説明

ピラゾール誘導体の調製方法

【化1】


本発明は、式(I)〔式中、Wは、窒素又はCR1であり;R1、R2、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ、R7S(O)n、ニトロ、シアノ及びペンタフルオロチオから選択され;R3は、水素、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ、R7S(O)n、ニトロ、シアノ、ペンタフルオロチオ又はフェニル(ここで、該フェニルは、置換されていないか、又は、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ、R7S(O)n、ニトロ、シアノ及びペンタフルオロチオからなる群の同一であるか若しくは異なっている1〜5のメンバーでで置換されている)であり;R7は、C1-C6-アルキル又はC1-C6-ハロアルキルであり;及び、nは、0、1又は2である〕で表されるピラゾール誘導体を調製する方法に関し、ここで、該方法は、式(II)〔式中、W、R2、R3、R4及びR5は、式(I)で表されるピラゾール誘導体に関して定義されているとおりである〕で表されるヒドラジンを式(III)で表される化合物と反応させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【化1】

【0002】
〔式中、
Wは、窒素又はCR1であり;
R1、R2、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ、R7S(O)n、ニトロ、シアノ及びペンタフルオロチオから選択され;
R3は、水素、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ、R7S(O)n、ニトロ、シアノ、ペンタフルオロチオ又はフェニル(ここで、該フェニルは、置換されていないか、又は、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ、R7S(O)n、ニトロ、シアノ及びペンタフルオロチオからなる群の同一であるか若しくは異なっている1〜5のメンバーで置換されている)であり;
R7は、C1-C6-アルキル又はC1-C6-ハロアルキルであり;及び、
nは、0、1又は2である〕
で表されるピラゾール誘導体を調製するための新規方法に関し、ここで、該方法は、式(II)
【化2】

【0003】
〔式中、W、R2、R3、R4及びR5は、式(I)で表されるピラゾール誘導体に関して定義されているとおりである〕
で表されるヒドラジンを、式(III)
【化3】

【0004】
で表される化合物と反応させることを特徴とする。
【0005】
得られるピラゾール(I)は、農薬活性を有する5-アミノ-1-フェニル-3-シアノ-ピラゾール誘導体の製造における重要な中間体である。特に重要な1つの5-アミノ-1-フェニル-3-シアノ-ピラゾール誘導体は、市販されている殺虫剤「フィプロニル」である。
【背景技術】
【0006】
WO 98/39302には、とりわけ、式(I)で表される何種類かのピラゾールをそれぞれのヒドラジンから調製する一方法が記載されている。この文献の教示によれば、第一工程において、ヒドラジンをフマロニトリル(トランス-CN-CH=CH-CN)と反応させて、中間体2-アリールヒドラジノスクシノニトリルを得る。これらの2-アリールヒドラジノスクシノニトリルは、式(I)で表されるピラゾールを生成させるために、第二工程において、酸化して2-アリールヒドラゾノスクシノニトリルとした後、第三工程において、環化することができる。
【0007】
この反応順序には、幾つかの不利な点がある:
(a) この反応順序は3つの工程からなり、これらには、当該製品を工業的に製造するために可能な規模拡大をする場合に多額の投資を伴う;
(b) 第一工程の収率が低く、従って、全収率が低い(実施例によれば、その第一工程に関しては、僅かに45〜63パーセントである);
(c) 第二工程のための好ましい酸化剤が、農薬製品(例えば、フィプロニル)の登録要件を満たす程度まで反応生成物から除去するのが困難な遷移金属塩である。
【0008】
WO 99/54288は、ヒドラジンから開鎖3-アリールヒドラゾノプロピオニトリル類を調製することを目的としている。次いで、該開鎖3-アリールヒドラゾノプロピオニトリル類は、場合により、誘導体化することが可能であり、とりわけ、5-アミノピラゾール類に変換することが可能である。この変換では、3つのさらなる反応工程が必要である:
(a) HCNを添加して当該鎖にシアノ基を導入し、それにより、2-アリールヒドラジノスクシノニトリル化合物を生成させ;その後、
(b) 酸化してシアノ置換2-アリールヒドラゾノスクシノニトリルとし;及び、
(c) 環化して、当該ピラゾールを得る。
【0009】
式(I)で表されるピラゾールへと至るこの4工程の調製方法は、特にその低い収率に関して(例えば、HCNとの反応が約40%の収率でしか進行しないので)望ましくない。
【0010】
DE 3612939は、式(I)で表されるピラゾールとは異なってピラゾール環の3位にシアノ基を有していないピラゾール誘導体の2工程合成について教示している。この2工程合成は、第一工程において、ヒドラジンをCH2=CH-CNと反応させることを含み、及び、第二工程において、塩基の存在下において酸化及び環化させることを含んでいる。(a)どのようにして当該酸化工程を回避することができるか及び(b)どのようにしてピラゾール環の3位にシアノ基を導入することができるかについては、教示も示唆も成されていない。
【0011】
