説明

ヒートシール方法および軟包装用容器

【課題】 両者の密度差0.02g/cm未満の2種のポリエチレンの混合物からなるヒートシール層を有する多層フィルム間に容易かつ安定確実に弱シール部を形成可能なヒートシール方法および当該方法によって弱シール部が形成された軟包装用容器を提供する。
【解決手段】 本発明のヒートシール方法は、対向して配置された2本の加熱シールバーで重ね合わせた多層フィルムを挟んで1〜6秒間ヒートシールして当該多層フィルム間に弱シール部を形成するに際し、前記2本の加熱シールバーの間隙を前記重ね合わせた前記多層フィルムの合計厚さに対して75〜95%となるように調整し、前記各多層フィルムの厚さおよび前記2種のポリエチレンの混合割合に応じて前記一方の加熱シールバーを60〜150℃の温度範囲に、また他方を110〜220℃の温度範囲に設定し、かつ両温度間に5℃以上の差を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密度の異なる2種のポリエチレン混合物からなるヒートシール層を有し、当該ヒートシール層を向い合わせに重ね合わせた2枚の多層フィルム間に安定確実に弱シール部を形成するヒートシール方法および当該ヒートシール方法を用いて形成された弱シール部を有する軟包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
強固に熱融着された強ヒートシール部および製造時や運搬時には剥離せず、使用時に手で容易に剥離開封可能な弱シール部を備えた軟包装用容器は、従来より種々の用途に多用され、近年は複室容器も開発されている。この複室容器は、主に薬剤や食品などの包装に使用され、並存すると経時変化を起こすような不安定な各種薬剤や食品を個別に収容する複数の室を備えた容器であり、使用時に各室間を仕切る容易に剥離開封可能な弱シール部を剥離開封することにより、各室の薬剤などを混合できるように構成されているものである。
【0003】
このような軟包装用容器には、通常、片面にヒートシール層を設けたポリエチレンなどの熱可塑性樹脂によって形成された多層フィルムが使用され、この多層フィルム2枚を重ね合わせて所定の位置を同温度に設定された2本の加熱シールバーで挟んでヒートシールすることで弱シール部や強ヒートシール部が形成される。多層フィルム同士をヒートシールして弱シール部を形成する場合、ヒートシール層が密度の均一なポリエチレンによって形成されていると弱シール部の形成が困難であるため、密度の異なる2種以上のポリエチレン混合物からなるヒートシール層を形成し、密度の低い方のポリエチレンが溶融する温度でヒートシールして部分的に融着させることにより弱シール部を形成する方法が提案されており、この方法が一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記方法は、密度の高い方のポリエチレンの融点以上で当該ヒートシール層を加熱することで強ヒートシール部を形成し、密度の低い方のポリエチレンの融点以上、密度の高い方のポリエチレンの融点未満の温度で加熱することで弱シール部を形成するものであるため、安定確実に弱シール部の形成を実現するためには、用いる2種以上のポリエチレンの密度差を0.02g/cm以上とし、両者の融点の温度差を少なくとも5℃以上とする必要があると考えられていた(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2675075号明細書
【特許文献2】特許第3455789号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記2種以上のポリエチレンの密度差が大きいと、フィルム成形前の溶融混練より完全に均一に分散させるのは困難である場合が多く、少なからず不均一な部分が生じ、多層フィルムのシール強度などにばらつきが発生することから、品質上問題となっていた。ここで、シール強度とは、JIS Z0238に規定される「ヒートシール強度」を指している。軟包装用容器の場合、一般的には、シール強度が約1〜10N/15mm程度の場合が弱シール部とされ、それを超えるシール強度を示す場合が強ヒートシール部とされている。
【0006】
