説明

ビスホスホネート含有徐放性製剤

注射後体液と接触してゲル化デポ系を形成する、アスパラギン酸塩、例えば一もしくは二アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、例えば一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、例えば一もしくは二グルタミン酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩および水を含む非経腸投与用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体医薬組成物、特にソマトスタチン類似体を含むデポ剤製剤、ならびに該デポ剤製剤の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
デポ剤製剤は、典型的に非経腸的に投与する。ソマトスタチンデポ剤製剤は、小さいゲージの針を通して注射により皮下または筋肉内に投与するか、またはカニューレを通して到達できる組織に置いてよい。しかしながら、非経腸投与は、とりわけ繰り返し注射が必要であるとき、特に苦痛である。さらに、液体形態で投与し、注射後に体内で固体インプラントを形成するデポ剤製剤は困難を伴い得る。固化工程がしばしば注射前のシリンジ中で始まり、針が詰まる原因となる。
【0003】
さらに、これらのデポ剤製剤は有機溶媒に溶解すべきポリマーまたはポリマーの混合物を含み得、例えばそれらは50%を超える有機溶媒を含み得る。有機溶媒が注射用溶液に残れば、それはインプラント部位での、重篤な組織刺激または壊死の原因となり得る。
【0004】
EP779805は、体液と接触するとゲルを形成する可溶性ペプチド塩および組成物の30重量%までの薬学的に許容される担体から成る、医薬組成物を開示する。EP779805に記載のペプチドは、ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体、例えばランレオチドである。
【0005】
驚くべきことに、有利な非経腸ソマトスタチンデポ剤製剤が、ポリマーを使用せず、かつ有機溶媒を使用せずに、3〜7のpHを有するソマトスタチン類似体の塩および水を含む組成物として得られることが、本発明により判明した。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、一つの局面において、注射後体液と接触してゲル化デポ剤を形成する、アスパラギン酸塩、例えば一もしくは二アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、例えば一もしくは二グルタミン酸塩、またはコハク酸塩、例えば一もしくは二コハク酸塩、乳酸塩、酢酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩および水を含む、非経腸投与用医薬組成物を提供する。ソマトスタチン類似体塩の塩:塩基比は、0.1〜2の範囲であってよく、ソマトスタチン類似体塩の可溶性を提供する。本医薬組成物は、約3.0〜7.0、好ましくは4.0〜6.0、およびより好ましくは約4.0〜5.0のpHを有する。所望により本組成物は、約3.0〜7.0、好ましくは約4.0〜6.0、最も好ましくは4.0〜5.0にpHを安定化させる量で薬学的に許容される緩衝剤を含み得る。
【0007】
他の局面において、本発明は、注射後体液と接触してゲル化デポ剤を形成する、約3.0〜7.0のpHを有する、アスパラギン酸塩、例えば一もしくは二アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、例えば一もしくは二グルタミン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、例えば一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩を含む、非経腸投与用医薬組成物を提供する。
【0008】
約3.0〜7.0のpHを有する組成物は良好な溶解性を提供し、故に本発明の組成物は、沈殿無しで長期間貯蔵できる。本組成物を、患者に注射により投与し、そこで、本組成物が、患者体液と接触する前ではなく、接触後に、ゲル化デポ剤を形成し始める。本ゲル化デポ剤は、アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩を、長期間にわたり、患者内で放出する。
【0009】
他の局面において、本発明は、
i)アスパラギン酸塩、例えば一もしくは二アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、例えば一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、例えば一もしくは二グルタミン酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩を水に溶解し、
ii)所望により本溶液のpHを安定化するために緩衝剤を添加し、そして所望により
iii)該溶液をシリンジに充填する
工程を含む、デポ剤製剤の製造法を提供する。
【0010】
さらなる局面において、本発明は、
i)アスパラギン酸塩、例えば一もしくは二アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、例えば一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、例えば一もしくは二グルタミン酸塩、またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩を、3.0〜7.0のpHを有する水に溶解し、
ii)所望により本溶液のpHを安定化するために緩衝剤を添加し、そして所望により
iii)該溶液をシリンジに充填する
工程を含む、デポ剤製剤の製造法を提供する。
【0011】
本発明は、アスパラギン酸塩、例えば一もしくは二アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、例えば一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、例えば一もしくは二グルタミン酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩に関する。
【0012】
ソマトスタチンは、構造式
【化1】

を有する、テトラデカペプチドである。
【0013】
特に興味深いソマトスタチン類似体は、例えばWO97/01579およびWO97/25977に記載されている。該ソマトスタチン類似体は、式I
【化2】

