説明

ビスアゾ化合物及びそれを用いる繊維材料の染色又は捺染方法

【課題】セルロース繊維材料の染色処理において、低塩濃度での染色性、再現性及び染着率等が良好で、耐塩素性や耐汗性に優れた染色物を与える赤色反応染料の提供。
【解決手段】下記ビスアゾ化合物(I)。


[式中、m、nは0又は1、R1〜R3は水素原子又は置換可能なアルキル、Dは1個の−SO2CH=CH2又は−SO2CH2CH22で置換されたフェニル又はナフチル、該フェニル又はナフチルは1〜2個の置換基で置換されてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維反応性のビスアゾ化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の反応染料が知られており、繊維材料の染色及び捺染の分野に広く使用されている。例えば、繊維反応性の赤色染料であるビスアゾ化合物は、下記特許文献1や特許文献2等において公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−73827号公報
【特許文献2】特開平5−125288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、繊維材料の染色又は捺染の処理において、上記特許文献記載の染料に比べて、低塩濃度での染色性、再現性、均染性、ビルドアップ性、有効染着率及びウオッシュオフ性等がより良好であり、且つ、耐塩素性、耐光性、耐汗性、耐汗日光性、耐汗日光性、耐酸加水分解性、耐アルカリ性、耐洗濯性及び耐過酸化洗濯性等に優れた赤色の染色物を与えるような反応染料を開発すべく鋭意研究した結果、2つのトリアジン環を有し少なくとも1つのビニルスルホン系の反応基を有する特定構造のビスアゾ化合物が目的とする性能を示すことを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、下式(I)で示されるビスアゾ化合物又はその塩を提供するものである。
【0006】

[式中、m及びnは互いに独立に0又は1を表す。R1、R2及びR3は、互いに独立に水素原子又は置換されていてもよいアルキルを表す。Dは1個の−SO2CH=CH2又は−SO2CH2CH22(Z2はアルカリの作用で脱離する基を表す)で置換されたフェニル又はナフチルを表し、該フェニル又はナフチルはスルホ、メチル及びメトキシからなる群より選ばれる1又は2個の置換基で置換されていてもよい。Bは下式(II)又は(III)で示される基を表す。
【0007】

(式中、*印はアゾ基に接続する結合を表す。R4は水素原子、低級アルキル、低級アルコキシ又はスルホを表す。p及びqは、互いに独立に0又は1を表す。)
【0008】
Uは下式(U2)で示される連結基を表す。
−N(R)−A−** (U2)
{式中、R6は水素原子又は置換されていてもよいアルキルを表す。A2は置換されていてもよいアルキレンを表す。**印は−SO2Zに接続する結合を意味する。Zは−CH=CH2又は−CH2CH21を表す。Z1はアルカリの作用で脱離する基を表す。Xは下式(Y1)で示される基を表し、Yはハロゲノを表す。}
−N(R10)−R (Y1)
(式中、R9は置換されていてもよいフェニルを表し、R10は水素原子または置換されていてもよいアルキルを表す。)]
【発明の効果】
【0009】
本発明のビスアゾ化合物は反応染料として有用であり、例えばビルドアップ性や均染性等の染色性に優れている。また、本発明の方法によれば、諸堅牢度に優れた赤色の染色物や捺染物が再現性よく得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるビスアゾ化合物は上式(I)で示されるものであり、式中におけるm及びnは、互いに独立に0又は1を表す。また、Zは−CH=CH2又は−CH2CH21を表す。Z1はアルカリの作用で脱離する基である。
1としては、例えば硫酸エステル基、チオ硫酸エステル基、燐酸エステル基、酢酸エステル基やハロゲノ等を挙げることができる。中でも、硫酸エステル基およびクロロが好ましい。
上記Zの好ましい具体例としては−CH=CH2、−CH2CH2Cl又は−CH2CH2OSO3H等を挙げることができ、中でも−CH2CH2OSO3Hが特に好ましい。
【0011】
また、本発明におけるビスアゾ化合物(I)において、R1、R2及びR3は、互いに独立に水素原子又は置換されていてもよいアルキルを表す。当該アルキルは、好ましくは炭素数1〜4個のものであり、該アルキルの置換基としては、例えばヒドロキシ、シアノ、炭素数1〜4個のアルコキシ、ハロゲノ、カルバモイル、カルボキシ、アルコキシ(炭素数1〜4)カルボニル、アルキル(炭素数1〜4)カルボニルオキシ、スルホ及びスルファモイル等を挙げることができる。
上記アルキル、該アルキルの置換基としての炭素数1〜4個のアルコキシ、アルコキシ(炭素数1〜4)カルボニル及びアルキル(炭素数1〜4)カルボニルオキシは、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
【0012】
1、R2及びR3で表される置換されていてもよいアルキルの具体例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、3,4−ジヒドロキシブチル、シアノメチル、2−シアノエチル、3−シアノプロピル、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、3−メトキシプロピル、3−エトキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、クロロメチル、ブロモメチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、3−クロロプロピル、3−ブロモプロピル、4−クロロブチル、4−ブロモブチル、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、1,2−ジカルボキシエチル、カルバモイルメチル、2−カルバモイルエチル、3−カルバモイルプロピル、4−カルバモイルブチル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、2−メトキシカルボニルエチル、2−エトキシカルボニルエチル、3−メトキシカルボニルプロピル、3−エトキシカルボニルプロピル、4−メトキシカルボニルブチル、4−エトキシカルボニルブチル、メチルカルボニルオキシメチル、エチルカルボニルオキシメチル、2−メチルカルボニルオキシエチル、2−エチルカルボニルオキシエチル、3−メチルカルボニルオキシプロピル、3−エチルカルボニルオキシプロピル、4−メチルカルボニルオキシブチル、4−エチルカルボニルオキシブチル、スルホメチル、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、スルファモイルメチル、2−スルファモイルエチル、3−スルファモイルプロピル及び4−スルファモイルブチル等を挙げることができる。
【0013】
1、R2及びR3としては、水素原子又は無置換のアルキルが好ましく、水素原子、メチル及びエチルが特に好ましい。
【0014】
本発明におけるビスアゾ化合物(I)において、Dは1個の−SO2CH=CH2若しくは−SO2CH2CH22で置換されたフェニル、又は、1個の−SO2CH=CH2若しくは−SO2CH2CH22で置換されたナフチルを表す。該フェニル又はナフチルの置換基としての−SO2CH2CH22におけるZ2はアルカリの作用で脱離する基を表す。Z2としては、硫酸エステル基、チオ硫酸エステル基、燐酸エステル基、酢酸エステル基、ハロゲノ等を挙げることができる。中でも、硫酸エステル基及びクロロが好ましい。Dにおけるフェニル又はナフチルは、メチル、メトキシ、スルホから選ばれる1または2個の置換基でさらに置換されていてもよい。
これらの中、遊離酸の形が、(D2)で示される基が好ましい。
【0015】

