説明

ビーム形状調整素子を含む照明システム

本発明は、照明システム(10)に関し、前記照明システムは、発光装置(20)及び前記照明システムからの発光の角度分布(ψ)を生成するためのビーム形状調整素子(30)を含む。
前記ビーム形状調整素子は、前記発光装置から前記発光表面(26)へ反射で戻される光の少なくとも一部をリサイクルするように構成される。
前記照明システムはさらに、前記発光表面と実質的に平行に設けられ、前記リサイクル光の少なくとも一部を拡散させるように設けられる拡散装置(40,42)を含む。
前記拡散装置は、半透明の拡散装置(40)及び/又は前記発光装置の拡散反射電極層(42)から成る。
リサイクル光のためのビーム形状調整素子を用いて、反射を介して光リサイクルによる角度分布を制限することは、前記照明システムが一般照明製品に使用される際のまぶしい光を低減させる。
前記拡散装置は、リサイクル光が、前記ビーム形状調整素子及び前記発光素子の発光表面の間に閉じ込められることを防止する。
前記リサイクルは好ましくは、前記ビーム形状調整素子で全内部反射を介して実施される。
前記拡散装置により、前記照明システムの効率が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びビーム形状調整素子を含む照明システムに関する。本発明はまた、本発明のよる照明システムにおいて使用する有機発光ダイオード装置に関する。

【背景技術】
【0002】
照明システム自体は知られている。特にそれらは、例えばオフィス照明、店舗照明又は店舗ウィンドウ照明などの一般照明目的で使用されている。又は、これらの照明システムは、広告ボード(例えば部分的に透明なイメージを該イメージの背後から照明する広告ボードなど)のために使用される。
【0003】
知られた照明システムはまた、(画像)表示装置(例えば、TVセットやモニタなど)のバックライトの光源として使用され得る。かかる照明システムは、特に、液晶表示装置(LCDパネルとしても知られており、(ポータブル)コンピュータ又は(ポータブル)電話などに使用されている)などの非発光性表示装置のバックライトとしての使用に適している。
【0004】
有機発光ダイオード装置(さらにまた、OLED装置とする)は、多くの分野で、種々の照明製品における有望なものと考えられている。これらは、例えば、比較的大きな発光表面から発光する環境光を創造するために使用され得る。高効率に加えて、このような大面積発光素子はまた、一般照明システムをデザインする上で興味あるデザインの可能性を提供する。係るOLED装置の欠点は、OLED装置の発光表面からの発光の角度分布が実質的にランバート則に従うことであり、これにより一般的照明システムにおいて使用する際まぶしい光の原因となり得る、ということである。該まぶしさは、視野内での明るい領域と暗い領域のコントラストが過剰であることから生じる。まぶしさは、例えば、シールドされていない光源又は不十分なシールドの光源を直接見る場合に生じる。該まぶしさを予防するために、標準化された発光プロフールが、例えばヨーロッパ標準EN1264−1などとして定められている。該標準は、ランプ明るさが500cd/mを越える場合には60度を超える発光角はカットされるべきことが指示されている。同様の標準が他の領域でも適用される。
OLED装置は比較的大きい発光表面を持ち、そこから実質的にランバート則に従う発光分布を持つ光を発光することから、比較的高い効率を維持しつつ、標準化された発光プロフィールを遵守する発光の形状は比較的難しいものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、前記照明システムの効率を比較的高く維持しつつ、かつ発光の角度分布を制限する、照明システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面によると、該課題は請求項1に記載の照明システムにより達成される。本発明の第二の側面によると、該課題は請求項14に記載の有機発光ダイオード装置により達成される。
【0007】
本発明の第1の側面による照明システムは、発光装置及び前記照明システムからの発光の角度分布を生成するためのビーム形状調整素子を含み、前記ビーム形状調整素子が前記照明システムからの表面発光からの少なくとも一部の光を前記発光表面に反射して戻すことを介してリサイクルするように構成され、前記照明システムがさらに、前記発光表面に実質的に平行に設けられる拡散装置を含み、前記リサイクル光の少なくとも一部を拡散するための拡散装置を含み、前記拡散装置が、半透明拡散装置及び/又は前記発光装置の拡散的反射電極層から成る。
