説明

ヒータ駆動装置

【課題】ヒータ温度の調整精度を向上させることが可能なヒータ駆動装置を提供する。
【解決手段】センサ制御装置20は、ヒータ部9をPWM駆動するためにヒータ部9への通電状態のオンまたはオフの切り替えを行うヒータ駆動部26と、PWM駆動のデューティ比を設定し、そのデューティ比に基づいてヒータ駆動部26を制御する処理を行うマイコン43を有する制御部24とを備え、ヒータ駆動部26及び制御部24が互いに系統の異なるグランドラインに接続されて構成される。このうち、制御部24は、センサ制御装置20とヒータ部9とを接続する二線間(HTR+端子33とHTR−端子34との間)の電圧(電位差)をヒータ電圧として測定する測定回路42を有する。このため、周囲の温度変化などによって駆動系経路の線路抵抗が変化する場合であっても、実際にヒータに印加される電圧に近い測定結果に基づいてデューティ比を設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータの通電制御を行うヒータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通電により発熱するヒータと、このヒータに電力を供給する電源装置(バッテリ)とにそれぞれ二線接続され、バッテリ−ヒータ間の通電状態をオン/オフに切り替えることにより、バッテリからヒータへ供給される電力量(供給電力量)を調整可能なヒータ駆動装置が知られている。
【0003】
また、この種のヒータ駆動装置としては、所定の目標温度となるようにヒータ温度を制御するマイコンを備え、バッテリ−ヒータ間の通電状態をオンにする場合をHレベル、オフにする場合をLレベルとして、マイコンが所定の一定周期(以下、単位周期という)内におけるパルス幅のHレベルとLレベルとの比(以下、デューティ比という)を設定することが通常である。そして、マイコンが、このHレベルまたはLレベルを反映した出力信号(パルス幅変調信号)をヒータへの経路(通電経路)上に設置されるスイッチング素子に供給することにより、ヒータをPWM駆動させるヒータ駆動装置(以下、ヒータをPWM駆動させるヒータ駆動装置を、PWM駆動装置ともいう)が知られている。
【0004】
具体的に、PWM駆動装置では、ヒータへの印加電圧(以下、ヒータ電圧という)に基づいて、バッテリ−ヒータ間における単位周期内の通電時間(電流量)を可変設定することにより、印加電圧と電流量の積としての供給電力量を、ヒータ温度が目標温度となるように調整している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
なお、以下では、バッテリからPWM駆動装置を介してヒータに接続される経路を駆動系経路とし、駆動系経路のうち、バッテリのグランド端子からPWM駆動装置を介してヒータに接続される経路を駆動系グランドライン、バッテリの他方側端子(プラス端子)からPWM駆動装置を介してヒータに接続される経路を駆動系プラスラインとする。
【0006】
ここで、例えば、PWM駆動装置が車両に搭載される場合、バッテリと当該PWM駆動装置との接続に用いられる電線(以下、駆動系電線という)には、バッテリからヒータ以外にも各種の車載機器(例えば、モータ等)に電力が供給されるため、これら車載機器の使用状況によっては大量の電流が流れることになる。その結果、駆動系電線の線路抵抗と大電流とによって、駆動系グランドラインのうち駆動系電線を構成する経路(以下、対象グランドラインという)上において、バッテリ側端とPWM駆動装置側端との間に電位差(電圧降下)が生じる。
【0007】
このため、バッテリのグランド端子に駆動系グランドラインを介して接続される端子の電位を、ヒータを含む各種の車載機器の制御に必要なグランド(以下、制御用グランドという)として用いると、駆動系グランドライン上に電圧降下が生じた場合に、制御用グランドが変動することになり、各種の車両制御が不安定になってしまう。
【0008】
