説明

ピアノ搬送用台車

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホールや劇場などにおいて、ピアノを床面からステージ上に上げ下げするためのピアノ搬送用台車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ホールや劇場などにおいて、ピアノの演奏会が行われるときには、ピアノがステージ上に運び込まれる。ステージ殊に仮設ステージは観客席の床面よりも高くなっており、このため従来、ピアノは多数の人手によって床面から持ち上げてステージ上へ搬入し、また演奏会が終了すれば同様に多数の人手によってステージから床面へ下していた。
【0003】あるいはステージと床面の間にその都度スロープを構築し、かなり多数の人手によってピアノのキャスタをスロープ上を転動させてピアノをステージ上へ運び上げ、また演奏会が終了すればスロープ上を転動させて床面へ下していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前者の方法では多数の人手が必要であり、また人手のみでピアノを上げ下げするため、ピアノを取り落してピアノを傷めやすいという問題点があった。
【0005】また後者の方法は、前者の方法よりも人手は少なくてよいが、ピアノをステージに上げ下ろしする度に長大なスロープを構築せねばならないため、この構築に相当の人手と時間を要するという問題点があった。
【0006】したがって本発明は、ピアノを演奏会場のステージに少人数で簡単に上げ下げすることができるピアノ搬送用台車を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、キャスタにより床面上を移動する基台と、基台に設置された昇降機構と、昇降機構によって昇降するフレームと、フレームに前進後退自在に支持されてその前端面が基台の前端面およびフレームの前端面よりも前方へ前進可能とした第1の受部と、第1の受部に前進後退自在に支持された第2の受部とを備え、前記第2の受部の長さを前記第1の受部の長さよりも短くして、前記第2の受部が前記第1の受部上の中央部と前部の間を前進後退するようにし、且つ前記フレーム上に前記第1の受部と第2の受部を完全に重ねて前記昇降機構により前記フレームを下降させた状態で、台車自体がピアノの下部に出入りできるようにしてピアノを昇降させるようにし、また前記第2の受部を前記第1の中央部から前部へ前進させることにより、ピアノの第1の脚部を前記基台の前端面およびフレームの前端面よりも前方のステージ上まで前進させるようにするとともに、前記第1の受部をその前端面が前記基台の前端面およびフレームの前端面よりも前方へ突出するまで前進させることにより、ピアノの第2の脚部を前記ステージ上まで前進させるようにしたことを特徴とするピアノ搬送用台車である。
【0008】また好ましくは、前記第1の受部と前記第2の受部を、ガイドレールとスライダにより前進後退自在とした。
【0009】
【作用】上記構成の本発明によれば、ピアノを第2の受部上に載せ、昇降機構を作動させてピアノをステージのレベルまで上昇させた後、第1の受部と第2の受部を前進させることによりピアノをステージ上に搬入することができる。またこれと逆方向に動作させることによりピアノをステージから台車上に回収することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1はピアノ搬送用台車の斜視図である。また図2、図3、図4、図5、図6はピアノを搬入搬出中のピアノ搬送用台車の側面図である。
【0011】まず、図1および図2を参照して、ピアノ搬送用台車の全体構造を説明する。この台車は、基台1と、基台1上に組み付けられた昇降機構2と、昇降機構2に支持されたフレーム3と、フレーム3上に支持された第1の受部4と、第1の受部4上に支持された第2の受部5から成っている。
【0012】基台1は自在キャスタ11と固定キャスタ12と手押し用のハンドル13を有しており、ハンドル13を操作してキャスタ11,12を床面上を転動させることにより自由に移動させることができる。昇降機構2はパンタグラフから成っている。昇降機構2としては、パンタグラフ以外にも、シリンダなどの他の機構も用いることができる。昇降機構2は周知のものであり、簡略に図示している。
【0013】フレーム3はプレート状であって、その上面の前部にはスライダ21が複数個(本例では左右に2個ずつ合計4個)設けられている。第1の受部4は左右2個あって、前後方向(矢印N)に長尺のフレームから成っており、その下面と上面にはそれぞれガイドレール22、23が設けられている。下面のガイドレール22はスライダ21にスライド自在に嵌合しており、第1の受部4は前後方向Nへ前進後退自在となっている。図5に示すように、第1の受部4をフレーム3上を前方へ前進させると、その前端面4’は基台1の前端面1’およびフレーム3の前端面3’よりも前方まで突出する。なお本発明で前後方向Nとは、ピアノ10をステージに出し入れする方向である。図1において、左右の第1の受部4は横けた24で結合されており、横けた24にはキャスタ25が装着されている。キャスタ25はフレーム3上を転動する。
