組み込んでダイリップ調整装置21を予め組み立てた後、ダイリップ調整装置21全体をダイ3aに容易に組み付けることができるので、第1の実施形態と同様に、組立時の作業性が向上されている。
【0075】
次に、上述した実施形態におけるヒータの他の構成例について、図面を参照して説明する。図10〜図12に、実施形態における他のヒータの構成例を示す。
【0076】
図10において、(a)に、ヒータの軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、ヒータの軸線方向に直交する横断面図を示す。図10(a)及び図10(b)に示すように、他の構成例のヒータ37は、円筒状に形成されており、ヒートボルト7の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向に直交する方向に配された1つの加熱部32のみを有している。加熱部32は、円筒状のヒータ37の鉛直下方に配されており、空気の流れの上流側に位置している。
【0077】
ヒータ37は、上述したヒータ27と同様に、加熱部32の面積が、ヒートボルト6の全周の1/4程度である。このため、ヒータ37の出力kWを上述したヒータ7と同じに設定する場合には、ワット密度(単位面積当たりのワット数)が2倍され、ヒータ7よりも高い温度でヒートボルト6を加熱して温度調節が行われる。
【0078】
また、ヒータ37の放熱部33は、開口部を有しておらず、ヒートボルト6の周方向に沿って設けられている。また、ヒータ37の引き出し部13は、加熱部32に隣接して設けられている。このため、ヒータ37では、上述した配線ベース16aを省くことができる。
【0079】
ヒータ37においても、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0080】
本構成例のヒータ37によれば、第1の実施形態におけるヒータ7の放熱部12よりも放熱部33の面積が広くされているので、第1の実施形態に比べてヒートボルト6の冷却速度を若干速くすることができ、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を向上することができる。ただし、本構成例のヒータ37は、第1の実施形態におけるヒータ7に比べて、加熱部の面積が半分であるので、ヒートボルト6の加熱速度が第1の実施形態におけるヒータ7に比べて若干遅くなる。
【0081】
図11において、(a)に、ヒータの軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、ヒータの側面図を示す。また図11において、(c)に、ヒータの軸線方向に直交する横断面図を示す。図11(a)〜図11(c)に示すように、他の構成例のヒータ47は、上述したヒータ37の放熱部33に開口部を形成した構成に相当している。ヒータ47は、円筒状に形成されており、ヒートボルト7の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向に直交する方向に配された1つの加熱部42のみを有している。加熱部42は、円筒状のヒータ47の鉛直下方に配されており、空気の流れの上流側に位置している。
【0082】
ヒータ47も、上述したヒータ27、37と同様に、加熱部42の面積が、ヒートボルト6の全周の1/4程度である。このため、ヒータ47の出力kWを上述したヒータ7と同じに設定する場合には、ワット密度(単位面積当たりのワット数)が2倍され、ヒータ7よりも高い温度でヒートボルト6を加熱して温度調節が行われる。
【0083】
図11(a)及び図11(b)に示すように、ヒータ47の放熱部43は、ヒートボルト6の周面に通じる複数の開口部43aを有している。複数の開口部43aは、ヒートボルト6の軸方向に並んで設けられている。開口部43aは、ヒータ47の周方向に対して、全周の3/4程度に亘って形成されている。本構成例のヒータ47は、放熱部43が開口部43aを有することで、上述したヒータ37の放熱部33に比べて放熱性が更に向上されている。このため、ヒータ47を用いることで、ヒートボルト6の冷却効率が更に高められ、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を更に向上することができる。
【0084】
ヒータ47は、引き出し部13が加熱部32に隣接して設けられている。このため、ヒータ47では、上述した配線ベース16aを省くことができる。
【0085】
ヒータ47においても、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0086】
図12において、(a)に、ヒータの軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、ヒータの軸線方向に直交する横断面図を示す。図12(a)及び図12(b)に示すように、他の構成例のヒータ57は、第1の実施形態におけるヒータ7の放熱部12が、複数の円形状の開口部を有する構成に相当している。
【0087】
本構成例のヒータ57は、ヒータ57の軸線方向に直交する断面において、ヒータ57の中心を通りリップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された一対の加熱部52と、隣接するヒータ57に対向して配された放熱部53と、を有している。
【0088】
図12(a)に示すように、ヒータ47の放熱部53は、ヒートボルト6の周面に通じる複数の開口部53aを有している。複数の開口部53aは、ヒートボルト6の軸方向に並んで設けられている。
【0089】
本構成例のヒータ57は、放熱部53の面積が、第1の実施形態におけるヒータ7の放熱部12と同じであるが、放熱部53の開口部53aからヒートボルト6の外周面を外方に露出させているので、ヒータ7よりも更に放熱性が高められている。
【0090】
ヒータ57においても、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0091】
本構成例のヒータ57は、第1の実施形態におけるヒータ7に比べて、ヒートボルト6の冷却速度が速くなり、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を更に向上することができる。
【0092】
以上のように構成されたヒータ37、47、57のいずれを用いた場合であっても、リップ間隙の長手方向に配列される複数のヒートボルト6のピッチPを小さくすることが可能になる。
【0093】
上述したヒータ7、27、37、47、57において、ヒートボルト6の冷却性能が優れる順位をつけると、ヒータ27、47が最も高く、次いでヒータ37、ヒータ57、ヒータ7の順番となる。なお、ヒータ57は、放熱部53の開口部53aの個数や開口面積を工夫することで、ヒータ37よりも冷却性能を高めることも可能である。
【0094】
最後に、ヒータの構成の変形例について補足して説明する。
【0095】
