説明

ビアリール化合物の製造方法

【課題】 高価かつ複雑な製造設備を必要とすることなく、比較的自由な官能基を提供することができかつ反応効率に優れる、ビアリール化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ビアリール化合物の製造方法が開示されている。本発明の製造方法は、以下の式(II):
【化1】


で表されるオキサゾリン化合物を、有機溶媒中、ルテニウム触媒および水素スカベンジャーの存在下にて反応させる工程;を包含する。本発明によって製造されたビアリール化合物は、遷移金属との錯形成を経てあるいはそれ自体として、化学触媒などの多くの化学製品、もしくはその合成中間体として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビアリール化合物の製造方法に関し、より詳細には、ビアリール化合物をより簡便にかつ効率良く製造し得る、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビアリール化合物は、多くの化学製品およびその合成中間体として重要な化合物である。また、ビアリール化合物は、遷移金属との錯形成を経て、あるいはそれ自体として、化学触媒に用いられることもある。
【0003】
ビアリール化合物においては、光学的、化学的または医学的な観点から多くの化合物が合成され、種々の有用な化合物が見出されている。例えば、当該ビアリール化合物に包含される化合物のうち、ビフェニル骨格を有する化合物のいくつかについては、それ自身が液晶材料として用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、当該ビアリール化合物に包含される化合物のうち、ビナフチル骨格を有する化合物は金属への配位子として用いられ、不斉触媒反応に有用な遷移金属触媒を形成するものもある。代表的なものとしてはBINAP(バイナップ)触媒が挙げられる。BINAP触媒は、ビナフチル骨格を有する化合物とルテニウムとの錯体であり、医薬品分野、電子材料分野などの各種技術分野において有用な不斉還元触媒として用いられる(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
さらに、近年では、ビアリール骨格を有する特定の四級アンモニウム塩が、不斉相間移動触媒として種々の有用な反応に用いられることが報告されている。このような触媒を用いることで、アミノ酸の誘導体を効率よく合成することができる(例えば、特許文献1および2、ならびに非特許文献3および4参照)。
【0006】
上記のような有用性から、ビアリール化合物については、種々の合成法が開発されてきた。例えば、ホウ酸やグリニアを用いるカップリング反応を用いる合成法が挙げられる。しかし、この方法では、カップリング反応に先立ってホウ酸やグリニアなどの金属種の合成や発生が必要となる。これらの合成や発生については、禁水反応が必要である場合が多く、これに伴う製造設備の複雑化が指摘されている。さらに、アリール基上の官能基についても実質上制約があり、目的に応じて広範なビアリール化合物を合成することが比較的困難であることも指摘されている。
【0007】
また、金属銅を用いるウルマンカップリングも開発されているが、反応の効率が悪い点、あらかじめ銅を活性化する必要があるため作業工程が煩雑となる点などの問題点が指摘されている。
【0008】
このような状況において、各種ビアリール化合物を工業的により効率良く製造することができる合成法の開発が所望されている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−048866号公報
【特許文献2】特開2002−326992号公報
【非特許文献1】『液晶入門』1992年、幸書房、中田一郎、堀文一、向尾昭夫
【非特許文献2】ノヨリ,アール.(Noyori,R.)ら、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the American Chamical Society),1980年,第102巻,p.7932−7934
【非特許文献3】マルオカ,ケイ.(Maruoka,K.)ら、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters),2005年,第46巻,p.8555−8558
【非特許文献4】マルオカ,ケイ.(Maruoka,K.)ら、アンゲワンテ.ケミー・インターナショナル・エディション(Angewante Chemie International Edition),2005年,第44巻,p.1549−1551
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、高価かつ複雑な製造設備を必要とすることなく、比較的自由な官能基を提供することができ、かつ反応効率に優れる、ビアリール化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の式(I):
【0012】
【化1】

