説明

ビニールハウスにおける結露回収装置

【課題】 結露回収具の上方に展張されているシートがシート止めフレームの端部に接触しても、このシートの破断を防止できるビニールハウスの結露回収装置を提供すること
【解決手段】 集水口6cを備えた結露回収具Aと、結露回収具Aの左右両側に着脱自在に挿入した左右一対の断面蟻溝状のシート止めフレームB,Bとからなるビニールハウスの結露回収装置において、上記左右一対のシート止めフレームB,B間に上記集水口6cに対応してジョイントCを配置し、当該ジョイントCを断面蟻溝状のフレーム本体30と、このフレーム本体30の上部に外側に向けて湾曲させて設けたカール部31とで構成させ、上記ジョイントCにおけるフレーム本体30を上記各シート止めフレームB,Bの内周側に上方から嵌合させて少なくとも上記各シート止めフレームの各端部の上側端縁P、Pを上記カール部31,31で覆わせたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーチパイプ等の骨組上に展張した透明又は半透明な合成樹脂シートの内面に付着した結露水又は破断個所等から侵入した雨水等を回収するビニールハウスにおける結露回収装置に関し、特に、結露回収具の上方に展張しているシートの破断を防止できるビニールハウスの結露回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アーチパイプ等の骨組上に透明なビニールシートを展張した温室たるビニールハウスではハウス内の室温や湿度がハウス外の大気より高く、又作物に水を与えてこの水が蒸発することから、ビニールシートの室内側内面に多数の結露が付着する。
【0003】
この結露は、これを放置しておくとビニールシートの内面を流下してある重みになると土壌上に落下し、室内で作業する作業者が不快になるばかりでなく、作物の根腐れ、病気を起し、植物の育成に多大な悪影響を及ぼす。
【0004】
そこで、この不具合を解消するため、本出願人は、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されたような結露回収装置を開発している。
【0005】
このビニールハウスの結露回収装置は、結露回収具と、結露回収具の左右両側に嵌合させた左右一対の断面蟻溝状のシート止めフレームとからなり、シート止めフレームは、シートを定着させる蟻溝フレームと、結露を回収する樋フレームとを有している。
【0006】
更に、結露回収具は、本体と、本体の上側に設けたシート止めフレーム差しみ込用の第1,第2の差込溝と、第1,第2の差込溝の途中に下方に向けて設けた集水口と、集水口に接続した排水ノズルとを備え、更に、本体の左右両側と前側とに互いに連通する左右一対の樋溝と前側の樋溝とを設け、左右両側の樋溝にそれぞれ第1,第2の差込溝を連通させると共に前側の樋溝に集水口を連通させたものである。
【0007】
この結露回収装置によれば、シート止めフレームの樋フレームを伝わる結露が上記集水口や樋溝に回収され排水ノズルを介して外部に排出されるようになっている。
【特許文献1】特許第3591582号公報(請求項,図面参照)
【特許文献2】特開2003−134944号公報(請求項、図面参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の結露回収装置では、機能上特に欠陥がある分けではないが、次のような不具合の改善が望まれている。
【0009】
即ち、結露回収具の本体には左右一対のシート止めフレームが差込まれて結合され、各シート止めフレームの端部を集水口に臨ませており、そして、各シート止めフレームの端部を集水口に臨ませる為にこれらのシート止めフレームの対向する端部間にシート止めフレームを位置決めするストッパを介在させている。
【0010】
この為、このストッパの巾分の隙間が各シート止めフレームの端部間に発生し、その結果、この隙間の部位では各シート止めフレームの端部における上縁が露出し、シートを展張させる作業中にこのシートが上記上縁に接触したり、或いは、すでに展張されているシートが振動、風雨に起因して上記上縁に接触したりすることになる。
【0011】
然るに、各シート止めフレームの端部は、ビニールハウスの施工現場でその都度任意に切断される場合が多く、その結果、この端部が鋭角になっていたり、バリが残ったりしており、これらの鋭角部分やバリに展張中のシートが接触して破断し、或いはすでに展張されているシートが風雨時に擦れ、長時間の使用中にこのシートが破断してしまう恐れがある。
【0012】
