説明

ビンカアルカロイドの抗有糸分裂性ハロ誘導体

【課題】抗癌化学療法における新規応用に通じ得るビンカアルカロイド系列の新規誘導体の提供。
【解決手段】ビンフルニン即ち、次式


で表される20’,20’−ジフルオロ−3’,4’−ジヒドロビンオレルビンの二酒石酸塩、それを含有する医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通常はビンカアルカロイドと呼称される、Catharanthus roseus の2量体アルカロイドおよびそれらの誘導体は抗癌化学療法において約30年間、広く使用されている。これらは次の4種の生成物で代表される:
−2種の天然化合物:ビンブラスチンおよびビンクリスチン、
−2種の半合成生成物:ビンブラスチンから得られるビンデシン、および単量体アルカロイド前駆体であるカタランチンおよびビンドリンから合成されるビンオレルビン(vinorelbine)。
【化1】

化学療法に使用するビンカアルカロイドの構造
【0002】
抗癌化学療法における新規応用に通じ得るこの種系列の新規誘導体の取得を指向する本発明者らの研究に関連して、これらの高度機能化分子中に重大な変化を誘発し得る超酸媒体の異例の反応性を利用することからなる独創的接近方法を本発明者らは採用した。
【0003】
かくして標準合成法によつては従来達成し得なかった、位置20’でジフッ素化された一連の化合物を本発明者らは既に調製したが[FR第2,707,988 号特許公報(07.21.93)、WO 95/03312 号公報)]、これらの薬理学的性質は殊の外有益である。
【化2】

FR第 2,707,988 号特許公報に記載の化合物の一般式
【0004】
この種の型の複雑な分子に上記非凡な化学を応用することにより、標準的化学によっては到達し得ない新規系列のハロゲン化化合物の調製が可能になった。
【0005】
ピエール・ファーブル・リサーチ・センター( Pierre Fabre Reseach Center)で実施された本発明の主題はビンカアルカロイド新規誘導体、それらの調製法およびそれらの治療的応用である。
【0006】
本発明における化合物は次の図式で表される一般式を有する:
【化3】

[式中、n=1または2、
は水素またはフッ素原子を示し、
は塩素原子を示す]
【0007】
また本発明は、医薬として許容し得る無機もしくは有機酸との、一般式で表される化合物の塩にも関する。使用される酸は、非限定的例示としては硫酸もしくは酒石酸である。
【0008】
本発明は、一般式で表される化合物の4’および20’炭素のRおよびS立体配置に対応する異性体ならびに任意割合のそれらの混合物の両方に関する。
【0009】
本発明におけるこの誘導体は、フッ化水素酸等の強ブレンステッド酸および五フッ化アンチモン等の強ルイス酸を混合して得られる超酸媒体中で、G.Olah により提案 (Ang. Chem. Int. Ed. Engl., 32, 767-88, 1993)された専門用語に従った超求電子性型の種を生じる試薬の存在下に一般式で表される化合物を反応させて調製する。上記試薬は塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、2,2−ジクロロプロパン等のクロロ誘導体、または任意割合のこれら誘導体の混合物からなっていてもよい。
【0010】
で表される化合物の構造は次のように記載される:
【化4】

[式中、R はヒドロキシル基を示し、R は水素原子を示し、この場合の化合物はビンブラスチンに相当し、またはこれとは別に:
およびR は二重結合を形成し、この場合の式で表される化合物は3’,4’−無水ビンブラスチンに相当する]
【0011】
超酸媒体中での反応は「Teflon 」または適切組成のスチール等のフッ化水素酸耐性容器中で実施する。R およびR が上記のように定義された式で表される誘導体をフッ化水素酸中に、または溶媒として機能する上記定義のクロロ誘導体中に溶解し、次いでクロロ誘導体の部分を既に任意に含有し得る超酸混合物中に添加する。この添加は、選択温度−80℃から−30℃に媒体を維持しながら実施する。
【0012】
塩化メチレンまたは四塩化炭素の存在下および低温では、式で表される化合物[式中、n=2、R =HおよびR =Cl]が主として単離される。式で表される化合物[式中、n=2、R =FおよびR =Cl]は一層低い割合で同一反応媒体から単離される。これは次の図式で要約される:
【化5】

