説明

ビタミンA類安定化製剤

【課題】ビタミンA類を安定に配合した液状または半固形状の製剤を提供すること。
【解決手段】(A)ビタミンA類を1万IUに対して、(B)卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を0.03mg〜6mg含有する、液状または半固形状の製剤。特定の実施形態において、本発明の製剤は、液剤、軟膏剤、クリーム剤またはエアゾール剤などであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンA類を安定に配合した液状または半固形状の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンA類は、視覚や聴覚、生殖などの生体機能の維持や、成長促進、さらに皮膚や粘膜などの上皮組織を正常に保つ機能などに関与することが知られた、人体に必須の栄養素である。そしてこれまで、ビタミンA類は、夜盲症、結膜乾燥症、角膜乾燥症、角膜軟化症などの眼科系疾患や、角化性皮膚疾患(尋常性魚鱗癬、毛孔性苔癬、単純性粃糠疹等)などの皮膚科系疾患といった幅広い分野で治療薬として用いられている。さらに、ビタミンA類の有する抗酸化作用、老化防止作用などを利用して、皮膚老化防止用の外用剤などとしても広く利用されている。
【0003】
しかしながら、ビタミンA類は、構造的に極めて不安定であり、酸化され易い傾向を有する。この傾向は、液体中又は半固形体中に配合された場合に特に顕著であり、異性化や分解、重合等を起こして変質を生じ、有効成分量が低下したり、変色や変臭などの問題が生じやすいことが知られている。従って、液状または半固形状の製剤中に安定にビタミンA類を配合することは困難とされてきた。
【0004】
これまでにも、ビタミンA類を安定化する種々の方法が検討されている。例えば、特許文献1は、ビタミンA類と共に、(A)ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、α、β、γ、δ−トコフェロール、ノルジヒドログアヤレチン、没食子酸プロピル、ビタミンC脂肪酸エステル、ソルビン酸からなる群から選ばれる油溶性抗酸化剤、(B)エチレンジアミン四酢酸塩、および(C)ベンゾフェノン系化合物を、ビタミンA類安定化剤として配合することにより、ビタミンA類の安定性を向上した皮膚外用剤を教示する。
【0005】
また特許文献2は、ビタミンA類と共に、(A)BHT、BHA、α、β、γ、δ−トコフェロール、ノルジヒドログアヤレチン、没食子酸プロピル、ビタミンC脂肪酸エステルからなる群から選ばれる油溶性抗酸化剤、(B)アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩の一種または二種以上、および(C)ベンゾフェノン系化合物を、ビタミンA類安定化剤として配合することにより、ビタミンA類の安定性を向上した皮膚外用剤を教示する。
【0006】
また特許文献3は、ビタミンA類と共に、抗酸化剤および/または紫外線吸収剤を包接させたシクロデキストリンを、ビタミンA類安定化剤として配合することにより、ビタミンA類の安定性を向上した皮膚外用剤を教示する。
【0007】
また特許文献4は、ビタミンA類と共に、ブタンジオールと油溶性抗酸化剤を、ビタミンA類安定化剤として配合することにより、ビタミンA類の安定性を向上した皮膚外用剤を教示する。
【0008】
また特許文献5は、ビタミンA類と共に、水溶性ベンゾフェノン系化合物をビタミンA類安定化剤として配合することにより、ビタミンA類の安定性を向上した皮膚外用剤を教示する。
【0009】
さらに特許文献6は、ビタミンA類と共に、塩基性アミノ酸をビタミンA類安定化剤として配合することにより、ビタミンA類の安定性を向上した皮膚外用剤を教示する。
【0010】
しかし、これらの液状又は半固形状の製剤中におけるビタミンA類安定化作用は未だ十分に満足できるものではなく、液状又は半固形状の製剤中においてビタミンA類を安定化し得る、更なる有用な新規方法の開発が望まれていた。
【0011】
一方、卵白アルブミン及びその加水分解物、並びに羊毛ケラチン及びその加水分解物は、保湿成分や界面活性剤成分などとしてこれまでにも製剤上用いられてきた、人体に対し安全な天然由来成分である。しかしこれまで、これらの成分が、液状又は半固形状の製剤中においてビタミンA類を安定に維持できる作用を有することは、全く教示も示唆もされていなかった。
【0012】
【特許文献1】特開平6−32713号公報
【特許文献2】特開平6−32714号公報
【特許文献3】特開平6−32715号公報
【特許文献4】特開平6−32716号公報
【特許文献5】特開平6−32717号公報
【特許文献6】特開平6−32718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる従来の問題に鑑み、液状または半固形状の製剤中におけるビタミンA類を安定化する方法を提供すること、並びにビタミンA類を安定に配合した液状または半固形状の製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討し、膨大な数の候補物質の中からビタミンA類安定化作用を有する物質を探索した結果、卵白アルブミン及び羊毛ケラチン、並びに平均分子量が300以上であるそれらの加水分解物を有用物質として特定し、そしてこれらの中から選択される少なくとも一種を、1万IUのビタミンA類に対して0.03mg〜6mgの割合で配合することにより、液状または半固形状の製剤中におけるビタミンA類を顕著に安定化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
従って、本発明は以下を提供する。
(1)(A)ビタミンA類を1万IUに対して、(B)卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を0.03mg〜6mg含有する、液状または半固形状の製剤。
(2)液剤、軟膏剤、クリーム剤またはエアゾール剤である、項目(1)に記載の製剤。
(3)他のビタミンA類安定化剤を実質的に含まない、項目(1)または(2)に記載の製剤。
(4)(A)ビタミンA類を1万IUに対して、(B)卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を0.03mg〜6mg組合わせることを特徴とする、液状または半固形状の製剤中におけるビタミンA類の安定化方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ビタミンA類を安定に配合した液状または半固形状の製剤が提供される。また本発明により、液状または半固形状の製剤中におけるビタミンA類を安定化する方法が提供される。
