説明

ビフェニルエーテル化合物の新規製造法

本発明は、選択的セロトニン再取込み阻害薬3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ベンゼンスルホンアミド(L)又は(D)酒石酸塩(I)の改良された製造法及び該製造法における中間生成物に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、選択的セロトニン再取込み阻害薬3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ベンゼンスルホンアミド(L)又は(D)酒石酸塩の改良された製造法及び該製造法における中間生成物に関する。
【0002】
WO01/72687に、3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ベンゼンスルホンアミド(L)酒石酸塩(I)の製造が記載されている。それによれば、該化合物は、(i)4−(メチルメルカプト)フェノール(III)を2−フルオロベンズアルデヒド(II)と、炭酸カリウムの存在下、DMFのような適切な溶媒中で反応させ;(ii)2−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ベンズアルデヒド(IV)のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムとジメチルアミン塩酸塩による還元的アミノ化を実施し、次いで場合によりその生成物のHCl塩を形成し;(iii)N,N−ジメチル−N−{2−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ベンジル}アミン(V)をジクロロメタン中でクロロスルホン酸と反応させ;そして(iv)3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ベンゼンスルホニルクロリド(VI)をアンモニア水又はエタノール中アンモニアで処理して(VII)を得ることによって製造される。ステップ(iii)と(iv)は一体化してもよい。対応する酒石酸塩は、(VII)を有機溶媒に溶解し、適当な酒石酸を加え、場合により該溶液を冷却し、得られる(I)の結晶を回収することによって得ることができる。
【0003】
全手順は以下のように表すことができる。
【0004】
【化1】

【0005】
このルートにはいくつかの問題がある。
(a)プロセスステップ(i)は希薄な反応条件下で実施されるので、その結果として大量の廃溶媒を反応終了時に処分しなければならない。その上、反応を大規模に実施すると反応時間が遅くなる。さらに、反応生成物の化合物(IV)は単離が難しい。該化合物は融点が低い(37〜39℃)ので、真空オーブン中での乾燥に適さない。そのため、反応終了時に生成物から溶媒を除去するのが困難である。結晶化による単離もこの特性によって妨げられる。
【0006】
(b)化合物(IV)の還元的アミノ化、すなわちプロセスステップ(ii)は、特に大規模の場合ゆっくり進行し、反応の完了に最大1週間を要しかねない。これは経済的に著しく不利益である。さらに、その収率は低く、不純物が生成する。化合物(IV)の第一級アルコール誘導体のような副生成物の生成は収率をさらに低下させる。
【0007】
(c)プロセスステップ(iii)で、化合物(V)のクロロスルホニル化は、大過剰の97%クロロスルホン酸(10モル当量)を用い、ジクロロメタン溶媒中で実施される。試薬と溶媒の有害な性質のため、特に大規模では安全な取扱いが難しい。さらに、過剰の試薬は反応終了時に中和しなければならないので大量の廃棄物が発生する。大量のジクロロメタンの処分も高価で環境に有害である。その上、数種類の不純物がこのプロセスステップの副生成物として生じる。これらの不純物は、化合物(VI)の高反応性と物理的形態(粘着性固体)のため手順の次のステップに持ち込まざるを得ず、効果的な単離と精製を困難にしている。
【0008】
(d)化合物(VI)の純度が中等度のため、プロセスステップ(iv)は低収率である。さらに、スルホン酸誘導体(IX)が副生成物として生成する。化合物(IX)は、プロセスステップ(iii)から持ち込まれた不純物なので、所望生成物の化合物(VII)から分離するのが難しい。
【0009】
要約すると、この反応手順は式(I)の化合物を実験室規模で製造するための妥当なルートを提供しているものの、これらの化合物を工業規模で製造するのにより適用可能な堅牢なプロセスが明らかに求められている。
【0010】
その結果、上記問題を克服する、改良された3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ベンゼンスルホンアミド(L)又は(D)酒石酸塩(I)の合成方法が開発された。
【0011】
全手順は以下のように表すことができる。
【0012】
【化2】

