説明

ヒートポンプシステム及びこれを用いたデシカント空調システム

【課題】冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスな場合であっても、メインヒートポンプを安定して稼働させると共に性能を十分に発揮させる。
【解決手段】周囲から熱を回収する熱源体21,22を有し、熱源体21,22が回収した熱を受ける第一熱媒体m2が循環する熱源系統20と、熱源体21,22が回収した熱の供給対象となる熱供給体31を有し、熱供給体31に熱を供給する第二熱媒体m3が循環する熱供給系統30と、第一熱媒体m2と第二熱媒体m3とが導入され、熱源体21,22が回収した熱を、第一熱媒体m2から第二熱媒体m3に移動させるメインヒートポンプ40と、を備えるヒートポンプシステムs1であって、熱源系統20は、メインヒートポンプ40に導入される第一熱媒体m2を加熱する加熱装置23を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプシステム及びこれを用いたデシカント空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温水ヒートポンプを用いたヒートポンプシステムとして、空調に用いられる外気から熱を回収し、この回収した熱を給湯設備に利用するものがある。具体的には、空調設備に設置した冷水コイルと温水ヒートポンプとの間に熱源水を循環させると共に、給湯タンクに設置した温水コイルと温水ヒートポンプとの間に温水を循環させている。そして、冷水コイルを介して外気の熱を熱源水に回収させ、この外気から回収した熱を、温水ヒートポンプを介して熱源水から温水に移動させ、温水コイルを介して温水の熱を給湯タンク内の水に供給することで湯を得ている。
上記のヒートポンプに類似する技術としては、以下のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−276325号公報
【特許文献2】特開2010−276317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスな場合(熱源水が冷水コイルから受ける熱量が、温水コイルに供給する熱量に対して過小な場合)においては、ヒートポンプの性能を十分に発揮できなくなり、温水コイル等に安定して熱を供給することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスな場合であっても、ヒートポンプを安定して稼働させると共に性能を十分に発揮させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るヒートポンプシステムは、周囲から熱を回収する熱源体を有し、前記熱源体が回収した熱を受ける第一熱媒体が循環する熱源系統と、前記熱源体が回収した熱の供給対象となる熱供給体を有し、前記熱供給体に熱を供給する第二熱媒体が循環する熱供給系統と、前記第一熱媒体と前記第二熱媒体とが導入され、前記熱源体が回収した熱を、前記第一熱媒体から前記第二熱媒体に移動させるメインヒートポンプと、を備えるヒートポンプシステムであって、前記熱源系統は、前記メインヒートポンプに導入される前記第一熱媒体を加熱する加熱装置を有することを特徴とする。
このようにすれば、冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスであり、第一熱媒体が熱源体から受ける熱量が、熱供給体に供給する熱量に対して過小となる場合であっても、加熱装置で第一熱媒体の熱を増加させることができる。これにより、第一熱媒体と第二熱媒体との温度差を、メインヒートポンプの稼働に適した温度差にすることができるので、メインヒートポンプを安定して稼働させることができると共に性能を十分に発揮させることができる。
【0007】
また、前記加熱装置は、前記熱源体との間で第三熱媒体を循環させる一方、前記メインヒートポンプとの間で前記第一熱媒体を循環させる冷凍機であり、前記冷凍機は、前記第三熱媒体を介して、前記熱源体が回収した熱を前記第一熱媒体に受け渡すと共に、排熱を前記第一熱媒体に加えて加熱することを特徴とする。
このようにすれば、加熱装置が冷凍機であるので、冷凍機の冷却媒体をメインヒートポンプの第一熱媒体として利用することができる。
【0008】
また、前記熱源系統は、前記メインヒートポンプから前記冷凍機に向けて流れる前記第一熱媒体を冷却する冷却装置を備えることを特徴とする。
このようにすれば、冷却装置を備えるので、冷凍機の排熱の熱量が、第一熱媒体を冷却可能な熱量を上回る場合に、余剰分の排熱を除去することが可能となる。
【0009】
また、前記熱源系統は、前記熱源体と前記メインヒートポンプとの間で前記第一熱媒体を循環させており、前記加熱装置は、前記熱源体に導入される前記第一熱媒体を加熱するサブヒートポンプであることを特徴とする。
このようにすれば、サブヒートポンプを有するので、第一熱媒体と第二熱媒体との温度差を比較的に細かく調整することが可能となる。
【0010】
また、前記熱源系統は、前記熱源体から前記メインヒートポンプに向けて前記第一熱媒体が流れる高温流路と、前記メインヒートポンプから前記熱源体に向けて前記第一熱媒体が流れる低温流路と、前記低温流路に接続され、前記低温流路から前記第一熱媒体を分流させて前記サブヒートポンプに導入する分岐低温流路と、前記高温流路に接続され、前記サブヒートポンプで加熱された前記第一熱媒体を、前記上流流路を流れる前記第一熱媒体に合流させる分岐高温流路と、を含むことを特徴とする。
このようにすれば、メインヒートポンプに流入する第一熱媒体に対して、サブヒートポンプで加熱した第一熱媒体を直接合流させることができるので、第一熱媒体の温度制御が比較的に容易となる。また、既存の設備に本発明を容易に適用することができる。
【0011】