そこで、本発明は、結露回収具の上方に展張されているシートがシート止めフレームの端部に接触しても、このシートの破断を防止できるビニールハウスの結露回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明の一つの手段は、集水口を備えた結露回収具と、結露回収具の左右両側に着脱自在に挿入した左右一対の断面蟻溝状のシート止めフレームとからなるビニールハウスの結露回収装置において、上記左右一対のシート止めフレーム間に上記集水口に対応してジョイントを配置し、当該ジョイントを断面蟻溝状のフレーム本体と、このフレーム本体の上部に外側に向けて湾曲させて設けたカール部とで構成させ、上記ジョイントにおけるフレーム本体を上記各シート止めフレームの内周側に上方から嵌合させて少なくとも上記各シート止めフレームの各端部の上側端縁を上記カール部で覆わせたことを特徴とする。
【0014】
この場合、ジョイントのフレーム本体が水平底部と、水平底部の前後両側から内側に傾斜して起立する一対の側壁とからなり、上記両側壁の上部に外側に向けて湾曲するカール部を設け、更に両側壁の外側面の中間に位置決めリブを設けても良い。
【0015】
同じく、本発明の他の手段は、集水口を備えた結露回収具と、結露回収具の左右両側に着脱自在に挿入した左右一対の断面蟻溝状のシート止めフレームとからなるビニールハウスの結露回収装置において、上記左右一対のシート止めフレーム間に上記集水口に対応してジョイントを配置し、当該ジョイントを断面蟻溝状のフレーム本体と、このフレーム本体の上部に内側又は外側に向けて湾曲させて設けたカール部とで構成させ、上記左右のシート止めフレームの互いに向かい合う端部を上記ジョイントにおけるフレーム本体の内周側又は外周側にそれぞれ左右方向から差込んで少なくとも上記左右シート止めフレームの各端部の上側端縁を上記カール部で覆わせたことを特徴とする。
【0016】
この場合、ジョイントのフレーム本体が水平底部と、水平底部の前後両側から内側に傾斜して起立する一対の側壁とからなり、上記両側壁の上部に内側又は外側に向けて湾曲するカール部を設け、更に両側壁の外側面又は内側面の中間に位置決めリブを設けても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次の効果が得られる。
【0018】
1)各請求項1,2,3,4の発明によれば、左右一対のシート止めフレームにおける各端部の上側端縁をカール部で覆っているから、シートを展張している作業中にこのシートが上記上側端縁に接触したり、或いは結露回収具の上側にすでに展張されているシートがビニールハウスの振動により、又は風雨によりシート止めフレームの端部上で擦れても、当該シートは湾曲したカール部上に接触するだけでシート止めフレームの端部の鋭いエッジに引掛けられるのが防止され、その結果シートの摩耗、破断を防止できる。
【0019】
2)請求項2,4の発明によれば、位置決めリブで各シート止めフレームの浸入ストロークを規制して、シート止めフレームの端部下面が結露回収具の集水口に対応するように位置決めでき、シート止めフレームを伝わる結露水が確実に集水口に回収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図にもとづいて説明するが、本発明に係るビニールシートの結露回収装置の基本構造は、図3の分解斜視図から分かるように、 特許文献1,2に示す従来技術と同じく、集水口6cを備えた結露回収具Aと、結露回収具Aの左右両側に着脱自在に挿入した左右一対の断面蟻溝状のシート止めフレームB,Bとからなるものである。
【0021】
そして、本発明における第一の実施の形態では、上記左右一対のシート止めフレームB,B間に上記集水口6cに対応してジョイントCを配置し、当該ジョイントCを断面蟻溝状のフレーム本体30と、このフレーム本体30の上部に外側に向けて湾曲させて設けたカール部31とで構成させ、上記ジョイントCにおけるフレーム本体30を上記各シート止めフレームB,Bの内周側に上方から嵌合させて少なくとも上記各シート止めフレームの各端部の上側端縁P、Pを上記カール部31,31で覆わせたことを特徴とするものである。
【0022】
この場合、ジョイントCのフレーム本体30が水平底部32と、水平底部32の前後両側から内側に傾斜して起立する一対の側壁33,33とからなり、上記両側壁33,33の上部に外側に向けて湾曲するカール部31,31を設け、更に両側壁33,33の外側面の中間に位置決めリブ35を設けている。
【0023】
