説明

ヒートポンプユニットを備えた空調システム

【課題】簡易な構成で、省エネタイプの空調システムとすること。
【解決手段】圧縮機3、管内に冷媒が流れ管外のフィン表面に外気が流れる二つの熱交換器A,B、これら二つの熱交換器の間に配置した膨張弁5及び四方弁4を備え、この四方弁を操作し、二つの前記熱交換器をそれぞれ外気の湿気を吸着する吸着モードと吸着剤の脱着モードとの切替を交互に行うヒートポンプユニット1と、前記熱交換器の一方の吸着モード側から排出する除湿空気を冷却する間接式気化冷却器2と、前記熱交換器の吸着モード側から排出する除湿外気を前記間接式気化冷却器への供給と、前記熱交換器の脱着モード側から排出する外気を大気中への排気とに切り替える切替弁10,11と、を備え、前記切替弁が前記ヒートポンプユニットの四方弁と連動し、吸着モード時に前記熱交換器から除湿された外気を前記間接式気化冷却器に供給するヒートポンプユニットを備えた空調システムの構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭や自動車の空調システム等に使用されるヒートポンプを利用したエコ・システムのヒートポンプユニットを備えた空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプを利用した空調システムは多く利用されている。しかし、この場合の熱交換用の加熱空気は都市ガスや電気温水器による加温水が利用されているのが殆どで、咋今の排出CO2の問題が叫ばれている現状には適さないものであった。
また、冷媒を圧縮する圧縮器、冷媒から放熱させる凝縮部、冷媒を膨張させる膨張弁、冷媒に吸熱させる蒸発部の順に冷媒を循環する冷媒回路を備えたヒートポンプシステムにおいて蒸発部と膨張弁との間に低温側熱交換器を配置して冷気を車内に供給するようにしたものが知られている(特開2008−185245号公報)。
【0003】
空調システムにおいて、除湿器として一般的に円形で除湿剤を充填した除湿ローターを回転して使用しているものも知られている。しかしこれら回転型のために空気通路(通風路)は断面形状が円形であり、装置が大型になっている。また、回転する除湿ローターへ空気流を送り込む部分の動シールが必要であって、回転機構部分の構成も複雑で高価なものとなっている。特に、蓄電池と内燃機関エンジンを搭載したハイブリッド型自動車においては、蓄電池を装備し、この電気量によってモータを回動して自動車を動かすものであるから、蓄電池の容量には限りがあるため、蓄電池の電気は自動車の動力源として使用する以外の目的(例えば、車内エアコン、除湿ローターの電動モータ)には極力電気の使用量を最小に抑える必要がある。
【0004】
自動車用の空気調節(以下空調と称す)器としては、一般に圧縮器による空調システムが使用され、この圧縮器は自動車のガソリンエンジン(内燃機関)を動力として動かしている。しかし、ハイブリット車においては自動車を動かす動力源の一部は蓄電池であり、この蓄電池の電気量を使用して圧縮器のモータを駆動した場合、使用電気量が増加し、蓄電池の電気量による走行距離が短縮されることになる。従って、ハイブリット車においては従来のエンジン式のような空調システムの使用は困難である。一方、圧縮器による空調は、過冷却方式であり、過冷却による除湿、冷却を行う方式であるために相当なエネルギーを使用することになっている。
【0005】
【特許文献1】 特開平05−164359公報図面
【特許文献2】 特開2008−185245号公報第1頁
【0006】
特許文献1は回転ローターを使用しない一般的な静止型除湿器である。この静止型除湿器は可逆的な吸湿と放湿とが可能なもので動シールや回転機構部分が不要で簡素な構成をとり、製造も比較的容易である。この除湿剤としてシリカゲル、ゼオライト、高分子ポリマー、活性アルミナ等が用いられている。しかし、冷却効果が低く、効率的な空調システムではなかった。
特許文献2は冷媒回路に配置する低温型熱交換部がエネルギーの効率の点で適切でなく、CO2の削減には好ましいものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のヒートポンプユニットを備えた空調システムは、除湿ローターを使用せず、温度上昇した空気を冷却するに加湿せずに水の気化現象で顕熱(温度)だけを下げる冷却方法にし、エネルギーを使用せずに冷却が可能としたものである。
本発明は、間接式気化冷却器を使用して、ヒートポンプユニットにより電気使用量を極力小さくすることを目的とするものである。