この品質上の問題は、密度差が0.02g/cm未満の2種のポリエチレンの混合物を用いてヒートシール層を形成した場合には生じにくいが、その反面、特許文献2が示すように、2種のポリエチレンの融点が相互に接近しているために、重ね合わせた多層フィルム間に弱シール部を安定確実に形成することが困難となる問題があった。これは、両者の融点が接近していることで、強ヒートシール部の形成温度と弱シール部の形成温度との間に十分な温度差がとれない、すなわち弱シール部形成のための加熱シールバー温度設定範囲(以下、この範囲を「シール温度幅」ということとする。)を広くとれないことから、加熱シールバー温度が高温側に僅かに変化した場合にシール強度が急激に増大し、結果として強ヒートシール部が形成されやすくなるためである。
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであり、両者の密度差0.02g/cm未満の2種のポリエチレンの混合物からなるヒートシール層を有する多層フィルム同士をヒートシールし、容易かつ安定確実に弱シール部を形成可能なヒートシール方法および当該方法によって形成された弱シール部を有する軟包装用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、密度差0.02g/cm未満の2種のポリエチレン混合物からなるヒートシール層を有する多層フィルムを重ね合わせ、シール条件(2本の加熱シールバーの間隙および温度、ならびにヒートシール時間)を種々変更した場合のシール強度特性について鋭意検討を重ねた結果、2本の加熱シールバー温度をそれぞれ別個に設定し、両者間に所定の温度差を設けた場合に、加熱シールバーの間隙およびヒートシール時間の設定範囲によっては、高温側の加熱シールバー温度に依存してヒートシール部のシール強度が緩やかな立ち上がりを見せること、これにより2種のポリエチレンの融点自体は相互に接近していても、弱シール部形成のための温度設定範囲を従来技術と同程度とれることから、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のヒートシール方法は、密度差が0.02g/cm未満の2種のポリエチレンを混合して形成されたヒートシール層を含む多層フィルムを当該ヒートシール層同士が向き合うように重ね合わせた状態とし、対向して配置された2本の加熱シールバーで挟んで1〜6秒間ヒートシールして弱シール部を形成するに際し、前記2本の加熱シールバーの間隙を前記重ね合わせた多層フィルムの合計厚さに対して75〜95%となるように調整し、前記各多層フィルムの厚さおよび前記2種のポリエチレンの混合割合に応じて前記2本のうちの一方の加熱シールバーの温度を60〜150℃の範囲に、他方の温度を110〜220℃の範囲に設定し、かつ両温度間に5℃以上の差を設けることを特徴とする。
【0010】
厚さが200〜300μmの範囲の多層フィルムを用いる場合には、前記一方の加熱シールバーの温度を90〜110℃の範囲で一定に維持し、他方の温度を前記ヒートシール層の2種のポリエチレンの混合割合に応じて125〜170℃に設定するのがよい好ましい。また、前記2種のポリエチレンの混合割合は、密度の高い方のポリエチレン:密度の低い方のポリエチレン=3:7〜9:1とすることが好ましい。
【0011】
また、本発明の軟包装用容器は、前記ヒートシール方法によって形成された弱シール部を有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒートシール方法によれば、2枚重ねの状態の多層フィルムを所定のヒートシール時間ヒートシールするに際し、所定の間隙で対向して配置された2本の加熱シールバーの温度をそれぞれ設定し、両者間に所定の温度差を設けることとしたので、従来技術では困難とされていた多層フィルムのヒートシール層を密度差0.02g/cm未満の2種のポリエチレンの混合物によって形成した場合でも、従来技術と同程度のシール温度幅(具体的には約4℃以上)を得ることができ、その結果容易かつ安定確実に当該多層フィルム間に弱シール部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のヒートシール方法について実施形態を掲げて詳細に説明する。本発明のヒートシール方法に適用可能な多層フィルムは、ヒートシール層を含み、全体として2層以上の多層構造を備えたものである。
【0014】