第1の実施形態におけるヒータ7は、一対の放熱部12を有して構成されたが、一方の放熱部12のみを有して構成されてもよく、一方の放熱部12のみを有する構成であっても、複数のヒートボルト6の配列方向のピッチPを小さくすることができ、ヒートボルト6、ヒータ7の冷却速度を速くすることができる。
【0096】
図9及び図11に示したように、ヒータ27、47は、放熱部が3つの開口部を有して構成されたが、開口部として多数の丸穴を形成することで、放熱部をパンチングメタルで構成されてもよい。
【0097】
また、ヒータ27、47は、放熱部が開口部を有して構成されたが、例えば、円筒状に形成された第1ヒータ部分と、断面楕円状に形成された第1ヒータ部分とを組み合わせて構成し、これらのヒータ部分が固定バンドやネジで連結されて構成されてもよい。
【0098】
ヒータ7、27、37、47では、引き出し部13が傾斜角θで傾斜されて配置されたが、引き出し部を鉛直下方、つまり傾斜角θ=0度で配置されてもよいことは勿論である。また、引き出し部13から引き出される配線11bは、ヒータの軸線方向に直交してヒータの径方向に延ばされたが、ヒータの軸線方向に対して傾斜されてもよいことは勿論である。
【0099】
また、本実施形態では、丸棒状のヒートボルトの外周部に円筒状のヒータが設けられて構成されたが、例えば、角形や、断面多角形状のヒートボルトを用いて、ヒートボルトの断面形状に応じて、断面多角形状をなす筒状のヒータが用いられてもよい。
【0100】
なお、本実施形態のダイリップ調整装置では、ヒートボルトがサポートによって片持ち支持されて構成されたが、ヒートボルトの両端がサポートによって支持される構成であってもよく、ヒートボルトの支持構造を限定するものではない。円筒状のヒータを用いるダイリップ調整装置であれば、円筒状のヒータの代わりに本実施形態におけるヒータを用いることで、複数のヒートボルトの配列方向のピッチPを小さくし、ヒートボルトの冷却時の応答特性を向上することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 ダイリップ調整装置
2 シート
3 Tダイ
3c ダイリップ部
6 ヒートボルト
7 ヒータ
11 加熱部
12 放熱部
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出し成形機においてダイリップ部を調整するためのヒートボルトを加熱するヒータ、及びこのヒータを備えるダイリップ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押出し成形機が備えるTダイのダイリップ部に設けられ、ダイリップ部のリップ間隙を調整するためのダイリップ調整装置が知られている。特許文献1には、本発明に関連するダイリップ調整装置が開示されている。本発明に関連するダイリップ調整装置は、ダイリップ部のリップ間隙を調整するための複数のヒートボルトと、ヒートボルトの外周部に配されたヒータと、を備えている。
【0003】
図13に、本発明に関連するダイリップ調整装置が備えるヒータの断面図を示す。本発明に関連するダイリップ調整装置101は、図13に示すように、ダイリップ部の直線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列された複数のヒートボルト106を用いることで、リップ間隙を長手方向にわたって調整している。ダイリップ調整装置101は、ヒートボルト106の外周部に配された円筒状のヒータ107を備えており、ヒータ107によってヒートボルト106を加熱することで、ヒートボルト106が熱膨張してヒートボルト106の長さが変化する。これにより、ヒートボルト106の一端部によって、弾性変形可能なフレキシブルリップを押し引きすることで、リップ間隙の寸法(リップ開度)の調整を行っている。
【0004】
そして、本発明に関連するダイリップ調整装置101では、複数のヒートボルト106の配列方向、すなわちTダイから押し出されるシートの幅方向に対して、複数のヒートボルト106が30mm程度のピッチPで配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−5243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、2軸延伸シートは、押し出されたシートを縦横方向である長さ方向及び幅方向に10倍程度に延ばして形成されるので、シートを押し出すTダイにおける、特に幅方向のシート厚みを高精度に調整する必要がある。
【0007】
このため、Tダイに設けられるダイリップ調整装置としては、リップ間隙を調整するための複数のヒートボルトの配列方向のピッチP、つまりシートの幅方向のピッチPが小さくされたダイリップ調整装置が求められている。
【0008】
ヒートボルトを加熱するヒータとして、ヒートボルトの外周部に配された円筒状のヒータを使用していたので、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくした場合、隣接するヒータ同士の外周部が接触してしまう問題がある。
【0009】
あるいは、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくした場合、隣接するヒータ間の隙間が減少するので、隣接するヒータ間に冷却エアーが流れにくくなり、ヒータの冷却に要する時間が長くなり、リップ間隙の調整動作の応答性が低下する問題がある。
【0010】
また、ダイリップ調整装置を小型化することで、軸間ピッチを小さくすることも可能であるが、特に、ヒートボルトの外径を小さくした場合、ヒートボルトによるダイリップ調整装置のダイリップ部を押し引きする力が小さくなり、所望の性能を得ることができないという問題がある。
【0011】
以上のように、本発明に関連するダイリップ調整装置では、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくすることが困難であった。言い換えれば、ダイリップ調整装置は、円筒状のヒータを用いているので、ヒータの外径よりも軸間ピッチを小さくすることができないという問題がある。
【0012】
また、円筒状のヒータの径方向の厚みを薄く形成し、ヒータの外径を小さくすることによって、ヒートボルトの外径を変更せずに、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくすることが可能である。しかし、円筒状のヒータの径方向の厚みを薄く作製することが難しく、製造コストの増加を招く不都合があった。
【0013】
