説明

ピエゾ駆動アクチュエータ

【課題】梃子の原理を応用した機械的拡大機構を用いた場合よりも更に十分な変位量が得られるピエゾ駆動アクチュエータを得る。
【解決手段】大経の開口部2Aと小経の開口部2Bとを有すると共に、開口部2A、2Bが連通する導管2Cを有するシリンダ2と、シリンダ2の大経の開口部2Aからシリンダ2の導管2Cに出入りする入力ピストン4と、シンリダ2の大経の開口部2A側で入力ピストン4を支持する円板バネ3と、シリンダ2の小径の開口部2Bからシリンダ2の導管2Cに出入りする出力ピストン5と、シリンダ2の小経の開口部2B側で出力ピストン5を支持する円板バネ6と、複数のピエゾ素子を積層して構成したピエゾアクチュエータ7とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピエゾ素子を用いた機器として、例えば特許文献1に記載された「微少変位装置」や特許文献2に記載された「ディジタル弁」などが知られている。
【0003】
ピエゾ素子を位置決めに用いることで、ナノメータ程度の極めて微少な範囲から数百ミクロンメータまでの位置決めを行うことができる。ピエゾ素子はセラミックでできているので、非常に硬く大きな力を発生させることができる。また、応答速度が速く、電力消費が小さいという利点も有している。しかしその反面、変位量を多くとることができず、例えば素子長の約1000分の1程度しかとれないという欠点がある。
【0004】
ピエゾ素子は、その発生力の大きさから位置決め用の他に切削加工やプレス加工等の機械加工用としても期待されるようになってきている。例えば特許文献3に記載された「加工機の調整方法及び調整装置」がある。機械加工用として実現するためには少ない変位量を拡大する必要があるため、近年、機械的拡大機構を備えたモデルが考案されている。考案された機械的拡大機構の殆どが梃子の原理を応用したものである。
【0005】
図8の(a)〜(c)の各々は機械的拡大機構の原理を示す図である。図8の(a)に示す機械的拡大機構[1]は、支点100を中心に、両側に力点101と作用点102を置いたものである。この図に示す機械的拡大機構[1]では、作用点102における力の方向が力点101における力の方向と逆になる。図8の(b)に示す機械的拡大機構[2]は、支点100から一方の側に力点101と作用点102を置いたものである。この図に示す機械的拡大機構[2]では、作用点102における力の方向と力点101における力の方向とが同じになる。図8の(c)に示す機械的拡大機構[3]は、梃子腕にL字状のものを使用し、その角部分に支点100を置くとともに、その両側に力点101と作用点102を置いたものである。この図に示す機械的拡大機構[3]では、作用点102における力の方向に対して、力点101における力の方向は90度異なる。なお、以上の3つの機械的拡大機構[1]〜[3]は拡大比を大きくしたものであるが、逆に拡大比を1以下にすることも勿論可能である。拡大比を1以下にすることで変位量を抑えて、押力を増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−194976号公報
【特許文献2】特開2001−082411号公報
【特許文献3】特開2004−314239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した梃子の原理を応用した機械的拡大機構は、拡大比が梃子腕の材料の強度に依存することから大きいものでも10倍程度しか得られない。すなわち、ピエゾ素子の発生力が非常に大きいために、(1)梃子腕のピエゾ素子が当たる面が凹む、(2)梃子腕を長くすることで曲がってしまう、(3)作用点での発生力を変化させるために梃子腕を振る場合に梃子腕の共振周波数以上の速さで振ることができない、(4)支点部分が金属疲労を起こす、といった様々な現象が生じ、これらの現象が生じない範囲内で使用する必要があることから、拡大比が大きいものでも10倍程度しか得られない。勿論、前記各現象が梃子棒の材質に依存することから、これらの現象が最も小さくなる材質を選択する必要があるが、コスト面を考慮すれば10倍程度が限度である。このように、従来の機械的拡大機構は切削加工やプレス加工等の機械加工用としては不十分である。