【0013】
本発明の一態様において、式(IV)の化合物は、式(II)と(III)の化合物を、プロセスステップ(i)、すなわち求核芳香族置換の条件下で、塩基の存在下、適切な溶媒中で反応させることによって製造できる。
【0014】
適切な塩基は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウムのような炭酸塩塩基;カリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシドのようなブトキシド塩基;水酸化ナトリウムのような水酸化物塩基;並びにピリジン及びモルホリンのような有機塩基などである。
【0015】
適切な溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、アセトニトリル及びエーテル類のような極性非プロトン性溶媒などである。
【0016】
反応の好適な塩基は炭酸カリウムであり、好適な溶媒はN,N−ジメチルホルムアミドである。
最も好ましくは、炭酸カリウムは小粒径(D90<1000μm)のものである。
【0017】
得られる式(VIII)の化合物は、式(IV)の化合物をジメチルアミン源及び適切な還元剤と反応させることによるプロセスステップ(vi)、すなわち還元的アミノ化反応により製造できる。式中、Mは、塩化物イオン、臭化物イオン、トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、硫酸水素イオン、酢酸イオン又はトリフルオロ酢酸イオンのような適切な対イオンである。
【0018】
適切なジメチルアミン源は、ジメチルアミン、塩基の存在下におけるジメチルアミン塩(適切な塩は塩酸塩などであり、適切な塩基はトリエチルアミンなどである);及び酸又は塩基の存在下におけるN,N−ジメチルホルムアミド(適切な酸はギ酸などであり;適切な塩基はトリエチルアミンなどである)などである。
【0019】
適切な還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、触媒の存在下における水素ガス、ギ酸及びギ酸塩、例えばギ酸カリウムやギ酸ナトリウムなどである。
【0020】
場合によって、チタンテトライソプロポキシドのようなルイス酸の添加が有益なこともある。
反応の適切な溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、エタノール、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミドなどである。
【0021】
好適な還元剤源はギ酸である。ギ酸の場合、必要なジメチルアミンがN,N−ジメチルホルムアミドの酸媒介性分解によって生成する。
N,N−ジメチルホルムアミドは、反応の好適な溶媒である。
【0022】
反応は好ましくは高温で実施される。
次に、中間体の第三級アミン生成物は、アミンを適切な溶媒の存在下で適切な酸と反応させることにより、結晶塩として単離できる。
【0023】
適切な酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸及びトリフルオロ酢酸などである。
好適な酸は、塩酸、硫酸及びメタンスルホン酸である。
【0024】
適切な溶媒は、tert−ブチルメチルエーテル及びメチルエチルケトンなどであり、これらを単独で、組み合わせて、又はいくらかの水の存在下のいずれかで使用する。
硫酸が特に好適である。好適な製造条件は、メチルエチルケトン及び硫酸による処理である。
【0025】
プロセスステップ1及び2は一体化してもよい。すなわち、式(IV)の化合物を単離及び精製しない。これは、化合物(IV)の融点が低いために単離を特に困難にしているので特に好都合である。
【0026】
従って本発明の一態様において、式(VIII)の化合物は、式(II)と(III)の化合物をプロセスステップ(i)の条件下で反応させてから、その粗反応混合物をプロセスステップ(vi)の条件下で処理することによって製造できる。
【0027】
この態様において、プロセスステップ(i)の好適な条件は、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド及び塩基として炭酸カリウムである。
最も好ましくは、炭酸カリウムは小粒径(D90<1000μm)のものである。
【0028】
この態様において、プロセスステップ(vi)の好適な条件は、高温で、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド及び還元剤としてギ酸である。
本発明の別の態様に従って、式(IX)の化合物は、式(VIII)の化合物をスルホニル化試薬の存在下、適切な溶媒の存在下で反応させることによるプロセスステップ(vii)、すなわちスルホニル化反応によって製造できる。
【0029】
適切なスルホニル化試薬は、クロロスルホン酸、硫酸及び発煙硫酸などである。
好適なスルホニル化剤はクロロスルホン酸(99%)である。
適切な溶媒は、ジクロロメタン、クロロスルホン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸及び硫酸などである。
【0030】
好適な溶媒は、トリフルオロ酢酸及びメタンスルホン酸である。
最も好適な条件は、クロロスルホン酸(99%)及びメタンスルホン酸又はクロロスルホン酸(99%)及びトリフルオロ酢酸である。
【0031】
好適な反応温度は、トリフルオロ酢酸が溶媒の場合、0〜5℃である。好適な反応温度は、メタンスルホン酸が溶媒の場合、0℃〜室温である。