ヒートシール層の形成に用いられる2種のポリエチレンとしては公知のものが使用できる。具体的には、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられる。これらの密度は、いずれも0.850〜0.965g/cmの範囲にあるものである。これらのポリエチレンのなかから密度差が0.02g/cm未満となるように2種を適宜選択して用いる。
【0015】
また、前記2種のポリエチレンをそれぞれ密度の高い方のポリエチレンおよび密度の低い方のポリエチレンと呼ぶこととすると、両者の混合割合については特に制限されず、前者:後者=1:9〜9:1(重量比)の範囲で適宜設定できるが、好ましくは、両者の混合割合は、3:7〜9:1(重量比)程度とするのがよい。これらの混合方法については特に制限されず、2本ロールなどの公知の混練機を用いた公知の方法によって混合することができる。本発明においては、このように密度差0.02g/cm未満の2種のポリエチレンを混合するので、相溶性は非常に良好であり、両者が均一に混合されたヒートシール層を形成することができ、多層フィルムの部位によって光学特性、フィルム自体の強度およびシール強度がばらつくという品質上の問題は生じにくい。
【0016】
前記ヒートシール層以外の各層に用いられる樹脂材料としてはヒートシールの際に溶融しない程度の融点を備えていれば特に限定されず、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、酸変性ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂などが挙げられる。これらは、各層についてそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0017】
本発明において適用可能な多層フィルムの製造方法については特に制限されず、公知の方法によることができる。このような多層フィルム製造方法としては、例えば、水冷式または空冷式共押出しインフレーション法、共押出しTダイ法、ドライラミネーション法、押出しラミネーション法などが挙げられる。なお、これらの好適な製造方法による場合、製造装置が備えるダイスからの樹脂吐出量を変えることで、多層フィルムの各層の厚さを適宜設定できる。なお、前記ドライラミネーション法や押出しラミネーション法などの場合、前記ヒートシール層以外の層について、前記樹脂材料に代えて、アルミ箔や紙などを用いることができる。
【0018】
本発明に使用される多層フィルムの厚さは、最終的にヒートシールによって製造される多層フィルム積層物の用途などによって変わるので一概には言えないが、100〜500μmとするのが好ましく、200〜400μmとするのがより好ましい。この範囲未満の場合、多層フィルム積層物の衝撃強度などの低下など強度面において実用に適さなくなり、また前記範囲を超えると、当該積層物の柔軟性が低下して用途によっては実用性に劣ることになるので、好ましくない。
【0019】
本発明においては、前記のような多層フィルムを用い、当該多層フィルムをヒートシール層同士が向き合うように重ね合わせた状態でシール機に投入し、対向して配置された2本の加熱シールバーで挟み込み、ヒートシールすることにより弱シール部を形成する。なお、使用するシール機については、シール条件、すなわち2本の加熱シールバーの間隙(ギャップ)、各シールバーの温度およびヒートシール時間をそれぞれ所定の範囲に設定可能なものであれば特に限定されない。
【0020】
2本の加熱シールバー間の間隙は、重ね合わせた多層フィルムの合計厚さに対して75〜95%となるように調整する。好ましくは、85〜95%とするのがよい。この範囲を超えると、重ね合わせた多層フィルム間に作用する押圧力が小さくなり弱シール部の形成が困難となり、また前記範囲未満では、ヒートシール層の2種のポリエチレンの融点や混合割合にもよるが、多層フィルム内部における密度の低い方のポリエチレンの溶融が進み、シール強度が急速に増大し、強ヒートシール部が形成されやすくなるので、好ましくない。
【0021】