よって、車両に搭載されるPWM駆動装置では、駆動系グランドラインとは別に、バッテリのグランド端子に接続される制御系統の経路(以下、制御系経路という)を設け、制御系経路のうちのグランドライン(以下、制御系グランドラインという)の電位を制御用グランドとして用いることにより、マイコンの制御を安定させている。即ち、制御系経路に接続される各種の制御装置の消費電力が、駆動系経路に接続される各種の車載機器の消費電力に比べて非常に小さいため、制御系経路に流れる電流が少量であり、その結果、制御系経路における電圧降下がマイコンの制御に影響を与えない大きさとなるからである。
【0009】
また、PWM駆動装置では、マイコンを有する制御部にてヒータ電圧を測定する場合、当該PWM駆動装置内における制御系グランドラインの電位(即ち、制御用グランド)を利用して、当該PWM駆動装置内における駆動系プラスラインの電位と制御用グランドとの電位差(以下、HTR+電圧という)をヒータ電圧として測定し、マイコンがその測定結果に基づいてデューティ比を設定するように構成されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−308719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、対象グランドライン上に電圧降下が生じると、マイコンを有する制御部にて測定されるHTR+電圧が、実際にヒータに印加される電圧(実際値)よりも見かけ上高くなり、その電圧差分だけ通電時間(電流量)が短く設定されることになるため、実際にヒータに供給される電力量が、ヒータ温度を目標温度に維持するために必要とされる電力量を下回ってしまうという問題がある。
【0012】
これに対して、対象グランドライン上に生じる電圧降下分を既知の固定値(以下、電圧降下値という)として、HTR+電圧の測定値にその電圧降下値を減算した電圧値をヒータ電圧の測定値とみなしてデューティ比を設定することにより、ヒータ温度の調整精度を向上させることが考えられる。
【0013】
しかし、PWM駆動装置では、経時的な変化や周囲の温度変化などによって駆動系経路における線路抵抗が変化する場合に、対象グランドライン上に生じる電圧降下分が変動するため、ヒータ電圧の測定値と実際値とに誤差が生じることにより、ヒータ温度の調整精度が低下する可能性を否定できないという問題があった。
【0014】
本発明は、上記問題点を解決するために、ヒータ電圧の測定値に誤差が生じるのを抑制し、ヒータ温度の調整精度を向上させることが可能なヒータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載のヒータ駆動装置は、電源装置からの通電により発熱するヒータと、ヒータをPWM駆動するためにヒータへの通電状態のオンまたはオフの切り替えを行う駆動部と、ヒータへの印加電圧(以下、ヒータ電圧という)を測定し、その測定結果に基づいて駆動部によるPWM駆動のデューティ比を設定し、そのデューティ比を反映した信号を駆動部に出力して、駆動部の切り替えを制御する制御部とを備え、駆動部および制御部が互いに系統の異なるグランドラインに接続されて構成されている。
【0016】
なお、以下では、電源装置から当該ヒータ駆動装置を介してヒータに接続される駆動系統の経路を駆動系経路とし、その駆動系経路のうち、電源装置のグランド端子から当該ヒータ駆動装置を介してヒータに接続される経路を駆動系グランドライン、電源装置の他方側端子であるプラス端子から当該ヒータ駆動装置を介してヒータに接続される経路を駆動系プラスラインとする。
【0017】
ここで、本発明のヒータ駆動装置では、駆動部および制御部が互いに系統の異なるグランドラインに接続された構成を前提にし、制御部が、当該ヒータ駆動装置内における駆動系プラスライン上の電位(以下、HTR+電位という)と駆動系グランドライン上の電位(以下、駆動用グランドという)との電位差を、ヒータ電圧として測定することを要旨とする。
【0018】
このように構成されたヒータ駆動装置では、制御部が、当該ヒータ駆動装置内において、駆動系統のグランドライン(即ち、駆動系グランドライン)とは別に設けられた制御系統のグランドライン(以下、制御系グランドラインという)の電位(以下、制御用グランドという)を用いずに、駆動用グランドを用いてヒータ電圧を測定している。