また、外部から流入した外気を空調対象に給気する給気流路と、前記空調対象から流入した還気を外部に排気する排気流路と、前記給気流路を通過する前記外気から水分を吸着すると共に、前記排気流路を通過する前記還気に前記吸着した水分を脱着するデシカント部と、前記給気流路のうち前記デシカント部と前記外部との間に設けられ、前記外気を冷却する第一冷却部と、前記排気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、少なくとも前記デシカント部が前記水分を脱着する再生温度まで前記還気を加熱する第一加熱部と、上記のうちいずれか一項に記載のヒートポンプシステムと、を備えるデシカント空調システムであって、前記熱源体は、前記第一冷却部を備え、前記熱供給体は、前記第一加熱部を備えることを特徴とする。
このようにすれば、ヒートポンプシステムを備えるので、第一熱媒体と第二熱媒体との温度差が比較的に大きい場合であっても、メインヒートポンプが安定して稼働する。これにより、空調対象に安定して給気をすることができる。また、第一加熱コイルに十分に熱を供給することができるので、デシカント部の吸着水分を確実に脱着させることができる。従って、デシカント空調システムを安定して稼働させることができる。
【0012】
また、外部から流入した外気を空調対象に給気する給気流路と、前記空調対象から流入した還気を外部に排気する排気流路と、前記給気流路を通過する前記外気から水分を吸着すると共に、前記排気流路を通過する前記還気に前記吸着した水分を脱着するデシカント部と、前記給気流路のうち前記デシカント部と前記外部との間に設けられ、前記外気を冷却する第一冷却部と、前記排気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、少なくとも前記デシカント部が前記水分を脱着する再生温度まで前記還気を加熱する第一加熱部と、前記給気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、前記外気を加熱する第二加熱部と、上記のヒートポンプシステムと、を備えるデシカント空調システムであって、前記熱源体は、前記第一冷却部を備え、前記熱供給体は、前記第一加熱部を備え、前記サブヒートポンプは、前記第一冷却部に切替接続可能であり、前記メインヒートポンプから独立して前記第一熱媒体を循環させ、前記メインヒートポンプと共に前記第一冷却部を介して前記外気を冷却させることを特徴とする。
このようにすれば、冷熱負荷が、デシカント部を再生するための温熱負荷を上回る環境に対応して、空調を行うことができる。
【0013】
また、外部から流入した外気を空調対象に給気する給気流路と、前記空調対象から流入した還気を外部に排気する排気流路と、前記給気流路を通過する前記外気から水分を吸着すると共に、前記排気流路を通過する前記還気に前記吸着した水分を脱着するデシカント部と、前記給気流路のうち前記デシカント部と前記外部との間に設けられ、前記外気を冷却する第一冷却部と、前記排気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、少なくとも前記デシカント部が前記水分を脱着する再生温度まで前記還気を加熱する第一加熱部と、前記給気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、前記外気を加熱する第二加熱部と、上記のヒートポンプシステムと、を備えるデシカント空調システムであって、前記熱源体は、前記第一冷却部を備え、前記熱供給体は、前記第一加熱部を備え、前記サブヒートポンプは、前記第二加熱部との間で前記第一熱媒体を循環させるように前記第二加熱部に切替接続可能であり、前記メインヒートポンプが停止していることを条件として、加熱した前記第一熱媒体を前記第二加熱部に供給することを特徴とする。
このようにすれば、冷熱負荷とデシカント部を再生するための温熱負荷が0となる一方で、暖房用の温熱負荷が生じる環境に対応して、空調を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るヒートポンプシステムによれば、メインヒートポンプを安定して稼働させることができると共に性能を十分に発揮させることができる。
【0015】
また、本発明に係るデシカント空調システムによれば、安定した稼働が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係るデシカント空調システムS1の概略構成図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るデシカント空調システムS1の作用説明図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係るデシカント空調システムS2の概略構成図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るデシカント空調システムS2の作用説明図であって、夏期と冬期との間の中間期の接続構成を示している。
【図5】本発明の第二実施形態に係るデシカント空調システムS2の作用説明図であって、夏期の接続構成を示している。
【図6】本発明の第二実施形態に係るデシカント空調システムS2の作用説明図であって、冬期の接続構成を示している。
【図7】本発明の第二実施形態に係るデシカント空調システムS2の熱負荷量の年間推移グラフである。
【図8】本発明の第二実施形態に係るデシカント空調システムS2の変形例S2Aの概略構成図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る排熱利用システムS3の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係るデシカント空調システムS1の概略構成図である。デシカント空調システムS1は、超乾燥空気(例えば露点温度が−45℃程度)を半導体や食品等の製造ライン(空調対象)に供給するものであり、図1に示すように、給気流路1と、排気流路2と、デシカント(デシカント部)3と、ヒートポンプシステムH1とを備えている。
【0018】