前記対向して配置された2本のうちの一方の加熱シールバーの温度は、60〜150℃、好ましくは90〜120℃の範囲に設定する。また、他方の加熱シールバーの温度は、110〜220℃、好ましくは120〜180℃の範囲に設定し、かつ前記一方の加熱シールバー温度との間に5℃以上の温度差を設けるようにする。この温度差は、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上とすることができる。これら2本の加熱シールバーの温度およびこれらの差は、当該2本の加熱シールバーの間隙、ヒートシールする多層フィルムの厚さ、当該多層フィルムのヒートシール層におけるそれぞれのポリエチレンの融点および混合割合などに応じて適宜設定することができる。
【0022】
より好ましい例として、ヒートシール層における密度の低い方のポリエチレンとして低密度ポリエチレン(融点は約105〜115℃)を使用した厚さ200〜300μmの多層フィルム2枚を重ね合わせた状態でヒートシールして弱シール部を形成する場合、前記一方の加熱シールバーの温度を90〜110℃一定に維持し、2本の加熱シールバーの間隙およびヒートシール層の2種のポリエチレンの混合割合に応じて他方の加熱シールバーの温度を125〜170℃に設定することができる。
【0023】
また、ヒートシール時間は、前記の各加熱シールバーの温度や重ね合わせる多層フィルムの厚さなどを考慮して、1〜6秒に設定する。好ましくは、ヒートシール時間は2〜5秒に設定するのがよい。この範囲未満では、ヒートシール層における密度の低いポリエチレンがほとんど溶融せず、所定のシール強度を備えた弱シール部が形成されないこととなり、また前記範囲を超えた場合には、密度の高い方のポリエチレンの溶融が進み、シール強度が増大し強ヒートシール部が形成され、生産効率も著しく低下することになり、好ましくない。
【0024】
このように本発明のヒートシール方法では、2枚重ねの状態の多層フィルムを所定時間ヒートシールするのに、所定の間隙で配置された2本の加熱シールバー間に前記のように温度差を設けることで、重ねられた多層フィルムの厚さ方向一方向から加熱することにより相互に密着したヒートシール層の密度の低い方のポリエチレンを溶融させるようにしている。これにより、弱シール部に要求されるシール強度の範囲内(約1〜10N/15mm)では、高温に設定された加熱シールバーの温度に比例してシール強度は緩やかに増加するシール強度特性を示すようになる。その結果、弱シール部形成のためのシール温度幅を4℃以上とすることができ、2本の加熱シールバー温度を同温度にする従来のヒートシール方法(前記シール強度の範囲では、通常、約3℃程度以下)よりも大きくとることができるので、重なり合った多層フィルム間に弱シール部を容易かつ安定確実に形成することができる。
【0025】
本発明のヒートシール方法は、密度差0.02g/cm未満の2種のポリエチレンの混合物からなるヒートシール層を備えた多層フィルムから構成される軟包装用容器の所定の位置に前記した本発明のヒートシール方法によって弱シール部が形成される。このような軟包装用容器は、食品用および医療用として常用されているものである。必要であれば、この弱シール部以外の部分、例えば軟包装用容器の外周端部などに強ヒートシール部を設けてあってもよい。このような軟包装用容器の好適な具体例としては、複室容器などが挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明のヒートシール方法について詳細に説明する。本実施例では、軟包装用複室容器に弱シール部を形成することとした。軟包装用複室容器の場合、弱シール部に要求されるシール強度は、通常、1〜3N/15mmであることが知られているので、以下では、このシール強度の範囲を評価に用いることとした。
[多層フィルムの形成]
実施例で用いた多層フィルムは、3層で構成することとし、各層の樹脂材料は以下の通りとした。
(1)ヒートシール層の樹脂材料
密度の低い方のポリエチレン(密度0.918g/cm、融点106℃)および密度の高い方のポリエチレン(密度0.937g/cm、融点126℃)を表1に示す混合割合で混合した4種類のポリエチレン混合物を用いた。
【0027】
【表1】

【0028】
(2)中間層の樹脂材料
ポリエチレン(密度0.913g/cm、融点102℃)を単独で用いた。
(3)外層の樹脂材料
ポリプロピレン(密度0.9g/cm、融点129℃)およびポリエチレン(密度0.918g/cm、融点106℃)を両者の混合割合が8:2となるように混合した混合物を用いた。
【0029】
