説明

ビベンゾイミダゾール化合物の製造方法

【課題】工業的生産に適したビベンゾイミダゾール化合物の製造方法の提供。
【解決手段】カルボン酸化合物の存在下、一般式(1)


(式中、R及びRは水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。なお、フェニレン基上の任意の水素原子は置換基で置換されていても良い。)で示されるフェニレンジアミン化合物と一般式(2)


(式中、Arはアリール基を示。)で示されるシュウ酸ジアリールとを、芳香族溶媒中で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビベンゾイミダゾール化合物の製造方法に関する。ビベンゾイミダゾール化合物は、例えば、医農薬の合成原料や色素増感太陽電池における金属錯体色素の架橋分子として有用な化合物である(例えば、特許文献1参照)。
【背景技術】
【0002】
従来、フェニレンジアミン化合物とシュウ酸エステルとを反応させてビベンゾイミダゾール化合物の製造する方法としては、例えば、マイクロ波を照射しながら、フェニレンジアミン塩酸塩とシュウ酸ジエチルとをジエチレングリコール中で反応させる方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/038587号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Synthetic Communication,36,2597(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記方法においては、マイクロ波を使用するために特殊な装置が必要となることから、工業的な製造方法としては必ずしも適当ではなかった。又、反応時間は90秒と短いために、逆に反応の制御が難しいという課題をも有していた。更に、非特許文献1には、無置換のビベンゾイミダゾ-ルの製法のみしか記載されておらず、長鎖アルキル基を有したビベンゾイミダゾ-ルについては何ら記載がなかった。
【0006】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、工業的生産に適したビベンゾイミダゾール化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、カルボン酸化合物の存在下、一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R及びRは水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。なお、フェニレン基上の任意の水素原子は置換基で置換されていても良い。)
で示されるフェニレンジアミン化合物と一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Arはアリール基を示す。)
で示されるシュウ酸ジアリールとを、芳香族溶媒中で反応させることを特徴とする、一般式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R及びRは、前記と同義である。なお、フェニレン基上の任意の水素原子は置換基で置換されていても良い。)
で示されるビベンゾイミダゾール化合物の製造方法によって解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、医農薬の合成原料や色素増感太陽電池における金属錯体色素の架橋分子として有用なビベンゾイミダゾール化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の反応において使用するフェニレンジアミン化合物は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、R及びRは同一又は異なっていても良く、水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示すが、炭化水素基としては、炭素原子数1〜20の炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素原子数3〜20のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素原子数7〜20のアラルキル基;フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、アントリル基等の炭素原子数6〜20のアリール基が挙げられる。なお、R及びRは互いに結合して環を形成していても良い。
【0016】
前記置換基を有していても良い炭化水素基の置換基としては、例えば、炭素原子を介して出来る置換基、酸素原子を介して出来る置換基、窒素原子を介して出来る置換基、硫黄原子を介して出来る置換基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0017】
前記炭素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;キノリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等の複素環基;フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;シアノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0018】