【0013】
で表されるビアリール化合物を製造するための方法であって、
以下の式(II):
【0014】
【化2】

【0015】
で表されるオキサゾリン化合物を、有機溶媒中、ルテニウム触媒および水素スカベンジャーの存在下にて反応させる工程;
を包含し、
ここで、式(I)および(II)において、
、R、およびRは、それぞれ独立して、
(i)水素原子;
(ii)−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
(iii)シアノ基;
(iv)ニトロ基;
(v)カルバモイル基;
(vi)N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(vii)N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(viii)−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである);
(ix)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキル基;
(x)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルケニル基;
(xi)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキニル基;
(xii)アラルキル基であって、ここで、該アラルキル基を構成するアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、アラルキル基;
(xiii)ヘテロアリール部分を有するヘテロアラルキル基であって、ここで、該ヘテロアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアラルキル基;
(xiv)アリール基であって、ここで、該アリール基が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいか、あるいは3,4位が一緒になって−O−(CH−O−(ここで、pは1または2である)で置換されていてもよい、アリール基;
(xv)ヘテロアリール基であって、該ヘテロアリール基が
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;ならびに
(xvi)−S(O)−R20(ここで、nは0、1、または2であり、そしてR20は分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基である);
からなる群より選択されるオキサゾリン環近位置換基であるか、あるいは
、R、およびRのうち、RとR、またはRとRは以下の式(III):
【0016】
【化3】

【0017】
で表される基であり、残りは該オキサゾリン環近位置換基であり、
ここで、式(III)において、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、
(i)水素原子;
(ii)−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
(iii)シアノ基;
(iv)ニトロ基;
(v)カルバモイル基;
(vi)N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(vii)N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(viii)−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである);
(ix)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキル基;
(x)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルケニル基;
(xi)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキニル基;
(xii)アラルキル基であって、ここで、該アラルキル基を構成するアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、アラルキル基;
(xiii)ヘテロアリール部分を有するヘテロアラルキル基であって、ここで、該ヘテロアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアラルキル基;
(xiv)アリール基であって、ここで、該アリール基が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいか、あるいは3,4位が一緒になって−O−(CH−O−(ここで、pは1または2である)で置換されていてもよい、アリール基;
(xv)ヘテロアリール基であって、該ヘテロアリール基が
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;ならびに
(xvi)−S(O)−R20(ここで、nは0、1、または2であり、そしてR20は分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基である);
からなる群より選択されるオキサゾリン環遠位置換基であり、
14、R15、R16およびR17は、それぞれ独立して、水素原子であるか、あるいは分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキル基であり、そして
Xは酸素原子または硫黄原子である、方法である。
【0018】
1つの実施態様では、上記式(II)で表されるオキサゾリン化合物のR、R、およびRは、それぞれ独立して、前記オキサゾリン環近位置換基である。
【0019】
1つの実施態様では、上記式(II)で表されるオキサゾリン化合物は、以下の式(II−2):
【0020】
【化4】

【0021】
で表される化合物である。
【0022】
1の実施態様では、上記式(II)で表されるオキサゾリン化合物は、以下の式(II−3):
【0023】
【化5】