【0008】
本発明の照明システムの効果は、前記拡散装置を介して前記リサイクル光を拡散することにより、前記リサイクル光の大部分が、リサイクルされた際のほんの僅かな及び限られた数の反射を行うこととなり、前記リサイクル光がなお前記照明システムから発光された後は、照明システムの効率は高く維持され、しかも前記照明システムからの光の角度分布は限定されたままである、ことを保証する。本明細書において効率とは、エネルギ効率を意味する。好ましくは、リサイクル光は全内部反射によりリサイクルされる。しかし、角度選択反射の存在のより、ビーム形状調整素子から反射された光の部分は通常ビーム形状調整素子及び前記発光装置の発光表面との間に閉じ込められる。数回の反射後にはこの閉じ込められた光は、通常前記発光装置の再吸収により失われる。本発明の照明システムにおいて、照明システムはさらに、前記リサイクル光の少なくとも部分を拡散するために構成される拡散装置を含む。リサイクル光の少なくとも部分が拡散されることにより、拡散光の該部分の進行方向は変更され従って、前記ビーム形状調整素子と発光装置との間に閉じ込められることから逃れることができる。従って、拡散装置の存在により、リサイクル光はなお反射後発光装置から発光され得る。角度分布の限定は、ビーム形状調整素子によりなされる。かかるビーム形状調整素子は当技術分野で知られており、例えばビーム形状調整素子上のトポグラフ構造を介して、及び/又はビーム形状調整素子上のホログラム構造を介して及び/又はビーム形状調整素子の異方性散乱エレメントを介して、光分布を生成することができる。よく知られたビーム形状調整素子は例えば、MLOエレメントと呼ばれるものであり、これはマイクロレンズ光学エレメントの略語であり、ビーム形状調整素子では、端部が切り取られたピラミッド又は円錐形状のアレイから成り、該切り取られた部分は個々のピラミッド又は円錐構造の内側に曲げられている。ビーム形状調整素子としてのかかるMLOエレメントは、実質的に前記ピラミッド又は円錐構造の全内部反射を介する光の部分をリサイクルすることを介して光分布を生成し、従って非常に効果的なビーム形状調整を得ることができる。例えば有機発光ダイオードでのかかるビーム形状調整素子を用いる場合、リサイクル光は、前記ビーム形状調整素子と有機発光ダイオードの発光表面の間に閉じ込められる可能性がある。有機発光ダイオードの表面は比較的大きく、この閉じ込めは通常、リサイクル光が(例えば有機発光ダイオードに)吸収され失われるまでビーム形状調整素子及び有機発光ダイオードとの間をリサイクル光は前後に反射される。ビーム形状調整素子としてMLOエレメントなどを用いる場合の効率をさらに改善するために、リサイクル光がビーム形状調整素子及び発光装置間に閉じ込められることを防止しなければならない。これは、本の拡散装置を用いることで達成される。拡散装置は、リサイクル光の大部分の光の方向を変更し、再方向付けされた光が閉じ込められることを抑制し、この再方向付けされた光が、ビーム形状調整素子を介して生成された光分布内で照明システムから発光することを可能とする。従って、知られたビーム形状調整素子を用いる場合に照明システムの効率はさらに改善される。
【0009】
発光装置表面に実質的に平行に設けられた半透明拡散装置及び/又は拡散性電極層の使用により、比較的大きい発光表面を持つ発光装置を用いる際に光の効果的拡散が得られる、という利点を持つ。
【0010】
本発明の照明システムのひとつの実施態様において、発光装置は有機発光ダイオード装置である。有機発光ダイオード装置の主な利点は、これらの装置は通常比較的大きい発光表面を持つことである。さらに、一般的傾向として一般的照明製品に有機発光ダイオード装置の使用が増加している。というのはこれらの装置は、白熱灯や放電ランプなどの従来の照明システムと比較して、全体として高い効率を持ちエネルギを節約するからである。しかし、比較的大きい発光表面及びこれらの表面からの光が通常ランバート則に従う発光プロフィールを持つことから、これらの有機発光ダイオードを一般照明でそのまま使用することはまぶしさを生じる結果となる。さらに、既定の角度分布内で発光させるようにコリメートする知られた光学モジュールは、比較的大きな発光表面を持つ光源に対して設計されているものではない。本発明によるビーム形状調整素子を用いることで、比較的大きな発光表面を持つ光素子のために特定の角度分布を可能とし、かつ優れた効率をも維持することができる。
