説明

ビルピットスカム処理システム及び燃料回収方法

【課題】ビルピット内で発生するスカムを円滑に処理すること。
【解決手段】本発明では、ビルピット内で発生するスカムと脂肪溶解物質を含有する溶剤とを混合し、加熱した後に、固液分離し、液体状回収物と固体状回収物とを回収することを特徴とするビルピットスカム処理システムを提供する。また、本発明では、ビルピット内で発生するスカムと脂肪溶解物質を含有する溶剤とを混合し、加熱した後に、固液分離し、燃料として利用できる液体状回収物を回収することを特徴とする燃料回収方法を提供する。さらに、本発明では、前記液体状回収物を前記溶剤として循環利用することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルピット内で発生するスカムを処理するためのビルピットスカム処理システム及び同システムを利用して燃料を回収する燃料回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物内の排水を一時的に貯留し、貯留量が一定量となってからポンプにより公共下水道へと排出するビルピット(排水槽)が利用されている。
【0003】
このビルピットにおいては、建物内で発生した汚水や雑排水を貯留するために、排水中の有機物が腐敗・醗酵してガスが発生し、そのガスによって排水中の油脂質などが水面上に浮上して、塊状のスカムが発生する。
【0004】
このビルピット内で発生するスカム(以下「ビルピットスカム」という。)は、悪臭の原因であるとともに、害虫の発生原因ともなり、さらには、配管内の詰まりの原因ともなることから、定期的にビルピットから除去する処理が必要であった(たとえば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−113476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した従来のビルピットスカムの処理にあっては、主に焼却・埋め立て処理が行われていたために、燃料の高騰に伴う処理費用の増大や、焼却処理後の廃棄物の海洋投棄禁止などの影響により、ビルピットスカムを適切に処理することが困難となってきている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、ビルピットスカム処理システムにおいて、ビルピット内で発生するスカムと脂肪溶解物質を含有する溶剤とを混合し、加熱した後に、固液分離し、液体状回収物と固体状回収物とを回収することにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記液体状回収物を前記溶剤として循環利用することにした。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、燃料回収方法において、ビルピット内で発生するスカムと脂肪溶解物質を含有する溶剤とを混合し、加熱した後に、固液分離し、燃料として利用できる液体状回収物を回収することにした。
【0010】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項3に係る本発明において、前記液体状回収物を前記溶剤として循環利用することにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、ビルピット内で発生するスカムと脂肪溶解物質を含有する溶剤とを混合し、加熱した後に、固液分離し、液体状回収物と固体状回収物とを回収することにしているために、ビルピットスカムから液体状回収物と固体状回収物とに分けて回収することによってビルピットスカムを適切に処理することができる。
【0013】
特に、本発明では、脂肪溶解物質によって脂肪を溶解することでビルピットスカムに含有される油分を溶剤に溶け込ませることができるので、ビルピットスカムに含有される油分を燃料として利用できる液体状回収物として回収することができ、資源の有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係るビルピットスカム処理システム及び燃料回収方法の具体的な処理構成について図面を参照しながら説明する。
【0015】
本発明は、図1に模式的に示すように、ビルピット内で発生するスカム(ビルピットスカム)と脂肪溶解物質を含有する溶剤とを混合し、加熱した後に、固液分離し、液体状回収物と固体状回収物とを回収するものである。
【0016】
具体的には、まず、ビルピットから除去したスカムを容器内に投入するとともに、同じ容器内に脂肪溶解物質を含有する溶剤を投入し、撹拌混合する。
【0017】
ここで、スカムだけを処理してもよく、また、容器内にスカムとともにビルピット内に沈殿するスラッジを混合してもよい。
【0018】
また、脂肪溶解物質は、脂肪を溶解(分解)する物質であればよく、たとえば、ノルマルヘキサンを用いることができる。溶剤としては、灯油などの鉱物性油などの沸点が水よりも高いものが用いられる。ここでは、灯油90重量%とノルマルヘキサン10重量%の混合液を用いている。
【0019】
そして、容器内に投入したビルピットスカムと溶剤との混合物を100℃以上に加熱して、水分を蒸発させる。
【0020】
その後、自然放置や遠心分離などによって固液分離を行い、上澄みを液体状回収物として回収するとともに、沈殿物を固体状回収物として回収する。
【0021】
以上の処理により、ビルピットスカムから燃料として利用できる液体状回収物と、肥料や固体燃料として利用できる固体状回収物とを回収することができる。
【0022】
これは、ビルピット内で発生するスカムには、厨房などから排出された植物性油分や動物性油分が脂肪により塊状に結合したエマルジョン状の油分が多量に含有されており、これらに含有される脂肪が脂肪溶解物質によって溶解されることにより、液体状の油分となって溶剤に溶け込み、その後の加熱により水分が蒸発することで、燃料として利用できる液体状回収物として回収されるのである。また、固体状回収物には、ビルピットスカムに含有されていたタンパク質を多く含んでおり、肥料として有効に利用することができる。
【0023】
また、回収した液体状回収物には、脂肪溶解物質が残存しているために、回収した液体状回収物自体を脂肪溶解物質を含有する溶剤として循環利用することもできる。
【0024】
以上に説明したように、本発明では、ビルピット内で発生するスカムと脂肪溶解物質を含有する溶剤とを混合し、加熱した後に、固液分離し、液体状回収物と固体状回収物とを回収することにしているために、ビルピットスカムから液体状回収物と固体状回収物とに分けて回収することによってビルピットスカムを適切に処理することができ、これにより、ビルピット内の悪臭発生や害虫発生や配管詰まりなどを防止することができる。
【0025】
特に、本発明では、脂肪溶解物質によって脂肪を溶解することでビルピットスカムに含有される油分を溶剤に溶け込ませることができるので、ビルピットスカムに含有される油分を燃料として利用できる液体状回収物として回収することができ、資源の有効利用を図ることができる。
【0026】
また、本発明では、回収した液体状回収物を溶剤として有効に循環利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ビルピットスカムの処理システムを模式的に示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルピット内で発生するスカムと脂肪溶解物質を含有する溶剤とを混合し、加熱した後に、固液分離し、液体状回収物と固体状回収物とを回収することを特徴とするビルピットスカム処理システム。
【請求項2】
前記液体状回収物を前記溶剤として循環利用することを特徴とする請求項1に記載のビルピットスカム処理システム。
【請求項3】
ビルピット内で発生するスカムと脂肪溶解物質を含有する溶剤とを混合し、加熱した後に、固液分離し、燃料として利用できる液体状回収物を回収することを特徴とする燃料回収方法。
【請求項4】
前記液体状回収物を前記溶剤として循環利用することを特徴とする請求項3に記載の燃料回収方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−291746(P2009−291746A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149683(P2008−149683)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(391051197)
【Fターム(参考)】