説明

ビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法

【課題】十分に乾燥されたビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法を提供すること。
【解決手段】ビニルピロリドン系重合体溶液を加熱面密着型乾燥機で乾燥させてビニルピロリドン系重合体乾燥物を得る工程と、該ビニルピロリドン系重合体乾燥物を40〜100℃の温度条件下で粗砕し、同様の温度条件下で粉砕機に移送する工程と、該粗砕されたビニルピロリドン系重合体乾燥物を粉砕する工程とを含む、ビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱面密着型乾燥機を用いたビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルピロリドンやビニルピロリドン共重合体などのビニルピロリドン系重合体は、生体適合性、安全性、親水性等の利点があることから、従来より、医薬品、化粧品、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品等の種々の分野で広く用いられている。ビニルピロリドン系重合体の用途はこのように多岐にわたっているので、各種用途にビニルピロリドン系重合体を適用するには、重合体を得る際に使用した溶媒が重合体に残留しない状態、すなわち粉体とする必要がある。さらに、上記のような広範囲の用途を考慮すると、ビニルピロリドン系重合体粉体を十分に乾燥することが望ましい。
【0003】
ビニルピロリドン系重合体は各種の重合方法を用いて得られるが、いずれの場合も粘性の高い重合液が得られる。このような粘性の高い重合液から重合体粉体を得る方法として、加熱面密着型乾燥機を用いて重合体溶液を乾燥させ、得られた重合体乾燥物を粉砕する方法が知られている(例えば、特許文献1〜3)。具体的には、ビニルピロリドン系重合体溶液を乾燥機の加熱面に薄く供給(塗布)し、乾燥させて得られるシート状乾燥物を、スクレーパーにより掻き取って粉砕することにより、ビニルピロリドン系重合体粉体が製造されている。このような方法によれば、比較的簡単な装置構成で重合体粉体を効率的に生産することができる。しかし、このような方法では、得られた重合体粉体の乾燥が、不十分な場合がある。特に、ビニルピロリドン系重合体は吸湿性が高いので、単純に乾燥しても、水分含有量の大きいビニルピロリドン系重合体粉体しか得られない場合が多い。
【特許文献1】特開2002−146033号公報
【特許文献2】特開2004−285267号公報
【特許文献3】特開2005−193163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、十分に乾燥されたビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明のビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法は、ビニルピロリドン系重合体溶液を加熱面密着型乾燥機で乾燥させてビニルピロリドン系重合体乾燥物を得る工程と、該ビニルピロリドン系重合体乾燥物を40〜100℃の温度条件下で粗砕し、同温度条件下で粉砕機に移送する工程と、該粗砕されたビニルピロリドン系重合体乾燥物を粉砕する工程とを含む。
【0006】
好ましい実施形態においては、上記粗砕された重合体乾燥物の平均長径が5cm以下である。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記加熱面密着型乾燥機がドラムドライヤーである。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記加熱面密着型乾燥機が複数のフィードロールを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、ビニルピロリドン系重合体乾燥物を所定の温度条件下で粗砕し、粉砕機へ移送することから、ビニルピロリドン系重合体乾燥物の吸湿が抑制され、さらには、二次的な乾燥が行われる。その結果、十分に乾燥したビニルピロリドン系重合体粉体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
A.ビニルピロリドン系重合体溶液
ビニルピロリドン系重合体溶液とは、少なくとも1種類のビニルピロリドン系重合体を含む溶液をいう。このような重合体溶液としては、重合反応後の反応液であってもよく、重合体を溶媒に溶解させた溶液であってもよい。なお、本明細書において、用語「重合体溶液」は、完全な溶液だけでなく、エマルションやスラリーをも含む。なお、本明細書においては、便宜上、ビニルピロリドン系重合体を単に重合体と称する場合がある。したがって、単に重合体溶液と記載した場合に、ビニルピロリドン系を意味する場合がある。
【0011】