【0011】
本発明の照明システムのひとつの実施態様において、発光表面に平行な拡散装置の寸法は、前記発光表面の寸法と実質的に同じである。ビーム形状調整素子と発光装置の間に光が閉じ込められることを避けねばならないので、前記発光表面に平行な拡散装置の寸法を前記発光表面の寸法に実質的に対応するように選択することにより、実質的に全てのリサイクル光は前記拡散装置を横切らなければならず、これにより閉じ込めによる損失が最小となる。
【0012】
照明システムのひとつの実施態様において、半透明拡散装置は前記照明システムの拡散表面上に設けられる。一般的に、有機発光ダイオード装置を具体的には組む照明システムは比較的薄い。
反射される光の少なくとも一部が拡散されることを保証するために、拡散装置は前記照明システム内の表面へ適用される半透明拡散装置であり得る。例えば、拡散表面は前記発光表面に平行に配置され、前記発光装置の発光表面と同じ寸法を持つことができる。従って、ビーム形状調整素子から反射されたリサイクル光が拡散装置で拡散されるだけでなく、発光装置により光も前記拡散装置で拡散される。しかし、半透明拡散装置は一般的に前方拡散分布を持ち、また発光装置からの発光分布は通常すでにランバート発光分布に近いものであることから、発光装置により発光される光のために半透明拡散装置の存在は、ほとんど発光プロフィールを変更しない。拡散装置の存在によりいくらかの追加の損失があり得るが、多くの異なる種類の拡散材料が存在し、そのなかには、比較的高い効率を持ち、それほど追加の損失を持たない照明システムに適用され得るものもある。さらにリサイクル光の再発光により効率の改善は、拡散装置による追加の損失を上回る。
【0013】
照明システムのひとつの実施態様において、拡散装置は拡散表面に適用される散乱ミクロ構造を持つ。又は拡散装置は拡散表面に適用された層内に分布された散乱粒子及び/又は散乱ボイドを含む。散乱ミクロ構造は、拡散表面を含む支持プレート上に適用されてもよい。又は、該支持プレートはまた、拡散表面に適用され、散乱粒子及び/又はボイドの分布を含む追加の層を含むものであってよい。
【0014】
照明システムのひとつの実施態様において、前記半透明拡散装置は実質的前方散乱性拡散装置を含む。実質的に前方散乱性拡散装置は、入射光を散乱させて、変更された光が、入射光の進行方向の実質的に90度以内の方向へ進行させる。かかる拡散装置は通常、より高い半透明性を有し、従って照明システムに適用される場合にはほとんど光の損失はない。
【0015】
照明システムのひとつの実施態様において、前記半透明拡散装置は、発光装置及びビーム形状調整素子との間に設けられる。かかる配置により、比較的単純な製造プロセスを可能とする。というのは照明システムは分離された層からなり、該層は発光装置、半透明拡散装置及びビーム形状調整素子を有するからである。さらなる利点としては、半透明拡散装置は特定の目的に必要とされる特定の拡散特性を持つ半透明拡散装置と交換可能である、ということである。従って照明システムをより柔軟に特定の要求に適合させることができる。
【0016】
照明システムのひとつの実施態様において、発光装置は拡散装置を含む。かかる配置においては、照明システムはより少ないコンポーネントからなり、従って製造が一般的により安価となる。
さらに、照明システムの高さが、前記拡散装置を発光装置内に組み込むことから低減され得る。
照明システムの高さは、発光装置の発光表面と実質的に垂直方向の前記照明システムの寸法である。
【0017】
照明システムのひとつの実施態様において、発光装置の発光表面は半透明拡散装置を含む。
半透明拡散装置は、前記発光装置が通常の方法で製造された後に前記発光装置の発光表面に適用され得る。発光装置が製造される際には何ら特別の製造ステップは必要なく、発光装置が製造された後に、前記半透明拡散装置がその発光表面に適用され得る。半透明拡散装置は、例えば、層内に分布される散乱粒子及び/又はボイドを含む追加の層からなってもよい。また、複数のミクロ構造が前記適用された層に拡散効果を生じさせるために適用された後、実質的に透明層を適用してもよい。
