説明

ヒートポンプ給湯機

【課題】水熱交換器におけるスケールの析出を効果的に抑制できるヒートポンプ給湯機を提供する。
【解決手段】ヒートポンプ給湯機11は、タンク15と、水熱交換器21を有する冷媒回路10と、導水路27,29と、導水路27,29を含む水の流路において水熱交換器21よりも上流側の水路内に設けられた電極対49を有する電気分解装置41と、電気分解装置41において電極対49の極性を反転させるとともに、極性が反転してから予め定められた条件が満たされるまでの間に電気分解装置41において処理された水を、水熱交換器21よりも上流位置において排出する反転時初期運転を実行する制御部33と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解装置を備えたヒートポンプ給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒートポンプ給湯機は、水を貯留するタンクと、冷媒との熱交換により水を加熱する水熱交換器を有する冷媒回路と、タンクに貯留された水を水熱交換器に送り、水熱交換器において加熱された水をタンクに戻す導水路とを備えている。このヒートポンプ給湯機では、タンクに貯留される水は、通常、水道水や井戸水などを給水源としている。
【0003】
水道水や井戸水には、スケールの発生原因となるカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの成分(以下、スケール成分という。)が含まれている。したがって、ヒートポンプ給湯機においては、カルシウム塩、マグネシウム塩などのスケールが析出する。特に、井戸水などの地下水は、水道水と比べて前記スケール成分の濃度が高く、スケールが生じやすい水質を有している。また、水熱交換器では、水が加熱されて水の温度が高くなるので、特にスケールが析出しやすい。スケールが水熱交換器における管の内面に析出して堆積すると、水熱交換器の伝熱性能が低下する、管の流路が狭くなるなどの問題が生じることがある。
【0004】
例えば特許文献1には、燃焼ガスの流路内に燃焼ガスと水との熱交換器を設けた給湯器が開示されている。この給湯器では、熱交換器の給水入口側の配管に電極式スケール成分沈殿析出装置が設けられている。特許文献1では、電極式スケール成分沈殿析出装置においてスケール成分の一部を電極の表面に析出させることにより、熱交換器においてスケールが堆積するのを防止できる、とされている。また、電極式スケール成分沈殿析出装置の電極の電位をある設定時間毎に反転させることにより、電極の表面に析出したスケールを電極の表面から剥離させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−170747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来の方法では、水熱交換器におけるスケールの析出を抑制する効果が十分に得られない場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水熱交換器におけるスケールの析出を効果的に抑制できるヒートポンプ給湯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヒートポンプ給湯機は、水を貯留するタンク(15)と、冷媒との熱交換により水を加熱する水熱交換器(21)を有する冷媒回路(10)と、前記タンク(15)に貯留された水を前記水熱交換器(21)に送り、前記水熱交換器(21)において加熱された水を前記タンク(15)に戻す導水路(27,29)と、前記導水路(27,29)を含む水の流路において前記水熱交換器(21)よりも上流側の水路内に設けられた電極対(49)を有する電気分解装置(41)と、前記電気分解装置(41)において前記電極対(49)の極性を反転させるとともに、極性が反転してから予め定められた条件が満たされるまでの間に前記電気分解装置(41)において処理された水を、前記水熱交換器(21)よりも上流側に位置する上流位置において排出する反転時初期運転を実行する制御部(33)と、を備えている。
【0009】
この構成では、前記反転時初期運転が実行されるので、水熱交換器(21)におけるスケールの析出を効果的に抑制できる。具体的には次の通りである。
【0010】
電極対(49)の極性反転直後の初期段階においては、陽極(反転前は陰極)に付着しているスケールが溶解することにより、一時的にスケール成分の濃度が極性反転時よりも高くなる。このようにスケール成分濃度の高い水が水熱交換器(21)に送られると、かえって水熱交換器(21)におけるスケールの析出が助長されることがある。
【0011】
そこで、本構成では、前記反転時初期運転を実行することにより、スケール成分濃度の高い水を水熱交換器(21)よりも上流位置において排出する。これにより、スケール成分濃度の高い水が水熱交換器(21)に送られるのを防止することができるので、水熱交換器(21)においてスケールが析出するのを効果的に抑制できる。
【0012】
前記ヒートポンプ給湯機において、前記制御部(33)は、前記反転時初期運転において、前記電気分解装置(41)の前記水路に水が出入りするのを阻止した状態で前記電極対(49)に電圧を印加して前記水路内の水を処理し、前記条件が満たされたと判断すると、処理された水を前記上流位置において排出するように制御するのが好ましい。
【0013】
この構成では、電気分解装置(41)における水路に水が出入りするのを阻止した状態で電極対(49)に電圧を印加して水路内の水を処理し、前記条件が満たされると、水路において処理された水を前記上流位置において排出するというバッチ処理が行われるので、反転時初期運転に排出する水の量を最小限に抑えることができる。
【0014】
前記ヒートポンプ給湯機において、前記制御部(33)は、前記水熱交換器(21)において水を加熱する沸上げ運転が完了した後、前記電気分解装置(41)内の水を電解質濃度のより高い水に入れ替えて前記反転時初期運転を実行するのが好ましい。
【0015】
沸上げ運転が完了した後に反転時初期運転を実行する場合において、沸上げ運転完了後に電気分解装置(41)内に存在する水は、電気分解装置(41)において処理されてスケール成分の濃度が低減された水であるため、電解質濃度が比較的低い。したがって、この状態のまま反転時初期運転を実行すると電気分解の効率が低くなる場合がある。