加えて、円筒状のヒータを用いた、本発明に関連するダイリップ調整装置では、ヒートボルトの外周部全体がヒータで覆われているので、ヒートボルトの温度がヒータの外部へ伝わり難く、ヒートボルトが放熱され難い。このため、本発明に関連するダイリップ調整装置は、特に、ヒートボルトを冷却してリップ間隙を調整する動作に時間を要し、ヒートボルトの冷却時の応答特性が乏しいという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくすることで、シートの幅方向に亘ってシートの厚みを高精度に調整することができるダイリップ調整装置のヒータ、及びダイリップ調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するため、本発明に係るヒータは、シートを押し出すTダイに設けられたダイリップ部の線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列され、熱膨張によってリップ間隙を調整するための複数のヒートボルトを備えるダイリップ調整装置における、ヒートボルトの外周部に配され、ヒートボルトを加熱する筒状のヒータである。ヒートボルトの軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、該長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされ、ヒータの中心を通りリップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された加熱部と、隣接するヒータに対向して配された放熱部と、を有する。
【0016】
また、本発明に係るダイリップ調整装置は、本発明の複数のヒータと、複数のヒートボルトと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヒートボルトの軸間ピッチを小さくすることが可能になり、ダイリップ部のリップ間隙の長手方向に亘ってリップ間隙を高精度に調整することができる。その結果、シートの幅方向に亘ってシートの厚みを高精度に調整することができる。また、筒状のヒータが放熱部を有することで、ヒートボルトを効果的に冷却することが可能になり、ダイリップ部のリップ間隙の調整動作の応答性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】押出し成形機が備える第1の実施形態のダイリップ調整装置を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態のダイリップ調整装置を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態のダイリップ調整装置を、図2におけるA−A線に沿って示す断面図である。
【図4】第1の実施形態のダイリップ調整装置が備えるヒータを示す図である。
【図5】第1の実施形態のダイリップ調整装置における複数のヒータが配列された状態を示す図である。
【図6】第1の実施形態のダイリップ調整装置におけるヒータの配線状態を説明するための図である。
【図7】第2の実施形態のダイリップ調整装置を示す断面図である。
【図8】第2の実施形態のダイリップ調整装置を、図7におけるB−B線に沿って示す断面図である。
【図9】第2の実施形態のダイリップ調整装置が備えるヒータを示す図である。
【図10】実施形態における他のヒータの構成例を示す図である。
【図11】実施形態における他のヒータの構成例を示す図である。
【図12】実施形態における他のヒータの構成例を示す図である。
【図13】本発明に関連するダイリップ調整装置が備えるヒータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、押出し成形機が備える実施形態のダイリップ調整装置の断面図を示す。図2に、実施形態のダイリップ調整装置の断面図を示す。図3に、実施形態のダイリップ調整装置の、図2におけるA−A線に沿った断面図を示す。
【0021】
(第1の実施形態)
図1に示すように、実施形態のダイリップ調整装置1は、押出し成形機が備えるTダイ3のダイリップ部3aに設けられている。Tダイ3は、一組のダイ部3a、3bを組み合わせて構成されており、シート2を押し出すダイリップ部3cを有している。ダイリップ部3cは、一方のダイ部3aに弾性変位可能に形成されたフレキシブルリップ3dを有している。また、押出し成形機は、Tダイ3のダイリップ部3cに対向して配置された成形ロール4を備えており、成形ロール4を回転させることによって、成形ロール4の周面に沿って、ダイリップ部3aから押し出された溶融状態のシート2が冷却、成形される。
【0022】
図2に示すように、ダイリップ調整装置1は、Tダイ3のダイリップ部3cを構成するフレキシブルリップ3dに隣接して設けられている。ダイリップ調整装置1は、図2及び図3に示すように、シート2を押し出すTダイ3に設けられたダイリップ部3cの直線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列され、熱膨張による伸縮でリップ間隙を調整するための複数の丸棒状のヒートボルト6と、ヒートボルト6の外周部に配され、ヒートボルト6を加熱する円筒状のヒータ7と、を備えている。
【0023】
また、ダイリップ調整装置1は、ヒートボルト6を冷却するための冷却部8を備えている。図2及び図3に示すように、冷却部8は、図示しないブロアから冷却風が供給される供給部8aと、供給部8aが配された第1のエアーダクト8bと、第1のエアーダクト8bと複数のエアー絞り穴8cを介して連通された第2のエアーダクト8dと、第2のエアーダクト8dとヒータ7の外周部の空間とを連通する複数のエアー穴8eと、を有している。
【0024】
第1のエアーダクト8bには、ダイリップ部3cのリップ間隙の長手方向の両側に配置された供給部8aから冷却風が供給されている。供給部8aの供給口の開口積は、複数のエアー絞り穴8cの開口面積の総計よりも大きくされており、第1のエアーダクト8b内での圧力が0.3MPa程度に高められている。したがって、第1のエアーダクト8bは、圧力チャンバーの役割を果たしており、エアー絞り穴8cの穴径を数mm程度に小さくしてエアー流動抵抗を高めて、ダイリップ部3cのリップ間隙の長手方向に対するエアー吹き出し量が均等にされている。
【0025】
また、冷却風の流れ方向の下流側に位置する複数のエアー穴8eの開口面積の総計は、流れ方向の上流側に位置する複数のエアー絞り穴8cの開口面積の総計よりも2倍〜4倍程度大きくされている。本実施形態では、図3に示すように、エアー絞り穴8cとエアー穴8eの穴径が同じに形成され、エアー穴8eの個数が、エアー絞り穴8cの個数よりも4倍多く設けられており、複数のエアー穴8eの開口面積の総計が、複数のエアー絞り穴8cの開口面積の総計よりも4倍大きく設定されている。
【0026】
第2のエアーダクト8dは、各ヒートボルト6に対向して複数のエアー穴8eが設けられているので、圧力が下がり、エアー穴8eから吹き出す冷却風の流速が遅くなり、ヒータ7の外周部の空気を換気する程度の流速で、ヒートボルト6の外周部に吹き付けられ、ヒータ7の外周部の温度が低温に保たれている。
【0027】
冷却部8は、エアー穴8eから吹き出す冷却風を、ヒータ7の外周部、及びヒートボルト6の外周部の一部に吹き付けることで、ヒータ7によって加熱されたヒートボルト6を冷却する。冷却部8は、図1に示すように、制御部9に電気的に接続されており、制御部9によってヒートボルト6の冷却動作が制御されている。
