説明

ピリジン化合物

【課題】優れた発光強度及び溶解性を有するピリジン化合物を提供すること。
【解決手段】下記式(I):
【化1】


〔式中、A、AおよびAは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
で表される繰り返し単位が3個以上連続して結合している構造を有する化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリジン環が複数結合したピリジン化合物は、一般的に、電気的特性、光学的特性の点で優れている。従ってこのようなピリジン化合物は、導電材料、光電変換材料、発光材料、非線形光学材料、電池用材料、電子部品材料、自動車用材料などの先端機能材料として期待されている。
【0003】
このようなピリジン化合物としては、ジブロモピリジン類をニッケル触媒存在下、重縮合して得られるポリ(ピリジン−2,5−ジイル)がある(非特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Material Research Society Symposium Proceedings 665, (2001) 169
【非特許文献2】Chemistry Letters 30, (2001) 502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溶解性と発光強度の点で、発光材料として使用できるピリジン化合物は見出されていなかった。
そこで、本発明の目的は、溶解性と発光強度の点で、発光材料として使用できるピリジン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、優れた発光強度及び溶解性を有する、発光材料として使用できる化合物等を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[10]のとおりである。
[1]下記式(I):
【化1】

〔式中、A、AおよびAは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
で表される繰り返し単位が3個以上連続して結合している構造を有する化合物。
[2]A、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、および置換されていてもよい炭化水素アミノ基からなる群より選ばれる置換基である、上記[1]の化合物。
[3]前記化合物が、下記式(II):
【化2】

〔式中、Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、AbrおよびAcrは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
ap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
aq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
ar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
で表される構造を有する化合物である、上記[1]の化合物。
[4]下記式(III):
【化3】

〔式中、A、AおよびAは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
XおよびMは、重合に関与し得る基を表す。XおよびMは、同じであっても異なっていてもよい。〕
で表される化合物を重合させて、
下記式(I):
【化4】

〔式中、A、AおよびAは、前記式(III)と同じである。〕
で表される繰り返し単位が3個以上連続して結合している構造を有する化合物を得ることを含む、式(I)で表される繰り返し単位が3個以上連続して結合している構造を有する化合物の製造方法。
[5]下記式(IIIa):
【化5】

〔式中、A、AおよびAは、前記と同じである。
X’およびM’は、互いに異なり、X’は、ハロゲン原子、ニトロ基または−SOQを表し(ここで、Qは置換されていてもよい炭化水素基を表す。)、M’は、水素原子、ハロゲン原子、−B(OQ、−Si(Q、−Sn(Qまたは−Z(Zを表す(ここで、Qは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を表し、2個のQは同じであっても異なっていてもよく、2個のQは一緒になって環を形成していてもよい。Qは置換されていてもよい炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Qは置換されていてもよい炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Zは金属原子または金属イオンを表し、Zはカウンターイオンを表し、mは0以上の整数である。)。〕
で表される化合物を重合させて、
下記式(II):
【化6】

〔式中、Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、AbrおよびAcrは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
ap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
aq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
ar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
で表される構造を有する化合物を得ることを含む、式(II)で表される構造を有する化合物の製造方法である、上記[4]の製造方法。
[6](a)上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物と、(b)正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料からなる群より選ばれる少なくとも1つの材料とを含む組成物。
[7]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物と溶媒とを含む液状組成物。
[8]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物を含む薄膜。
[9](a)陽極及び陰極からなる電極と、(b)該電極間に設けられた、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物を含む有機層とを備える素子。
[10]上記[9]の素子を備える表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のピリジン化合物は、優れた発光強度と溶解性を有している。よって、本発明のピリジン化合物は、電界発光材料としての用途に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、PMEEOPy(実施例1)及びPMEPPy(比較例1)の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のピリジン化合物は、
下記式(I):
【化7】