前記酸素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基、ペンチルオキシル基、ヘキシルオキシル基、ヘプチルオキシル基、ベンジルオキシル基等のアルコキシル基;フェノキシル基、トルイルオキシル基、ナフチルオキシル基等のアリールオキシル基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0019】
前記窒素原子を介して出来る置換基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の第二アミノ基、N−メチル−N−メタンスルホニルアミド基、N−メチル−N−アセチルアミド基等の二級アミド基;モルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピラゾリジニル基、ピロリジノ基、インドリル基等の複素環式アミノ基;イミノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0020】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0021】
なお、フェニレン基上の任意の水素原子は置換基で置換されていても良く、その置換基はR及びRの置換基として示したものと同じである。
【0022】
更に、フェニレンジアミン化合物は、化合物の安定性を考慮して、各種酸塩として使用しても構わない。
【0023】
本発明の反応において使用するシュウ酸ジアリール化合物は、前記の一般式(2)で示される。その一般式(2)において、Arはアリール基を示すが、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、アントリル基等の炭素原子数6〜20のアリール基が挙げられる。なお、2つのArは互いに同一でも異なっていても良い。又、Arは置換基を有していても良く、その置換基はR及びRの置換基として示したものと同じである。
【0024】
前記シュウ酸ジアリールの使用量は、フェニレンジアミン化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜10モル、更に好ましくは0.1〜2モル、より好ましくは0.1〜0.7モルである。
【0025】
本発明の反応において使用するカルボン酸化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、クロロ安息香酸、ニトロ安息香酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられるが、好ましくはギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、クロロ安息香酸、ニトロ安息香酸、更に好ましくはギ酸、酢酸、プロピオン酸が使用される。なお、これらのカルボン酸は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0026】
前記カルボン酸化合物の使用量は、フェニレンジアミン化合物1モルに対して、好ましくは0.01〜2.0モル、更に好ましくは0.05〜1モル、より好ましくは0.05〜0.5モルである。なお、カルボン酸の使用量を前記の範囲内とすることで、ビベンゾイミダゾール化合物の高収率で得ることができるとともに、副生成物であるキノリンジオン化合物の生成を抑制することができる。
【0027】
本発明において使用する芳香族溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(各種異性体を含む)、メシチレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;アニソール、グアヤアコール、メチレンジオキシベンゼン等の芳香族エーテル類が挙げられるが、好ましくは芳香族炭化水素類、更に好ましくはトルエン、キシレンが使用される。なお、これらの芳香族溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0028】
前記芳香族溶媒の使用量は、フェニレンジアミン化合物1モルに対して、好ましくは10mL〜10L、更に好ましくは50mL〜5L、より好ましくは100mL〜1Lである。
【0029】
本発明の反応は、例えば、フェニレンジアミン化合物、シュウ酸ジアリール、カルボン酸化合物及び芳香族溶媒を混合し、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは−50〜250℃、更に好ましくは−20〜200℃、より好ましくは−20〜160℃である。なお、反応圧力は特に制限されない。
【0030】
なお、本発明の反応のより好ましい態様としては、フェニレンジアミン化合物(1)とシュウ酸ジアリール(2)とを芳香族溶媒中にて−20〜30℃で反応させて、シュウ酸ジアミド化合物(一般式(4))を生成させる。次いで、カルボン酸化合物加えた後に、反応液の温度を高くして120〜160℃で反応させビベンゾイミダゾール化合物(4)を製造する方法が挙げられる。
【0031】
【化4】