【0018】
照明システムのひとつの実施態様において、発光装置は反射性電極層を含み、前記反射電極層は前記反射電極層に入射する光を拡散的に反射する拡散装置を含む。反射電極層は、例えば、カソード層であってよく、例えば非鏡面研磨処理金属であってよい。非鏡面検研磨処理金属層は入射光を拡散的に反射する。この入射光は、前記発光装置の発光層で生成される光であり、その光は前記発光装置の発光表面の方向へ進行しないで、逆の方向へ進行する光である。前記拡散的に反射する表面上に入射する光はまた、ビーム形状調整素子から反射されてきたリサイクル光を含み、例えば全内部反射を介する光である得る。拡散的反射電極層は、入射光の進行方向を変更するために拡散装置を構成してもよい。従って散乱光の部分は、全内部反射を介して、発光装置及びビーム形状調整素子の間に閉じ込められることはない。従って、照明システムからの光に寄与することとなる。
【0019】
照明システムのひとつの実施態様において、反射電極層は、入射光を拡散的に反射するための複数の変形を含む。これらの変形は、発光装置の製造プロセスにおいてエッチングにより生成され得る。または、これらの変形は、集光レーザ放射などの電磁波照射により生成され得る。好ましくは、この集光レーザ放射は、発光装置の発光層を損傷することなくバックリングとして知られる変形を生成する。これはレーザ波長又はレーザパワーを選択することで、発光装置を損傷させないようにすることができる。しかしより好ましくは、レーザを発光装置の後側から反射電極層を照射し、それによりレーザビームが発光装置の発光層を通過することを避けることである。
【0020】
照明システムのひとつの実施態様において、ビーム形状調整素子は、照明システムからの発光の角度分布を生成するためのミクロ構造のアレイを含む。MLOエレメントは上で、前記光りの角度分布を生成するためのミクロ光学構造のアレイとして説明された。しかし、同様の効果を持ち及び前記角度分布内で発光されない入射光の部分をリサイクルする他の構造もまた、ビーム形状調整素子として使用され得る。好ましくは、ビーム形状調整素子から得られる角度分布は、まぶしさのない照明システムについてのヨーロッパ標準NE12464−1を遵守するものである。
【0021】
照明システムのひとつの実施態様において、ビーム形状調整素子はさらに、前記ビーム形状調整素子から、生成された角度分布で入射する光を抽出するための抽出手段を含む。かかる抽出手段は、例えば、ビーム形状調整素子に適用可能なよく知られた光抽出ホイルを含む。本発明の第二の側面による有機発光ダイオード装置は、請求項8から11のいずれか一項に記載の本発明による照明システムで使用されるように構成される。
【0022】
本発明のこれらの側面及び他の側面は以下説明される実施態様を参照して明らかとなり理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明による照明システムの第一の実施態様の模式的断面図である。
【図2】図2は、本発明による照明システムの第二の実施態様の模式的断面図である。
【図3】図3は、本発明による照明システムの第三の実施態様の模式的断面図である。
【図4】図4は、拡散的反射表面を生成するための反射電極層へ適用される変形の詳細図である。
【図5】図5は、本発明による照明システムにおいてビーム形状調整素子として使用され得る、知られたミクロ光学構造の、一般的及び詳細な図をそれぞれ示す。
【図6】図6は、標準白色有機発光ダイオード装置についての反射対波長を示す。 図面は、模式的であり、寸法を正しく描いたものではない。特に明瞭にする目的で、いくつかの寸法は強く誇張されて示される。図面で類似のコンポーネントはできだけ同じ番号で示される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による照明システム10の第一の実施態様10の模式的断面図を示す。図1に示される照明システム10は発光装置20を含み、好ましくは有機発光ダイオード20である。図1に示される照明システム10はさらに、前記発光装置20により発光される角度分布ψを生成するビーム形状調整素子30を含む。ビーム形状調整素子30は、例えば、図5A及び5Bに示されるようにビーム形状調整素子30を含み。しかしまた他のビーム形状調整素子30を含んでもよい。