【0019】
つまり、本発明のヒータ駆動装置では、電源装置と当該ヒータ駆動装置との接続に用いられる電線を駆動系電線として、駆動系グランドラインのうち駆動系電線を構成する経路(以下、対象グランドラインという)上に生じる電圧降下分が、駆動用グランドに反映されるため、HTR+電位と駆動用グランドとの電位差をヒータ電圧として測定することにより、実際にヒータに印加される電圧に近い測定結果を得ることができる。
【0020】
このため、本発明のヒータ駆動装置では、制御部が実際にヒータに印加される電圧に近い測定結果に基づいてデューティ比を設定することができると共に、そのデューティ比を反映した信号を駆動部に出力して、駆動部の切り替えを適正に制御することができる。
【0021】
したがって、本発明のヒータ駆動装置によれば、経時的な変化や周囲の温度変化などによって駆動系経路の線路抵抗が変化する場合に、対象グランドライン上に生じる電圧降下分の変動による影響を抑制し、ヒータへの供給電力量を適切に調整することが可能となり、ひいてはヒータ温度の調整精度を向上させることができる。また、対象グランドラインが、ヒータ以外の他のデバイスのグランドと共通して用いられた場合であっても、駆動系グランドライン(対象グランドライン)とは別に設けられた制御系グランドラインの電位を用いずにヒータ電圧を測定しているため、ヒータ電圧の測定精度が高く、その観点からもヒータへの供給電力量を適切に調整することができる。
【0022】
なお、本発明のヒータ駆動装置において、駆動部は、駆動系プラスライン及び駆動系グランドラインの少なくとも一方の経路上に設けられる。そこで、請求項2に記載のように、制御部は、駆動部が設けられている経路(以下、対象経路という)のうち、駆動部よりもヒータ側の電位を対象経路上の電位として用いてもよい。
【0023】
例えば、このように構成されたヒータ駆動装置では、駆動部が当該ヒータ駆動装置における駆動系グランドライン上に設けられている場合、制御部は、駆動系グランドのうち駆動部に対してよりヒータに近い箇所の電位(以下、HTR−電位という)を用いてヒータ電圧を測定している。
【0024】
つまり、本発明のヒータ駆動装置では、対象経路のうち駆動部よりも電源装置側の経路上に生じる電圧降下分が、HTR−電位に反映されるため、HTR+電位とHTR−電位との電位差をヒータ電圧として測定することにより、実際にヒータに印加される電圧により近い測定結果を得ることができる。なお、駆動部が、当該ヒータ駆動装置における駆動系プラスライン上に設けられている場合や、駆動系プラスライン上および駆動系グランドライン上の両方に設けられている場合であっても、駆動系グランドライン上に設けられている場合と同等の効果を得ることができる。
【0025】
したがって、本発明のヒータ駆動装置によれば、周囲の温度変化などによって駆動系経路の線路抵抗が変化する場合に、対象経路のうち駆動部よりも電源装置側の経路上に生じる電圧降下分の変動による影響を抑制し、ヒータへの供給電力量を適切に調整することが可能となり、ひいてはヒータ温度の調整精度をより向上させることができる。
【0026】
また具体的に、請求項3に記載のように、本発明のヒータ駆動装置において、ヒータがセンサ素子を加熱するために用いられる場合、制御部に接続されるグランドラインの電位(即ち、制御用グランド)は、制御部がセンサ素子の電気的変化を読み込むときの基準として使用されていればよい。なお、センサ素子とは、測定対象物の状態量の変化に応じて電気的特性が変化する素子をいう。
【0027】
つまり、本発明のヒータ駆動装置では、駆動系電線の線路抵抗が変化する場合に、駆動系グランドライン上に生じる電圧降下分の変動による影響を受けずに、制御部がセンサ素子の電気的変化を好適に読み込むことができる。
【0028】