本発明の更に別の態様に従って、式(VII)の化合物は、式(IX)の化合物を適切な溶媒中で塩素化剤と反応させてから塩化スルホニル中間体をアンモニアでクエンチングすることによるプロセスステップ(viii)、すなわちスルホンアミドの形成によって製造できる。
【0032】
適切な塩素化剤は、PCl、POCl、SOCl及び(COCl)などである。
適切な溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、トルエン及び酢酸エチルなどである。
【0033】
適切なアンモニア源は、アンモニアガス及び有機溶媒又は水のいずれか中のアンモニアガスの溶液などである。
好適な条件には、アセトニトリル中オキシ塩化リン、次いでアンモニア水による処理が含まれる。
【0034】
最も好適な条件には、中間体の塩化スルホニル(VI)溶液へのアンモニア水の添加、次いで水による処理が包含される。
本発明の更なる態様において、得られた式(VII)の化合物は、その純度を高めるために吸収剤で処理してもよい。適切な吸収剤は、活性炭、樹脂及びフラー土などである。
【0035】
本発明の更に別の態様に従って、式(I)の化合物は、式(VII)の化合物をD又はL酒石酸と溶媒系中で反応させることによるプロセスステップ(ix)によって製造できる。
適切な溶媒系は、イソプロピルアルコール、イソプロピルアルコール/水、エタノール、エタノール/水、メチルエチルケトン、メチルエチルケトン/水、メチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン/水、アセトン、アセトン/水などである。
【0036】
最も好適な条件は、(L)−酒石酸水と溶媒としてのメチルエチルケトンである。
上記溶媒系を用いる酒石酸塩の形成は、工業規模に適切な方法において改良された収率で改良された純度の塩をもたらす。
【0037】
この新規方法の利点は以下のように要約できる。
i)粒径D90<1000μmの炭酸カリウムの使用により、大規模で実施した場合にプロセスステップ(i)が完了に達するのに要する反応時間が削減される。この試薬を使用すると、容易に数キロの反応を24時間未満で完了させることができる。これは著しい経済的利益を有する。
【0038】
ii)プロセスステップ(vi)でN,N−ジメチルホルムアミドを溶媒及びジメチルアミン源の両方として使用することにより、プロセスステップ(i)と(vi)の一体化が可能になる。プロセスステップ(i)と(vi)の一体化は、低融点の中間体化合物(IV)の単離を回避し、これら二つのトランスフォーメーションに要する溶媒の容積も著しく削減する。従って、より多くの生成物が少ない反応容積から生成するので反応効率が増大する。
【0039】
iii)プロセスステップ(vi)でギ酸を還元剤として使用することは二つの理由から特に好都合である。第一に、それは液体なので、プロセスステップ(i)の最後に反応混合物に制御された様式で添加できる。従って、プロセスステップ(i)と(iv)の間でのpH変化に伴うガスの発生を安全に管理できる。第二に、ギ酸の酸化は何の化学廃棄物も出さない。COが唯一の副生成物である。
【0040】
iv)化合物(VIII)の純度は、プロセスステップ(vi)中にその好適な硫酸塩を形成することによって増大する。この塩形体は反応終了時に反応混合物から容易に単離される。
v)プロセスステップ(vii)で99%のクロロスルホン酸を使用することは(プロセスステップ(iii)で使用される97%のクロロスルホン酸の代わりに)、生成する副生成物の量を50%以上削減する。さらに、プロセスステップ(iii)と比べてずっと少ないスルホニル化試薬しか必要としないので、反応終了時に処分する化学廃棄物も少なくなる。さらに、溶媒のジクロロメタンをより環境に優しいメタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸に換えることができる。
【0041】
vi)化合物(IX)はプロセスステップ(vii)から沈殿物として形成される。この生成物を単離可能なことは、反応手順の中間点で必要に応じてこの中間体を精製する貴重な機会を提供する。これにより、製造プロセス中に純度に関してより大きな制御が行使できる。
【0042】
vii)反応性中間体化合物(VI)の単離は、それをその場で生成するプロセスステップ(viii)によって回避される。このステップで使用される反応条件は反応ステップ(iii)のそれと比べて穏やかなので、不純物の生成が少なく、この中間体の純度が向上される。
【0043】
viii)この中間体のその後のクエンチングは、アンモニア水を反応混合物に加え、次いで水を加え、そしてその場で還流を実施することによる新しい様式で行われる。当業界で認められている工業規模での慣行は、反応混合物を過剰のアンモニア水に加えることである。この新規な、逆モードの添加法には以下の利点がある。
【0044】
(a)副生成物のスルホン酸誘導体(IX)は反応混合物中に可溶なので、生成物からのその除去が容易となる。
(b)中間体化合物(VI)のスラリーを別の反応容器に移す必要がないので、その物理的形態に関連する取扱いの問題が回避される。
【0045】
(c)還流によって無機不純物の反応混合物中における溶解性が増大するので、それらを生成物から分離するのに役立つ。さらに有機不純物はパージされる。
上記利点の結果、化合物(VII)の収率が高くなる。
【0046】
ix)この新規な方法は、工業規模での多量の化合物(I)の製造に適している。
本発明の更なる態様において、式(VIII)及び(IX)の化合物(式中、Mは前述のような適切な対イオン)が提供される。
【0047】
【化3】

