説明

ピストンポンプ

【課題】 ピストンポンプの軸方向寸法をより短縮化する。
【解決手段】 吸入ポート14及び吐出ポート16が形成されたポンプハウジング10に組み付けられるシリンダ部材20と、シリンダ部材20内にポンプ室56を形成すると共に往復運動してポンプ室56の容積を増減するピストン36と、ポンプ室56の容積増加時にポンプ室56に液体を供給する供給室48をポンプハウジング10内に形成すると共にピストン36の往復運動に連動して往復運動することにより供給室48の容積を増減する摺動リング46と、ポンプハウジング10内に形成されて摺動リング46の往復運動により容積が増減して供給室48の容積増加時に供給室48に液体を供給すると共に供給室48の容積減少時に吸入ポート14から液体を吸入する吸入室54とを備える。更に吸入室54がシリンダ部材20の外周に環状に形成されていると共に吸入室54に吸入ポート14が連通接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を流動させるピストンポンプに関し、特に、吸入ポート及び吐出ポートが形成されたポンプハウジングに組み付けられるシリンダ部材と、シリンダ部材内にポンプ室を形成すると共に往復運動することによりポンプ室の容積を増減するピストンと、ポンプ室の容積増加時にポンプ室に液体を供給する供給室をポンプハウジング内に形成すると共にピストンの往復運動に連動して往復運動することにより供給室の容積を増減する摺動リングと、ポンプハウジング内に形成され摺動リングの往復運動により容積が増減して供給室の容積増加時に供給室に液体を供給すると共に供給室の容積減少時に吸入ポートから液体を吸入する吸入室とを備えたピストンポンプに関するものであり、例えば車両用アンチロックブレーキ装置の構成要素である還流型の液圧制御アキュチュエータにおける液圧ポンプとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
この種のピストンポンプは、下記特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたピストンポンプにおいては、吸入ポートがシリンダ部材と摺動リングとの間に連通接続されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3278982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のピストンポンプにおいては、摺動リングが吸入ポートの開口縁で損傷すると正常な機能が得られなくなるため、吸入ポートの開口縁による摺動リングの損傷を回避する必要がある。そのためには、摺動リングと吸入ポートの開口との軸方向の相対位置を、摺動リングが吸入ポートの開口位置まで摺動しないように設定する必要があり、ピストンポンプの軸方向寸法が大きいものとなる。車両用アンチロックブレーキ装置の構成要素である還流型の液圧制御アキュチュエータは、今日、小型化が要求されてるが、従来のピストンポンプは要求を満たす上で不利である。
【0005】
そこで、本発明は、ピストンポンプの軸方向寸法を従来のものよりも短縮可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載したように、吸入ポート及び吐出ポートが形成されたポンプハウジングに組み付けられるシリンダ部材と、シリンダ部材内にポンプ室を形成すると共に往復運動することによりポンプ室の容積を増減するピストンと、ポンプ室の容積増加時にポンプ室に液体を供給する供給室をポンプハウジング内に形成すると共にピストンの往復運動に連動して往復運動することにより供給室の容積を増減する摺動リングと、ポンプハウジング内に形成されて摺動リングの往復運動により容積が増減して供給室の容積増加時に供給室に液体を供給すると共に供給室の容積減少時に吸入ポートから液体を吸入する吸入室とを備えたピストンポンプにおいて、吸入室がシリンダ部材の外周に環状に形成されていると共に、吸入室に吸入ポートが連通接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述のように構成されているので、以下の効果を奏する。即ち、請求項1に記載のピストンポンプにおいては、吸入室がシリンダ部材の外周の環状に形成されていると共に、吸入室に吸入ポートが連通接続されているため、摺動リングがシリンダ部材に近接した位置まで摺動するようにしても、吸入ポートの開口縁による摺動リングの損傷が発生しない。従って、ピストンポンプの軸方向寸法を従来のものよりも短くすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図1及び図2を参照して説明する。図1はピストンが上死点に位置する状態を示し、図2は下死点に位置する状態を示す。図1及び図2において、車両用アンチロックブレーキ装置の還流型液圧制御アクチュエータのハウジングの一部であるポンプハウジング10には、段付シリンダ12と、この段付シリンダ12の軸方向に間隔をあけて設けられていて段付シリンダ12に開口する吸入ポート14及び吐出ポート16を有している。段付シリンダ12の左端開口を閉鎖するためのプラグ18は、ポンプハウジング10にカシメを施すことによってポンプハウジング10に液密に固定されている。
【0009】
段付シリンダ12内にてプラグ18の右側に位置するシリンダ部材20は、段付シリンダ12に対して圧入されることによってポンプハウジング10に液密に固定されている。シリンダ部材20には、右端が開放し且つ左端が閉じたシリンダ26と、このシリンダ26をプラグ18とシリンダ部材20との間の吐出室28に連通する段付貫通孔30が形成されている。段付貫通孔30の中間部は弁座30aに形成されており、この弁座30aに圧縮コイルスプリング32の付勢力で着座する球状の弁体34が段付貫通孔30の左方部内に配設されている。これら弁座30a、圧縮コイルスプリング32及び弁体34によって所謂吐出弁が構成されている。吐出室28は吐出ポート16と常時連通する。
【0010】
段付シリンダ12の右方部分に設置されたピストン36は、右方の第1部材38と左方の第2部材40とから構成されている。第1部材38の右端部は段付シリンダ12の右端部に摺動自在に嵌合されている。第1部材38の右端部の外周に形成された環状のシール溝に収容された環状のシール部材42は、ポンプハウジング10とピストン36の外周との間をシールする。第1部材38に形成された環状の摺動リング溝44には外周にて段付シリンダ12に液密に且つ摺動自在に係合された摺動リング46の内周部が収容されており、これによって摺動リング46の右側に供給室48が形成されている。