【0024】
で表される化合物である。
【0025】
1つの実施態様では、上記水素スカベンジャーは、以下の式(IV):
【0026】
【化6】

【0027】
(ここで、
10は、分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、そして
11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、またはアリール基である)
で表されるアリルアルコール誘導体のエステルである。
【0028】
1つの実施態様では、上記ルテニウム触媒はRuCl(PPhであるか、または[RuCl(cod)]とPPhとを混合することにより生じる触媒である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、特別な製造設備を必要とすることなく、ビアリール化合物を効率良くかつ簡易に製造することができる。特に、本発明によれば、銅のような反応性に劣る金属種の使用も不要である。また、多くのバリエーションで構成される官能基を有するビアリール化合物も製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本明細書中で用いられる用語を定義する。
【0031】
用語「分岐または環を形成していてもよい、C〜Cのアルキル基」(ここでnは整数)は、炭素数1〜nの任意の直鎖アルキル基、炭素数3〜nの任意の分岐鎖アルキル基、および炭素数3〜nの任意の環状アルキル基を包含する。例えば、炭素数1〜6の任意の直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、およびn−ヘキシルが挙げられ、炭素数3〜6の任意の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチルなどが挙げられ、そして炭素数3〜6の任意の環状アルキル基としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。さらに、例えば、用語「分岐または環を形成していてもよく、および/またはハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜C12のアルキル基」という場合は、炭素数1〜12の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の任意の分岐鎖アルキル基、および炭素数3〜12の任意の環状アルキル基を包含し、これらの任意の位置の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなアルキル基としては、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、n−デシル、n−ドデシルなどが挙げられる。
【0032】
なお、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基およびN,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイルにおいて、「C〜Cアルキル」は、C〜Cの直鎖アルキル基またはC〜Cの分岐鎖アルキル基を意味する。
【0033】
用語「分岐または環を形成していてもよい、C〜Cのアルケニル基」(ここでnは整数)は、炭素数2〜nの任意の直鎖アルケニル基、炭素数3〜nの任意の分岐鎖アルケニル基、および炭素数3〜nの任意の環状アルケニル基を包含する。例えば、炭素数2〜6の任意の直鎖アルケニル基としては、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニルなどが挙げられ、炭素数3〜6の任意の分岐鎖アルケニル基としては、イソプロペニル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1−メチル−2−ブテニル、などが挙げられ、そして炭素数3〜6の任意の環状アルケニル基としては、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどが挙げられる。さらに、例えば、用語「分岐または環を形成していてもよく、および/またはハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜C12のアルケニル基」という場合は、炭素数2〜12の直鎖アルケニル基、炭素数3〜12の任意の分岐鎖アルケニル基、および炭素数3〜12の任意の環状アルケニル基を包含し、これらの任意の位置の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなアルケニル基としては、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、1−オクテニル、1−デセニル、1−ドデセニルなどが挙げられる。
【0034】
用語「分岐または環を形成していてもよい、C〜Cのアルキニル基」(ここでnは整数)は、炭素数2〜nの任意の直鎖アルキニル基、炭素数3〜nの任意の分岐鎖アルキニル基、および炭素数3〜nの任意の環状アルキニル基を包含する。例えば、炭素数2〜6の任意の直鎖アルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、1−ヘキシニルなどが挙げられ、炭素数3〜6の任意の分岐鎖アルキニル基としては、1−メチル−2−プロピニルなどが挙げられ、そして炭素数3〜6の任意の環状アルキニル基としては、シクロプロピルエチニル、シクロブチルエチニルなどが挙げられる。さらに、例えば、用語「分岐または環を形成していてもよく、および/またはハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜C12のアルキニル基」という場合は、炭素数1〜12の直鎖アルキニル基、炭素数3〜12の任意の分岐鎖アルキニル基、および炭素数3〜12の任意の環状アルキニル基を包含し、これらの任意の位置の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなアルキニル基としては、1−ヘプチニル、1−オクチニル、1−デシニル、1−ドデシニルなどが挙げられる。
【0035】
用語「分岐していてもよいC〜Cのアルコキシ基」(ここでnは整数)は、炭素数1〜nの任意の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基および炭素数3〜nの任意の分岐鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メチルオキシ、エチルオキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、tert−ブチルオキシなどが挙げられる。
【0036】
本発明において、用語「アラルキル基」の例としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、4−フェニルブチルおよび2−フェニルブチルなどが挙げられる。
【0037】
本発明における用語「ヘテロアラルキル基」の例としては、ピリジルメチル、インドリルメチル、フリルメチル、チエニルメチル、ピロリルメチル、2−ピリジルエチル、1−ピリジルエチルおよび3−チエニルプロピルなどが挙げられる。
【0038】
本発明において、用語「アリール基」の例としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルなどが挙げられる。
【0039】
本発明における用語「ヘテロアリール基」の例としては、ピリジル、ピロリル、イミダゾリル、フリル、インドリル、ベンゾチオフェン−2−イル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、3,4−メチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、およびテトラゾリルが挙げられる。
【0040】
本発明において、用語「ハロゲン原子」の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子およびフッ素原子が挙げられる。なお、本発明において、用語「ハロゲン化物アニオン」とは、ハロゲンイオンのことを意味し、例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、およびフッ化物イオンが挙げられる。
【0041】
本発明において、用語「分岐または環を形成していてもよい、C〜Cのアリル基または置換アリル基」(ここでnは整数)は、アリル基、あるいは1および/または2および/または3位に置換基を有する任意の合計炭素数4〜nの置換アリル基を意味する。例えば、2−ブテニル、1−シクロペンテニルメチル、3−メチル−2−ブテニルなどが挙げられる。
【0042】
本発明において、用語「分岐していてもよい、C〜Cのプロパルギル基または置換プロパルギル基」(ここでnは整数)は、プロパルギル基、あるいは1および/または3位に置換基を有する任意の合計炭素数4〜nの置換プロパルギル基を意味する。例えば、2−ブチニル、3−トリメチルシリル−2−プロピニルなどが挙げられる。
【0043】
以下、本発明について詳述する。
【0044】
本発明においては、まず、特定のオキサゾリン化合物が、有機溶媒中、ルテニウム触媒および水素スカベンジャーの存在下にて反応させられる。
【0045】
本発明に用いられるオキサゾリン化合物は、以下の式(II):
【0046】
【化7】