なお、請求項4に記載のように、本発明のヒータ駆動装置において、センサ素子およびヒータは、積層一体化されていてもよい。この場合、ヒータによって加熱されているセンサ素子に水が付着することで生じる熱衝撃によってセンサ素子に割れが生じないように、ヒータ温度の調整精度がより厳しく要求される使用環境においても、実際にヒータに印加される電圧に近い測定結果に基づきデューティ比を設定することにより、被水によるセンサ素子の割れが生じる可能性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態のエンジン制御システムの概略を示す構成図。
【図2】本実施形態のNOxセンサ及びセンサ制御装置の概略を示す構成図。
【図3】本実施形態のセンサ制御装置の詳細を示す構成図。
【図4】本実施形態のヒータ駆動部の配置を示す説明図。
【図5】他の実施形態のヒータ駆動部の配置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
図1は、本発明のヒータ駆動装置が適用されたエンジン制御システムの概略を示す構成図である。なお、後述するように、本実施形態のエンジン制御システムでは、ヒータ駆動装置が、ヒータ、及びそのヒータにより加熱されるセンサ素子を制御するセンサ制御装置の一部として構成されている。
【0031】
図1に示すように、エンジン制御システム1は、車両の内燃機関(例えば、ガソリン直噴エンジン)2の排気管4に設けられて排ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度を検出するNOxセンサ10と、このNOxセンサ10の駆動制御を行うセンサ制御装置20と、内燃機関2の吸気管3に設けられたスロットルバルブ5やインジェクタ6を駆動して、内燃機関2の運転状態を制御する電子制御装置(以下、エンジンECUという)30と、これら制御装置20,30を含む各種の車載機器(図示せず)に電線7を介して電力を供給する電源装置としてのバッテリ40とを備えている。
【0032】
このうち、エンジンECU30は、図示を省略するが、CPU,ROM,RAMを中心に構成されたマイクロコンピュータからなり、スロットルバルブ5の開度量を検出するセンサや、NOxセンサ10を含む各種センサからの出力に基づき、内燃機関2に供給する燃料混合気の空燃比を可変設定する空燃比制御を行ったり、排気管4に設置される触媒(図示せず)の異常診断を行ったりするように構成されている。
【0033】
<NOxセンサ及びセンサ制御装置の概略構成>
次に、図2は、本実施形態のNOxセンサ10及びセンサ制御装置20の概略を示す構成図である。なお、図2では、NOxセンサ10がその内部構造を示す断面図として記載されている。
【0034】
図2に示すように、NOxセンサ10は、ジルコニア等の酸素イオン伝導性のある固体電解質層に、その固体電解質層を挟み込むように多孔質電極(例えば、白金,白金合金,白金とセラミックスを含むサーメット等)が配置されてなる第1酸素ポンプセル11、及び酸素分圧検知セル12、さらには固体電解質層の一面に一対の電極が配置された第2酸素ポンプセル13を、絶縁層14を介して積層した構造を有するセンサ本体部8を備えている。
【0035】
また、NOxセンサ10は、例えばアルミナ等の絶縁性セラミックスからなるシート状の絶縁層15を介して、センサ本体部8と積層一体化されることにより構成され、これら絶縁層15の間に設けられたPtを主体として、バッテリ40との通電により発熱し、センサ本体部8を加熱するヒータ部9を備えている。つまり、ヒータ部9及び絶縁層15によって構成されたヒータが、センサ本体部8に積層一体化されている。
【0036】
センサ本体部8は、多孔質状の第1拡散経路16を介して被測定ガス空間(排気経路内)に連通する第1測定室21、及び、多孔質状の第2拡散経路17を介して第1測定室21に連通する第2測定室22を有し、第1酸素ポンプセル11及び第2酸素ポンプセル13により、第1測定室21及び第2測定室22内の酸素のポンピング(汲み出し,汲み入れ)をそれぞれ可能にする。そして、酸素分圧検知セル12により、酸素濃度を一定に制御された酸素基準室18と第1測定室21との酸素濃度差、つまり第1測定室21内の酸素濃度の測定を可能とするように構成されている。
【0037】