【0017】
本発明により、顕著なビタミンA類安定化作用を有する物質として特定された卵白アルブミン及び羊毛ケラチン、並びにそれらの加水分解物は、人体に対し安全な天然由来成分である。本発明に従ってビタミンA類を配合した液状又は半固形状の製剤では、上述のような天然由来成分によりビタミンA類を顕著に安定化できるので、他のビタミンA類安定化剤(例えば、合成のビタミンA類安定化剤)を必ずしも含ませる必要がない。またビタミンA類と、卵白アルブミン及び羊毛ケラチン並びに平均分子量が300以上であるこれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種とを単に組合わせて配合するという極めて単純な操作で、特殊な設備や複雑な方法等を利用する必要なく容易に、不安定なビタミンA類を顕著に安定化し得るという点においても非常に有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書の全体にわたって、単数形の表現は、特に他に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書中において使用される用語は、特に他に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられていることが理解されるべきである。
【0019】
本発明に用いられる「ビタミンA類」とは、ビタミンA(即ち、レチノール)及びその誘導体(例えば、レチノールの各種異性体及びエステル類等)を指す。具体的には、ビタミンA類として、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、酪酸レチノール、プロピオン酸レチノール、オクチル酸レチノール、ラウリル酸レチノール、オレイン酸レチノール、リノレン酸レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、ビタミンA脂肪酸エステル、δ-トコフェリルレチノエート、α-トコフェリルレチノエートおよびβ-トコフェリルレチノエートなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましくは、本発明にはレチノールが使用される。
【0020】
本発明では、上述のようなビタミンA類から、いずれか1種類のみが用いられても良いし、2種類以上が組み合わせて用いられても良い。
【0021】
本発明に用いられるビタミンA類には、合成物を用いてもよいし、または天然物から得られる抽出物(例えば、ビタミンA油など)を用いてもよい。ここでビタミンA油とは、レチノールを含有する水産動物の組織等から得られる脂肪油、若しくはその濃縮物、又はそれらに植物油を適宜添加したものとして周知である。また本発明に用いられるビタミンA類には、市販品も利用可能であり、例えば、油化産業株式会社、岩瀬コスファ株式会社、株式会社マツモト交商、東振化学株式会社、株式会社シバハシケミファなどから容易に入手可能である。
【0022】
本発明の製剤中に配合されるビタミンA類の量には、特に制限はなく、使用目的や所望される効果の程度等に応じて適宜変動され得る。好ましくは、100gの液状又は半固形状の製剤あたり500IU〜1500万IUのビタミンA類を含むように、より好ましくは100gの液状又は半固形状の製剤あたり1000IU〜150万IUのビタミンA類を含むように、さらに好ましくは100gの液状又は半固形状の製剤あたり1万IU〜100万IUのビタミンA類を含むように、特に好ましくは100gの液状又は半固形状の製剤あたり2万〜50万IUのビタミンA類を含むように、最も好ましくは100gの液状又は半固形状の製剤あたり2.5万〜25万IUのビタミンA類を含むように配合される。
【0023】
ここでIUとは、当業者に通常理解され得る通り、ビタミンA類等の脂溶性ビタミン類の量に関する国際単位であり、レチノールの場合、1IU=約0.30μgのレチノールに対応し、酢酸レチノールの場合、1IU=0.34μgの酢酸レチノールに対応し、パルミチン酸レチノールの場合、1IU=0.55μgのパルミチン酸レチノールに対応すること等が周知である。
【0024】
本発明に用いられ得る「卵白アルブミン」とは、アルブミンとして公知のタンパク質であって卵白由来のものを指す。
【0025】
本発明に用いられ得る卵白アルブミンには、公知の卵白アルブミンのアミノ酸配列構造等に基づいて人為的に合成された物を用いてもよいが、好ましくは、卵白からの抽出により得られた天然のアルブミン、又は卵白からの抽出により得られた天然のアルブミンを含む抽出画分が用いられる。また更に好ましくは、上述のような卵白アルブミンは、本発明に使用する前に、加熱滅菌および/または濾過滅菌などにより滅菌処理される。本発明に用いられ得る卵白アルブミンには、市販品も利用可能であり、例えば、シグマアルドリッチジャパン株式会社、岩瀬コスファ株式会社、油化産業株式会社、株式会社シバハシケミファ、株式会社マツモト交商、日光ケミカルズ株式会社、久木田薬品工業株式会社、池田物産株式会社などから容易に入手可能である。
【0026】
さらに本発明には、卵白アルブミンを加水分解して得られた、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物もまた好適に用いられ得る。卵白アルブミンを加水分解する方法としては、当該分野で周知のように、酸を用いる方法、アルカリを用いる方法、若しくは加水分解酵素を用いる方法、またはこれらの組合せによる方法などが挙げられるが、これらに限定されない。得られた加水分解物の平均分子量は、例えば、当該分野で周知のゲル濾過法やSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法などにより容易に測定され得る。好ましくは、このようにして得られた平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物は、本発明に使用する前に、加熱滅菌および/または濾過滅菌などにより滅菌処理される。
【0027】