〔式中、Xは式(a)または(b)
【化3】

のラジカルであり、ここで、Rは所望により置換されているフェニルであり、該置換基はハロゲン、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシであり得、
は−Z−CH−R、−CH−CO−O−CH−R
【化4】

であり、ここで、
はOまたはSであり、そして
はCα側鎖に芳香族残基を有するα−アミノ酸、またはDab、Dpr、Dpm、His、(Bzl)HyPro、チエニル−Ala、シクロヘキシル−Alaおよびt−ブチル−Alaから選択されるアミノ酸単位であり、該配列のLysは、天然ソマトスタチン−14のLysに対応する。〕
のアミノ酸配列を含む。
【0014】
ここで使用するソマトスタチン類似体は、式Iの配列を含み、そしてさらに1個以上のアミノ酸単位が削除されているおよび/または1個以上の他のアミノ酸ラジカルで置換されているおよび/または1個以上の官能基が1個以上の他の官能基で置換されているおよび/または1個以上の基が1個または数個の他の等配電子基で置換されている、天然に存在するソマトスタチン−14由来の直鎖または環状ペプチドである。一般に、本用語は、下記に定義する少なくとも1種のソマトスタチン受容体サブタイプにnM範囲の親和性を有する、上記式Iの配列を含む、天然ソマトスタチン−14の全ての修飾誘導体を包含する。
【0015】
好ましくは、本ソマトスタチン類似体は、ソマトスタチン−14の8位から11位の残基が、上記で定義の式Iの配列で置換されている化合物である。
【0016】
より好ましくは、本ソマトスタチン類似体は、ヘキサペプチド単位を含み、該ヘキサペプチド単位の3位から6位の残基が式Iの配列を含む、上記の化合物である。特に好ましいのは、ヘキサペプチド単位の1位および2位の残基が、当分野で既知のいずれかのもの、例えばA.S. Dutta in Small Peptides, Vol.19, 292-354, Elsevier, 1993に記載の通り、または、ソマトスタチン−14のPheおよび/またはPheの置換基として既知のものである、ソマトスタチンヘキサペプチドである。
【0017】
より特に、本ソマトスタチン類似体は、ヘキサペプチド単位が、例えば6位の残基のα−カルボニル基と1位の残基のα−アミノ基の間に直接ペプチド架橋を有する、環状である化合物である。
【0018】
式Iの配列のLys、XおよびXはL−立体配置を有するが、TrpはD−またはL−立体配置を有し得る。好ましくはTrpはD−立体配置を有する。
は、好ましくは式(a)または(b)の残基であり、Rは好ましくは
【化5】

である。
【0019】
がCα側鎖上に芳香族残基を有するとき、それは、適当には天然または非天然α−アミノ酸、例えばPhe、Tyr、Trp、Nal、Pal、ベンゾチエニル−Ala、Ticおよびサイロニン、好ましくはPheまたはNal、より好ましくはPheである。Xは、好ましくはCα側鎖に芳香族残基を担持するα−アミノ酸である。
【0020】
が置換フェニルであるとき、それは、適当にはハロゲン、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシで、例えばオルトおよび/またはパラを置換されている。より好ましくはRは非置換フェニルである。
は好ましくはOである。
【0021】
本発明の代表的化合物は、例えば式(II)
【化6】

〔式中、
およびXは上記で定義の通りであり、
AはPro、
【化7】

から選択される二価残基であり、
ここで、RはNR−C2−6アルキレン、グアニジノ−C2−6アルキレンまたはC2−6アルキレン−COOHであり、R3aはH、C1−4アルキルであるか、または独立してRについて定義の意味の一つを有し、R3bはHまたはC1−4アルキルであり、RはOHまたはNRであり、Rは−(CH)1−3−または−CH(CH)−であり、RはHまたはCHであり、R4aは所望により環置換されたベンジルであり、RおよびRの各々は、H、C1−4アルキル、ω−アミノ−C1−4アルキレン、ω−ヒドロキシ−C1−4アルキレンまたはアシルであり、Rは直接結合またはC1−6アルキレンであり、RおよびRの各々は、独立してH、C1−4アルキル、ω−ヒドロキシ−C2−4アルキレン、アシルまたはCHOH−(CHOH)−CH−であり、ここで、cは0、1、2、3または4であるか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、さらなるヘテロ原子を含み得るヘテロ環式基を形成し、そしてR11は所望により環置換されているベンジル、−(CH)1−3−OH、CH−CH(OH)−または−(CH)1−5−NRであり、そして
ZZは天然または非天然α−アミノ酸単位である。〕
の化合物である。
【0022】
ZZは、D−またはL−立体配置を有し得る。ZZが天然または非天然α−アミノ酸単位であるとき、それは、適当には例えばThr、Ser、Ala、Val、Ile、Leu、Nle、His、Arg、Lys、Nal、Pal、Tyr、Trp、所望により環置換されているPheまたはNα−ベンジル−Glyであり得る。ZZがPheであるとき、そのベンゼン環は、例えばNH、NO、CH、OCHまたはハロゲンで、好ましくはパラ位を置換され得る。ZZがPheであるとき、そのベンゼン環は、好ましくは非置換である。
【0023】
AがProアミノ酸残基であるとき、該プロリン環上に存在する置換基、例えばR−NH−CO−O−などは、好ましくは4位である。このような置換プロリン残基は、cis形態、例えば
【化8】

