説明

ピアノ

【課題】新たな音色を発するピアノを提供する。
【解決手段】鍵盤30の鍵が押下されることに伴ってハンマーが外殻体10内の弦12を叩くことによって音を発するピアノであって、外殻体10を構成する部品である側板21,上屋根22,大屋根23等の一部がガラス板60によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアノに関するものである。
【背景技術】
【0002】
17世紀頃にピアノが発明されて以来、ピアノは、音楽界において最も代表的な楽器としての地位を占めている。
ピアノの構造については、当初の発明以来、各種の改良がされているが、現在のピアノの概略的な構造は、次のとおりである。なお、ピアノには、グランドピアノとアップライトピアノとがあるが、基本的な点(下記)は同様である。
【0003】
ピアノは、外殻体を有し、その内部にはフレームが収容されている。フレームには、多数の弦が張られている。
ピアノのうちの手前側の部分には、多数の鍵からなる鍵盤が設けられている。外殻体の内部には、各鍵に対応してハンマーが設けられており、鍵が押下されることに伴って、対応するハンマーが対応する弦を叩き、音が生ずる。その音は、外殻体(少なくともそのうちの一部)等において響き、外部に発せられる。
【0004】
従来より、ピアノの外殻体は、木材によって形成されている(その旨が特許文献1にも記載されている)。すなわち、ハンマーが弦を叩くことによって生じた弦の震動によって、木材による外殻体等が震動し、それらの震動に基づく空気の震動が、ピアノの音として空気中を伝わり、人間によって知覚されるのである。
【0005】
ところで、近年の音楽の多様化等に伴って、これまでとは異なる新しい音色のピアノも望まれている。
そこで、本発明者は、新たな音色のピアノを開発することにしたのである。
【特許文献1】特開平11−219163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基本的な構造の変更を伴う必要なく、新たな音色を発するピアノを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、鍵盤の鍵が押下されることに伴ってハンマーが外殻体内の弦を叩くことによって音を発するピアノであって、前記外殻体の一部がガラスによって形成されている、ピアノである。
【0008】
この発明のピアノでは、鍵盤の鍵が押下されることに伴ってハンマーが弦を叩き、その弦の震動に基づいて外殻体等が震動し、それらに基づく空気の震動が空気中を伝わる。
そして、この発明のピアノでは、外殻体の一部がガラスによって形成されており、ガラスは木材等とは異なった態様の震動をすることから、外殻体が木材等のみによって形成されている場合とは異なり、斬新な音色が発せられることになる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のピアノであって、前記外殻体の残部が木材によって形成されている、ピアノである。
【0010】
この発明のピアノでは、鍵盤の鍵が押下されることに伴ってハンマーが弦を叩き、その弦の震動に基づいて外殻体等が震動し、それらに基づく空気の震動が空気中を伝わる。
そして、この発明のピアノでは、外殻体の一部がガラスによって形成され、残部が木材によって形成されている。ガラスは木材とは異なった態様の震動をすることから、木材の震動に基づく空気の振動、及び、ガラスの震動に基づく空気の振動という2種類の態様の震動が混在して形成された斬新な震動が外殻体から発せられることになる。
こうして、全体として斬新な音色が発せられることになる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明のピアノであるグランドピアノであって、前記外殻体を構成する部品として少なくとも側板、上屋根及び大屋根を有し、前記側板、前記上屋根及び前記大屋根のうちの少なくとも1つのうちの一部がガラスによって形成されている、グランドピアノである。
【0012】
この発明では、グランドピアノにおいて、請求項1又は請求項2に係る発明のピアノの特徴がより具体的に得られることとなる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明のピアノであるアップライトピアノであって、前記外殻体を構成する部品として少なくとも上前板、下前板及び側板を有し、前記上前板、前記下前板及び前記側板のうちの少なくとも1つのうちの一部がガラスによって形成されている、アップライトピアノである。
【0014】
この発明では、アップライトピアノにおいて、請求項1に係る発明のピアノの特徴がより具体的に得られることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施形態1]
次に、本発明の実施形態1について、図1A,図1B,図4,図5に基づいて説明する。
この実施形態は、グランドピアノに係るものである。