【0008】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、梃子の原理を応用した機械的拡大機構を用いた場合よりも更に十分な変位量が得られるピエゾ駆動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のピエゾ駆動アクチュエータは、2つの開口部を有する導管が形成され、前記導管内に液体が充填されるシリンダと、前記シリンダの導管の2つの開口部のうち第1の開口部側に配置され、前記第1の開口部から前記導管内に入る第1のピストンを有し、前記第1の開口部を塞ぐ第1の円板バネと、前記シリンダの導管の2つの開口部のうち第2の開口部側に配置され、前記第2の開口部から前記導管内に入る第2のピストンを有し、前記第2の開口部を塞ぐ第2の円板バネと、一端が前記第1の円板バネに設けられた前記第1のピストンの前記シリンダ側と逆側の面に当接して配置されるピエゾ素子と、を備えた。
【0010】
上記構成によれば、ピエゾ素子に通電を行うことで、ピエゾ素子が電圧値に応じた長さだけ伸張し第1の円板バネをシリンダ側へ押し込み、第1の円板バネに設けられた第1のピストンがシリンダ側へ変位する。これにより、シリンダ内の液体を介して第2の円板バネに圧力がかかり、第2の円板バネに設けられた第2のピストンがシリンダの外側へ変位する。このとき、第2のピストンの変位量はピエゾ素子の伸張量に比例する。また、第1の開口部の径を第2の開口部の径より大きくすることで、ピエゾ素子によって生ずる変位が拡大する。しかもこのときの変位量は、従来の梃子の原理を応用した機械的拡大機構と比べて、前述した様々な現象(梃子腕のピエゾ素子が当たる面が凹む、梃子腕を長くすることで曲がってしまう、作用点での発生力を変化させるために梃子腕を振る場合に梃子腕の共振周波数以上の速さで振ることができない、支点部分が金属疲労を起こすといった現象)が生じない分、大きくとることができる。したがって、切削加工やプレス加工等の機械加工用として十分に使用することができる。
【0011】
また、第1の円板バネで第1のピストンを支持するとともに、第2の円板バネで第2のピストンを支持し、さらに、第1の開口部を第1の円板バネで塞ぐとともに、第2の開口部を第2の円板バネで塞ぐようにして、第1のピストン及び第2のピストンをシリンダの内面に接触させないようにしたので、第1のピストン及び第2のピストンのそれぞれとシリンダの内面との間での摩擦が発生しない。この摩擦が発生しない分、高い応答性が得られる。
【0012】
また、第1の開口部と第2の開口部とを接続する構造を採ることから、第1の開口部と第2の開口部の位置関係を自由に設定することができる。すなわち、ピエゾ素子によって生ずる変位の方向を自在に設定することができる。
【0013】
上記構成において、前記シリンダの第1の開口部が第2の開口部よりも径が大である。
【0014】
上記構成によれば、第1のピストンの変位に対して第2のピストンの変位を大きくとることができる。すなわち、ピエゾ素子によって生ずる変位を拡大できる。
【0015】
上記構成において、前記シリンダの第1の開口部が第2の開口部よりも径が小である。
【0016】
上記構成によれば、第1のピストンの変位に対して第2のピストンの変位を小さくとることができる。すなわち、ピエゾ素子によって生ずる変位を縮小できる。
【0017】
本発明のピエゾ駆動アクチュエータは、一方が開口し、他方が閉口した第1の導管が形成され、前記第1の導管内に液体が充填される第1のシリンダと、前記第1のシリンダの第1の導管の開口部側に配置され、前記開口部から前記第1の導管内に入る第1のピストンを有し、前記開口部を塞ぐ第1の円板バネと、一端が前記第1の円板バネに設けられた前記第1のピストンの前記シリンダ側と逆側の面に当接して配置されるピエゾ素子と、前記第1のシリンダの第1の導管の開口部と連通する少なくとも2つの金属管と、一方が開口し、他方が開口した第2の導管が形成され、閉口部に前記金属管の先端部が連通し、前記第2の導管内に液体が充填される第2のシリンダと、前記第2のシリンダの第2の導管の開口部側に配置され、前記開口部から前記第2の導管内に入る第2のピストンを有し、前記開口部を塞ぐ第2の円板バネと、を備えた。
【0018】
上記構成によれば、ピエゾ素子に通電を行うことで、ピエゾ素子が電圧値に応じた長さだけ伸張し第1の円板バネを第1のシリンダ側へ押し込み、第1の円板バネに設けられた第1のピストンがシリンダ側へ変位する。これにより、第1のシリンダ内の液体が各金属管を通って第2のシリンダまで流れる。このとき、第2のシリンダが複数有れば、第1のシリンダ内の液体が各第2のシリンダまで流れる。