【0008】
本発明は、除湿した外気についてエネルギーを使用せず、水の気化現象による空気を冷却することでシステム全体のエネルギー効率を更に向上させ、省エネルギーを図ることができるヒートポンプユニットと間接式気化冷却器を備えた空調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、以下の構成によって達成できる。
圧縮機、管内に冷媒が流れ管外の表面に外気が流れる二つの熱交換器、これら二つの熱交換器の間に配置した膨張弁及び四方弁を備え、この四方弁を操作し、二つの前記熱交換器をそれぞれ外気の湿気を吸着する吸着モードと吸着剤の脱着モードとの切替を交互に行うヒートポンプユニットと、前記熱交換器の一方の吸着モード側から排出する除湿外気を冷却する間接式気化冷却器と、前記熱交換器の吸着モード側から排出する除湿外気を前記間接式気化冷却器への供給と、前記熱交換器の脱着モード側から排出する外気を大気中への排気とに切り替える切替弁と、を備え、前記切替弁が前記ヒートポンプユニットの四方弁と連動し、吸着モード時に前記熱交換器から除湿された外気を前記間接式気化冷却器に供給し、この冷却された冷気を室内に供給するヒートポンプユニットを備えた空調システムの構成である。
【0010】
本発明の前記課題は、請求項1における前記熱交換器が直膨コイルを使用したフィン・コイル熱交換器である構成、また、前記フィン・コイル熱交換器のフィンの表面に吸着剤層を被覆してある構成のヒートポンプユニットを備えた空調システムの構成で達成できる。
【0011】
本発明の前記課題は、圧縮機、管内に冷媒が流れ、管外の表面に外気が流れる二つの熱交換器、これら二つの熱交換器の間に膨張弁及び四方弁を配置し、この四方弁を操作し、二つの前記熱交換器を外気の湿気を吸着する吸着モードと吸着剤の脱着モードとの切替を交互に行うヒートポンプユニットと、前記熱交換器の一方の吸着モード側から排出する除湿外気を冷却する間接式気化冷却器と、前記熱交換器の吸着モード側から排出する除湿外気を前記間接式気化冷却器への供給と、前記熱交換器の脱着モード側から排出する外気を大気中に排気とに切り替える切替弁と、を備え、前記切替弁が前記ヒートポンプユニットの四方弁と連動し、吸着モード時に前記熱交換器から除湿された外気を前記間接式気化冷却器に供給し、この冷却された冷気を車室内に供給する除湿剤を再生する自動車用の空調システムの構成によって達成できる。
【0012】
従来のヒートポンプ方式による空調機では、圧縮器の蒸発器の蒸発温度を5℃程度迄下げる事により、外気の潜熱(湿度)と顕熱(温度)を過冷却により下げる方式がとられている。その為に圧縮器の容量が大きくなり、蒸発温度が低ければ低い程エネルギー効率(COP)は悪くなる。
本発明では、圧縮器及び蒸発器を使用しているが外気の潜熱処理(湿度処理)は蒸発器であるフィン・コイル直膨コイルのフィンにコーティングされた除湿剤が空気中の水分を吸着する事で、除湿剤に除湿をさせる為に圧縮器を過冷却運転させる必要がなくなる。又、蒸発器も蒸発温度を高くして使用する事になるので、圧縮器の容量を小さくでき、蒸発温度を上げて使用する為にCOPが高くなる。
除湿剤が吸着した水分を除湿剤より脱着(再生)させる為には、除湿剤に温風を与えて再生させる必要がある。この温風として本発明のシステムで使用される凝縮器の凝縮排熱(40℃〜60℃位)を利用できる。凝縮排熱は従来のシステムでは大気に捨てられる熱である。この熱の利用は排熱利用である為、システム全体のCOPを高める事に貢献する。
除湿剤は一定量の水分を吸着するとそれ以上は再生無しでは吸着しなくなる為に、再生させる為には、本システムの冷媒ガスの流れを四方弁により逆流させる事により、蒸発器と凝縮器が一定時間(3〜5分程度)毎に交互に働きをする事となる。
【0013】
本発明のシステムに使用する除湿剤としては、低温(40℃〜50℃)で再生可能な除湿剤を使用しなければならない。
現状では特許第3944233号に開示されているスポンジ酸化チタンが最適と思われる。その他活性アルミナ、ゼオライト等の吸着剤も使用の可能性はある。
【0014】
本発明のシステムに利用される圧縮器は除湿、冷却の為の過冷却運転は行う必要がないので、蒸発器を通過した空気は除湿されているが温度としては、
30℃位ある為に空調(冷却)に使うには温度が高すぎる。温度を更に20℃以下に下げる為には、顕熱(温度)を下げる為の専用の空調機が別途必要になる。