【0013】
一般式[式中、n=1、R およびR は上記定義と同じ]で表される誘導体は、文献(Eur.J. Med. Chem., 18, 419-24, 1983 )記載の方法により、特にトリフルオロ酢酸等の酸の存在下に、温度−10℃未満で塩化メチレン中のN−ブロモ琥珀酸イミドの作用により、一般式で表される化合物[式中、n=2]の環C’を収縮(n=2→n=1)させることにより調製される。塩基性媒体中での中和後、比較的不安定で単離されない中間体である、式[式中、n=2]の誘導体の9’−ブロモインドレニンは、テトラフルオロホウ酸銀(AgBF )の存在下もしくは非存在下に、温度−10℃から溶媒の還流点温度で、好ましくは[塩化メチレン:水:テトラヒドロフラン]混合物中で加水分解を受ける。中和工程後にこの反応が完結しない場合は、化合物[n=2]に対して触媒量もしくは化学量論的量のAgBF を添加すると、反応過程を促進できる。
【0014】
主たる反応生成物は式[n=1]で表される化合物に対応する。この反応は次の図式により示される:
【化6】

【0015】
本発明の主題は、07.21.93 (WO 95/03312 号公報)のFR 2,707,988号特許公報中で特許請求される化合物である4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンならびに20’,20’−ジフルオロ−3’,4’−ジヒドロビンオレルビンすなわちビンフルニンの新規合成法でもある。
【0016】
の化合物[n=2、R およびR は上記定義と同じ]を使用する超酸媒体中での反応操作条件を修飾すると、4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンが主として得られる。操作条件の変更は、昇温(−45から−35℃)、反応時間延長、または反応性の異なる超求電子性物質の使用から本質的になる。事実から、上記の場合に支配的(41%)である、単離可能な式化合物[式中、n=2、R =HおよびR =Cl]は、これらの新規条件下では位置20’がジフッ素化される生成物を代償として消失することを本発明者らは反応速度論の研究において示した。
【0017】
N−ブロモ琥珀酸イミド(NBS)存在下でのビンオレルビンのジフッ素化に対して示される収率は僅か25%に過ぎないので、操作条件を最適化したこの場合のジフッ素化反応の収率は、求電子性試薬として特にN−ブロモ琥珀酸イミド(NBS)を使用する上記特許記載方法により得られる収率よりも良好(50%)である。
【0018】
=OHおよびR =Hの場合の一般式の化合物はビンブラスチンであり,R およびR が一緒に二重結合を形成する場合の化合物は3’,4’−無水ビンブラスチンである。式で表されるこの誘導体は、クロロ誘導体好ましくはクロロホルムもしくは2,2−ジクロロプロパン中、またはクロロホルムもしくは2,2−ジクロロプロパンを含む混合物中に溶解し、次いで媒体温度を−45から−35℃に維持しながら超酸媒体中に添加する。かくしてジフルオロ誘導体である4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンがこの反応の主たる最終生成物を構成する。HPLC分析による検定では、この化合物の割合は約50%であることを示す。
【0019】
この反応は次の図式により説明される:
【化7】