WO 04/005245は、ヒドラジンから4-スルフェニル化5-アミノピラゾールへとするのに必要とされる合成工程の数を減らすことを目的として、マレオニトリル及びフマロニトリルの誘導体を調製することを対象としている。さらに、実施例1においては、ジシアノアセチレンを用いて個々のヒドラジンから5-アミノ-3-シアノピラゾール誘導体を一工程で合成することも記載されている。この工程における収率は満足できるものであるが、反応物質ジシアノアセチレンの調製は一般に収率が低く、そして、極めて低い温度及び爆発に対する予防手段を必要とする(例えば、以下のものを参照されたい:「J. Org. Chem. 1945, 10, p. 149」、及び、「J. Org. Chem. 1957, 22, p. 1171」)。このことは、可能性のある規模拡大に関して、極めて望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO 98/39302
【特許文献2】WO 99/54288
【特許文献3】DE 3612939
【特許文献4】WO 04/005245
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J. Org. Chem. 1945, 10, p. 149
【非特許文献2】J. Org. Chem. 1957, 22, p. 1171
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、ピラゾール化合物(I)の新規で改善された調製方法を提供することであった。特に、合成工程の数が低減されたピラゾール化合物(I)の新規で改善された調製方法を提供することが目的であった。さらに、全収率が高められたピラゾール化合物(I)の新規で改善された調製方法を提供することも目的であった。容易に入手可能な出発物質を用いるピラゾール化合物(I)の新規で改善された調製方法を提供することも目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、冒頭において定義されている本発明の調製方法が見いだされた。驚くべきことに、ヒドラジン誘導体(II)を化合物(III)と反応させることによって、所望のピラゾール誘導体(I)が一工程の方法で良好な全収率で得られた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
化合物(III)は、シス-異性体(クロロマレオニトリル)の形態で使用することができるか、又は、トランス-異性体(クロロフマロニトリル)の形態で使用することができるか、又は、それらの混合物の形態で使用することができる。本発明の方法に関しては、クロロマレオニトリルとクロロフマロニトリルの混合物を使用するのが好ましい。
【0017】
置換基は、以下の意味を有する。
【0018】
用語「ハロゲン」は、何れの場合にも、フッ素、臭素、塩素又はヨウ素を意味し、特に、フッ素、塩素又は臭素を意味し、好ましくは、塩素又はフッ素を意味する。
【0019】
用語「C1-C6-アルキル」は、本明細書中で使用される場合、1〜6個の炭素原子(特に、1〜4個の炭素原子)を有する直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル及びそれらの異性体を意味する。「C1-C4-アルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル又は1,1-ジメチルエチルを意味する。
【0020】
用語「C1-C6-ハロアルキル」は、本明細書中で使用される場合、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和アルキル基(上記のとおり)において当該基内の水素原子の一部又は全部が上記ハロゲン原子で置き換えられていてもよいものを意味し、例えば、C1-C4-ハロアルキル、例えば、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル及びペンタフルオロエチルなどを意味する。
【0021】
用語「C1-C6-アルコキシ」は、本明細書中で使用される場合、酸素原子を介して結合している1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和アルキル基(上記のとおり)を意味する。その例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、OCH2-C2H5、OCH(CH3)2、n-ブトキシ、OCH(CH3)-C2H5、OCH2-CH(CH3)2、OC(CH3)3、n-ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチル-プロポキシ、1-エチルプロポキシ、n-ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ及び1-エチル-2-メチルプロポキシなどのC1-C6-アルコキシを挙げることができる。
【0022】