本発明に用いられ得る卵白アルブミン加水分解物は、平均分子量が300以上である限りにおいて、任意の分子量のものであり得る。しかし好ましくは、卵白アルブミン加水分解物の平均分子量の下限として、350以上であることが好ましく、400以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましく、5000以上であることが特に好ましい。また本発明に用いられ得る卵白アルブミン加水分解物の平均分子量の上限としては、対応する天然の卵白アルブミンの平均分子量未満である限りにおいて特に制限はないが、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、30000以下であることがより好ましく、20000以下であることがより好ましく、10000以下であることがさらに好ましく、5000以下であることが特に好ましい。
【0028】
特に好ましくは、本発明に用いられ得る平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物は、対応する天然の卵白アルブミンに近いアミノ酸組成を有することが好ましい。
【0029】
本発明に用いられ得る「羊毛ケラチン」とは、ケラチンとして公知のタンパク質であって羊毛由来のものを指す。
【0030】
本発明に用いられ得る羊毛ケラチンには、公知の羊毛ケラチンのアミノ酸配列構造等に基づいて人為的に合成された物を用いてもよいが、好ましくは、羊毛からの抽出により得られた天然のケラチン、又は羊毛からの抽出により得られた天然のケラチンを含む抽出画分が用いられる。また更に好ましくは、上述のような羊毛ケラチンは、本発明に使用する前に、加熱滅菌および/または濾過滅菌などにより滅菌処理される。本発明に用いられ得る羊毛ケラチンには、市販品も利用可能であり、例えば、東京化成工業株式会社などから容易に入手可能である。
【0031】
さらに本発明には、羊毛ケラチンを加水分解して得られた、平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物もまた好適に用いられ得る。羊毛ケラチンを加水分解する方法としては、当該分野で周知のように、酸を用いる方法、アルカリを用いる方法、若しくは加水分解酵素を用いる方法、またはこれらの組合せによる方法などが挙げられるが、これらに限定されない。さらにまた、羊毛ケラチンを加水分解する方法として、例えば、特許第2820719号公報、特許第2777196号公報、特開平3−11099号公報などに記載の方法なども、好適に利用され得る。得られた加水分解物の平均分子量は、例えば、当該分野で周知のゲル濾過法やSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法などにより容易に測定され得る。好ましくは、このようにして得られた平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物は、本発明に使用する前に、加熱滅菌および/または濾過滅菌などにより滅菌処理される。本発明に用いられ得る平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物には、市販品も利用可能であり、例えば、株式会社成和化成、一丸ファルコス株式会社などから容易に入手可能である。
【0032】
本発明に用いられ得る羊毛ケラチン加水分解物は、平均分子量が300以上である限りにおいて、任意の分子量のものであり得る。しかし好ましくは、羊毛ケラチン加水分解物の平均分子量の下限として、350以上であることが好ましく、400以上であることが特に好ましい。また本発明に用いられ得る羊毛ケラチン加水分解物の平均分子量の上限としては、対応する天然の羊毛ケラチンの平均分子量未満である限りにおいて特に制限はないが、30000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましく、10000以下であることがさらに好ましく、5000以下であることが特に好ましい。
【0033】
特に好ましくは、本発明に用いられ得る平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物は、対応する天然の羊毛ケラチンに近いアミノ酸組成を有することが好ましい。例えば、本発明に用いられ得る平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物は、シスチン5〜10mol%、システイン酸0.1〜3mol%、アスパラギン酸3〜9mol%、グルタミン酸9〜15mol%、アルギニン3〜9mol%、ヒスチジン0.1〜4mol%及びリジン0.1〜6mol%というアミノ酸組成を有し、より好ましくは、シスチン7.5〜9.5mol%、システイン酸0.1〜2mol%、アスパラギン酸5〜7mol%、グルタミン酸11〜13mol%、アルギニン5.5〜7.5mol%、ヒスチジン0.1〜2mol%及びリジン2〜4mol%というアミノ酸組成を有する。
【0034】
本発明では、上述の卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、または平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物のうち、いずれか1種類のみを用いても良いし、あるいは2種類以上を組合わせて用いても良い。
【0035】
本発明では、卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を、1万IUのビタミンA類に対して0.03mg〜6mgの割合で組合わせることにより、ビタミンA類を安定化することができる。好ましくは、本発明では、卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を、1万IUのビタミンA類に対して0.05〜5.5mgの割合で、より好ましくは1万IUのビタミンA類に対して0.1〜5mgの割合で、さらに好ましくは1万IUのビタミンA類に対して0.5〜4.8mgの割合で、特に好ましくは1万IUのビタミンA類に対して1〜4.5mgの割合で、最も好ましくは1万IUのビタミンA類に対して2〜4mgの割合で配合する。
【0036】
本発明の製剤中における卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種の配合率は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限はなく、必要に応じて適宜変動され得る。好ましくは、本発明の製剤中における卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種の配合率は、0.001〜9重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.05〜1重量%、特に好ましくは0.1〜0.5重量%であり得る。
【0037】