【0020】
四臭化炭素CBr 、ジブロモメタンCH Br または三臭化ホウ素BBr 等の超求電子性イオンを生ずる他の試薬(agents)も4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンを主として与える。
【0021】
かくしてこの方法は、従来法により得られるよりも一層高い収率で4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンを調製する新規方法を構成する。
【0022】
この経路に従って得られる4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンは、次いでトリフルオロ酢酸等の酸の存在下に、温度−10℃未満で塩化メチレン中のN−ブロモ琥珀酸イミドと反応させて、上記のように、その環C’の収縮(n=2→n=1)を受けさせ得る。塩基性媒体中での中和後、比較的不安定で単離されない中間化合物である、4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンの9’−ブロモインドレニンは、テトラフルオロボレートの存在下もしくは非存在下に、好ましくは[塩化メチレン:水:テトラヒドロフラン]混合物中で加水分解を受ける。上記同様に、AgBF を添加すると反応速度を増進できる。
【0023】
約80%収率で得られる上記主化合物は20’,20’−ジフルオロ−3’,4’−ジヒドロビンオレルビンもしくはビンフルニンに相当する。次の略図はこの反応を要約する:
【化8】

【0024】
かくしてこの連続2段工程は、次の意味において従前法よりも一層有利な、ビンフルニン合成の新規方法を構成する:
1)超酸媒体中でのフッ素化反応は、一層高価な半合成生成物であるビンオレルビンからよりも寧ろ、Catharanthus roseus の葉の抽出により直接入手できるビンブラスチンもしくは3’,4’−無水ビンブラスチン等の天然化合物を用いて実施され、
2)この新規方法によるジフッ素化反応の収率は従来法の25%に比べて約50%であり、
3)得られる化合物特に4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンのクロマトグラフイーによる精製は従来の場合よりも困難が少ない。
次の実施例は本発明を説明するものであるが、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載の分光学的特性は本発明に従って得られた化合物の構造を確認する。
【0025】
実施例1:
20’−クロロ−4’−デオキシビンブラスチン
(n=2、R =H、R =Cl)
五フッ化アンチモン(60g;0.28mol)の無水フッ化水素酸80ml(4mol)中の溶液を250mlの 「Teflon」製容器中で調製し、−60℃に冷却する。磁気撹拌し乍ら、次いで四塩化炭素1.63ml(17mmol)を添加し、さらに3’,4’−無水ビンブラスチン 2[n=2、R およびR は二重結合を形成]13.75g(17mmol)の塩化メチレン(25ml)溶液を、温度−40℃を超過しないように滴下する。30分後、この反応媒体を塩化メチレン200mlを含有するNa CO の水性3M懸濁液1.5リットル中に注意深く注ぐ。静置により相を分離後、水性相を塩化メチレン100mlで抽出する。有機相を併合し、飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO 上で乾燥し、かつ蒸発する。
回収した残渣の分析用HPLCによる分析では、全41%(21および20%)に統合される2つの近接ピークの存在を示し、NMRスペクトルを記載する諸表中では実施例1aの生成物および実施例1bの生成物と注解され、20’−クロロ−4’−デオキシ−ビンブラスチンの20’における二種のジアステレオ異性体に相当する。
精製はシリカのカラム上でのクロマトグラフーにより実施し、次いで逆相分離HPLCにより実施する。