用語「C1-C6-ハロアルコキシ」は、本明細書中で使用される場合、水素原子がフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素で部分的に又は完全に置換されている上記C1-C6-アルコキシ基を意味し、即ち、例えば、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2-ブロモエトキシ、2-ヨードエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2-フルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、2,2-ジクロロ-2-フルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、2-フルオロプロポキシ、3-フルオロプロポキシ、2,2-ジフルオロプロポキシ、2,3-ジフルオロプロポキシ、2-クロロプロポキシ、3-クロロプロポキシ、2,3-ジクロロプロポキシ、2-ブロモプロポキシ、3-ブロモプロポキシ、3,3,3-トリフルオロプロポキシ、3,3,3-トリクロロプロポキシ、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ、ヘプタフルオロプロポキシ、1-(フルオロメチル)-2-フルオロエトキシ、1-(クロロメチル)-2-クロロエトキシ、1-(ブロモメチル)-2-ブロモエトキシ、4-フルオロブトキシ、4-クロロブトキシ、4-ブロモブトキシ、ノナフルオロブトキシ、5-フルオロ-1-ペントキシ、5-クロロ-1-ペントキシ、5-ブロモ-1-ペントキシ、5-ヨード-1-ペントキシ、5,5,5-トリクロロ-1-ペントキシ、ウンデカフルオロペントキシ、6-フルオロ-1-ヘキソキシ、6-クロロ-1-ヘキソキシ、6-ブロモ-1-ヘキソキシ、6-ヨード-1-ヘキソキシ、6,6,6-トリクロロ-1-ヘキソキシ又はドデカフルオロヘキソキシなどのC1-C6-ハロアルコキシ、特に、クロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ又は2,2,2-トリフルオロエトキシを意味する。
【0023】
本発明の方法に関して、式(I)及び式(II)で表される化合物の置換基は、好ましくは、以下の意味を有する:
Wは、窒素又はCR1であり、好ましくは、CR1である。
【0024】
R1及びR5は、好ましくは、水素、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキルから選択され、さらに好ましくは、ハロゲン及びC1-C4-ハロアルキルから選択され、さらに一層好ましくは、塩素、フッ素及びトリフルオロメチルから選択され、最も好ましくは、塩素から選択される。
【0025】
R2及びR4は、好ましくは、水素である。
【0026】
R3は、好ましくは、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ又はペンタフルオロチオであり、さらに好ましくは、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル又はペンタフルオロチオであり、さらに一層好ましくは、C1-C4-ハロアルキルであり、最も好ましくは、トリフルオロメチルである。
【0027】
さらに好ましい置換基は、以下のとおりである:
Wは、窒素又はCR1であり;
R1及びR5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-C4-アルキル及びC1-C4-ハロアルキルから選択され;
R2及びR4は、水素であり;及び、
R3は、ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル又はペンタフルオロチオである。
【0028】
最も好ましくは、式(I)及び式(II)で表される化合物の置換基は、以下の意味を有する:
Wは、C-Clであり;
R1及びR5は、ハロゲン、好ましくは、塩素であり;
R2及びR4は、水素であり;及び、
R3は、C1-C4-ハロアルキル、好ましくは、トリフルオロメチルである。
【0029】
特に好ましい実施形態において、化合物(III)を(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-ヒドラジンと反応させることによる、5-アミノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリルの調製方法が提供される。
【0030】
該反応は、好ましくは、無機塩基又は有機塩基の存在下で実施する。
【0031】
適切な無機塩基は、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物、例えば、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化物、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム及び水素化カルシウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム及び炭酸カルシウム、並びに、さらに、アルカリ金属の重炭酸塩、例えば、重炭酸ナトリウムである。好ましい無機塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドである。さらに好ましい実施形態では、該無機塩基は、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド又はカリウムエトキシドから選択される。最も好ましくは、ナトリウムメトキシドを使用する。
【0032】
該塩基が無機塩基である場合、好ましくは、アルコールを溶媒として使用する。
【0033】
該塩基は、ルイス塩基、例えば、トリ-n-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド又はトリエチルホスフィトなどであることもでき、好ましくは、トリフェニルホスフィンオキシドであることができる。
【0034】
好ましくは、該塩基は、有機塩基である。
【0035】
該有機塩は、有利には、アミン塩基(即ち、塩基性の部位が窒素原子である塩基)である。
【0036】
好ましくは、該アミン塩基は、第二級又は第三級のアルキルアミン、アルケニルアミン若しくはアルキニルアミン又はアリールアミン又はヘテロ環式芳香族アミンである。さらに好ましくは、該アミン塩基は、第三級のアルキルアミン、アルケニルアミン若しくはアルキニルアミン又はアリールアミン又はヘテロ環式芳香族アミンである。