【0048】
これらの化合物は、本発明の方法によって式(I)の化合物を合成するのに特に有用である。
【実施例】
【0049】
実験
以下の略語及び定義が使用される。
MEK メチルエチルケトン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
TBME ターシャリーブチルメチルエーテル
DMSO ジメチルスルホキシド
POCl オキシ塩化リン
DCM ジクロロメタン
DMSO ジメチルスルホキシド
m/z 質量スペクトルピーク
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
MS 質量スペクトル
NMR 核磁気共鳴
q 四重線
s 一重線
t 三重線
br ブロード
TFA トリフルオロ酢酸
MSA メタンスルホン酸
Kg キログラム
L リットル
mL ミリリットル
g グラム
CDCl ジュウテリウム化クロロホルム
粉末X線回折(PXRD)パターンは、シータ−シータゴニオメータ、自動ビーム発散スリット、二次的モノクロメータ及びシンチレーションカウンタを備えたSiemens D5000粉末X線回折計を用いて測定した。標本を回転させながら、40kV/40mAで運転されたX線管を用いるグラファイトモノクロメータ(λ=0.15405nm)でフィルタをかけた銅K−アルファ1 X線(波長=1.5046オングストローム)で照射した。様々な固体形態のPXRDパターンの主ピーク(2θの角度で)を示す。
【0050】
融点は、Perkin Elmer DSC7を加熱速度20℃/分で用いて、又はBuchi融点B−545を用いて測定した。
NMRスペクトルは、サンプルを適当な溶媒に溶解することにより、Varian Inova 300MHzスペクトロメータを用いて得た。
【0051】
質量スペクトルは、1100シリーズのHewlett Packard LCとMicromass ZMD 質量分析計とを組み合わせて成るLC/MSシステムを用いて得た。
【0052】
N,N−ジメチル−2−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンジルアミン硫酸水素塩
【0053】
【化4】