【0016】
この構成では、電気分解装置(41)内の水を電解質濃度のより高い水に入れ替えて前記反転時初期運転を実行するので、反転時初期運転における電気分解の効率が低くなるのを抑制できる。
【0017】
また、この構成では、沸上げ運転が完了した後に前記反転時初期運転を実行するので、反転時初期運転のために沸上げ運転を中断する必要がない。したがって、反転時初期運転を実行することに起因して沸上げ運転の効率(ヒートポンプの効率)が低下するのを防止できる。
【0018】
前記ヒートポンプ給湯機において、前記電気分解装置(41)は、水を外部に排出するための排出部(61)をさらに有し、前記制御部(33)は、前記反転時初期運転において、前記条件が満たされたと判断すると、前記電気分解装置(41)内の水が前記排出部(61)を通じて排出されるように制御するのが好ましい。
【0019】
この構成では、電気分解装置(41)に排出部(61)が設けられているので、極性反転から前記条件が満たされるまでの間に前記電気分解装置(41)において処理された水を、確実に水熱交換器(21)よりも上流位置おいて排出することができる。
【0020】
前記ヒートポンプ給湯機において、前記制御部(33)は、前記反転時初期運転が完了した後、前記電気分解装置(41)内に注水し、前記電気分解装置(41)において水の出入りを阻止した状態で予め定められた第2条件が満たされるまで前記電極対(49)に電圧を印加する第2初期運転をさらに実行するのが好ましい。
【0021】
反転時初期運転完了後に電気分解装置(41)内に注水された水は、スケール成分の濃度が高い場合がある。一方、沸上げ運転時には電気分解装置(41)の水路に水を流通させながら電気分解が行われる。したがって、反転時初期運転完了後に電気分解装置(41)内に注水された水の一部は、処理されることなく電気分解装置(41)から出てしまう。
【0022】
そこで、この構成では、前記第2初期運転を実行して電気分解装置(41)内のスケール成分の濃度を予め低下させておくことにより、その後に実行される沸上げ運転において水熱交換器(21)にスケール成分濃度の高い水が送られるのを抑制できる。
【0023】
具体的には、例えば、前記制御部(33)は、前記第2初期運転において前記電極対(49)に対する電圧の印加が開始されてからの経過時間が予め定められた第2基準時間に達したとき、又は前記第2初期運転において処理された水の水質が予め定められた第2基準値に達したときに、前記第2条件が満たされたと判断する。
【0024】
前記ヒートポンプ給湯機において、前記制御部(33)は、前記反転時初期運転において、前記電極対(49)の極性が反転してから前記条件が満たされるまで、前記電気分解装置(41)に水を供給するとともに前記電気分解装置(41)において処理された水を前記上流位置において排出しながら、前記電極対(49)に電圧を印加するように制御してもよい。
【0025】
この構成では、前記反転時初期運転において、電極対(49)の極性が反転してから前記条件が満たされるまで、電気分解装置(41)に水を供給するとともに電気分解装置(41)において処理された水を前記上流位置において排出しながら、電極対(49)に電圧を印加するという逐次処理が行われる。この場合、電気分解装置(41)において水の出入りを阻止した状態で反転時初期運転を実行する場合に比べて、簡単な制御で反転時初期運転を実行することができる。
【0026】
具体的に、例えば前記上流位置に、前記電気分解装置(41)において処理された水を排出するための排出路(81)が設けられている形態が例示できる。さらに具体的には、前記排出路(81)は、前記水熱交換器(21)よりも上流側に位置する前記導水路(27)から分岐する分岐路(81)であり、前記制御部(33)は、前記反転時初期運転において、前記電極対(49)の極性が反転してから前記条件が満たされるまで、前記電気分解装置(41)において処理された水を前記分岐路(81)を通じて排出するように制御する形態が例示できる。
【0027】
前記ヒートポンプ給湯機において、前記制御部(33)は、例えば前記反転時初期運転において前記電極対(49)の極性が反転してからの経過時間が予め定められた基準時間に達したときに前記条件が満たされたと判断してもよい。この場合、特に水の水質を検知するためのセンサなどを設ける必要がない。
【0028】
また、前記制御部(33)は、例えば前記反転初期運転において処理された水の水質が予め定められた基準値に達したときに前記条件が満たされたと判断してもよい。この場合には、上述の基準時間に基づいて判断する場合に比べて、スケール成分濃度の高い水が水熱交換器(21)に送られるのをより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明のヒートポンプ給湯機では、水熱交換器におけるスケールの析出を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るヒートポンプ給湯機を示す構成図である。
【図2】前記ヒートポンプ給湯機の電気分解装置の一例を示す断面図である。
【図3】電気分解時間と水の硬度の関係を示すグラフである。
【図4】前記ヒートポンプ給湯機の制御例1を示す概略図である。
【図5】前記ヒートポンプ給湯機の制御例2を示す概略図である。
【図6】前記ヒートポンプ給湯機の制御例3を示す概略図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るヒートポンプ給湯機の制御例4を示す概略図である。
【図8】前記ヒートポンプ給湯機の電気分解装置の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1実施形態]
<ヒートポンプ給湯機>
以下、本発明の第1実施形態に係るヒートポンプ給湯機11ついて図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態に係るヒートポンプ給湯機11は、ヒートポンプユニット13と、貯湯ユニット17と、電気分解装置41と、これらを制御するコントローラ32とを備えている。
【0032】
