説明

ビューファインダ用の陰極線管

【課題】比較的低い加速電圧で発光し、高解像度を得ることができる蛍光薄膜を用いたビューファインダ用の陰極線管を提供することを課題とする。
【解決手段】
陰極線管1は、ファンネル部2a及びネック部2bを有する外囲器2、ネック部2bに設けられる陰極3、陰極3の先端近傍に設けられる走査用電子レンズ4、外囲器2のファンネル部2aの外側に配設される偏向ヨーク5、及び、陰極3に対向するように外囲器2に取り付けられるフェースプレート6を備える。フェースプレート6は、前面パネルとして機能する対角2インチのガラス基板であり、真空空間側に透明電極7、蛍光薄膜8及び黒色金属薄膜9が積層されている。蛍光薄膜8には、例えば、セリウム、ユウロビウム、マンガン添加ストロンチウムチオガレイト(SrGa:Ce,Eu、Mn)を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高解像度が要求されるカメラのビューファインダ用の陰極線管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家庭用のビデオカメラのビューファインダには液晶ディスプレイが用いられているが、放送用等の業務用のビデオカメラには、対角2インチ程度の小型の陰極線管を用いた白黒表示のビューファインダが用いられている。
【0003】
業務用のビデオカメラの場合は、家庭用のビデオカメラよりも格段に正確に焦点の合った映像を撮影できなければならないため、静止画はもちろん動画像でも焦点を合わせ易い高解像度のビューファインダが必要になる。
【0004】
一般的に、カラー表示よりも白黒表示の方が高い解像度を得やすいため、業務用の小型のビューファインダには白黒表示の陰極線管が用いられることが多い。
【0005】
このような陰極線管に用いられる白黒表示用の蛍光体としては、可視域の全域に亘って線状スペクトルが現れる蛍光体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、白黒表示よりも解像度は低下するが、カラー表示を行うことのできる蛍光体スクリーンの作製法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、これらとは別に、電子ビームの位置を正確に決めて高精細にするために、ビームインデックスを持つ構造のビューファインダが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
さらに、冷陰極では高い電流密度が得られないことから、陰極部分の電子発生に熱陰極を用いて電流密度を向上させた陰極線管がある。このような陰極線管の表示部の蛍光スクリーン部分には、粉末状の蛍光体が用いられている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平6−41528号公報
【特許文献2】特開平6−20619号公報
【特許文献3】特開平5−251009号公報
【特許文献4】特開2003−151463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、テレビ放送等で取り扱う映像の精細度は、NTSC/VGA形式の標準テレビ放送用の640×480画素に対し、高精細テレビでは1920×1080画素と画素数が4倍にまで大幅に増えている。このような高精細テレビ用の映像を撮影する業務用のビデオカメラに用いるビューファインダでは、対角2インチサイズの表示面積内において、1つの画素の大きさは一辺が21μm程度となる。ここで、特許文献4に記載されているような粉末状の蛍光体の粒径が平均2μmであるとすると、1画素の一辺には約10個の蛍光体粒子が配列されることになる。
【0010】
しかしながら、蛍光体の粒径及び形状のばらつきや基板表面に塗布する際の塗布むら等により、蛍光体粒子の配列が均一にならないため、入射光の散乱が生じ、蛍光体の発光スポットが電子ビームのサイズよりも広がる。これにより解像度の低下が生じていた。
【0011】