【0054】
2−フルオロベンズアルデヒド(38.0Kg)、4−(メチルメルカプト)フェノール(43.8Kg)、炭酸カリウム(46.6Kg、粒径D90<1000μm)及びDMF(171L)を適切な反応容器に入れ、110℃に24時間加熱した。全ての2−フルオロベンズアルデヒドが消費されたら(<3%、HPLCで証明)、反応混合物を室温に冷却し、30分間かけてギ酸(169.1Kg)で処理した。該混合物をさらに24時間130℃に加熱し、次いで室温に冷却した。水(9.5L)を加え、次いで濃アンモニア水(152L)を加えてpHを8.5より大に調整した。該混合物をTBME(114L)で抽出して相分離させ、次に下部の水性相を廃棄した。硫酸塩を製造するためにTBME抽出物をMEK(114L)で希釈した。該溶液を15℃に冷却し、濃硫酸(30.6Kg)を温度を25℃未満に維持しながら加えた。次に、該混合物を20℃に冷却して一晩撹拌し、最後に0〜5℃に1時間冷却して生成物を減圧ろ過により回収した。ろ過ケーキをMEK(76L)で洗浄した。次に、生成物を真空下50℃で一晩乾燥させた。収率=81%、
【0055】
【数1】

【0056】
融点=139〜141℃。
3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸
【0057】
【化5】

【0058】
標記化合物は、溶媒としてメタンスルホン酸(方法A)又はトリフルオロ酢酸(方法B)のいずれかを用いて製造できる。
方法A
適切な容器にメタンスルホン酸(17.66L)を入れ、次いでN,N−ジメチル−2−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンジルアミン硫酸水素塩(7.85Kg)を入れて該混合物を溶解するまで室温で撹拌した。該反応混合物を0℃に冷却し、温度を5℃未満に維持しながらクロロスルホン酸(11.36Kg)で1時間かけて処理した。反応はHPLCでモニタし、出発材料の検出が<2%となって反応は5時間後に完了した。別の容器中で水(70.65Kg)を5℃に冷却した。次に冷却された反応混合物を冷却水に入れてクエンチングし、この間温度は35℃未満に維持した。クエンチング中、濃厚な白色沈殿物が形成された。最後に、残りの反応混合物をクエンチ水にメタンスルホン酸(2.91Kg)、次いで水(7.85Kg)で洗い入れた。得られたスラリーを室温で一晩撹拌した後、0℃に1時間冷却した。生成物を減圧ろ過し、ケーキを水(15.7L)で洗浄した。次に、固体生成物を水(78.5L)と共に室温で1時間撹拌した。生成物を減圧ろ過し、ケーキを水(15.7L)で洗浄した。次に、該物質を真空下50℃で一晩乾燥させた。収率=62%。
【0059】
方法B
適切な容器にトリフルオロ酢酸(138mL)を入れ、次いでN,N−ジメチル−2−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンジルアミン硫酸水素塩(50g)を入れて該混合物を溶解するまで−3℃で撹拌した。該反応混合物を−3℃に維持し、温度を6℃未満に維持しながらクロロスルホン酸(36mL)で0.25時間かけて処理した。99%級のクロロスルホン酸を用いて反応時の不純物の生成を(低級試薬と比べて)最小限にするので、得られる固体は高い純度で単離される。反応はHPLCでモニタし、出発材料の検出が<2%となって反応は24時間後に完了した。別の容器中で水(500mL)を2℃に冷却した。次に反応混合物を(2.5分間かけて)冷却水に入れてクエンチングし、この間温度は27℃未満に維持した。添加終了時まで生成物を溶液状態に維持するために迅速な添加が必要である。添加終了時点で生成物はゆっくり析出し始め、最大サイズの結晶が観察される。反応混合物をクエンチングされた混合物にトリフルオロ酢酸(12mL)で洗い入れ、スラリーを20℃で2.5時間、次いで0℃で一晩撹拌した。生成物を減圧ろ過した。
【0060】
物質の品質向上のために乾燥前にいくつかのオプションが利用できる。
オプション1 固体生成物を水(250mL)中、室温で0.5時間撹拌し、次いで減圧ろ過した。固体を1:1のアセトニトリル/水混合物(250mL)中、40℃で2時間撹拌した。スラリーを室温に冷却し、1時間後、減圧ろ過した。40℃で1:1のアセトニトリル/水(250mL)による再スラリー化を湿生成物に対してもう一度繰り返し、次いで真空下50℃で一晩乾燥させた。収率=54%。
【0061】
オプション2 固体生成物を水(2×50mL)で洗浄した。次に該固体を1:1のアセトニトリル/水混合物(250mL)中、60℃で1時間撹拌した。スラリーを室温に冷却し、この温度で4時間撹拌した。生成物を減圧ろ過し、次いで真空下50℃で一晩乾燥させた。収率=55%。
【0062】
オプション3 次に固体を1:1のアセトニトリル/水混合物(250mL)中、60℃で1時間撹拌した。スラリーを室温に冷却し、この温度で4時間撹拌した。生成物を減圧ろ過し、次いで真空下50℃で一晩乾燥させた。収率=58%。
【0063】
この主要中間体の純度をさらに上げるために、必要に応じて追加の再スラリー化又は再結晶化を実施してもよい。再結晶化は再スラリー化より純度を大きく向上させる。そのプロセスを以下に概説する。
【0064】
アセトニトリル(24.9L)、水(20.75L)及び3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸(4.15Kg)を容器に入れ、1時間加熱還流した。次に得られた溶液を3時間かけて室温に冷却し、スラリーをその温度で一晩撹拌した。固体を減圧ろ過して回収し、ケーキを1:1のアセトニトリルと水の混合物(それぞれ4.15L)で洗浄した。次に該物質を真空下50℃で一晩乾燥させた。収率=72%。
【0065】
【数2】