本発明の製剤は、液状又は半固形状の形態をとる。ここで液状又は半固形状とは、常温(15〜25℃)での状態を指す。液状又は半固形状とは、固体とは異なり、流動性を有する状態をいう。具体的には、液状又は半固形状の製剤として、例えば、液剤、軟膏剤、クリーム剤、エアゾール剤、ローション剤、ムース剤、ホイップ剤、ゲル剤、ゼリー剤、エキス剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、酒精剤、シロップ剤、注射剤、チンキ剤、リニメント剤、リモナーデ剤、坐剤、貼付剤、パップ剤などが挙げられるが、これらに限定されない。また本発明の製剤は、ソフトカプセル剤の内容物にも利用され得る。好ましくは、本発明の液状又は半固形状の製剤は、液剤、軟膏剤、クリーム剤、またはエアゾール剤である。
【0038】
本発明の製剤は、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じてさらなる他の有用成分を組合わせて含有してもよい。このような有用成分の種類は特に制限されず、例えば、美白成分、抗炎症成分、抗菌成分、細胞賦活化成分、収斂成分、抗酸化成分、保湿成分、刺激軽減剤、老化防止成分、紫外線吸収剤、他のビタミン類、アミノ酸類、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、局所麻酔薬成分、ステロイド成分、健胃成分などとして公知の成分が例示できる。これらの各成分としては、医薬品、医薬部外品、化粧品、又は食品分野において従来より使用され、また将来使用されるものであれば特に制限されず、任意のものを適宜選択し使用することができる。
【0039】
美白成分としては、プラセンタ、アルブチン、システイン、エラグ酸、コウジ酸、フィチン酸、ルシノール、ハイドロキノン;イリス(アイリス)、アーモンド、アロエ、イチョウ、ウーロン茶、エイジツ、オウゴン、オウレン、オトギリソウ、オドリコソウ、海藻、カッコン、カミツレ、カンゾウ、クチナシ、クジン、コムギ、コメ、コメハイガ、オリザノール、コメヌカ、シソ、シャクヤク、センキュウ、ソウハクヒ、ダイズ、茶、テルミナリア、トウキ、トウキンセンカ、ハマメリス、ベニバナ、ボタンピ、ヨクイニン、トウキ、エノキ、カキ(Diospyros kaki)、チョウジ等の植物に由来する成分、エキス及び精油などが挙げられる。これらの美白成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0040】
抗炎症成分としては、アラントイン、カラミン、グリチルリチン酸又はその誘導体、グリチルレチン酸又はその誘導体、酸化亜鉛、グアイアズレン、塩酸ピリドキシン、メントール、カンフル、テレピン油、インドメタシン、サリチル酸又はその誘導体等が挙げられる。これらの抗炎症成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0041】
抗菌成分としては、クロルヘキシジン、サリチル酸、塩化ベンザルコニウム、アクリノール、エタノール、塩化ベンゼトニウム、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、イソプロピルメチルフェノール、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、塩酸アルキルジアミノグリシン、硫酸アミノデオキシカナマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸シソマイシン、硫酸ストレプトマイシン、トブラマイシン、硫酸ミクロノマイシン、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、塩酸テトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、スルベニシンナトリウム、塩酸セフメノキシム、ベンジルペニシリンカリウム、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、ホウ酸、コリスチンメタスルホン酸ナトリウム、エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、キタサマイシン、スピラマイシン、硫酸フラジオマイシン、硫酸ポリミキシン、ジベカシン、アミカシン、硫酸アミカシン、アシクロビル、イオドデオキシサイチジン、イドクスウリジン、シクロサイチジン、シトシンアラビノシド、トリフルオロチミジン、ブロモデオキシウリジン、ポリビニルアルコールヨウ素、アムホテリシンB、イソコナゾール、エコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチン、ピマリシン、フルオロシトシン、ミコナゾール等が挙げられる。これらの抗菌成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0042】
細胞賦活化成分としては、γ-アミノ酪酸、ε-アミノカプロン酸などのアミノ酸類:チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類などのビタミン類:グリコール酸、乳酸などのα-ヒドロキシ酸類:グルコース、トレハロースなどの糖類;タンニン、フラボノイド、サポニン、アラントイン、感光素301号などが挙げられる。これらの細胞賦活化成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0043】
収斂成分は、皮膚外用収斂成分及び点眼用収斂成分などを含み、皮膚外用収斂成分としては、ミョウバン、クロロヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、アラントインアルミニウム塩、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム等の金属塩;タンニン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸などの有機酸を挙げることができる。また、点眼用収斂成分としては、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなどの有機酸を挙げることができる。これらの収斂成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0044】