ヒートポンプユニット13は、冷媒回路10を備えており、冷媒回路10は、圧縮機19、水熱交換器21、電動膨張弁23、空気熱交換器25、及びこれらを接続する配管により構成されている。本実施形態では、ヒートポンプユニット13を循環する冷媒として二酸化炭素を用いている。冷媒は、水熱交換器21において貯湯ユニット17を循環する水と熱交換してこの水を加熱し、空気熱交換器25において外気と熱交換して外気から熱を吸収する。
【0033】
貯湯ユニット17は、水を貯留するタンク15と、ポンプ31とを有している。タンク15と水熱交換器21とは、導水路により接続されている。前記導水路は、タンク15の水を水熱交換器21に送る入水配管27と、水熱交換器21と熱交換して加熱された水をタンク15に戻す出湯配管29とを含む。入水配管27には、水を送液するためのポンプ31が設けられている。ポンプ31は、タンク15内の水を、タンク15の下部から入水配管27に流出させ、水熱交換器21および出湯配管29をこの順に通過させてタンク15の上部に戻す。
【0034】
タンク15には給水配管37と給湯配管35とが接続されている。給湯配管35は、タンク15の上部に接続されている。この給湯配管35は、タンク15内に貯留された高温の水を取り出して浴槽などへ給湯するためのものである。給水配管37は、タンク15の底部に接続されている。この給水配管37は、給水源からタンク15内に低温の水を給水するためのものである。タンク15へ水を給水する給水源としては、例えば水道水や、井戸水などの地下水を利用することができる。本実施形態の給湯機11は、給湯配管35から給湯された水をタンク15に戻さない一過式の給湯機である。
【0035】
電気分解装置41は、入水配管27における水熱交換器21よりも上流側の位置でポンプ31の下流側の位置に設けられている。電気分解装置41は、後述する複数の電極対49を有している(図2参照)。
【0036】
コントローラ32は、制御部33と、メモリ(記憶部)34とを有している。メモリ34には、沸上げ運転のスケジュール、電気分解装置41からスケールを排出する時期、電極対49の極性を反転させる時期などが記憶されている。制御部33は、メモリ34に記憶された沸上げ運転のスケジュールに基づいてタンク15内の水を沸き上げる沸上げ運転を制御する。また、制御部33は、電気分解装置41における電極対49の極性を反転させる制御、電気分解装置41からスケールを排出する制御などを実行する。電気分解装置41に関するこれらの制御については後述する。
【0037】
次に、ヒートポンプ給湯機11の動作について説明する。タンク15内の水を沸上げる沸上げ運転では、制御部33は、ヒートポンプユニット13の圧縮機19を駆動させ、電動膨張弁23の開度を調節するとともに、貯湯ユニット17のポンプ31を駆動させる。これにより、図1に示すように、タンク15の底部に設けられた出水口からタンク15内の低温の水が入水配管27を通じて水熱交換器21に送られ、水熱交換器21において加熱される。加熱された高温の水は出湯配管29を通じてタンク15の上部に設けられた入水口からタンク15内に戻される。これにより、タンク15内には、その上部から順に高温の水が貯湯されていく。この沸上げ運転では、電気分解装置41によって水に含まれるスケール成分が除去される。
【0038】
本実施形態のヒートポンプ給湯機11は、一過式の給湯機である。この一過式の給湯機11では、給湯配管35から給湯された水(湯)は、ユーザーによって使用され、タンク15には戻らない。したがって、タンク15から給湯配管35を通じて給湯された水量とほぼ同じ量の水が給水源から給水配管37を通じてタンク15に給水される。すなわち、タンク15には、水道水や井戸水などの給水源からスケール成分を含む水がタンク15に補充される頻度が高く、補充される量も多い。したがって、一過式のヒートポンプ給湯機の場合には、循環式の前記冷却水循環装置や循環式の給湯機に比べて、効率よくスケール成分を除去する必要がある。
【0039】
<電気分解装置>
図2は、ヒートポンプ給湯機11に用いられる電気分解装置41の一例を示す断面図である。図2に示すように、電気分解装置41は、容器47と、複数の電極対49と、電源53とを備えている。各電極対49は、隣り合う電極板51,52により構成される。
【0040】
容器47は、略直方体の形状を有している。容器47は、水の流れの上流側に位置する第1壁部471と下流側に位置する第2壁部472と、これらの壁部471,472をつなぐ側壁部48とを有している。第1壁部471と第2壁部472は、側壁部48の延びる方向(複数の電極板51,52の配列方向)に対向している。
【0041】
側壁部48は、図2に示す第3壁部473と第4壁部474とを有している。第3壁部473と第4壁部474は、高さ方向(上下方向)に対向している。第3壁部473は、第4壁部474の下方に位置している。
【0042】
第3壁部473には、排出部としてのスケール排出口61が設けられている。スケール排出口61は、容器47の長手方向のほぼ中間位置に設けられている。スケール排出口61には排出管64が接続されている。排出管64には開閉弁65が設けられている。開閉弁65の開閉動作は、制御部33により制御される。
【0043】
第4壁部474には、ガス排出口62が設けられている。ガス排出口62は、容器47の長手方向の下流側(水流の下流側)の位置に設けられており、電気分解により生じるガスを容器47内から排出するためのものである。ガス排出口62には排出管66が接続されている。排出管66には図略の開閉弁が設けられている。この開閉弁の開閉動作は、制御部33により制御される。
【0044】
第1壁部471は、水の入口として機能する第1流通口43を有している。第2壁部472は、水の出口として機能する第2流通口45を有している。第1流通口43及び第2流通口45には、入水配管27がそれぞれ接続される。第1流通口43は、第1壁部471において、第4壁部474よりも第3壁部473に近い下方位置に設けられている。第2流通口45は、第2壁部472において、第3壁部473よりも第4壁部474に近い上方位置に設けられている。
【0045】
複数の電極板51,52は、容器47内に配設されている。複数の電極板51,52は、容器47の長手方向に沿って配列されている。電極板51,52の材料としては、チタン、白金、ニッケル、炭素、黒鉛、銅、ガラス質炭素などが例示できる。
【0046】