さらに、画素数が7680×4320に増えると、1画素は一辺が5μmとさらに小さくなり、蛍光体粒子の粒径(平均2μm)に近づくため、蛍光体の粒径及び形状への解像度の依存性が高くなり、電子ビームの大きさを小さくしても高解像度は得られなくなる。
【0012】
このため、電子ビームの大きさを小さくすることに追従して高解像度を確保でき、また、電流密度が小さくても効率よく発光する蛍光体が必要となる。
【0013】
また、陽極電圧が高くなると二次電子が発生し、電子ビームが蛍光体に入射するときに入射エリア周辺も発光して解像度が低下するため、陽極の加速電圧はできるだけ低い方が都合がよいという要求もある。
【0014】
ところが、従来の粉末状の蛍光体は帯電し易いため、10kV以上の加速電圧でないと輝度が取れず、本来の発光性能を発揮できない。
【0015】
このため、特許文献1で提案された線状のスペクトルを用いても、光の干渉が生じやすく、白色発光に色がにじむことが懸念され、表示品質の低下が課題となっていた。
【0016】
そこで、本発明は、比較的低い加速電圧で発光し、高解像度を得ることができる蛍光薄膜を用いたビューファインダ用の陰極線管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一局面のビューファインダ用の陰極線管は、前面パネルとファンネルとを有する外囲器と、前記前面パネルの内面に配設される透明電極と、前記外囲器の一端に設けられ、前記透明電極に向けて電子を出射する陰極と、前記透明電極上に設けられる蛍光薄膜とを含むビューファインダ用の陰極線管であって、前記蛍光薄膜は、MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba)系薄膜を含む。
【0018】
本発明の他の局面のビューファインダ用の陰極線管は、前面パネルとファンネルとを有する外囲器と、前記前面パネルの内面に配設される蛍光薄膜と、前記蛍光薄膜上に配設され、陽極となる黒色金属薄膜と、前記外囲器の一端に設けられ、前記黒色金属薄膜に向けて電子を出射する陰極とを含むビューファインダ用の陰極線管であって、前記蛍光薄膜は、MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba)系薄膜を含む。
【0019】
また、前記MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba)系薄膜は、MGa:Ce,Eu,Mn(M=Ca,Sr,Ba)で構成されてもよい。
【0020】
これに代えて、前記MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba)系薄膜は、赤色発光用のMGa:Mn,La(M=Ca,Sr,Ba)、緑色発光用のMGa:Eu(M=Ca,Sr,Ba)あるいはEuGa、及び、青色発光用のMGa:Ce(M=Ca,Sr,Ba)を含んでもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、比較的低い加速電圧で発光し、高解像度を得ることができる蛍光薄膜を用いたビューファインダ用の陰極線管を提供できるという特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明のビューファインダ用の陰極線管を適用した実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態のビューファインダ用の陰極線管を示す断面図である。陰極線管1は、ファンネル部2a及びネック部2bを有する外囲器2、ネック部2bに設けられる陰極3、陰極3の先端近傍に設けられる走査用電子レンズ4、外囲器2のファンネル部2aの外側に配設される偏向ヨーク5、及び、陰極3に対向するように外囲器2に取り付けられるフェースプレート6を備える。
【0024】
「各部の構成」
外囲器2は、ファンネル部2a及びネック部2bを有する断面円筒型のガラス管であり、一端側に陰極3が封止されるとともに、他端側にガラス製のフェースプレート6が封止され、内部は真空に保持されている。
【0025】
陰極3は、電子銃で構成される。この陰極3は熱陰極であり、加熱されることにより電子を放出する。放出された電子は、フェースプレート6側の陽極との間の電位差によって加速され、電子ビーム3aとして陽極に到達する。なお、本実施の形態の陰極線管では、陽極に5kVの電圧を外部電源から印加する。
