説明

ヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネル

【課題】 ヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネルに塔載する電子機器が、大きな熱量を発生させた場合であっても、パネルへの熱の伝達量を低下させないようにすることを目的とする。
【解決手段】 空洞の設けられたブロックとヒートパイプが接着剤により相互に密着するとともに接着剤により表皮材に密着し、ブロックが芯材に埋め込まれた状態で表皮が接着されサンドイッチパネルが一体的に成形された後、ブロックに雌ねじ穴を加工して、パネルを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人工衛星(以下、衛星)に用いられるヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネル(以下、パネル)においては、電子機器を固定するためのインサートをパネルに接着剤で接着して、このインサートに電子機器をボルト等で締結していた(例えば、特許文献1参照)。インサートのパネルへの接着はパネルの製造後に行われる。この際、パネルに穴を刳り貫き、その穴に、予め雌ねじの形成されたインサートを挿入して、インサートの接着が行われる。
【特許文献1】特開平11−105174号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、インサートの接着剤はパネルの成形時の温度より低い温度で固められており、高発熱の電子機器が発熱すると、パネルが熱的に破損する以前にインサートの接着剤の温度が上昇すると共に接着剤が軟化する。かくして、インサートがボルトの締結力で電子機器側に引張りあげられることにより、ボルトの締結力が低下する。電子機器の発熱量が増大する程、ボルト締結力の低下の問題が顕在化することとなる。
【0004】
このようにボルトの締結力が低下した場合、電子機器のパネルへの密着度を低下させ、接触熱抵抗を増大させるため熱の伝達を阻害する。このことは、ヒートパイプに熱を伝えることで温度を下げている電子機器にとって、致命的な問題となる。
【0005】
したがって、従来の高発熱機器の塔載方法においては、電子機器が大きな熱量を発生させる場合に、パネルへの熱の伝達量が低下するという問題がある。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネルへ塔載する電子機器が大きな熱量を発生させた場合でも、パネルへの熱の伝達量を低下させずに、電子機器を塔載することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネルは、高発熱性の電子機器を締結するための雌ねじ穴および空洞の形成されたブロックと、ヒートパイプと、表皮材と、表皮材に挟まれた芯材とが、成形時に付加される温度で硬化する接着剤により接着されて、一体的に成形されるヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネルであって、
上記ブロックとヒートパイプとが、接着剤により相互に密着するとともに、接着剤により上記表皮材に密着し、
上記ブロックが芯材に埋め込まれた状態で表皮が接着されサンドイッチパネルが一体的に成形された後、上記ブロックの空洞部もしくはその周辺に到達するように、上記ブロックに雌ねじ穴が加工されて、形成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ブロックを、サンドイッチパネルの成形時に表皮材、芯材、及びヒートパイプに接着し、サンドイッチパネル成形時に付加される温度で硬化する接着剤を用いることで、ブロックを固定する接着剤にサンドイッチパネル本体と同じ耐熱強度を持たせることにより、搭載する電子機器が大きな発熱量を発生させた場合でも、ブロックを接着する接着剤が軟化することはなく、電子機器を締結する締結部品の締結力の低下を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係るヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネル(以下、パネル)について、図を用いて説明する。
図1はパネルの利用形態と構造を例示する図であり、(a)は複数の電子機器がパネルに塔載された状態を示す斜視図、(b)はそのAA断面を示す構造図である。
【0010】
図1(b)において、パネルは、表皮材1aと表皮材1bと芯材2とが接着剤7によって接着され一体的に成形されたものである。パネル内部には、ヒートパイプ4とブロック5が埋め込まれている。表皮材1aおよび表皮材1bはパネルの表皮材であり、例えばアルミシート表皮が用いられる。芯材2はパネルに剛性を付加するためのハニカムコアであり、例えばアルミハニカムコアが用いられる。電子機器3は増幅器や演算プロセッサなどが搭載され、その動作によって高い熱量を発熱する。電子機器3はパネルに取り付けられて、衛星内面側となる面に塔載される。ヒートパイプ4はパネルに埋め込まれる。なお、表皮材1aと表皮材1bの間で、芯材2が除去された空間にヒートパイプ4が埋め込まれ、接着されていても良い。これによって、ヒートパイプ4における表皮材1aとは反対側の面が表皮材1bに直接接着され、表皮材1aと1b間の熱交換が促される。
【0011】