【0019】
第2のシリンダに第1のシリンダ内の液体が流れると、第2の円板バネに圧力がかかり、第2の円板バネに設けられた第2のピストンが第2のシリンダの外側へ変位する。このとき、第2のピストンの変位量はピエゾ素子の伸張量に比例する。この発明においても、従来の梃子の原理を応用した機械的拡大機構と比べて、前述した様々な現象(梃子腕のピエゾ素子が当たる面が凹む、梃子腕を長くすることで曲がってしまう、作用点での発生力を変化させるために梃子腕を振る場合に梃子腕の共振周波数以上の速さで振ることができない、支点部分が金属疲労を起こすといった現象)が生じないので、変位量を大きくとることができる。したがって、切削加工やプレス加工等の機械加工用として十分に使用することができる。
【0020】
上記構成において、前記第1のシリンダの開口部が前記第2のシリンダの開口部よりも径が大である。
【0021】
上記構成によれば、第1のシリンダの第1の開口部の径を第2のシリンダの第2の開口部の径より大きくすることで、第1のピストンの変位に対して第2のピストンの変位を大きくとることができる。すなわち、ピエゾ素子によって生ずる変位を拡大できる。
【0022】
上記構成において、前記第2のシリンダ及び第2の円板バネを前記金属管の数と同数備えた。
【0023】
上記構成によれば、第2のシリンダ及び第2の円板バネを金属管の数と同数備えることで、物を持ち上げたり、挟んだりすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動アクチュエータであって、梃子の原理を応用した機械的拡大機構を用いた場合よりも更に十分な変位量を得ることができるので、切削加工やプレス加工等の機械加工用として十分に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に係るピエゾ駆動アクチュエータの概略構成を示す図
【図2】図1のピエゾ駆動アクチュエータの円板バネと入力ピストンを示す図
【図3】図1のピエゾ駆動アクチュエータの円板バネとパッキンを示す図
【図4】本発明の実施の形態2に係るピエゾ駆動アクチュエータの概略構成を示す図
【図5】本発明の実施の形態3に係るピエゾ駆動アクチュエータの概略構成を示す図
【図6】図5のピエゾ駆動アクチュエータの応用例の概略構成を示す図
【図7】本発明の実施の形態4に係るピエゾ駆動アクチュエータの概略構成を示す図
【図8】梃子を利用した従来の機械的拡大機構[1]〜[3]の原理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るピエゾ駆動アクチュエータの概略構成を示す図である。なお、図1は断面図であり、ハッチングは省略している。
【0027】
図1において、本実施の形態に係るピエゾ駆動アクチュエータ1は、大小2つの開口部2A、2Bを有し、大経の開口部(第1の開口部)2Aと小経の開口部(第2の開口部)2Bとが連通する導管2Cを有するシリンダ2と、シリンダ2の大経の開口部2Aからシリンダ2の導管2C内に出入りする入力ピストン(第1のピストン)4と、シンリダ2の大経の開口部2A側に配置され、入力ピストン4を支持するとともに、大経の開口部2Aを塞ぐ板状の円板バネ(第1の円板バネ)3と、シリンダ2の小径の開口部2Bからシリンダ2の導管2C内に出入りする出力ピストン(第2のピストン)5と、シリンダ2の小経の開口部2B側に配置され、出力ピストン5を支持するとともに、小経の開口部2Bを塞ぐ板状の円板バネ(第2の円板バネ)6と、複数のピエゾ素子を積層して構成され、先端部7aが入力ピストン4のシリンダ2側と反対側の面に当接して配置されるピエゾアクチュエータ7と、ピエゾアクチュエータ7を支持するフレーム8と、シリンダ2と円板バネ3の間及び円板バネ3とフレーム8の間のそれぞれに設けられる金属製のパッキン9と、円板バネ6をシンリダ2の小経の開口部2B側に固定するための蓋10と、シリンダ2と円板バネ6の間及び円板バネ6と蓋10の間のそれぞれに設けられる金属製のパッキン11と、を備える。
【0028】