【0032】
(式中、式中、R及びRは前記と同義である。なお、フェニレン基上の任意の水素原子は置換基で置換されていても良い。)
【0033】
即ち、本発明において中間生成物であるシュウ酸ジアミド化合物は、ビベンゾイミダゾール化合物を得るための重要中間化合物である。
【0034】
本発明の反応によってビベンゾイミダゾール化合物が得られるが、反応終了後、例えば、中和、抽出、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、晶析、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製することができる。
【実施例】
【0035】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0036】
実施例1(R=R=水素原子;ビベンゾイミダゾールの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた容器に、1,2−フェニレンジアミン1.08g(9.99ミリモル)をキシレン5mLに0℃にて懸濁させた後、シュウ酸ジフェニル1.21g(5.00ミリモル)及びキシレン5mLを加え、同温度で3時間反応させた。次いで、酢酸0.18g(3.00ミリモル)のキシレン5mL溶液を滴下して同温度で3時間、反応液を昇温させて還流させながら4時間反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却して一晩放置した後、N,N−ジメチルイミダゾリジノン55mLを加え反応液を均一にした。得られた反応混合液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ビベンゾイミダゾール0.97gが生成していた(反応収率;82.9%)。なお、副生成物であるキノリンジオンの生成率は僅か6.5%であった。
【0037】
比較例1(R=R=水素原子;ビベンゾイミダゾールの合成)
実施例1において、酢酸を濃塩酸0.11gに代えたこと以外は、実施例と同様に反応を行った。その結果、目的とするビベンゾイミダゾールは生成しておらず、副生成物であるキノリンジオンの生成率が54.4%であった。
【0038】
比較例2(R=R=水素原子;ビベンゾイミダゾールの合成)
実施例1において、酢酸を加えなかったこと以外は、実施例と同様に反応を行った。その結果、目的とするビベンゾイミダゾールは生成していなかった。
【0039】
実施例2(R=R=水素原子;ビベンゾイミダゾールの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた容器に、1,2−フェニレンジアミン1.08g(9.99ミリモル)をキシレン5mLに0℃にて懸濁させた後、酢酸0.18g(3.00ミリモル)及びキシレン5mLを加え、同温度で3時間反応させた。次いで、シュウ酸ジフェニル1.21g(5.00ミリモル)のキシレン5mL溶液を滴下して同温度で3時間、反応液を昇温させて還流させながら4時間反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却して一晩放置した後、N,N−ジメチルイミダゾリジノン55mLを加え反応液を均一にした。得られた反応混合液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ビベンゾイミダゾール1.02gが生成していた(反応収率;87.0%)。なお、副生成物であるキノリンジオンの生成率は僅か7.3%であった。
【0040】
実施例3(R=R=n−ヘキシル基;5,5’,6,6’−テトラ(n−ヘキシル)−1H,1’H−2,2’−ビベンゾ[d]イミダゾールの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた容器に、4,5−ジヘキシル−1,2−フェニレンジアミン5.00g(18.09ミリモル)をキシレン50mLに−10℃にて懸濁させた後、シュウ酸ジフェニル2.19g(9.04ミリモル)を加え、同温度で1時間反応させた。次いで、酢酸0.543g(9.04ミリモル)のキシレン25mL溶液を滴下して同温度で2.5時間、反応液を昇温させて還流させながら2.5時間反応させた。
反応終了後、反応液にキシレン50mLを加えた後、反応液を0℃まで冷却して析出した固体を濾過した。得られた濾液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液150mLで2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、得られた濾液を減圧下で濃縮させた後、濃縮物をアセトン150mLに加えて室温にて1晩攪拌させた。得られた固体を濾過して乾燥させ、淡黄色固体として5,5‘,6,6’−テトラ(n−ヘキシル)−1H,1’H−2,2’−ビベンゾ[d]イミダゾール2.26gを得た。又、濾液(アセトン溶液)から更に5,5’,6,6’−テトラ(n−ヘキシル)−1H,1’H−2,2’−ビベンゾ[d]イミダゾール0.30gを得た。得られた5,5’,6,6’−テトラ(n−ヘキシル)−1H,1’H−2,2’−ビベンゾ[d]イミダゾールの総量は2.92gであった(単離収率;56.6%)。
なお、5,5’,6,6’−テトラ(n−ヘキシル)−1H,1’H−2,2’−ビベンゾ[d]イミダゾールは、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0041】
H−NMR(THF−d,δ(ppm));12.54(brs,2H),7.45(brs,2H),7.26(brs,2H),2.73(t,J=7.57Hz,8H),1.59〜1.69(m,8H),1.33〜1.46(m,24H),0.91(t,J=6.84,12H)
CI−MS(m/z):571[M+H]
【0042】
参考例1(1,2−ジニトロ−4,5−ジ(n−オクタデシ−1−イニル)ベンゼンの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた容器に、1,2−ジブロモ−4,5−ジニトロベンゼン11.00g(33.75ミリモル)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)1.95g(1.69ミリモル)、トリエチルアミン17.08g(168.79ミリモル)及びテトラヒドロフラン400mLを混合した。次いで、1−オクタデシン17.75g(70.87ミリモル)のテトラヒドロフラン40mL溶液を加えた後、窒素雰囲気にて、攪拌しながら室温で70時間反応させた。