【0028】
図3に示すように、ヒータ7は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされている。ヒータ7は、リップ間隙の長手方向の外形が小さくされることで、長手方向に沿って配列される複数のヒータ7のピッチを小さくすることが可能になる。上述した本発明に関連するダイリップ調整装置におけるヒートボルトのピッチP(軸間ピッチ)が30mmであるのに比べて、本実施形態では、リップ間隙の長手方向に沿って配列される複数のヒートボルト6のピッチPが23mmに短縮されている。
【0029】
また、ヒータ7は、ヒータ7の軸線方向に直交する断面において、ヒータ7の中心(軸線)を通りリップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された一対の加熱部11と、隣接するヒータ7に対向して配された放熱部12と、を有している。
【0030】
ヒータ7は、制御部9に電気的に接続されており、制御部9によってヒートボルト6の加熱動作が制御されている。
【0031】
一対の加熱部11は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、ヒートボルト6を挟んで、リップ間隙の長手方向に直交する両側に配されている。加熱部11は、発熱部材としての複数の加熱線11aを有している。放熱部12には、加熱線11aが設けられていない。
【0032】
図4に、第1の実施形態のダイリップ調整装置1が備えるヒータ7を示す。図4において、(a)に、実施形態におけるヒータ7の軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、実施形態におけるヒータ7の側面図を示す。図4において、(c)に、実施形態におけるヒータ7の軸線方向に直交する横断面図を示す。
【0033】
図4(a)及び図4(b)に示すように、円筒状のヒータ7は、円環状の断面形状において、隣接するヒータ7に対向する両側が、軸線方向に平行な平面で切り欠かれた断面楕円状に形成されている。すなわち、ヒータ7は、軸線方向に沿って扁平側面を両側に有することで、複数のヒートボルト6の配列方向に平行な外径が小さくされている。また、ヒータ7は、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0034】
図4(b)及び図4(c)に示すように、ヒータ7は、加熱部11に電気的に接続された配線11bがヒートボルト6の径方向に延ばされて引き出される引き出し部13を有する。引き出し部13は、ヒータ7の軸線方向に直交する断面において、リップ間隙からシート2が押し出される方向である鉛直下方に対して、傾斜角θで傾斜された方向に延ばされている。傾斜角θは、ヒータ7の扁平側面に対する傾斜角であり、35度程度に設定されている。配線11bは、ヒータ7の軸線方向に直交して、ヒータ7の径方向に延ばされている。
【0035】
このように、引き出し部13は、傾斜角θで傾斜されることで、リップ間隙の長手方向に沿って配列された複数のヒータ7の引き出し部13から延ばされる配線11bを、引き出し部13に対して曲げて引き出す角度を小さく抑えることが可能になり、配線11bを引き回す処理を容易に行うことが可能になる。なお、傾斜角θは、25度程度から55度程度の範囲内に設定されることが好ましく、複数のヒータ7の引き出し部13から配線11bをスムーズに引き出すことが可能となる。
【0036】
また、複数のヒータ7の引き出し部13から延ばされた配線11bは、冷却部8に取り付けられた配線受け部材14に支持されている。
【0037】
図5に、第1の実施形態のダイリップ調整装置1における複数のヒータ7が配列された状態を示す。図6に、第1の実施形態のダイリップ調整装置1におけるヒータ7の配線状態を説明するための図を示す。
【0038】
図5に示すように、リップ間隙の長手方向に配列された複数のヒータ7において、この長手方向の中心線Cを挟んだ両側のヒータ7群は、引き出し部13が逆向きに傾斜されている。このように複数のヒータ7の引き出し部13を傾斜させることで、隣接するヒータ7の引き出し部から延ばされる配線11bが互いに干渉することが避けられ、リップ間隙の長手方向(複数のヒートボルト6の配列方向)に対する各ヒータ7の間隔PHを確保することができる。このため、隣接する各ヒータ7の間に、冷却部8から供給された冷却風を流通させることが可能になり、ヒートボルト6の冷却性を確保することができる。
【0039】
図6に示すように、ヒータ7は、一対の加熱部11を連結する連結部16を有しており、連結部16が、ヒータ7の周方向に沿って設けられている。加熱部11は、1つの加熱線11aを、ヒータ7の軸線方向に沿って2往復させてジグザグに延ばすことで、軸線方向に延ばされた4つの加熱線11aの部分を有している。また、加熱部11は、加熱線11aの周囲に、図示しないマグネシア粉末が充填されて構成されている。
【0040】
一対の加熱部11は、ヒータ7の一端の周方向に沿って配された連結部16を構成する配線ベース16aの渡り配線16bによって連結されている。なお、渡り配線16bも、加熱線11aによって形成されてもよい。ヒータ7の一端部に配線ベース16aが配されることで、配線ベース16aが位置する一端部側にて、隣接するヒータ7の間隙がやや狭くなるが、隣接するヒータ7の軸線方向に亘って間隙PHを確保することができる。このため、隣接する各ヒータ7の間に、冷却部8から供給された冷却風を流通させることが可能になり、ヒートボルト6の冷却性を確保することができる。
【0041】
また、制御部9は、シート2の厚みを測定するための図示しないシート厚測定部に電気的に接続されている。シート厚測定部は、シート2の幅方向の複数箇所に配置されており、シート2の測定値を制御部に出力する。制御部9は、シート厚測定部から出力された測定値に基づいて、各ヒータ7及び冷却部8を制御することによって、ヒートボルト6の軸方向の長さを調整し、リップ間隙を自動的に調整する。
【0042】
図2に示すように、ヒートボルト6の一端部には、ヒートボルト6を軸方向に移動させるための移動手段としての差動ネジ部10が設けられている。ヒートボルト6の一端部は、差動ネジ部10を介してヒートボルト6を支持する支持部材としてのサポート15に支持されている。
【0043】
サポート15は、ダイリップ部3cのリップ間隙の長手方向に亘って、Tダイ3に固定されて設けられており、差動ネジ部10を手動で回転操作することで、ヒートボルト6が軸方向に移動される。ヒートボルト6は、差動ネジ部10によって軸方向に移動されることによって、ダイリップ部3cのリップ間隙を変化させる。本実施形態における差動ネジ部10では、サポート15が、M20、ネジピッチ2mmのネジ穴を有し、ヒートボルトが、M12、ネジピッチ1.75mmのネジ部を有しており、1回転当たりヒートボルトを軸方向に0.25mmずつ移動させることが可能とされ、精密な調整量を得ることができる。