〔式中、A、AおよびAは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
で表される繰り返し単位が3個以上連続して結合している構造を有する化合物である。
【0010】
上記一般式(1)において、A、AおよびAは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい1価の複素環基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいオキシカルボニル基、置換されていてもよいスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基、置換されていてもよいシリル基、イミン残基、酸イミド基、ハロゲン原子、およびシアノ基からなる群から選ばれる置換基が挙げられる。A、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、置換されていてもよいアミノ基であり、AおよびAが一緒になって環を形成してもよい。ここで、A、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、および置換されていてもよい炭化水素アミノ基からなる群より選ばれる置換基であることが好ましい(各基の詳細は後述する。)。
【0011】
ここで、「置換されていてもよい」とは、換言すると「置換基を有してもよい」との意味である。例えば、「置換基を有していてもよい炭化水素基」とは、炭化水素基中の水素原子の一部または全部が、他の置換基で置換されていてもよい炭化水素基のことをいい、具体的には、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基や、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよいオキシカルボニル基、置換されていてもよいスルホニル基等の後述する基などで置換されていてもよい炭化水素基のことをいう。
【0012】
「置換されていてもよい炭化水素基」は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれでもよく、その炭素数が、通常、1〜60である。置換されていてもよい炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基などの炭素数1〜60のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基などの炭素数3〜60のシクロアルキル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基などの炭素数2〜60のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基などの炭素数6〜60のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェネチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基などの炭素数7〜60のアラルキル基が挙げられる。置換されていてもよい炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8である。
【0013】
「置換されていてもよい1価の複素環基」とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいうが、置換されていてもよい1価の芳香族複素環基が好ましい。複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する原子が炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。1価の複素環基の炭素数は、通常、4〜60であり、4〜20が好ましい。1価の複素環基としては、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基(ここで、「C〜C12アルキル」は、アルキル部分の炭素数が1〜12であることを意味する。以下、同様である。)、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基などが挙げられ、中でも、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基およびC〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0014】
「置換されていてもよいカルボニル基」とは、ホルミル基(−CHO)、あるいはカルボニル基(−CO−)に前記「置換されていてもよい炭化水素基」または「置換されていてもよい1価の複素環基」1個が結合した置換カルボニル基をいう。置換カルボニル基の炭素数は、通常、2〜60である。置換カルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が挙げられる。置換カルボニル基の炭素数は、好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜12であり、さらに好ましくは2〜8である。
【0015】
「置換されていてもよいヒドロキシ基」とは、ヒドロキシ基(−OH)における水素原子が、前記「置換されていてもよい炭化水素基」、「置換されていてもよい1価の複素環基」または「置換されていてもよいカルボニル基」1個で置換されていてもよい(即ち、置換オキシ基であってもよい)という意味である。したがって、置換オキシ基としては、「置換されていてもよい炭化水素オキシ基」、「置換されていてもよい1価の複素環オキシ基」、「置換されていてもよいカルボニルオキシ基」が挙げられる。置換オキシ基の炭素数は、通常、1〜60であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8である。なお、置換されていてもよいヒドロキシ基は、その繰り返し単位からなる基であってもよい。
【0016】
置換されていてもよいヒドロキシ基の特定の例は、「置換されていてもよい炭化水素オキシ基」または「置換されていてもよい1価の複素環オキシ基」である。このような基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基が挙げられる。
【0017】
置換されていてもよいヒドロキシ基の別の特定の例は、「置換されていてもよいカルボニルオキシ基」である。「置換されていてもよいカルボニルオキシ基」とは、ホルミルオキシ基(−O−CHO)、あるいはカルボニルオキシ基(−CO−O−)のカルボニル基に前記「置換されていてもよい炭化水素基」または「置換されていてもよい1価の複素環基」1個が結合した置換カルボニルオキシ基である。置換カルボニルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基が挙げられる。
【0018】
「置換されていてもよいメルカプト基」とは、メルカプト基(−SH)、あるいはチオ基(−S−)に前記「置換されていてもよい炭化水素基」、「置換されていてもよい1価の複素環基」または「置換されていてもよいカルボニル基」1個が結合した置換メルカプト基である。したがって、置換メルカプト基としては、「置換されていてもよい炭化水素メルカプト基」、「置換されていてもよい1価の複素環メルカプト基」、「置換されていてもよいカルボニルメルカプト基」が挙げられる。置換メルカプト基の炭素数は、通常、1〜60であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8である。なお、置換されていてもよいメルカプト基は、その繰り返し単位からなる基であってもよい。