図1A及び図1Bに示すように、グランドピアノは、外殻体10として、側板21,底板(図示省略),上屋根22,大屋根23,前板24等を有している。外殻体10には脚15が設けられている。
【0016】
大屋根23は、水平な閉位置と、斜め上方に向かう開位置との間を変位(開閉)可能であり、開位置に位置する際には支持材14によって支持される。
上屋根22には、譜面台35が、ほぼ水平な非使用位置と、斜め上方に延びる使用位置との間を変位可能に設けられている。
前板24には、鍵盤蓋32が開閉可能に設けられている。
【0017】
図1Bに示すように、外殻体10の手前側において、鍵盤蓋32の内側には、鍵盤30が設けられている。鍵盤30は、多数の鍵(白鍵及び黒鍵)から形成されている(各鍵については符号省略)。
一方、外殻体10の内部には、水平方向に延びるフレーム(図示省略)が設けられており、フレームには多数の弦12が張られている(図1Bにおいては簡略的に示されている)。
その各弦12は、鍵盤30の各鍵に対応して張られている。グランドピアノにおいては、各弦12は、ほぼ水平に張られている。
【0018】
外殻体10の内部において、各鍵と各弦12との間には、各々、ハンマー及びハンマーを駆動させる機構が設けられている(いずれも図示省略)。
そして、鍵が押下されることに伴って、対応するハンマーが基本位置から作動位置まで変位して、対応する弦12を叩くようにされている。なお、グランドピアノにおいては、ハンマーは、弦12を叩いた後に、重力に基づいて作動位置から基本位置に戻るようにされている。
【0019】
そして、図1A及び図1Bに示すように、このグランドピアノでは、外殻体10を構成する部材のうち、側板21,上屋根22,大屋根23,前板24は、各々、基本的には木材で形成されているとともに、その一部がガラスによって形成されている。
【0020】
すなわち、各部材の少なくともその周縁部(又はその大半の部分)は木材板50であり、その木材板50には開口部52又は切欠部54が形成されている。
図1A及び図1B,図4及び図5に示すように、開口部52又は切欠部54には、その開口部52又は切欠部54に沿った形状の止め枠70(図1A及び図1Bにおいては符号省略)が固定されており、その止め枠70に対して、ガラス板60(その縁部)がはめられている。
【0021】
図5に示すように、ガラス板60については、木材板50と比較して薄肉の場合(図5(a))と、ほぼ同一の厚みの場合(図5(b))とがある。ガラス板60の厚さに応じて、適宜、種々の断面の止め枠70が使用される。また、木材板50は、止め枠70に対してビス72によって固定されている場合もある。
止め枠70とガラス板60の縁部との間等には、適宜、シリコン等のシール材74が充填されている。これによって、共鳴による震動が生ずる(それによって異音が生ずる)ことが防止されている。
【0022】
なお、同様にして、図1A及び図1Bに示すように、鍵盤蓋32,譜面台35においても、その一部がガラスによって形成されている。すなわち、各々、開口部52に対して、止め枠70(図1A及び図1Bにおいては符号省略)を介して、ガラス板60がはめられている。
また、脚部15においても、ガラスが使用されていてもよい。
【0023】
次に、このピアノの作用効果について説明する。
鍵盤30(図1B)の鍵が押下されることに基づいて、その鍵に対応するハンマーが、同じくその鍵に対応する弦12を叩き、その弦12が震動し、その弦12から音が発する。
その震動は、外殻体10等に伝わり、外殻体10(その各部材)等が震動する。その際、外殻体10のうちの木材の部分(木材板50)が震動して、その震動が空気に伝わるとともに、外殻体10のうちのガラスの部分(ガラス板60)も振動して、その震動も空気に伝わる。
ここで、木材の部分の震動の態様(波形)と、ガラスの部分の振動の態様(波形)とは異なる。このため、木材の部分の振動に基づく空気の振動の態様と、ガラスの部分の震動に基づく空気の態様とは異なる。
こうして、全体として、その異なった2種類の態様の震動が混在して形成された音(空気の振動)が外殻体10から発せられる。
以上のように、このピアノでは、外殻体(10)が木材のみから形成されている場合と比較して、全く異なった斬新な音色が発せられることになるのである。
【0024】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2について、図2A及び図2B等に基づいて説明する。
この実施形態2については、実施形態1と共通する点があるため、実施形態1と共通する要素については同一の符号を付して説明を適宜省略するとともに、相違点を中心に説明する。
【0025】
この実施形態は、アップライトピアノに係るものである。
アップライトピアノは、外殻体10として、上前板26,下前板27,底板(図示省略),屋根28,側板29,背板(図示省略)を有している。
上前板26の下側には、鍵盤蓋32が開閉可能に設けられている。
外殻体10の内部には、ほぼ鉛直の平面に沿って延びるフレームが設けられており、フレームには多数の弦が張られている(いずれも図示省略)。