本システムでは、エネルギーを使用する別途空調機を使用せずに、エネルギーを使用せずに水の気化現象だけで温度を下げる事のできる間接式気化式冷却器を使用する事で大きな省エネとなり全体のCOPが高くなる。
【0015】
本発明の室内または車内に供給する除湿された外気は前記間接式気化冷却器を使用してあるから、この間接式気化冷却器は水の気化熱を利用した構成であり、これらの冷却器については本発明出願人が先に出願した特開2004−190907号公報、特開2004−340551号公報、特開2008−101890号公報などに記載される間接式気化冷却器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のヒートポンプユニットを備えた空調システムは、吸着モード時に排出される外気を除湿すると共にこれを通過した空気が別途空調機を使用せず水だけによる間接式気化冷却器で冷却されて室内または車内に供給されるから通常のヒートポンプの気化部(圧縮器)の冷却に比較して電気の使用量を大幅に低減できる。
【0017】
本発明の空調システムは、空調装置による室内または車内に給気する冷気の冷却用として圧縮器を使用せず、しかもヒートポンプの熱交換器の凝縮排熱の除湿剤の再生に使用するので従来の冷却システムに比較して大幅にエネルギーの使用を低減できる。
【0018】
本発明は、蓄電池の蓄電容量に限度のある電気自動車又は、ハイブリット型自動車などにおける空調に使用する電気容量を最小限にすることができる。
本発明の空調システムは、従来の自動車用の空調に使用する電気容量(圧縮器の容量)を約1/2〜1/3程度にすることが可能である。
圧縮器の容量を約1/2〜1/3にすることは、使用する冷媒ガスの使用量も少なくすることとなるので、炭酸ガス(CO2)削減効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るヒートポンプユニットを備えた空調システムの実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係わる空調システムの第1の実施形態の概略を示す空調システム構造図、図2は図1の実施形態の性能シュミーレーションを示す構造図である。
【0020】
本発明の空調システムについて第1の実施形態を説明する。
本発明の空調システムはヒートポンプユニット1と間接型気化冷却器2とから構成されている。
二つの熱交換器A,Bを備えたヒートポンプユニット1に圧縮器3が配設され、二つの熱交換器A,Bの間に四方弁4を配置すると共にこの熱交換器A,Bの間に膨張弁5を配置してある。この熱交換器A,Bは直膨コイルを使用したフィン・コイル熱交換器である。例えば、特開2001−116480号公報に記載のものなどである。このフィン・コイル熱交換器のフィンの表面には吸湿剤が被覆されて吸着剤層を形成してある。この吸着剤層はフィンの外側伝熱面を被覆するように吸着材をコーティングしてある。この吸着剤としてスポンジ酸化チタン、シリカゲル、ゼオライト、高分子ポリマー、活性アルミナ等である。特に好ましいいのは、スポンジ酸化チタンが最適と思われる。
【0021】
ヒートポンプユニット1の二つの熱交換器A,Bに供給する外気は送風機6によって取入口8(9)から流入する。ヒートポンプユニット1を通過し、脱着モード又は吸着モードにより処理された外気は間接式気化冷却器2側に送られる。
脱着モード、すなわち、熱交換器Aの凝縮部において加熱された空気によって吸着剤が再生され、間接式気化冷却器2側に送られるが、加熱された外気は切替弁10によって大気中に放出される。
【0022】
一方、吸着モードの場合は、取入口9(8)から送風機7によって吸引され、この外気は熱交換器Bにおいて水分が吸着されて除湿され温度が下がり、間接式気化冷却器2側に送られ、切替弁11によって間接式気化冷却器2を経て、室内または自動車内に送られる。
【0023】
本発明のヒートポンプユニットの冷媒回路は圧縮器3、熱交換器A、膨張弁5、熱交換器Bからなり熱交換器Aと熱交換器Bとの間に四方弁4を配置してある。この四方弁4によって熱交換器Aと熱交換器Bとを交互に凝縮部と蒸発部とに切り替えて熱交換器のフィン外壁に吸着した除湿剤(吸着剤)を再生する脱着モード、外気の湿気を吸着する吸着モードに切り替えて継続して運転することができる。
この四方弁4の切替操作に連動して切替弁10、11が作動して、外気の進路を決定している。
【0024】