シリンダ2の導管2Cは、大経の開口部2Aから入力ピストン4の可動範囲までは一定の大きさの径の円筒状に形成され、入力ピストン4の可動範囲を超える位置から小径の開口部2Bまでは経が徐々に小さくなるテーパ状に形成され、さらに、出力ピストン5の可動範囲において一定の大きさの径の円筒状に形成されている。シリンダ2の導管2Cをテーパ状に形成することで導管2C内の油12を円滑に流すことができる。つまり、導管2C内に角などの突起があると、その部分で油の渦ができて油の流れを阻害するが、導管2Cをテーパ状に形成することで油の流れを阻害することがない。したがって、導管2C内の油12を円滑に流すことができる。
【0029】
シリンダ2の導管2Cとシリンダ2の表面との間に油注入路2Dが形成されており、この油注入路2Dを通して導管2C内に油12が注入される。油注入路2Dのシリンダ表面側には油注入路2Dを塞ぐ栓13がねじ込み式に取り付けられる。
【0030】
円板バネ3は、弾性を有する鋼からなり、シリンダ2の大経の開口部2A側とフレーム8との間に配置される。円板バネ3は、入力ピストン4を、その中心軸方向に揺動自在に支持する。
【0031】
図2は、円板バネ3に入力ピストン4が取り付けられた状態を示す図である。同図において、入力ピストン4は、硬質の鋼からなる2つの部分4a,4bで構成され、円板バネ3を両側から挟み込むようにして円板バネ3に取り付けられる。入力ピストン4の部分4aにはネジ15の軸部(頭部を除く部分)のみが通過する径の貫通孔が複数形成されており、入力ピストン4の部分4bには入力ピストン4の部分4aに開けられた複数の貫通孔のそれぞれに対向する位置にネジ穴が形成されている。入力ピストン4の部分4aに形成された複数の貫通孔のそれぞれと、それぞれの貫通孔に対応して入力ピストン4の部分4bに形成されたネジ穴の間にネジ15が入れられて、入力ピストン4が円板バネ3に取り付けられる。すなわち、入力ピストン4は、入力ピストン4の部分4aと部分4bとの間に円板バネ3を挟み込んだ状態で円板バネ3に取り付けられる。
【0032】
図1に戻り、円板バネ3がシリンダ2とフレーム8との間に取り付けられる際に、その両側にパッキン9が配置される。図3は、入力ピストン4が取り付けられた円板バネ3とパッキン9を示す図である。同図に示すように、パッキン9は、平板のリング状に形成されている。パッキン9を設けることで、シリンダ2内の油12が円板バネ3を通して外に漏れるのを防止することができる。
【0033】
ピエゾアクチュエータ7の先端部分7aが当接する入力ピストン4の部分4bは、ピエゾアクチュエータ7の先端部分7aが完全に密着するように面出しされる。ピエゾアクチュエータ7の先端部分7aを入力ピストン4に完全に密着させることで、ピエゾアクチュエータ7の発生力を確実に入力ピストン4に伝えることができる。
【0034】
円板バネ6は、弾性を有する鋼からなり、シリンダ2の小径の開口部2B側と蓋10との間に配置される。円板バネ6は、出力ピストン5を、その中心軸方向に揺動自在に支持する。出力ピストン5は、入力ピストン4と同様に硬質の鋼からなる2つの部分で構成され、円板バネ6を両側から挟み込むようにして円板バネ6に取り付けられる。出力ピストン5の円板バネ6への取り付けには入力ピストン4の場合と同様にネジ(図示略)が用いられる。出力ピストン5の円板バネ6への取り付けの詳細は省略する。
【0035】
円板バネ6がシリンダ2と蓋10との間に取り付けられる際に、その両側にパッキン11が配置される。パッキン11は、パッキン9と同様にリング状に形成されており、シリンダ2内の油12が円板バネ6を通して外に漏れるのを防止する。
【0036】
このように構成されたピエゾ駆動アクチュエータ1において、ピエゾアクチュエータ7に電圧を印加すると、ピエゾアクチュエータ7が電圧値に応じた長さだけ伸張し、入力ピストン4をシリンダ2側へ押し出す。このとき、入力ピストン4の変位に応じた容積に比例した距離だけ出力ピストン5がシリンダ2の外側へ変位する。そして、出力ピストン5がシリンダ2の外側へ変位した状態でピエゾアクチュエータ7への電圧印加を止めると、ピエゾアクチュエータ7が電圧印加前の状態まで収縮し、それに伴って入力ピストン4が円板バネ3の復元力によってピエゾアクチュエータ7に追従してシリンダ2の外側へ変位する。また、入力ピストン4がシリンダ2の外側へ変位することによって出力ピストン5に圧力がかからなくなり、円板バネ6の復元力によって出力ピストン5がシリンダ2側へ変位する。
【0037】
