説明

ピコリネートボリン酸エステル類の製造方法

【課題】本発明は、ホウ素含有化合物の分野、特に抗菌活性および/または抗炎症活性を示すホウ素化合物およびその医薬組成物、ならびにその使用に関する。
【解決手段】これらホウ素化合物およびその医薬組成物の製造方法および使用方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素含有化合物、特に抗菌活性および/または抗炎症活性を示すホウ素化合物およびその医薬組成物に関する。これらホウ素化合物の製造方法および使用方法もまた提供する。
【背景技術】
【0002】
尋常性座瘡(acne vulgaris)は、12歳と24歳との間のある時期に、個体の85%に影響を及ぼす最も一般的な皮膚病である。現在、米国において4千5百万人の人々が座瘡を有しており、毎年1千7百万人のアメリカ人が治療法を捜し求めている。座瘡は、皮脂産生の異常性、濾胞上皮剥離、細菌増殖および炎症を含む毛嚢脂腺単位の疾患である。座瘡の病因は、多因子性であり、微生物増殖および炎症が、この病態に中心的な媒介物として作用する。毛嚢において、細胞と皮脂との混合により、皮膚に通常存在する細菌であるPropionibacterium acnes(P. acnes)の増殖に係わる環境を作り出す。P. acnesにより放出された化学走化性因子は、リンパ球および好中球を引き寄せ、ならびに他の炎症誘発性分子を産生する。これにより、皮膚細胞および皮脂から構成されるプラグが皮脂濾胞において形成される、炎症過程を生じる。
【0003】
座瘡に対する現行治療法としては、局所的かつ全身的に適用される抗体、局所的に適用されるレチノイド類(例えば、レチノイン酸)が挙げられる。しかしこれらの治療は、療法過程が長期のため完全に満足のいくものではなく、通常治療は、4週から6週またはそれ以上かかる可能性がある。さらに、局所刺激および全身副作用もまた、現行の製品が有する主要な課題である。したがって、副作用が無くて作用がより短期であり、病因に対して細菌性および炎症性の両方に寄与するものを阻止する、座瘡に対する療法の改善が必要である。
【0004】
現在ヒト臨床試験にある新規な療法は、局所製剤において活性な医薬成分の2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール(1)(「API」)
【化1】

により座瘡を治療することを含む。この化合物は、例えば、同時係属米国特許出願第10/740,304号明細書;米国特許出願第10/867,465号明細書;米国仮特許出願第60/579,421号明細書;米国仮特許出願第60/579,476号明細書;および米国仮特許出願第60/579,419号明細書(これらの各々は、全ての目的のために参照としてその全体が本明細書に援用される);PCT国際公開第04/056322号明細書(これもまた、全ての目的のために参照としてその全体が本明細書に援用される)に考察されているような、抗菌性、抗炎症性、および他の有用な治療特性を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実験室試験および前臨床試験に十分な1グラムスケール量でAPIを調製するための信頼すべき合成方法論は存在する。しかしながら、ヒト臨床試験は、典型的には、試験のために数十グラムまたはさらに数百グラムの化合物を必要とする。このようなスケールで、妥当なコストでかつ妥当な安全性因子を有するAPIを製造するための新規な方法が必要とされる。本発明は、これらの要求に合致する、APIなどのボリン酸エステルを調製する方法を提供することにより、これらの課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の一態様は、式I
【化2】

の化合物およびその薬学的に許容できる塩、水和物、ならびに溶媒和物の製造方法に関するものであって:RおよびRの求核性等価物と、ホウ酸トリアルキル(trialkyl borate)とを反応させて、アルキルボリン酸エステル(alkyl borinic acid ester)を形成する工程;ボリン酸エステルを吸収剤で処理する工程;および本化合物を形成するための有効な条件下、処理したボリン酸エステルと、ピコリン酸とを合わせる工程を含み、
式中:RおよびRは独立して、アルキル、ヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され;R〜Rは独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ニトロ、スルホ、チオ、カルバモイル、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールからなる群から選択され;あるいはRおよびRは、それらが結合される環と一緒になって置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換ヘテロアリール環を形成する。
【0007】
本発明の一実施形態は、2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール、およびその薬学的に許容できる塩、水和物、ならびに溶媒和物の製造方法に関するものであって:メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートを形成するための有効な条件下、3−クロロ−4−メチルフェニルマグネシウムブロミドとホウ酸トリメチルとを反応させる工程;メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートを吸収剤で処理する工程;および2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールを形成するための有効な条件下、メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートと3−ヒドロキシピコリン酸とを反応させる工程を含む。
【0008】
本発明の別の実施形態は、2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール、およびその薬学的に許容できる塩、水和物、ならびに溶媒和物の製造方法に関するものであって:メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートを形成させるための有効な条件下、3−クロロ−4−メチルフェニルマグネシウムブロミドとホウ酸トリメチルとを反応させる工程;加熱する混合物を形成するために、メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートをエタノールと第一の吸収剤とで処理する工程;3−ヒドロキシピコリン酸を第二の吸収剤で処理する工程;第二の吸収剤と3−ヒドロキシピコリン酸との混合物および第一の吸収剤とメチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートとの混合物をろ過する工程;および2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールを形成するための有効な条件下、ろ過されたビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートとろ過された3−ヒドロキシピコリン酸とを反応させる工程を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、実質的に無水結晶形態の、化合物2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールに関する。