【0019】
置換されていてもよいメルカプト基の特定の例は、「置換されていてもよい炭化水素メルカプト基」または「置換されていてもよい1価の複素環メルカプト基」である。このようなメルカプト基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ドデシルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基が挙げられる。
【0020】
「置換されていてもよいアミノ基」とは、アミノ基(−NH)、あるいはアミノ基における水素原子1個または2個が前記「置換されていてもよい炭化水素基」、「置換されていてもよい1価の複素環基」または「置換されていてもよいカルボニル基」1個または2個で置換された置換アミノ基である。したがって、置換アミノ基としては、少なくとも1個の置換されていてもよい炭化水素基で置換された「置換されていてもよい炭化水素アミノ基」、少なくとも1個の置換されていてもよい1価の複素環基で置換された「置換されていてもよい1価の複素環アミノ基」、少なくとも1個の置換されていてもよいカルボニル基で置換された「置換されていてもよいアミド基」が挙げられる。置換アミノ基の炭素数は、通常、1〜60であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8である。なお、置換されていてもよいアミノ基は、その繰り返し単位からなる基であってもよい。
【0021】
置換されていてもよいアミノ基の特定の例は、「置換されていてもよい炭化水素アミノ基」または「置換されていてもよい1価の複素環アミノ基」である。このようなアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニルアミノ基(ここで、「C〜C12アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数が1〜12であることを意味する。以下、同様である。)、ジ(C〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基フェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0022】
置換されていてもよいアミノ基の別の特定の例は、「置換されていてもよいアミド基」である。置換されていてもよいアミド基は、ホルムアミド基(−NH−CHO)、あるいはカルボニルアミノ基(−CO−NH−)のカルボニル基に前記「炭化水素基」または「1価の複素環基」1個が結合した置換アミド基である。置換アミド基としては、例えば、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基が挙げられる。
【0023】
置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、または置換されていてもよい炭化水素アミノ基が、その繰り返し単位からなる基である場合、このような基は、−D(RE)で表される基であってもよい。ここで、DおよびEは、それぞれ独立に、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、または置換されていてもよいアミノ基(−NH−または−NR−)を表す。DおよびEは、同じであっても異なっていてもよいが、好ましくは同じである。RおよびR、ならびに存在する場合にはRは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基または1価の複素環基を表す。nは、通常、1〜20の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。
【0024】
「置換されていてもよいオキシカルボニル基」とは、カルボキシル基(−COOH)、あるいはオキシカルボニル基(−O−CO−)のオキシ基に前記「炭化水素基」または「1価の複素環基」1個が結合した置換オキシカルボニル基である。したがって、置換オキシカルボニル基としては、「置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基」、「置換されていてもよい1価の複素環オキシカルボニル基」が挙げられる。置換オキシカルボニル基の炭素数は、通常、2〜60である。置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。置換オキシカルボニル基の炭素数は、好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜12であり、さらに好ましくは2〜8である。
【0025】
「置換されていてもよいスルホニル基」とは、−SOH、あるいはスルホニル基(−SO−)に前記「炭化水素基」または「1価の複素環基」1個が結合した置換スルホニル基である。したがって、置換スルホニル基としては、「置換されていてもよい炭化水素スルホニル基」、「置換されていてもよい1価の複素環スルホニル基」が挙げられる。置換スルホニル基の炭素数は、通常、1〜60である。置換スルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基が挙げられる。置換スルホニル基の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8である。
【0026】
「置換されていてもよいアミノカルボニル基」とは、カルバモイル基(−CO−NH)、あるいはアミノカルボニル基(−NH−CO−)のアミノ基に前記「炭化水素基」または「1価の複素環基」1個が結合した置換アミノカルボニル基である。したがって、置換アミノカルボニル基としては、「置換されていてもよい炭化水素アミノカルボニル基」、「置換されていてもよい1価の複素環アミノカルボニル基」が挙げられる。置換アミノカルボニル基の炭素数は、通常、2〜60である。置換アミノカルボニル基としては、例えば、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基が挙げられる。置換アミノカルボニル基の炭素数は、好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜12であり、さらに好ましくは2〜8である。
【0027】
「置換されていてもよいシリル基」とは、シリル基(−SiH)あるいはシリル基が前記「置換されていてもよい炭化水素基」または「置換されていてもよい1価の複素環基」1個、2個または3個で置換された置換シリル基である。置換シリル基の炭素数は、通常、1〜60である。置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジ(tert−ブチル)メチルシリルが挙げられる。置換シリル基の炭素数は、好ましくは3〜48であり、より好ましくは3〜24であり、さらに好ましくは3〜18である。
【0028】
イミン残基とは、イミン化合物(分子内に式:−N=C−で示される基を持つ有機化合物のことをいい、アルジミン、ケチミンおよびこれらの窒素原子(N)上の水素原子がアルキル基などで置換された化合物が挙げられる)から水素原子1個を除いた残基である。イミン残基の炭素数は、通常2〜20であり、2〜18が好ましい。イミン残基としては、以下の基が挙げられる。
【0029】
【化8】