ここで、本実施の形態のピエゾ駆動アクチュエータ1の変位量の拡大比は、入力ピストン4及び出力ピストン5それぞれの断面積の比によって決まる。すなわち、入力ピストン4の断面積をS1、出力ピストン5の断面積をS2とすると、拡大比はS1/S2で決まる。
【0038】
また、本実施の形態のピエゾ駆動アクチュエータ1を例えば切削加工の工作機械に用いた場合、出力ピストン5にはバイス(図示略)が装着される。このデバイスは、ピエゾアクチュエータ7に印加する電圧を制御することで、直線方向に限定されるものの、所望の動きをさせることができ、切削対象のワークを所望の形状に切削することができる。
【0039】
本実施の形態のピエゾ駆動アクチュエータ1では、円板バネ3で入力ピストン4を支持するとともに、円板バネ6で出力ピストン5を支持し、さらに、大径の開口部2Aを円板バネ3で塞ぐとともに、小径の開口部2Bを円板バネ6で塞いで入力ピストン4及び出力ピストン5をシリンダ2の内面に接触させないようにしているので、入力ピストン4及び出力ピストン5のそれぞれとシリンダ2の内面との間で摩擦が発生せず、これにより高速で高い応答性が得られる。この応答性はシリンダ2の導管2Cをテーパ状に形成したことでも高めることができる。なお、この応答性はピエゾアクチュエータ7を伸張させた時点から出力ピストン5が変位を開始するまでの時間であり、この時間が短い程応答性が高くなる。
【0040】
また、シンリダ2の大経の開口部2Aを円板バネ3で塞ぐとともに、小経の開口部2Bを円板バネ6で塞ぐことで、シリンダ2内からの油漏れが殆ど発生せず、油の補充等の保守作業の省力化が図れる。
【0041】
このように本実施の形態のピエゾ駆動アクチュエータ1によれば、大経の開口部2Aと小経の開口部2Bとを有するとともに、これらの開口部2A、2Bが連通する導管2Cを有するシリンダ2と、シリンダ2の大経の開口部2Aからシリンダ2の導管2Cに出入りする入力ピストン4と、シンリダ2の大経の開口部2A側で入力ピストン4を支持する円板バネ3と、シリンダ2の小径の開口部2Bからシリンダ2の導管2Cに出入りする出力ピストン5と、シリンダ2の小経の開口部2B側で出力ピストン5を支持する円板バネ6と、複数のピエゾ素子を積層して構成したピエゾアクチュエータ7とを備え、ピエゾアクチュエータ7を伸張させることで、円板バネ3に支持された入力ピストン4をシリンダ2側へ変位させ、シリンダ2内の油12を介して円板バネ6に支持された出力ピストン5をシリンダ2の外側へ変位させるように構成したので、円板バネ6に設けた出力ピストン5の変位量を、従来の梃子の原理を応用した機械的拡大機構と比べて、様々な現象(梃子腕のピエゾ素子が当たる面が凹む、梃子腕を長くすることで曲がってしまう、作用点での発生力を変化させるために梃子腕を振る場合に梃子腕の共振周波数以上の速さで振ることができない、支点部分が金属疲労を起こすといった現象)を生じることなく大きくとることができ、切削加工やプレス加工等の機械加工用として十分に使用することができる。
【0042】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係るピエゾ駆動アクチュエータの概略構成を示す図である。なお、図4は断面図であり、ハッチングは省略している。また、図4において前述した図1と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。
【0043】
図4において、本実施の形態のピエゾ駆動アクチュエータ20は、大経の開口部30Aの位置と小径の開口部30Bの位置を90度違えた導管30Cを形成したシリンダ30を備え、ピエゾアクチュエータ7によって生ずる変位の方向を90度異なる方向に変換するものである。シリンダ30の導管30Cは、大経の開口部30Aから入力ピストン4の可動範囲までは一定の大きさの径の円筒状に形成され、入力ピストン4の可動範囲を超える位置から小径の開口部30Bまでは経が徐々に小さくなる形状に形成され、さらに、出力ピストン5の可動範囲において一定の大きさの径の円筒状に形成されている。
【0044】
なお、ピエゾアクチュエータ7によって生ずる変位の方向を変えることは90度に限定されるものではなく任意である。このように、シリンダの導管の形状を変えることで、変位方向を如何なる方向へも自由自在に変換することができる。