ビーム形状調整素子30は、光りの一部分を前記発光装置20へ戻してリサイクルさせるように構成される。好ましくは、このリサイクルはビーム形状調整素子30内のトポグラフ構造内での全内部反射に基づき、これにより前記リサイクル光の実質的に損失のない反射を生じる結果となり、ビーム形状調整素子30の効率を最適化する。図1に示される実施態様において、照明システム10はさらに、基板60上に設けられる半透明拡散装置40を含む。基板60は、基板60を通じて光り損失を避けるために前記発光装置により生成される光りの波長に対して実質的に透明である全ての材料からなり得る。基板60上に前記半透明拡散装置40が設けられ、好ましくは、基板60の表面に設けられる。半透明拡散装置40は、基板60の表面44のミクロスクラッチ又は他の粗面化からなるか、又は支持材料40中に分散された散乱材料及び/又はボイドからなるか、又はミクロ反射構造からなる。または、散乱材料は基板60内(図示されていない)に分散されていてよい。また従って自己支持性拡散装置を生成してもよい。
【0025】
本発明による照明システム10は、まぶしさ低減照明システム10として操作され、ビーム形状調整素子30が、照明システム10からの発光の角度分布ψを限定する。特定のビーム形状調整素子30を選択した後、角度分布ψが選択される。例えば得られる角度分布ψがヨーロッパ標準EN1246−1を遵守するように選択される。ヨーロッパ標準EN1246−1は、照明システム10から発光される角度分布ψが、照明システム10の発光窓に対して法線軸に関して±60度内に維持されることが定められている。他の製品では、より小さいか大きいカットオフ角が選択され得る。
【0026】
発光装置20は、通常有機発光ダイオード20であり、比較的大きい発光表面26を持ち、この発光表面26の実質的に全ての点が実質的にランバート則に従う光分布(図1で発光装置20から始まる複数の矢印で示される)で発光する。この実質的にランバート則に従う光分布により、光りはまた全発光表面26を、±60度を超える角度で横切ることから、これを一般的照明システムに用いるとまぶしさの原因となり得る。もちろん、まぶしさ低減光学系は存在するが、それらは通常比較的小さい光源で実質的に全方向へ発光する光源(例えば、放電ランプ、白熱灯及び発光ダイオード)のために設計されている。しかし、有機発光ダイオード20は一般的に比較的大きい発光表面26を持つことから、これらの知られたまぶしさ低減方法は、有機発光ダイオード装置と類似のサイズを持つシステムでは効果的に作用しない。さらに有機発光ダイオード装置20のひとつの特徴として、それらが比較的高い効率を持つことである。知られたまぶしさ低減方法は通常、多重反射及び最終的に吸収を介して除去され、要求される角度分布ψを得るための光の部分をカットオフすることで照明システム10の効率を大きく減少させる。前記半透明拡散装置40と共にビーム形状調整素子30により−好ましくは全内部反射で−非常に効率的な照明システム10の全発光表面26にわたって角度分布ψの制限が得られることになる。
【0027】
有機発光ダイオード20装置は発光表面26の前面にわたって発光する。実質的にランバート則に従う分布がビーム形状調整素子30に到達し、入射光の一部を反射して有機発光ダイオード装置20へ戻す。上で説明したように、このリサイクルは好ましくは全内部反射でなされる。このリサイクル光は通常は照明システム10の中で捕獲され、ビーム形状調整素子30及び有機発光ダイオード装置の間を反射され続けるであろう。しかし本発明の照明システム10は、半透明拡散装置40が照明システム10に存在し、リサイクル光(図1で、拡散装置40から始まり、有機発光ダイオード装置20の方向へ伸びる一点鎖線で示される)を拡散させる。リサイクル光のこの拡散装置により、大部分の拡散光の進行方向は変更され、拡散光りがビーム形状調整素子30及び有機発光ダイオード層装置20の間に閉じ込められない結果となる。これにより拡散光が有機発光ダイオード装置20から反射された後照明システムから発光されることとなる。
【0028】