【0026】
走査用電子レンズ4は、平行平板電極で構成される電子レンズであり、外部電源より電圧が印加されることにより、陰極3から出射される電子ビーム3aをスポット状に集束させる。
【0027】
偏向ヨーク5は、外部電源から供給される電圧によって偏向磁界を発生させ、電子ビーム3aを偏向させる。
【0028】
フェースプレート6は、前面パネルとして機能する対角2インチのガラス基板であり、真空空間側に透明電極7、蛍光薄膜8及び黒色金属薄膜9が積層されている。
【0029】
透明電極7は、例えば、フェースプレート6の上に形成されたITO膜で構成される。この透明電極7は、陰極3に対向する陽極として機能する。陰極3から出射される電子ビーム3aは、この透明電極7に照射される。
【0030】
蛍光薄膜8は、マンガン添加チオガレイト系の薄膜(MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba))を含む蛍光薄膜であり、MとしてはCa,Sr,又はBaの少なくともいずれか1つを含むように構成される。本実施の形態では、白黒表示用の蛍光薄膜8としてセリウム、ユウロビウム、マンガン添加ストロンチウムチオガレイト(SrGa:Ce,Eu、Mn)を形成する。
【0031】
黒色金属薄膜9は、ブラックマトリクスとして用いられる金属膜であり、例えば、二酸化マンガン(MnO)で構成される黒色薄膜であり、膜厚は0.1μmである。
【0032】
「蛍光スクリーンの作製方法」
ここで、フェースプレート6、透明電極7、蛍光薄膜8、及び黒色金属薄膜9を含む蛍光スクリーンの作製方法について説明する。
【0033】
対角2インチのガラス基板であるフェースプレート6の片面に透明電極7を形成する。透明電極7の材料としては、錫添加酸化インジウム、Al添加酸化亜鉛、酸化錫等を用いる。この透明電極7は、スパッタ法により膜厚0.2μm程度に形成される。なお、作製方法は、スパッタ法に限られず、蒸着法、スプレイ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等でもよい。この透明電極7は陽極電極として用いられる。
【0034】
次いで、透明電極7の上に白黒表示用の蛍光薄膜8としてマンガン添加チオガレイト系の薄膜MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba)であるセリウム、ユウロビウム、マンガン添加ストロンチウムチオガレイト(SrGa:Ce,Eu、Mn)を形成する。この場合、ユウロビウム(Eu)の濃度はマンガン(Mn)濃度の1/100程度、セリウム(Ce)濃度はマンガン(Mn)濃度の1/10程度とする。この膜の形成は、Sr,Ga、Ce金属あるいはその化合物、Eu金属あるいはその化合物、Mn金属あるいはその化合物を蒸発原料に用いた多源蒸着法で行う。
【0035】
なお、ここでは、セリウム、ユウロビウム、マンガン添加ストロンチウムチオガレイト(SrGa:Ce,Eu、Mn)を形成する場合について説明するが、蛍光薄膜用のMGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba)系薄膜としては、MGa:Ce,Eu,Mn(M=Ca,Sr,Ba)の組成式で表される蛍光薄膜であればCa,Sr,又はBaを任意の比率で含んでよい。
【0036】
セリウム、ユウロビウム、マンガン添加ストロンチウムチオガレイト(SrGa:Ce,Eu、Mn)を構成する各原料を同時に蒸発させて透明電極7上に堆積させる。フェースプレート6及び透明電極7の温度を室温から600℃の間の最適な温度に設定し、成膜後は真空中あるいは硫化水素を5%程度混合させた不活性ガス中でフェースプレート6及び透明電極7の耐熱温度以下で数分ないし1時間程度熱処理を行い、結晶の成長と発光中心の形成の促進を行う。この白色発光の色座標はx=0.36、y=0.34であった。
【0037】
なお、従来の粉末状の蛍光体とは異なり、蛍光薄膜8の表面は、膜厚の分布が数%以下と極めて凹凸が少なく平滑であるため、黒色金属薄膜で十分にコートできる。