一方、センサ制御装置20は、第1酸素ポンプセル11,酸素分圧検知セル12,第2酸素ポンプセル13を駆動させる駆動部としてのセンサ駆動部23と、センサ駆動部23を制御する制御部24とを備えている。
【0038】
具体的に、センサ制御装置20の制御部24は、センサ駆動部23を介して酸素分圧検知セル12の両端電圧Vsが予め設定された一定電圧(例えば、425mV)となるように第1酸素ポンプセル11に流す第1ポンプ電流Ip1を制御する。すると、第1酸素ポンプセル11を介して第1測定室21内の酸素濃度が所定の低濃度(≒0%)に保持される。このときに流れる第1ポンプ電流Ip1が、被測定ガス中の酸素濃度に応じた大きさとなり、またこの電流値Ip1に応じて、第1酸素ポンプセル11に印加される第1ポンプ電圧Vp1も変化する。
【0039】
これと共に、センサ制御装置20の制御部24は、センサ駆動部23を介して第2酸素ポンプセル13に、第2測定室22から酸素を汲み出す方向に一定の第2ポンプ電圧Vp2(例えば、450mV)を印加する。つまり、第1測定室21内の酸素濃度を所定の低濃度に保持し、且つ第2ポンプ電圧Vp2を所定の電圧に保持すると、第2測定室22では、第2酸素ポンプセル13を構成する多孔質電極の触媒作用によって、被測定ガス中のNOxが窒素と酸素とに分解され、その分解により得られた酸素が第2測定室22から抜き取られる。このときに流れる第2ポンプ電流Ip2が、被測定ガス中のNOx濃度に対応した大きさとなる。
【0040】
そして、制御部24では、第1ポンプ電流Ip1に基づいて排気ガス中の酸素濃度を、第2ポンプ電流Ip2に基づいて排気ガス中のNOx濃度をそれぞれ算出し、これら濃度に関する情報(酸素濃度情報,NOx濃度情報)をCAN通信によりエンジンECU30に出力する。
【0041】
<センサ制御装置の詳細構成>
次に、図3は、本実施形態のセンサ制御装置20の詳細を示す構成図である。なお、センサ制御装置20は、図示しないケーシング内に、センサ駆動部23や制御部24、後述するヒータ駆動部26などを実装した回路基板50を収容した構成を有している。
【0042】
図3に示すように、センサ制御装置20を構成する回路基板50上には、センサ駆動部23と制御部24の他に、第1ポンプ電流Ip1に基づいて算出された酸素濃度情報及び第2ポンプ電流Ip2に基づいて算出されたNOx濃度情報をエンジンECU30に出力するためのCAN回路25と、ヒータ部9をPWM駆動するために当該ヒータ部9への通電のオンまたはオフの切り替えを行うヒータ駆動部26と、センサ駆動部23,制御部24,CAN回路25に必要な電力を供給するための電源回路27とが実装されている。つまり、センサ制御装置20は、これら各部及び回路23〜27が同一の回路基板50上に実装されることにより構成されている。
【0043】
そして、回路基板50上には、バッテリ40と当該センサ制御装置20とを二線接続するためのバッテリ端子31,32や、ヒータ部9と当該センサ制御装置20とを二線接続するためのヒータ端子33,34、バッテリ40のグランド端子51と当該回路基板50上のグランド導体28とに接続された制御用GND端子35等が配置されている。ちなみに、制御用GND端子35は、バッテリ40以外のエンジンECU30や他の制御装置の異なるグランドラインに接続されてもよい。
【0044】
なお、以下では、バッテリ端子31,32及びヒータ端子33,34を介してバッテリ40とヒータ部9とが接続される駆動系統の経路を駆動系経路とし、この駆動系経路のうち、バッテリ40のグランド端子51とヒータ部9とが接続される経路を駆動系グランドライン、バッテリ40の他方側端子であるプラス端子52とヒータ部9とが接続される経路を駆動系プラスラインとする。
【0045】
また、センサ駆動部23,制御部24,CAN回路25を介して制御用GND端子35とグランド導体28とが接続される制御系統の経路を制御系グランドラインとし、電源回路27と、センサ駆動部23,制御部24,CAN回路25とがそれぞれ接続される制御系統の経路、及び、制御部24と、センサ駆動部23,CAN回路25,ヒータ駆動部26とがそれぞれ接続される制御系統の経路を制御系プラスラインとする。