抗酸化成分としては、トコフェロール及びその誘導体、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウム、エリソルビン酸及びその塩、フラボノイド、グルタチオン、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、カタラーゼ、スーパーオキサイドジスムターゼ、チオレドキシン、タウリン、チオタウリン、ヒポタウリンなどが挙げられる。これらの抗酸化成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0045】
保湿成分としては、アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルコサミン、テアニンなどのアミノ酸及びその誘導体;コラーゲン、コラーゲンペプチド、ゼラチン等のペプチド;グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;ソルビトールなどの糖アルコール;レシチン、水素添加レシチン等のリン脂質;ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン等のムコ多糖もしくはそれらの誘導体(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム);乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、尿素などのNMF由来成分のほか、ポリグルタミン酸などが挙げられる。これらの保湿成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0046】
老化防止成分としては、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N−メチル−L−セリン、メバロノラクトン等が挙げられる。これらの老化防止成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0047】
紫外線吸収剤としては、ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ケイ皮酸ベンジル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;オキシベンゾン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、グアイアズレン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン、パラヒドロキシアニソール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシル等が挙げられる。中でも好ましくは、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は1種または2種以上を用いてもよい。
【0048】
他のビタミン類としては、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類;塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’−リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等のビタミンB12類;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビゲン−A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、モノパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム等のアスコルビン酸誘導体であるビタミンC類;メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類;dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム等のビタミンE類;フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類;葉酸、プテロイルグルタミン酸等の葉酸類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β−ブトキシエチル、ニコチン酸1−(4−メチルフェニル)エチル等のニコチン酸類;パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D−パンテサイン、D−パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類;ビオチン、ビオチシン等のビオチン類;その他、γ−オリザノール、カルニチン、フェルラ酸、α−リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子等が挙げられる。これらの他のビタミン類は1種または2種以上を用いてもよい。
【0049】
アミノ酸類としては、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。これらのアミノ酸類は1種または2種以上を用いてもよい。
【0050】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分としては、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミンなどが挙げられる。これらの抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0051】
局所麻酔薬成分としては、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。これらの局所麻酔薬成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0052】
ステロイド成分としては、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロキシメステロン(hydroxymesterone)、カプロン酸ヒドロコルチゾン、カプロン酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホベンゾエートナトリウム、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、メチルプレドニゾロンなどが挙げられる。これらのステロイド成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0053】
