説明

ヒートパイプ埋込み回路基板

【目的】 半導体素子等の発熱量の多い部品を実装する、ヒートパイプ埋込み回路基板の熱伝導性を良好にし、冷却効率を向上したこと。
【構成】 表面に回路パターン12を有する基板18内に偏平ヒートパイプ17の吸熱部を埋込んでなるヒートパイプ埋込み回路基板11において、該回路基板内に配置した放熱プレート19のヒートパイプ接触面に窪み30を形成したヒートパイプ埋込み回路基板。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体素子等の発熱量の多い部品を実装するヒートパイプ埋込み回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ヒートパイプを用いた回路基板は、冷却効率の良いこと、動力を必要としないこと等の利点があり、半導体素子等の発熱量の多い部品の冷却に用いられている。その一例として先に本発明者等は特願平2−248644号において、「ヒートパイプ埋込み回路基板とその製造方法」を提案した。この回路基板は図6に示すように基板18の両面に回路パターン12,26を有するタイプで、表面に回路パターン12を有する絶縁シート13と、接着材層14と、均熱用の金属板15と、接着材層21と、絶縁板22と、接着材層23と、均熱用の金属板24と、接着材層25と、表面(下面側)に回路パターン26を有する絶縁シート27とが積層一体化され、絶縁板22と接着材層21,23で構成される絶縁基板16内に、基板18面と平行な平面を有するように偏平に成形されたヒートパイプの吸熱部17aが埋込まれているものである。
【0003】そして回路パターンの表面に取付けられた半導体素子(図示せず)の発熱を偏平に成形されたヒートパイプの吸熱部より吸熱し、その端部の放熱部より放熱して冷却するものである。この回路基板は、偏平ヒートパイプの巾広面を発熱面側に埋込んでいるので、吸熱部への熱伝導性が良く、従来の円形のヒートパイプを用いたものに比較して冷却効果が向上する利点がある。しかし最近の電子回路装置は、LSI等の高発熱部品が高密度で実装されるため、回路基板の発熱量が著しく多くなって来ており、これに対応して、冷却効率のより優れた回路基板が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題について検討の結果なされたもので、冷却効率のさらに向上するヒートパイプ埋込み回路基板を開発したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は表面に回路パターンを有する基板内に偏平ヒートパイプの吸熱部を埋込んでなるヒートパイプ埋込み回路基板において、該回路基板内に配置した、放熱プレートのヒートパイプ接触面に窪みを形成したことを特徴とするヒートパイプ埋込み回路基板を請求項1とし、前記の窪み面に凹凸もしくは粗面を形成したことを特徴とする請求項1記載のヒートパイプ埋込み回路基板を請求項2とし、前記の放熱プレートとヒートパイプを溶接したことを特徴とする請求項1記載のヒートパイプ埋込み回路基板を請求項3とするものである。
【0006】
【作用】すなわち本発明は、回路基板内に配置した放熱プレートのヒートパイプ接触面に窪みを形成して、これに偏平ヒートパイプの吸熱部の巾広面がぴったりと密着するようにして、接触面積を増大せしめ、熱抵抗を小さくし、冷却効率を向上させたものである。また本発明においては、上記の窪み面に凹凸もしくは粗面を形成することにより、一層、熱伝導性を向上させることができる。さらに放熱プレートとヒートパイプを溶接することにより、放熱プレートとヒートパイプが一体化するため、熱伝導性をより良好にすることができる。なおヒートパイプの放熱部の断面形状は偏平でも円形でもよい。
【0007】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るヒートパイプ埋込み回路基板の一実施例を示す断面図、図2は図1の平面図である。この回路基板11は、基板18の片面に銅箔等の回路パターン12を有するタイプで、表面に回路パターン12を有する絶縁シート13と、接着材層14と、放熱用の無酸素銅等からなる放熱プレート19とガラスエポキシ樹脂等の絶縁基板16と偏平に成形されたヒートパイプ17で構成されている。そして前記の放熱プレート19のヒートパイプ17との接触面にハーフエッチング加工により窪み30を形成して、これに偏平に成形されたヒートパイプの巾広面が密着するようにした。このようにして形成された回路基板11の上面には、半導体素子31が載置され、その下面の発熱部32は、接着材33により、発熱部品実装部12aに接着され、リード部34は、回路パターン12に接続され、半導体素子用として使用される。発熱部品実装部の熱は、放熱プレートを介して、図2に示すようにヒートパイプの放熱部17bから放熱される。なお放熱部17bには、図示しないフインや水冷ジャケットが設けられる。