【0044】
また、ヒートボルト6の他端部は、図2に示すように、フック構造の止め具17を介して、ダイリップ部3cのフレキシブルリップに強固に固定されており、ヒートボルト6が熱膨張による伸縮でリップ間隙が変化する。止め具17は、断面略コ字状に形成されており、ヒートボルト6の他端部に形成された傾斜面と、楔状に係合されて、ボルトで連結されている。
【0045】
本実施形態におけるヒートボルト6は、図2に示すように、ヒータ7が設けられた部分と、フレキシブルリップ3dとの間の部分の長さが長く設定されており、ヒータ7の熱がフレキシブルリップ3d側に伝わることが抑えられており、ヒータ7の熱による影響が低減されている。また、ヒータボルト6の他端部側には、凹状の面取り部6aを有している。面取り部6aは、差動ネジ部10の調整を行うときに面取り部6aに工具を差し込むことで、ヒートボルト6の回転を止めるために利用されている。
【0046】
また、サポート15は、図2及び図3に示すように、ヒータ7の外周部に通じる通風路としての複数の通風穴15aを有しており、複数の通風穴15aが、リップ間隙の長手方向に沿って配列されている。通風穴15aは、ヒータ7の7外周部の空間から、鉛直上方に向かって延ばされている。
【0047】
また、サポート15は、Tダイ3にサポート15を固定する締結ボルト18が挿入される挿入穴15bを有している。挿入穴15bは、通風穴15aと交差して設けられており、冷却部8からヒータ7の外周部に供給された冷却風が、ヒータ7の外周部の空間にこもることが防止され、通風穴15a、挿入穴15bの両方を通ってサポート15の外部にスムーズに排気することができる。Tダイ3に対するサポート15の取り付け姿勢を変更した場合にも、通風穴15aによって鉛直上方に向かう空気の流れが確保されるので、冷却効率が高められている。
【0048】
図2に示すように、断面L字状に形成されたサポート15は、ヒートボルト6の熱膨張に伴う力に抗してヒートボルト6を支持しているが、上述のように通風穴15aと挿入穴15bを交差して設けることで、締結ボルト18と、差動ネジ部10を介してヒートボルト6を支える支持部との間の肉厚が十分に保たれており、曲げ強度が確保されている。
【0049】
また、Tダイ3には、図2に示すように、ヒートボルト6の軸方向の略中央部を支持するサポート20が取り付けられている。サポート20の軸穴とヒートボルト6の間には、所定の隙間が確保されており、ヒートボルト6の熱がサポート20側に伝わることを防いでいる。また、サポート15には、ヒートボルト6の外周部の空間に、断熱カバー19が設けられており、ヒートボルト6及びヒータ7の熱が、サポート15、20やTダイ3側に伝わることを防いでいる。また、ヒートボルト7の他端部側には、カバー29が、サポート20と止め具17とに跨って設けられており、フレキシブルリップ3d近傍において、シート2に塵埃が落下することを防ぎ、気流が整えられている。
【0050】
以上のように構成されたダイリップ調整装置1について、ダイリップ部3cのリップ間隙が調整される動作を説明する。
【0051】
まず、ダイリップ調整装置1では、ダイリップ部3cのリップ間隔を手動調整する場合、差動ネジ部10を回転操作することによって、ダイリップ部3cのリップ間隔が任意に調整される。
【0052】
ダイリップ調整装置1は、ダイリップ部3cから押し出されたシート2の厚み寸法がシート厚測定部で測定された測定値に基づいて、制御部9によってダイリップ調整装置1が自動制御される。
【0053】
また、ダイリップ調整装置1では、シート厚測定部が出力する測定値に基づいて制御部9が、ダイリップ部3cのリップ間隔を自動調整することで、シート2の幅方向の厚みにムラが生じることが抑えられている。リップ間隙の自動調整を行う場合、制御部9がヒータ7の加熱部11によってヒートボルト6を加熱することで、ヒートボルト6が軸方向に伸びる。軸方向に伸びたヒートボルト6によってダイリップ部3cが押圧されることで、ダイリップ部3cのリップ間隔が小さくなる。
【0054】
また、シート厚測定部が出力する測定値に基づいて制御部9がヒータ7の出力を下げることで、常時稼動している冷却部8によるエアー冷却が、ヒータ7による加熱よりも相対的に上回ることになり、ヒータ7の放熱部12からヒートボルト6の熱を効率的に放熱することで、ヒートボルト6の長さが縮む。ヒートボルト6によってダイリップ部3cが引っ張られることで、ダイリップ部3cのリップ間隔が大きくなる。
【0055】
上述したように、実施形態のダイリップ調整装置1は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、この長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされたヒータ7を備えることによって、ダイリップ部3cのリップ間隙の長手方向、つまり複数のヒートボルト6を配列方向に対して複数のヒータを近接して配置することが可能になる。
【0056】
要するに、本実施形態におけるヒータ7を用いることで、ダイリップ部3cから押し出されるシート2の幅方向に配列された複数のヒートボルト6のピッチPを小さくすることができる。その結果、シート2の幅方向に亘ってシート2の厚みを高精度に調整することができる。
【0057】
また、ヒータ7は、隣接するヒータ7に対向する部分に配された放熱部12を有することによって、ヒートボルト6の冷却効率が向上し、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を向上することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、サポートに対して、ヒートボルト6やヒータ7を組み込んでダイリップ調整装置1を予め組み立てた後、ダイリップ調整装置1全体をダイ3aに容易に組み付けることができるので、組立時の作業性が向上されている。
【0059】
(第2の実施形態)
図7に、第2の実施形態のダイリップ調整装置の断面図を示す。図8に、第2の実施形態のダイリップ調整装置の、図7におけるB−B線に沿った断面図を示す。第2の実施形態のダイリップ調整装置は、一部の構成を除いて第1の実施形態と同様に構成されているので、第1の実施形態と同一の構成部材には第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図7及び図8に示すように、第2の実施形態のダイリップ調整装置21は、ヒートボルト6の放熱性を更に向上するために、ヒータ27の構成が、第1の実施形態におけるヒータ7と異なっている。
【0061】
加えて、第2の実施形態のダイリップ調整装置は、第1の実施形態と比較して、ヒートボルトの冷却構造が簡素化されており、ブロアから冷却風が供給される供給部、エアーダクト等を有する冷却部が省かれて構成されている。
【0062】