分離した20’−クロロ−4’−デオキシビンブラスチンの2種のジアステレオ異性体は、2(モル)当量の酒石酸水溶液の添加により二酒石酸塩形態となし、凍結乾燥する。
4657ClN ・2(C ): 1129.62
融点: >260℃
IR(KBr): 3448.17 1736.05 1615.36 1459.86 1372.51 1231.89
1121.18 1067.54 cm−1
質量スペクトル(D/CI NH ):
MH =829.4
【0026】
実施例2:
20’−クロロ−4’−デオキシビンブラスチン
(n=2、R=H、R=Cl)
この化合物は、3’,4’−無水ビンブラスチン [n=2、R およびR は二重結合を形成]をビンブラスチン [n=2、R =OH、R =H]で置き換えて、実施例1に記載の方法に従って得られる。
単離された生成物の物理化学的および分光特性は実施例1で得られる化合物の特性と同一である。
【0027】
実施例3:
20’−クロロ−4’−デオキシ−4’−フルオロビンブラスチン
[n=2、R =F、R =Cl]
この化合物は、シリカカラム上のクロマトグラフイーから由来する一層極性の低い他の画分を用いて、実施例1または実施例2で得られる反応混合物から単離される。最終精製は逆相分離HPLCにより実施する。
2(モル)当量の酒石酸水溶液の添加により20’−クロロ−4’−デオキシ−4’−フルオロビンブラスチンを二酒石酸塩形態へと転化し、さらに凍結乾燥する。C4656ClFN ・2(C ): 1147.61
融点: >260℃
IR(KBr): 3470.13 2951.45 1735.92 1616.62 1458.44 1371.64 1228.52 1040.10 743.07 cm−1
質量スペクトル(D/CINH ):
MH =847.4
【0028】
実施例 4:
20’−クロロ−3’,4’−ジヒドロビンオレルビン
(n=1、R =H、R =Cl)
実施例1に従って単離した20’−クロロ−4’−デオキシ−ビンブラスチン[n=2、R =H、R =Cl]900mg(1.08mmol)をトリフルオロ酢酸95μl(1.2mmol)を含む塩化メチレン5ml(−45℃に冷却)中に溶解する。このアセンブリーを光遮蔽下に置き、次いでN−ブロモ琥珀酸イミド193mg(1.08mmol)をCH Cl 2mlおよびTFA95μl(1.2mmol)中の溶液として添加し、この混合物を30分間撹拌しながら放置する。次いでこの混合物を、飽和NaHCO 溶液5mlを添加し、その直後にテトラヒドロフラン5mlおよび水2mlの混合物中のテトラフルオロホウ酸銀211mg(1.08mmol)の溶液を添加して中和する。約2時間、磁気撹拌して生成混合物を室温に戻す。
濾過後、有機相を分離し、水10mlで2回、さらに飽和NaCl溶液10mlで洗浄する。MgSO 上で乾燥後、溶液を蒸発し、シリカカラム上のクロマトグラフイーにより残渣を精製し、次いで逆相分離HPLCで精製する。
4555ClN :815.41
IR(KBr): 3446 2950 1740.89 1459.16 1246.59 1200.65
1042 cm−1
質量スペクトル(D/CI NH ):
MH =815.4
【0029】
実施例 5:
20’−クロロ−3’,4’−ジヒドロ−4’−フルオロビンオレルビン
(n=1、R =F、R =Cl)
この化合物は、20’−クロロ−4’−デオキシビンブラスチンを20’−クロロ−4’−デオキシ−4’−フルオロビンブラスチン [n=2、R =F、R =Cl]で置き換え、実施例4に記載の方法に従って得られる。
この20’−クロロ−3’,4’−ジヒドロ−4’−フルオロビンオレルビンは同一条件下のクロマトグラフイーにより精製する。
4554ClFN : 833.40
IR(KBr): 3446.83 2950.98 1742.73 1617.73 1457.36
1234.38 1042.23 996.50 742.15 cm−1
質量スペクトル (D/CI NH ):
MH =833.5
【0030】
上記のように調製した新規構造の特徴的プロトンの化学シフトを次表に整理する:
【化9】