ブロック5は電子機器3を固定するための雌ねじ50が形成された塊状部材から成る。ブロック5は軽量化のための空洞部を成す軽目穴6が設けられている。軽目穴6の重心はブロック5外形の断面中心よりも芯材2側(下側)に位置している。これによって、ブロック5の外形を大きくしつつ軽目穴6の分だけ軽量化を図っており、ブロック5の外表面と芯材2の間で充分な接着強度を確保している。また、ブロック5の内部で、雌ねじ50の穴の端部が軽目穴6の内部もしくはその周辺まで到達している。軽目穴6は、ヒートパイプ4と同様の押し出し加工によって、紙面前後方向であるヒートパイプ4の長手方向(熱伝達方向)に沿って連続的に形成されている。
【0012】
接着剤7は、ブロック5、表皮材1a、1b、芯材2、およびヒートパイプ4を一体的に接着する。接着剤7は、サンドイッチパネル成形時に印加される所定の高温度で硬化する。この接着剤7の硬化によって、ブロック5と表皮材1a、1bとの間、ブロック5と芯材2との間、ブロック5とヒートパイプ4との間、ヒートパイプ4と表皮材1a、1bとの間が、夫々密着している。ボルト8は電子機器3をパネルに締結するための締結部品である。
【0013】
ブロック5の雌ねじ50は、パネルの成型後に、表皮材1aを貫通して加工成型される。すなわち、接着剤7が硬化してパネルが一体成形した後、ドリルによって表皮材1aおよびブロック5に切削穴加工が施された後、ブロック5に雌ねじ50が形成される。この際、表皮材1aには雌ねじ50が設けられても設けなくても良い。表皮材1aに雌ねじ50を設けない場合は、表皮材1aに雌ねじ50よりも大きい径の穴を設ければ良い。このように、パネルの成型後にブロック5の雌ねじ50を加工することで、雌ねじ50について所定の穴位置精度を確保することができる。
なお、雌ねじ50が軽目穴6の内部に達するように加工する場合は、雌ねじ50の穴加工の効率が向上するとともに、軽目穴6に混入する空気抜きの穴を別に設ける必要がなく、全体的に加工効率が向上する。他方、雌ねじ50が軽目穴6の内部にまで到達しない程度に雌ねじ50の穴加工を行う場合は、ねじ穴加工の切粉が軽目穴6の内部に混入しなくなり、その余の切粉抜きの作業が軽減される。
【0014】
また、ブロック5は、パネルの成形時に周辺の部材である表皮材1a、芯材2、ヒートパイプ4と接着されるため、上記したように、パネル成形時に付加される温度で硬化する接着剤を用いることができる。これにより、ブロック5の接着固定において、パネル本体と同じ耐熱強度を持たせることができる。また、電子機器3が大きな発熱量を発生させた場合でも、ブロック5を接着する接着剤7が軟化することはないので、電子機器3を締結するボルト8の締結力が低下することがない。すなわち、雌ねじの設けられたインサートを挿入する従来のパネルと比べ、雌ねじの母材強度が向上する。
【0015】
図2は、電子機器からヒートパイプに伝達する熱経路を示している。
ここで、ブロック5の素材としては、熱伝導性に優れた材料である、例えばアルミ合金が用いられる。また、ブロック5とヒートパイプ4の接着剤には、熱伝導性の高い接着剤が用いられる。
【0016】
この場合、電子機器3の熱を伝達する熱伝達経路として、ヒートパイプ4を通じた通常の熱伝達経路11に加えて、ブロック5を経由してヒートパイプ4に熱を伝達する別の熱伝達経路12を設けることができる。これによって、ヒートパイプパネル4の性能を向上させる作用がある。また、軽目穴6が設けられているので、電子機器3からの熱は芯材2の方に向かわず、大部分がブロック5側面のヒートパイプパネル4の方に伝達される。
【0017】
ブロックの熱伝達量は、ブロック5の大きさや軽目穴6の大きさを変えることで適宜調整することができる。この際、軽目穴6の上部境界面は雌ねじ50の穴下端部に突入するか、もしくは穴下端部の近傍まで近接させることができる。また、ブロック5の外形を大きくすることで、周辺との接着面積を増加させ、電子機器3を締結する締結部において、パネル面外方向への引抜き強度を高めることができる。また、他の形態として、軽目穴6の断面を、図3のように斜辺が電子機器3およびヒートパイプパネル4に向き合う三角形状にすることで、より効率良くヒートパイプ4に熱を伝達することも可能となる。
【0018】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係るヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネル(以下、パネル)の構成を示す図である。図において、ヒートパイプが複数段埋め込まれたパネルとして、例えば2段のヒートパイプが埋め込まれた場合を示している。
【0019】
図4において、符号1〜8に示した構成は上記の実施形態1と同じである。この実施の形態2のパネルではさらに、下段のヒートパイプ21が設けられている。ヒートパイプ21は電子機器3の直下に配置されたヒートパイプ4に直交する形で埋め込まれている。ヒートパイプ21は上面がヒートパイプ4に密着して積み重ねられ、ヒートパイプ4に接着される。ヒートパイプ21の下面は表皮材1bに密着して接着されている。また、ブロック5がヒートパイプ21の上面に直接接着されている。このように構成することで、電子機器3を締結する雌ねじ50の形成されたブロック5に対し、パネル本体と同じ耐熱強度を持たせることができる。また、電子機器3が大きな発熱量を発生した場合でも、ブロック5を接着する接着剤7が軟化することはなく、電子機器3を締結するボルト8の締結力が低下することはない。