健胃成分としては、アニス実、アロエ、茴香、鬱金、烏薬、延命草、黄ごん、黄柏、黄連、加工大蒜、ガジュツ、かっ香、キナ、ホミカ、ショウキョウ、カラムス根、乾薑、枳殻、只実、桂皮、ゲンチアナ、コウジン、厚朴、呉茱萸、胡椒、コロンボ、コンズランゴ、山椒、山奈、紫蘇子、縮砂、生姜、ショウズク、青皮、石菖根、センタウリウム草、センブリ、蒼朮、蘇葉、大茴香、大黄、竹節人参、丁字、陳皮、唐辛子、トウヒ、ニガキ、ニクズク、人参、薄荷、ヒハツ、白朮、ホップ、ホミカエキス、睡菜葉、木香、益知、竜胆、良姜、クジン、ゴバイシ、サンザシ、ヨウバイヒ、赤芽柏、アセンヤク、ウバイ、ケツメイシ、ゲンノショウコ、メントール、グルタミン酸塩酸塩、塩化カルニチン、塩化ベタネコールおよびマレイン酸トリメプチンなどが挙げられる。これらの健胃成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0054】
上記に挙げた種々のさらなる他の有用成分の配合量は、特に制限されず、通常は薬事法上許容される配合量を目安に適宜選択され得る。例えば、上述の各有用成分は、製剤全体に対して0.00001〜15重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜5重量%、特に好ましくは0.01〜3重量%の範囲で適宜配合され得る。
【0055】
また本発明の製剤には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、医薬品、医薬部外品、化粧品、又は食品分野などにおいて通常用いられる種々の成分や添加物を適宜含有していてもよい。該成分または添加物の種類や配合割合については、当業者により適宜設定され得る。このような成分または添加物としては、例えば、担体又は基剤(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調整剤、等張化剤、香料又は清涼化剤、キレート剤、緩衝剤、着色剤、分散剤、セルロース若しくはその誘導体又はそれらの塩、水溶性高分子、保存剤などの各種添加剤を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの各添加剤等としては、医薬品、医薬部外品、化粧品、又は食品分野において従来より使用され、また将来使用されるものであれば特に制限されず、任意のものを適宜選択し使用することができる。
【0056】
セルロース若しくはその誘導体又はそれらの塩としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられる。これらのセルロース若しくはその誘導体又はそれらの塩は1種または2種以上を用いてもよい。
【0057】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらの水溶性高分子は1種または2種以上を用いてもよい。
【0058】
保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノールなどが挙げられる。これらの保存剤は1種または2種以上を用いてもよい。
【0059】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、他のビタミンA類安定化剤を実質的に含まないことができる。ここで、他のビタミンA類安定化剤を実質的に含まないとは、他のビタミンA類安定化剤の量が0.000001重量%未満であること、好ましくは、他のビタミンA類安定化剤を全く含まないことを意味する。
【0060】
他のビタミンA類安定化剤としては、以下が公知である:特許文献1に記載される、(A)BHT、BHA、α、β、γ、δ−トコフェロール、ノルジヒドログアヤレチン、没食子酸プロピル、ビタミンC脂肪酸エステル、ソルビン酸からなる群から選ばれる油溶性抗酸化剤と(B)エチレンジアミン四酢酸塩と(C)ベンゾフェノン系化合物とを組合わせたビタミンA類安定化剤;特許文献2に記載に記載される、(A)BHT、BHA、α、β、γ、δ−トコフェロール、ノルジヒドログアヤレチン、没食子酸プロピル、ビタミンC脂肪酸エステルからなる群から選ばれる油溶性抗酸化剤と(B)アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩の一種または二種以上と(C)ベンゾフェノン系化合物とを組合わせたビタミンA類安定化剤;特許文献3に記載される、抗酸化剤および/または紫外線吸収剤を包接させたシクロデキストリンからなるビタミンA類安定化剤;特許文献4に記載される、ブタンジオールと油溶性抗酸化剤からなるビタミンA類安定化剤;特許文献5に記載される、水溶性ベンゾフェノン系化合物からなるビタミンA類安定化剤;特許文献6に記載される、塩基性アミノ酸からなるビタミンA類安定化剤。
【0061】
本発明の製剤は、当該分野で公知の任意の方法を利用して、(A)ビタミンA類を1万IUに対して、(B)卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を0.03mg〜6mg組合わせ、さらに必要に応じて上述のような他の有用成分や添加物等を配合することにより、常法で製造することができる。
【0062】
本発明の製剤は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品などの分野に幅広く利用することができる任意の製剤(例えば、医薬製剤、医薬部外品製剤、若しくは化粧品製剤、又は特定保健用食品、栄養機能食品、老人用食品、特別用途食品、機能性食品、健康補助食品(サプリメント)、若しくは製菓錠剤などのような食品用製剤など)であり得る。また本発明の製剤の用途は特に制限されず、例えば、内服用、外用(皮膚外用剤、点眼剤などを含む)、または注射用などであり得る。好ましくは、本発明の製剤は外用製剤であり、より好ましくは皮膚外用剤である。皮膚外用剤としては、例えば、基礎化粧料、にきび治療剤、美白剤、抗シワ剤、口紅、ヘアトニックなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明の製剤は、用途などに応じて、1日あたり1回から複数回(例えば、2回、3回など)に分けて、常法に従って使用することができる。
【0064】
また本発明は、液状または半固形状の製剤中におけるビタミンA類の安定化方法をも包含する。本発明の安定化方法において、ビタミンA類の安定化は、卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を、1万IUのビタミンA類に対して0.03mg〜6mg組合わせることにより達成できる。