水素 実施例の生成物
原子 1aおよび1b 3 4 5

4’ 1.95 (m,1H) - 1.90 (m,1H) -
7’ 3.1-3.3 (m,2H) 3.1 (m,1H) 4.32 (d,1H) 4.38 (d,1H)
3.3 (m,1H) 4.46 (d,1H) 5.07 (d,1H)
8’ 3.1-3.25 (m,2H) 3.05 (m,1H) - -
3.45 (m,1H)
20’ 3.68 (m,1H) 3.80 (m,1H) 3.80 (m,1H) 3.93 (m,1H)
21’ 1.50 (d,3H) 1.44 (d,3H) 1.50 (d,3H) 1.57 (d,3H)
【0031】
上記実施例に従って得られた新規生成物の13C NMRスペクトルを次表に詳しく記載する:
【化10】


【0032】
実施例 6:
4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチン
五フッ化アンチモン(750g;3.45mol)の無水フッ化水素酸500ml(25mol)溶液を6リットルの「Astelloy」スチール製反応器中で調製し、−45℃に冷却する。3’,4’−無水ビンブラスチン2塩酸塩[107g(0.12mol)]のクロロホルム(250ml)溶液を30分に亙ってこれに添加し、この間温度−35℃に維持する。この温度でこの混合物をさらに30分間撹拌する。アセトン200mlを−30℃で30分間に亘り加え、−25℃で水150mlを15分に亘り添加する。20℃に温度を上げ、塩化メチレン900mlを添加し、さらに水650mlを加える。静置により相分離後、水相を塩化メチレン100mlで抽出する。有機相を併合し、10%KOH600mlを用いて温度20℃未満で中和する。静置により相分離後、10%水性アンモニア800mlの存在下に一夜有機相を撹拌し、次いで水400mlで2回洗浄し、MgSO 上で乾燥し、さらに蒸発する。
トルエン/アセトン混合物(65/35)で溶離するシリカカラム上のクロマトグラフーにより精製する。蒸発後に得られる残渣を塩化メチレン80ml中に溶解し、イソピロピルエーテル350mlの添加により沈殿させる。濾過後、41g(40%)の4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンが回収される。
単離した化合物の物理化学的および分光特性は 07.21.93 ( WO 95/03312 号)のFR2,707,988 号特許中に記載の方法に従って得られる生成物と同一である。
【0033】
実施例 7:
4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチン
五フッ化アンチモン(8.6g;40mmol)の無水フッ化水素酸7.2ml(360mmol)溶液を125ml Teflon 製容器中で調製し、−45℃に冷却する。磁気撹拌し乍ら、次いで2,2−ジクロロプロパン0.94ml(9mmol)を添加し、さらに3’,4’−無水ビンブラスチン [n=2、R およびR は二重結合を形成]0.71g(0.9mmol)のフッ化水素酸(3.6ml)溶液を、温度−35℃を超過しないように滴下する。25分後、この反応媒体を3M NaCO水性溶液300ml中に注意深く注ぐ。静置による相分離後、水性相を塩化メチレン50mlで抽出する。有機相は併合し、飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO 上で乾燥し、さらに蒸発する。
この残渣は4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチンの46%を含み、このものは 07.21.93 ( WO 95/03312 号)のFR2,707,988 号公報中に記載の方法に従って得られる生成物と同一である。
【0034】
実施例 8:
4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチン
この化合物は、超酸媒体中での処理の際に2,2−ジクロロプロパンを四臭化炭素CBrで置き換えることにより、実施例7記載の方法に従って得られる。
単離した化合物の物理化学的および分光特徴は 07.21.93 ( WO 95/03312 号公報)のFR2,707,988 号特許公報中に記載の方法に従って得られる生成物の特徴と同一である。
【0035】
実施例 9:
4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチン
この化合物は、超酸媒体中での処理期間に2,2−ジクロロプロパンを三臭化ホウ素BBrで置き換えることにより、実施例7記載の方法に従って得られる。
単離した化合物の物理化学的および分光特徴は 07.21.93 ( WO 95/03312 号公報)のFR2,707,988 号公報中に記載の方法に従って得られる生成物の特徴と同一である。
【0036】
実施例 10:
4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチン
この化合物は、超酸媒体中での処理期間に2,2−ジクロロプロパンをジブロモメタンCH Br で置き換えることにより、実施例7記載の方法に従って得られる。
単離した化合物の物理化学的および分光特徴は 07.21.93 ( WO 95/03312 号)のFR2,707,988 号特許公報中に記載の方法に従って得られる生成物の特徴と同一である。
【0037】
実施例 11:
20’,20’−ジフルオロ−3’,4’−ジヒドロビンオレルビン(ビンフルニン)
4’−デオキシ−20’,20’−ジフルオロビンブラスチン90g(0.108mol)を塩化メチレン800ml中に溶解し、−45℃に冷却し、この溶液中にトリフルオロ酢酸10.4ml(0.135mol)を添加する。このアセンブリーを光遮断下に置き、塩化メチレン200mlおよびトリフルオロ酢酸10.4ml(0.135mol)の混合物中のN−ブロモ琥珀酸イミド19.3g(0.108mol)を含む溶液を約30分間に亘り添加し、この間、媒体温度が約−45℃を超えないように注意する。
30分後、10%NaHCO 溶液300mlを添加し、この直後にテトラヒドロフラン300mlおよび水100mlの混合物中のテトラフルオロホウ酸銀23.4g(0.12mol)溶液を添加して混合物を中和する。得られる混合物を撹拌しながら約2時間を要して室温に戻す。
濾過後、有機相を分離し、水150mlで2回洗浄する。MgSO 上で乾燥後、溶液を蒸発し、残渣をメタノール500ml中に溶解し、次いで蒸発すると、20’,20’−ジフルオロ−3’,4’−ジヒドロビンオレルビン(ビンフルニン)の88%を含有する乾燥残渣97gが得られる。
水、酢酸、酢酸アンモニウム、メタノールおよびアセトニトリルから構成される溶離液を用いた、C18グラフトシリカ(粒径15−25μ)上での分離HPLCにより精製する。精製画分の容積を1/2に濃縮し、pH=7に調整し、トルエンで2回抽出する。有機相を希釈水で3回洗浄し、次いで分析用HPLCで検定する。
ビンフルニンのトルエン溶液を、正確に2(モル)当量の酒石酸を含む水性溶液で抽出する。ビンフルニン・二酒石酸塩を得る目的で水性相を凍結乾燥する。
単離した化合物の物理化学的および分光特徴は 07.21.93 ( WO 95/03312 号公報)のFR2,707,988 号公報中に記載の方法に従って得られる生成物の特徴と同一である。
【0038】
本発明にしたがって調製した化合物は Cantharanthus roseus の抗癌性アルカロイドと同様に”有糸分裂紡錘体の毒物”である。
【0039】
本発明による化合物の存在下におけるチユ−ブリン(tubulin)の微小管への 重合抑制を、 R.C. Weisenberg (Science 177, 1196-7, 1972 )により記載された方法に従って測定することにより、この性質を確認した。重合の50%抑制をもたらす化合物濃度に対応するIC50で結果を表示する。この現象は光学密度の変化により容易にモニターおよび定量化できる。
【0040】
例示として次表は本発明に従って調製した2種の誘導体を用いて得られた結果を示す:

生成物 IC50(μM)
実施例 1 1.99
実施例 3 1.54
ビンオレルビン 1.70
【0041】
ビンカアルカロイドのこの特徴的薬理的性質を考慮すれば、本発明による化合物は抗癌化学治療に使用できる。
【0042】
これらの活性成分を含有する医薬用調合物は、当業者には周知の慣習的態様で経口用、静注用または皮下投与用として調合できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビンフルニン二酒石酸塩。
【請求項2】
請求項1に記載のビンフルニン二酒石酸塩を含有する、医薬製剤。
【請求項3】
経口、静脈投与または皮下投与を意図した形態の、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
薬剤としての使用のための、請求項1に記載のビンフルニン二酒石酸塩。
【請求項5】
癌の化学治療を意図した薬剤としての使用のための、請求項1に記載のビンフルニン二酒石酸塩。
【請求項6】
癌の化学治療を意図した医薬の製造のための、請求項1に記載のビンフルニンの使用。

【公開番号】特開2009−167196(P2009−167196A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58098(P2009−58098)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【分割の表示】特願平10−542470の分割
【原出願日】平成10年4月10日(1998.4.10)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【Fターム(参考)】