【0010】
本発明の別の態様は、実質的に無水結晶形態の、2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールの薬学的有効量を含む医薬組成物に関する。
【0011】
これらおよび他の態様ならびに利点は、下記の記載を、添付図面と関連付けて読むことで明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
一態様において、本発明は、式Iの一般構造を有する化合物およびその薬学的に許容できる塩、水和物ならびに溶媒和物の新規製造方法を提供する。

【化3】

【0013】
定義
本明細書において、それ自体によりまたは別の置換基の一部としての用語「アルキル」とは、他に規定されない限り、指定された炭素原子数を有し(すなわち、C〜C10は1個から10個の炭素を意味する)、完全飽和か、モノ−またはポリ不飽和である、直鎖もしくは分枝鎖、または環式炭化水素基あるいはそれらの組み合わせを意味し、二価および多価基を含むことができる。飽和炭化水素基の例としては、限定的ではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、s−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、および、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどの同族体および異性体などの基が挙げられる。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、限定的ではないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、ならびに高級同族体および異性体が挙げられる。用語の「アルキル」はまた、例えば、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシル、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイルおよびアルキルカルボニルジオキシを含むように意図されており、置換および非置換アルキル基の両方を包含する。
【0014】
本明細書において、それ自体によりまたは別の用語と組合わされた用語「ヘテロアルキル」とは、他に規定されない限り、規定された数の炭素原子ならびにO、N、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなる、安定した直鎖または分枝鎖、もしくは環式炭化水素基、あるいはそれらの組合せを意味し、ここで、窒素原子および硫黄原子は酸化していてもよく、窒素へテロ原子は四級化していてもよい。ヘテロ原子O、NおよびSおよびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に、またはアルキル基が分子の残部に結合している位置に、配置していることができる。例としては、限定的ではないが、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、および−CH=CH−N(CH)−CHが挙げられる。例えば、−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CHのように、2個までのヘテロ原子が連続的であり得る。
【0015】
「ヘテロアルキル」は「ヘテロアルキレン」もまた包含し、これは、それ自体によりまたは別の置換基の一部として、限定的ではないが−CH−CH−S−CH−CH−および−CH−S−CH−CH−NH−CH−により例示されるような、ヘテロアルキルに由来する二価基を意味する。ヘテロ原子はまた、鎖終端の一方または両方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルファモイル、ジアルキルスルファモイル、アルキルスルフィナモイル、ジアルキルスルフィナモイルなど)。「ヘテロアルキル」は、ヘテロシクロアルキルを含むようにも意図され、これは、例えば、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどを含む。「ヘテロアルキル」は、置換および非置換ヘテロアルキル基の両方を包含する。
【0016】
本明細書において、それら自体によりまたは別の置換基の一部としての用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、他に規定されない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、用語「ハロ(C〜C)アルキル」とは、限定的ではないが、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0017】
本明細書において、用語「アリール」とは、他に規定されない限り、単環または共に縮合されるかもしくは共有結合される多環(好ましくは2環から3環)であり得るポリ不飽和芳香族置換基を意味することが意図される。アリールの非限定例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルおよび4−ビフェニルが挙げられる。用語「アリール」により包含される化合物の代表的なクラスとしては、アラルキル、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アラルキルオキシ、アラルキルチオ、アラルキルアミノ、ジアラルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、アリールカルボニル、アリールカルバモイル、アラルキルカルボニル、アラルキルカルバモイル、ジアリールカルバモイル、ジアラルキルカルバモイル、アルキルアリールカルバモイル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アラルキルスルフィニル、アリールカルボニルジオキシ、アラルキルカルボニルジオキシ、アリールスルファモイル、アラルキルスルファモイル、ジアリールスルファモイル、ジアラルキルスルファモイル、アルキルアリールスルファモイル、アリールスルフィナモイル、アラルキルスルフィナモイル、ジアリールスルフィナモイル、ジアラルキルスルフィナモイルおよびアルキルアリールスルフィナモイルが挙げられる。「アリール」は、置換および非置換アリール基の両方を包含する。
【0018】