上記ビニルピロリドン系重合体溶液は、好ましくは高粘度の溶液である。25℃における重合体溶液の粘度は、一般に3,000mPa・s以上、好ましくは5,000〜100,000mPa・sである。当該範囲の粘度であれば、重合体溶液を乾燥機の加熱面へ塗布する際の操作性が向上し得る。なお、粘度は、B型粘度計等により測定することができる。
【0012】
上記ビニルピロリドン系重合体溶液のK値は、好ましくは40〜130、より好ましくは50〜120である。当該範囲のK値であれば、重合体溶液が加熱面上での良好な皮膜形成性を示し得る。ここで、K値とは、測定された粘度を用いて次のフィケンチャー式から計算される値である。
【数1】

【0013】
上記ビニルピロリドン系重合体溶液は、5重量%濃度の水溶液としたときのpHが4〜11であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。当該範囲のpHである場合、乾燥時における不溶物の生成およびK値の激しい低下が抑制され得る。
【0014】
本明細書において、用語「ビニルピロリドン系重合体」は、N−ビニル−2−ピロリドンの単独重合体、およびN−ビニル−2−ピロリドンと他のモノマーとの共重合体を包含する。共重合する他のモノマーとしては、N−ビニル−β−プロピオラクタム、N−ビニルコハク酸イミド、N−ビニル−δ−バレロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−グリコシアミジン、N−ビニルオキサゾリドン等の4〜7員環(好ましくは、5〜6員環)の環状N−ビニル系モノマー;N−ビニルホルムアミド類(N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド等のN−ビニル−N−C0−3アルキルホルムアミド等)、N−ビニルアセトアミド類(N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド等のN−ビニル−N−C0−3アルキルアセトアミド等)、N−ビニルプロピオンアミド類等のN−ビニルC1−4カルボン酸アミド(N−ビニルアミド)等の非環状N−ビニル系モノマー;N−ビニル−カルバミン酸メチル類(N−ビニルカルバミン酸メチル、N−ビニル−N−C1−4アルキルカルバミン酸メチル等)、N−ビニル−カルバミン酸エチル類、N−ビニル−カルバミン酸プロピル類等のN−ビニル−カルバミン酸C1−4アルキルエステル等の非環状N−ビニル系モノマー;N−ビニルイミダゾリジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルモルホリン等の、複数の複素原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を環の構成原子として有する複素環化合物モノマー(好ましくは4〜7員環化合物、より好ましくは5〜6員環化合物);(メタ)アクリル系モノマー[(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1−6アルキルエステル等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、N−モノC1−3アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジC1−3アルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類等];塩基性不飽和モノマー類[(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等];不飽和カルボン酸またはその酸無水物[(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等];ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等];ビニルエチレンカーボネート類;スチレン類;(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エステル類(エチルエステル等);ビニルスルホン酸類;ビニルエーテル類[メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等];オレフィン類[エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエン等];等を挙げることができる。上記他のモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ビニルピロリドン系重合体におけるN−ビニル−2−ピロリドンの含有量は、全モノマー成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上である。
【0015】