【0030】
酸イミド基とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基である。酸イミド基の炭素数は、通常4〜20であり、4〜18が好ましい。酸イミド基としては、以下の基が挙げられる。
【0031】
【化9】

【0032】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0033】
、AおよびAが置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、または置換されていてもよいアミノ基である場合、酸素原子、硫黄原子または窒素原子上の非共有電子対がピリジン環のπ電子と相互作用することで発光強度が向上する。したがって、A、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である必要がある。A、AおよびAのうち少なくとも一つは、好ましくは置換されていてもよいヒドロキシ基、または置換されていてもよいメルカプト基であり、より好ましくは置換されていてもよいヒドロキシ基である。A、AおよびAからの選択様式としては、Aのみ、Aのみ、Aのみ、AおよびAb、およびAが好ましく、Aのみ、Aのみ、Aのみがより好ましく、Aのみ、Aのみがさらに好ましく、Aのみが特に好ましい。
【0034】
、AおよびAから選ばれた一つ以外の基は、好ましくは、合成が容易であり、かつ、有機溶媒への溶解性が向上するので、それぞれ独立に、水素原子または上述した置換基であり、AおよびAが一緒になって環を形成してもよい。より好ましくは、A、AおよびAから選ばれた一つ以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、置換されていてもよいアミノ基、または置換されていてもよいオキシカルボニル基であり、AおよびAが一緒になって環を形成してもよい。さらに好ましくは、A、AおよびAから選ばれた一つ以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、置換されていてもよいアミノ基、または置換されていてもよいオキシカルボニル基であり、AおよびAが一緒になって環を形成してもよい。特に好ましくは、A、AおよびAから選ばれた一つ以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいヒドロキシ基、または置換されていてもよいメルカプト基である。特に好ましくは、A、AおよびAから選ばれた一つ以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、または置換されていてもよいヒドロキシ基である。
【0035】
上記一般式(I)で表されるポリピリジン誘導体を構成する繰り返し単位としては、以下の式(A−1)〜(A−12)で表される繰り返し単位が好ましく、以下の式(A−1)、(A−3)、(A−4)、(A−6)、(A−7)、(A−9)、(A−10)、(A−11)で表される繰り返し単位がより好ましく、以下の式(A−1)、(A−4)、(A−7)、(A−9)、(A−10)、(A−11)で表される繰り返し単位がさらに好ましく、以下の式(A−1)、(A−4)で表される繰り返し単位が特に好ましく、以下の式(A−1)で表される繰り返し単位がとりわけ好ましい。式中、pは1〜20の整数であり、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3がさらに好ましく、1〜2が特に好ましい。qは、0〜20の整数であり、0〜11が好ましく、0〜7がより好ましく、0〜5がさらに好ましい。
【0036】
【化10】