【0008】この回路基板の放熱プレート19には、0.5mm厚さで、150×150mmの無酸素銅板を用い、窪み30はハーフエッチング加工により深さ0.25mmに加工した。ヒートパイプは銅製の3mmφ、長さ110mmのものを厚さ2mmに偏平加工したもの2本を用いた。またヒートパイプ17と放熱プレート19は、絶縁基板16のエポキシ樹脂との密着性を保つため黒化処理を施したものを使用した。回路パターン12の銅箔は35μmの電解銅を用い、絶縁基板16にはガラスエポキシ樹脂のFR−4を用い、絶縁シート13と接着材層14は張り合わせ体を用い、これらを図1のように積層し、ホットプレスで接着して回路基板11を作成した。
【0009】このようにして作成された回路基板11を用い、発熱部品実装部12aに、それぞれ発熱量2wの発熱部品を実装し、20分経過後の温度を測定した結果、本発明の回路基板は発熱部品実装部近傍の温度が約35℃であった。これに対して従来の回路基板は約40℃であり、温度が10%以上低下することが確認された。
【0010】また前記の放熱プレート19の窪み30に、図3に示すように凹凸部35を形成することにより、放熱プレートとヒートパイプの熱伝導性が良好になり、さらに冷却効率が向上する。またサンドブラスト等により粗面にしても同様の効果がある。
【0011】さらに前記の放熱プレート19とヒートパイプ17の接触部を図4に示すように溶接して溶接部36を形成することにより、熱伝導性が良好となることが認められた。
【0012】次に前記の放熱プレート19を、図5に示すように、ヒートパイプ17を挟むように上下面に2枚設けて基板18とし、この上下面に半導体素子31を取付けて両面タイプとした。この場合も上下面からの発熱を放熱プレートを介してヒートパイプにより吸熱し、他端の放熱部より放熱し、効率良く冷却することができる。なお図5において、それ以外の構成は図1と同じであるので同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0013】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、ヒートパイプと放熱プレートの熱抵抗が小さくなり、放熱性が向上すると共に回路基板の厚さが薄くなり、部品が実装しやすくなる等、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るヒートパイプ埋込み回路基板の断面図
【図2】図1のヒートパイプ埋込み回路基板の平面図
【図3】本発明の一実施例に係る放熱プレートとヒートパイプ接触部の断面図
【図4】本発明の一実施例に係る放熱プレートとヒートパイプ接触部の他の例の断面図
【図5】本発明の一実施例に係るヒートパイプ埋込み回路基板の他の例の断面図
【図6】従来のヒートパイプ埋込み回路基板の断面図
【符号の説明】
11 回路基板
12,26 回路パターン
12a 発熱部品実装部
13,27 絶縁シート
14,21,23,25 接着材層
15,24 金属板
16 絶縁基板
17 ヒートパイプ
17a 吸熱部
17b 放熱部
18 基板
19 放熱プレート
30 窪み
31 半導体素子
32 発熱部
33 接着材
34 リード部
35 凹凸部
36 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に回路パターンを有する基板内に偏平ヒートパイプの吸熱部を埋込んでなるヒートパイプ埋込み回路基板において、該回路基板内に配置した放熱プレートのヒートパイプ接触面に窪みを形成したことを特徴とするヒートパイプ埋込み回路基板。
【請求項2】 前記の窪み面に凹凸もしくは粗面を形成したことを特徴とする請求項1記載のヒートパイプ埋込み回路基板。
【請求項3】 前記の放熱プレートとヒートパイプを溶接したことを特徴とする請求項1記載のヒートパイプ埋込み回路基板。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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