用語の「ヘテロアリール」とは、環炭素原子がN、O、およびSから選択される1個から4個までのヘテロ原子により置換されるアリール基(または環)を指し、ここで窒素原子および硫黄原子は酸化されていてもよく、窒素原子は四級化されていてもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合できる。ヘテロアリール基の非限定例としては、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリルが挙げられる。用語「ヘテロアリール」により包含される化合物の代表的クラスとしては、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、ヘテロアリールチオ、ヘテロアラルキルチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアラルキルアミノ、ジヘテロアリールアミノ、ジヘテロアラルキルアミノ、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロアラルキルカルボニル、ヘテロアリールカルバモイル、ヘテロアラルキルカルバモイル、ジヘテロアリールカルバモイル、ジヘテロアラルキルカルバモイル、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロアラルキルスルホニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアラルキルスルフィニル、ヘテロアラルキルカルボニルジオキシ、ヘテロアリールスルファモイル、ヘテロアラルキルスルファモイル、ジヘテロアリールスルファモイル、ジヘテロアラルキルスルファモイル、ヘテロアリールスルフィナモイル、ヘテロアラルキルスルフィナモイル、ジヘテロアリールスルフィナモイルおよびジヘテロアラルキルスルフィナモイルが挙げられる。「ヘテロアリール」は、置換および非置換ヘテロアリール基の両方を包含する。
【0019】
本明細書において、「ピコリン酸」は、ピコリン酸および置換ピコリン酸の両方を含むように意図されている。
【0020】
本明細書において「非溶媒」とは、対象の化合物が実質的に溶解性でない液体である。
【0021】
本明細書において「吸着(adsorption)」とは、材料の表面との相互作用のことであるが、一方、「吸収(absorption)」とは、材料のポア(細隙)を介した材料内への取り込みである。材料は、吸着および吸収両方の性質を提供することができる。
【0022】
アルキルおよびヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルとしばしば称される基を含む)に対する代表的な置換基は、一般に「アルキル基置換基」と称され、それらは、限定的ではないが、ゼロから(2m’+1)までの範囲の数(ここで、m’はそのような基における全炭素原子数である)の、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CNおよび−NOからなる群から選択される1つ以上の種々の基であり得る。R’、R’’、R’’’およびR’’’’の各々は、好ましくは独立して、水素、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、例えば、1〜3つのハロゲンで置換されたアリール、置換または非置換アルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基をさす。本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、例えば、R基の各々は独立して、各R’、R’’、R’’’およびR’’’’基についてこれらの基の2つ以上が存在する場合と同様に選択される。R’およびR’’が同じ窒素原子に結合している場合、それらは、窒素原子と結合して5員環、6員環、または7員環を形成できる。例えば、−NR’R’’としては、限定的ではないが、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルなどが挙げられる。上記の置換基の考察から、用語「アルキル」とは、ハロアルキル(例えば、−CFおよび−CHCF)およびアシル(例えば、−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCHなど)など、水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基を含むものであることを当業者は解するであろう。
【0023】
アリールおよびヘテロアリール基に関する代表的な置換基は、一般に「アリール基の置換基」と称される。この置換基は、例えば、ゼロから芳香族環系上で全開放原子価数までの範囲の数で、−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CNおよび−NO、−R’、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C〜C)アルコキシ、およびフルオロ(C〜C)アルキルから選択され、ここで、R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、好ましくは、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールから独立して選択される。例えば、本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、R基の各々は独立して、各R’、R’’、R’’’およびR’’’’基についてこれらの基の2つ以上が存在する場合と同様に選択される。
【0024】
本明細書において、用語「ヘテロ原子」とは、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびシリコン(Si)などを含む。
【0025】
化合物
およびRは独立して、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、アラルキル、およびヘテロアリールからなる群から選択される。
【0026】