【0046】
そして、バッテリ端子31,32のうち、駆動系プラスラインに接続された端子をBAT端子31、駆動系グランドラインに接続された端子を駆動用GND端子32とし、ヒータ端子33,34のうち、BAT端子31側に接続された端子をHTR+端子33、他方側でヒータ部9に接続された端子をHTR−端子34とする。
【0047】
つまり、回路基板50上のBAT端子31には、駆動系プラスラインを介して電源回路27が接続され、この電源回路27に制御系プラスラインを介して接続されたセンサ駆動部23,制御部24,CAN回路25が、制御系グランドラインを介して制御用GND端子35に接続されている。そして、回路基板50上のBAT端子31には、駆動系プラスラインを介してヒータ駆動部26が接続され、このヒータ駆動部26がさらに駆動系プラスラインを介してHTR+端子33に接続されている。
【0048】
また、HTR+端子33には、駆動系プラスラインを介してヒータ部9が接続され、このヒータ部9がさらに駆動系グランドラインを介してHTR−端子34に接続されている。なお、HTR−端子34には、駆動系グランドラインを介して駆動用GND端子32に接続され、この駆動用GND端子32がさらに駆動系グランドラインを介してバッテリ40のグランド端子51に接続されている。
【0049】
具体的に、ヒータ駆動部26は、BAT端子31とHTR+端子33との間に接続され、バッテリ40とヒータ部9との通電状態を切り替える、例えばFETからなる周知のスイッチング素子53を有し(図4参照)、制御部24から後述するデューティ比を反映した信号(パルス幅変調信号)を受け取ると、そのデューティ比に従ってスイッチング素子53をON/OFFに切り替えることにより、ヒータ部9の通電状態のオンまたはオフを切り替え、バッテリ40とヒータ部9との通電期間を変更可能に構成されている。
【0050】
制御部24は、センサ駆動部23を介して第1ポンプ電流Ip1及び第2ポンプ電流Ip2を検出する検出回路41と、バッテリ40からヒータ部9に印加された電圧(以下、ヒータ電圧という)を測定する測定回路42と、CPU,ROM,RAMを中心に構成されたマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)43とを備えている。
【0051】
このうち、マイコン43のCPUは、ROMに記憶されているプログラムに基づいて、RAMを作業エリアとして、検出回路41による検出結果(酸素濃度、NOx濃度に関する両情報)をエンジンECU30にCAN回路25を介して出力する濃度検出処理を実行する他に、測定回路42にて測定されたヒータ電圧に基づいて、ヒータ駆動部26によるPWM駆動のデューティ比を設定するPWM制御処理を実行する。
【0052】
なお、デューティ比とは、バッテリ40とヒータ部9との通電状態をオンにする場合をHレベル、オフにする場合をLレベルとして、所定の一定周期(単位周期)内におけるパルス幅のHレベルとLレベルとの比を示す。つまり、PWM制御処理では、バッテリ40とヒータ部9との通電時間(電流量)を可変設定することにより、ヒータ電圧と電流量との積として表されるヒータ部9への電力供給量を調整している。
【0053】
また、PWM制御処理および濃度検出処理では、マイコン43が測定回路42及び検出回路41を介して測定値(ヒータ電圧)及び検出値(第1ポンプ電流Ip1及び第2ポンプ電流Ip2)を読み込むときの基準として、制御用GND端子35の電位が用いられている。即ち、回路基板50上の制御系グランドラインに接続される端子(制御用GND端子35)の電位を、マイコンの制御に必要なグランド(以下、制御用グランドという)として用いている。
【0054】
ここで、本実施形態の測定回路42は、HTR+端子33の電位(以下、HTR+電位という)と、HTR−端子34の電位(以下、HTR−電位という)との電位差を、ヒータ電圧として測定するように構成されている。
【0055】
<効果>