複数の電極板51,52は、電極板の厚み方向に、間隔をあけて配列されている。各電極板は、その配列方向とほぼ垂直な方向に延びる姿勢で配置されている。複数の電極板51,52の配列方向は、側壁部48の延びる方向(容器47の長手方向)とほぼ一致している。各電極対49の電極板51,52同士の間隔はほぼ同じである。複数の電極板51,52は、電源53の一方の極に接続される複数の第1電極板51と、電源53の他方の極に接続される複数の第2電極板52とを含む。
【0047】
第1電極板51は、第3壁部473に位置する基端部から第4壁部474に向かってそれぞれ延設されている。各第1電極板51の基端部は、第3壁部473と略平行な方向に延設された連結部54につながっている。この連結部54は電源53の一方の極に接続されている。連結部54は、第3壁部473内に埋設されている。各第1電極板51の先端部(第4壁部474側の端部)と、第4壁部474の内面との間には水が流通可能な隙間G1が設けられている。
【0048】
第2電極板52は、第4壁部474に位置する基端部から第3壁部473に向かってそれぞれ延設されている。各第2電極板52の基端部は、第4壁部474と略平行な方向に延設された連結部56につながっている。この連結部56は電源53の他方の極に接続されている。連結部56は、第4壁部474内に埋設されている。各第2電極板52の先端部(第3壁部473側の端部)と、第3壁部473の内面との間には水が流通可能な隙間G2が設けられている。また、各電極対49における電極板51,52同士の隙間は、水が流れる流路(水流路)Fとして機能する。
【0049】
図2に示すように、電気分解装置41は、各電極対49の極性を反転させるための反転機構63を備えている。反転機構63は、制御部33により制御される。反転機構63は、接点切換部71と接点切換部72とを有しており、接点切換部71の接点及び接点切換部72の接点が切り換えられることによって電極板51,52の極性を反転させることができる。
【0050】
具体的に、反転機構63が図2において左側に示す状態のときには、複数の第1電極板51は電源53の負極につながり、複数の第2電極板52は電源53の正極につながる。一方、反転機構63が図2において右側示す状態のときには、複数の第1電極板51は電源53の正極につながり、複数の第2電極板52は電源53の負極につながる。なお、図4〜図8においては、反転機構63の記載を省略している。
【0051】
以上のような構造を有する電気分解装置41では、第1流通口43から容器47内に流入した水が第2流通口45から容器47外に流出するまでの間に、水に含まれるスケール成分が電気分解によって各電極対49の陰極にスケールとして析出する。陰極に付着したスケールは、後述するように周期的に電極板51,52の極性を反転させることにより、陰極から脱落して容器47内に沈殿する。
【0052】
以下、ヒートポンプ給湯機11の具体的な制御例1〜4について説明する。ヒートポンプ給湯機11では、通常、夜間の低価格の電力を使って沸上げ運転を行うように沸上げ運転のスケジュールが設定されている。具体的に、例えば22時から6時までの間の時間帯に沸上げ運転が実行される。
【0053】
各制御例では、沸上げ運転中には、電気分解装置41における電極対49の極性の反転、及び電気分解装置41からのスケールの排出を行わない。そして、各制御例では、沸上げ運転完了後、制御部33は、次のような反転時初期運転を実行する。反転時初期運転は、沸上げ運転以外の時間帯に実行される。反転時初期運転は、電気分解装置41において電極対49の極性を反転させるとともに、極性が反転してから予め定められた条件が満たされるまでの間に電気分解装置41において処理された水を、水熱交換器21よりも上流位置において排出する。このような反転時初期運転を実行する理由は、次の通りである。
【0054】
図3は、電気分解時間と水の硬度の関係を示すグラフである。図3において、横軸のゼロ(min)の時点は、電極対49の極性反転時を示しており、電極対49の極性反転直後の初期段階S1においては、陽極(反転前は陰極)に付着しているスケールが溶解することにより、一時的に水の硬度(ppm)、すなわちスケール成分の濃度(ppm)が極性反転時よりも高くなる。このようにスケール成分濃度の高い水が水熱交換器21に送られると、かえって水熱交換器21におけるスケールの析出が助長されることがある。
【0055】
そこで、本実施形態の各制御例では、反転時初期運転を実行することにより、スケール成分濃度の高い水を水熱交換器21よりも上流位置において排出する。これにより、スケール成分濃度の高い水が水熱交換器21に送られるのを防止することができるので、水熱交換器21においてスケールが析出するのを効果的に抑制できる。
【0056】
各制御例において、前記予め定められた条件としては、例えば反転時初期運転において電極対49の極性が反転してからの経過時間が予め定められた基準時間tに達すること、反転初期運転において処理された水の硬度などの水質が予め定められた基準値hに達することなどが挙げられる。
【0057】
前者の条件の場合、前記経過時間は、例えば図略のタイマにより計測される。具体的に、基準時間tは、例えば水の水質が極性反転時の初期硬度h1(ppm)と同じ硬度に達するまでの時間t1に設定することができる。また、基準時間tは、例えば初期硬度h1に対して半減した硬度h2に達するまでの時間t2のように、時間t1よりも大きな値に設定してもよい。このような基準時間tは、例えば水質と時間との関係を予め実験により対応させたデータベースに基づいて決めることができる。
【0058】
後者の条件の場合、水の水質は、例えば水の導電率を測定することにより検知することができる。また、水の水質は、例えばカルシウムイオンの濃度を測定するセンサなどにより検知することもできる。具体的に、水の水質の基準値hは、上述した初期硬度h1に設定することができる。また、基準値hは、初期硬度h1から半減した硬度h2などのように、初期硬度h1よりも小さな値に設定してもよい。
【0059】
すなわち、前者の条件及び後者の条件のいずれもが水の水質に基づいて予め定められた水質条件である。
【0060】
<制御例1>
図4は、ヒートポンプ給湯機11の制御例1を示す概略図である。この制御例1では、制御部33は、前記反転時初期運転において、電気分解装置41の容器47に水が出入りするのを阻止した状態で電極対49に電圧を印加して容器47内の水を処理し、前記条件が満たされたと判断すると、処理された水を前記上流位置において排出するように制御する。容器47への水の出入りを阻止するには、例えばポンプ31を停止させればよい。
