説明

ヒートシンク

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体素子等の各種電子部品を冷却するための超薄型ヒートシンク、特に、偏平型ヒートパイプと複数枚のコの字形板状フィンとを備えたヒートシンクに関する。
【0002】
【従来の技術】パソコン等の各種機器や電子設備等の電気・電子機器に搭載されている半導体素子等の電子部品は、その使用によってある程度の発熱が避けがたく、近年はその冷却が重要な技術課題となりつつある。冷却を要する電気・電子素子を冷却する方法として、例えば機器にファンを取り付け、機器筐体内の空気の温度を下げる方法や、被冷却素子に冷却体を取り付けることによって、その被冷却素子を冷却する方法等が代表的に知られている。
【0003】被冷却素子に取り付ける冷却体として、単なる伝熱性の金属材ではなく、ヒートパイプ構造の冷却体、或いは、例えば銅材やアルミニウム材などの伝熱性に優れた丸型ヒートパイプを取り付けた形態のものが提案、実用化されている。ヒートパイプは、密封された空洞部を備えており、その空洞部に収容された作動流体の相変態と移動により熱の輸送が行われる。熱の一部は、ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)を直接伝わって運ばれるが、大部分の熱は、作動流体による相変態と移動によって移動される。
【0004】ヒートパイプの吸熱側において、ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)の材質中を熱伝導して伝わってきた熱により、作動流体が蒸発し、その蒸気がヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側では、作動流体の蒸気は冷却され再び液相状態い戻る。そして、液相に戻った作動流体は再び吸熱側に移動(還流)する。このような作動流体の相変態や移動によって、熱の移動がなされる。
【0005】ヒートパイプ内の作動流体としては通常、水や水溶液、アルコール、その他有機溶剤等が使用される。特殊な用途としては水銀を作動流体に用いる場合もある。前述したようにヒートパイプは内部の作動流体の相変態等の作用を利用するものであるので、密封された内部への作動流体以外のガス等の混入をなるべく避けるように製造されることになる。このような混入物は、通常、製造途中に混入する大気(空気)や作動流体中に溶在している炭酸ガス等である。
【0006】ヒートパイプの形状は、代表的な丸パイプ形状の他、平面型も広く用いられている。平面型のヒートパイプは、その形状から、半導体素子等の被冷却素子と広い面積で接触させやすい等の利点を有している。更に、ヒートパイプで移動した熱をファン等を使用して強制的に冷却するヒートシンクが広く用いられてきている。
【0007】更に、近年エレクトロニクス機器は、CPU等の高出力、高集積の部品を内蔵している。半導体素子等の各種電子部品は、集積度が極めて高くなり、高速で情報の演算、制御等の処理を行うので、多量の熱を発生する。高出力かつ高集積の部品である半導体素子等の熱を冷却する装置が要求されている。
【0008】更に、インターネットを介する活動の機会が急激に増大し、デスクトップ型の固定されたパソコンではその機能を十分に発揮することができないような状態が多くなってきた。即ち、CPU等の各種電子部品を搭載するパソコン等は、小型化し、移動性を備え、車等で移動の途中においても、出張先においてもその機能を十分に発揮することが重要な要素として考慮されるようになってきている。
【0009】それに伴って、CPU等の各種電子部品を冷却するヒートシンクも小型薄型化が要求されるようになってきている。図6にヒートパイプを用いた従来のヒートシンクを示す。図7は、従来のヒートシンクの部分拡大図である。図6に示すように、従来のヒートシンクは、丸型ヒートパイプ20と、丸型ヒートパイプ20の一方端部(即ち、放熱側)に設けられた複数枚の放熱フィン21からなっている。従来のヒートシンクにおいては、図7に示すように、放熱効果を高めるために、放熱フィン21の中央部をバーリング加工22によって穴を開けて、開口部に丸型ヒートパイプ20が挿入されて、放熱フィンと丸型ヒートパイプが接続されている。
【0010】しかしながら、図6に示す従来のヒートシンクにおいては、丸型ヒートパイプ20が挿入される放熱フィン21は、その高さが所定以上の値、例えば、10mmを超える値になり、上述した高い移動性を備えた超薄型のパソコンに搭載することができないという致命的な欠陥がある。