【0016】
[式中、R15及びR16は互いに独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のアルコキシ、カルボキシ、スルホ又はハロゲノを表し、Qは−SO2CH=CH2又は−SO2CH2CH22を表す。Z2は前記の意味を有する。]
【0017】
式(D2)で示される基としては、以下のものが例示される。
【0018】

【0019】
(式中、Qは前記の意味を表す。)
【0020】
式(D2)で示される基の中でも、R15及びR16が互いに独立に水素原子、メチル、メトキシ又はスルホであって、かつ、Qが−SO2CH2CH2OSO3Hである場合が特に好ましい。
【0021】
Dで表されるナフチルとして、好ましくは、−SO2CH=CH2、−SO2CH2CH22(Z2は前記の意味を有する)及びスルホの群から選ばれる1個の置換基で置換され、更にスルホ、メチル、メトキシから選ばれる1又は2個の置換基により置換されたナフチルが挙げられる。
これらの中でも、遊離酸の形が、下式(D4)で示される基が好ましい。
【0022】

【0023】
(式中、xは0又は1を表し、Qは前記の意味を表す。)
【0024】
式(D4)で示される基としては、以下のものが例示される。
【0025】

【0026】
[Qは、前記の意味を表す。]
【0027】
式(D4)で示される基としては、これら例示のナフチル基の中でも、Qが−SO2CH2CH2OSO3Hであり、且つ、スルホで置換されていてもよいナフチルが特に好ましい。
【0028】
また、本発明のビスアゾ化合物(I)におけるBは、上式(II)又は(III)で示される基を表し、p及びqは互いに独立に0又は1を表し、*印はアゾ基に接続する結合を表し、R4は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ又はスルホを表す。
ここで、上記低級アルキル基や低級アルコキシとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシやsec−ブトキシ等が挙げられる。
【0029】
上記Bの具体例としては、例えば、
【0030】