給気流路1は、外部から流入した外気A1を空調対象に供給するものであり、第一送風ファン4が外部側開口1aから外気A1を取り込んで給気A3を空調対象側開口1bから空調対象に供給する。
【0019】
排気流路2は、空調対象から流入した還気A4を外部に排気するものであり、第二送風ファン5が空調対象側開口2bから還気A4を取り込んで、この還気A4を外部側開口2aから外部に排気する。この排気流路2は、給気流路1と並設されている。
【0020】
デシカント3は、回転型のものであり、ハニカム状通路の束からなる円盤状のロータ部材(不図示)と、このロータ部材のハニカム状通路の表面にしみ込んだシリカゲル系吸着剤や高分子収着材とで構成されている。デシカント3は、給気流路1と排気流路2とに亘って配設されて還気A4又は外気A1がハニカム状通路を通過するように構成されており、ロータ部材を回転駆動することで、給気流路1と排気流路2との間でハニカム状通路を入れ替える。
このデシカント3は、給気流路1においてハニカム状通路を通過する外気A1に含まれる水分を流路表面に吸着し、超乾燥空気(例えば露点温度が−45℃程度)の除湿空気A2とする。そして、ロータ部材が回転することにより、水分を吸着したハニカム状通路を排気流路2に位置させ、ハニカム状通路を通過する還気A4で吸着した水分を脱着する。
【0021】
ヒートポンプシステムH1は、熱源系統20と、熱供給系統30と、温水ヒートポンプ(メインヒートポンプ)40とを有している。
【0022】
熱源系統20は、第一冷水コイル(熱源体,第一冷却部)21と、第二冷水コイル(熱源体)22と、ターボ冷凍機(冷凍機)23と、密閉式冷却塔(冷却装置)24と、冷水回路26,27と、熱源水回路28とを有している。
【0023】
第一冷水コイル21は、第一冷水コイル21の周囲から熱を回収する。この第一冷水コイル21は、給気流路1においてデシカント3と外部側開口1aとの間に配設されており、外部からデシカント3に流入する外気A1を予冷する。
【0024】
冷水回路26は、第一冷水コイル21とターボ冷凍機23とを接続しており、これら第一冷水コイル21とターボ冷凍機23との間において、冷水(第三熱媒体)m1を循環させる。この冷水回路26の冷水m1は、第一冷水コイル21が周囲の外気A1から回収した熱を受け取る。
【0025】
第二冷水コイル22は、第二冷水コイル22の周囲から熱を回収する。この第二冷水コイル22は、給気流路1のうちデシカント3と空調対象側開口1bとの間に配設されており、デシカント3を通過した除湿空気A2を冷却する。
【0026】
冷水回路27は、第二冷水コイル22とターボ冷凍機23とを接続しており、これら第二冷水コイル22とターボ冷凍機23との間において、冷水m1を循環させる。この冷水回路27は、ターボ冷凍機23から第一冷水コイル21に向かう冷水回路26の冷水m1を分岐させて第二冷水コイル22に導入すると共に、第二冷水コイル22から排出された冷水m1を、第一冷水コイル21からターボ冷凍機23に向かう冷水回路26の冷水m1に合流させる。つまり、冷水回路27と冷水回路26とは互いに一部を重複させている。
この冷水回路27の冷水m1は、第二冷水コイル22が周囲の除湿空気A2から回収した熱を受け取る。
なお、冷水回路27と冷水回路26との重複範囲において、冷水m1がターボ冷凍機23に向かう配管には、冷水m1を圧送するポンプ26aが配設されている。
【0027】
ターボ冷凍機23は、第一冷水コイル21と第二冷水コイル22とに接続されている一方、温水ヒートポンプ40に熱源水回路28を介して接続されている。このターボ冷凍機23は、第一冷水コイル21が外気A1から回収した熱と第二冷水コイル22が除湿空気A2から回収した熱とに、ターボ冷凍機23の圧縮機の消費動力(排熱)を加えて、熱源水回路28の熱源水(第一熱媒体,ターボ冷凍機23から見れば冷却水)m2に受け渡す。
【0028】
熱源水回路28は、ターボ冷凍機23と温水ヒートポンプ40とを接続しており、これらターボ冷凍機23と温水ヒートポンプ40との間において、熱源水m2を循環させる。この熱源水回路28の熱源水m2は、ターボ冷凍機23を介して、第一冷水コイル21が外気A1から回収した熱と、第二冷水コイル22が外気A1から回収した熱とを、冷水m1から受け取る。また、熱源水m2は、ターボ冷凍機23からターボ冷凍機23の圧縮機の消費動力を受け取る。
なお、熱源水回路28には、熱源水m2を圧送するポンプ28cが配設されている。
【0029】
密閉式冷却塔24は、熱源水m2と外部の空気とを非接触な状態で熱交換をさせることにより、熱源水m2の熱を外部の空気に放出する。この密閉式冷却塔24は、熱源水回路28において熱源水m2がターボ冷凍機23に向かう低温管路28bに、バイパス流路29を介して接続されている。すなわち、低温管路28bにおいてバイパス流路29の入口及び出口の間に配設された流量弁28dを開閉させることにより、密閉式冷却塔24に熱源水m2を選択的に流通させることが可能である。
【0030】
熱供給系統30は、再生用温水コイル(熱供給体)31と、温水回路32とを有している。
再生用温水コイル31は、第一冷水コイル21と第二冷水コイル22とが回収した熱の供給対象となるものであって、温水回路32を介して温水ヒートポンプ40に接続されている。この再生用温水コイル31は、温水回路32を介して温水ヒートポンプ40から供給された熱によって、空調対象からデシカント3に流入する還気A4を加熱する。
本実施形態においては、給気A3が超乾燥空気となっており、デシカント3に流入する外気A1と還気A4との相対湿度の差を大きくする必要があることから、デシカント3が吸着した再生温度が比較的に高温(例えば80℃)に設定されている。
【0031】
温水回路32は、温水ヒートポンプ40と再生用温水コイル31とを接続しており、これら温水ヒートポンプ40と再生用温水コイル31との間において温水(第二熱媒体)m3を循環させる。この温水回路32の温水m3は、温水ヒートポンプ40の冷媒cから受け取った熱を再生用温水コイル31に受け渡す。
なお、温水回路32には、温水m3を圧送するポンプ32aが配設されている。