【0066】
3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンゼンスルホンアミド
【0067】
【化6】

【0068】
アセトニトリル(60mL)を容器に入れ、3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸(10.0g)を加え、次いでPOCl(2.9mL)を加えた。該反応混合物を2時間加熱還流した(約81℃)。反応はHPLCでモニタし、出発材料が<2%に減少したら完了したとみなした。次に該反応混合物を−10℃に冷却し、温度を20℃未満に維持しながら濃アンモニア水(60mL)で処理した。次に該反応混合物をさらに40℃の水(60mL)で処理した。ここで任意の1時間の加熱還流サイクルを用いてもよい。その後室温に冷却する。任意の加熱サイクルで、プロセス関連不純物のより高レベルのパージが可能になる。反応混合物を室温で一晩撹拌した。得られた固体を減圧ろ過し、ろ過ケーキを水(20mL)で洗浄した後、真空下50℃で一晩乾燥させた。収率=88%。
【0069】
【数3】

【0070】
3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンゼンスルホンアミド(R,R)酒石酸塩
【0071】
【化7】

【0072】
3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンゼンスルホンアミド(R,R)酒石酸塩の製造については、活性炭を遊離形態で使用するか固体に支持された形態で使用するかによって二つのオプションがある。
【0073】
オプション1
3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンゼンスルホンアミド(10g)を室温でMEK(80mL)と混合した。撹拌混合物を15分間加熱還流し(約80℃)、次いで室温に冷却した。該混合物を活性炭(20%w/w、Cuno‘Pfizer Type A’2g)で処理した。該懸濁液を室温で15分間撹拌し、次いでカーボンを更なる量のMEK(20mL)で洗いながらろ過した。このMEK溶液を、水(13mL)とMEK(13mL)に溶解した(L)−酒石酸(4.26g)の溶液で10分間かけて室温で処理し、得られたスラリーを室温で1時間撹拌した。次に、固体生成物を減圧ろ過して回収し、ろ過ケーキをMEK(20mL)で洗浄した。この塩を真空下50℃で乾燥させた。収率=82%。
【0074】
オプション2
3−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−[4−(メチルチオ)フェノキシ]ベンゼンスルホンアミド(31.65Kg)を室温でMEK(253.2L)と混合した。撹拌混合物を1時間加熱還流し(約80℃)、次いで室温に冷却した。該混合物を減圧ろ過によって清澄化した。この溶液を固体支持活性炭カートリッジ(0.5g/cmカーボン表面積のCuno‘R50Sp Pfizer Type A’)に10〜12L/分で通した。MEK(95L)を用いてろ過ケーキ、次いで固体支持カーボンカートリッジを洗浄した。このMEK溶液を、水(41.0L)とMEK(41.1L)に溶解した(L)−酒石酸(13.5Kg)の溶液で20分間かけて室温で処理し、更なる量の水(16L)で洗い込み、得られたスラリーを室温で3時間撹拌した。次に、固体生成物を減圧ろ過して回収し、ろ過ケーキをMEK(63.3L)で洗浄した。次いでこの塩を真空下50℃で乾燥させた。収率=87%。
【0075】
PXRDパターンの主ピーク(2θの角度で)は以下の通りである。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物の製造法であって、式(VII):
【化2】