ならびにtrans形態で存在し得る。個々の各幾何異性体ならびにそれらの混合物は、本発明の化合物である。
【0024】
Aが
【化9】

〔式中、NRはヘテロ環式基を形成する。〕
であるとき、このような基は芳香族または飽和であってよく、1個の窒素または1個の窒素と窒素および酸素から選択される第二のヘテロ原子を含み得る。好ましくは本ヘテロ環式基は、例えばピリジルまたはモルホリノである。この残基中のC2−6アルキレンは、好ましくは−CH−CH−である。
【0025】
A中のR、R、RおよびRとしての任意のアシルは、例えばR12CO−(式中、R12はH、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C3−6シクロアルキルまたはベンジル、好ましくはメチルまたはエチルである)であり得る。A中のR4aまたはR11が環置換されているベンジルであるとき、本ベンゼン環は、ZZについて上記の通り置換され得る。
【0026】
特に好ましいのは、遊離形、塩形または保護された形の式III
【化10】

〔式中、C−2での立体配置は(R)もしくは(S)またはその混合物であり、そして
RはNR1011−C2−6アルキレンまたはグアニジン−C2−6アルキレンであり、R10およびR11の各々は、独立してHまたはC1−4アルキルである。〕
の化合物であり、その合成は、例えば引用により本明細書に包含するWO2002/10192に記載の通りに行い得る。
【0027】
塩は、例えば引用により本明細書に包含するWO2002/10192に記載の方法により得る。
【0028】
好ましくはRはNR1011−C2−6アルキレンである。式IIの好ましい化合物は、Rが2−アミノ−エチルである化合物、すなわち遊離形、塩形または保護された形のシクロ[{4−(NH−C−NH−CO−O−)Pro}−Phg−DTrp−Lys−Tyr(4−Bzl)−Phe](ここでは化合物Aと呼ぶ)およびシクロ[{4−(NH−C−NH−CO−O−)Pro}−DPhg−DTrp−Lys−Tyr(4−Bzl)−Phe]である。Phgは−HN−CH(C)−CO−を意味し、Bzlはベンジルを意味する。
【0029】
保護された形の本発明の塩は、少なくとも1個のアミノ基が保護されており、かつ脱保護により式IIの化合物に至り、好ましくは生理学的に除去可能であるソマトスタチン類似体に対応する。適当なアミノ保護基は、例えば“Protective Groups in Organic Synthesis”, T. W. Greene, J. Wiley & Sons NY (1981), 219-287に記載の通りであり、その内容は引用により本明細書に包含する。このようなアミノ保護基の例は、アセチルである。
【0030】
本発明の組成物は、緩衝剤を含み得る。適当な緩衝剤は、酢酸塩緩衝剤、乳酸塩緩衝剤、グリシン緩衝剤および酒石酸塩緩衝剤を含むが、これらに限定されない。本緩衝剤の濃度は約5mM〜30mM、好ましくは約10mM〜25mMであり得る。
【0031】
さらなる局面において、本発明は、18Gから25G、例えば20Gの範囲の針を通してシリンジにより注射できる粘性液体形態の医薬組成物を提供する。本溶液は、0.2μmフィルターを通した滅菌濾過後1〜10mPa.sを有して、または、滅菌濾過および蒸発もしくは昇華による溶媒除去後10〜10mPa.sの粘性を有して、シリンジに入れ得る。溶媒除去は、溶液をシリンジに入れた後に行い得る。
【0032】
シリンジ中の溶液は、針、例えば20G針を通して、体の皮下、筋肉内、皮内または腹腔内に注射するか、またはカニューレを通して到達できる組織部位に置き得る。患者の体液と接触したら、ゲル化デポ剤が形成される。非経腸投与用の液体組成物はシリンジに充填でき、好ましくは充填済シリンジを使用指示と共に提供し得る。
【0033】
他の局面において、本発明は、薬学的活性剤の長時間の放出のためのデポ剤製剤を提供する。注射後体内に形成されるインプラントは、本活性剤を長時間にわたり放出する。本放出期間は、1日〜90日まで、例えば1日〜60日まで、例えば30〜60日の範囲であり得る。
【0034】
本発明の組成物は、特定の活性剤に関して既知の適応症の処置に有用である。アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩を含む本発明の組成物は、下記適応症に有用であり得る:
a)過剰なGH分泌および/または過剰なIGF−1分泌を含むまたはそれが関連する病因の障害の予防または処置、例えば末端肥大症の処置ならびにI型もしくはII型糖尿病、とりわけその合併症、例えば血管障害、糖尿病性増殖性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、腎症、神経障害および曙現象、およびインスリンまたはグルカゴン放出が関連する他の代謝障害、例えば肥満、例えば病的肥満または視床下部性または高インシュリン性肥満の処置、
【0035】
b)腸管皮膚瘻および膵皮膚瘻、過敏性腸症候群、炎症性疾患、例えばグレーブス病、炎症性腸疾患、乾癬またはリウマチ性関節炎、多発性嚢胞腎、ダンピング症候群、水様下痢症候群、AIDS関連下痢、化学療法誘発下痢、急性または慢性膵炎および消化器ホルモン分泌性腫瘍(例えばGEP腫瘍、例えばビポーマ、グルカゴノーマ、インスリノーマ、カルチノイドなど)、リンパ球悪性疾患、例えばリンパ腫または白血病、肝細胞性癌腫ならびに消化器出血、例えば食道静脈瘤出血の処置、
【0036】
c)炎症性眼疾患、黄斑浮腫、例えば嚢胞様黄斑浮腫、特発性嚢胞様黄斑浮腫、滲出性加齢黄斑変性症、脈絡膜新生血管関連障害および増殖性網膜症を含む、上記の通りの血管形成、炎症性障害の予防または処置、
【0037】
d)移植血管疾患、例えば、例えば臓器、例えば心臓、肺、複合心臓−肺、肝臓、腎臓または膵臓移植の移植における同種または異種移植脈管障害、例えば移植血管アテローム性動脈硬化症の予防またはそれらと戦うため、または血管移植片狭窄、血管傷害、例えばカテーテル法または血管掻爬法、例えば経皮経管的血管形成術、レーザー処置または血管内膜または内皮の完全性を破壊する他の侵襲法後の再狭窄および/または血管閉塞の予防または処置、
【0038】
e)下垂体腫瘍、例えばクッシング病、胃腸膵、カルチノイド、中枢神経系、乳房、前立腺(進行性ホルモン難治性前立腺癌を含む)、卵巣または結腸腫瘍、小細胞肺癌、悪性腸閉塞、傍神経節腫、腎臓癌、皮膚癌、神経芽腫、褐色細胞腫、髄様甲状腺癌腫、骨髄腫、リンパ腫、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、骨腫瘍およびそれらの転移巣のようなソマトスタチン受容体発現または蓄積腫瘍、ならびに自己免疫性または炎症性障害、例えばリウマチ性関節炎、グレーブス病または他の炎症性眼疾患の処置。
【0039】
好ましくは、本発明の組成物は、末端肥大症、カルチノイドおよび/またはクッシング病の処置に有用である。
【0040】
本発明の液体組成物の活性および特徴は、標準臨床試験または動物試験において示され得る。
【0041】
本発明の組成物の適当な投与量は、例えば処置すべき状態(例えば耐性の性質の疾患タイプ)、使用する薬剤、望む効果および投与形態に依存して、もちろん変化する。
【0042】
アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン塩を含む本発明の組成物について、一月あたり、注射当たり約0.1〜約100mg、好ましくは約3〜約60mg程度、または一月あたり約0.01〜約4mg、好ましくは0.1〜1mg/動物体重kg程度の投与量で、1回または分割投与で、例えば非経腸投与により満足が行く結果が得られる。患者のための適当な毎月の投与量は、故に、約0.1mg〜約80mg程度のアスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩である。
【0043】
本発明は、0.1〜2の範囲の塩:塩基比でアスパラギン酸塩、例えば一もしくは二アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、例えば一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、例えば一もしくは二グルタミン酸塩、またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩および、規定された3.0〜7.0、好ましくは約4.0〜6.0、より好ましくは約4.0〜5.0のpHの水を含む、単純な医薬組成物を提供する。0.1〜2の範囲の塩:塩基比は、規定のpHでソマトスタチン類似体塩の溶解性、ならびに、体液との接触、故に環境pH変化後の沈殿およびデポ剤形成を提供する。本pHは緩衝剤により安定化し得る。本組成物の製造法は、単純に水をソマトスタチン類似体塩に添加することによる。約4.0〜6.0のpHで、本組成物は良好な溶解性を示し、故に、例えば充填済の、シリンジ中の沈殿または針が詰まるのを避ける。投与部位で重篤な副作用の原因となり得る有機溶媒の使用はない。
【0044】
下記は、本発明の方法および組成物の、例示の方法のみでの記載である。
【実施例】
【0045】
実施例1
【表1】

