説明

ピエゾ電気駆動部を備えるMEMS振動ビーム加速度計

【課題】高温度環境で使用可能な加速度計のドライブ機構を提供する。
【解決手段】駆動要素は、少なくとも1つの歯40−1、42−1の表面に取り付けられ、2つの電気トレース126,134の間に少なくとも部分的に挟まれる少なくとも1つのピエゾ電気トレース130−1、130−2を含む。歯の少なくとも1つは、駆動要素が配置されるドープシリコンベース120を含む。ピエゾ電気トレースの一方130−1は、ドープシリコンベース120に電気的に接続され、ピエゾ電気トレースの他方130−2は、ドープシリコンベース120から電気的に絶縁される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ電気駆動部を備えるMEMS振動ビーム加速度計に関する。
【背景技術】
【0002】
[0001]加速度計は、たとえば、オイル、ガス、地熱などで、下方穴ドリル操作に使用され、ドリルを垂直外の方向へ案内する。含まれる深さにより、これらの加速度計の動作温度は非常に高温であり、オイルおよびガスの場合は200℃を超えることがあり、地熱ドリルの場合300℃を超えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
必要とされる性能が200℃から300℃の間の動作となり得る加速度計のドライブ機構の開発は困難である。微小電気機械システム(MicroElectro-Machanical Systems, MEMS)振動ビーム装置は、必要とされる高温度での正確さおよび安定性を提供するが、減衰の要求により、電気的な静的な手段を用いるこれらの装置の動作、高電圧静電櫛ドライブを必要とする。典型的には、必要な電圧は200Vに達することがある。この高電圧を達成する必要がある電子機器は、この高温度環境で信頼性がない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0002]本発明は、高温度ドライブおよび検出機構、両端閉鎖音叉(double-ended tuning fork, DETF)を提供する。DETFは、端部が接続される第1および第2の歯、および歯の少なくとも1つの少なくとも1つの表面に取り付けられる駆動要素を含む。駆動要素は、少なくとも1つのピエゾ電気トレースおよび少なくとも1つの電気トレースを含む。歯は、電気トレースのペアの間に配置される少なくとも1つのピエゾ電気トレースを備えるドープされたシリコンベースを含む。電気トレースのペアの1つは、ドープシリコンベース電気的に接続され、またはこれを含み、また、他の電気的トレースは、ドープシリコンベースから電気的に絶縁される。
【0005】
[0003]DETFは、振動ビーム加速度計(vibrating-beam accelerometer, VBA)、圧力センサ、または、駆動される共振歯が望まれる他の装置のような、様々な装置に用いることができる。
【0006】
[0004]以下に、本発明の好ましい実施形態および代替実施形態が添付図面を参照しながら説明される。添付図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】加速度計に用いられる両端閉鎖音叉の一例の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による両端閉鎖音叉の例示的な歯のペアの斜視断面図である。
【図3】図1の両端閉鎖音叉に用いられる例示的な歯の側面断面図である。
【図4】本発明の一実施形態により形成される歯の材料の例示的なパターンを示す図である。
【図5】本発明の実施形態により形成される例示的な歯の一部の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態により形成される例示的なトレースのパターンの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0011]図1は、例示的なDETF32を示し、これは、第1および第2ベース区域46、48、および2つのベース46、48の間に取り付けられるシリコンベースの歯40、42のペアを含む。この実施形態において、第1歯42は、ピエゾ電気材料を備える駆動要素を含み、また、第2ベース区域46に配置される電気パッド52−1、52−2に電気的に接続される電極(すなわち電気トレース)を含む。第2歯40は、ピエゾ電気材料および電極を含む検出要素を含む。第2歯40上の電極は、ベース区域46上に配置される検出電極50−1、50−2に接続される。
【0009】
[0012] 歯42に駆動力を発生させるために、ドライブ要素電気トレースにわたって電圧が付与される。駆動要素のピエゾ電気材料は、歯42の表面上に特定のパターンで堆積され歯42に直接的に接続される薄いフィルムである。検出要素は、同様に構成される。ピエゾ電気材料に隣接する電気トレースは、駆動部に±10Vまたはそれ以下のオーダーの電圧を付与する。この低い電圧は、高温度電子機器(たとえば、シリコンオンオキサイド(Silicon-on-oxide, SOI)要素を備えるオシレータ回路)の設計に有利である。駆動電圧は、ピエゾ電気材料の形状を変化させ、これは、歯42上のひずみ誘導負荷を生じさせて振動を発生させる。シリコンビーム(すなわち歯42)上でのピエゾ電気材料の適切なパターニング、および適切な駆動電圧の付与により、ビームの共振が発生する。