の化合物と酒石酸とを適切な溶媒中で反応させることを含む製造法。
【請求項2】
溶媒がメチルエチルケトンであり、(L)形の酒石酸が使用される、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
式(IX):
【化3】

の化合物と適切な塩素化剤とを適切な溶媒中で反応させてその場で塩化スルホニルを生成させ;次に、適切なアンモニア源を反応混合物に添加してこの塩化スルホニルをクエンチングすることによる式(VII)の化合物の製造をさらに含む、請求項1に記載の製造法。
【請求項4】
式(VIII):
【化4】

(式中、Mは適切な対イオン)の化合物と適切なスルホニル化剤とを適切な溶媒中で反応させることによる式(IX)の化合物の製造をさらに含む、請求項3に記載の製造法。
【請求項5】
溶媒がメタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸であり、Mが塩化物イオン、硫酸水素イオン、又はメタンスルホン酸イオンである、請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
式(IV):
【化5】

の化合物と適切なジメチルアミン源とを、適切な還元剤の存在下、適切な溶媒中で反応させ、次いで得られたアミンを適切な酸で処理することによる式(VIII)の化合物の製造をさらに含む、請求項4に記載の製造法。
【請求項7】
還元剤がギ酸であり、溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドである、請求項6に記載の製造法。
【請求項8】
式(II):
【化6】

の化合物と式(III):
【化7】

の化合物とを、適切な塩基の存在下、適切な溶媒中で反応させることによる式(IV)の化合物の製造をさらに含む、請求項6に記載の製造法。
【請求項9】
(i)化合物(II)と(III)の反応を、塩基の存在下、N,N−ジメチルホルムアミド中で実施し;
(ii)化合物(IV)を含有する得られた粗反応混合物をギ酸で処理し、次いで高温で反応させ;
(iii)得られたアミン生成物の塩を、適切な酸を用いる処理によって形成する、
請求項8に記載の式(VIII)の化合物の製造法。
【請求項10】
式(VII):
【化8】

の化合物の製造法であって、式(IX):
【化9】

の化合物と適切な塩素化剤とを適切な溶媒中で反応させてその場で塩化スルホニルを生成させ;次に、適切なアンモニア源を反応混合物に添加してこの塩化スルホニルをクエンチングすることを含む製造法。
【請求項11】
式(IX):
【化10】

の化合物の製造法であって、式(VIII):
【化11】

(式中、Mは塩化物イオン、硫酸水素イオン、又はメタンスルホン酸イオン)の化合物と適切なスルホニル化剤とを、溶媒としてのメタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸中で反応させることを含む製造法。
【請求項12】
式(VIII):
【化12】

(式中、Mは適切な対イオン)の化合物の製造法であって、式(IV):
【化13】

の化合物と適切なジメチルアミン源とを、適切な還元剤の存在下、適切な溶媒中で反応させ、次いで得られたアミンを適切な酸で処理することを含む製造法。
【請求項13】
式(IX):
【化14】

の化合物。
【請求項14】
式(VIII):
【化15】

(式中、Mは硫酸水素イオン又はメタンスルホン酸イオン)の化合物。

【公表番号】特表2007−505940(P2007−505940A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527501(P2006−527501)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002989
【国際公開番号】WO2005/028430
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】