【0037】
本明細書中における「アルキルアミン」は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の同一であり得るか又は異なり得る1、2又は3のアルキル基を有している窒素原子として定義される。
【0038】
本明細書中における「アルケニルアミン」は、2〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の同一であり得るか又は異なり得る1、2又は3のアルケニル基を有している窒素原子として定義される。
【0039】
本明細書中における「アルキニルアミン」は、2〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の同一であり得るか又は異なり得る1、2又は3のアルキニル基を有している窒素原子として定義される。
【0040】
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基は、1〜10個の炭素原子有する分枝鎖又は非分枝鎖の飽和炭化水素基であり、例えば、及び、好ましくは、C1-C6-アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル及び1-エチル-2-メチルプロピルである。
【0041】
2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基は、2〜10個の炭素原子を有し、いずれかの位置に二重結合を有している直鎖又は分枝鎖の不飽和炭化水素基であり、例えば、及び、好ましくは、C2-C6-アルケニル、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチル-エテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル;1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル及び1-エチル-2-メチル-2-プロペニルである。
【0042】
2〜10個の炭素原子を有するアルキニル基は、2〜10個の炭素原子を有し、いずれかの位置に三重結合を有している直鎖又は分枝鎖の不飽和炭化水素基であり、例えば、及び、好ましくは、C2-C6-アルキニル、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル及び5-ヘキシニルである。
【0043】
上記アルキル基又はアルケニル基は、それらが結合している窒素原子と一緒に、当該窒素原子に加えて酸素、窒素又は硫黄から選択される(好ましくは、窒素から選択される)1〜3個のさらなるヘテロ原子を含み得る不飽和又は部分的不飽和の環式又は二環式の3〜10員の環系を形成することができ、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7−エン)又はDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5−エン)を形成することができ、最も好ましくは、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7−エン)及びDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5−エン)などの二環式環系を形成することができる。
【0044】
環式又は二環式の環系を包含するこれらのアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ及びジ(C1-C6-アルキル)アミンから選択される1〜5の基でさらに置換され得るか、又は、フェニル、ピリジニル、1-ナフチル若しくは2-ナフチル(ここで、該アリール基は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ又はジ(C1-C6-アルキル)アミンから選択される1〜3の基で置換され得る)で置換され得る。
【0045】
「アリールアミン」は、少なくとも1のアリール基で置換されている窒素原子、特に、フェニル基、ビフェニル基、ピリジニル基、1-ナフチル基又は2-ナフチル基(ここで、これらは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ及びジ(C1-C6-アルキル)アミンから選択される1〜3の基でさらに置換され得る)で置換されている窒素原子を意味する。
【0046】
ヘテロ環式芳香族アミンは、当該アミン塩基窒素原子に加えて酸素、窒素、硫黄から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み得る5〜10員の単環式及び二環式の芳香族環系(ここで、該環系には、少なくとも1個の炭素原子が含まれていなければならない)であり、例えば、以下のものである:ピロール、イミダゾール、ピラゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,4-トリアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,3,4-テトラゾール、インドール、インダゾール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、カルバゾール、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-ピコリン、3-ピコリン、4-ピコリン、5-エチル-2-メチルピリジン、2-エチルピリジン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,5-ルチジン、2,6-ルチジン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、2,3,5-コリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,4,5-テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、1,5-ナフチリジン、1,6-ナフチリジン、1,7-ナフチリジン、1,8-ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、又は、プテリジン。