【0032】
温水ヒートポンプ40は、冷媒cを圧縮する圧縮機40aと、圧縮された冷媒cを冷却して凝縮する凝縮器40bと、凝縮された冷媒cを膨張させる膨張弁40cと、膨張させた冷媒cを蒸発させる蒸発器40dとを有している。
なお、凝縮器40b及び蒸発器40dは、冷媒−水熱交換器であり、汎用的なプレート式熱交換器や二重管熱交換器などを用いることができる。
【0033】
このような構成からなるヒートポンプシステムH1は、以下のようにして、外気A1と外気A1から回収した熱が還気A4に付与される。すなわち、第一冷水コイル21と第二冷水コイル22がそれぞれ外気A1から回収した熱が冷水m1に受け渡され、ターボ冷凍機23を介することにより、冷水m1に受け渡された熱がターボ冷凍機23の圧縮機の消費動力と共に熱源水m2に受け渡され、温水ヒートポンプ40を介することにより、熱源水m2に受け渡された熱が温水ヒートポンプ40の圧縮機40aの消費動力と共に温水m3に受け渡され、温水m3によって再生用温水コイル31に供給された熱が、還気A4に付与される。
【0034】
次いで、上記の構成からなるデシカント空調システムS1及びヒートポンプシステムH1の作用について図2を用いて説明する。
以下の説明においては、最初にデシカント空調システムS1の作用を説明した後に、ヒートポンプシステムH1の作用について説明する。
【0035】
まず、図2に示すように、外部側開口1aから給気流路1に流入した外気A1が、第一冷水コイル21によって熱を回収されて降温し、相対湿度が上昇する。
次に、この外気A1がデシカント3を通過すると、外気A1の水分がハニカム状通路の表面に吸着され、絶対湿度が低下する。
【0036】
次に、外気A1が第二冷水コイル22を通過すると、外気A1が第二冷水コイル22によって熱を回収されて冷却される。この際、デシカント3によって冷熱負荷のうちの潜熱負荷が除去されているので、冷熱負荷のうちの顕熱負荷を除去するだけで除湿空気A2を目標温度にすることができる。
そして、給気A3が空調対象に供給される。
【0037】
次に、空調対象から空調対象側開口2bを介して排気流路2に流入した還気A4が再生用温水コイル31を通過すると、図2に示すように、還気A4が再生用温水コイル31から熱を付与されて再生温度まで加熱される。
次に、還気A4がデシカント3を通過すると、デシカント3の水分を脱着させて、還気A4の絶対湿度が上昇する。
そして、この還気A4が外部に排気される。
【0038】
次いで、ヒートポンプシステムH1の作用について説明する。
まず、第一冷水コイル21及び第二冷水コイル22が外気A1から熱を回収すると、この回収した熱を、冷水回路26,27を循環する冷水m1に受け渡す。
冷水m1は、第一冷水コイル21及び第二冷水コイル22から熱を受け取り、受け取った熱をターボ冷凍機23に受け渡す。冷水m1は、ターボ冷凍機23の入口において温度t11(例えば12℃)となり、ターボ冷凍機23の出口において温度t12(例えば7℃)となる。
【0039】
ターボ冷凍機23は、冷水m1から熱を受け取って、この受け取った熱(第一冷水コイル21及び第二冷水コイル22が外気A1から回収した熱)にターボ冷凍機23の圧縮機の消費動力を加えて、熱源水m2に受け渡す。
【0040】
熱源水回路28を循環する熱源水m2は、ターボ冷凍機23から受け取った熱を、温水ヒートポンプ40に受け渡す。熱源水m2は、ターボ冷凍機23の入口において温度t21(例えば35℃)となり、ターボ冷凍機23の出口において温度t22(例えば40℃)となる。
【0041】
温水ヒートポンプ40は、熱源水m2から受け取った熱に温水ヒートポンプ40の圧縮機40aの消費動力を加えて、温水m3に受け渡す。温水m3は、温水ヒートポンプ40の入口において温度t31(例えば75℃)となり、温水ヒートポンプ40の出口において温度t32(例えば85℃)となる。
【0042】
温水回路32を循環する熱源水m2は、温水ヒートポンプ40から受け取った熱を、再生用温水コイル31に供給する。再生用温水コイル31は、供給された熱を還気A4に加熱して還気A4を再生温度(例えば80℃)まで昇温させる。
【0043】
ここで、ターボ冷凍機23を省略すると共に、第一冷水コイル21及び第二冷水コイル22と、温水ヒートポンプ40とをそれぞれ直接に接続して熱源水m2を循環させる仮想例を考えると、熱源水m2の温度は、外気A1及び除湿空気A2の冷熱負荷に対応して、温水ヒートポンプ40の入口で温度t11(例えば12℃)、温水ヒートポンプ40の出口で温度t12(例えば7℃)である必要がある。
一方、還気A4を再生温度(例えば80℃)の温熱負荷に対応して、温水m3の温度は、温水ヒートポンプ40の入口で温度t31(例えば75℃)、温水ヒートポンプ40の出口で温度t32(例えば85℃)である必要がある。
【0044】
このように、冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスな場合に、第一冷水コイル21及び第二冷水コイル22と、温水ヒートポンプ40とをそれぞれ直接に接続すると、低温側の熱源水m2と高温側の温水m3との温度差が過大となって熱バランスが不均衡になる。換言すれば、温水ヒートポンプ40が温水m3に供給する必要熱量に対して、温水ヒートポンプ40が熱源水m2から汲み上げる熱量が不足して双方のバランスが取れない。このため、温水ヒートポンプ40におけるサイクルが崩れて温水ヒートポンプ40の運転ができなくなってしまうか、あるいは、運転できたとしても還気A4を再生温度にすることができずにデシカント空調システムS1の性能を著しく損なってしまう。
【0045】
これに対して、デシカント空調システムS1は、第一冷水コイル21及び第二冷水コイル22と温水ヒートポンプ40とを、ターボ冷凍機23を介して接続し、ターボ冷凍機23で熱源水m2を加熱する。