【0031】
(式中、*印は、アゾ基に接続する結合を表す。)
等の基を挙げることができる。
【0032】
中でも、2−スルホ−1,5−フェニレン(この場合は、1−位でアゾ基に結合している)等が特に好ましい。
【0033】
本発明におけるビスアゾ化合物(I)におけるUは、式(U2)で示される連結基を表し、該式中、R6は水素原子又は置換されていてもよいアルキルを表すが、当該アルキルとしては、前記R1、R2及びR3で例示したものと同様の置換されていてもよいアルキルが挙げられる。
6としては、水素原子、メチル及びエチルである場合が好ましく、R6が水素原子である場合が特に好ましい。
【0034】
また、式(U2)中、A2は置換されていてもよいアルキレンを表す。かかるアルキレンとしては、炭素数1〜4のアルキル、ハロゲノ、ヒドロキシ、スルホ、シアノ、炭素数1〜4のアルコキシ、アルコキシ(炭素数1〜4)カルボニル、アルキル(炭素数1〜4)カルボニルオキシ及びカルバモイルの群から選ばれる置換基により置換されていてもよい炭素数2〜4個のアルキレン等が挙げられる。
2で表される置換されていてもよいアルキレンとしては、無置換の炭素数2〜4個のアルキレンが好ましく、エチレン及びトリメチレンが特に好ましい。
また、Uが式(U2)で示される基である場合は、A2がエチレン又はトリメチレンであり、且つ、R6が水素原子、メチル又はエチルであるものが好ましく、特に水素原子であるものが好ましい。
【0035】
本発明におけるビスアゾ化合物(I)において、Xは式(Y1)で示される基を表し、Yはハロゲノを表す。ハロゲノとしては、例えばフルオロ、クロロやブロモ等を挙げることができる。
【0036】
9における置換されていてもよいフェニルとしては、例えば、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のアルコキシ、スルホ、カルボキシ、ハロゲノ、ヒドロキシ、シアノ、カルバモイル、スルファモイル、カルボン酸エステル、2−ヒドロキシエチルスルホニル、アミノ、アシルアミノ及び炭素数1〜4のアルキルにより置換されたアミノの群から選ばれる1又は2個の置換基により置換されていてもよいフェニルを挙げることができる。
【0037】
かかるフェニルとしては、例えばフェニル、2−、3−又は4−メチルフェニル、2−、3−又は4−メトキシフェニル、2−、3−又は4−エチルフェニル、2−、3−又は4−エトキシフェニル、2−、3−又は4−カルボキシフェニル、2−、3−又は4−クロロフェニル、2−、3−又は4−スルホフェニル、2−スルホ−4−メトキシフェニル、2−、3−又は4−ヒドロキシフェニル等が好ましい。
【0038】
本発明におけるビスアゾ化合物(I)において、X及び/又はYが−NR910で示される式(Y1)の基である場合、該基(Y1)を形成するのに用いられるアミン化合物(HNR910)としては、例えば次のようなものを挙げることができる。
【0039】
イ)アンモニア;
ロ)下記の芳香族アミン類
1−アミノベンゼン、1−アミノ−2−、−3−又は−4−メチルベンゼン、1−アミノ−2,4−、−3,4−又は−3,5−ジメチルベンゼン、1−アミノ−2−、−3−又は−4−エチルベンゼン、1−アミノ−2−、−3−又は−4−メトキシベンゼン、1−アミノ−2−、−3−又は−4−エトキシベンゼン、1−アミノ−2−、−3−又は−4−クロロベンゼン、1−アミノ−2−、−3−又は−4−ブロモベンゼン、1−アミノ−2−、−3−又は−4−フルオロベンゼン、3−又は4−アミノフェニルメタンスルホン酸、2−、3−又は4−アミノベンゼンスルホン酸、3−又は4−メチルアミノベンゼンスルホン酸、3−又は4−エチルアミノベンゼンスルホン酸、5−アミノベンゼン−1,3−ジスルホン酸、6−アミノベンゼン−1,3−又は−1,4−ジスルホン酸、4−アミノベンゼン−1,2−ジスルホン酸、4−アミノ−5−メチルベンゼン−1,2−ジスルホン酸、2−、3−又は4−アミノ安息香酸、5−アミノベンゼン−1,3−ジカルボン酸、5−アミノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−アミノ−2−エトキシベンゼンスルホン酸、N−メチルアミノベンゼン、N−エチルアミノベンゼン、1−メチルアミノ−3−又は−4−メチルベンゼン、1−エチルアミノ−3−又は−4−メチルベンゼン、1−メチルアミノ−2−、−3−又は−4−クロロベンゼン、1−エチルアミノ−2−、−3−又は−4−クロロベンゼン、1−(2−ヒロドキシエチル)アミノ−3−メチルベンゼン、3−又は4−メチルアミノ安息香酸、1−アミノ−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、1−アミノ−2,5−ジメトキシベンゼン、2−、3−又は4−アミノフェノール、1−アミノ−3−又は−4−アセチルアミノベンゼン、2,4−又は2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、1−アミノベンゼン−3−又は−4−(β−ヒドロキシエチルスルホン)、2−、4−、5−、6−、7−又は8−アミノナフタレン−1−スルホン酸、1−、4−、5−、6−、7−又は8−アミノナフタレン−2−スルホン酸、7−メチルアミノナフタレン−2−スルホン酸、7−エチルアミノナフタレン−2−スルホン酸、7−ブチルアミノナフタレン−2−スルホン酸、7−イソブチルアミノナフタレン−2−スルホン酸、4−、5−、6−、7−又は8−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸、2−、3−又は4−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸、4−又は8−アミノナフタレン−1,6−ジスルホン酸、4−アミノナフタレン−1,7−ジスルホン酸、3−又は4−アミノナフタレン−2,6−ジスルホン酸、3−又は4−アミノナフタレン−2,7−ジスルホン酸、6−又は7−アミノナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸、4−、7−又は8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、4−アミノナフタレン−1,3,7−トリスルホン酸等;
【0040】
ハ)下記の脂肪族アミン類
メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、アリルアミン、2−クロロエチルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−アセチルアミノエチルアミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−メトキシプロピルアミン、1−アミノ−3−ジメチルアミノプロパン、2−アミノエタンスルホン酸アミド、2−アミノエタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2−メチルアミノエタンスルホン酸アミド、2−メチルアミノエタンスルホン酸、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、2−スルファートエチルアミン、アミノ酢酸、メチルアミノ酢酸、3−アミノプロピオン酸、3−アミノプロピオン酸アミド、3−メチルアミノプロピオン酸、3−メチルアミノプロピオン酸アミド、ε−アミノカプロン酸、ベンジルアミン、2−、3−又は4−スルホベンジルアミン、2−、3−又は4−クロロベンジルアミン、2−、3−又は4−メチルベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、1−フェニルエチルアミン、2−フェニルエチルアミン、1−フェニル−2−プロピルアミン等。
【0041】
かかる式 HNR910で示されるアミン化合物として、特に好ましいものとしては、例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、2−、3−又は4−クロロアニリン、N−メチル−2−、−3−又は−4−クロロアニリン、N−エチル−2−、−3−又は−4−クロロアニリン、2−、3−又は4−メチルアニリン、2−、3−又は4−エチルアニリン、2−、3−又は4−メトキシアニリン、2−、3−又は4−エトキシアニリン、2−、3−又は4−ヒドロキシアニリン、アニリン−2−、−3−又は−4−スルホン酸、3−又は4−メチルアミノベンゼンスルホン酸、3−又は4−エチルアミノベンゼンスルホン酸、2−、3−又は4−カルボキシアニリン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、タウリン、N−メチルタウリン、モノ−又はジ−エタノールアミン、2−スルファモイルエチルアミン、2−カルバモイルエチルアミンを挙げることができる。
これらの中でも、とりわけ、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、2−、3−又は4−クロロアニリン、N−メチル−2−、−3−又は−4−クロロアニリン、N−エチル−2−、−3−又は−4−クロロアニリン、2−、3−又は4−メチルアニリン、2−、3−又は4−エチルアニリン、2−、3−又は4−メトキシアニリン、2−、3−又は4−エトキシアニリン、2−、3−又は4−ヒドロキシアニリン、アニリン−2−、−3−又は−4−スルホン酸、3−又は4−メチルアミノベンゼンスルホン酸、3−又は4−エチルアミノベンゼンスルホン酸、2−、3−又は4−カルボキシアニリン等が、特に好ましい。
【0042】
さらに、Xが式(Y1)で示される基である場合、R9及びR10で示される基は、一方が置換されていてもよいフェニルであることが好ましく、R9が水素原子、メチル又はエチルであり、かつ、R10が炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のアルコキシ、スルホ、カルボキシ、ハロゲノ、ヒドロキシ、シアノ及びアシルアミノの群から選ばれる基で置換されていてもよいフェニルである場合が特に好ましい。
【0043】
本発明のビスアゾ化合物(I)において、R9が置換されていてもよいフェニル、特に炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のアルコキシ、スルホ、カルボキシ、ハロゲノ、ヒドロキシ、シアノ及びアシルアミノの群から選ばれる基で置換されていてもよいフェニルであるものが好ましい。
Yはハロゲノを表す。ハロゲノとしては、フルオロ又はクロロが好ましい。
【0044】
本発明のビスアゾ化合物(I)において、D又はBとアゾ基を介して連結しているアミノナフトールスルホン酸類としては、例えば、H酸、K酸、J酸、γ酸、スルホJ酸及びN−メチルJ酸等を挙げることができる。これらの中でも、H酸、K酸、J酸が特に好ましい。
【0045】
また、本発明におけるビスアゾ化合物(I)は、遊離酸の形であっても、その塩の形であっても、又は、それらの混合物の形であってもよい。好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びそれらを含有する混合物であり、中でもナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩及びそれらを含有する混合物が好ましい。
さらに、本発明におけるビスアゾ化合物又はその塩としては、式(I)で示されるものであれば特に限定されないが、式(I’)で示されるものが好ましい。
【0046】