【0047】
(ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、
(i)水素原子;
(ii)−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
(iii)シアノ基;
(iv)ニトロ基;
(v)カルバモイル基;
(vi)N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(vii)N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(viii)−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである);
(ix)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキル基;
(x)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルケニル基;
(xi)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキニル基;
(xii)アラルキル基であって、ここで、該アラルキル基を構成するアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、アラルキル基;
(xiii)ヘテロアリール部分を有するヘテロアラルキル基であって、ここで、該ヘテロアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアラルキル基;
(xiv)アリール基であって、ここで、該アリール基が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいか、あるいは3,4位が一緒になって−O−(CH−O−(ここで、pは1または2である)で置換されていてもよい、アリール基;
(xv)ヘテロアリール基であって、該ヘテロアリール基が
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;ならびに
(xvi)−S(O)−R20(ここで、nは0、1、または2であり、そしてR20は分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基である);
からなる群より選択されるオキサゾリン環近位置換基であるか、あるいは
、R、およびRのうち、RとR、またはRとRは以下の式(III):
【0048】
【化8】

【0049】
で表される基であり、残りは該オキサゾリン環近位置換基であり、
ここで、式(III)において、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、
(i)水素原子;
(ii)−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
(iii)シアノ基;
(iv)ニトロ基;
(v)カルバモイル基;
(vi)N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(vii)N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(viii)−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである);
(ix)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキル基;
(x)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルケニル基;
(xi)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキニル基;
(xii)アラルキル基であって、ここで、該アラルキル基を構成するアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、アラルキル基;
(xiii)ヘテロアリール部分を有するヘテロアラルキル基であって、ここで、該ヘテロアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアラルキル基;
(xiv)アリール基であって、ここで、該アリール基が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいか、あるいは3,4位が一緒になって−O−(CH−O−(ここで、pは1または2である)で置換されていてもよい、アリール基;
(xv)ヘテロアリール基であって、該ヘテロアリール基が
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;ならびに
(xvi)−S(O)−R20(ここで、nは0、1、または2であり、そしてR20は分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基である);
からなる群より選択されるオキサゾリン環遠位置換基であり、
14、R15、R16およびR17は、それぞれ独立して、水素原子であるか、あるいは分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキル基であり、そして
Xは酸素原子または硫黄原子である)で表される化合物である。
【0050】
上記式(II)で表されるオキサゾリン化合物として、例えば:
(A)上記R、R、およびRが、それぞれ独立して上記オキサゾリン環近位置換基である、化合物;
(B)以下の式(II−2):
【0051】
【化9】