表1に示すヒートシール層の各種のポリエチレン混合物と中間層および外層の樹脂原料とをそれぞれ別個に溶融し、共押出しインフレーション法によって、3層からなる厚さ300μmの筒状長尺の多層フィルム1〜4を得た。それぞれの多層フィルムにおける各層の厚さは、ヒートシール層60μm、中間層180μm、外層60μmとした。多層フィルム1〜4のそれぞれをこれらのMD方向(押出し方向)に沿って約300mmごと裁断し、多層フィルム1〜4についてそれぞれ複数枚の裁断片を得た。
【0030】
[使用したシール機]
本実施例の測定に使用したシール機は、下側加熱シールバーが固定され、上側加熱シールバーがシリンダーによって上下動するようになっており、上側加熱シールバーを下降させて鉛直方向最下位置に達した際の下側加熱シールバーとの間隙(上下加熱シールバー間隙)、ヒートシール時間およびこれら上下の加熱シールバーの温度をそれぞれ個別に設定可能とされている。上下の加熱シールバーはそれぞれ10x290mmのサイズを有する長方形状のフィルム加熱面を備えている。上側の加熱シールバーが上昇した状態で、以下の実施例および比較例のそれぞれで得られた試験片を上下の加熱シールバーの間に差し込み、所定の操作を行なうことで上側加熱シールバーを下降させ、所定のヒートシール時間
当該試験片を挟み込んでこれにヒートシール部を形成できるようになっている。
【0031】
[実施例1〜4]
表2に示すように、シール機の上下の加熱シールバーの間隙を550μm(2枚の多層フィルムの合計厚さの92%)に設定するとともに、下側加熱シールバーの温度を105℃一定に維持し、またヒートシール時間を2秒に設定した。上側加熱シールバーの温度を135℃に設定した上で、多層フィルム1〜4の裁断片をそれぞれ1枚ずつシール機にセットし、当該裁断片の略中央領域に当該方向に直角(TD方向)に上下の加熱シールバーの長手方向を合わせた状態で挟み込んでヒートシールし、ヒートシール部を形成した。次に、上側加熱シールバーの温度を2℃上げて137℃に設定し、同様の方法にて多層フィルム1〜4のそれぞれの裁断片についてヒートシール部を形成した。このように上側加熱シールバー設定温度をさらに2℃間隔で161℃まで順次変更し、各設定温度について多層フィルム1〜4の裁断片のそれぞれに同様の方法でヒートシール部を形成した。多層フィルム1〜4についてこのようにして得られた裁断片の群をこれらのフィルム番号順にそれぞれ実施例1〜4の試料とした。
【0032】
[実施例5〜8]
シール機の上下の加熱シールバーの間隙を500μm(2枚の多層フィルムの合計厚さの83%)とし、上側の加熱シールバーの設定温度を133℃から153℃まで2℃間隔に設定した以外は、実施例1〜4と同様のヒートシール条件とした(表2参照)。実施例1〜4と同様の方法にて多層フィルム1〜4の各裁断片に各別にTD方向にヒートシール部を形成し、得られた裁断片の群を多層フィルムの番号順にそれぞれ実施例5〜8の試料とした。
【0033】
[比較例1〜3]
シール機の上下シールバーの間隙を400μm(2枚の多層フィルムの合計厚さの67%)とした以外は、実施例5〜8と同様のシール条件とした(表2参照)。多層フィルム1、3および4の複数の裁断片について実施例5〜8と同様の方法によってそれぞれヒートシール部を形成し、多層フィルム1,3,4ごとに得られた裁断片の群をそれぞれこの順に比較例1〜3の試料を得た。
【0034】
[比較例4〜7]
上下の加熱シールバーの温度を同温度とし、123℃から135℃までの2℃間隔で設定した以外は、実施例1〜4と同様のヒートシール条件とした(表2参照)。多層フィルム1〜4の裁断片について、実施例1〜4と同様の方法でヒートシールを行い、各々の多層フィルムについて得られた裁断片の群をそれぞれ比較例4〜7の試料とした。
【0035】
[実施例9〜11]
上下の加熱シールバー間隙を450〜500μmの範囲に設定し、下側加熱シールバー温度を105℃一定に維持し、ヒートシール時間を2,3、5秒に設定した(表3参照)。また、各ヒートシール時間について、上側加熱シールバー温度を110〜150℃まで5℃間隔で設定を変更し、それぞれのヒートシール時間および設定温度にて、多層フィルム2の裁断片の略中央領域に当該方向に直角(TD方向)に各別にヒートシール部を形成し、ヒートシール設定時間(2,3,5秒)ごとにまとめた裁断片の群をそれぞれ実施例9〜11の試料とした(ヒートシール時間2秒でヒートシールした試料が実施例9、5秒の試料が実施例11である)。