反応終了後、反応液を濾過し、得られた濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物をジエチルエーテル550mLに溶解させ、水330mLで1回、飽和塩化ナトリウム水溶液330mLで1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、得られた濾液を濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=97/3(容量比))で精製し、1,2−ジニトロ−4,5−ジ(n−オクタデシ−1−イニル)ベンゼン15.21gを得た(単離収率;68%)。
なお、1,2−ジニトロ−4,5−ジ(n−オクタデシ−1−イニル)ベンゼンの物性値は以下の通りであった。
【0043】
H−NMR(CDCl,δ(ppm));7.85(s,2H),2.50(t,J=7Hz.1,4H),1.60〜1.69(m,4H),1.44〜1.46(m,4H),1.26〜1.30(m,48H),0.88(t,J=6.6Hz,6H)
CI−MS(m/z):613[M+H]
【0044】
参考例2(R=R=n−オクタデシル基;4,5−(n−オクタデシル)−1,2−フェニレンジアミンの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた容器に、1,2−ジニトロ−4,5−ジ(n−オクタデシ−1−イニル)ベンゼン15.00g(22.6ミリモル)のトルエン(450mL)/エタノール(600mL)混合溶媒溶液及び10質量%パラジウム/炭素(50.9%含水品)1.96g(0.9ミリモル)を加えた後、水素雰囲気(水素バルーン)にて、攪拌しながら室温で22時間反応させた。
反応終了後、反応液を濾過し、得られた濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=4/1(容量比))で精製し、4,5−(n−オクタデシル)−1,2−フェニレンジアミン6.33g及び2−ニトロ−4,5−ジ(n−オクタデシ−1−イニル)アニリン2.38gを得た。
得られた2−ニトロ−4,5−ジ(n−オクタデシ−1−イニル)アニリンは、先述と同様の操作により4,5−(n−オクタデシル)−1,2−フェニレンジアミン2.02gへ誘導した。4,5−ジ(n−オクタデシル)−1,2−フェニレンジアミンの総量は8.35gであった(単離収率;60%)。
なお、4,5−(n−オクタデシル)−1,2−フェニレンジアミンの物性値は以下の通りであった。
【0045】
H−NMR(CDCl,δ(ppm)); 6.50(s,2H),3.25(brs,4H),2.41〜2.47(m,4H),1.46〜1.53(m,4H),1.15〜1.31(m,60H),0.88(t,J=6.6Hz,6H)
APCI−MS(m/z):1244[M+]
【0046】
実施例4(R=R=n−オクタデシル基;5,5’,6,6’−テトラ(n−オクタデシル)−1H,1’H−2,2’−ビベンゾ[d]イミダゾールの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた容器に、4,5−(n−オクタデシル)−1,2−フェニレンジアミン200mg(0.33ミリモル)をキシレン2mLに25℃にて懸濁させた後、酢酸10mg(0.16ミリモル)のキシレン2mL溶液を加え、同温度で1時間反応させた。次いで、シュウ酸ジフェニル40mg(0.16ミリモル)を滴下して同温度で64.5時間、反応液を昇温させて還流させながら4時間反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却して濾過した。濾液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mLで2回、飽和塩化ナトリウム水溶液20mLで1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、得られた濾液を減圧下で濃縮させた後、濃縮物をアセトン10mLに加えて室温にて1晩攪拌させた。得られた固体を濾過して乾燥させ、淡黄色固体として5,5’,6,6’−テトラ(n−オクタデシル)−1H,1’H−2,2’−ビベンゾ[d]イミダゾール68mgを得た(単離収率;33%)。
なお、5,5’,6,6’−テトラ(n−オクタデシル)−1H,1’H−2,2’−ビベンゾ[d]イミダゾールは、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0047】
H−NMR(THF−d,δ(ppm));12.64(brs,2H),7.45(brs,2H),7.26(brs,2H),2.73(t,J=7.32Hz,8H),1.59〜1.64(m,8H),1.28〜1.39(m,120H),0.88(t,J=6.35,12H)
CI−MS(m/z):1244[M+H]
【0048】
実施例5〜7(R=R=水素原子;ビベンゾイミダゾールの合成)
実施例1において、酢酸の使用量を変えたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ビベンゾイミダゾール化合物の製造方法に関する。ビベンゾイミダゾール化合物は、例えば、医農薬の合成原料や色素増感太陽電池における金属錯体色素の架橋分子として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸化合物の存在下、一般式(1)
【化1】

(式中、R及びRは水素原子又は置換基を有していても良い炭化水素基を示す。なお、フェニレン基上の任意の水素原子は置換基で置換されていても良い。)
で示されるフェニレンジアミン化合物と一般式(2)
【化2】

(式中、Arはアリール基を示す。)
で示されるシュウ酸ジアリールとを、芳香族溶媒中で反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化3】

(式中、R及びRは前記と同義である。なお、フェニレン基上の任意の水素原子は置換基で置換されていても良い。)
で示されるビベンゾイミダゾール化合物の製造方法。
【請求項2】
及びRがn−ヘキシル基であるビベンゾイミダゾール化合物。
【請求項3】
及びRがn−オクタデシル基であるビベンゾイミダゾール化合物。

【公開番号】特開2011−207844(P2011−207844A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79350(P2010−79350)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】