【0052】
(ここで、R、R、R、R14、R15、R16、R17、およびXは上記で定義された基と同様である)で表される化合物;ならびに
(C)以下の以下の式(II−3):
【0053】
【化10】

【0054】
(ここで、R、R、R、R14、R15、R16、R17、およびXは上記で定義された基と同様である)で表される化合物;が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0055】
上記式(II)で表されるオキサゾリン化合物は、市販されており入手可能であるか、あるいは当業者によって容易に合成することができる。
【0056】
本発明に用いられるルテニウム触媒は、ルテニウム原子に有機リガンドが配位してなるルテニウム錯体である。本発明に用いられ得るルテニウム触媒の例としては、RuCl(PPhで表されるルテニウム触媒;[RuCl(cod)](ここで、”cod”は、シクロオクタジエンを表す)とトリフェニルホスフィン(PPh)とを後述するような溶媒中で、混合することにより発生する触媒;などが挙げられる。
【0057】
本発明に用いられるルテニウム触媒の量は、反応条件によって変動するため、必ずしも限定されないが、基質である、上記式(II)のオキサゾリン化合物のモル数を基準として、好ましくは0.1モル%〜20モル%、より好ましくは1モル%〜10モル%、さらにより好ましくは2モル%〜8モル%に設定され得る。ルテニウム触媒の使用量が、当該基準において0.1モル%を下回ると、反応が充分に進行せず、目的のビアリール化合物が適切に製造することが困難となる場合がある。他方、ルテニウム触媒の使用量が、当該基準において10モル%を上回っても、実質的に生成物の収率に影響がなく、むしろ工業的使用において採算性に劣る原因となる場合がある。
【0058】
本発明に用いられる水素スカベンジャーは、上記式(II)のオキサゾリン化合物のカップリングにおいて、効率よく酸化反応を進行させる役割を果たす物質であって、より具体的には、上記ルテニウム触媒とπアリル錯体を形成し得る物質である。このような水素スカベンジャーとしては、例えば、以下の式(IV):
【0059】
【化11】

【0060】
(ここで、R10は、分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、そしてR11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、またはアリール基である)で表されるアリルアルコール誘導体のエステルが挙げられる。あるいは、より具体的な例としては、以下の式:
【0061】
【化12】

【0062】
で表されるエステルが挙げられる。
【0063】
本発明に用いられる水素スカベンジャーの量は、反応条件によって変動するため、必ずしも限定されないが、基質である、上記式(II)のオキサゾリン化合物のモル数を基準として、好ましくは0.3〜50当量、より好ましくは0.4〜20当量に設定され得る。
【0064】
本発明に用いられる有機溶媒は、非水系溶媒全体を包含していい、具体的な例としては、キシレン、トルエン、メシチレン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン(NMP)が挙げられる。キシレンやNMPが特に好ましい。本発明に使用され得る有機溶媒の量は、当業者によって適宜選択され得る。有機溶媒にはまた、炭酸塩などの塩基が添加されていることが好ましい。そのような炭酸塩のより具体的な例としては、アルカリ金属の炭酸塩が挙げられ、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが挙げられる。炭酸カリウムが好ましい。
【0065】
本発明においては、上記式(II)で表されるオキサゾリン化合物は、上記有機溶媒、ルテニウム触媒および水素スカベンジャーと一緒に仕込まれ、好ましくは窒素気流下にて反応が行われる。この反応において、反応温度が例えば80℃〜140℃、他の例としては100℃〜135℃、さらに別の例としては110℃〜130℃となるように加熱されることが好ましい。反応時間は好ましくは5時間〜30時間、より好ましくは10時間〜24時間である。
【0066】
反応終了後、反応液にエーテル等が添加されることにより、沈殿物が濾別される。その後、ろ液を当業者に周知の手段で精製することにより、目的のビアリール化合物を得ることができる。
【0067】
このようにして製造され得るビアリール化合物は、以下の式(I):
【0068】
【化13】