【0061】
図4に示すように、制御例1は、工程A1〜工程E1を含む。工程A1では、制御部33は、沸上げ運転を実行する。具体的に、制御部33は、圧縮機19を作動させるとともに電動膨張弁23の開度を調節して冷媒回路10において冷媒を循環させる。また、制御部33は、ポンプ31を作動させるとともに、図4における工程A1に示すように複数の第1電極板51が電源53の正極につながり、複数の第2電極板52が電源53の負極につながる状態で電源53から電極対49に電圧を印加する。沸上げ運転中は、開閉弁65が閉状態とされている。
【0062】
沸上げ運転が実行されると、タンク15内には高温の水が貯湯される。また、この沸上げ運転中には、タンク15から水熱交換器21に向かって入水配管27を流れる水に含まれるスケール成分が電気分解装置41によって除去される。除去されたスケール成分は、複数の第2電極板52にスケールSとなって析出する。また、除去されたスケール成分の一部は、容器47の底部(第3壁部473の上面)に沈殿する。
【0063】
制御部33は、沸上げ運転完了の信号を受けると、圧縮機19を停止させ、ポンプ31を停止させる制御を実行し、沸上げ運転を終了させ、以下の工程B1〜工程D1の反転時初期運転を実行する。
【0064】
次に、工程B1において、制御部33は、電気分解装置41における電極対49の極性を反転させる制御を実行する。この工程B1では、圧縮機19及びポンプ31は停止している。
【0065】
ついで、工程C1において、制御部33は、容器47に水が出入りするのを阻止した状態で電極対49に電圧を印加して容器47内の水を処理する。工程C1においては、ポンプ31が停止しているので容器47には水が出入りしない。電極対49への電圧の印加は、上述した時間条件、水質条件などのような予め定められた条件が満たされるまで継続される。
【0066】
この工程C1では、工程A1において第2電極板52に析出したスケールSが第2電極板52から脱落し、容器47の底部に沈殿する。その一方で、工程C1では、容器47内の水中のスケール成分が複数の第1電極板51にスケールSとなって析出する。
【0067】
制御部33は、前記条件が満たされたと判断すると、電極対49への電圧の印加を停止させる制御を実行する。
【0068】
ついで、工程D1において、制御部33は、容器47内に沈殿したスケールを排出する制御を実行する。このスケール排出時には、ポンプ31は停止しており、容器47内において水の流れがない状態である。制御部33は、開状態となるように開閉弁65を制御する。これにより、容器47の底部に沈殿しているスケールSは、容器47内の水とともにスケール排出口61及び排出管64を通じて容器47の外部に排出される。スケール排出が完了すると、開閉弁65は、閉状態とされる。スケール排出口61は、水熱交換器21よりも上流側に位置しているので、スケール濃度の高い水が水熱交換器21に送られるのを防止できる。
【0069】
次に、制御部33は、沸上げ運転のスケジュールに基づいて、工程E1に示す翌日の沸上げ運転を実行する。工程E1は、電極対49の極性が工程A1と反対である以外は、工程A1と同様であり、工程E1が完了した後、工程B1〜工程D1と同様の制御が実行される。
【0070】
<制御例2>
図5は、ヒートポンプ給湯機11の制御例2を示す概略図である。図5に示すように、制御例2は、工程A2〜工程G2を含む。
【0071】
制御例2は、工程A2に示す沸上げ運転が完了した後、工程D2〜工程F2に示す反転初期運転は、制御例1の工程A1〜工程E1と同様である。制御例2では、沸上げ運転が完了した後、工程D2〜工程F2に示す反転時初期運転が実行される前に、工程B2,C2に示すように容器47内の水を電解質濃度のより高い水に入れ替える点が制御例1と異なっている。具体的には、次の通りである。
【0072】
工程A2において沸上げ運転が実行されると、タンク15内には高温の水が貯湯される。また、この沸上げ運転中に電気分解装置41によって除去されたスケール成分は、複数の第2電極板52にスケールSとなって析出する。また、除去されたスケール成分の一部は、容器47の底部に沈殿する。制御部33は、沸上げ運転完了の信号を受けると、圧縮機19を停止させ、ポンプ31を停止させる制御を実行し、沸上げ運転を終了させる。
【0073】
次に、工程B2において、制御部33は、開閉弁65を開状態にする制御を実行する。これにより、容器47内の水及び容器47の底部に沈殿しているスケールSは、スケール排出口61及び排出管64を通じて容器47の外部に排出される。この排出時には、ポンプ31は停止しており、容器47内において水の流れがない状態である。スケール排出が完了すると、開閉弁65は、閉状態とされる。
【0074】
次に、工程C2において、制御部33は、容器47内に電解質濃度の高い水を注水する。具体的に、制御部33は、ポンプ31を駆動させることによりタンク15の底部に設けられた出水口からタンク15内の水を出水させ、入水配管27を通じて電気分解装置41の容器47内に注水する。このタンク15の水は、電気分解装置41による処理がなされていないので、工程A2の沸上げ運転完了直後における容器47内の水に比べると、電解質濃度が高い。
【0075】
工程C2において容器47に注水される水は、タンク15内に貯留された水を用いる場合に限定されない。すなわち、工程C2において容器47に注水される水としては、工程A2の沸上げ運転完了直後における容器47内の水に比べて電解質濃度が高い水であればよく、例えばタンク15とは別に設けられる図略の給水源の水を用いてもよい。
【0076】
次に、工程D2において、制御部33は、電気分解装置41における電極対49の極性を反転させる制御を実行する。この工程D2〜工程F2に示す反転時初期運転は、制御例1の工程B1〜工程D1と同様であるので説明を省略する。反転時初期運転が終了すると、制御部33は、沸上げ運転のスケジュールに基づいて、工程G2に示す翌日の沸上げ運転を実行する。工程G2は、電極対49の極性が工程A2と反対である以外は、工程A2と同様であり、工程G2が完了した後、工程B2〜工程F2と同様の制御が実行される。
【0077】
<制御例3>