【0011】
【発明が解決しょうとする課題】上述したように、CPU等の各種電子部品を搭載するパソコンは、薄型小型化し、集積度の高くなったCPUを冷却するためのヒートシンクを配置するスペースが制約され、更に、性能の高いヒートシンクが要求される。特に、10mm以下、更には、7〜8mm程度の高さを要求されると、上述した従来のヒートシンクでは対応が不可能であるという問題点が有る。
【0012】従って、この発明の目的は、高い移動性を有する薄型小型の電子機器等に搭載可能な放熱性能に優れたヒートシンクを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、厚さが例えば1.5mm以下の偏平状ヒートパイプを用い、上面部、垂直面部および下面部からなるコの字形板材からなり、上述した垂直面部の最下部に形成された、偏平状ヒートパイプが挿入されるロの字形開口部を有する板状フィンが複数枚並列配置されたフィン部を上述した偏平状ヒートパイプの端部に取り付け、そして、ロの字形開口部を有する板状フィンが複数枚並列配置された上記フィン部の両側面に備えられた、並列配置された複数個の矩形の開口部からファンによって空気を吹き付け強制空冷することによって、高い移動性を有する薄型小型のパソコン等に搭載可能な、且つ、放熱性能に優れたヒートシンクを提供することができることを知見した。
【0014】この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、この発明のヒートシンクの第1の態様は、下記部材を備えたヒートシンクである(a)作動液が封入され、密閉された空洞部を有する偏平状ヒートパイプと、(b)上面部、垂直面部および下面部からなるコの字形板材からなり、前記垂直面部の最下部に形成された、前記偏平状ヒートパイプを収容するロの字形開口部を有する板状フィンが複数枚並列配置されたフィン部。
【0015】この発明のヒートシンクの第2の態様は、前記開口部は前記垂直部および前記下面部によって四周が形成された矩形からなっていることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0016】この発明のヒートシンクの第3の態様は、前記開口部は、その上端部に、前記下面部と同一方向且つ平行に延伸し、前記下面部と概ね同一幅を有し、前記ヒートパイプの上面と密接する縁部を備えていることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0017】この発明のヒートシンクの第4の態様は、前記開口部の縁部が前記偏平状ヒートパイプの上面と密接し、そして、前記下面部が前記偏平状ヒートパイプの下面と密接していることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0018】この発明のヒートシンクの第5の態様は、前記ロの字形開口部を有する板状フィンが複数枚並列配置された前記フィン部の両側面は、並列配置された複数個の矩形の開口部を備えていることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0019】この発明のヒートシンクのその他の態様は、前記偏平状ヒートパイプが曲線部を備えていることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0020】
【発明の実施の形態】この発明のヒートシンクの態様について図面を参照しながら詳細に説明する。この発明のヒートシンクは、作動液が封入され、密閉された空洞部を有する偏平状ヒートパイプ、および、上面部、垂直面部および下面部からなるコの字形板材からなり、上記垂直面部の最下部に形成された、上記偏平状ヒートパイプを収容するロの字形開口部を有する板状フィンが複数枚並列配置されたフィン部を備えている。
【0021】図1は、この発明のヒートシンクの1つの態様を表側から見た斜視図である。図1に示すように、偏平状ヒートパイプ2の1つの端部(即ち、放熱側)には、ロの字形開口部を有する板状フィン4が複数枚並列配置されたフィン部3が備えられている。この発明の偏平状ヒートパイプ2は、例えば、厚さ1mm、幅10mmの薄型の偏平状ヒートパイプである。偏平状ヒートパイプの密閉された空洞部には、(図示しない)メッシュ状のウイックが内蔵され、(図示しない)作動液が封入されている。作動液の還流を容易にするために、偏平状ヒートパイプの中央部にメッシュ状ウイックを配置し、両側部を通路として開放してもよい。なお、この発明の偏平状ヒートパイプの厚さは1.5mm未満が好ましい。