【0069】
(ここで、R、R、R、R14、R15、R16、R17、およびXは上記で定義された基と同様である)で表される構造を有する。
【0070】
本発明によって得られたビアリール化合物は、遷移金属との錯形成を経てあるいはそれ自体として、化学触媒などの多くの化学製品、もしくはその合成中間体として有用である。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によって具体的に記述するが、これらによって本発明は制限されるものではない。
【0072】
なお、以下の実施例においては、特に記載のない限り以下の条件にて測定した。
【0073】
NMRスペクトルを、BrukerDPX−400(400MHz)またはDRX−500(500MHz)スペクトロメータで測定した。ケミカルシフトを、内部標準としてテトラメチルシランを用い、ppmで測定した。生成物を、球状シリカゲル(関東化学社製、40〜100μm)を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0074】
<実施例1;アリールオキサゾリン化合物のカップリング(1)>
【0075】
【化14】

【0076】
シュレンクフラスコに[RuCl(cod)](Ru基準で0.025mmol)、トリフェニルホスフィン(0.05mmol)、無水炭酸カリウム(1.0mmol)を仕込み、窒素置換した。次いで、脱水キシレン(1.0ml)、オキサゾリン化合物(A−1)(0.5mmol)およびアリルアセテート(1.5mmol)を添加し、窒素気流下にて攪拌しながら120℃で20時間加熱した。反応終了後、反応液に15mlのジエチルエーテルを添加し、析出した沈殿を濾別した。その後、ろ液を回収し、濃縮し、酢酸エチル/ヘキサンを溶離液とするシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、ビアリール化合物(B−1)を収率82%で得た。
【0077】
得られた化合物(B−1)のNMRスペクトルを表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
<実施例2;アリールオキサゾリン化合物のカップリング(2)>
【0080】
【化15】

【0081】
実施例1で用いたオキサゾリン化合物(A−1)の代わりに、上記オキサゾリン化合物(A−2)(0.5mmol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、標題のビアリール化合物(B−2)を収率31%で得た。
【0082】
得られた化合物(B−2)のNMRスペクトルを表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
<実施例3;アリールオキサゾリン化合物のカップリング(3)>
【0085】
【化16】

【0086】
実施例1で用いたオキサゾリン化合物(A−1)の代わりに、上記オキサゾリン化合物(A−3)(0.5mmol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、標題のビアリール化合物(B−3)を収率44%で得た。
【0087】
得られた化合物(B−3)のNMRスペクトルを表3に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
<実施例4;アリールオキサゾリン化合物のカップリング(4)>
【0090】
【化17】

【0091】
実施例1で用いたオキサゾリン化合物(A−1)の代わりに、上記オキサゾリン化合物(A−4)(0.5mmol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、標題のビアリール化合物(B−4)を収率52%で得た。
【0092】
得られた化合物(B−4)のNMRスペクトルを表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
<実施例5;アリールオキサゾリン化合物のカップリング(5)>
【0095】
【化18】

【0096】
実施例1で用いたオキサゾリン化合物(A−1)の代わりに、上記オキサゾリン化合物(A−5)(0.5mmol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、標題のビアリール化合物(B−5)を収率58%で得た。
【0097】
得られた化合物(B−5)のNMRスペクトルを表5に示す。
【0098】
【表5】