1つの実施形態においては、上記ビニルピロリドン系重合体は、吸湿性が好ましくは2重量%以上、特に好ましくは2.5重量%以上である。このような重合体は、従来の製造方法では十分に乾燥した粉体が得られ難いため、本発明の製造方法が特に好適に適用され得る。なお、本明細書において「吸湿性が2重量%以上」とは、後述の吸湿性測定方法によって測定した場合に、2重量%以上の吸湿性を有することをいう。すなわち、水分含有量を3重量%に調整した試料をステンレス製バットに入れ、25℃、相対湿度45%の恒温恒湿器に10分間静置した後の試料の水分含有量が5重量%以上であることをいう。
【0016】
上記ビニルピロリドン系重合体は、バルク重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合等の任意の適切な重合方法によって調製され得る。水溶液重合が採用される場合、重合反応後の重合体水溶液をそのまま乾燥に供することができる。
【0017】
上記ビニルピロリドン系重合体溶液は、必要に応じて、加工安定剤、可塑剤、分散剤、充填剤、老化防止剤、顔料、硬化剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0018】
B.加熱面密着型乾燥機
加熱面密着型乾燥機は、重合体溶液の供給手段によって、重合体溶液を乾燥機の加熱面に供給(塗布)して乾燥させ、掻取手段で乾燥物を掻き取る装置である。本発明で用いられる加熱面密着型乾燥機としては、任意の適切なものが採用され得る。具体的には、ドラムドライヤー、ベルトドライヤー、棚段式乾燥機等が挙げられる。なかでも、熱効率、迅速性、連続操作性に優れることから、ドラムドライヤーが好ましく用いられ得る。ドラムドライヤーは、水蒸気等の熱媒体で内側より加熱された回転ドラムの表面(加熱面)に上記重合体溶液を薄い膜状に塗布して1回転する間に蒸発乾燥させ、掻取手段で乾燥物を掻き取る装置である。本発明で用いられるドラムドライヤーとしては、任意の適切なものが採用される。例えば、シングルドラムドライヤー、ダブルドラムドライヤー、ツインドラムドライヤー等が挙げられる。
【0019】
上記重合体溶液の供給手段としては、任意の適切なものが採用され得る。具体的には、ロールフィード方式、ディップフィード方式、スプラッシュフィード方式、スプレイフィード方式等が挙げられる。なかでも、ロールフィード方式が好ましく用いられ得る。ロールフィード方式は、乾燥機の加熱面と各フィードロールとの間にノズル等の給液手段により重合体溶液を供給し、加熱面に付着させる方式である。当該方式によれば、高粘度の重合体溶液の供給が容易であること、加熱面からの溶液のはね返りによる溶液のロスや装置の汚れが生じにくいこと等の効果が奏され得る。なお、加熱面密着型乾燥機がドラムドライヤーである場合、回転ドラムとフィードロールとの直径の比(回転ドラム/フィードロール)は、好ましくは3〜7、より好ましくは約5である。
【0020】
上記ロールフィード方式のなかでも、多段ロールフィード方式が採用されることが好ましい。この場合、好ましくは2本以上のフィードロール、より好ましくは2〜6本、さらに好ましくは2〜5本のフィードロールが設けられる。これにより、重合体溶液が乾燥機の加熱面に2回以上重ねて供給(塗布)されるので、重合体溶液の供給(塗布)と乾燥とが繰り返し行われる。その結果、気泡が少なく、十分に乾燥した重合体乾燥物が得られ得る。本明細書においては、n本のフィードロールが設けられる場合、最上段のフィードロールから最下段のフィードロールに向けて順に第1のフィードロール、第2のフィードロール、・・・、第nのフィードロールと称する。
【0021】
掻取手段としては、任意の適切なものが採用され得る。例えば、掻取手段はドクターナイフであり得る。掻取手段によって掻き取られた重合体乾燥物は、典型的にはシート状である。
【0022】
C.粉砕機
粉砕機としては、任意の適切なものが採用され得る。例えば、パドルタイプ、ハンマーミル、ピンミル、ボールミル、うす式ミル、振動ミルが挙げられる。
【0023】
D.ビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法
本発明のビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法は、上記ビニルピロリドン系重合体溶液を、上記加熱面密着型乾燥機で乾燥させてビニルピロリドン系重合体乾燥物を得る工程、得られたビニルピロリドン系重合体乾燥物を40〜100℃の温度条件下で粗砕し、同温度条件下で粉砕機に移送する工程、および、粗砕されたビニルピロリドン系重合体乾燥物を粉砕する工程を含む。本発明によれば、特定の温度条件下で重合体乾燥物が粉砕機へ移送されるので、粗砕・移送時の環境相対湿度を常に低く安定させることができ、重合体乾燥物の吸湿が抑制され得る。さらには、重合体乾燥物の二次乾燥が行われ得る。この際、重合体乾燥物が粗砕されることにより、重合体乾燥物の表面積が増加するので、二次乾燥がより効果的に行われ得る。その結果、十分に乾燥したビニルピロリドン系重合体粉体が得られ得る。