以上説明したように、本実施形態のセンサ制御装置20では、回路基板50上において、駆動系プラスラインのうちヒータ部9に近い箇所の電位(HTR+電位)と、駆動系グランドラインのうちヒータ部9に近い箇所の電位(HTR−電位)との電位差をヒータ電圧として測定回路42が測定し、マイコン43がその測定結果を用いてPWM制御処理を行っている。
【0056】
つまり、本実施形態のセンサ制御装置20では、駆動系グランドラインのうちHTR−端子34よりもバッテリ40側の経路上に生じる電圧降下分がHTR−電位に反映されると共に、駆動系プラスラインのうちHTR+端子33よりもバッテリ40側の経路上に生じる電圧降下分がHTR+電位に反映される。このため、HTR+電位とHTR−電位との電位差をヒータ電圧として測定することにより、実際にヒータ部9に印加される電圧により近い測定結果を得ることができる。
【0057】
したがって、本実施形態のセンサ制御装置20によれば、経時的な変化や周囲の温度変化などによって駆動系経路上の線路抵抗が変化する場合に、駆動系経路のうちHTR−端子34及びHTR+端子33よりもバッテリ40側の経路上に生じる電圧降下分の変動による影響を抑制し、ヒータ部9への供給電力量を適切に調整することができる。
【0058】
また、センサ制御装置20では、濃度検出処理により、マイコン43が測定回路42及び検出回路41を介して検出値(第1ポンプ電流Ip1及び第2ポンプ電流Ip2)を読み込むときの基準として、駆動系グランドラインとは別に設けられた制御系グランドラインの電位が用いられる。このため、センサ制御装置20によれば、駆動系グランドライン上に生じる電圧降下の影響を受けずに、マイコン43が濃度検出処理といった各種制御を好適に行うことができる。
【0059】
なお、センサ制御装置20は、NOxセンサ10のヒータ部9に対してPWM制御処理を行うため、被水に伴う熱衝撃によってセンサ本体部8に割れが生じないように、ヒータ温度の温度管理がより厳しく要求される使用環境において、実際にヒータに印加される電圧に近い測定結果に基づきデューティ比を設定することにより、被水によるセンサ本体部8及びヒータ部9の割れが生じる可能性を低減することができる。
【0060】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態のセンサ制御装置20では、図3に示すように、測定回路42が、HTR+端子33の電位とHTR−端子34の電位との電位差をヒータ電圧として測定するように構成されているが、これに限定されるものではなく、HTR+端子33の電位と駆動用GND端子32との電位差、あるいは、BAT端子31の電位と駆動用GND端子32との電位差をヒータ電圧として測定してもよい。
【0062】
また、上記実施形態のセンサ制御装置20では、測定回路42がヒータ電圧を測定するように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、測定回路42が、HTR+端子33の電位と制御用GND端子35の電位との電位差をHTR+電圧、HTR−端子34の電位と制御用GND端子35の電位との電位差をHTR−電圧としてそれぞれ測定し、マイコン43が、測定回路42にて測定されたHTR+電圧とHTR−電圧との電圧差をヒータ電圧として算出するようにしてもよい。このように、マイコン43にヒータ電圧を測定するための処理を行わせることにより、測定回路42の設計に係る自由度を向上させることができる。なお、マイコン43がPWM制御処理や濃度検出処理以外にも各種の制御処理を実行し、なお且つ、これら制御処理の中でHTR+電圧やHTR−電圧の測定結果を用いるように構成されている場合に、PWM制御処理を行うために測定回路42を別途設けることなく、既存の構成により得られる電圧値を利用してヒータ電圧を測定することが可能である。これにより、物理的な端子の数に制限がある場合であっても、ヒータ電圧を精度よく測定することができる。
【0063】