【0010】
[0013]制御電子機器(図示せず)は、検出要素のピエゾ材料にわたる電圧の変化により振動シリコンビームの共振ひずみを検出する。関連する電極を介してピエゾ電気検出要素にわたる検出された電圧変化に基づいて、制御電子機器は、駆動要素のパターン化されたピエゾ電気の薄いフィルム材料に駆動信号を提供し、共振周波数でのビームの振動を維持する。
【0011】
[0014]ベース46、48の一方に付与される力は、振動するシリコンビーム(歯40、42)の共振周波数に影響を与え、振動の周波数を増加または減少させる。制御電子機器は、この共振周波数の変化を追跡し、付与された力によるシリコンビーム内に誘導されたひずみの直接的な測定を提供する。
【0012】
[0015]電気的トレースを介してピエゾ電気トレースに付与される駆動電圧は、基本モードでビーム(歯40、42)を振動させる周期的な時間の関数である。一実施形態において、検出ピエゾ電気トレースは、電気的リードを介して検出電圧を提供し、これはビームの振動周波数を表すシヌソイドの時間関数である。DETFsが受ける軸方向の負荷は、DETFの一方の基本周波数を増加させ、DETFの他方の基本周波数を減少させる。
【0013】
[0016]制御電子機器は、駆動ピエゾ電気トレースのために駆動電圧の時間関数を発生させる。この電圧関数は、接地電圧またはビームまたはビーム(歯)に接続される電気リードの中間電圧の上および下に、2つの電圧の間を周期的に変化する。これは、この接地電圧または中間電圧に対する差電圧を形成し、これは同一の大きさのプラス(+)またはマイナス(−)のピークを備える。ピエゾ電気トレースは、ビームの表面に垂直に拡張または収縮し、また、反対に、ピエゾ電気効果および電気リードを介して付与される差電圧に基づいてトレースはビームの表面に平行に収縮および拡張する。このピエゾ電気トレースの平行な拡張および収縮は、ビームに軸方向のひずみを生じさせる。ビームの長手方向の曲げ中立軸からトレースが側方にオフセットされる場合、この軸ひずみは、ビームに曲げを生じさせる。ピエゾ電気トレースに付与される電圧を周期的に変化させることで、ビームが振動する。また、ビームの振動は、検出ピエゾ電気トレースにビームの表面に平行なひずみを生じさせ、ピエゾ電気効果を通じて、電気リードを介する検出電圧を提供する。検出電圧は、ビームの振動周波数を表すシヌソイド時間関数であり、また、ビームの基本振動モードを維持するために適切なゲインおよびフェーズの駆動電圧を生成すために制御電子機器に使用される。
【0014】
[0017]図2−4は、電気トレースおよびDETF32−1の歯40−1、42−1上のピエゾ電気材料の例示的なパターンの様々な図を示している。第1歯40−1は、ドープシリコンベース120を含み、これは頂部表面(振動方向に垂直な法線を備える)のほとんどまたは全てが、絶縁層144(たとえば、Si シリコン酸化物(SiO)、アルミニウム三酸化物(Al2O)、タンタル五酸化物(Ta2O)、シリコン窒化物(Si))により覆われる。絶縁層144の一部の頂部上には下電極層126(たとえば、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)+Mo、Cr+プラチナ(Pt))がある。他の電極材料を使用することもできる。
【0015】
[0018]2つのピエゾ電気トレース130−1、130−2は、下電極層126の上に隣り合って付与される。2つのピエゾ電気トレース130−1、130−2に使用される例示的な材料は、アルミニウム窒化物(AlN)である。上電極層136、134は、ピエゾ電気トレース130−1、130−2上に付与される。上電極層136、134は、下電極層126に類似する。第2歯42−1は、第1歯40−1のように、絶縁層144−1、下および上電極層126−1、136−1、134−1、およびピエゾ電気トレース130−3、130−4を含む。
【0016】
[0019]絶縁層、電極層、およびピエゾ電気トレースは、スパッタまたは蒸気堆積のような適合的な微小電気機械システム(MicroElectro-Mechanical Systems, MEMS)堆積プロセスを用いて付与および接合される。これらの層のいくつかまたは全ては、適合的なMEMSプロセスによりエッチングされる。
【0017】
[0020]図3に示されるように、下電極層126(126−1)は、絶縁層を通る金属されたビア146により、ドープシリコンベース120に電気的に接続される。上電極層は、図4に示されるように、絶縁層144に接続され、ピエゾ電気トレース130−1、130−2により下電極層126、126−1から絶縁されるトレース140、142に取り付けられる。DETFのベース区域に位置するパッドは、同様に構成される。第1パッド(図示せず)は、上電極層136に接続されるリードまたはトレースに直接的に接続される。第1パッドは、DETFのベース区域においてドープシリコンベースから電気的に絶縁される。第2パッドは、第1パッドから電気的に絶縁され、また、たいてい絶縁層144を通るビアによりドープシリコンベース120に電気的に接続される。
【0018】
[0021]一実施形態において、第1および第2のピエゾ電気トレース(1つは駆動トレース、他方は検出トレース)は、図2に示されるようにDETFの1つの歯の表面上に配置され、または1つの歯にだけ配置される。