ヒートボルト6及びヒータ27に対向する位置には、ヒータ27の引き出し部13から延ばされた配線を支持する配線受け板14を支持する支持部材28が設けられている。支持部材28は、例えば、ヒータ27の配列方向に幅が数cm程度の板状に形成されており、図8に示すように、リップ間隙の長手方向に沿って配列された4つのヒートボルト6毎のヒートボルト6の間の位置で、サポート25にねじ止め固定されている。本実施形態では、ヒートボルト6及びヒータ27の外周部が、押出し成形機の外部に露出されており、この外部を自然対流する空気が、ヒートボルト6の外周部に流れ込むように構成されている。
【0063】
また、図7に示すように、第2の実施形態におけるサポート25は、ヒータ27の外周部に通じる複数の第1の通気路25a、及び複数の第2の通気路25b、挿入穴25cが、ヒートボルト6の軸方向に並んで設けられている。複数の第1及び第2の通気路25a、25bは、それぞれリップ間隙の長手方向に沿って配列されており、ヒータ27の外周部の空間から、鉛直上方に向かって延ばされている。
【0064】
また、サポート25は、Tダイ3にサポート25を固定する締結ボルト18が挿入される挿入穴25cを有している。挿入穴25cは、第1及び第2の通風穴25a、25bと直交して設けられており、ヒータ27の外周部に流入した空気が、これらの第1及び第2の通風穴25a、25b、挿入穴25cのそれぞれを通ってサポート25の外部にスムーズに排気することができる。
【0065】
図9に、第2の実施形態のダイリップ調整装置が備えるヒータを示す。図9において、(a)に、実施形態におけるヒータの軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、本実施形態におけるヒータの軸線方向に直交する横断面図を示す。
【0066】
図8に示すように、第2の実施形態におけるヒータ27は、上述した実施形態におけるヒータ7が一対の加熱部11を有しているのと比べて、1つの加熱部22のみを有している点で異なっている。図9(a)及び図9(b)に示すように、ヒータ27は、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向に直交する方向に配された加熱部22を有している。加熱部22は、円筒状のヒータ27の鉛直上方に配されており、空気の流れの下流側に位置している。加熱部22は、上述したヒータ7の放熱部11と同様に構成されている。
【0067】
図9(a)に示すように、ヒータ27の放熱部23は、ヒートボルト6の周面に通じる3つの開口部23aを有している。3つの開口部23aは、ヒートボルト6の軸方向に並んで設けられている。開口部23aは、ヒータ27の周方向に対して、全周の3/4程度に亘って形成されており、上述したヒータ7の放熱部11に比べて放熱性が更に向上されている。このため、ヒータ27を用いることで、ヒートボルト6の冷却効率が更に高められ、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を更に向上することができる。また、ヒータ27は、ヒータ27の中空部に差し込まれたヒートボルト6に、放熱部23の開口部23aの両側の配された4つのバンド状のリング部材(不図示)で固定されている。
【0068】
なお、ヒータ27は、加熱部23の面積が、ヒートボルト6の全周の1/4程度と少ない。このため、ヒータ27の出力kWを上述したヒータ7と同じに設定する場合には、ワット密度(単位面積当たりのワット数)が2倍され、ヒータ7よりも高い温度でヒートボルト6を加熱して温度調節が行われる。
【0069】
また、ヒータ27は、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0070】
本実施形態のように、自然対流する空気を利用してヒートボルト6やヒータ27を冷却する場合、ヒートボルト6やヒータ27の外周面の温度が高くなったとき、高温面から放出され放射熱は、自然対流する空気によって奪われるエアー冷却熱よりも大きくなる。ヒートボルト6やヒータ27の外周面の温度が300度程度で、エアー冷却熱と、高温面からの放射熱とがほぼ等しくなる(特許第4335847号の図4参照)。
【0071】
本実施形態では、ヒートボルト6の外周面が、ヒータ27の開口部23aを通して直接外気に晒されているので、ヒートボルト6の冷却速度が第1の実施形態よりも速くなり、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を更に向上することができる。
【0072】
第2の実施形態は、加圧エアーで強制冷却する冷却部を省き、放熱性が更に高められたヒータ27を用いることで、エネルギー消費の低減を図り、自然対流する空気によってヒートボルト6を効率的に冷却することができる。
【0073】
また、第2の実施形態においても、ヒートボルト6の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向の外径が、この長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされたヒータ27を備えることによって、リップ間隙の長手方向に配列された複数のヒートボルト6のピッチPを小さくすることができる。その結果、シート2の幅方向に亘ってシート2の厚みを高精度に調整することができる。
【0074】
また、第2の実施形態によれば、サポート25に対して、ヒートボルト6やヒータ27を組み込んでダイリップ調整装置21を予め組み立てた後、ダイリップ調整装置21全体をダイ3aに容易に組み付けることができるので、第1の実施形態と同様に、組立時の作業性が向上されている。
【0075】
次に、上述した実施形態におけるヒータの他の構成例について、図面を参照して説明する。図10〜図12に、実施形態における他のヒータの構成例を示す。
【0076】
図10において、(a)に、ヒータの軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、ヒータの軸線方向に直交する横断面図を示す。図10(a)及び図10(b)に示すように、他の構成例のヒータ37は、円筒状に形成されており、ヒートボルト7の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向に直交する方向に配された1つの加熱部32のみを有している。加熱部32は、円筒状のヒータ37の鉛直下方に配されており、空気の流れの上流側に位置している。
【0077】
ヒータ37は、上述したヒータ27と同様に、加熱部32の面積が、ヒートボルト6の全周の1/4程度である。このため、ヒータ37の出力kWを上述したヒータ7と同じに設定する場合には、ワット密度(単位面積当たりのワット数)が2倍され、ヒータ7よりも高い温度でヒートボルト6を加熱して温度調節が行われる。
【0078】
また、ヒータ37の放熱部33は、開口部を有しておらず、ヒートボルト6の周方向に沿って設けられている。また、ヒータ37の引き出し部13は、加熱部32に隣接して設けられている。このため、ヒータ37では、上述した配線ベース16aを省くことができる。
【0079】