また、上記実施形態のセンサ制御装置20では、図4に示すように、ヒータ駆動部26(スイッチング素子53)が、BAT端子31とHTR+端子33とに接続されているが、図5に示すように、HTR−端子34と駆動用GND端子32とに接続されてもよい。また、一方のヒータ駆動部を、BAT端子31とHTR+端子33とに接続し、他方のヒータ駆動部を、HTR−端子34と駆動用GND端子32とに接続した上で、両方のヒータ駆動部を、制御部24によって同時にオンまたはオフに切り替える制御を行うように構成してもよい。
また、上記実施形態のセンサ制御装置20では、図3に示すように、当該センサ制御装置20を構成する各部及び回路23〜27が、同一の回路基板50上に設けられているが、これに限定されるものではなく、複数の回路基板50上で接続されてもよい。
なお、上記実施形態のセンサ制御装置20は、マイコン43が、PWM制御処理および濃度検出処理を行うように構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば制御対象が一般的なヒータである場合、PWM制御処理のみを行うように構成されていればよい。つまり、上記実施形態のセンサ制御装置20は、本発明のヒータ駆動装置が適用される一例であり、その制御対象がNOxセンサ10のヒータ部9に限らず、一般的なヒータ等にも適用され得る。
【符号の説明】
【0064】
1…エンジン制御システム、8…センサ本体部、9…ヒータ部、10…NOxセンサ、11…第1酸素ポンプセル、12…酸素分圧検知セル、13…第2酸素ポンプセル、20…センサ制御装置、23…センサ駆動部、24…制御部、25…CAN回路、26…ヒータ駆動部、27…電源回路、30…エンジンECU、40…バッテリ、41…検出回路、42…測定回路、43…マイコン、53…スイッチング素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置からの通電により発熱するヒータと、
前記ヒータに接続され、該ヒータをPWM駆動するために前記ヒータへの通電状態のオンまたはオフの切り替えを行う駆動部と、
前記ヒータへの印加電圧を測定し、該測定結果に基づいて前記PWM駆動のデューティ比を設定し、当該デューティ比を反映した信号を前記駆動部に出力して、該駆動部の前記切り替えを制御する制御部と、
を備え、前記駆動部および前記制御部が互いに系統の異なるグランドラインに接続されて構成されたヒータ駆動装置において、
前記電源装置のグランド端子から当該ヒータ駆動装置を介して前記ヒータに接続される経路を駆動系グランドライン、前記電源装置のプラス端子から当該ヒータ駆動装置を介して前記ヒータに接続される経路を駆動系プラスラインとして、
前記制御部は、当該ヒータ駆動装置内における前記駆動系プラスライン上の電位と前記駆動系グランドライン上の電位との電位差を、前記印加電圧として測定することを特徴とするヒータ駆動装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記駆動系プラスライン及び前記駆動系グランドラインの少なくとも一方の経路上に設けられ、
前記制御部は、前記駆動部が設けられている経路である対象経路のうち、前記駆動部よりも前記ヒータ側の電位を、該対象経路上の電位として用いることを特徴とする請求項1に記載のヒータ駆動装置。
【請求項3】
前記ヒータは、センサ素子を加熱するために用いられ、
前記制御部に接続されるグランドラインの電位は、該制御部が前記センサ素子の電気的変化を読み込むときの基準として使用されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒータ駆動装置。
【請求項4】
前記センサ素子および前記ヒータは、積層一体化されていることを特徴とする請求項3に記載のヒータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−8948(P2011−8948A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148681(P2009−148681)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】