【0047】
該ヘテロ環式芳香族アミン塩基は、好ましくは、置換されていないが、しかしながら、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ及びジ(C1-C6-アルキル)アミンから選択される1〜3の基で置換されていてもよいか、又は、フェニル、ビフェニル、ピリジニル、1-ナフチル若しくは2-ナフチル(ここで、該アリール基は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ又はジ(C1-C6-アルキル)アミンから選択される1〜3の基で置換され得る)で置換されていてもよく、好ましくは、C1-C3-アルキルで置換されていてもよい。
【0048】
好ましいヘテロ環式芳香族アミン塩基は、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-ピコリン、3-ピコリン、4-ピコリン、5-エチル-2-メチルピリジン、2-エチルピリジン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,5-ルチジン、2,6-ルチジン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、2,3,5-コリジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、1,3,5-トリアジン、キノリン、イソキノリン、N-メチルイミダゾール及びN-メチルピラゾールである。
【0049】
さらに好ましいヘテロ環式芳香族アミン塩基は、2-ピコリン、3-ピコリン、4-ピコリン、5-エチル-2-メチルピリジン、2-エチルピリジン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,5-ルチジン、2,6-ルチジン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン及び2,3,5-コリジンである。最も好ましいのは、2,6-ルチジンと2,4,6-コリジンから選択される塩基である。
【0050】
好ましくは、上記アミン塩基は、第二級アミン又は第三級アミン(これは、ヘテロ環式芳香族アミンを包含する)から選択され、最も好ましくは、第三級アミン(これは、ヘテロ環式芳香族アミンを包含する)から選択される。さらにまた、好ましくは、該塩基は、当該窒素原子が置換基を有していないか又はメチル若しくはエチルから選択されるただ1つの置換基を有している第三級アミン塩基である。
【0051】
好ましい第三級アミン塩基は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルメチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7−エン)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5−エン)、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン又はN-エチルモルホリンである。
【0052】
さらに一層好ましい第三級アミン塩基は、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルメチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7−エン)又はDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5−エン)である。
【0053】
最も好ましい第三級アミン塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7−エン)又はDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5−エン)である。
【0054】
同様に、好ましくは、上記塩基は、立体障害性塩基である。
【0055】
立体障害性塩基は、それらの塩基性の部位のうちの1つに直接結合した少なくとも1個の第二級炭素原子若しくは第三級炭素原子若しくは第四級炭素原子を有していると定義されるか、又は、塩基性の部位が二重結合の一部分である化合物として定義される。好ましくは、該立体障害性塩基は、塩基性の部位が窒素原子である立体障害性アミン塩基である。最も好ましくは、該立体障害性塩基は、第三級アミンから選択される。
【0056】
さらにまた、極めて好ましい実施形態では、該塩基性窒素原子は、芳香族6電子π系又は芳香族10電子π系の中に組み込まれており、その結果、その窒素原子の塩基性は比較的弱い。
【0057】
最も好ましいのは、上記ヘテロ環式芳香族アミンから選択される塩基である。
【0058】
上記で挙げた塩基の混合物も使用することが可能である。
【0059】
一般に、式(II)で表される化合物:塩基のモル比は、約1:0.01〜約1:10である。好ましくは、化合物(II)に対して0.5〜7モル当量の塩基を使用し、さらに好ましくは、0.75〜5モル当量の塩基を使用し、最も好ましくは、1.0〜2当量の塩基を使用する。該塩基は、溶媒として使用することも可能である。