ヒータ37においても、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0080】
本構成例のヒータ37によれば、第1の実施形態におけるヒータ7の放熱部12よりも放熱部33の面積が広くされているので、第1の実施形態に比べてヒートボルト6の冷却速度を若干速くすることができ、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を向上することができる。ただし、本構成例のヒータ37は、第1の実施形態におけるヒータ7に比べて、加熱部の面積が半分であるので、ヒートボルト6の加熱速度が第1の実施形態におけるヒータ7に比べて若干遅くなる。
【0081】
図11において、(a)に、ヒータの軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、ヒータの側面図を示す。また図11において、(c)に、ヒータの軸線方向に直交する横断面図を示す。図11(a)〜図11(c)に示すように、他の構成例のヒータ47は、上述したヒータ37の放熱部33に開口部を形成した構成に相当している。ヒータ47は、円筒状に形成されており、ヒートボルト7の軸方向に直交する断面において、リップ間隙の長手方向に直交する方向に配された1つの加熱部42のみを有している。加熱部42は、円筒状のヒータ47の鉛直下方に配されており、空気の流れの上流側に位置している。
【0082】
ヒータ47も、上述したヒータ27、37と同様に、加熱部42の面積が、ヒートボルト6の全周の1/4程度である。このため、ヒータ47の出力kWを上述したヒータ7と同じに設定する場合には、ワット密度(単位面積当たりのワット数)が2倍され、ヒータ7よりも高い温度でヒートボルト6を加熱して温度調節が行われる。
【0083】
図11(a)及び図11(b)に示すように、ヒータ47の放熱部43は、ヒートボルト6の周面に通じる複数の開口部43aを有している。複数の開口部43aは、ヒートボルト6の軸方向に並んで設けられている。開口部43aは、ヒータ47の周方向に対して、全周の3/4程度に亘って形成されている。本構成例のヒータ47は、放熱部43が開口部43aを有することで、上述したヒータ37の放熱部33に比べて放熱性が更に向上されている。このため、ヒータ47を用いることで、ヒートボルト6の冷却効率が更に高められ、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を更に向上することができる。
【0084】
ヒータ47は、引き出し部13が加熱部32に隣接して設けられている。このため、ヒータ47では、上述した配線ベース16aを省くことができる。
【0085】
ヒータ47においても、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0086】
図12において、(a)に、ヒータの軸線方向に平行な縦断面図を示し、(b)に、ヒータの軸線方向に直交する横断面図を示す。図12(a)及び図12(b)に示すように、他の構成例のヒータ57は、第1の実施形態におけるヒータ7の放熱部12が、複数の円形状の開口部を有する構成に相当している。
【0087】
本構成例のヒータ57は、ヒータ57の軸線方向に直交する断面において、ヒータ57の中心を通りリップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された一対の加熱部52と、隣接するヒータ57に対向して配された放熱部53と、を有している。
【0088】
図12(a)に示すように、ヒータ47の放熱部53は、ヒートボルト6の周面に通じる複数の開口部53aを有している。複数の開口部53aは、ヒートボルト6の軸方向に並んで設けられている。
【0089】
本構成例のヒータ57は、放熱部53の面積が、第1の実施形態におけるヒータ7の放熱部12と同じであるが、放熱部53の開口部53aからヒートボルト6の外周面を外方に露出させているので、ヒータ7よりも更に放熱性が高められている。
【0090】
ヒータ57においても、内部に、ヒートボルト6が差し込まれる中空部を有しているので、ヒートボルト6に対する着脱作業を容易に行うことが可能とされ、組立性、分解性が確保されている。
【0091】
本構成例のヒータ57は、第1の実施形態におけるヒータ7に比べて、ヒートボルト6の冷却速度が速くなり、ヒートボルト6の冷却時の応答特性を更に向上することができる。
【0092】
以上のように構成されたヒータ37、47、57のいずれを用いた場合であっても、リップ間隙の長手方向に配列される複数のヒートボルト6のピッチPを小さくすることが可能になる。
【0093】
上述したヒータ7、27、37、47、57において、ヒートボルト6の冷却性能が優れる順位をつけると、ヒータ27、47が最も高く、次いでヒータ37、ヒータ57、ヒータ7の順番となる。なお、ヒータ57は、放熱部53の開口部53aの個数や開口面積を工夫することで、ヒータ37よりも冷却性能を高めることも可能である。
【0094】
最後に、ヒータの構成の変形例について補足して説明する。
【0095】
第1の実施形態におけるヒータ7は、一対の放熱部12を有して構成されたが、一方の放熱部12のみを有して構成されてもよく、一方の放熱部12のみを有する構成であっても、複数のヒートボルト6の配列方向のピッチPを小さくすることができ、ヒートボルト6、ヒータ7の冷却速度を速くすることができる。
【0096】
図9及び図11に示したように、ヒータ27、47は、放熱部が3つの開口部を有して構成されたが、開口部として多数の丸穴を形成することで、放熱部をパンチングメタルで構成されてもよい。
【0097】
また、ヒータ27、47は、放熱部が開口部を有して構成されたが、例えば、円筒状に形成された第1ヒータ部分と、断面楕円状に形成された第1ヒータ部分とを組み合わせて構成し、これらのヒータ部分が固定バンドやネジで連結されて構成されてもよい。
【0098】
ヒータ7、27、37、47では、引き出し部13が傾斜角θで傾斜されて配置されたが、引き出し部を鉛直下方、つまり傾斜角θ=0度で配置されてもよいことは勿論である。また、引き出し部13から引き出される配線11bは、ヒータの軸線方向に直交してヒータの径方向に延ばされたが、ヒータの軸線方向に対して傾斜されてもよいことは勿論である。
【0099】
また、本実施形態では、丸棒状のヒートボルトの外周部に円筒状のヒータが設けられて構成されたが、例えば、角形や、断面多角形状のヒートボルトを用いて、ヒートボルトの断面形状に応じて、断面多角形状をなす筒状のヒータが用いられてもよい。
【0100】
なお、本実施形態のダイリップ調整装置では、ヒートボルトがサポートによって片持ち支持されて構成されたが、ヒートボルトの両端がサポートによって支持される構成であってもよく、ヒートボルトの支持構造を限定するものではない。円筒状のヒータを用いるダイリップ調整装置であれば、円筒状のヒータの代わりに本実施形態におけるヒータを用いることで、複数のヒートボルトの配列方向のピッチPを小さくし、ヒートボルトの冷却時の応答特性を向上することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 ダイリップ調整装置