図6は、ヒートポンプ給湯機11の制御例3を示す概略図である。図6に示すように、制御例3は、工程A3〜工程G3を含む。
【0078】
制御例3は、工程A3に示す沸上げ運転、工程B3〜工程D3に示す反転時初期運転は、制御例1の工程A1〜工程D1と同様である。制御例3では、反転時初期運転が完了した後、工程E3に示すように容器47内に注水し、工程F3に示すように容器47において水の出入りを阻止した状態で予め定められた第2条件が満たされるまで電極対49に電圧を印加する第2初期運転をさらに実行する点が制御例1と異なっている。具体的には、次の通りである。
【0079】
沸上げ運転(工程A3)が完了し、反転時初期運転(工程B3〜工程D3)が完了すると、制御部33は、工程E3において、容器47内に水を注水する制御を実行する。具体的に、制御部33は、ポンプ31を駆動させることによりタンク15の底部に設けられた出水口からタンク15内の水を出水させ、入水配管27を通じて電気分解装置41の容器47内に注水する。この工程E3では、開閉弁65は閉状態である。工程E3において容器47内に注水された水は、電気分解の処理がなされていない状態である。
【0080】
次に、工程F3において、制御部33は、容器47に水が出入りするのを阻止した状態で電極対49に電圧を印加して容器47内の水を処理する制御を実行する。工程F3においては、ポンプ31が停止しているので容器47には水が出入りしない。電極対49への電圧の印加は、予め定められた第2条件が満たされるまで継続される。この工程F3では、容器47内の水中のスケール成分が複数の第1電極板51にスケールSとなって析出する。
【0081】
第2条件としては、工程F3において電極対49に電圧が印加されてからの経過時間が予め定められた基準時間に達すること(時間条件)、工程E3において注水された水の硬度に対してスケール成分の濃度が所定の割合に減少したことを示す基準値に達すること(水質条件)などが挙げられる。前者の時間条件の場合、前記基準時間は、例えば水の水質が電圧印加時の初期硬度(ppm)に対して半減した硬度に達するまでの時間に設定することができる。後者の水質条件の場合、水の水質の基準値は、例えば上述した初期硬度から半減した硬度などに設定することができる。
【0082】
制御部33は、前記第2条件が満たされたと判断すると、電極対49への電圧の印加を停止させる制御を実行し、工程G3に進む。
【0083】
次に、制御部33は、沸上げ運転のスケジュールに基づいて、工程G3に示す翌日の沸上げ運転を実行する。工程G3は、電極対49の極性が工程A3と反対である以外は、工程A3と同様であり、工程G3が完了した後、工程B3〜工程F3と同様の制御が実行される。
【0084】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るヒートポンプ給湯機11について説明する。この第2実施形態では、電気分解装置41及び制御の流れが第1実施形態とは異なっており、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0085】
図7に示すように、第2実施形態における電気分解装置41では、入水配管27に分岐路81が設けられている。分岐路81は、水熱交換器21よりも上流側に位置し、電気分解装置41よりも下流側に位置している。以下、第2実施形態に係るヒートポンプ給湯機11の制御例について説明する。
【0086】
<制御例4>
図7に示すように、制御例4は、工程A4〜工程F4を含む。制御例1では、前記反転時初期運転において、容器47に水が出入りするのを阻止した状態で電極対49に電圧を印加して容器47内の水を処理するが、この制御例4は、反転時初期運転において、容器47内において水を流通させながら電極対49に電圧を印加して容器47内の水を処理する点で、制御例1とは異なっている。
【0087】
制御例4では、制御部33は、前記反転時初期運転において、電極対49の極性が反転してから前記条件が満たされるまで、電気分解装置41において処理された水を分岐路81を通じて排出するように制御する。前記条件を水の水質に基づいて判断する場合、例えば図7に示す分岐路81から排出される水の水質を検知するセンサが設けられているのが好ましい。このセンサにより、電気分解装置41において処理された水の水質を検知することができる。
【0088】
入水配管27と分岐路81は、T字路を構成している。このT字路の分岐点には水の経路を切換可能な図略の切換機構が設けられている。これにより、電気分解装置41から流出して入水配管27を流れる水は、前記分岐点に達すると、分岐路81に流入するか、又は入水配管27における前記分岐点よりも下流側の部位に流入する。また、前記切換機構に代えて、分岐路81に図略の開閉弁が設けられ、入水配管27における前記分岐点よりも下流側に図略の開閉弁が設けられていてもよい。制御部33は、前記切換機構の切り換え又は前記開閉弁の開閉を制御する。具体的な制御例4の制御の流れは、次の通りである。
【0089】
制御例4では、工程A4において沸上げ運転が実行される。この沸上げ運転は、制御例1の工程A1と同様である。沸上げ運転が実行されると、タンク15内には高温の水が貯湯される。また、この沸上げ運転中には、タンク15から水熱交換器21に向かって入水配管27を流れる水に含まれるスケール成分が電気分解装置41によって除去される。除去されたスケール成分は、複数の第2電極板52にスケールSとなって析出する。また、除去されたスケール成分の一部は、容器47の底部に沈殿する。
【0090】
制御部33は、沸上げ運転完了の信号を受けると、圧縮機19を停止させ、ポンプ31を停止させ、電極対49への電圧の印加を止める制御を実行し、沸上げ運転を終了させる。
【0091】
次に、工程B4において、制御部33は、容器47内に沈殿したスケールを排出する制御を実行する。このスケール排出時には、ポンプ31は停止しており、容器47内において水の流れがない状態である。制御部33は、開状態となるように開閉弁65を制御する。これにより、容器47の底部に沈殿しているスケールSは、容器47内の水とともにスケール排出口61及び排出管64を通じて容器47の外部に排出される。スケール排出が完了すると、開閉弁65は、閉状態とされる。
【0092】