【0022】図2は、この発明のヒートシンクの1つの態様を裏側から見た斜視図である。図3は、この発明の板状フィンの1つの態様の表側からの斜視図である。図4R>4は、この発明の板状フィンの1つの態様の裏側からの斜視図である。図3に示すように、板状フィン4は、上面部5、垂直面部6および下面部7からなるコの字形板材からなっており、上記垂直面部6の最下部に形成された、上記偏平状ヒートパイプ2を収容するロの字形開口部8を有している。上述した開口部8は垂直部6によって上および両側の3つの辺が形成され、下面部7によって1つの辺が形成された矩形からなっている。即ち、開口部8には偏平状ヒートパイプ2が挿入される。図4に示すように、偏平状ヒートパイプが挿入される開口部8が垂直面の最下部に形成されている。
【0023】更に、ロの字形開口部8に挿入された偏平状ヒートパイプ2とコの字形板材4との間の熱的接続を容易にするために、開口部8の上端部には、下面部7と同一方向且つ平行に延伸し、下面部7と概ね同一幅を有し、偏平状ヒートパイプ2の上面と密接する縁部9を備えている。このように開口部を形成することによって、偏平状ヒートパイプ2の上面は開口部の縁部9に熱的に接続し、そして、偏平状ヒートパイプ2の下面はコの字形板材4の下面部7に熱的に接続し、CPU等の発熱体からの熱は、偏平状ヒートパイプ2の放熱側からフィン部3を介して外部に放熱される。即ち、偏平状ヒートパイプ2とフィン4との間の接触部分の面積を増大している。
【0024】なお、偏平状ヒートパイプとは、このように板状フィンと熱的に接続する部分が少なくとも偏平状もしくは平面形状であるものを含む。従って、円筒状ヒートパイプを偏平加工したヒートパイプの他に板形状ヒートパイプであってもよい。ロの字形開口部8を有する板状フィン4が複数枚並列配置されたフィン部の両側面は、並列配置された複数個の矩形の開口部10を備えているので、何れか1方から(図示しない)ファン等によって空気を送り込み、強制空冷することによって、更に、ヒートシンクの放熱効果を高めることができる。図2R>2に示すように、板状フィン4の下面部7は偏平状ヒートパイプと密接している。
【0025】図5に、偏平状ヒートパイプの端部に複数枚の板状フィンが取り付けられたヒートシンクの断面を示す。図5に示すように、偏平状ヒートパイプは、板状フィン4の下面部7と縁部9によって密接し熱的に接続されている。図5に示すように、広い空間の矩形の開口部10が形成されている。
【0026】更に、CPU等の発熱体の電子機器内の配置位置に適応して、偏平状ヒートパイプ2が湾曲部を備えていてもよい。即ち、CPU等の発熱体に偏平状ヒートパイプの吸熱部を接続し、偏平状ヒートパイプの例えば中央部において概ね直角方向に曲がる湾曲部を備え、更に所定の長さにわたり直線的に延伸して、他端部の放熱側に上述したフィン部3を備えてもよい。
【0027】この発明のヒートパイプのコンテナの材質は、銅またはアルミニウム等の熱伝導の良好な金属を使用することができる。ウイックは偏平状ヒートパイプのコンテナと同一材質の部材を使用することができる。作動液は、ヒートパイプのコンテナの材質との適合性に応じて、水、代替フロン、フロリナートを使用する。なお、コンテナの材質は、作動液としての水との適合性に優れた銅が望ましい。
【0028】
【実施例】以下に、この発明の面型ヒートパイプを実施例により、更に詳細に説明する。以下に述べる方法によって、図1に示すこの発明のヒートシンクを製作した。即ち、板厚0.5mmのアルミニウム板材によってコの字形板材(板状フィン)4を調製した。板状フィンの上面部および下面部はそれぞれ幅1.5mm、長さ20mmからなっており、上面部および下面部を接続する垂直面部は高さ7mm、横20mmからなっている。
【0029】更に、垂直面部の最下部には高さ1mm、長さ8mmのロの字形開口部8が設けられている。ロの字形開口部の上端部には幅1.5mm、長さ7mmの縁部が設けられている。このように調製された12枚のコの字形板材を並列配置して、側面部に矩形の開口部10が形成されたフィン部4を調製した。
【0030】次いで、OFC(無酸素高伝導銅)材によって厚さ1mm、幅7mmの偏平状ヒートパイプのコンテナを調製した。コンテナ内の中央部にはOFCメッシュのウイックを設置し、コンテナの両側部は通路として開放した。作動液として純水を使用し、コンテナ内に封入し、減圧密閉した。このように調製した偏平状ヒートパイプを、フィン部のロの字形開口部8に差込み、ヒートシンクを調製した。