[式中、R3、D、B、U、Z、X及びYは、上記の意味を表す。]
中でも、以下に示される化合物が特に好ましい。
【0047】

【0048】
[式中、R15、R16、U、X、Y、Z、Q及びxは前記の意味を有する。また、[ ]外に存在する2つの残基は、[ ]内に示した2つのアゾ基のいずれに結合していてもよい。]
【0049】
上記で例示した2つの化合物群のうち、次の第一〜第四の条件、即ち、第一にR15及びR16が、互いに独立に水素、メチル、メトキシ又はスルホであり、第二にUが式(U2)であり、しかも、式(U2)におけるA2がエチレン又はトリメチレンであって、かつ、R6が水素原子であり、第三にXが式(Y1)であり、しかも、式(Y1)におけるR9が水素原子、メチル又はエチルであり、かつ、R10が炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のアルコキシ、スルホ、カルボキシ、ハロゲノ、ヒドロキシ、シアノ及びアシルアミノの群から選ばれる基で置換されていてもよいフェニルであり、第四にQが−SO2CH2CH2OSO3Hである化合物が特に好ましい。
【0050】
本発明のビスアゾ化合物(I)の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の2つの方法を例示することができる。
第一の製造方法は、式(X)で示される化合物と、式(XI)で示されるアミン化合物と、式(XVI−1)、(XVI−2)、(XVI−3)、(XVI−4)又は(XVII)で示される化合物のいずれかを、2,4,6−トリハロゲノ−s−トリアジンと任意の順序で縮合させる方法である。
【0051】
第二の製造方法は、下式(XIX)
【0052】