【0011】
第1部材38に形成された通路50は、摺動リング溝44の底部と供給室48を常時連通すると共に、供給室48と第2部材40に形成された貫通孔52の右端とを常時連通する。摺動リング溝44の軸方向寸法は摺動リング46の内周部の軸方向寸法よりも少し大きく、また摺動リング溝44の底面の直径は摺動リング46の内周の直径よりも小さい。これにより、図1に示すように摺動リング46の内周部の右端が摺動リング溝44の右側面に当接した状態では、摺動リング溝44の底面と摺動リング46の内周との間に形成される環状の通路と、摺動リング溝44の左側面と摺動リング46の左端との間に形成される環状の通路とを介して、シリンダ部材20の右端部の外周の環状の吸入室54とピストン36の通路50とが連通する。吸入室54は吸入ポート14と常時連通する。
【0012】
ピストン36の第1部材38の左端部と第2部材40はシリンダ部材20のシリンダ26に摺動自在に嵌合されており、これによってシリンダ26内にポンプ室56が形成されている。このポンプ室56内には、ピストン36を右方へ押動するための圧縮コイルスプリング58と、ピストン36の第2部材40に組付けられた球状の弁体60及びこの弁体60を貫通孔52の左端に隣接するように形成された弁座62に着座させるための圧縮コイルスプリング64が設置されている。弁体60、圧縮コイルスプリング64及び弁座62は、所謂吸入弁を構成する。
【0013】
ピストン36の右端面は電動機(図示されず)により駆動される偏心カム70と係合され、この偏心カム70により左方へ押動され、圧縮コイルスプリング58により右方へ押動される。ピストン36が上死点に位置する状態を示す図1の状態から、偏心カムの回転によりピストン36の右方向摺動が許容されることに応じてピストン36が圧縮コイルスプリング58により右方向へ押動される。即ち、ピストン36が下死点に向かって摺動する。ピストン36が図1の位置から右方へ押動されると、摺動リング溝44の左側面がポンプハウジング10との間の摺動抵抗により静止している摺動リング46の内周部の左端に接触して吸入室54と通路50との連通が遮断される。ピストン36が下死点に向かって引き続き押動される吸入行程においては、摺動リング46がピストン36と一体的に右方へ摺動することにより供給室48の容積が減少すると共に、ピストン36の摺動によりポンプ室56の容積が増加するため、供給室48内の液体が通路50と貫通孔52を通り且つ弁体60を弁座62から離間させてポンプ室56へと供給される。また、吸入室54の容積が増大するので、吸入ポート14から吸入室54へと液体が吸入される。
【0014】
図2に示すようにピストン36の摺動が下死点に到達した後、ピストン36が上死点に向かって摺動される吐出行程においては、ピストン36の摺動に応じてポンプ室56の容積が減少するため、ポンプ室56内のブレーキ液が昇圧されて弁体34を弁座30aから離間させて吐出室28へと流動される。また、ピストン36の摺動リング溝44の左側面がポンプハウジング10との間の摺動抵抗により静止している摺動リング46の内周部から離脱して摺動リング46の左端と摺動リング溝44の左側面との間に通路ができ、吸入室54と通路50とが再び連通する。そして、ピストン36が引き続き上死点に向かって摺動することに応じて摺動リング46がピストン36と一体的に摺動して供給室48の容積が増加するので、吸入室54内の液体が通路50を通って供給室48内に供給される。
【0015】
このようにピストン36が上死点から下死点に向かう吸入行程と下死点から上死点に向かう吐出行程とを繰り返すことにより液体が吸入ポート14から吐出ポート16へと流動される。
【0016】
以上の説明と図1及び図2から明らかなように、吸入室54がシリンダ部材20の外周に環状に形成されていると共に、吸入室54に吸入ポート14が連通接続されているため、摺動リング46がシリンダ部材20に近接した位置まで摺動するようにしても、吸入ポート14の開口縁による摺動リング46の損傷が発生しない。従って、ピストンポンプの軸方向寸法を従来のものよりも短くすることができるものであり、車両用アンチロックブレーキ制御装置の還流型アクチュエータを小型化する上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の構成とピストンが上死点に位置する状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態であって、ピストンが下死点に位置する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
10・・・ポンプハウジング
14・・・吸入ポート
16・・・吐出ポート
20・・・シリンダ部材
44・・・摺動リング
48・・・供給室
54・・・吸入室
56・・・ポンプ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入ポート及び吐出ポートが形成されたポンプハウジングに組み付けられるシリンダ部材と、該シリンダ部材内にポンプ室を形成すると共に往復運動することによりポンプ室の容積を増減するピストンと、前記ポンプ室の容積増加時に前記ポンプ室に液体を供給する供給室を前記ポンプハウジング内に形成すると共に前記ピストンの往復運動に連動して往復運動することにより前記供給室の容積を増減する摺動リングと、前記ポンプハウジング内に形成され前記摺動リングの往復運動により容積が増減して前記供給室の容積増加時に前記供給室に液体を供給すると共に前記供給室の容積減少時に前記吸入ポートから液体を吸入する吸入室とを備えたピストンポンプにおいて、前記吸入室が前記シリンダ部材の外周に環状に形成されていると共に、該吸入室に前記吸入ポートが連通接続されていることを特徴とするピストンポンプ。





【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−113505(P2007−113505A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306639(P2005−306639)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】