図1に示される配置において、半透明拡散装置40は、有機発光ダイオード装置20及びビーム形状調整素子30の間に設けられる。従って、有機発光ダイオード装置20により生成される全ての光がまた、ビーム形状調整素子30に入射する前に拡散装置40により拡散される(図1で、拡散装置40から始まりビーム形状調整素子30の方向へ伸びる複数の矢印で示される)。しかし、有機発光ダイオード装置20による発光は実質的にランバート則に従うことから、拡散装置40の存在は、有機発光ダイオード装置20による発光の発光プロフィールを変更しない。一方、ビーム形状調整素子30から反射され及び照明システム10へ反射して戻された光は、臨界角と同じ又はそれを超えた角度で反射され、従って、ビーム形状調整素子30及び有機発光ダイオード装置20との間で捕獲され、数回の反射の後、例えば有機発光ダイオード装置20の発光層27に完全に吸収されて消失するであろう。
【0029】
好ましくは、半透明拡散装置40は、いわゆる「前方拡散装置」である。前方拡散装置は比較的高いレベルの光り透過性を持ち、入射光を拡散するように構成される。従って、変更された光は、前記入射光の進行方向の実質的に90度内に進行する。
【0030】
有機発光ダイオード装置20の発光層27は通常アノード層(図示されていない)及びカソード層28との間に設けられる。一般的に、カソード層28は、高い反射層28から構成され、前記光りのビーム形状調整素子30への良好な反射による戻りを可能とし、及び最終的には照明システム10により発光される。アノード層(図示されていない)は通常、透明導電性材料、例えばITOからなる。もちろん有機発光ダイオード装置20は追加の層(図示されていない)であって、有機発光ダイオード装置20からの発光を効率的に発光させることができる、層を含むことができる。
【0031】
図2は、本発明による照明システム12第二の実施態様12の模式的断面図を示す。図に示される実施態様において、半透明拡散装置40は、発光ダイオード装置22のトップに設けられる。
かかる構造において、追加の拡散装置40は、図1に示される実施態様の場合のようなビーム形状調整素子30及び有機発光ダイオード20の間に設けられることは必ずしも必要ではない。従って、より簡単な照明システム12の構成が得られ、これはコスト削減を導く。図2で示される構成において、半透明拡散装置40は、有機発光ダイオード装置22の発光表面26上に設けられるミクロスクラッチからなるか、又は半透明拡散装置40を構成する散乱材料及び/又はボイドの分配を含む層からなる。またかかる構成において、有機発光ダイオード装置22の発光層27で最初に生成される光は、半透明拡散装置40により拡散されるであろう。しかし、上で説明されたように、これはビーム形状調整素子30に入射する光の入射角による光りをリサイクルするビーム形状調整素子30により得られる効果は変更しないであろう。より少ないコンポーネントを組み立てることでコスト低減、及び照明システム12の高さを低減することが、図1で示される照明システムと比較して図2で示されるように照明システムにより達成される。照明システム12の高さは、有機発光ダイオード装置22に実質的に垂直方向で測定して定められる。図2から見られるように、角分布ψの限定はビーム形状調整素子30の存在により得られ、一方半透明拡散装置40の存在は照明システム12の効果を比較的高く維持する。
【0032】
図3は本発明による照明システム14の第三の実施態様の模式的断面図を示す。
図3で示される実施態様において、反射電極層28は拡散装置40、42を含む。
拡散装置40、42はすでに説明した、反射電極層28のトップに適用される半透明拡散装置40であってよい。又は、拡散装置40、42は反射電極層28上に適用されるパターン60であってよく、これにより拡散的反射性電極層42を構成する。パターン60は、ミクロスクラッチ又はミクロ光学屈折構造又は、反射性電極層28の反射表面の他の粗面などからなる。又は、パターン60を生成する比較的新しい方法として、レーザ誘起バックリングが使用され得る。これはレーザ照射により反射性電極層28を変形させるが、反射性電極層28の反射性は変更しないものである。有機発光ダイオード装置24の発光層27への損傷を避けるために、レーザ照射は好ましくは、参照符号Rで示される有機発光ダイオード装置24の裏側に適用される。従って、有機発光ダイオード24の発光層27で生成される光が、ビーム形状調整素子30へ向かって発光される。該光りの一部が有機発光ダイオード装置24の方に反射されて戻される。反射された光は再び、有機発光ダイオード装置24の発光層27を通過し、続いて反射層28に到達する。この反射電極層28はパターン60を有し、入射光の少なくとも一部は該パターンで散乱され、そしてビーム形状調整素子30の方に反射され、続いて、変形60を持つ反射電極層28で拡散反射による制限された角度分布ψ内でビーム形状調整素子30により透過され得る。拡散装置42は発光装置24の反射電極層28とビーム形状調整素子30との間に設けられる。