【0038】
「黒色金属薄膜9の作製方法」
コントラストを高めるため、電子ビーム蒸着法により、蛍光薄膜8の上に黒色金属薄膜9として二酸化マンガン薄膜を0.1μm〜0.2μmの膜厚で形成する。ここで、膜厚を0.1μm以上にするのは、0.1μm未満の膜厚になると、陰極3の熱フィラメントの発光が透過して表示映像に混じって見づらくなるからである。また、膜厚を0.2μm以下にするのは、あまり膜厚が厚くなると電子ビームの透過率が低下し、輝度が低下するからである。
【0039】
なお、二酸化マンガン薄膜はスパッタ法によって形成してもよい。また、黒色金属薄膜9としては、二酸化マンガン薄膜の代わりに、カーボン薄膜を用いてもよい。カーボン薄膜は、二酸化マンガン薄膜と同様に、電子ビーム蒸着法又はスパッタ法で形成することができる。また、黒色金属薄膜9の代わりにアルミニウム(Al)薄膜を用いてもよい。アルミニウム薄膜は、蒸着法によって形成することができる。アルミニウム薄膜は、光が透過せず、電子ビームが透過するように、膜厚が0.1μm程度のメタルバッグとして形成すればよい。
【0040】
また、粉末状の蛍光体を用いた蛍光スクリーンでは、その表面の凹凸が蛍光体粒子の大きさ以上になることもあり、段差のある部分は黒色金属薄膜で被覆できなかったが、本実施の形態では、膜厚の分布が数%以下と極めて凹凸が少なく平滑であるため、蛍光薄膜8の全面に黒色金属薄膜を十分に被覆することができる。
【0041】
図2は、蛍光薄膜8の発光スペクトルを示す分布図である。このように、本実施の形態のビューファインダ用の陰極線管では、発光スペクトルは光の干渉が生じにくい幅広い特性が得られた。
【0042】
次に、本実施の形態のビューファインダ用の陰極線管に用いている蛍光薄膜と、従来の陰極線管に用いられている蛍光体(粉末状の蛍光体粒子)への入射光とビームスポットの大きさについて説明する。
【0043】
図3は、蛍光スクリーンへの入射光とビームスポットの大きさを示す図であり、(a)は本実施の形態の蛍光薄膜における入射光とビームスポットの大きさ、(b)は従来の蛍光体(粉末状の蛍光体粒子)における入射光とビームスポットの大きさを示す図である。なお、ここでは、入射光の光路を説明するため、図3には黒色金属薄膜9を省いた蛍光スクリーンの断面を示す。
【0044】
図3(a)に示すように、電子が蛍光薄膜8の蛍光材料に衝突することによって光が出射され、この光は蛍光薄膜8の内面(フェースプレート6側の内面、又は、電子が入射する側の内面)に入射する。
【0045】
ここで、例えば、蛍光薄膜の屈折率が2.0である場合には、蛍光薄膜8の内面に30度以上の入射角で入射する光は全反射されて蛍光薄膜8の内部に閉じこめられ、蛍光薄膜8の外部に出射しない。このため、フェースプレート6に生じるビームスポットは、フェースプレート6側の内面への入射角が30度未満の光によってもたらされるビームスポットとなる。
【0046】
一方、図3(b)に示す従来の蛍光体は粉末状の蛍光体の集合であるため、表面に凹凸が存在する。このため、電子が蛍光体に衝突して光は出射されても、蛍光体によって散乱が生じ、様々な角度でフェースプレート6に入射し、ビームスポットが広がる。これにより従来の蛍光体では映像のにじみが生じやすくなり解像度が低下する。
【0047】
このように、本実施の形態のビューファインダ用の陰極線管によれば、従来の粉末状の蛍光粒子を用いた陰極線管に比べて遙かに電子ビームの形状を忠実に反映させたビームスポットを確保でき、解像度を向上させることができる。
【0048】
また、蛍光材料は絶縁体であるため電子ビームによって負に帯電されるが、蛍光薄膜8は膜厚が1μm以下と従来の蛍光体の粉末粒子よりも薄いため、従来の蛍光体よりも帯電しにくい。このため、負に帯電した蛍光材料と電子ビームとの反発も低減され、従来よりも励起効率の低下を軽減できる。
【0049】
また、従来の粉末状の蛍光体では、発光効率を向上させるために電子の加速電圧を10kV以上にしていたが、このような高電圧で入射した電子ビームからは二次電子が発生し、二次電子のバックスキャッタリングが多く生じる。このバックスキャッタリングが発生すると電子ビームが照射されている範囲だけでなく、その周囲も発光する現象が発生するため、解像度の低下を招いていた。