【0045】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係るピエゾ駆動アクチュエータの概略構成を示す図である。なお、図5は断面図であり、ハッチングは省略している。また、図5において前述した図1と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。
【0046】
上記実施の形態1、2では、2次側である出力ピストン5を1つ設けた1軸構造としたが、本実施の形態では、2次側に出力ピストンを3つ設けた多軸構造としたものである。本実施の形態のピエゾ駆動アクチュエータ40は、シリンダ2の2次側先端部に3つの金属管41の一端が連通し、各金属管41の他端が出力ピストン部42に連通したものである。各出力ピストン部42は、シリンダ43と、シリンダ43内の導管43C内に出入りする出力ピストン44と、出力ピストン44を、その中心軸方向に揺動自在に支持する円板バネ45と、円板バネ45を出力ピストン44との間で固定するための蓋46と、シリンダ43を支持する基台47と、を備える。なお、シリンダ43と円板バネ45の間及び円板バネ45と蓋46の間のそれぞれに金属製のパッキン(図示略)が設けられている。
【0047】
なお、シリンダ2は第1のシリンダに対応し、導管2Cは第1の導管に対応する。また、入力ピストン4は第1のピストンに対応し、円板バネ3は第1の円板バネに対応する。また、シリンダ43は第2のシリンダに対応し、導管43Cは第2の導管に対応する。また、円板バネ45は第2の円板バネに対応する。
【0048】
このような構成において、ピエゾアクチュエータ7に電圧を印加すると、ピエゾアクチュエータ7が電圧値に応じた長さだけ伸張し、入力ピストン4をシリンダ2側へ押し出す。このとき、入力ピストン4の変位に応じた容積の油12が各金属管41に流入する。そして、油12が各出力ピストン部43に到達することで各出力ピストン部43の出力ピストン44がシリンダ43の外側へ変位する。
【0049】
そして、各出力ピストン部43の出力ピストン44がシリンダ43の外側へ変位した状態でピエゾアクチュエータ7への電圧印加を止めると、ピエゾアクチュエータ7が電圧印加前の状態まで収縮し、それに伴って入力ピストン4が円板バネ3の復元力によってピエゾアクチュエータ7に追従してシリンダ2から離れる方向に変位する。また同時に、各出力ピストン部43に到達した油12が金属管41を通ってシリンダ2側に戻る。これにより各出力ピストン部43の出力ピストン44に圧力がかからなくなり、円板バネ45の復元力によって出力ピストン44がシリンダ43内に入る方向に変位する。
【0050】
このように、ピエゾアクチュエータ7が伸張することで、各出力ピストン部43の出力ピストン44がシリンダ43の外側へ変位し、ピエゾアクチュエータ7が収縮することで、各出力ピストン部43の出力ピストン44がシリンダ43内に入る方向に変位する。
【0051】
2次側を多軸構造とすることで、ある広がりを持ったものを持ち上げたり、挟んだりすることが可能となる。図6は、平板50を挟む場合の応用例を示す図である。同図に示すように、平板50の両側に2つずつ出力ピストン部42を配置する。この状態でピエゾアクチュエータ7に電圧を印加すると、ピエゾアクチュエータ7が電圧値に応じた長さだけ伸張する。ピエゾアクチュエータ7が伸張することで4個の出力ピストン部42の出力ピストン44が一斉にシリンダ43の外側へ変位し、平板50を挟み込む。そして、この状態でピエゾアクチュエータ7が収縮すると、4個の出力ピストン部42の出力ピストン44が一斉にシリンダ43側へ変位し、平板50を離す。このように、ピエゾアクチュエータ7の伸張と収縮により、平板50を挟み込んだり、離したりすることができる。
【0052】
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4に係るピエゾ駆動アクチュエータの概略構成を示す図である。なお、図7は断面図であり、ハッチングは省略している。また、図7において前述した図1と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。
【0053】
上記実施の形態1〜3では、ピエゾアクチュエータ7によって生ずる変位を拡大する構造を採ったものであったが、逆の構造即ち変位を縮小する構造を採ってもよい。変位を縮小するには、例えば実施の形態1のピエゾ駆動アクチュエータ1において大径の開口部2Aと小径の開口部2Bとを逆にすることで実現できる。図7に示す本実施の形態のピエゾ駆動アクチュエータ60はそのような構造を採ったものであり、以下、図7を参照してその構造の詳細について説明する。