【0036】
[実施例12、13]
ヒートシール時間を2秒および5秒とし、上側加熱シールバー温度を110〜150℃まで5℃間隔とした以外は、実施例9〜11と同様のヒートシール条件とした(表3参照)。そして、実施例9〜11と同様の方法にて多層フィルム1の個々の裁断片に各別にヒートシール部を形成し、ヒートシール時間2秒についての裁断片の群を実施例12の試料とし、5秒についての裁断片の群を実施例13の試料とした。
【0037】
[実施例14、15]
ヒートシール時間を2秒に設定し、上側加熱シールバー温度を125から150℃まで5℃間隔とした以外は、実施例12と同様のヒートシール条件とし、実施例12と同様の方法にて多層フィルム3の個々の裁断片に各別にヒートシール部を形成し、得られた裁断片の群を実施例14の試料とした。また、ヒートシール時間を3秒に設定した以外は、実施例14と同様のヒートシール条件とし、同実施例と同様の方法で多層フィルム4の個々の裁断片に各別にヒートシール部を形成し、得られた裁断片の群を実施例15の試料とした。
【0038】
[実施例16]
下側加熱シールバーの温度を70℃一定とし、上側加熱シールバーの設定温度を160℃から185℃まで5℃間隔に設定した以外は、実施例14と同様のヒートシール条件とした(表3参照)。そして、上側加熱シールバーの各設定温度において多層フィルム3の個々の裁断片に各別にヒートシール部を形成し、得られた裁断片の群を実施例16の試料とした。
【0039】
[シール強度の測定]
実施例1〜16および比較例1〜7の試料に含まれる各裁断片について、さらにヒートシール部を含み、150■260mm角のサイズの長方形状に裁断した。このとき、この長方形状の裁断片の一方の長辺寄りに当該辺に平行にヒートシール部が位置するようにした。その後、長方形状の裁断片のそれぞれについて、ヒートシール部の長手方向両端寄りおよび中間からそれぞれ当該方向に直角な方向に15mm幅、150mm長さの短冊状に2枚ずつ切り出し、計6枚の試験片を得た。こうして得られた各試験片は、長さ方向一端寄りにヒートシール部が設けられている。
【0040】
前記6枚の試験片のそれぞれについてヒートシール部が形成された側の端部とは反対側の端部の重なり合った多層フィルムを広げ、その状態で引張試験機の上下のチャックにこれらの略中間にヒートシール部がくるようにセットした上で、引っ張り速度300mm/分にて引っ張り、ヒートシール部が破断した時点での強度値を読み取った。各裁断片の切り出された6個の試験片についてそれぞれ同様の方法でこの測定を繰り返し、得られた各裁断片についての6個の測定結果の平均を求め、各裁断片のヒートシール部のシール強度(N/15mm)とした。なお、引張試験機は、ストログラフVE1D(島津製作所製)を使用した。
【0041】
実施例1〜16および比較例1〜7の各試料から得た6個の試験片についてのシール強度の平均値を上側加熱シールバー温度(横軸)−シール強度(N/15mm)(縦軸)グラフにそれぞれプロットして得られたシール強度特性のグラフを図1〜7に示す。また、各グラフにおけるシール強度特性の曲線のそれぞれからシール強度1N/15mmおよび3N/15mmを示す上側加熱シールバー温度を読み取り、その差(シール温度幅)を求めた結果を表2および表3に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
表2の結果より、実施例1〜8の試料では、いずれも約4〜7℃のシール温度幅が得られており、これにより容易かつ安定確実に弱シール部を形成できることがわかる。特に、実施例1〜4の試料では、シール温度幅は4.6〜7℃であり、実施例5〜8の各試料におけるシール温度幅4.1〜5.6℃よりも大きいことから、実施例1〜4のヒートシール条件とすることでより容易にかつ安定確実に弱シール部を形成可能であることを示している。また、図1および図2により、各試料について上側加熱シールバー温度の増加に対してシール強度は約2〜3N/15mmまでは緩やかに増加することが確認された。
【0045】