熱交換器A,Bを通過した空気は切替弁10,11を介在して1つの間接式気化冷却器2に供給するようになっている。この切替弁10,11によって除湿剤の再生工程が行われた外気は大気中に排出するためのものである。
【0025】
本発明の間接式気化冷却器2による冷却は、給気を加湿することなく、顕熱のみを下げるので吸入した空気の絶対湿度は変わらないが、この間接式気化冷却器2を通過した空気の相対湿度は上昇している。これによって空気の絶対湿度は変わらないで顕熱は下がり、冷却される。この調温、調湿された空気が室内または自動車の車内に給気されることになる。
【0026】
本発明の空調システムの図2に示す性能シュミーレーションにおいて説明する。
図2に示すように、脱着モード側では、35℃、湿度19g/kgの外気を送風機9によってヒートポンプユニット1の熱交換器A(凝縮部)で加温され、温度40℃、湿度25g/kgとなり、切替弁10によって大気中に飛散させる。
一方、吸着モード側では、外気(大気)35℃、湿度19g/kgを送風機10によって吸引された外気(大気)は、熱交換器Bの蒸発部において冷却除湿され、外気は30℃湿度9.5g/kgとなり、この外気は切替弁11の作用によって、間接式気化冷却器2に送られ、調整されて室(車)内に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】 本発明に係わる汎用空調システムの第1の実施形態の概略を示すシステム構造図である。
【図2】 図1の実施形態の性能シュミーレーションを示す構造図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ヒートポンプユニット
2 間接式冷却器
3 圧縮器
4 四方弁
5 膨張弁
6、7 送風機
8、9 取入口
10、11 切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、管内に冷媒が流れ管外の表面に外気が流れる二つの熱交換器、これら二つの熱交換器の間に配置した膨張弁及び四方弁を備え、この四方弁を操作し、二つの前記熱交換器をそれぞれ外気の湿気を吸着する吸着モードと、吸着剤の脱着モードとの切替を交互に行うヒートポンプユニットと前記熱交換器の一方の吸着モード側から排出する除湿外気を冷却する間接式気化冷却器と、前記熱交換器の吸着モード側から排出する除湿外気を前記間接式気化冷却器への供給と、前記熱交換器の脱着モード側から排出する外気を大気中への排気とに切り替える切替弁とを備え、前記切替弁が前記ヒートポンプユニットの四方弁と連動し、吸着モード時に前記熱交換器から除湿された外気を前記間接式気化冷却器に供給し、この冷却された冷気を室内に供給することを特徴とするヒートポンプユニットを備えた空調システム。
【請求項2】
前記熱交換器はフィン・コイルの直膨コイルを使用し、フィンの表面に吸着剤層を被覆してあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒートポンプユニットを備えた空調システム。
【請求項3】
圧縮機、管内に冷媒が流れ、管外の表面に外気が流れる二つの熱交換器、これら二つの熱交換器の間に膨張弁及び四方弁を配置し、この四方弁を操作し、二つの前記熱交換器を外気の湿気を吸着する吸着モードと吸着剤の脱着モードとの切替を交互に行うヒートポンプユニットと前記熱交換器の一方の吸着モード側から排出する除湿外気を冷却する間接式気化冷却器と、前記熱交換器の吸着モード側から排出する除湿外気を前記間接式気化冷却器への供給と、前記熱交換器の脱着モード側から排出する外気を大気中に排気とに切り替える切替弁とを備え、前記切替弁が前記ヒートポンプユニットの四方弁と連動し、吸着モード時に前記熱交換器から除湿された外気を前記間接式気化冷却器に供給し、この冷却された冷気を車室内に供給することを特徴とする自動車用の空調システム。
【請求項4】
前記熱交換器はフィン・コイルの直膨コイルを使用し、フィンの表面に吸着剤層を被覆してあることを特徴とする請求項2に記載の自動車用の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−121920(P2010−121920A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318947(P2008−318947)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(599073490)株式会社アースクリーン東北 (25)
【Fターム(参考)】