【0054】
図7において、本実施の形態に係るピエゾ駆動アクチュエータ60は、大小2つの開口部61A、61Bを有し、大経の開口部61Aと小経の開口部61Bとが連通する導管61Cを有するシリンダ61と、シリンダ61の小経の開口部61Bからシリンダ61の導管61C内に出入りする入力ピストン62と、シンリダ61の小径の開口部61B側に配置され、入力ピストン62を支持するとともに、小径の開口部61Bを塞ぐ板状の円板バネ63と、シリンダ61の大径の開口部61Aからシリンダ61の導管61C内に出入りする出力ピストン64と、シリンダ61の大経の開口部61A側に配置され、出力ピストン64を支持するとともに、大経の開口部61Aを塞ぐ板状の円板バネ65と、先端部7aが入力ピストン62のシリンダ61側と反対側の面に当接して配置されるピエゾアクチュエータ7と、ピエゾアクチュエータ7を支持するフレーム66と、シリンダ61と円板バネ63の間及び円板バネ63とフレーム66の間のそれぞれに設けられる金属製のパッキン11と、円板バネ65をシンリダ61の大経の開口部61A側に固定するための蓋67と、シリンダ61と円板バネ65の間及び円板バネ65と蓋67の間のそれぞれに設けられる金属製のパッキン9と、を備える。
【0055】
シリンダ61の導管61Cは、小経の開口部61Bから入力ピストン62の可動範囲までは一定の大きさの径の円筒状に形成され、入力ピストン62の可動範囲を超える位置から大径の開口部61Aまでは経が徐々に大きくなるテーパ状に形成され、さらに、出力ピストン64の可動範囲において一定の大きさの径の円筒状に形成されている。シリンダ61の導管61Cをテーパ状に形成することは、実施の形態1のピエゾ駆動アクチュエータ1で説明した通りであり、導管61C内の油12を円滑に流して応答性を高めるためである。
【0056】
シリンダ61の導管61Cとシリンダ61の表面との間に油注入路61Dが形成されており、この油注入路61Dを通して導管61C内に油12が注入される。油注入路61Dのシリンダ表面側には油注入路61Dを塞ぐ栓68がねじ込み式に取り付けられる。
【0057】
円板バネ63は、弾性を有する鋼からなり、シリンダ61の小経の開口部61B側とフレーム66との間に配置される。円板バネ63は、入力ピストン62を、その中心軸方向に揺動自在に支持する。入力ピストン62は、硬質の鋼からなる2つの部分で構成され、円板バネ63を両側から挟み込むようにして円板バネ63に取り付けられる。円板バネ63がシリンダ61とフレーム66との間に取り付けられる際に、その両側にパッキン11が配置される。パッキン11は、平板のリング状に形成されており、シリンダ61内の油12が円板バネ63を通して外に漏れるのを防止する。
【0058】
円板バネ65は、弾性を有する鋼からなり、シリンダ61の大径の開口部61A側と蓋67との間に配置される。円板バネ65は、出力ピストン64を、その中心軸方向に揺動自在に支持する。出力ピストン64は、入力ピストン62と同様に硬質の鋼からなる2つの部分で構成され、円板バネ65を両側から挟み込むようにして円板バネ65に取り付けられる。円板バネ65がシリンダ61と蓋67との間に取り付けられる際に、その両側にパッキン9が配置される。このパッキン9は、パッキン11と同様にリング状に形成されており、シリンダ61内の油12が円板バネ65を通して外に漏れるのを防止する。
【0059】
このように構成されたピエゾ駆動アクチュエータ60において、ピエゾアクチュエータ7に電圧を印加すると、ピエゾアクチュエータ7が電圧値に応じた長さだけ伸張し、入力ピストン62をシリンダ61側へ押し出す。このとき、入力ピストン62の変位に応じた容積に比例した距離だけ出力ピストン64がシリンダ61の外側へ変位する。そして、出力ピストン64がシリンダ61の外側へ変位した状態でピエゾアクチュエータ7への電圧印加を止めると、ピエゾアクチュエータ7が電圧印加前の状態まで収縮し、それに伴って入力ピストン62が円板バネ63の復元力によってピエゾアクチュエータ7に追従してシリンダ61から離れる方向に変位する。また、入力ピストン62がシリンダ61から離れる方向に変位することによって出力ピストン64に圧力がかからなくなり、円板バネ65の復元力によって出力ピストン64がシリンダ61内に入る方向に変位する。