【0024】
本発明の好ましい実施形態の概略図を図1に示す。図1に示されるとおり、当該好ましい実施形態においては、加熱面密着型乾燥機として、回転ドラム10、重合体溶液の供給手段(多段ロールフィード方式)20、および掻取手段30を備えるドラムドライヤー100が用いられる。このようなドラムドライヤー100において、回転ドラム10の表面(加熱面)は、水蒸気等の熱媒体で内側より加熱される。重合体溶液70は、給液手段40から重合体溶液の供給手段20に給液される。給液された重合体溶液70は、重合体溶液の供給手段20により、回転ドラム10の加熱面に供給(塗布)され、該ドラムが1回転する間に蒸発乾燥され、掻取手段30によって掻き取られる。これにより重合体乾燥物80が得られる。得られた重合体乾燥物80は、所定の温度条件下で粗砕手段50により粗砕され、粉砕機60に移送される。次いで、重合体乾燥物は粉砕機60で粉砕されて、重合体粉体が得られる。
【0025】
本発明においては、乾燥中に発生する蒸気が排気手段により排気され、吸気手段により外気が吸気されることが好ましい。これにより、重合体溶液の乾燥速度を向上させ得る。排気手段は加熱面密着型乾燥機の上方に設けられることが好ましく、吸気手段は下方に設けられることが好ましい。すなわち、上記乾燥は、発生する蒸気を加熱面密着型乾燥機の上方から排気し、外気を下方から吸気しながら行われ得る。加熱面密着型乾燥機がドラムドライヤーである場合、排気手段は回転ドラムの中心から重合体の給液手段(例えば、フィードロール)側にずれた位置の上方に設けることにより、重合体溶液の乾燥速度をさらに向上させ得る。なお、排気手段および吸気手段としては、任意の適切なものが採用され得る。この場合、外気を、除湿された空気および/または水分含有量の少ない窒素等の不活性ガスとすることにより、さらに乾燥速度を向上させ得る。また、得られる重合体乾燥物に外気中のゴミ、塵埃等の異物が混入することを防止するために、HEPAフィルターに代表される異物除去フィルターを通過させた外気を吸気することが好ましい。
【0026】
重合体溶液の加熱面への供給速度は、生産性と乾燥物の品質(水分)とのバランスを考慮して、適切に設定され得る。加熱面密着型乾燥機がドラムドライヤーである場合、回転ドラムの単位加熱面積当りの供給速度としては、1〜100kg/(m2・hr)が好ましく、5〜50kg/(m2・hr)がより好ましい。
【0027】
供給時の重合体溶液の温度は、好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜80℃である。当該範囲の温度であれば、操作性が良好であると共に、効率的に乾燥が行われ得る。
【0028】
重合体溶液の塗布厚みは、重合体の種類、粘度等に応じて、適切に設定され得る。好ましくは0.05〜10mm程度、より好ましくは0.1〜5mm程度である。塗布厚みを調整する方法としては任意の適切な方法が採用され得る。例えば、フィードロールと加熱面とのクリアランスを調整すること、重合体溶液の粘度を調整すること等が挙げられる。
【0029】
重合体溶液の供給手段として多段ロールフィード方式を採用する場合、重合体溶液の供給(塗布)と乾燥とを繰り返して、乾燥物を得ることができる。ここで、2回目以降の重合体溶液の供給において、それ以前に供給した重合体溶液は完全に乾燥している必要はなく、2回目以降の重合体溶液の供給に支障がない程度に実質的に乾燥していればよい。
【0030】
加熱面の温度は、重合体の種類、重合体溶液の温度等に応じて、適切に設定され得る。当該加熱面の温度は、重合体溶液の溶媒の沸点以上が好ましく、沸点より10℃以上高い温度がより好ましい。また、加熱面の温度は、重合体溶液に含まれる重合体のガラス転移温度より10℃以上低いことが好ましい。当該範囲の温度であれば、重合体の皮膜形成性が良好となるため、多段ロールフィード方式による重ね塗りが容易になる。例えば、ビニルピロリドン系重合体溶液を大気圧下で乾燥する場合、加熱面の温度は、好ましくは110〜180℃、より好ましくは115〜165℃、さらに好ましくは120〜150℃である。
【0031】
加熱面密着型乾燥機がドラムドライヤーである場合、ドラムの回転速度は、重合体の種類、重合体溶液の温度、所望する重合体乾燥物の物性等に応じて、適切に設定され得る。通常は、0.1〜6rpm、好ましくは0.3〜5rpm、より好ましくは0.5〜4rpm、さらに好ましくは1〜3rpmである。
【0032】
上記のようにして乾燥された重合体を掻取手段で掻取ることにより重合体乾燥物が得られる。一回目の重合体溶液の供給から掻取までの乾燥時間は、重合体の種類、重合体溶液の温度、所望する重合体乾燥物の物性等に応じて、適切に設定され得る。通常は、0.1〜5分の範囲である。
【0033】