【0053】
[式中、m、n、R1、R2及びDは前記の意味を有する。Wは式(Y1)で示される基を意味する。]
で示される化合物に、常法によりジアゾ化した式(XIV)で示される化合物を常法により、カップリングさせる方法である。
【0054】
本発明のビスアゾ化合物(I)及びその原料を得るに当たり、用いる2,4,6−トリハロゲノ−s−トリアジンの具体化合物としては、例えば、塩化シアヌル、フッ化シアヌル等を挙げることができる。
【0055】
また、2,4,6−トリハロゲノ−s−トリアジンにかかわる縮合反応においては、上述したように、その縮合順序は特に制限されるものではない。また、かかる縮合反応の条件も特に制限されないが、例えば、一番初めの縮合反応は温度−10℃ないし40℃でpH1ないし10の条件下で実施し、二番目の縮合反応は温度0℃ないし70℃でpH2ないし10の条件下で実施し、三番目の縮合反応は温度10℃ないし100℃でpH2ないし9の条件下で実施することを例示することができる。
【0056】
さらに、本発明のビスアゾ化合物(I)を得るに当たり、式(V)中、Zで表される基が−CHCH1であって、アルカリの作用で脱離する基Z1が、例えば、硫酸エステルや燐酸エステルのようなエステルである場合、当該エステル基の形成は縮合反応の後に行ってもよい。即ち、前記した本発明化合物の製造に用いた式(V)で示される化合物のかわりに、下式(V−a)
H−U−SO2−CH2CH2−OH (V−a)
[式中、Uは前記の意味を有する。]
で示されるアミン化合物を用い、前記の方法に準じて合成を行って本発明の前駆体を得、その後、例えば、常法にしたがってエステル化を行うことによっても、即ち、当該エステル基の形成を縮合反応の後に行う方法によっても、式(I)の化合物を得ることができる。
【0057】
本発明のビスアゾ化合物(I)は、例えば、繊維材料を染色又は捺染する染料として用いることができる。かかる材料としては、ヒドロキシル基及び/又はカルボンアミド基を含有するものであれば特に限定されないが、例えば、天然又は再生セルロース繊維材料、天然又は合成ポリアミド繊維材料、ポリウレタン繊維材料、皮革、及びこれらを含有する混紡材料等を挙げることができる。
【0058】
天然セルロース繊維材料として、具体的には、木綿、あるいはその他の植物繊維、例えばリネン、麻、ジュート及びラミー繊維等を挙げることができる。
再生セルロース繊維材料として、具体的には、レーヨン、ポリノジック、キュプラ繊維、及び商品名「テンセル」、「タフセル」、「モダール」、「セルティマ」等を挙げることができる。
天然又は合成ポリアミド繊維材料として、具体的には、羊毛、その他の動物毛、絹、ポリアミド−6,6、ポリアミド−6、ポリアミド−11、ポリアミド−4等を挙げることができる。
また、これらを含有する混紡材料としては、これらの繊維材料の混紡材料の他、これらの繊維材料と、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維との混紡材料等も例示することができる。
【0059】
本発明化合物は、上述の材料上に、特に上述の繊維材料上に、物理化学的性状に応じた方法で染色又は捺染することができる。
具体的には、例えば、上述の繊維材料上に、吸尽染色法、コールドバッチアップ法、連続染色法、捺染法等の方法により染色又は捺染する方法を挙げることができる。
例えばセルロース繊維材料上に吸尽染色する場合、炭酸ソーダ、第三燐酸ソーダ、重炭酸ソーダ、苛性ソーダのような酸結合剤の存在下、必要に応じて、芒硝や食塩等の中性塩を加え、さらに必要に応じて、溶解助剤、浸透剤又は均染剤等を併用し、比較的低い温度で染色する方法等が例示される。ここで酸結合剤、中性塩等の添加は、一度に行ってもよく、又常法により分割して行ってもよい。
セルロース繊維上にコールドバッチアップ法で染色する場合においては、芒硝や食塩等の中性塩、及び、苛性ソーダやケイ酸ソーダ等の酸結合剤を用いてパジング後、密閉包装材料中に一定温度で放置して処理する方法等が例示される。
セルロース繊維上に連続染色法で染色する場合においては、炭酸ソーダや重炭酸ソーダ等の酸結合剤の存在下、公知の方法で室温又は高められた温度でパジング後、スチーミング又は乾熱により処理する一相パジング法や、本発明の化合物が溶解されているパジング液に繊維を浸漬後、芒硝や食塩等の中性塩、及び、苛性ソーダやケイ酸ソーダ等の酸結合剤をパジングし、スチーミング又は乾熱することにより処理する二相パジング法等が例示される。
セルロース繊維上に捺染を行う場合においては、一相で、重曹等の結合剤を含有する捺染ペーストで印捺し、次いで80℃以上の高温でスチーミングする方法や、二相で、例えば中性又は弱酸性の捺染ペーストで印捺し、これを電解質含有のアルカリ性浴に通過させた後、又はアルカリ性の電解質含有パジング液でオーバーパジングし、その後スチーミング又は乾熱することにより処理する方法等が例示される。ここで、捺染ペーストには、例えばアルギン酸ソーダや澱粉エーテル等の糊剤及び/又は乳化剤を含んでいてもよく、また必要に応じて、例えば尿素等の捺染助剤及び/又は分散剤を含んでいてもよい。
セルロース繊維上に本発明化合物を染色又は捺染する場合、用いられる酸結合剤は特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と無機又は有機酸との水溶性塩基性塩、あるいは加熱状態でアルカリを遊離する化合物等を例示できる。特に、アルカリ金属の水酸化物及び弱ないし中程度の強さの無機又は有機酸のアルカリ金属塩が挙げられ、これらの中でも、ナトリウム又はカリウムの水酸化物、ナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。このような酸結合剤として具体的には、上述した炭酸ソーダ、第三燐酸ソーダ、重炭酸ソーダ、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、重曹の他に、苛性カリ、蟻酸ソーダ、炭酸カリ、第一又は第二燐酸ソーダ、トリクロロ酢酸ソーダなども挙げられる。
合成又は天然のポリアミド繊維上や、ポリウレタン繊維上に吸尽染色する場合においては、酸性〜弱酸性の染浴中、pH値の制御下、本発明の化合物を吸尽させ、次いで60〜120℃程度の温度下、中性〜アルカリ性のpH値に変化させる方法等が例示される。ここで必要に応じて、均染剤等、例えば塩化シアヌルと3倍モル量のアミノベンゼンスルホン酸又はアミノナフタレンスルホン酸との縮合生成物あるいは、例えばステアリルアミンとエチレンオキサイドとの付加生成物等の均染剤等を用いても差し支えない。
【0060】
本発明化合物は、特にセルロース繊維材料を染色又は捺染する際に再現性に優れており、均染性やウオッシュ オフ性が良好であり、高いビルドアップ性を有し、且つ有効染着率が高いものである。また、低塩濃度で染色し得るという利点がある。
さらに、本発明化合物を用いることにより、各種の堅牢度、特に耐塩素性、耐光性、耐汗性、耐汗日光性、耐酸加水分解性、耐アルカリ性、耐洗濯性や耐過酸化洗濯性が良好な染色物及び捺染物が得られる。
【0061】
本発明化合物は、所望の色相を得るために、必要に応じて本発明の特徴を損なわない範囲で、他の染料と混合して使用することができる。混合して使用する染料としては、反応染料であれば特に制約はないが、例えば、反応基としてスルファトエチルスルホン基、ビニルスルホン基、モノクロロトリアジン基、モノフルオロトリアジン基、モノニコチン酸トリアジン基、ジクロロトリアジン基、ジフルオロモノクロロピリミジン基、および、トリクロロピリミジン基の少なくとも1種を、少なくとも1つ以上有する染料、又はSumifix、Sumifix Supra、Remazol、Levafix、Procion、Cibacron、Basilen、Drimarene、Kayacion、Kayacelon React等の冠称名で市販されている染料、更には、特開昭50−178号、特開昭51−17538号、特開昭56−9483号、特開昭56−15481号、特開昭56−118976号、特開昭56−128380号、特開昭57−2365号、特開昭57−89679号、特開昭57−143360号、特開昭58−191755号、特開昭59−15451号、特開昭59−96174号、特開昭59−161463号、特開昭60−6754号、特開昭60−123559号、特開昭60−229957号、特開昭60−260654号、特開昭61−126175号、特開昭61−155469号、特開昭61−225256号、特開昭63−77974号、特開昭63−225664号、特開平1−185370号、特開平3−770号、特開平5−247366号、特開平6−287463号の各公報に記載されている染料及びC.I.Reactive Blue19、C.I.Reactive Black5で表される染料等が例示される。
【実施例】
【0062】
以下、実施例等により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。例中、部は重量部を表す。
【0063】
参考例1
常法により、2−(2−スルホフェニル)アゾ−1−ヒドロキシ−8−アミノナフタレン−3,6−ジスルホン酸42.3部と塩化シアヌル18.4部を縮合させ、次に1−アミノ−8−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸31.9部を縮合させた。一方、常法によりジアゾ化した2−(3−アミノ−4−スルホフェニル)アミノ−4−〔3−(2−スルファートエチルスルホニル)フェニル〕アミノ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン58.1部をカップリングさせた後、塩析して、遊離酸の形で、下式で示されるビスアゾ化合物を得た。
【0064】