【0060】
このように本実施の形態のピエゾ駆動アクチュエータ60によれば、実施の形態1のピエゾ駆動アクチュエータ1の構造を逆にして、入力ピストン62の変位に対して出力ピストン64の変位を小さくとるようにしたので、ピエゾアクチュエータ7によって生ずる変位を縮小することができる。
【0061】
なお、上記実施の形態1〜4では、出力ピストン5、44、64を前後に変位させる直進運動を行うものであったが、例えば直進共役カム(図示略)を用いることで、直進運動を回転運動に変換することもできる。
【0062】
また、上記実施の形態1〜4では、シリンダ2、30、61の導管2C、30C、61C内に油12を充填させたが、油に限定することがなく、例えば水であってもよい。
【0063】
また、上記実施の形態1〜4では、複数のピエゾ素子を積層して構成したピエゾアクチュエータ7を用いたが、積層構成しない単一のピエゾ素子を用いることも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動アクチュエータであって、梃子の原理を応用した機械的拡大機構を用いた場合よりも更に十分な変位量を得ることができるといった効果を有し、切削加工やプレス加工等の機械加工用として使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、20、40、60 ピエゾ駆動アクチュエータ
2、30、43、61 シリンダ
2A、30A、61A 大径の開口部
2B、30B、61B 小径の開口部
2C、30C、43C、61C 導管
2D、61D 油注入路
3、6、45、63、65 円板バネ
4、62 入力ピストン
5、44、64 出力ピストン
7 ピエゾアクチュエータ
8、66 フレーム
9、11 パッキン
10、67 蓋
12 油
13、68 栓
15 ネジ
41 金属管
42 出力ピストン部
47 基台
50 平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの開口部を有する導管が形成され、前記導管内に液体が充填されるシリンダと、
前記シリンダの導管の2つの開口部のうち第1の開口部側に配置され、前記第1の開口部から前記導管内に入る第1のピストンを有し、前記第1の開口部を塞ぐ第1の円板バネと、
前記シリンダの導管の2つの開口部のうち第2の開口部側に配置され、前記第2の開口部から前記導管内に入る第2のピストンを有し、前記第2の開口部を塞ぐ第2の円板バネと、
一端が前記第1の円板バネに設けられた前記第1のピストンの前記シリンダ側と逆側の面に当接して配置されるピエゾ素子と、
を備えたピエゾ駆動アクチュエータ。
【請求項2】
前記シリンダの第1の開口部が第2の開口部よりも径が大である請求項1に記載のピエゾ駆動アクチュエータ。
【請求項3】
前記シリンダの第1の開口部が第2の開口部よりも径が小である請求項1に記載のピエゾ駆動アクチュエータ。
【請求項4】
一方が開口し、他方が閉口した第1の導管が形成され、前記第1の導管内に液体が充填される第1のシリンダと、
前記第1のシリンダの第1の導管の開口部側に配置され、前記開口部から前記第1の導管内に入る第1のピストンを有し、前記開口部を塞ぐ第1の円板バネと、
一端が前記第1の円板バネに設けられた前記第1のピストンの前記シリンダ側と逆側の面に当接して配置されるピエゾ素子と、
前記第1のシリンダの第1の導管の開口部と連通する少なくとも2つの金属管と、
一方が開口し、他方が開口した第2の導管が形成され、閉口部に前記金属管の先端部が連通し、前記第2の導管内に液体が充填される第2のシリンダと、
前記第2のシリンダの第2の導管の開口部側に配置され、前記開口部から前記第2の導管内に入る第2のピストンを有し、前記開口部を塞ぐ第2の円板バネと、
を備えたピエゾ駆動アクチュエータ。
【請求項5】
前記第1のシリンダの開口部が前記第2のシリンダの開口部よりも径が大である請求項4に記載のピエゾ駆動アクチュエータ。
【請求項6】
前記第2のシリンダ及び第2の円板バネを前記金属管の数と同数備えた請求項4又は請求項5に記載のピエゾ駆動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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