更に、本発明における他の実施の形態は、上記左右一対のシート止めフレームB,B間に上記集水口6cに対応してジョイントCを配置し、当該ジョイントCを断面蟻溝状のフレーム本体30と、このフレーム本体30の上部に内側又は外側に向けて湾曲させて設けたカール部31,31とで構成させ、上記左右のシート止めフレームB,Bの互いに向かい合う端部を上記ジョイントCにおけるフレーム本体30の内周側又は外周側にそれぞれ左右方向から差込んで少なくとも上記左右シート止めフレームの各端部の上側端縁P,Pを上記カール部31,31で覆わせたことを特徴とする。
【0024】
この場合、ジョイントCのフレーム本体30が水平底部32と、水平底部32の前後両側から内側に傾斜して起立する一対の側壁33,33とからなり、上記両側壁33,33の上部に内側又は外側に向けて湾曲するカール部31を設け、更に両側壁33,33の外側面又は内側面の中間に位置決めリブ35を設けている。
【0025】
ところで、上記二つの実施の形態において、両者は実質的に技術思想が同じである。
【0026】
ただ、第一の実施の形態では、ジョイントCを上方から左右のシート止めフレームB,Bの本体内に嵌めこむのに対して、第二の実施の形態では、逆にジョイントCに対して左右のシート止めフレームB,Bを左右方向から差込む工程において差異がある。
【0027】
また、第一の実施の形態では、ジョイントCをワンタッチで装着できる効果がある。
【0028】
ジョイントCは、図1に拡大して示すように、フレーム本体とカール部とを有し、フレーム本体30が水平底部32と、水平底部32の前後両側から内側に傾斜して起立する一対の側壁33,33とからなっている。
【0029】
上記両側壁33,33の上部に外側に向けて湾曲するカール部31を設け、更に両側壁33,33の外側面の中間に位置決めリブ35を設けている。
【0030】
カール部31,31を内側に折り曲げ、又位置決めリブ35を両側壁33,33の内周側に設け、各シート止めフレームB,BをジョイントCのフレーム本体30の内側に差込むようにしても良い。
【0031】
但し、この場合はフレ−ム本体30の水平底部32に集水口6cに対向する開口部を形成し、シート止めフレームB,Bを介して流れる結露水をこの開口部から集水口6cに流出させる。
【0032】
シート止めフレームB,Bは、図6に示すように、地上に起立する骨組みたるアーチ状パイプ1に直交して架設され、結露回収具AとジョイントCに端部が差込まれて結合されている。
【0033】
シート止めフレームBは、上記特許文献2に示す従来のものと同じく、開口部幅狭の第一の蟻溝フレーム2と、第一の蟻溝フレーム2の斜め下方に連設した開口部幅狭の第二の蟻溝フレーム3と、第一の蟻溝フレーム2の下側に連設した樋フレーム2Cとからなり、シートを定着する時、第一,第二の蟻溝フレーム2,3の一方または両方に弾性な係止線条4を嵌合させるものである。
【0034】
但し、シート止めフレームBは、上記特許文献1に示す従来のものと同じく、樋フレーム2Cと蟻溝フレーム3とで構成したものでも良い。
【0035】
第一および第二の蟻溝フレーム2,3の一方または両方には、合成樹脂製の透明シート5が係止線条4を介して定着される。
【0036】
第一の蟻溝フレーム2には骨組み上の屋根側に展張されたシート5の端部が定着され、第二の蟻溝フレーム3には換気用のシート5の端部が定着されている。
【0037】
第一の蟻溝フレーム2の下側たる背面又は背面近傍には第二の蟻溝フレーム3とは逆方向に起立する断面L字状の樋フレーム2cが形成され、この樋フレーム2cが図6の状態ではシート5の内面に結露した水滴を回収、排水する樋として使用される。
【0038】
第一および第二の蟻溝フレーム2,3は、それぞれ水平な底部2a,3aと、この水平な底部2a,3aの両端から、斜め内方に起立する一対の第一のシート支持片2b,3bとからなり、第一の蟻溝フレーム2の背面又は背面近傍には上述のL字状に起立する樋フレーム2cが形成されている。
【0039】
シート止めフレームBは、シート展張用に使用され、シート5の内面に結露した水滴を回収、排水する結露回収装置の一部品としても利用している。
【0040】
結露回収具Aは、外部に開口する左右及び前側のおける外側通路6a,6bと中央の集水口6cを備えた結露回収具本体7と、結露回収具本体7の上部に一体に設けられた抱持部9,10と、抱持部9,10にそれぞれ形成されて、前記集水口6cに連通する中央の開口部12とで構成されている。
【0041】
結露回収具本体7には、通路6aに通じるホースDの接続部13が、端部に一体に形成されている。
【0042】
第一の抱持部9は、水平な底部9aとその外端に一体に設けた彎曲した抱持片9bとで構成され、水平な底部9aに中央の集水口6cたる開口部が形成されている。
【0043】