【0031】このように調製したこの発明のヒートシンクは、偏平状ヒートパイプの上面とロの字形開口部の上端部に設けられた複数個の縁部とが密接し、そして、偏平状ヒートパイプの下面と複数個のコの字形板材の下面部とが密接している。更に、複数個のコの字形板材を並列配置することによって、側面部に形成された複数個の矩形の開口部10の一方端に接して、フィン部と同一高さのファンを取り付けた。
【0032】この発明のヒートシンクは高さが7mmの極めて小型のヒートシンクであり、且つ、大きく開放された複数の矩形の開口部からファンによって強制空冷するので、放熱効果が大きく、移動性を有する薄型小型のパソコンに搭載されるCPUを冷却するために使用することができる。
【0033】
【発明の効果】上述したように、この発明によると、高い移動性を有する薄型小型の電子機器等に搭載可能な放熱性能に優れたヒートシンク、特に、高さ10mm以下のヒートシンクを提供することができ、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明のヒートシンクの1つの態様を表側から見た斜視図である。
【図2】図2は、この発明のヒートシンクの1つの態様を裏側から見た斜視図である。
【図3】図3は、この発明の板状フィンの1つの態様の表側からの斜視図である。
【図4】図4は、この発明の板状フィンの1つの態様の裏側からの斜視図である。
【図5】図5は、偏平状ヒートパイプの端部に複数枚の板状フィンが取り付けられたヒートシンクの断面を示す概略断面図である。
【図6】図6は、ヒートパイプを用いた従来のヒートシンクを示す図である。
【図7】図7は、従来のヒートシンクの部分拡大図である。
【符号の説明】
1.ヒートシンク
2.偏平状ヒートパイプ
3.フィン部
4.コの字形板材
5.上面部
6.垂直面部
7.下面部
8.ロの字形開口部
9.縁部
10.矩形開口部
20.丸型ヒートパイプ
21.フィン
22.バーリング加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】下記部材を備えたヒートシンク(a)密閉された空洞部を有する偏平状ヒートパイプ、(b)上面部、垂直面部および下面部からなるコの字形板材からなり、前記垂直面部の最下部に形成された、前記偏平状ヒートパイプを収容するロの字形開口部を有する板状フィンが複数枚並列配置されたフィン部。
【請求項2】前記開口部は前記垂直部および前記下面部によって四周が形成された矩形からなっていることを特徴とする、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】前記開口部は、その上端部に、前記下面部と同一方向且つ平行に延伸し、前記下面部と概ね同一幅を有し、前記ヒートパイプの上面と密接する縁部を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載のヒートシンク。
【請求項4】前記開口部の縁部が前記偏平状ヒートパイプの上面と密接し、そして、前記下面部が前記偏平状ヒートパイプの下面と密接していることを特徴とする、請求項3に記載のヒートシンク。
【請求項5】前記コの字形開口部を有する板状フィンが複数枚並列配置された前記フィン部の両側面は、並列配置された複数個の矩形の開口部を備えていることを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載のヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】特許第3413152号(P3413152)
【登録日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【発行日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−82811(P2000−82811)
【出願日】平成12年3月23日(2000.3.23)
【公開番号】特開2001−274305(P2001−274305A)
【公開日】平成13年10月5日(2001.10.5)
【審査請求日】平成13年12月10日(2001.12.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【参考文献】
【文献】特開 平2−211657(JP,A)
【文献】特開 平9−203590(JP,A)
【文献】実開 昭62−182600(JP,U)
【文献】実開 平3−64368(JP,U)