【0033】
レーザ誘起パターン60を用いる場合のさらなる利点は、パターン60を局所的に変更することで局所的に拡散特性を比較的容易に変更できることである。変形を構成するパターン60は、イメージ又は記号又は文字又は他の認識可能なパターンであってよい。これにより、照明システム14の発光表面にわたり強度の変化を生じ得る。パターン60の位置で光強度が増加され、照明システム14の発光表面にわたり強度変化を生じる。
【0034】
変形60は、レーザ照射により生成され得る。好ましく有機発光ダイオード装置24のは裏側R照射である。入射レーザ光のエネルギは反射電極層28を局所的にしわを形成させる。これはまたバックリングとして知られている。このバックリングは好ましくは、反射性電極層28に損傷を与えることなく実施されるべきである。損傷は反射電極層28の吸収領域に起こることから効率を低下させる。さらに、反射性電極層28の損傷により、有機発光ダイオード装置24が損傷部で発光しなくなり従ってさらに効率が低減される。
【0035】
図4は、拡散的に反射する表面42を生成するために反射電極層28に適用される変形60の詳細を示す図を示す。変形60の密度を変更することで、拡散性反射表面42の拡散特性を変えることができる。上記のように、局所変形はまた、イメージ又は例えば文字又は例えば記号を表すパターンからなる。
【0036】
図5A及び5Bは、本発明による照明システム10、12、14のビーム形状調整素子30として使用可能な、知られたミクロ光学構造30の一般的及び詳細な説明をそれぞれ示す。
図5A及び5Bで示されるビーム形状調整素子30の実施態様は、切り取られたピラミッド形状又は円錐形状(図5Bで示される)(切り取られた部分が個々のピラミッド又は円錐構構造の方へ曲げられている)のアレイからなる。ビーム形状調整素子30としてのかかるミクロレンズ構造30は、実質的に前記ピラミッド又は円錐内での全内部反射を介して前記光りの部分をリサイクルすることで光分布を生成、従って非常に効率的なビーム形状を得る。かかるミクロレンズ構造の例は、WO2005083317A1に開示されている。前記ピラミッド又は円錐構造は、例えば、前記ピラミッド又は円錐形状構造の壁に、その特定の反射位置での臨界角(図示されていない)以上で入射させることとなり、全内部反射されることとなる。この反射光は続いて、前記ピラミッド又は円錐形状構造の他の部分に入射し、好ましくは再び全内部反射されて発光装置20、22、24に戻される。この反射光は続いて、拡散装置40、42で拡散され、光は通常その進行方向を変更し、反射された後ビーム形状調整素子30へ戻された後、ビーム形状調整素子30へ、その入射光がビーム形状調整素子30内を既定の角度分布ψ内で通過され得る角度で入射することが可能となる。例えば、有機発光ダイオード20、22、24でかかるビーム形状調整素子30を用いる場合、リサイクル光はなお、ビーム形状調整素子30及び有機発光ダイオード20、22、24の間に閉じ込められ得る。拡散装置40、42の存在は、かかる閉じ込めを制限し、従って照明システム10、12、14の効率を改善する。当然、他の特定のデザインのビーム形状調整素子30も本発明の範囲を離れることなく使用され得る。
【0037】
図6は、標準の白色有機発光ダイオード20、22、24について反射対波長を示す。明らかなように、有機発光ダイオード装置は良好な可視光の反射を示し、ビーム形状調整素子30からのリサイクル光を反射して、本発明による照明システム10、12、14から発光される他の試み(?)でのビーム形状調整素子へ戻すために効果的に使用され得る。
【0038】
上で記載された実施態様は、本発明を制限するものではなく説明するものであり、当業者であれば添付の特許請求の範囲から離れることなく多くの変更例を設計することができる、ということに留意されるべきである。
【0039】