【0065】
本発明のビタミンA類安定化方法において使用される、ビタミンA類、卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物の種類や量などは、前述の本発明の製剤で用いられ得るものと同様にすればよい。さらに本発明のビタミンA類安定化方法では、本発明の効果を損なわない限り、種々の他の有用成分や添加物等をさらに組合わせてもよい。このような他の有用成分や添加物等もまた、前述の本発明の製剤で用いられ得るものと同様にすればよい。
【0066】
さらに本発明は、ビタミンA類の安定化された液状または半固形状の製剤の製造方法をも包含する。この本発明の製造方法は、ビタミンA類の安定化のために、卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を、1万IUのビタミンA類に対して0.03mg〜6mg組合わせる工程を包含することを特徴とする。
【0067】
この本発明の製造方法において使用される、ビタミンA類、卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物の種類や量などは、前述の本発明の製剤で用いられ得るものと同様にすればよい。さらにこの本発明の製造方法では、本発明の効果を損なわない限り、種々の他の有用成分や添加物等をさらに組合わせてもよい。このような他の有用成分や添加物等もまた、前述の本発明の製剤で用いられ得るものと同様にすればよい。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0069】
実施例1:ビタミンA類安定化作用を有する物質の探索:
多数の各種タンパク質又はタンパク質分解物を検体物質として用い、これらをビタミンA類と共存させ、ビタミンA類に対する安定化作用の有無を調べた。具体的には、検体物質として以下のものを用いた:羊毛ケラチン(Keratin,Powder試薬、東京化成工業(株)社製)、魚鱗コラーゲン(マリンコラーゲン10000試薬、日本化薬(株)社製)、魚コラーゲン(フィッシュコラーゲン/ペプチドWP試薬、マルハ(株)社製)、豚皮ゼラチン(ゼラチン(調理用)試薬、新田ゼラチン(株)社製)、魚鱗・魚皮ゼラチン(イクオスペプチドHDL−5000試薬、新田ゼラチン(株)社製)、卵白アルブミン(Albumin(Ovalbumin)試薬、シグマアルドリッチジャパン(株)社製)、卵白塩化リゾチーム(塩化リゾチーム(卵白由来)試薬、和光純薬工業(株)社製)、牛乳カゼインナトリウム(カゼインナトリウム試薬、和光純薬工業(株)社製)、牛ゼラチン酵素分解物(ゼラチン(酵素分解物)試薬、和光純薬工業(株)社製)、および羊毛ケラチン加水分解物(プロモイス(登録商標)WK、(株)成和化成社製)。ここで、羊毛ケラチン加水分解物として使用したプロモイス(登録商標)WKは、平均分子量が400であり、そしてシスチン8.7mol%、システイン酸0.9mol%、アスパラギン酸6.1mol%、グルタミン酸12.0mol%、アルギニン6.3mol%、ヒスチジン1.1mol%及びリジン3.0mol%というアミノ酸組成を有することが分かっている。
【0070】
まず、レチノール(Retinol 50C、BASF社製)233mg(約78万IU:0.81mmolに相当)を、5mLの95%エタノールに溶解した。次いでこれとは別に、レチノール可溶化のためのオレイン酸ナトリウム(オレイン酸ナトリウム試薬、和光純薬工業社製)500mg(1.64mmol)を、85mLの水に溶解した。次いで、この2つの溶液を混合し、さらに水を加えて100mLに調整することにより、レチノールを233mg(約78万IU:0.81mmolに相当)含有するレチノール溶液を調製した。
【0071】
次いで、上述の各種検体物質10mgを5mLの水に溶解し、検体物質溶液を調製した。ここで、羊毛ケラチンの場合には、羊毛ケラチン10mgに加えて、羊毛ケラチンの溶解のために尿素600mg及びSDS 50mgも同時に水5mL中に溶解した。さらに、羊毛ケラチン加水分解物であるプロモイス(登録商標)WKは25%水溶液であった為、4倍の40mgを水に溶かし、合計5mLとした。
【0072】
上述のようにして調製したレチノール溶液5mLと各種検体物質溶液5mLとを混合し、レチノール11.7mg(39000IU:0.04mmolに相当)及び検体物質10mg(溶液の0.1%に相当)を含有する、10mLの試験溶液をそれぞれ調製した。さらにコントロールとして、上述のレチノール溶液5mLに水5mLを混合したコントロール溶液を調製した。各種試験溶液及びコントロール溶液中におけるレチノール含量の変化についての評価は、315nmでの吸光度測定法により行った。まず、調製直後に各種試験溶液及びコントロール溶液から0.1mLをそれぞれ採取し、これらを水で200倍に希釈した後、これらの希釈液の315nmでの吸光度を測定した(エージング前の吸光度)。次いで、各種試験溶液及びコントロール溶液を、遮光下にて50℃で保存し、試験開始より1ヵ月後に、前述と同様にして再度レチノール含量を測定した(エージング後の吸光度)。このようにして測定したエージング後の吸光度値を、エージング前の吸光度値で除算し、100を乗算して、50℃で1ヶ月間保存した後のレチノールの残存率(%)を算出した。この結果を、以下の表1に示す。
【表1】

【0073】
表1に示されるとおり、種々のタンパク質又はタンパク質分解物を含む検体物質の間で、レチノール安定化作用には著しい差異が認められた。例えば、コラーゲンやゼラチン、リゾチーム、カゼインなどを用いた場合、50℃1ヵ月後のレチノール含量は、コントロールの13.9%とほぼ同等であるか又はそれよりも低くなったのに対し、羊毛ケラチン又は卵白アルブミンを用いた場合には、50℃1ヵ月後でも24.2%又は21.4%であり、コントロールに比べ有意に高いレチノール含量を維持できることが明らかになった。さらに、羊毛ケラチンの加水分解物を用いた場合でも、50℃1ヵ月後に25.9%であり、有意に高いレチノール含量を維持できることが示された。以上の結果から、羊毛ケラチン及び卵白アルブミンが、高いビタミンA類安定化作用を有する物質であることが示された。さらにまた、この高いビタミンA類安定化作用を有する物質は、加水分解されて平均分子量400という小さな分解物になっても、高いビタミンA類安定化作用を保持していることが実証された。
【0074】
実施例2:ビタミンA類の安定性評価試験:
本実施例では、実施例1において高いビタミンA類安定化作用を有する物質として特定された、卵白アルブミン、羊毛ケラチン及び羊毛ケラチン加水分解物について更に詳細に、種々の条件下におけるそのビタミンA類安定化作用を調べた。