【0050】
これに対して本実施の形態の蛍光薄膜8は、セリウム、ユウロビウム、マンガン添加ストロンチウムチオガレイト(SrGa:Ce,Eu、Mn)で構成されているため、5kV程度の加速電圧で発光することが可能であるため、バックスキャッタリングも低減され、解像度の低下を抑制することができる。
【0051】
また、陽極としての透明電極7に印加する電圧を5kVに抑えることができるため、従来よりも製造コストを抑えることができる。従来のように、輝度低下を軽減するために陽極電圧をより高い10kVに設定すると、高耐電圧用の対策等による構造の複雑化や製造工程の増加等によって製造コストが嵩んでいたが、本実施の形態の蛍光薄膜8は、5kVの加速電圧で発光させることができるため、製造コストの低減が可能になった。
【0052】
また、本実施の形態の蛍光薄膜8は、膜厚が薄く、バンドギャップも4(eV)以上と大きいため透明である。また、本実施の形態の蛍光薄膜8は、量子効率が1程度と非常に高い。このため、十分な効率と輝度が得られ、ビューファインダに必要な画面輝度200cd/m以上を確保できる。
【0053】
以上、本実施の形態のビューファインダ用の陰極線管によれば、比較的低い加速電圧で発光し、高解像度を得ることができる蛍光薄膜を用いたビューファインダ用の陰極線管を提供することができる。
【0054】
「変形例1」
蛍光薄膜8としてカラー表示用の蛍光薄膜を形成する場合は、マンガン添加チオガレイト系の薄膜(MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba),La)(Laは増感剤)を含む蛍光薄膜として、赤色発光用のMGa:Mn,La(M=Ca,Sr,Ba)、緑色発光用のMGa:Eu(M=Ca,Sr,Ba)あるいはEuGa、及び、青色発光用のMGa:Ce(M=Ca,Sr,Ba)を乾式のフォトリソグラフィー法によってパターン化すればよい。配列パターンは、三角形状、格子状、又はストライプ状等の任意かつ周知の配列パターンであればよい。
【0055】
例えば、青色発光用にMGa:Ce,緑色発光用にMGa:EuあるいはEuGa,赤色発光用にMGa:Mn,La蛍光体(M=Ca,Sr,Ba)を形成する場合は、3つのうちのいずれかひとつの蛍光薄膜を蒸着法によって成膜し、その上にレジストを塗布し、RIE(Reactive Ion Etching)法により必要なピッチでエッチングを行う。レジストはエッチング後にアッシングによって除去すればよい。蛍光薄膜8は、以上のようにRIE法を用いた乾式のフォトリソグラフィー法によって作製できるため、粉末蛍光体よりも精度よく加工できる。
【0056】
他の色用の蛍光薄膜についても透明電極7上での位置を変えて、隣同士のストライプ間を僅かに空けておくと、後に形成する黒色薄膜9が埋められることにより、ブラックマトリックスを形成することができる。これにより、コントラストが高くなる。このように形成したカラー表示用の陰極線管における青、緑、赤の色座標は、それぞれ、x=0.15、y=0.10、x=0.26、y=0.69、x=0.70、y=0.29が得られた。
【0057】
図4は、青色発光用のMGa:Ce蛍光薄膜の量子効率を示す特性図である。この図に示すように、加速電圧を5kVに達したところで量子効率(電子数に対するフォトン数の比)は略1.0程度と極めて高い値が得られた。このように、高い発光効率が得られるのは、電子ビーム3aによって形成された電子−正孔対による発光中心の励起機構と、電子ビーム3aによる発光中心の直接励起機構とが存在するためである。
【0058】
「変形例2」
図5は、本実施の形態の変形例2として蛍光スクリーンの構造の変形例を示す図である。図5(a)は、図1に示す構造と同一の蛍光スクリーンを示し、(b)及び(c)は図1に示す蛍光スクリーンの変形例を示す。
【0059】
図5(b)に示す蛍光スクリーンは、黒色金属薄膜9を含まない。このように、黒色金属薄膜9を含まない構成であっても、比較的低い加速電圧で発光し、高解像度を得ることができる蛍光薄膜を用いたビューファインダ用の陰極線管を提供することができる。