【0026】
図2Bに示すように、外殻体10の手前側において、鍵盤蓋32の内側には、鍵盤30が設けられている。鍵盤30は多数の鍵(白鍵及び黒鍵)から形成されている(各鍵については符号省略)。
前述した多数の弦は、鍵盤30の各鍵に対応して張られている。アップライトピアノにおいては、各弦は、ほぼ鉛直の平面に沿って張られている。
各鍵と各弦との間には、各々、ハンマー及びハンマーを駆動させる機構が設けられている(いずれも図示省略)。そして、鍵が押下されることに伴って、対応するハンマーが基本位置から作動位置まで変位して、対応する弦を叩くようにされている。なお、アップライトピアノにおいては、ハンマーは、弦を叩いた後に、バネによる弾性復元力に基づいて作動位置から基本位置に戻るようにされている。
【0027】
そして、このアップライトピアノでは、外殻体10を構成する部材のうち、上前板26,下前板27,側板29、各々、基本的には木材で形成されているとともに、その一部がガラスによって形成されている。
すなわち、各部材は、少なくともその周縁部は木材板50で形成されており、その木材板50には開口部52が形成されている。
開口部52には、その開口部52に沿った形状の止め枠70(図1A及び図1Bにおいては符号省略)が固定されており、その止め枠70に対して、ガラス板60(その縁部)がはめられている(図4及び図5も参照)。
【0028】
このアップライトピアノは、以上の構成を有し、実施形態1のグランドピアノと同様の作用効果が得られる。
【0029】
[実施形態2の変形例]
次に、実施形態2の変形例について、図3に基づいて、実施形態2との相違点を中心に、実施形態2と同一の符号を用いて説明する。
この変形例もアップライトピアノに係るものであり、実施形態2と同様の要素を有している。
そして、このアップライトピアノでは、上前板26及び下前板27においてのみ、その一部がガラス(ガラス板60)によって形成されている。
【0030】
なお、上記のものはあくまで本発明の数例の実施形態にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【0031】
例えば、外殻体(10)を構成する部材のうちのいずれの部材の一部がガラス板(60)にされるかは、種々のバリエーションが考えられる。また、そのガラス板(60)の形状としても種々のものが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】本発明の実施形態1のピアノを示す斜視図である。大屋根及び鍵盤蓋が閉状態のものを示す。
【図1B】本発明の実施形態1のピアノを示す斜視図である。大屋根及び鍵盤蓋が開状態のものを示す。
【図2A】本発明の実施形態2のピアノを示す斜視図である。鍵盤蓋が閉状態のものを示す。
【図2B】本発明の実施形態2のピアノを示す斜視図である。鍵盤蓋が開状態のものを示す。
【図3】本発明の実施形態2の変形例のピアノを示す斜視図である。
【図4】本発明の各実施形態のピアノ(外殻体)の一部を示す拡大図である。
【図5】本発明の各実施形態のピアノ(外殻体)の一部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 外殻体
21 側板
22 上屋根
23 大屋根
26 上前板
27 下前板
29 側板
30 鍵盤
50 木材板
60 ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤の鍵が押下されることに伴ってハンマーが外殻体内の弦を叩くことによって音を発するピアノであって、
前記外殻体の一部がガラスによって形成されている、
ピアノ。
【請求項2】
請求項1に記載のピアノであって、
前記外殻体の残部が木材によって形成されている、
ピアノ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のピアノであるグランドピアノであって、
前記外殻体を構成する部品として少なくとも側板、上屋根及び大屋根を有し、
前記側板、前記上屋根及び前記大屋根のうちの少なくとも1つのうちの一部がガラスによって形成されている、
グランドピアノ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のピアノであるアップライトピアノであって、
前記外殻体を構成する部品として少なくとも上前板、下前板及び側板を有し、
前記上前板、前記下前板及び前記側板のうちの少なくとも1つのうちの一部がガラスによって形成されている、
アップライトピアノ。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−8708(P2010−8708A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167788(P2008−167788)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(308016633)サイバーミュージック株式会社 (1)