次に、工程C4において、制御部33は、容器47内に水を注水する制御を実行する。具体的に、制御部33は、ポンプ31を駆動させることによりタンク15の底部に設けられた出水口からタンク15内の水を出水させ、入水配管27を通じて電気分解装置41の容器47内に注水する。この工程E3では、開閉弁65は閉状態である。
【0093】
次に、工程D4において、制御部33は、電気分解装置41における電極対49の極性を反転させる制御を実行する。また、制御部33は、ポンプ31を駆動する制御を実行する。この工程D4では、入水配管27と分岐路81とのT字路における経路は、水が分岐路81に流入するように選択される。なお、この選択がされる時期は、次の工程E4が開示されるときであってもよい。
【0094】
次に、工程E4において、制御部33は、工程D4において反転された極性で電極対49に電圧の印加を継続して行うとともにポンプ31を継続して駆動させ、容器47内を流通する水を処理する。具体的に、ポンプ31が駆動した状態では、タンク15の水が入水配管27を通じて電気分解装置41の容器47内に供給される。供給された水は、容器47内を通過して入水配管27に流出し、分岐路81に流入する。分岐路81に流入した水は、ヒートポンプ給湯機11の系外に排出される。
【0095】
この工程E4では、工程A4において第2電極板52に析出したスケールSが第2電極板52から脱落し、容器47内の水とともに容器47から入水配管27に流出する。その一方で、工程E4では、容器47内の水中のスケール成分の一部は、複数の第1電極板51にスケールSとなって析出し、また、容器47の底部に沈殿する。
【0096】
電極対49への電圧の印加及びポンプ31の駆動は、上述した時間条件、水質条件などのような予め定められた条件が満たされるまで継続される。制御部33は、前記条件が満たされたと判断すると、電極対49への電圧の印加及びポンプ31を停止させる制御を実行する。
【0097】
反転時初期運転が終了すると、制御部33は、沸上げ運転のスケジュールに基づいて、工程F4に示す翌日の沸上げ運転を実行する。工程F4は、電極対49の極性が工程A4と反対である以外は、工程A4と同様であり、工程F4が完了した後、工程B4〜工程E4と同様の制御が実行される。
【0098】
以上説明したように、第1実施形態及び第2実施形態では、前記反転時初期運転が実行されるので、水熱交換器21におけるスケールの析出を効果的に抑制できる。
【0099】
第1実施形態及び第2実施形態では、沸上げ運転以外の時期に前記反転時初期運転を実行するので、反転時初期運転のために沸上げ運転を中断する必要がない。したがって、反転時初期運転を実行することに起因して沸上げ運転の効率(ヒートポンプの効率)が低下するのを防止できる。
【0100】
制御例1〜制御例3では、電気分解装置41における水路に水が出入りするのを阻止した状態で電極対49に電圧を印加して水路内の水を処理し、前記条件が満たされると、水路において処理された水を前記上流位置において排出するので、反転時初期運転に排出する水の量を最小限に抑えることができる。
【0101】
制御例2では、電気分解装置41内の水を電解質濃度のより高い水に入れ替えて前記反転時初期運転を実行するので、反転時初期運転における電気分解の効率が低くなるのを抑制できる。
【0102】
制御例3では、前記第2初期運転を実行して電気分解装置41内のスケール成分の濃度を予め低下させておくことにより、その後に実行される沸上げ運転において水熱交換器21にスケール成分濃度の高い水が送られるのを抑制できる。
【0103】
制御例4では、前記反転時初期運転において、電極対49の極性が反転してから前記条件が満たされるまで、電気分解装置41に水を供給するとともに電気分解装置41において処理された水を水熱交換器21よりも前記上流位置において排出しながら、電極対49に電圧を印加する。この場合、電気分解装置41において水の出入りを阻止した状態で反転時初期運転を実行する場合に比べて、簡単な制御で反転時初期運転を実行することができる。
【0104】
(他の実施形態)
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0105】
例えば、前記実施形態では、電気分解装置41が複数の電極対49を有している形態を例に挙げて説明したが、これに限定されない。電気分解装置41としては、例えば図8に示すように容器47内に単一の電極対49が配置された形態であってもよい。
【0106】
前記実施形態では、ヒートポンプ給湯機11の水の流路において、ポンプ31よりも下流側で水熱交換器21よりも上流側に位置する入水配管27に電気分解装置41を設ける場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。電気分解装置41は、水の流路において水熱交換器21よりも上流側に設けられていればよい。具体的に、電気分解装置41は、例えばポンプ31よりも上流側の入水配管27に設けられていてもよく、また、給水源からタンク15に水を供給する給水配管37に設けられていてもよい。電気分解装置41を給水配管37に設ける場合、第2実施形態における分岐路81は、給水配管37に設けられる。
【0107】
前記第2実施形態では、排出路が入水配管27から分岐する分岐路81である場合を例示したが、前記排出路は、例えば電気分解装置41の容器47の側壁などに接続される配管などであってもよく、この配管から電気分解装置41において処理された水を排出するように構成されていてもよい。
【0108】
前記実施形態では、沸上げ運転中には、前記反転時初期運転を行わない場合を例示したが、沸上げ運転中に反転時初期運転を行うこともできる。
【0109】
前記実施形態では、スケールを排出するための排出部(スケール排出口61)が容器47の底部に設けられている場合を例示したが、これに限定されない。排出部は、例えば容器47よりも下流側に位置する部位に設けられていてもよい。具体的に、排出部は、例えば入水配管27に別途設けられたスケール排出用の弁(例えば三方弁)などであってもよい。
【0110】
前記実施形態では、沸上げ運転が6時から22時までの時間帯のように昼間を含む時間帯には実行されない場合を例示したが、これに限定されない。例えばユーザーの使用湯量が多くて湯が足りない場合には6時から22時までの時間帯であっても追加の沸上げ運転が必要に応じて実行されることもある。このような追加の沸上げ運転後には、前記反転時初期運転は必ずしも行わなくてもよい。
【0111】
前記実施形態では、容器47が略直方体の形状を有している場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。容器47は、直方体以外の角柱形状であってもよく、円柱形状であってもよい。
【0112】
また、前記実施形態では、一過式の給湯機を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本発明は、例えば給湯配管35から給湯された水(湯)の一部が再びタンク15に戻されるタイプの給湯機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0113】
10 冷媒回路
11 ヒートポンプ給湯機
15 タンク
21 水熱交換器
27 入水配管
29 出湯配管
31 ポンプ
32 コントローラ
33 制御部
34 記憶部
35 給湯配管
37 給水配管
41 電気分解装置
49 電極対
51 第1電極板
52 第2電極板
53 電源
61 排出口
81 分岐路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留するタンク(15)と、
冷媒との熱交換により水を加熱する水熱交換器(21)を有する冷媒回路(10)と、
前記タンク(15)に貯留された水を前記水熱交換器(21)に送り、前記水熱交換器(21)において加熱された水を前記タンク(15)に戻す導水路(27,29)と、
前記導水路(27,29)を含む水の流路において前記水熱交換器(21)よりも上流側の水路内に設けられた電極対(49)を有する電気分解装置(41)と、
前記電気分解装置(41)において前記電極対(49)の極性を反転させるとともに、極性が反転してから予め定められた条件が満たされるまでの間に前記電気分解装置(41)において処理された水を、前記水熱交換器(21)よりも上流側に位置する上流位置において排出する反転時初期運転を実行する制御部(33)と、を備えているヒートポンプ給湯機。
【請求項2】
前記制御部(33)は、前記反転時初期運転において、前記電気分解装置(41)の前記水路に水が出入りするのを阻止した状態で前記電極対(49)に電圧を印加して前記水路内の水を処理し、前記条件が満たされたと判断すると、処理された水を前記上流位置において排出するように制御する、請求項1に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項3】
前記制御部(33)は、前記水熱交換器(21)において水を加熱する沸上げ運転が完了した後、前記電気分解装置(41)内の水を電解質濃度のより高い水に入れ替えて前記反転時初期運転を実行する、請求項2に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項4】
前記電気分解装置(41)は、水を外部に排出するための排出部(61)をさらに有し、
前記制御部(33)は、前記反転時初期運転において、前記条件が満たされたと判断すると、前記電気分解装置(41)内の水が前記排出部(61)を通じて排出されるように制御する、請求項2又は3に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項5】
前記制御部(33)は、前記反転時初期運転が完了した後、前記電気分解装置(41)内に注水し、前記電気分解装置(41)において水の出入りを阻止した状態で予め定められた第2条件が満たされるまで前記電極対(49)に電圧を印加する第2初期運転をさらに実行する、請求項2〜4のいずれか1項に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項6】
前記制御部(33)は、前記第2初期運転において前記電極対(49)に対する電圧の印加が開始されてからの経過時間が予め定められた第2基準時間に達したとき、又は前記第2初期運転において処理された水の水質が予め定められた第2基準値に達したときに、前記第2条件が満たされたと判断する、請求項5に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項7】
前記制御部(33)は、前記反転時初期運転において、前記電極対(49)の極性が反転してから前記条件が満たされるまで、前記電気分解装置(41)に水を供給するとともに前記電気分解装置(41)において処理された水を前記上流位置において排出しながら、前記電極対(49)に電圧を印加するように制御する、請求項1に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項8】
前記上流位置には、前記電気分解装置(41)において処理された水を排出するための排出路(81)が設けられている、請求項7に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項9】
前記排出路(81)は、前記水熱交換器(21)よりも上流側に位置する前記導水路(27)から分岐する分岐路(81)であり、
前記制御部(33)は、前記反転時初期運転において、前記電極対(49)の極性が反転してから前記条件が満たされるまで、前記電気分解装置(41)において処理された水を前記分岐路(81)を通じて排出するように制御する、請求項8に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項10】
前記制御部(33)は、前記反転時初期運転において前記電極対(49)の極性が反転してからの経過時間が予め定められた基準時間に達したとき、又は前記反転初期運転において処理された水の水質が予め定められた基準値に達したときに、前記条件が満たされたと判断する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のヒートポンプ給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−61143(P2013−61143A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201510(P2011−201510)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】