〜Rは独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ニトロ、スルホ、チオ、カルバモイル、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールからなる群から選択される。したがって、R〜Rとしては、例えば、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロアラルキルチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアラルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアラルキルアミノ、ジヘテロアリールアミノ、ジヘテロアラルキルアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロアラルキルカルボニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アラルキルカルバモイル、ヘテロアリールカルバモイル、ヘテロアラルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、ジアリールカルバモイル、ジアラルキルカルバモイル、ジヘテロアリールカルバモイル、ジヘテロアラルキルカルバモイル、アルキルアリールカルバモイル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロアラルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アラルキルスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアラルキルスルフィニル、アルキルカルボニルジオキシ、アリールカルボニルジオキシ、アラルキルカルボニルジオキシ、ヘテロアリールカルボニルジオキシ、ヘテロアラルキルカルボニルジオキシ、アルキルスルファモイル、アリールスルファモイル、アラルキルスルファモイル、ヘテロアリールスルファモイル、ヘテロアラルキルスルファモイル、ジアルキルスルファモイル、ジアリールスルファモイル、ジアラルキルスルファモイル、ジヘテロアリールスルファモイル、ジヘテロアラルキルスルファモイル、アルキルアリールスルファモイル;アルキルスルフィナモイル、アリールスルフィナモイル、アラルキルスルフィナモイル、ヘテロアリールスルフィナモイル、ヘテロアラルキルスルフィナモイル、ジアルキルスルフィナモイル、ジアリールスルフィナモイル、ジアラルキルスルフィナモイル、ジヘテロアリールスルフィナモイル、ジヘテロアラルキルスルフィナモイルおよびアルキルアリールスルフィナモイルを挙げることができる。さらに、RおよびRは、それらが結合される環と一緒になって、芳香族環を形成できる。
【0027】
一実施形態において、本発明の方法は、対応するアルキルボリン酸エステル(すなわち、(RBO(アルキル))を形成するための有効な条件下、RおよびRの求核性等価物とホウ酸トリアルキルとを反応させる工程を含む。本明細書において、「RおよびRの求核性等価物」とは、RおよびRのシントンを指し、これはホウ酸トリアルキルと反応して所望のボリン酸アルキルエステルを形成することができ、ここで、RおよびRは中心ホウ素原子に結合する。この反応を完了させるために有効なRおよびRの任意のシントンは、本発明の使用に好適である。好適なシントンの例としては、限定的ではないが、金属リチウムおよびRおよびRに対応するグリニャール試薬が挙げられる。このようなグリニャール試薬の特定例は、3−クロロ−4−メチルフェニルマグネシウムブロミドである。RおよびRに関するシントンは、公知の方法および物質を用いて調製できるか、あるいは市販元から購入できる。好適なホウ酸トリアルキル類としては、市販品として購入できるホウ酸トリメチル((CHO)B)が挙げられる。RおよびRの求核性等価物とホウ酸トリアルキルとは、公知の条件および方法を用いて合わせて(combine)、対応するボリン酸アルキルエステルを調製できる。このボリン酸アルキルエステルは、吸収剤で処理し、次いで所望の化合物を形成するための十分な条件下、置換されていてもよいピコリン酸で処理する。
【0028】
式Iの化合物に関して、Rは置換されていてもよいアリールである。本発明の別の実施形態において、Rは置換されていてもよいアリールであり、Rは置換されていてもよいアリールである。他の実施形態としては、RおよびRの両方が置換されていてもよいフェニル基である式Iの化合物が挙げられる。さらに別の実施形態において、RおよびRの両方は、アルキルおよびハロで置換されたフェニル基である。特定の実施形態において、RおよびRの両方は、3−クロロ−4−メチルフェニル基である。
【0029】
およびRの両方が、3−クロロ−4−メチルフェニル基である場合、ホウ酸トリアルキルとの反応は、アルキルビス−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸エステルを提供するであろう。ホウ酸トリアルキルが具体的にはホウ酸トリメチルである場合、生じるボリン酸エステルは、メチルビス−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートである。
【0030】
ボリン酸アルキルエステルとピコリン酸との反応は、式Iの一般構造を有する所望の生成物を提供する。このステップは典型的には、反応容器中、ボリン酸アルキルエステルとピコリン酸とを合わせ、この混合物を加熱することにより達成できる。より特定の実施形態において、本発明の方法は、ピコリン酸と吸収剤とを合わせ、吸収剤をろ過し、ピコリン酸とボリン酸エステルとを反応させることを含む。別の実施形態において、ピコリン酸は3−ヒドロキシピコリン酸である。一実施形態において、ボリン酸エステルはメチルビス−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートであり、ピコリン酸は3−ヒドロキシピコリン酸である。
【0031】
本発明の使用に好適な吸収剤(absorbent)は、吸収および/または吸着を可能にする高表面積および多孔性を有する任意の材料である。代表的な吸収剤としては、アルミナ、セライト、シリカ、活性炭、および、例えば、ベントナイトクレイなどのクレイーが挙げられる。一実施形態において、吸収剤は活性炭である。
【0032】
最終生成物を結晶化させてヒトでの臨床試験に十分な均質性と純度の物質を提供できる。一般に、結晶を作製するために、標準的な方法と物質を使用できる。一実施形態において、APIの粗製物の結晶化は、確認された純度と構造の種結晶を用いて実施される。このような種結晶は、例えば、上記参照の米国特許出願およびPCT公開に記載された公知の実験室スケールの手法を用いて製造できる。幾つかの実施形態において、結晶性APIの純度は、少なくとも約97%、または少なくとも約98%、あるいは少なくとも約99%である。他の実施形態において、結晶性APIの純度は、少なくとも約99.2%、または少なくとも約99.4%、もしくは少なくとも約99.6%、あるいは少なくとも約99.8%である。
【0033】
ここで、臨床試験に好適な量および品質でAPIを調製する本発明の一実施形態の概要を、図1A〜1Cを参照して記載する。
【0034】
図1Aを参照することから開始すると、金属マグネシウム(Mg)およびテトラヒドロフラン(THF)を、4−ブロモ−2−クロロトルエンと共に反応容器(102)に導入し、THF中、対応するグリニャール試薬溶液(すなわち、3−クロロ−4−メチルフェニルマグネシウムブロミド)(104)を形成した。次に、ホウ酸トリメチルを、還流下グリニャール溶液(104)と合わせてメチルビス−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸エステル生成物溶液(106)を形成した。次にこの反応をメタノール(MeOH)でクエンチし、生じた溶液を濃縮してシロップ(108)を形成した。次いでこのシロップをメチルt−ブチルエーテル(MTBE)および1規定(1N)塩酸(HCl)を用いて分配し、pHを1未満の値に調整した(110)。層を分離し、酸性水溶液フラクションを廃棄し、ボリン酸の粗製液(112)として残存有機層を残した。大部分の溶媒を、例えば、蒸発により留去した。残存溶媒(THF、MTBE、水およびメタノール)は、トルエンを加えて生じた溶液を蒸発させることにより留去し、メチルビス−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸(114)のシロップを製造した。