2 シート
3 Tダイ
3c ダイリップ部
6 ヒートボルト
7 ヒータ
11 加熱部
12 放熱部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを押し出すTダイに設けられたダイリップ部の線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列され、熱膨張によって前記リップ間隙を調整するための複数のヒートボルトを備えるダイリップ調整装置における、前記ヒートボルトの外周部に配され、前記ヒートボルトを加熱する筒状のヒータであって、
前記ヒートボルトの軸方向に直交する断面において、前記リップ間隙の長手方向の外径が、該長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされ、前記ヒータの中心を通り前記リップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された加熱部と、隣接する前記ヒータに対向して配された放熱部と、を有するヒータ。
【請求項2】
前記加熱部のみに発熱部材が配置されている、請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記ヒートボルトの軸方向に直交する断面において、前記ヒートボルトを挟んで、前記長手方向に直交する両側に配された一対の前記加熱部を有する、請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記ヒータの周方向において、前記加熱部以外の部分の全てが前記放熱部である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項5】
前記放熱部は、前記ヒートボルトの周面に通じる開口を有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項6】
前記ヒータの周方向に沿って設けられ、一対の前記加熱部を連結する配線部を有する、請求項3に記載のヒータ。
【請求項7】
前記加熱部に電気的に接続された配線が前記ヒートボルトの径方向に延ばされて引き出される引き出し部を有し、
前記引き出し部は、前記リップ間隙から前記シートが押し出される方向に対して傾斜した方向に延ばされ、
前記リップ間隙の長手方向に配列された複数の前記ヒータにおいて、該長手方向の中心線を挟んだ両側の前記ヒータは、前記引き出し部が逆向きに傾斜されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の複数の前記ヒータと、前記複数のヒートボルトと、を備えるダイリップ調整装置。
【請求項9】
前記ヒートボルトを軸方向に移動させるための移動手段と、
前記Tダイに設けられ、前記移動手段を介して前記ヒートボルトの一端部を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、前記ヒータの外周部に通じる複数の通風路を有し、前記複数の通風路が、前記リップ間隙の長手方向に沿って配列されている、請求項8に記載のダイリップ調整装置。
【請求項10】
前記支持部材は、前記Tダイに前記支持部材を固定する締結部材が挿入される挿入穴を有し、
前記通風路は、前記挿入穴に連通して設けられている、請求項9に記載のダイリップ調整装置。
【請求項1】
シートを押し出すTダイに設けられたダイリップ部の線状のリップ間隙の長手方向に沿って配列され、熱膨張によって前記リップ間隙を調整するための複数のヒートボルトを備えるダイリップ調整装置における、前記ヒートボルトの外周部に配され、前記ヒートボルトを加熱する筒状のヒータであって、
前記ヒートボルトの軸方向に直交する断面において、前記リップ間隙の長手方向の外径が、該長手方向に直交する方向の外径よりも小さくされ、前記ヒータの中心を通り前記リップ間隙の長手方向に直交する直線上に配された加熱部と、隣接する前記ヒータに対向して配された放熱部と、を有するヒータ。
【請求項2】
前記加熱部のみに発熱部材が配置されている、請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記ヒートボルトの軸方向に直交する断面において、前記ヒートボルトを挟んで、前記長手方向に直交する両側に配された一対の前記加熱部を有する、請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記ヒータの周方向において、前記加熱部以外の部分の全てが前記放熱部である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項5】
前記放熱部は、前記ヒートボルトの周面に通じる開口を有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項6】
前記ヒータの周方向に沿って設けられ、一対の前記加熱部を連結する配線部を有する、請求項3に記載のヒータ。
【請求項7】
前記加熱部に電気的に接続された配線が前記ヒートボルトの径方向に延ばされて引き出される引き出し部を有し、
前記引き出し部は、前記リップ間隙から前記シートが押し出される方向に対して傾斜した方向に延ばされ、
前記リップ間隙の長手方向に配列された複数の前記ヒータにおいて、該長手方向の中心線を挟んだ両側の前記ヒータは、前記引き出し部が逆向きに傾斜されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の複数の前記ヒータと、前記複数のヒートボルトと、を備えるダイリップ調整装置。
【請求項9】
前記ヒートボルトを軸方向に移動させるための移動手段と、
前記Tダイに設けられ、前記移動手段を介して前記ヒートボルトの一端部を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、前記ヒータの外周部に通じる複数の通風路を有し、前記複数の通風路が、前記リップ間隙の長手方向に沿って配列されている、請求項8に記載のダイリップ調整装置。
【請求項10】
前記支持部材は、前記Tダイに前記支持部材を固定する締結部材が挿入される挿入穴を有し、
前記通風路は、前記挿入穴に連通して設けられている、請求項9に記載のダイリップ調整装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−240332(P2012−240332A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113755(P2011−113755)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
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