【0060】
当該反応は、1:0.1〜1:10の式(II)で表されるヒドラジン/式(III)で表される化合物のモル比で実施することができる。好ましくは、0.5〜5モル当量の化合物(III)を使用する。最も好ましくは、1〜2モル当量の化合物(III)を使用する。
【0061】
式(II)で表される化合物は、例えば、WO 08/113660及びWO 08/113661に記載されているようにして、並びに、それらの中で引用されている参考文献に従って、調製することができる。化合物(III)は、文献に記載されているようにして、例えば、US 2,443,494に記載されているようにして、調製することができる。
【0062】
該反応は、一般に、溶媒中で実施する。適切な溶媒は、好ましくは、以下のものから選択される:
・ 水;
・ アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール及びtert-ブタノール、好ましくは、メタノール及びエタノール、最も好ましくは、メタノール;
・ 脂肪族、脂環式又は芳香族の場合によりハロゲン化されていてもよい炭化水素、例えば、芳香族有機炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、トリフルオロメチルベンゼン、ベンゼン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びエチルベンゼン、又は、脂肪族若しくは脂環式の場合によりハロゲン化されていてもよい炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、四塩化炭素、好ましくは、トルエン及びヘキサン、最も好ましくは、ヘキサン;
・ エーテル、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル又はエチレングリコールジエチルエーテル;好ましくは、テトラヒドロフラン及びtert-ブチルメチルエーテル、最も好ましくは、THF;
・ ケトン、例えば、アセトン又はブタノン、好ましくは、アセトン;
・ ニトリル、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル又はベンゾニトリル;好ましくは、アセトニトリル;
・ アミド、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、N-メチルホルムアニリド、N-メチルホルムアミド、N-メチルピロリドン又はヘキサメチルリン酸トリアミド;好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドン、最も好ましくは、N-メチルピロリドン;
・ スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド;
又は、上記のものの混合物。
【0063】
好ましい溶媒は、アルコールから選択され、最も好ましくは、メタノールである。
【0064】
一般に、当該反応物質のモル濃度は、約0.01〜約10mol/Lである。好ましくは、0.1〜5mol/Lの濃度を使用し、さらに好ましくは、0.2〜2mol/Lの濃度を使用し、最も好ましくは、0.5〜0.9mol/Lの濃度を使用する。
【0065】
当該反応は、場合により、アルゴン雰囲気又は窒素雰囲気などの不活性ガス雰囲気下で実施することができる。
【0066】
上記塩基は、少量ずつ添加するのが有利である。
【0067】
一般に、対応するアリールヒドラジンと塩基のプレミックス溶液に化合物(III)を添加するのが有利である。好ましくは、対応する出発物質は、当該反応混合物に添加する前に、それぞれ、反応溶媒中に予め溶解させるか又は懸濁させる。
【0068】
反応温度は、一般に、約-20℃〜65℃であり、好ましくは、0℃〜40℃であり、最も好ましくは、10℃〜25℃である。
【0069】
反応時間は、反応温度、調製方法中の温度制御並びに種々の試薬及び溶媒に依存する。当業者は、所望される収量及び純度を達成するために、適切な反応時間をHPLC、TLC又はGCによって決定することができる。典型的には、該反応時間は、約2〜24時間であり、好ましくは、12〜16時間である。
【0070】
当該反応が完結した後、慣習的な方法、例えば、反応混合物を水で希釈し、有機溶媒(例えば、酢酸エチル、tert-ブチルメチルエーテル又はジクロロメタン)を用いて式(I)で表される化合物を抽出し、その抽出物を例えば希酸(例えば、10%クエン酸)で洗浄し、その抽出物を濃縮し、式(I)で表される化合物を結晶化させることなど、を用いることにより、5-アミノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリルを単離することができる。式(I)で表される単離された化合物は、必要に応じて、クロマトグラフィーや再結晶などの技術によって精製することができる。
【実施例】
【0071】
HPLCは、J'Sphere ODS-H80, 4m, 4.6×250mm(YMC)カラムを備えた Hewlett Packard HP 1200, Chemstation で実施した:溶離剤A:90重量%の水+10重量%のアセトニトリル、溶離剤B:10重量%の水+90重量%のアセトニトリル、流量:0.85mL/分、検出:235nm。
【表1】

【0072】
以下で与えられている収率は、純度が95%を超える単離された生成物(モル%)である。
【0073】
実施例1: 5-アミノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル
(代替的な命名:5-アミノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-3-シアノ-ピラゾール)
50mL容丸底フラスコの中に、(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-ヒドラジン(1.2g, 4.84mmol)、2,6-ルチジン(0.57g, 5.32mmol, 1.1当量)及びメタノール(10mL)を入れた。クロロマレオニトリルとクロロフマロニトリルの混合物(0.82g, 7.29mmol)を、20-25℃で、ゆっくりと添加した。その温度で、約16時間、撹拌を続けた。次いで、その溶液を、50mbarの圧力下で濃縮した。その残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ, ヘキサン/EtOAc 100:0 → 70:30)で精製して、当該生成物をオフホワイトの固体(1.1g, 3.43mmol, 71%)として得た。
【0074】
融点:117-118℃;
1H-NMR(360MHz, CDCl3):δ[ppm]=7.78(d, 2H, J=0.4Hz);6.04(s, 1H);3.83(bs, 2H);
13C-NMR(125MHz, DMSO-d6):δ[ppm]=150.0;136.0;135.9;132.7(q, J=34Hz);126.43;126.42;122.4(q, J=273Hz);114.6;90.8。
【0075】
比較例
本発明の調製方法の有利点を実証するために、WO 98/39302の実施例1/2、3及び5に記載されている下記反応の収率を求めた:
【化4】

【0076】
上記ピラゾールの全収率は、11%であった。
【0077】
かくして、本発明の調製方法ではWO 98/39302に記載されている調製方法と比較して著しく高い収率が得られるということが実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、
Wは、窒素又はCR1であり;
R1、R2、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ、R7S(O)n、ニトロ、シアノ及びペンタフルオロチオから選択され;
R3は、水素、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ、R7S(O)n、ニトロ、シアノ、ペンタフルオロチオ又はフェニルであり、ここで、該フェニルは、置換されていないか、又は、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-アルコキシ、C1-C6-ハロアルコキシ、R7S(O)n、ニトロ、シアノ及びペンタフルオロチオからなる群の同一であるか若しくは異なっている1〜5のメンバーで置換されており;
R7は、C1-C6-アルキル又はC1-C6-ハロアルキルであり;及び、
nは、0、1又は2である〕
で表されるピラゾール誘導体を調製する方法であって、式(II)
【化2】

〔式中、W、R2、R3、R4及びR5は、式(I)で表されるピラゾール誘導体に関して定義されているとおりである〕
で表されるヒドラジンを、式(III)
【化3】

で表される化合物と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
Wが、CR1であり;
R1及びR5が、ぞれぞれ独立して、ハロゲンから選択され;
R2及びR4が、水素であり;及び、
R3が、C1-C4-ハロアルキルである;
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Wが、CR1であり;
R1及びR5が、クロロであり;
R2及びR4が、水素であり;及び、
R3が、トリフルオロメチルである;
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が無機塩基又は有機塩基の存在下で実施される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が有機アミン塩基の存在下で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が立体障害性有機アミン塩基の存在下で実施される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が第三級有機アミン塩基又はヘテロ芳香族有機アミン塩基の存在下で実施される、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基が2,6-ルチジン又は2,4,6-コリジンである、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
式(II)で表されるヒドラジンに対して0.01〜10モル当量の前記有機塩基が使用される、請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が-20℃〜65℃の温度で溶媒中で実施される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−520338(P2012−520338A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500190(P2012−500190)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053146
【国際公開番号】WO2010/105969
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】