本発明の組成物の2ml溶液を、0.8g ソマトスタチン二アスパラギン酸塩と1.36ml 注射用水の混合により製造する。
【0046】
実施例2
実施例1に示す組成を有する医薬製品のウサギにおける放出プロファイル。本組成物を非経腸的に注射し、血液サンプルを2ヶ月の間に数回採り、ソマトスタチン二アスパラギン酸塩を測定している。
【表2】

【0047】
実施例3
【表3】

本発明の組成物の二コハク酸塩形態を、0.999g ソマトスタチン二コハク酸塩と1.6ml 注射用水の混合により製造する。
【0048】
実施例4
【表4】

本発明の組成物の二グルタミン酸塩形態を、0.916g ソマトスタチン二グルタミン酸塩と1.44ml 注射用水の混合により製造する。
【0049】
実施例5
実施例3および4に示す組成を有する医薬製品のウサギにおける放出プロファイル本組成物を非経腸的に注射し、血液サンプルを2ヶ月の間に数回採り、ソマトスタチン二コハク酸塩およびソマトスタチン二グルタミン酸塩を測定している。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射後体液と接触してゲル化デポ系を形成する、一もしくは二アスパラギン酸塩、一もしくは二グルタミン酸塩、一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩および水を含む、非経腸投与用医薬組成物。
【請求項2】
3.0〜7.0のpHを有し、注射後体液と接触してゲル化デポ系を形成する、一もしくは二アスパラギン酸塩、一もしくは二グルタミン酸塩、乳酸塩、一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩および水を含む、非経腸投与用医薬組成物。
【請求項3】
該ソマトスタチン類似体塩が、0.1〜2の範囲の塩:塩基比を有する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
約4.0〜6.0のpHを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
約4.0〜5.0のpHを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
約3〜7のpHを提供するための量で薬学的に許容される緩衝剤を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
約4.0〜5.0のpHを有する、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
該薬学的に許容される緩衝剤が、酢酸塩緩衝剤、酒石酸塩緩衝剤、グリシン緩衝剤および乳酸塩緩衝剤の少なくとも1種から選択される、請求項6および7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
該薬学的に許容される緩衝剤が酢酸塩緩衝剤である、請求項6から8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
該酢酸塩緩衝剤を、約10mM〜25mMの濃度で使用する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
該ゲル化デポ系が、アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩を、1〜90日の期間にわたり患者内で継続的に放出する、請求項1から10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
該ゲル化デポ系が、アスパラギン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩を、1〜60日の期間にわたり患者内で継続的に放出する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
1から10mPa sの粘性を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の組成物および使用指示を含む、充填済シリンジ。
【請求項15】
i)一もしくは二アスパラギン酸塩、一もしくは二グルタミン酸塩、乳酸塩、一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩を水に溶解し、
ii)所望により薬学的に許容される量の緩衝剤を添加し、そして所望により
iii)該溶液をシリンジに充填する
工程を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造法。
【請求項16】
i)一もしくは二アスパラギン酸塩、一もしくは二グルタミン酸塩、乳酸塩、一もしくは二コハク酸塩、酢酸塩またはクエン酸塩のソマトスタチン類似体塩を水に溶解し、
ii)3.0〜7.0のpHを得るために薬学的に許容される量の緩衝剤を添加し、そして所望により
iii)該溶液をシリンジに充填する
工程を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造法。

【公表番号】特表2008−524290(P2008−524290A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547318(P2007−547318)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013703
【国際公開番号】WO2006/066868
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】