すなわち、熱源水m2の代わりに冷水m1を、第一冷水コイル21と第二冷水コイル22とに循環させる(ターボ冷凍機23の入口で温度t11(例えば12℃)、ターボ冷凍機23の出口で温度t12(例えば7℃))。そして、ターボ冷凍機23は、冷水m1から受け取った熱(第一冷水コイル21が外気A1から回収した熱と第二冷水コイル22が除湿空気A2から回収した熱)に、温水ヒートポンプ40の圧縮機40aの消費動力を加えて、熱源水m2に供給する。そのため、熱源水m2の温度は、温水ヒートポンプ40の入口で温度t22(t22>t11,例えば40℃)となる。
【0046】
このように、冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスな場合であっても、温水ヒートポンプ40に流入する熱源水m2と温水m3との温度差が適切なものとなって、温水ヒートポンプ40が安定して稼働する。
そして、冷水m1で冷熱負荷(外気A1及び除湿空気A2の冷熱負荷)を満たすと共に、熱源水m2で温熱負荷(還気A4の再生温度の温熱負荷)を満たすことが可能となる。よって、還気A4を確実に再生温度にしてデシカント3を再生し、空調対象に給気A3が安定して供給され続ける。
【0047】
一方、ターボ冷凍機23の排熱の熱量(圧縮機の消費動力)が、熱源水m2の冷却可能な熱量を上回る場合には、熱源水m2を密閉式冷却塔24に流通させることで、余剰分の排熱を外気に排出する。
【0048】
以上説明したように、ヒートポンプシステムH1によれば、冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスであり、第一冷水コイル21及び第二冷水コイル22から熱源水m2が受ける熱量が、再生用温水コイル31に供給する熱量に対して過小となる場合であっても、ターボ冷凍機23で熱源水m2の熱を増加させることができる。これにより、熱源水m2と温水m3との温度差を、温水ヒートポンプ40の稼働に適した温度差にすることができるので、温水ヒートポンプ40を安定して稼働させることができる。
【0049】
また、デシカント空調システムS1によれば、ヒートポンプシステムH1を備えるので、給気A3が超乾燥空気であって再生温度が比較的に高く設定される場合、換言すれば、第一冷水コイル21及び第二冷水コイル22と、再生用温水コイル31との温度差が比較的に大きい場合であっても、温水ヒートポンプ40が安定して稼働する。これにより、外気A1及び除湿空気A2を十分に冷却して超乾燥空気の給気A3を、空調対象に安定して供給することができる。また、再生用温水コイル31に十分に熱を供給することができるので、デシカント3の吸着水分を確実に脱着させることができる。従って、デシカント空調システムS1を安定して稼働させることができる。
【0050】
また、ターボ冷凍機23を用いて加熱するので、ターボ冷凍機23の冷却水を温水ヒートポンプ40の熱源水m2として利用することができる。
また、密閉式冷却塔24を備えるので、ターボ冷凍機23の排熱の熱量が、熱源水m2を冷却可能な熱量を上回る場合に、余剰分の排熱を除去することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態においては、超乾燥空気として露点温度が−45℃程度の除湿空気A2を例示したが、これに限定する趣旨ではなく、他の露点温度の乾燥空気を供給する場合に本発明を適用してもよい。特に、露点温度が−45℃〜5℃の範囲の乾燥空気を供給するデシカント空調システムに対しては、本発明を良好に適用することが可能である。
【0052】
〔第二実施形態〕
続いて、本発明の第二実施形態について説明する。
図3は本発明の第二実施形態に係るデシカント空調システムS2の概略構成図である。なお、以下の説明及び以下の説明で用いる図面において、上述した実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図3に示すように、デシカント空調システムS2は、第一実施形態と同様に給気流路1と排気流路2とデシカント3とを有しているが、ヒートポンプシステムH1の代わりにヒートポンプシステムH2を備えている点で第一実施形態と相違する。
【0054】
ヒートポンプシステムH2は、熱源系統60と、熱供給系統70と、温水ヒートポンプ40とを有している。
【0055】
熱源系統60は、第一冷水コイル21と、熱源水回路28と、空冷ヒートポンプ(サブヒートポンプ)61とを有している。
熱源水回路28は、第一冷水コイル21と温水ヒートポンプ40とを接続しており、具体的にはそれぞれ第一冷水コイル21と温水ヒートポンプ40とを連結する高温管路28aと低温管路28bとを有している。この熱源水回路28は、第一冷水コイル21と温水ヒートポンプ40とを接続して、これら第一冷水コイル21と温水ヒートポンプ40との間において、熱源水m2を循環させる。
【0056】
空冷ヒートポンプ61は、外気との間で熱の授受を行って、熱源水m2を加熱及び冷却可能であり、第一冷水コイル21、温水ヒートポンプ40、熱供給系統70に切替接続可能になっている(後述する)。
この空冷ヒートポンプ61は、それぞれ導入管63aと導出管63bとを介して、第一冷水コイル21に接続されている。空冷ヒートポンプ61は、第一冷水コイル21との間で循環する熱源水m2を冷却する。
【0057】
熱供給系統70は、再生用温水コイル31と、暖房用温水コイル(第二加熱部)71と、温水往ヘッダ72と、温水還ヘッダ73とを有している。
【0058】
再生用温水コイル31は、図3に示すように、再生用高温管路31aから流入した温水m3から熱を受け取ると共に、温水m3を再生用低温管路31bに送り出す。
【0059】
暖房用温水コイル71は、給気流路1のうちデシカント3と空調対象との間に配設されており、暖房用高温管路71aから流入した温水m3から熱を受け取ると共に、温水m3を暖房用低温管路71bに送り出す。
【0060】
温水往ヘッダ72の複数の入口の一つには、温水ヒートポンプ40の温水出口との間を接続する再生温水往路74aが配設されている。
温水往ヘッダ72の複数の入口の他の一つには、導出管63bに対して三方弁s1を介して接続された暖房温水往路75aが連結されている。