第二の抱持部10は、同じく水平な底部10aと、その両端に設けた一対の抱持片10bとで構成され、水平な底部10aに集水口6cたる開口部が形成されている。
【0044】
樋フレーム2cと第二の蟻溝フレーム3は、それぞれ結露回収具Aの第一,第二の抱持部9,10を介して、結露回収具本体7に差込まれ、左右の各第一の溝フレーム2,2の端部はジョイントCのフレーム本体30の外周に嵌合して差し込まれる。
【0045】
この場合、樋フレーム2c,2cと第一の蟻溝フレーム2,2との各端部間には、結露回収具A側の集水口6cに通じる通路たる隙間が形成される。
【0046】
即ち、第一の蟻溝フレーム2,2がジョイントCに嵌合したとき、ジョイントCの位置決めリブ35a,35aにこの第一の蟻溝フレーム2,2の端部端面が当接して浸入ストロークか規制され、その結果、リブ35の巾分の隙間が集水口6cに対応して形成される。
【0047】
このことによって、ハウス使用中に上方のシート5の内面に水滴が結露され、この水滴がある重さになると、シート5の内面をつたわって、L字状の樋フレーム2c内に流れ、更に、上記隙間より集水口6cに流出して外部に回収される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るビニールハウスの結露回収装置の一部拡大斜視図である。
【図2】本発明に係るビニールハウスの結露回収装置の斜視図である。
【図3】図2の分解斜視図である。
【図4】図2のX−X線縦断側面図である。
【図5】図4のY−Y線縦断正面図である。
【図6】本発明の結露回収装置を取付けたビニールハウスの一部斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
A 結露回収具
B シート止めフレーム
C ジョイント
2 第一の蟻溝フレーム
3 第二の蟻溝フレーム
6c 集水口
30 フレーム本体
31 カール部
32 水平底部
33 側壁
35 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集水口を備えた結露回収具と、結露回収具の左右両側に着脱自在に挿入した左右一対の断面蟻溝状のシート止めフレームとからなるビニールハウスの結露回収装置において、上記左右一対のシート止めフレーム間に上記集水口に対応してジョイントを配置し、当該ジョイントを断面蟻溝状のフレーム本体と、このフレーム本体の上部に外側に向けて湾曲させて設けたカール部とで構成させ、上記ジョイントにおけるフレーム本体を上記各シート止めフレームの内周側に上方から嵌合させて少なくとも上記各シート止めフレームの各端部の上側端縁を上記カール部で覆わせたことを特徴とするビニールハウスの結露回収装置。
【請求項2】
ジョイントのフレーム本体が水平底部と、水平底部の前後両側から内側に傾斜して起立する一対の側壁とからなり、上記両側壁の上部に外側に向けて湾曲するカール部を設け、更に両側壁の外側面の中間に位置決めリブを設けた請求項1に記載のビニールハウスにおける結露回収装置。
【請求項3】
集水口を備えた結露回収具、結露回収具の左右両側に着脱自在に挿入した左右一対の断面蟻溝状のシート止めフレームとからなるビニールハウスの結露回収装置において、上記左右一対のシート止めフレーム間に上記集水口に対応してジョイントを配置し、当該ジョイントを断面蟻溝状のフレーム本体と、このフレーム本体の上部に内側又は外側に向けて湾曲させて設けたカール部とで構成させ、上記左右のシート止めフレームの互いに向かい合う端部を上記ジョイントにおけるフレーム本体の内周側又は外周側にそれぞれ左右方向から差込んで少なくとも上記左右シート止めフレームの各端部の上側端縁を上記カール部で覆わせたことを特徴とするビニールハウスの結露回収装置。
【請求項4】
ジョイントのフレーム本体が水平底部と、水平底部の前後両側から内側に傾斜して起立する一対の側壁とからなり、上記両側壁の上部に内側又は外側に向けて湾曲するカール部を設け、更に両側壁の外側面又は内側面の中間に位置決めリブを設けた請求項3に記載のビニールハウスにおける結露回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−222008(P2007−222008A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43347(P2006−43347)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000221568)東都興業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】