【0099】
<実施例6;メタ置換アリールオキサゾリン化合物のカップリング(1)>
【0100】
【化19】

【0101】
実施例1で用いたオキサゾリン化合物(A−1)の代わりに、上記メタ置換オキサゾリン化合物(C−1)(0.5mmol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、標題のビアリール化合物(D−1)を収率12%で得た。
【0102】
<実施例7;メタ置換アリールオキサゾリン化合物のカップリング(2)>
【0103】
【化20】

【0104】
実施例1で用いたオキサゾリン化合物(A−1)の代わりに、上記メタ置換オキサゾリン化合物(C−2)(0.5mmol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、標題のビアリール化合物(D−2)を収率31%で得た。
【0105】
<実施例8;メタ置換アリールオキサゾリン化合物のカップリング(3)>
【0106】
【化21】

【0107】
実施例1で用いたオキサゾリン化合物(A−1)の代わりに、上記メタ置換オキサゾリン化合物(C−3)(0.5mmol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、標題のビアリール化合物(D−3)を収率5%で得た。
【0108】
<実施例9〜12;種々の水素スカベンジャーを用いたアリールオキサゾリン化合物のカップリング>
【0109】
【化22】

【0110】
実施例1で用いたアリルアセテートの代わりに、水素スカベンジャーとして表6のそれぞれに示すアセテート化合物(1.5mmol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、標題のビアリール化合物(B−1)を得た。得られたビアリール化合物(B−1)の収率を表6に示す。
【0111】
【表6】

【0112】
表6に示されるように、本実施例で使用した水素スカベンジャーはいずれも、ビアリール化合物を効率よく製造することができることがわかる、特に、アリルアセテート(実施例1)および2−フェニルアリルアセテート(実施例12)を水素スカベンジャーとして用いると、ビアリール化合物の収率を向上させることができることがわかる。
【0113】
<実施例13;種々の条件下でのアリールオキサゾリン化合物のカップリング(1)>
【0114】
【化23】

【0115】
シュレンクフラスコにRuCl(PPh(5.0mol%,Ru基準で0.025mmol)、無水炭酸カリウム(1.0mmol)を仕込み、窒素置換した。次いで、脱水キシレン(1.0ml)、オキサゾリン化合物(A−1)(0.5mmol)およびアリルアセテート(1.5mmol)を添加し、窒素気流下にて攪拌しながら120℃で20時間加熱した。反応終了後、反応液に15mlのジエチルエーテルを添加し、析出した沈殿を濾別した。その後、ろ液を回収し、濃縮し、酢酸エチル/ヘキサンを溶離液とするシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、ビアリール化合物(B−1)を収率57%で得た。
【0116】
<比較例1;種々の条件下でのアリールオキサゾリン化合物のカップリング(2)>
実施例13で用いたRuCl(PPhの代わりに、触媒として[RhCl(cod)](Rh基準で0.025mmol)とトリフェニルホスフィン(0.10mmol)とを混合して用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。しかし、ビアリール化合物(B−1)を得ることはできなかった。
【0117】
<比較例2;種々の条件下でのアリールオキサゾリン化合物のカップリング(3)>
実施例13で用いたRuCl(PPhの代わりに、触媒としてPdCl(cod)(5.0mol%)とトリフェニルホスフィン(0.10mmol)とを混合して用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。しかし、ビアリール化合物(B−1)を得ることはできなかった。
【0118】
<実施例14;種々の条件下でのアリールオキサゾリン化合物のカップリング(4)>
実施例13で用いたキシレンの代わりに、有機溶媒としてN−メチルピロリドン(1.0ml)を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、ビアリール化合物(B−1)を収率46%で得た。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、高価かつ複雑な製造設備を必要とすることなく、比較的自由な官能基を有するビアリール化合物を、優れた反応効率かつ簡易に製造することができる。このようにして製造された各種ビアリール化合物は、遷移金属との錯形成を経てあるいはそれ自体として、化学触媒などの多くの化学製品、もしくはその合成中間体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