【0020】
図5は、実施の形態2における電子機器からヒートパイプに伝達する熱の流れを示している。ここで、ブロック5は下段のヒートパイプ21に直接接着されている。この接着剤に熱伝導性の高い接着剤を用いることで、通常の熱伝達経路11に加え、ブロック5を経由して直下のヒートパイプ4だけでなく、下段のヒートパイプ21に熱を伝達する熱伝達経路31を設けることができる。かくして、ヒートパイプパネルの性能をさらに向上させることができる。
【0021】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3として、熱伝導経路を増やすためのフィンを有するヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネル(以下、パネル)を示している。
【0022】
図6において、符号1〜8、21は上記の実施形態1、2と同じものである。この実施の形態3ではさらに、ヒートパイプ4にフィン41が設けられている。また、ブロック42はフィン41の直下に位置し、ヒートパイプ4に密着して接着される。さらに、ブロック43は窪みを形成する段が設けられ、フィン41はこのブロック43の窪み面に嵌め込まれて密着するように接着される。ブロック43はフィン41の横に、電子機器3を締結する雌ねじ50が設けられる。この構成によって、ブロック5にパネル本体と同じ耐熱強度を持たせることができる。このため、電子機器3が大きな発熱量を発生させた場合でも、ブロック42およびブロック43を接着する接着剤7が軟化することはなく、電子機器3を締結するボルト8の締結力が低下することはない。
【0023】
図7は、実施の形態3における、電子機器3からヒートパイプ4に伝達する熱の流れを示している。ブロック42およびブロック43のヒートパイプ4およびフィン41との接着剤として、熱伝導性の高い接着剤を用いる。これによって、通常の熱伝達経路11に加えて、ブロック42はフィン41を経由してヒートパイプ4の本体に熱を伝える経路とフィン41を経由して下段のヒートパイプ21に熱を伝える経路を設けることができる。また、ブロック43はフィン41を経由してヒートパイプ4の本体に熱を伝える経路とブロック43が下段のヒートパイプ21に熱を伝える経路を設けることができ、ヒートパイプパネルの性能をさらに向上させる作用もある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明に係る実施の形態1によるヒートパイプ埋め込みパネルを示す図である。
【図2】この発明に係る実施の形態1によるヒートパイプ埋め込みパネルの熱の伝達経路を示すである。
【図3】この発明に係る実施の形態1によるブロックの、軽目穴の他の形態を示すである。
【図4】この発明に係る実施の形態2によるヒートパイプ埋め込みパネルを示す図である。
【図5】この発明に係る実施の形態2によるヒートパイプ埋め込みパネルの熱の伝達経路を示すである。
【図6】この発明に係る実施の形態3によるヒートパイプ埋め込みパネルの熱の伝達経路を示すである。
【図7】この発明に係る実施の形態3によるヒートパイプ埋め込みパネルの熱の伝達経路を示すである。
【符号の説明】
【0025】
1 表皮材、2 芯材、3 電子機器、4 ヒートパイプ、5 ブロック、6 軽目穴、7 接着剤、8 ボルト、21 ヒートパイプ、41 フィン、42 ブロック、43 ブロック、50 雌ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高発熱性の電子機器を締結するための雌ねじ穴および空洞部の形成されたブロックと、ヒートパイプと、表皮材と、上記表皮材に挟まれた芯材とが、成形時に付加される温度で硬化する接着剤により接着されて、一体的に成形されるヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネルであって、
上記ブロックとヒートパイプとが、接着剤により相互に密着するとともに、接着剤により上記表皮材に密着し、
上記ブロックが芯材に埋め込まれた状態で表皮が接着されサンドイッチパネルが一体的に成形された後、上記ブロックの空洞部もしくはその周辺に到達するように、上記ブロックに雌ねじ穴が加工されて、
形成されることを特徴としたヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネル。
【請求項2】
上記表皮材の間で、複数段のヒートパイプが接着剤により密着して積重なったことを特徴とする請求項1記載のヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネル
【請求項3】
上記ヒートパイプは、上記ブロックと密着するフィンが形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のヒートパイプ埋め込みサンドイッチパネル

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−194876(P2008−194876A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30320(P2007−30320)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】