また、温水往ヘッダ72の出口には、管路76aが連結されている。
この管路76aは、三方弁s3を介して、再生用高温管路31aと暖房用高温管路71aとが連結されている。
【0061】
温水還ヘッダ73の入口には、管路76bが連結されている。
この管路76bには、再生用低温管路31bと暖房用低温管路71bとが連結されている。
温水還ヘッダ73の複数の出口の一つには、温水ヒートポンプ40の温水入口との間を接続する再生温水還路74bが配設されている。
温水還ヘッダ73の複数の出口の他の一つには、導入管63aに対して接続された暖房温水還路75bが連結されている。
【0062】
暖房温水往路75aと高温管路28aとの間には、分岐管62bが配設されている。この分岐管62bは、暖房温水往路75aに対して三方弁s6を介して接続されている。
暖房温水還路75bと低温管路28bとの間には、分岐管62aが配設されている。この分岐管62aは、低温管路28bに対して三方弁s2を介して接続されている。
【0063】
すなわち、ヒートポンプシステムH2は、三方弁s2を制御することにより、暖房温水還路75bを介して、低温管路28bと導入管63aと分岐管62aとを連通させて、分岐低温流路67aを構成可能である。この分岐低温流路67aは、低温管路28bから熱源水m2を分流させて空冷ヒートポンプ61に導入する。
同様に、三方弁s1,s6を制御することにより、暖房温水往路75aを介して、高温管路28aと導出管63bと分岐管62bとを連通させて、分岐高温流路67bを構成可能である。この分岐高温流路67bは、空冷ヒートポンプ61が加熱した熱源水m2を、高温管路28aを流れる熱源水m2に合流させる。
【0064】
次いで、上記の構成からなるデシカント空調システムS2及びヒートポンプシステムH2の作用について図4〜図7を用いて説明する。
図7は、デシカント空調システムS2の熱負荷量の年間推移グラフである。
図7に示すように、夏期と冬期との間の中間期においては、外気A1及び除湿空気A2を冷却するための冷熱負荷が、還気A4を再生温度にするための温熱負荷を下回る(但し、除湿空気A2の再熱用・暖房用の温熱負荷は0)。つまり、冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスとなる。
従って、温水ヒートポンプ40に流入する熱源水m2に熱を供給するために、以下の構成をとる。
【0065】
すなわち、夏期と冬期との中間期では、図4に示すように、熱源系統60において、三方弁s2及び三方弁s1,s6を制御することにより、分岐低温流路67aと分岐高温流路67bとをそれぞれ構成する。すなわち、第一冷水コイル21と温水ヒートポンプ40との間で熱源水m2を循環させると共に、温水ヒートポンプ40と空冷ヒートポンプ61との間で熱源水m2を循環させる。
一方、図4に示すように、熱供給系統70において、再生温水還路74b、温水還ヘッダ73、管路76b、再生用低温管路31bを連通させると共に、再生温水往路74a、温水往ヘッダ72、管路76a、三方弁s3、再生用高温管路31aを連通させる。すなわち、温水ヒートポンプ40と再生用温水コイル31との間で、温水m3を循環させる。
【0066】
熱源系統60においては、低温管路28bから熱源水m2の一部を分岐させて空冷ヒートポンプ61で加熱され、この加熱した熱源水m2が高温管路28aの熱源水m2に合流する。
より具体的には、第一冷水コイル21の入口において温度t11(例えば10℃)、出口で温度t12(例えば12℃)となる熱源水m2が、空冷ヒートポンプ61によって加熱された熱源水m2が合流することで、温水ヒートポンプ40の入口で温度t21(>t12,例えば15℃)、温水ヒートポンプ40の出口で温度t22(>t11,例えば10℃)となる。
【0067】
そして、温水ヒートポンプ40は、熱源水m2から受け取った熱を温水ヒートポンプ40の圧縮機40aの消費動力を加えて、温水m3に受け渡す。温水m3は、温水ヒートポンプ40の入口において温度t31(例えば55℃)となり、温水ヒートポンプ40の出口において温度t32(例えば65℃)となる。
【0068】
温水回路32を循環する温水m3は、温水ヒートポンプ40から受け取った熱を、再生用温水コイル31に供給する。再生用温水コイル31は、供給された熱を還気A4に加熱して還気A4を再生温度(例えば60℃)まで昇温させる。
【0069】
このように、冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスな場合であっても、温水ヒートポンプ40に流入する熱源水m2と温水m3との温度差が適切なものとなって、温水ヒートポンプ40が安定して稼働する。
【0070】
一方、夏期においては、図7に示すように、外気A1及び除湿空気A2を冷却するための冷熱負荷が、還気A4を再生温度にするための温熱負荷を上回る(但し、除湿空気A2の再熱用・暖房用の温熱負荷は0)。
この場合においては、図5に示すように、熱源系統60において、第一冷水コイル21と温水ヒートポンプ40との間で熱源水m2を循環させるのに加えて、第一冷水コイル21と空冷ヒートポンプ61との間でも熱源水m2を循環させ、空冷ヒートポンプ61において熱源水m2を冷却する。
具体的には、三方弁s1を制御することにより、導出管63bと暖房温水往路75aとの連通を遮断すると共に、三方弁s2を制御することにより、低温管路28bと分岐管62aとの連通を遮断して、空冷ヒートポンプ61を第一冷水コイル21に接続する。
このようにして、空冷ヒートポンプ61で冷却した熱源水m2を第一冷水コイル21に供給する(空冷ヒートポンプ61の出口における冷水温度t41(例えば7℃))。すなわち、空冷ヒートポンプ61で冷却された熱源水m2により、冷熱負荷が温熱負荷を上回った分を除去する。
【0071】
一方、冬期においては、図7に示すように、冷熱負荷と還気A4を再生温度にするための温熱負荷が0となる一方で、暖房用の温熱負荷が生じる。
この場合においては、図6に示すように、温水ヒートポンプ40の稼働を停止し、空冷ヒートポンプ61と暖房用温水コイル71との間で温水m3を循環させる。