特許請求の範囲において、カッコ内の参照番号は特許請求の範囲を制限するように解釈されてはならない。動詞「含む」およびその関連用語は請求項に列記された事項以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。要素の前につけられる「ひとつの」は、その要素が複数で存在することを排除するものではない。本発明はいくつかの別々の要素を含むハードウェア手段で実施され得る。いくつかの手段を列記する装置に係る請求項において、これらの手段のいくつかを一つのハードウェア又は同様のハードウェアにより実施され得る。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利な効果を奏しない、ということを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明システムであり、前記照明システムは:発光装置及び前記照明システムからの発光の角度分布を生成するためのビーム形状調整素子を含み、前記ビーム形状調整素子が前記照明システムの表面発光からの少なくとも一部の光を前記発光表面に反射して戻すことを介してリサイクルするように構成され、前記照明システムがさらに、前記発光表面に実質的に平行に設けられる拡散装置を含み、前記リサイクル光の少なくとも一部を拡散するための拡散装置を含み、前記拡散装置が、半透明拡散装置及び/又は前記発光装置の拡散的反射電極層を含む、照明システム。
【請求項2】
請求項1に記載の照明システムであり、前記発光装置が有機発光ダイオード装置である、照明システム。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の照明システムであり、発光表面に平行な前記拡散装置の寸法が、前記発光表面と実質的に同じである、照明システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の照明システムであり、前記半透明拡散装置が前記照明システムの拡散表面上に適用される、照明システム。
【請求項5】
請求項1に記載の照明システムであり、前記拡散装置が、前記拡散表面に適用される散乱ミクロ構造を含むか、前記拡散装置が前記拡散表面に適用される層内に分布される散乱粒子及び/又はボイドを含む、照明システム。
【請求項6】
請求項1に記載の照明システムであり、前記半透明拡散装置が実質的に前方拡散装置である、照明システム。
【請求項7】
請求項1に記載の照明システムであり、前記半透明拡散装置が前記発光装置及び前記ビーム形状調整素子の間に設けられる、照明システム。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の照明システムであり、前記発光装置が拡散装置を含む、照明システム。
【請求項9】
請求項8に記載の照明システムであり、前記発光装置の発光表面が半透明拡散装置を含む、照明システム。
【請求項10】
請求項8に記載の照明システムであり、前記発光装置が反射電極層を含み、前記反射電極層が前記反射電極層上に入射する光を拡散的に反射する拡散装置を含む、照明システム。
【請求項11】
前記10に記載の照明システムであり、前記反射電極層が、入射光を拡散的に反射するための複数の変形を含む、照明システム。
【請求項12】
請求項1に記載の照明システムであり、前記ビーム形状調整素子が、前記照明システムから発光される光りの角度分布(ψ)を生成するためのミクロ光学構造のアレイを含む、照明システム。
【請求項13】
請求項1に記載の照明システムであり、前記ビーム形状調整素子がさらに、前記生成された角度分布(ψ)で前記ビーム形状調整素子からの光抽出を改善するために抽出手段を含む、照明システム。
【請求項14】
請求項8乃至11のいずれか一項に記載の照明システムでの使用のための有機発光ダイオード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A−5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524964(P2012−524964A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506625(P2012−506625)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051749
【国際公開番号】WO2010/122507
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】