【0035】
ここで図1Bを参照すると、個別の容器(202)内で、ピコリン酸(例えば、3−ヒドロキシピコリン酸)を、溶液(204)(例えば、エタノール(EtOH)および水の溶液)中の活性炭で処理し、ろ過し、第二の容器(210)に移し、これを、図1Aに示されたスキームから調製されたメチルビス−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸(114)と合わせて所望の生成物を形成した。必要な場合、この生成物を(例えば、結晶化により)さらに精製した。
【0036】
図1Cを参照すると、最終生成物をろ過し(302)、乾燥し(304)、保存のために包装した(306)。
【0037】
本明細書に記載された方法は、実質的に無水であると判定された結晶を生成し、主要な結晶形体の融点は、約170℃〜約176℃、より具体的には約173℃〜約175℃、さらにより具体的には、約174℃〜約175℃、特に約174℃である。第二の形態もまた、融点が、約171℃〜約173℃、より詳細には約171℃〜約172℃、特に約172℃であることが分かった。
【0038】
本明細書に記載された方法を用いて調製されたAPIの結晶形態は、使用されるまで好適な密封容器など、実質的に無水環境で保存できる。さらに詳細には、容器は、遮光性であり得る。好適な容器の例としては、限定的ではないが、アンプル、バッグ(例えば、マイラー製バッグ)、およびボトルが挙げられる。
【0039】
本明細書に記載された方法を用いて調製されたAPIの結晶形態は、一般に利用できる教科書(例えば、Gennaro 2000; Harman, Limbard, et al. 2001; Auden 2002)に例示されているように当業者に周知である方法および物質を用いて医薬組成物に使用できる。より具体的な製剤の例としては、例えば、同時係属米国仮特許出願第60/665,178号明細書に記載されており、これは、全ての目的のために参照としてその全体が本明細書に援用される。
【0040】
本発明の化合物はまた、このような化合物を構成する1個以上の原子に非天然の比率の原子同位元素を含有することができる。例えば、本化合物を、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位元素により放射標識できる。放射性であろうとなかろうとも、本発明の化合物の全ての同位元素の変形例は、本発明の範囲内に包含されるよう意図される。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明の一定の態様を説明するために、ならびに本発明を実行する上で当業者を援助するために提供する。これらの実施例は、いかなる方法によっても本発明の範囲を少しも限定するものではない。
【0042】
実施例1:2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール(「API」)(1)の調製
3−クロロ−4−メチルフェニルマグネシウムブロミドの調製
ステップ1:金属Mg(3.7当量)およびテトラヒドロフラン(THF)(36L/1kgのMg)を、周囲温度で好適な反応容器に加えた。
【0043】
ステップ2:テトラヒドロフラン(1.9L THF/1kgの4−ブロモ−2−クロロトルエン)中、4−ブロモ−2−クロロトルエン(3.5当量)の溶液をステップ1からの混合物に加えた。発熱による過度の還流を避けるために、添加速度を制御した。グリニャ−ル試薬の形成は、還流が鎮まったら完了し、その時点で、少量の金属Mgは、他の部分は蒼白色の、透明なグリニャ−ル試薬溶液中に残った。
【0044】
ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸の調製
ステップ1:先のステップからのグリニャ−ル溶液を、10℃以下に冷却した。
【0045】
ステップ2:トリメチルボレート(1.0当量)のTHF中溶液(7.7L テトラヒドロフラン/1kgのホウ酸トリメチル)を、グリニャ−ル溶液に添加した。
【0046】
ステップ3:生じた混合物を、約40℃から約50℃で約16時間から約20時間インキュベートした。
【0047】
ステップ4:次にこの混合物を、10℃未満に冷却した。
【0048】
ステップ5:12当量のメタノールをこの混合物に加えた。
【0049】
ステップ6:混合物に存在するTHFおよびメタノールを減圧下蒸発させた。
【0050】
ステップ7:生じたシロップを、メチルt−ブチルエーテル(27L/1kgのホウ酸トリメチル)および1N HCl(27L/1kgのホウ酸トリメチル)を用いて分配した。
【0051】
ステップ8:この水層を、濃HClを用いて≦約1のpHに調整した。
【0052】
ステップ9:層を分離し、水層を廃棄した。
【0053】
ステップ10:メチルt−ブチルエーテルを減圧下蒸発させた。
【0054】
ステップ11:残存THF、メタノール、メチルt−ブチルエーテルおよび水を除去するために、トルエン(17Lトルエン/1kgのホウ酸トリメチル)を反応液に加え、引き続き減圧下蒸発させた。
【0055】
ステップ12:生じたシロップを、エタノール(8L/1kgの理論的3−ヒドロキシピリジン−2−カルボニルオキシビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボラン)に溶解した。
【0056】
ステップ13:活性炭(3−ヒドロキシピコリン酸を基準にして5重量%;下記を参照)をエタノール溶液に加え、混合物を約5分から約10分間還流してから、活性炭を除去するためにろ過した。
【0057】
2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール(1)の調製
ステップ1:3−ヒドロキシピコリン酸(1.0当量)、水(4L/1kgの理論的3−ヒドロキシピリジン−2−カルボニルオキシビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボラン)、およびエタノール(4L/1kgの理論的3−ヒドロキシピリジン−2−カルボニルオキシビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボラン)を合わせ、この混合物を、約40℃から約50℃に約15分間加熱した。
【0058】
ステップ2:活性炭(3−ヒドロキシピコリン酸を基準にして5重量%)を混合物に加え、これを約15分攪拌し、次いで活性炭を除去するためにろ過した。
【0059】
ステップ3:次に3−ヒドロキシピコリン酸溶液をガラス反応器に移した。
【0060】
ステップ4:前述のステップ13からのビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸溶液を混合物に加えた。