【0065】
実施例1〜4
遊離酸の形で、2−(2−スルホフェニルアゾ)−1−ヒドロキシ−8−アミノナフタレン−3,6−ジスルホン酸(化合物a1)の代わりに下記の化合物[(a6)、(a8)]を用い、1−アミノ−8−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸(化合物b1)の代わりに下記の化合物[(b2)、(b4)]を用い、且つ、2−(3−アミノ−4−スルホフェニル)アミノ−4−[3−(2−スルファートエチルスルホニル)フェニル]アミノ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン(化合物c1)の代わりに下記の化合物[(c10)、(c11)、(c13)、(c17)]を各々用いて参考例1と同様の方法で合成し、各々対応するビスアゾ化合物を得た。上記a群の化合物、b群の化合物及びc群の化合物の組合せは、それぞれ、下表1記載のとおりとした。また、木綿を染色した場合の染色物の色調は赤色又は緋色であった。なお、上記の合成に際しては、塩化シアヌルに対する一次的縮合及び二次的縮合の順序を替えて行っても、同じ化合物が得られる。また、下表に記載の化合物(C)において、スルファートエチルスルホニル基を有する化合物においては、それぞれ対応するヒドロキシエチルスルホニル体を用いて同様に合成し、最後に常法により硫酸エステル化することによっても、同様の結果が得られた。
【0066】