具体的には、三方弁s1,s6を制御することにより、導出管63bと暖房温水往路75aとを連通させて温水往ヘッダ72と空冷ヒートポンプ61とを接続する。また、三方弁s2を制御することにより、低温管路28bと分岐管62aとの連通を遮断する。
一方、管路76a、三方弁s3、暖房用高温管路71aを連通させて温水往ヘッダ72と暖房用温水コイル71とを接続する。
このようにすることで、空冷ヒートポンプ61で加熱された温水m3が暖房用温水コイル71に供給され(空冷ヒートポンプ61の出口における温水温度t42(例えば40℃)、暖房用温水コイル71の入口の温度t51(例えば40℃)、出口の温度t52(例えば30℃))、給気A3に熱を付与して昇温させる。
このようにして、冬季においては、温水ヒートポンプ40を用いることなく、空冷ヒートポンプ61を用いて暖房用の温熱を供給する。
【0072】
以上説明したように、ヒートポンプシステムH2によれば、夏期と冬期との中間期においては、第一実施形態と同様に、熱源水m2と温水m3との温度差を、温水ヒートポンプ40の稼働に適した温度差にすることができるので、温水ヒートポンプ40を安定して稼働させることができる。
仮に、温熱負荷に対応した熱源水m2の温度が第一冷水コイル21の入口(温水ヒートポンプ40の出口)で10℃、出口(温水ヒートポンプ40の入口)で15℃にならなければいけない場合において、第一冷水コイル21の出口で12℃となったときには、熱源水m2の温度が漸次低下していき、温水ヒートポンプ40が運転できなくなってしまう。
しかしながら、ヒートポンプシステムH2によれば、熱源水m2の温度が、第一冷水コイル21の出口で12℃となったときにおいても、加熱した熱源水m2を合流させることで、温水ヒートポンプ40の入口で15℃に上昇させることができるので、温水ヒートポンプ40を安定して稼働させることができる。
【0073】
また、空冷ヒートポンプ61を有するので、熱源水m2と温水m3との温度差を比較的に細かく調整することが可能となる。
また、デシカント空調システムS2によれば、夏期用のシステム構成と冬期用のシステム構成を切り換えることが可能であるので、一年を通じて変動する冷熱負荷と、デシカント再生用・暖房用の温熱負荷とに対応させて、最適な空調をすることが可能となる。
また、温水ヒートポンプ40に流入する熱源水m2に対して、空冷ヒートポンプ61で加熱した熱源水m2を直接合流させることができるので、熱源水m2の温度制御が比較的に容易となる。また、既存の設備に対しても本発明を容易に適用することができる。
【0074】
図8は、デシカント空調システムS2の変形例S2Aの概略構成図である。
このデシカント空調システムS2Aは、導入管63a及び導出管63bが、それぞれ空冷ヒートポンプ61と温冷兼用コイル(熱源体)79とを接続している。すなわち、デシカント空調システムS2Aは、中間期において、温冷兼用コイル79に温水を供給して給気流路1の外気A1を昇温させ、昇温した外気A1を介して第一冷水コイル21と熱源水m2とを加熱する。一方、夏期においては、温冷兼用コイル79に冷水を供給して外気A1を冷却して、温熱負荷を超えた冷熱負荷を除去する。
この構成においても、上記のデシカント空調システムS2と同様の効果を得ることができる。
【0075】
〔第三実施形態〕
続いて、本発明の第三実施形態について説明する。
図9は本発明の第三実施形態に係る排熱利用システムS3の概略構成図である。なお、以下の説明及び以下の説明で用いる図面において、上述した実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
図9に示すように、排熱利用システムS3は、ヒートポンプシステムH3を備えている。ヒートポンプシステムH3は、熱源系統80と、熱供給系統90と、温水ヒートポンプ40とを有している。
【0077】
熱源系統80は、第一冷水コイル21が空調機81に配設されており、外気A1から回収した熱をターボ冷凍機23に供給する。
熱供給系統90は、温水コイル31が貯湯タンク91に配設されており、ターボ冷凍機23から供給された熱を、貯湯タンク91に貯留された湯に供給する。
【0078】
本実施形態に係るヒートポンプシステムH3においても、冷熱負荷と温熱負荷とがアンバランスであり、第一冷水コイル21及び第二冷水コイル22から熱源水m2が受ける熱量が、温水コイル31に供給する熱量に対して過小となる場合であっても、ターボ冷凍機23により熱源水m2の熱を増加させることができる。これにより、熱源水m2と温水m3との温度差を、温水ヒートポンプ40の稼働に適した温度差にすることができるので、温水ヒートポンプ40を安定して稼働させることができる。
【0079】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した各実施形態における配管構成は、他の配管構成に代えてもよい。
【符号の説明】
【0080】
3…デシカント(デシカント部)
20…熱源系統
21…第一冷水コイル(熱源体,第一冷却部)
22…第二冷水コイル(熱源体)
23…ターボ冷凍機(冷凍機)
24…密閉式冷却塔(冷却装置)
28a…高温管路
28b…低温管路
30…熱供給系統
31…再生用温水コイル,温水コイル(熱供給体)
40…温水ヒートポンプ(メインヒートポンプ)
60…熱源系統
61…空冷ヒートポンプ(サブヒートポンプ)
67a…分岐低温流路
67b…分岐高温流路
70…熱供給系統
71…暖房用温水コイル(第二加熱部)
79…温冷兼用コイル(熱源体)
A1…外気
A4…還気
H1,H2,H3…ヒートポンプシステム
S1,S2,S2A,S3…デシカント空調システム
m1…冷水(第三熱媒体)
m2…熱源水(第一熱媒体)
m3…温水(第二熱媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲から熱を回収する熱源体を有し、前記熱源体が回収した熱を受ける第一熱媒体が循環する熱源系統と、