【0061】
ステップ5:この混合物を加熱した。約35℃から約45℃で沈殿物が形成し、これは、混合物を還流するまで加熱し続けるにつれて溶解した(約81℃)。還流に達すると、事実上透明な溶液が得られた。この混合物を約15分間還流した。
【0062】
ステップ6:この溶液を冷却した。約約70℃から約75℃で、この溶液に標品(すなわち、時前に調製され、確認された)である2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール(1)を播種した。約10時間から約15時間かけてこの混合物を25℃に冷却すると結晶化を生じた。生成物を含んでなる結晶性スラリーを、周囲条件で約12時間から約15時間保持した。その後、生成物スラリーをろ過し、冷(約5℃)エタノール/水(3:1v:v)で洗浄してウェットケーク中1〜2L/kgのI(理論的)を得た。
【0063】
ステップ7:ウェットケークを、減圧をかけることなく周囲温度でトレー中乾燥して、実質的に結晶性の生成物を得た。
【0064】
ステップ8:この生成物を混合し、室温での保存のために、密封遮光容器中に包装した。
【0065】
実施例2:2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール(API)の結晶形態の特性
上記工程により得られたAPIの結晶を、化学的安定性および組成について評価した。APIの異なる結晶種の存在を判定するために多形性スクリーンを実施した。多形性を探索する場合に典型的に使用される標準的な結晶化法により、異なる結晶形態を調製した。本発明に使用された代表的な技法を以下に列記する。
【0066】
析出:APIのサンプルを、溶媒1mL当り少なくとも100mgのAPIを溶解できる溶媒に溶解した。「非溶媒」を、APIの沈澱を引き起こすために十分な量で加えた。固体をろ過により単離し、乾燥した。
【0067】
緩徐蒸発:APIのサンプルを溶媒に溶解し、得られた溶液を、カバーがピンホールを有したカバー付バイアル中に溶液を維持することにより、徐々に蒸発させた。次にバイアルを、通常周囲温度で一定の通風下で清浄域に置いた。溶媒が完全に蒸発したら固体を採取した。
【0068】
急速蒸発:APIのサンプルを溶媒に溶解し、得られた溶液を、カバー無しの開放バイアル中に溶液を維持することにより、自然に蒸発させた。次にバイアルを、通常周囲温度で一定の通風下で清浄域に置いた。溶媒が完全に蒸発したら固体を採取した。
【0069】
緩徐冷却:APIのサンプルを、不溶のAPIが存在しなくなるように加熱ブロックを用いて高温で密封バイアル中の溶媒に溶解した。溶媒は、周囲温度で少量のAPI、通常約50mg/mLから約100mg/mLまでを溶解させる能力を目的に選択された。次に、好ましくは、制御された方法または加熱ブロックを自然に冷却させることによって、溶液を徐々に冷却させた。生じた固体をろ過により採取し、乾燥した。
【0070】
急速冷却:APIを、加熱ブロックを用いて高温で密封バイアル中の溶媒に加えた。溶媒は、周囲温度で少量のAPI、通常約50mg/mLから約100mg/mLまでを溶解させる能力により選択された。熱い溶液には不溶の固体が残った。次に、氷浴中にバイアルを置くことによって溶液を急速に冷却させた。固体をろ過により採取し、乾燥した。
【0071】
API固体は、任意の以下の例示的な条件またはそれらの組合せにより単離された:
1.メチルエチルケトン(MEK)からの緩徐蒸発;
2.テトラヒドロフラン(THF)からの緩徐蒸発;
3.アセトンからの緩徐蒸発;
4.1,2−ジメトキシエタン(DME)からの緩徐蒸発;
5.ヘキサンまたはヘプタンによるアセトンからの析出;
6.メチルt−ブチルエーテル(MTBE)によるアセトンからの析出;
7.ヘキサンまたはヘプタンによるアセトニトリル(ACN)からの析出;
8.水によるACNからの析出;
9.水によるMEKからの析出;
10.水によるACNからの析出(反復);
11.水によるDMEからの析出;
12.ヘキサン類によるDMEからの析出;
13.水によるTHFからの析出;
14.ヘキサン類によるTHEからの析出;
15.無水エタノール(EtOH)中1週間の平衡;
16.90%EtOH、20中1週間の平衡;
17.ジクロロメタン(CHCl)からの急速蒸発;
18.THFからの急速蒸発;
19.ACHからの急速蒸発;
20.DMEからの急速蒸発;
21.アセトンからの急速蒸発;
22.MEKからの急速蒸発;
23.酢酸エチル(EtOAc)からの急速蒸発;
24.メタノール(MeOH)からの急速冷却;
25.EtOHからの急速冷却;
26.2−プロパノール(2−PrOH)からの急速冷却;
27.トルエンからの急速冷却;
28.MeOHからの緩徐冷却;
29.EtOHからの緩徐冷却;
30.2−PrOHからの緩徐冷却;
31.トルエンからの緩徐冷却。
【0072】
全ての採取された固体は、全てのサンプルに関して示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)により、ならびに選択されたサンプルに関して粉末x線回折(PXRD)により、特性化された。
【0073】
APIの熱力学的に最も安定な結晶は、本明細書に記載されたようにエタノール−水からの結晶化により得られたものであった。DSCおよびTGAを用いて、実質的に無水である結晶が判定され、主要な形態は、融点が約170℃〜約176℃、より具体的には約173℃〜約175℃、さらにより具体的には、約174℃〜約175℃、特に約174℃を示した。第二の形態もまた、融点が、約171℃〜約173℃、より特定すれば約171℃〜約172℃、特に約172℃を有することがわかった。粉末回折パターンは、図2に示される。
【0074】
このように本発明は、治療用化合物2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール(API)およびその化合物の種々の化学形態を製造する方法を提供する。
【0075】
本発明は、特定の実施形態に関して開示されているが、本発明の他の実施形態および変形例が、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の当業者により考案され得ることは明白である。
【0076】
本出願に引用された全ての特許、特許出願、および他の刊行物は、参照としてその全体が援用される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図面の簡単な説明
【図1】図1A、図1B、図1Cは、それぞれ、本発明の一実施形態に従ってAPIを調製するための例示的方法の部分概要図を提供する。図1Aから1Cを通してまとめると、本発明に従ってAPIを調製するための例示的方法の完全な実施形態が記載される。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

の化合物およびその薬学的に許容できる塩、水和物、ならびに溶媒和物の製造方法であって:
(a)RおよびRの求核性等価物と、ホウ酸トリアルキルとを反応させて、アルキルボリン酸エステルを形成する工程;
(b)前記ボリン酸エステルを吸収剤で処理する工程;および
(c)前記化合物を形成するための有効な条件下、前記処理ボリン酸エステルとピコリン酸とを合わせる工程;
を含み、
式中、
およびRは独立して、アルキル、ヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、
〜Rは独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ニトロ、スルホ、チオ、カルバモイル、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリールからなる群から選択されるメンバーであり、
およびRは、それらが結合する環と一緒になって、置換されていてもよい芳香族環を形成する、
前記製造方法。
【請求項2】
が、置換または非置換アリールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、置換または非置換アリールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
およびRの両方が、置換または非置換フェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
およびRの両方が、アルキルおよびハロで置換されたフェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
およびRの両方が、3−クロロ−4−メチルフェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記RおよびRの求核性等価物が、3−クロロ−4−メチルフェニルマグネシウムブロミドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ホウ酸トリアルキルが、ホウ酸トリメチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ボリン酸エステルが、メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ピコリン酸が、3−ヒドロキシピコリン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記吸収剤が、活性炭である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ピコリン酸を吸収剤で処理する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記吸収剤が、活性炭である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールを形成するための有効な条件下、ピコリン酸とホウ酸トリメチルとを合わせる工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールが、結晶形態である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールの結晶が、実質的に無水である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記結晶が、エタノール−水混合物から調製される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記結晶が、約170℃〜約176℃の融点を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記結晶が、約173℃〜約175℃の融点を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記結晶が、約174℃〜約175℃の融点を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記結晶が、約174℃の融点を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記結晶が、約171℃〜約173℃の融点を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記結晶が、約171℃〜約172℃の融点を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記結晶が、約172℃の融点を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール、およびその薬学的に許容できる塩、水和物、ならびに溶媒和物の製造方法であって:
メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートを形成するための有効な条件下、3−クロロ−4−メチルフェニルマグネシウムブロミドとホウ酸トリメチルとを反応させる工程;
前記メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートを吸収剤で処理する工程;および
2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールを形成するための有効な条件下、前記メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートと3−ヒドロキシピコリン酸とを反応させる工程;
を含む、前記製造方法。
【請求項27】
前記処理ステップが、さらに、前記メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートにエタノールを加え、次いで前記エタノールと前記メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートとの混合物を加熱する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記吸収剤が、活性炭である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記混合物から前記炭をろ過する工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記3−ヒドロキシピコリン酸を吸収剤で処理する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記吸収剤が、活性炭である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記3−ヒドロキシピコリン酸と合わせる前に、前記エタノールと前記メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートとの混合物をろ過する工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールが、結晶形態である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールの結晶が、純粋な2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールの標品源を播種することにより形成される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記結晶が、エタノール−水溶液から形成される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールの結晶が、実質的に無水である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記結晶が、約170℃〜約176℃の融点を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記結晶が、約173℃〜約175℃の融点を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記結晶が、約174℃〜約175℃の融点を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記結晶が、約174℃の融点を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記結晶が、約171℃〜約173℃の融点を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記結晶が、約171℃〜約172℃の融点を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記結晶が、約172℃の融点を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール、およびその薬学的に許容できる塩、水和物、ならびに溶媒和物の製造方法であって:
メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートを形成するための有効な条件下、3−クロロ−4−メチルフェニルマグネシウムブロミドとホウ酸トリメチルとを反応させる工程;
加熱される混合物を形成するために、メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートをエタノールと第一の吸収剤とで処理する工程;
3−ヒドロキシピコリン酸を第二の吸収剤で処理する工程;
前記第二の吸収剤と前記3−ヒドロキシピコリン酸との混合物および前記第一の吸収剤と前記メチルビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートとの混合物をろ過する工程;および
2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールを形成するための有効な条件下、前記ろ過されたビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリネートと前記ろ過された3−ヒドロキシピコリン酸とを反応させる工程;
を含む、前記製造方法。
【請求項45】
前記第一および第二の吸収剤が、活性炭である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オールが、結晶形態である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記結晶が、実質的に無水である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記結晶が、エタノール−水溶液から形成される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記結晶が、約170℃〜約176℃の融点を有する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記結晶が、約173℃〜約175℃の融点を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記結晶が、約174℃〜約175℃の融点を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記結晶が、約174℃の融点を有する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記結晶が、約171℃〜約173℃の融点を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記結晶が、約171℃〜約172℃の融点を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記結晶が、約172℃の融点を有する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
実質的に無水結晶形態である、化合物2−({[ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリル]オキシ}カルボニル)ピリジン−3−オール。
【請求項57】
前記結晶が、約170℃〜約176℃の融点を有する、請求項56に記載の化合物。
【請求項58】
前記結晶が、約173℃〜約175℃の融点を有する、請求項57に記載の化合物。
【請求項59】
前記結晶が、約174℃〜約175℃の融点を有する、請求項58に記載の化合物。
【請求項60】
前記結晶が、約174℃の融点を有する、請求項59に記載の化合物。
【請求項61】
前記結晶が、約171℃〜約173℃の融点を有する、請求項57に記載の化合物。
【請求項62】
前記結晶が、約171℃〜約172℃の融点を有する、請求項61に記載の化合物。
【請求項63】
前記結晶が、約172℃の融点を有する、請求項62に記載の化合物。
【請求項64】
請求項56に記載の化合物の薬学的有効量を含む、医薬組成物。
【請求項65】
前記組成物が、密封容器に保存される、請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記容器が、遮光性である、請求項65に記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記容器が、アンプル、バッグおよびボトルから選択されるメンバーである、請求項66に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2009−522274(P2009−522274A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548706(P2008−548706)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/049367
【国際公開番号】WO2007/079119
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(505465841)アナコール ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】