【0019】
[0022]他の実施形態において、ピエゾ電気トレースは、上表面の代わりにシリコンビームの側部上に取り付けられる。
[0023]他の実施形態において、図5に示されるように、DETF200のための歯202は、上表面上に堆積される2つのピエゾ電気電極サンドイッチトレース206、208を含み、また、歯202の下表面上に堆積される2つのピエゾ電気電極サンドイッチトレース212、214を含む。4つのサンドイッチトレース206、208、212、214は、多くの異なる方法で検出要素または駆動要素として使用することができる。たとえば、トレース206、212は駆動要素として機能し、トレース208、214は検出要素として機能する。
【0020】
[0024]他の実施形態において、図6に示されるように、駆動要素(ピエゾ電気材料および電気トレース)は、2つの電極内のピエゾ電気材料の第1のサンドイッチを含み、これはDETFの歯300の中間区域の1つの側部に配置される。電極内のピエゾ電気材料の第2および第3のサンドイッチ304、306は、歯300の反対側の側部上に配置され、サンドイッチの電極は、歯300上のリードを介して接続される。このような構成は、歯300内に張力を提供し、歯300が平面において側方に曲がる。図示のものに類似する第2駆動部は、歯300上に含まれるが、歯300の表面上の反対側の位置であり、または、DETFの反対側の歯(図示せず)上に含まれる。
【0021】
[0025]他の実施形態において、検出要素は、ピエゾ電気装置以外の装置とすることができる。たとえば、検出要素は、ピエゾ抵抗装置、櫛状キャパシタ装置、または、単純なキャパシタ装置、あるいはDETF歯の運動を検出することができる他の装置を含むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端閉鎖音叉(DETF)装置であって、
第1端部で第1ベースに取り付けられ、第2端部で第2ベースに取り付けられる、第1および第2の歯(40−1、42−1)と、
前記歯の少なくとも1つの少なくとも1つの表面に取り付けられ、前記歯の長手方向の曲げ中立軸から側方にオフセットされる駆動要素と、を有し、
前記駆動要素は、少なくとも1つのピエゾ電気トレース(130−1、130−2)と、
少なくとも1つの電気トレース(126、134、136)と、を有し、
前記DETF装置はさらに、前記歯の少なくとも1つの少なくとも1つの表面に取り付けられ、長手方向の曲げ中立軸から側方にオフセットされる、検出要素を有し、
前記検出要素は、少なくとも1つのピエゾ電気トレース(130−3、130−4)と、
少なくとも1つの電気トレース(126−1、134−1、136−1)と、を有し、
前記歯の少なくとも1つは、ドープシリコンベース(120)を有し、前記少なくとも1つの駆動要素は、第1および第2の電気トレース(126、134)を有し、
前記少なくとも1つのピエゾ電気トレース(130−1)は、前記第1および第2の電気トレースの間に配置され、
前記第1電気トレースは、前記ドープシリコンベースに電気的に接続され、前記第2電気トレースは、前記ドープシリコンベースから電気的に絶縁される、両端閉鎖音叉(DETF)装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記駆動要素は、少なくとも1つのピエゾ電気トレースおよび少なくとも1つの電気トレースを備える第1サブ要素と、少なくとも1つのピエゾ電気トレースおよび少なくとも1つの電気トレースを備える第2サブ要素と、を有し、前記第1および第2のサブ要素の前記電気トレースは電気的に接続され、前記第1サブ要素(302)は、前記歯の長手方向の中間の長さに配置され、また、前記長手方向の曲げ中立軸から側方にオフセットされ、前記第2サブ要素(304、306)は、前記第1サブ要素の端部付近から前記歯の端部付近まで、少なくとも1つの長手方向長さ上に配置され、また、前記第1のサブ要素の長手方向の曲げ中立軸から反対側の側方にオフセットされる、装置。
【請求項3】
2つの歯を備える両端閉鎖音叉(DETF)を駆動する方法であって、前記方法は、
前記DETFの少なくとも1つの歯上に配置される少なくとも1つの駆動ピエゾ電気トレースにわたる電圧を周期的に変化させ、前記DETFの前記歯を、共振周波数で平面内方向に振動させるステップと、
検出装置から検出信号を受け取るステップと、を有し、前記検出信号は、前記DETFの前記歯の運動に関連付けられており、
受け取った検出信号に基づいて、前記少なくとも1つの駆動ピエゾ電気トレースに付与される電圧を変更して、前記DETFの前記歯を共振周波数で振動させるように駆動するステップと、
検出信号を受け取るステップは、電極のペアに関連付けられる少なくとも1つのピエゾ電気トレースに付与される力に応じて変化する容量電圧を受け取るように構成される電極のペアから検出信号を受け取るステップ、または、少なくとも1つの前記歯上に配置されるピエゾ抵抗要素から検出信号を受け取るステップ、を有し、前記ピエゾ抵抗要素は、前記少なくとも1つの歯に付与される力に応じて変化する抵抗を提供するように構成される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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