【0014】図1において、第2の受部5は平面視して枠型に構築されており、その下面にはスライダ26が装着されている。スライダ26は第1の受部4の上面のガイドレール23にスライド自在に嵌合している。第2の受部5の長さL2は第1の受部4の長さL1よりも短くなっており、したがって第2の受部5は第1の受部4上の中央部と前部の間を前後方向Nへ前進後退自在となっている。図2および図3は、第2の受部5が第1の受部4の中央部に位置している状態を示しており、また図4は中央部から前部へ前進した状態を示している。第2の受部5には、ピアノ受け27、28が適所に設けられている。また図2に示すように、フレーム3上に第1の受部4と第2の受部5を完全に重ねて、フレーム3を昇降機構2により下降させた状態で、この台車自体がピアノ10の下部に出入りできるようにしてピアノ10を昇降させるようにし、また図4に示すように第2の受部5を第1の受部4の中央部から前部へ前進させることにより、ピアノ10の第1の脚部Aを基台1の前端面1’およびフレーム3の前端面3’よりも前方のステージ31上まで前進させるようにするとともに、図5に示すように第1の受部4をその前端面4’が基台1の前端面1’およびフレーム3の前端面3’よりも前方へ突出するまで前進させることにより、ピアノ10の第2の脚部Bをステージ31上まで前進させるようになっている。
【0015】このピアノ搬送用台車は上記のような構成より成り、次に図2〜図6を参照して、ピアノを上げ下げしてステージ上に出し入れする方法を説明する。図2〜図6は出し入れを動作順に示している。各図において、30はホールや劇場などの床面、31はステージである。
【0016】図2は、ピアノ10を台車によりステージ31の直下まで搬送してきた状態を示している。ピアノ10は第2の受部5上に載せられている。また昇降機構2は下っており、フレーム3は低位置にある。
【0017】次に図3に示すように昇降機構2を作動させてフレーム3を上昇させ、ピアノ10をステージ31のレベルまで持ち上げる。このとき、図3に示すように、フレーム3上に第1の受部4と第2の受部5は完全に重なった状態である。次に図4に示すように第2の受部5を第1の受部4の中央部から前部まで前進させ、ピアノ10の第1の脚部Aのキャスタaをステージ31上に載せる。次に図5に示すように第1の受部4をその前端面4’が基台1の前端面1’およびフレーム3の前端面3’よりも前方へ突出するまで前進させ、ピアノ10の第2の脚部Bのキャスタbをステージ31上に載せる。次に図6に示すように第1の受部4を更に前進させてピアノ10の第3の脚部Cのキャスタcをステージ31上に載せる。
【0018】次に昇降機構2を作動して第1の受部4と第2の受部5をわずかに下降させ(矢印N1)、ピアノ10のキャスタa〜cをステージ31上に着地させる。次に第1の受部4と第2の受部5をフレーム3上に引き戻す(矢印N2)。以上により、ピアノ10はステージ31上に搬入される。ピアノ10をステージ31から搬出するときは、上述した動作と逆の動作を行えばよい。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、降機構によりフレームを上昇させてピアノを持ち上げた状態で、第2の受部を第1の受部の中央部から前部まで前進させることにより、ピアノの第1の脚部をステージ上に載せ、次いで第1の受部をその前端面が基台の前端面やフレームの前端面よりも前方へ突出するまで前進させることにより、第2の脚部をステージ上に載せることができるので、少人数で簡単かつ容易に、またピアノを傷めないようにステージ上に搬入することができる。またこれと逆の動作を行うことにより、ピアノをステージ上から簡単かつ容易に搬出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピアノ搬送用台車の斜視図
【図2】ピアノ搬送用台車の側面図
【図3】ピアノ搬送用台車の側面図
【図4】ピアノ搬送用台車の側面図
【図5】ピアノ搬送用台車の側面図
【図6】ピアノ搬送用台車の側面図
【符号の説明】
1 基台
2 昇降機構
3 フレーム
4 第1の受部
5 第2の受部
10 ピアノ
11,12 キャスタ
13 ハンドル
21,26 スライダ
22,23 ガイドレール
30 床面
31 ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 キャスタにより床面上を移動する基台と、基台に設置された昇降機構と、昇降機構によって昇降するフレームと、フレームに前進後退自在に支持されてその前端面が基台の前端面およびフレームの前端面よりも前方へ前進可能とした第1の受部と、第1の受部に前進後退自在に支持された第2の受部とを備え、前記第2の受部の長さを前記第1の受部の長さよりも短くして、前記第2の受部が前記第1の受部上の中央部と前部の間を前進後退するようにし、且つ前記フレーム上に前記第1の受部と第2の受部を完全に重ねて前記昇降機構により前記フレームを下降させた状態で、台車自体がピアノの下部に出入りできるようにしてピアノを昇降させるようにし、また前記第2の受部を前記第1の中央部から前部へ前進させることにより、ピアノの第1の脚部を前記基台の前端面およびフレームの前端面よりも前方のステージ上まで前進させるようにするとともに、前記第1の受部をその前端面が前記基台前端面およびフレームの前端面よりも前方へ突出するまで前進させることにより、ピアノの第2の脚部を前記ステージ上まで前進させるようにしたことを特徴とするピアノ搬送用台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3044654号(P3044654)
【登録日】平成12年3月17日(2000.3.17)
【発行日】平成12年5月22日(2000.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−199813
【出願日】平成10年6月29日(1998.6.29)
【公開番号】特開2000−16777(P2000−16777A)
【公開日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【審査請求日】平成10年6月29日(1998.6.29)
【出願人】(000130802)株式会社サンケン・エンジニアリング (3)
【参考文献】
【文献】特開 平9−12291(JP,A)
【文献】特開 昭57−77199(JP,A)
【文献】実開 平5−14097(JP,U)
【文献】実開 昭56−58797(JP,U)