(a6)
【0067】

(a8)
【0068】

(b2)
【0069】

(b4)
【0070】
2−(3−アミノ−4−スルホフェニル)アミノ−4−[3−(2−スルファートエチルスルホニル)フェニル]アミノ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン(化合物c1)
【0071】

(c10)
【0072】

(c11)
【0073】

(c13)
【0074】

(c17)
【0075】
【表1】

【0076】
参考例2
常法により、2−(2−スルホフェニル)アゾ−1−ヒドロキシ−8−アミノナフタレン−3,6−ジスルホン酸42.3部と塩化シアヌル18.4部を縮合させ、次に1−アミノ−8−ヒドロキシナフタレン3,6−ジスルホン酸31.9部を縮合させ、さらにアニリン9.3部を縮合させた。一方、常法によりジアゾ化した2−(3−アミノ−4−スルホフェニル)アミノ−4−[3−(2−スルファートエチルスルホニル)フェニル]アミノ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン58.1部をカップリングさせた後、塩析して、遊離酸の形で、下記のビスアゾ化合物を得た。
【0077】

【0078】
実施例1
遊離酸の形で、2−(2−スルホフェニルアゾ)−1−ヒドロキシ−8−アミノナフタレン−3,6−ジスルホン酸の代わりに下表2〜下表5の第2欄に記載の化合物を、アニリンの代わりに同表第3欄に記載の化合物を、1−アミノ−8−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸の代わりに同表第4欄に記載の化合物を、2−(3−アミノ−4−スルホフェニル)アミノ−4−[3−(2−スルファートエチルスルホニル)フェニル]アミノ−6−クロロ−1,3,5−トリアジンの代わりに同表第5欄に記載の化合物を、各々用いて、参考例2と同様の方法で合成し、各々対応するビスアゾ化合物を得た。又、これらのビスアゾ化合物を用いて、木綿を染色した場合に得られる染色物の色調を、同表第6欄に示す。
なお、上記の合成に際しては、塩化シアヌルに対する一次的縮合、二次的縮合及び三次的縮合の順序を任意に替えて行っても、同じ化合物が得られる。
また、第5欄に記載の化合物の代わりに、それぞれ対応するヒドロキシエチルスルホニル体を用いて同様に合成し、最後に常法により硫酸エステル化することによっても、同じ化合物が得られた。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
染色例1
実施例1〜2で得られたそれぞれのビスアゾ化合物0.3部を、各々200部の水に溶解し、芒硝20部を加え、さらに木綿10部を加えて60℃に昇温した。60℃に達してから30分経過後、炭酸ソーダ4部を加え、同温度で1時間染色した。次いで水洗及びソーピングを行った。水洗時及びソーピング時のウォッシュオフ性は良好であり、染色排水の着色量はわずかであった。得られた染色物は、均一で、濃い赤色であった。また、得られた染色物の耐塩素性、耐光性、耐汗性、耐汗日光性、耐酸加水分解性、耐アルカリ性、耐洗濯性、耐過酸化洗濯性の諸堅牢度は、いずれも良好であった。
【0084】
染色例2
染色例1において、芒硝の使用量を20部から10部に変更する以外は染色例1と同じ方法で染色を行った。得られた染色物は、各々、染色例1で得られた染色物と同等の品質を有していた。
【0085】
染色例3
染色例1において、芒硝の使用量を20部から4部に変更する以外は染色例1と同じ方法で染色を行った。得られた染色物は、各々、染色例1で得られた染色物と同等の品質を有していた。
【0086】
染色例4
染色例1〜3の各々において、染色の温度を60℃から70℃に変更する以外は、染色例1〜3と同じ方法で染色を行った。得られた染色物は、各々、染色例1〜3で得られた染色物と同等の品質を有していた。
【0087】
染色例5
染色例1〜3の各々において、染色の温度を60℃から80℃に変更する以外は、染色例1〜3と同じ方法で染色を行った。得られた染色物は、各々、染色例1〜3で得られた染色物と同等の品質を有していた。
【0088】
染色例6
染色例1〜5の各々において、各ビスアゾ化合物0.3部を用いる代わりに各ビスアゾ化合物0.3部を用い、且つ、スルホン化度が110%であり、平均重合度が1.8であるメチルナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物のナトリウム塩0.06部を用いる以外は、染色例1〜5と同じ方法で染色を行った。得られた染色物は、各々、染色例1〜5で得られた染色物と同等の品質を有していた。
【0089】
染色例7
実施例1〜2で得られたそれぞれのビスアゾ化合物を用いて、以下の組成をもつ色糊を作った。
【0090】
色糊組成
ビスアゾ化合物 5部
尿素 5部
アルギン酸ソーダ(5%)元糊 50部
熱湯 25部
重曹 2部
バランス(水) 13部
【0091】
この色糊をシルケット加工綿ブロード上に印捺し、中間乾燥後、100℃で5分間スチーミングを行い、湯洗い、ソーピング、湯洗い、そして乾燥して、仕上げた。得られた捺染物は、均一で、濃い赤色であった。また、得られた捺染物の耐塩素性、耐光性、耐汗性、耐汗日光性、耐酸加水分解性、耐アルカリ性、耐洗濯性、耐過酸化洗濯性の諸堅牢度は、いずれも良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)で示されるビスアゾ化合物又はその塩。