それに対して、比較例1〜7の試料では、いずれもシール温度幅は3.4℃以下と小さく、弱シール部形成に当たっては、加熱シールバー温度の管理を確実に行う必要があることが推察される。また、図3および図4では、シール強度は、上側加熱シールバー温度の増加に伴い、特に約1N/15mm以上にて急激に増大していることが認められ、実施例1〜8の場合よりも狭いシール温度幅しかとれないことが視覚的にも明らかである。
【0046】
表3の実施例9〜15の結果から、上側加熱シールバー温度を低温側に適宜設定することで、ヒートシール時間2〜5秒においても4℃以上のシール温度幅が得られることが示された。これらの各実施例の試料については、図5および図6から、シール強度は約2N/15mmまでは緩やかに増加していることがわかる。また、表3の実施例16についての結果から明らかなように、下側加熱シールバー温度を70℃一定に設定した場合でも、シール温度幅4℃以上が得られている。また、図7から、約2N/15mmまでは、シール強度は上側加熱シールバー温度の上昇に伴い、緩やかに増大することが認められる。
【0047】
前記各実施例の結果から、上下の加熱シールバーの間隔および当該各過熱シールバー温度およびヒートシール時間を本発明の範囲で適宜設定することで、4℃以上のシール温度幅を確保できることが推察される。
【0048】
以上説明したように、本発明のヒートシール方法によれば、多層フィルムのヒートシール層を密度差0.02g/cm未満の2種のポリエチレンの混合物によって形成した場合でも、弱シール部に要求されるシール強度の範囲を得るのにシール温度幅を従来のヒートシール方法よりも大きくとれるので、容易かつ安定確実に当該多層フィルムに弱シール部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1〜4の試料のヒートシール強度特性を示すグラフである。
【図2】実施例5〜8の試料のヒートシール強度特性を示すグラフである。
【図3】比較例1〜3の試料のヒートシール強度特性を示すグラフである。
【図4】比較例4〜7の試料のヒートシール強度特性を示すグラフである。
【図5】実施例9〜11の試料のヒートシール強度特性を示すグラフである。
【図6】実施例12〜15の試料のヒートシール強度特性を示すグラフである。
【図7】実施例16の試料のヒートシール強度特性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度差が0.02g/cm未満の2種のポリエチレンを混合して形成されたヒートシール層を含む多層フィルムを当該ヒートシール層同士が向き合うように重ね合わせた状態とし、対向して配置された2本の加熱シールバーで挟んで1〜6秒間ヒートシールして弱シール部を形成するに際し、前記2本の加熱シールバーの間隙を前記重ね合わせた多層フィルムの合計厚さに対して75〜95%となるように調整し、前記各多層フィルムの厚さおよび前記2種のポリエチレンの混合割合に応じて前記2本のうちの一方の加熱シールバーの温度を60〜150℃の範囲に、他方の温度を110〜220℃の範囲に設定し、かつ両温度間に5℃以上の差を設けることを特徴とするヒートシール方法。
【請求項2】
前記多層フィルムの厚さが200〜300μmの範囲の場合、前記一方の加熱シールバーの温度を90〜110℃の範囲で一定に維持し、他方の温度を125〜170℃に設定する請求項1に記載のヒートシール方法。
【請求項3】
前記2種のポリエチレンの混合割合は、密度の高い方のポリエチレン:密度の低い方のポリエチレン=3:7〜9:1である請求項1または2に記載のヒートシール方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒートシール方法によって形成された弱シール部を有することを特徴とする軟包装用容器。
【請求項5】
複室容器である請求項4に記載の軟包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−107634(P2009−107634A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278758(P2007−278758)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(591012392)日本マタイ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】