次いで、上記のようにして得られた重合体乾燥物は、40〜100℃の温度条件下で粗砕され、同様の温度条件下で粉砕機に移送される。具体的には、粗砕時の温度条件は、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃である。また、移送時の温度条件は、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃である。当該温度条件である場合、重合体乾燥物の吸湿が抑制されるだけでなく、重合体乾燥物の二次乾燥が好適に行われ得る。当該温度に調整する手段としては、設定温度に調整された空気および/または不活性ガスを導入すること、粉砕機および/または移送機の外面を加熱すること等の任意の適切な手段が採用され得る。
【0034】
粗砕された重合体乾燥物の平均長径は、好ましくは5cm以下、より好ましくは0.5〜4cm、さらに好ましくは0.5〜3cmである。また、粗砕された重合体乾燥物の平均短径は、好ましくは0.2〜1cmである。当該大きさに粗砕された場合、重合体乾燥物の二次乾燥がより好適に行われ得る。重合体乾燥物の粗砕手段としては、剪断式粗砕機、圧縮式粗砕機、衝撃式粗砕機等の任意の適切なものが採用され得る。なかでも、微粉が発生し難い剪断式粗砕機が好ましい。
【0035】
重合体乾燥物を粗砕手段または粉砕機へ移送する手段としては、任意の適切なものが採用され得る。例えば、スクリューコンベア、バケットコンベア、ベルトコンベア、空気輸送等が挙げられる。
【0036】
上記のようにして粗砕された重合体乾燥物は、上記粉砕機によって粉砕される。これにより、ビニルピロリドン系重合体粉体が得られる。ビニルピロリドン系重合体粉体の平均粒子径は、例えば30〜300μmであり得る。
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
【0038】
[実施例1]
(重合体溶液)
マックスブレンド型撹拌羽根(SUS304製)を備えた撹拌機、モノマー供給槽、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた1L容フラスコ(SUS304製)にイオン交換水 640g、N−ビニル−2−ピロリドン 400g、およびジエタノールアミン 0.024gを入れ、200rpmで撹拌しながら、窒素ガスを導入して溶存酸素を除去した。次いで、フラスコ内温が70℃になるように加熱した。このフラスコ内に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬社製 試薬1級) 0.352gを添加して重合を開始した。2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)添加後3分以内に重合反応が開始し、約20分後に97℃に到達した。次いで、97℃に到達してから160分間フラスコ内温を90℃以上に維持した後、マロン酸 0.144gを添加し、90℃以上で1時間保持した。次いで、ジエタノールアミン 0.2gを添加し、30分間フラスコ内温を90℃で保持してポリビニルピロリドン含有水溶液を得た。このようにして得られたポリビニルピロリドン水溶液のポリビニルピロリドン含有量は20重量%であり、K値は85.0であり、粘度(25℃)は10,000mPa・sであった。
【0039】
(加熱面密着型乾燥機)
加熱面密着型乾燥機として、直径が800mmであり、幅が1000mmである回転ドラムを有するドラムドライヤー(カツラギ工業社製)を用いた。該ドラムドライヤーに、直径が160mmであり、幅が1000mmである第1〜第4のフィードロールを取り付けた。このとき、回転ドラムの加熱面と第1〜第3のフィードロールとのクリアランスを0.1mm未満、加熱面と第4のフィードロールとのクリアランスを約0.3mmにした。各フィードロールの取り付け位置は、ドラム本体の回転軸の水平方向を0°として、第1のフィードロールの回転軸が65°、第2のフィードロールの回転軸が37.5°、第3のフィードロールの回転軸が10°、第4のフィードロールの回転軸が−17.5°となるように設定した。また、フィードロールと回転ドラム間に滞留する重合体溶液の液量が一定になるように滞留液部に温度センサーを2本設置し、滞留液量の上限から下限の範囲内に液面が維持されるようにセットした。
【0040】
(重合体乾燥物の製造)
回転ドラムに蒸気を導入し、該ドラムの伝熱面の温度を140℃にした。回転ドラムを1.5rpmの速度で定速回転させ、フィードロールの外周部の周速を回転ドラムの外周部の周速となるようにフィードロールを回転させた。60℃に調整した上記ポリビニルピロリドン水溶液を給液ノズルから各フィードロールへ給液し、回転ドラムの単位加熱面積当り28kg/(m2・hr)の供給速度で加熱面に塗布および乾燥させた。次いで、乾燥物をスクレーパーで掻き取ることにより、シート状のポリビニルピロリドン乾燥物を得た。このポリビニルピロリドン乾燥物の水分含有量は、2.5重量%であった。なお、乾燥は、発生した蒸気を回転ドラムに取り付けたフィードロールの上方から排出し、かつ、回転ドラムの下方から外気を吸気しながら行った。