前記熱源体が回収した熱の供給対象となる熱供給体を有し、前記熱供給体に熱を供給する第二熱媒体が循環する熱供給系統と、
前記第一熱媒体と前記第二熱媒体とが導入され、前記熱源体が回収した熱を、前記第一熱媒体から前記第二熱媒体に移動させるメインヒートポンプと、を備えるヒートポンプシステムであって、
前記熱源系統は、前記メインヒートポンプに導入される前記第一熱媒体を加熱する加熱装置を有することを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記熱源体との間で第三熱媒体を循環させる一方、前記メインヒートポンプとの間で前記第一熱媒体を循環させる冷凍機であり、
前記冷凍機は、前記第三熱媒体を介して、前記熱源体が回収した熱を前記第一熱媒体に受け渡すと共に、排熱を前記第一熱媒体に加えて加熱することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記熱源系統は、前記メインヒートポンプから前記冷凍機に向けて流れる前記第一熱媒体を冷却する冷却装置を備えることを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記熱源系統は、前記熱源体と前記メインヒートポンプとの間で前記第一熱媒体を循環させており、
前記加熱装置は、前記熱源体に導入される前記第一熱媒体を加熱するサブヒートポンプであることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記熱源系統は、前記熱源体から前記メインヒートポンプに向けて前記第一熱媒体が流れる高温流路と、
前記メインヒートポンプから前記熱源体に向けて前記第一熱媒体が流れる低温流路と、
前記低温流路に接続され、前記低温流路から前記第一熱媒体を分流させて前記サブヒートポンプに導入する分岐低温流路と、
前記高温流路に接続され、前記サブヒートポンプで加熱された前記第一熱媒体を、前記上流流路を流れる前記第一熱媒体に合流させる分岐高温流路と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプシステム。
【請求項6】
外部から流入した外気を空調対象に給気する給気流路と、
前記空調対象から流入した還気を外部に排気する排気流路と、
前記給気流路を通過する前記外気から水分を吸着すると共に、前記排気流路を通過する前記還気に前記吸着した水分を脱着するデシカント部と、
前記給気流路のうち前記デシカント部と前記外部との間に設けられ、前記外気を冷却する第一冷却部と、
前記排気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、少なくとも前記デシカント部が前記水分を脱着する再生温度まで前記還気を加熱する第一加熱部と、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載のヒートポンプシステムと、を備えるデシカント空調システムであって、
前記熱源体は、前記第一冷却部を備え、
前記熱供給体は、前記第一加熱部を備えることを特徴とするデシカント空調システム。
【請求項7】
外部から流入した外気を空調対象に給気する給気流路と、
前記空調対象から流入した還気を外部に排気する排気流路と、
前記給気流路を通過する前記外気から水分を吸着すると共に、前記排気流路を通過する前記還気に前記吸着した水分を脱着するデシカント部と、
前記給気流路のうち前記デシカント部と前記外部との間に設けられ、前記外気を冷却する第一冷却部と、
前記排気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、少なくとも前記デシカント部が前記水分を脱着する再生温度まで前記還気を加熱する第一加熱部と、
前記給気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、前記外気を加熱する第二加熱部と、
請求項6に記載のヒートポンプシステムと、を備えるデシカント空調システムであって、
前記熱源体は、前記第一冷却部を備え、
前記熱供給体は、前記第一加熱部を備え、
前記サブヒートポンプは、前記第一冷却部に切替接続可能であり、前記メインヒートポンプから独立して前記第一熱媒体を循環させ、前記メインヒートポンプと共に前記第一冷却部を介して前記外気を冷却させることを特徴とするデシカント空調システム。
【請求項8】
外部から流入した外気を空調対象に給気する給気流路と、
前記空調対象から流入した還気を外部に排気する排気流路と、
前記給気流路を通過する前記外気から水分を吸着すると共に、前記排気流路を通過する前記還気に前記吸着した水分を脱着するデシカント部と、
前記給気流路のうち前記デシカント部と前記外部との間に設けられ、前記外気を冷却する第一冷却部と、
前記排気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、少なくとも前記デシカント部が前記水分を脱着する再生温度まで前記還気を加熱する第一加熱部と、
前記給気流路のうち前記デシカント部と前記空調対象との間に設けられ、前記外気を加熱する第二加熱部と、
請求項6又は7に記載のヒートポンプシステムと、を備えるデシカント空調システムであって、
前記熱源体は、前記第一冷却部を備え、
前記熱供給体は、前記第一加熱部を備え、
前記サブヒートポンプは、前記第二加熱部との間で前記第一熱媒体を循環させるように前記第二加熱部に切替接続可能であり、前記メインヒートポンプが停止していることを条件として、加熱した前記第一熱媒体を前記第二加熱部に供給することを特徴とするデシカント空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−159235(P2012−159235A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18967(P2011−18967)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】