[式中、m及びnは互いに独立に0又は1を表す。R1、R2及びR3は、互いに独立に水素原子又は置換されていてもよいアルキルを表す。Dは1個の−SO2CH=CH2又は−SO2CH2CH22(Z2はアルカリの作用で脱離する基を表す)で置換されたフェニル又はナフチルを表し、該フェニル又はナフチルはスルホ、メチル及びメトキシからなる群より選ばれる1又は2個の置換基で置換されていてもよい。Bは下式(II)又は(III)で示される基を表す。

(式中、*印はアゾ基に接続する結合を表す。R4は水素原子、低級アルキル、低級アルコキシ又はスルホを表す。p及びqは、互いに独立に0又は1を表す。)
Uは下式(U2)で示される連結基を表す。
−N(R)−A−** (U2)
{式中、R6は水素原子又は置換されていてもよいアルキルを表す。A2は置換されていてもよいアルキレンを表す。**印は−SO2Zに接続する結合を意味する。Zは−CH=CH2又は−CH2CH21を表す。Z1はアルカリの作用で脱離する基を表す。Xは下式(Y1)で示される基を表し、Yはハロゲノを表す。}
−N(R10)−R (Y1)
(式中、R9は置換されていてもよいフェニルを表し、R10は水素原子または置換されていてもよいアルキルを表す。)]
【請求項2】
下式(I’)で示されるビスアゾ化合物又はその塩。

[式中、R3、D、B、U、Z、X及びYは、請求項1に記載の意味を表す。]
【請求項3】
Dが、−SO2CH=CH2又は−SO2CH2CH22(Z2はアルカリの作用で脱離する基を表す)で置換されており、さらに、別の置換基で置換されていてもよいフェニルである請求項1又は2のいずれかに記載のビスアゾ化合物又はその塩。
【請求項4】
Xが式(Y1)で示される基であり、R10が水素原子であり、且つR9がメチル又はエチルで置換されていてもよいフェニルである請求項1〜3のいずれかに記載のビスアゾ化合物又はその塩。
【請求項5】
Yが、フルオロ又はクロロである請求項1〜4のいずれかに記載のビスアゾ化合物又はその塩。
【請求項6】
式(U2)で示される連結基におけるA2がエチレンであり、R6が水素原子である請求項1〜5のいずれかに記載のビスアゾ化合物又はその塩。
【請求項7】
Bが式(II)で示される基であり、R4が水素原子であり、pが0である請求項1〜6のいずれかに記載のビスアゾ化合物又はその塩。
【請求項8】
1、R2及びR3が、水素原子である請求項1〜7のいずれかに記載のビスアゾ化合物又はその塩。
【請求項9】
Zが、−CH2CH2OSO3Hである請求項1〜8のいずれかに記載のビスアゾ化合物又はその塩。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のビスアゾ化合物又はその塩を用いることを特徴とする繊維材料の染色又は捺染方法。

【公開番号】特開2009−228007(P2009−228007A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131874(P2009−131874)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【分割の表示】特願2005−129109(P2005−129109)の分割
【原出願日】平成9年8月22日(1997.8.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】