で表されるビアリール化合物を製造するための方法であって、
以下の式(II):
【化2】

で表されるオキサゾリン化合物を、有機溶媒中、ルテニウム触媒および水素スカベンジャーの存在下にて反応させる工程;
を包含し、
ここで、式(I)および(II)において、
、R、およびRは、それぞれ独立して、
(i)水素原子;
(ii)−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
(iii)シアノ基;
(iv)ニトロ基;
(v)カルバモイル基;
(vi)N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(vii)N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(viii)−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである);
(ix)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキル基;
(x)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルケニル基;
(xi)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキニル基;
(xii)アラルキル基であって、ここで、該アラルキル基を構成するアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、アラルキル基;
(xiii)ヘテロアリール部分を有するヘテロアラルキル基であって、ここで、該ヘテロアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアラルキル基;
(xiv)アリール基であって、ここで、該アリール基が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいか、あるいは3,4位が一緒になって−O−(CH−O−(ここで、pは1または2である)で置換されていてもよい、アリール基;
(xv)ヘテロアリール基であって、該ヘテロアリール基が
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;ならびに
(xvi)−S(O)−R20(ここで、nは0、1、または2であり、そしてR20は分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基である);
からなる群より選択されるオキサゾリン環近位置換基であるか、あるいは
、R、およびRのうち、RとR、またはRとRは以下の式(III):
【化3】

で表される基であり、残りは該オキサゾリン環近位置換基であり、
ここで、式(III)において、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、
(i)水素原子;
(ii)−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
(iii)シアノ基;
(iv)ニトロ基;
(v)カルバモイル基;
(vi)N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(vii)N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基;
(viii)−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである);
(ix)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキル基;
(x)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルケニル基;
(xi)分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキニル基;
(xii)アラルキル基であって、ここで、該アラルキル基を構成するアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、アラルキル基;
(xiii)ヘテロアリール部分を有するヘテロアラルキル基であって、ここで、該ヘテロアリール部分が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアラルキル基;
(xiv)アリール基であって、ここで、該アリール基が、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいか、あるいは3,4位が一緒になって−O−(CH−O−(ここで、pは1または2である)で置換されていてもよい、アリール基;
(xv)ヘテロアリール基であって、該ヘテロアリール基が
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルコキシ基、
分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、ニトロ基、カルバモイル基、N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、または−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)で置換されていてもよい、アリール基、
シアノ基、
−NR3031(ここで、R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)、
ニトロ基、
カルバモイル基、
N−(C〜Cアルキル)カルバモイル基、
N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルバモイル基、および
−NHCOR19(ここで、R19は水素原子か、または分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基かである)
からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;ならびに
(xvi)−S(O)−R20(ここで、nは0、1、または2であり、そしてR20は分岐していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基である);
からなる群より選択されるオキサゾリン環遠位置換基であり、
14、R15、R16およびR17は、それぞれ独立して、水素原子であるか、あるいは分岐または環を形成していてもよくかつハロゲン原子で置換されていてもよい、C〜Cのアルキル基であり、そして
Xは酸素原子または硫黄原子である、方法。
【請求項2】
前記式(II)で表されるオキサゾリン化合物のR、R、およびRが、それぞれ独立して、前記オキサゾリン環近位置換基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(II)で表されるオキサゾリン化合物が、以下の式(II−2):
【化4】

で表される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記式(II)で表されるオキサゾリン化合物が、以下の式(II−3):
【化5】

で表される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水素スカベンジャーが、以下の式(IV):
【化6】

(ここで、
10は、分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、そして
11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、またはアリール基である)
で表されるアリルアルコール誘導体のエステルである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ルテニウム触媒が、RuCl(PPhであるか、または[RuCl(cod)]とPPhとを混合することにより生じる触媒である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2008−169125(P2008−169125A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1562(P2007−1562)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】