【0060】
また、図5(c)に示す傾向スクリーンは、透明電極7を含まず、フェースプレート6の上に蛍光薄膜8が形成され、蛍光薄膜8の上に黒色金属薄膜9が形成されている。透明電極を含まないため、黒色金属薄膜9が陽極となり、この黒色金属薄膜9に5kVの電圧が印加されることにより、陰極3から放出された電子が黒色金属薄膜9を通じて蛍光膜膜8に到達し、蛍光薄膜8で生じた光がフェースプレート6に入射することによって所望の表示が得られる。このように、透明電極7を含まない構成であっても、比較的低い加速電圧で発光し、高解像度を得ることができる蛍光薄膜を用いたビューファインダ用の陰極線管を提供することができる。
【0061】
以上、本発明の例示的な実施の形態のビューファインダ用の陰極線管について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態のビューファインダ用の陰極線管を示す断面図である。
【図2】蛍光薄膜8の発光スペクトルを示す分布図である。
【図3】蛍光スクリーンへの入射光とビームスポットの大きさを示す図であり、(a)は本実施の形態の蛍光薄膜における入射光とビームスポットの大きさ、(b)は従来の蛍光体(粉末状の蛍光体粒子)における入射光とビームスポットの大きさを示す図である。
【図4】図4は、青色発光用のMGa:Ce蛍光薄膜の量子効率を示す特性図である。
【図5】本実施の形態の変形例2の蛍光スクリーンの構造を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 陰極線管
2 外囲器
2a ファンネル部
2b ネック部
3 陰極
3a 電子ビーム
4 走査用電子レンズ
5 偏向ヨーク
6 フェースプレート
7 透明電極
8 蛍光薄膜
9 黒色金属薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面パネルとファンネルとを有する外囲器と、前記前面パネルの内面に配設される透明電極と、前記外囲器の一端に設けられ、前記透明電極に向けて電子を出射する陰極と、前記透明電極上に設けられる蛍光薄膜とを含むビューファインダ用の陰極線管であって、
前記蛍光薄膜は、マンガン添加チオガレイト系の薄膜(MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba))を含む、ビューファインダ用の陰極線管。
【請求項2】
前面パネルとファンネルとを有する外囲器と、前記前面パネルの内面に配設される蛍光薄膜と、前記蛍光薄膜上に配設され、陽極となる黒色金属薄膜と、前記外囲器の一端に設けられ、前記黒色金属薄膜に向けて電子を出射する陰極とを含むビューファインダ用の陰極線管であって、
前記蛍光薄膜は、マンガン添加チオガレイト系の薄膜(MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba))を含む、ビューファインダ用の陰極線管。
【請求項3】
前記マンガン添加チオガレイト系の薄膜(MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba))は、MGa:Ce,Eu,Mn(M=Ca,Sr,Ba)で構成される、請求項1又は2に記載のビューファインダ用の陰極線管。
【請求項4】
前記マンガン添加チオガレイト系の薄膜(MGa:Mn(M=Ca,Sr,Ba))は、赤色発光用のMGa:Mn,La(M=Ca,Sr,Ba)、緑色発光用のMGa:Eu(M=Ca,Sr,Ba)あるいはEuGa、及び、青色発光用のMGa:Ce(M=Ca,Sr,Ba)を含む、請求項1又は2に記載のビューファインダ用の陰極線管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−158264(P2009−158264A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334509(P2007−334509)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】