【0075】
実施例1と同様の手順により、各試験溶液10mL(レチノール11.7mg(39000IU:0.04mmolに相当)及び検体物質10mg(溶液の0.1%に相当)を含有)と、コントロール溶液10mLを調製した。これらの溶液中におけるレチノール含量の変化についての評価も実施例1と同様に、315nmでの吸光度測定法により行った。具体的には、まず調製直後にエージング前の吸光度(315nm)を測定し、溶液中のレチノール含量を評価した。次いで、各試験溶液及びコントロール溶液を、遮光下にて40℃又は30℃で保存し、試験開始から1ヵ月後に同様にしてエージング後の吸光度(315nm)を測定した。実施例1で説明した計算式に従って、40℃又は30℃で1ヶ月間保存した後のレチノールの残存率(%)を算出した。この結果を、以下の表2に示す。
【表2】

【0076】
表2に示されるとおり、卵白アルブミン、羊毛ケラチン及び羊毛ケラチン加水分解物は、レチノールと共に40℃で1ヶ月間保存した場合、レチノールの残存率を48.8〜61.3%まで高く維持し得、さらに30℃1ヶ月間の保存の場合には、レチノール残存率を80.0〜94.4%とコントロールに比べてさらに著しく高く維持し得ることが実証された。
【0077】
以下に製剤実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0078】
実施例3:液剤
ビタミンA油 0.1g(25万IU)
卵白アルブミン 0.1g
エチルアルコール 30.0g
ポリエチレングリコール400 10.0g
エチルパラベン 0.4g
エデト酸塩 0.2g
精製水 59.2g
合計 100.0g
上記組成となるよう各成分を秤量し、常法に従って製することにより、微黄色の液剤を得た。この液剤を遮光下にて40℃で6ヶ月間保存した後の安定性評価試験では、ビタミンA類の残存率は85%であった。一方、卵白アルブミンを含まずに、精製水を59.3gとした以外は上記と同様の組成を有するコントロール液剤では、40℃で6ヶ月間保存した後のビタミンA類残存率は60%であった。
【0079】
実施例4:軟膏剤
ビタミンA油 0.5g(50万IU)
羊毛ケラチン加水分解物 0.1g
黄色ワセリン 86.4g
ミリスチン酸イソプロピル 5.0g
プロピレングリコール 5.0g
グリセリンモノステアリン酸エステル 3.0g
合計 100.0g
上記組成となるよう各成分を秤量し、常法に従って製することにより、微黄色の軟膏剤を得た。この軟膏剤を遮光下にて40℃で6ヶ月間保存した後の安定性評価試験では、ビタミンA類の残存率は94%であった。一方、羊毛ケラチン加水分解物を含まずに、黄色ワセリンを86.5gとした以外は上記と同様の組成を有するコントロール軟膏剤では、40℃で6ヶ月間保存した後のビタミンA類残存率は75%であった。
【0080】
実施例5:クリーム剤
ビタミンA油 0.5g(50万IU)
羊毛ケラチン加水分解物 0.3g
酢酸トコフェロール 2.0g
グリチルリチン酸二カリウム 0.5g
ミリスチン酸イソプロピル 5.0g
セトステアリルアルコール 7.0g
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 3.0g
プロピレングリコール 10.0g
メチルパラベン 0.2g
エデト酸塩 0.1g
精製水 71.4g
合計 100.0g
上記組成となるよう各成分を秤量し、常法に従って製することにより、微黄色のクリーム剤を得た。このクリーム剤を遮光下にて40℃で6ヶ月間保存した後の安定性評価試験では、ビタミンA類の残存率は90%であった。一方、羊毛ケラチン加水分解物を含まずに、精製水を71.7gとした以外は上記と同様の組成を有するコントロールクリーム剤では、40℃で6ヶ月間保存した後のビタミンA類残存率は68%であった。
【0081】
実施例6:エアゾール剤
ビタミンA油 0.5g(50万IU)
羊毛ケラチン末 0.1g
タルク 1.0g
エチルアルコール 50.0g
ポリエチレングリコール400 10.0g
エチルパラベン 0.4g
エデト酸塩 0.2g
精製水 37.8g
合計 100.0g
上記組成となるよう各成分を秤量し、常法に従って製することにより、微黄色の原液を得た。この原液30%に液化天然ガスを70%の重量割合で混合し、これを高圧耐性缶に充填して、エアゾール剤とした。このエアゾール剤を遮光下にて40℃で6ヶ月間保存した後の安定性評価試験では、ビタミンA類の残存率は88%であった。一方、羊毛ケラチン末を含まずに、精製水を37.9重量部とした以外は上記と同様の組成で作製したエアゾール剤では、40℃で6ヶ月間保存した後のビタミンA類残存率は78%であった。
【0082】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示した。しかし本願発明は、添付の特許請求の範囲の記載によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、それらの内容が具体的に本明細書に記載されているのと同様に、その内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビタミンA類を1万IUに対して、
(B)卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を0.03mg〜6mg含有する、液状または半固形状の製剤。
【請求項2】
液剤、軟膏剤、クリーム剤またはエアゾール剤である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
他のビタミンA類安定化剤を実質的に含まない、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
(A)ビタミンA類を1万IUに対して、(B)卵白アルブミン、平均分子量が300以上の卵白アルブミン加水分解物、羊毛ケラチン、および平均分子量が300以上の羊毛ケラチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を0.03mg〜6mg組合わせることを特徴とする、液状または半固形状の製剤中におけるビタミンA類の安定化方法。

【公開番号】特開2007−15970(P2007−15970A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198432(P2005−198432)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】