【0041】
得られたシート状乾燥物を60℃の温度条件下、剪断式粗砕機で粗砕しながら粉砕機(ホソカワミクロン社製、商品名「ヴィクトリーミルVP−1型」)へ移送した。次いで、粉砕を行うことにより、平均粒径300μmのポリビニルピロリドン粉体を得た。なお、粗砕されたポリビニルピロリドン乾燥物の平均長径は2cmであり、平均短径は0.5cmであった。また、粗砕されたポリビニルピロリドン乾燥物の粉砕機内に取り込まれる直前における水分含有量は、2.2重量%であった。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同様の操作を行って得られたシート状乾燥物(水分含有量2.5重量%)を温度管理せずに、剪断式粗砕機で粗砕しながら粉砕機(ホソカワミクロン社製、商品名「ヴィクトリーミルVP−1型」)へ移送した。次いで、粉砕を行うことにより、平均粒径300μmのポリビニルピロリドン粉体を得た。なお、粗砕されたポリビニルピロリドン乾燥物の平均長径は2cmであり、平均短径は0.5cmであった。また、粗砕されたポリビニルピロリドン乾燥物の粉砕機内に取り込まれる直前における水分含有量は、3.2重量%であった。
【0043】
[水分含有量の測定方法]
25℃−30%RH雰囲気下の室内で、各試料を卓上粉砕機にて粉砕した後、1,000μmの目開きの篩を通過させて分級した。次いで、該分級粉体約2gをアルミカップにすばやく採取し、重量を測定した。該粉体を150℃に調整した熱風乾燥機中で1時間静置した。その後、乾燥機からアルミカップを取り出し、直ちに蓋をしてデシケーター中で1時間静置し、冷却した。次いで、乾燥後の粉体の重量を測定した。乾燥前の粉体の重量から乾燥後の粉体の重量を減じた値を乾燥前の粉体の重量で除して100を乗じた値を水分含有量(重量%)とした。
【0044】
[吸湿性の測定方法]
目開き500μmの篩を通過し、かつ、目開き150μmの篩を通過しない重合体粉体を分級採取した。次いで、該重合体粉体を水分含有量が3重量%となるように調整した。水分含有量を3重量%に調整した重合体粉体約5gを底面が13cm×10cmのステンレス製バットに素早く採取して精秤し、平らにならした。次いで、25℃、相対湿度45%に調整された恒温恒湿器に入れて10分間静置し吸湿させた。10分間の吸湿後に粉体の重量を測定し、水分含有量を測定した。吸湿後の粉体の水分含有量から吸湿前の粉体の水分含有量(3重量%)を減じた値を吸湿性(重量%)とした。
【0045】
上記のとおり、本発明によれば、吸湿性の高いビニルピロリドン系重合体であっても、吸湿が抑制され、さらには、二次乾燥が行われることから、十分に乾燥されたビニルピロリドン系重合体粉体が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、十分に乾燥した重合体粉体が得られるので、重合体粉体(特に、ビニルピロリドン系重合体)の製造分野において好適に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の好ましい実施形態の概略図である。
【符号の説明】
【0048】
100 ドラムドライヤー
10 回転ドラム
20 重合体溶液の供給手段
21〜24 第1〜第4のフィードロール
30 掻取手段
40 給液手段
50 粗砕手段
60 粉砕機
70 重合体溶液
80 重合体乾燥物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルピロリドン系重合体溶液を加熱面密着型乾燥機で乾燥させてビニルピロリドン系重合体乾燥物を得る工程と、
該ビニルピロリドン系重合体乾燥物を40〜100℃の温度条件下で粗砕し、同温度条件下で粉砕機に移送する工程と、
該粗砕されたビニルピロリドン系重合体乾燥物を粉砕する工程と
を含む、ビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法。
【請求項2】
前記粗砕された重合体乾燥物の平均長径が5cm以下である、請求項1記載のビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法。
【請求項3】
前記加熱面密着型乾燥機がドラムドライヤーである、請求項1または2記載のビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法。
【請求項4】
前記加熱面密着型乾燥機が複数のフィードロールを備える、請求項1〜3いずれか記載のビニルピロリドン系重合体粉体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−249473(P2009−249473A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97978(P2008−97978)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】