【0037】
一実施形態では、本発明のピリジン化合物は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位が3個連続して結合している構造を有していることが好ましく、4個連続して結合している構造を有していることがより好ましく、5個連続して結合している構造を有していることがさらに好ましく、6個連続して結合している構造を有していることが特に好ましく、8個連続して結合している構造を有していることがとりわけ好ましい。上記式(I)で表される繰り返し単位が連続して結合している構造は、ピリジン環が異なる向きで結合している構造であっても、ピリジン環が同じ向きで結合しているhead−to−tail構造であってもよいが、head−to−tail構造が好ましい。
【0038】
別の実施形態では、本発明のピリジン化合物は、上記一般式(I)で表される繰り返し単位が3個連続して結合しているhead−to−tail構造である、下記式(II)で表される構造を有することが好ましい。
【0039】
【化11】

【0040】
〔式中、Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、AbrおよびAcrは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
ap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
aq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
ar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
【0041】
ap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、AbrおよびAcrで表される置換基は、前記A、AおよびAで表される置換基と同じである。Aap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つ、Aaq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つ、ならびにAar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、AbrおよびAcrからの選択様式としては、(i)Aap、AaqおよびAar、(ii)Abp、AbqおよびAbr、(iii)Acp、AcqおよびAcr、(iv)Aap、Aaq、Aar、Abp、AbqおよびAbr、(v)Aap、Aaq、Aar、Acp、AcqおよびAcrが好ましく、(i)〜(iii)がより好ましく、(i)、(iii)がさらに好ましく、(i)が特に好ましい。Aap、AaqおよびAarで表される置換基は、同じであっても異なっていてもよい。Abp、AbqおよびAbrで表される置換基は、同じであっても異なっていてもよい。Acp、AcqおよびAcrで表される置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
さらに別の実施形態では、上記一般式(I)で表される繰り返し単位が4個連続して結合しているhead−to−tail構造である、下記式(IV)で表される構造を有することがより好ましい。
【0043】
【化12】

【0044】
〔式中、Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、Abr、Acr、Aas、AbsおよびAcsは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
ap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
aq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
ar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
as、AbsおよびAcsのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
【0045】
ap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、Abr、Acr、Aas、AbsおよびAcsで表される置換基は、前記A、AおよびAで表される置換基と同じである。Aap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つ、Aaq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つ、Aar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つ、ならびにAas、AbsおよびAcsのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、Abr、Acr、Aas、AbsおよびAcsからの選択様式としては、(i’)Aap、Aaq、AarおよびAas、(ii’)Abp、Abq、AbrおよびAbs、(iii’)Acp、Acq、AcrおよびAcs、(iv’)Aap、Aaq、Aar、Aas、Abp、Abq、AbrおよびAbs、(v’)Aap、Aaq、Aar、Aas、Acp、Acq、AcrおよびAcsが好ましく、(i’)〜(iii’)がより好ましく、(i’)、(iii’)がさらに好ましく、(i’)が特に好ましい。Aap、Aaq、AarおよびAasで表される置換基は、同じであっても異なっていてもよい。Abp、Abq、AbrおよびAbsで表される置換基は、同じであっても異なっていてもよい。Acp、Acq、AcrおよびAcsで表される置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0046】
別の実施形態では、上記一般式(I)で表される繰り返し単位が5個連続して結合しているhead−to−tail構造である、下記式(V)で表される構造を有することがさらに好ましい。
【0047】
【化13】

【0048】
〔式中、Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、Abr、Acr、Aas、Abs、Acs、Aat、AbtおよびActは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
ap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
aq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
ar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
as、AbsおよびAcsのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
at、AbtおよびActのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
【0049】
ap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、Abr、Acr、Aas、Abs、Acs、Aat、AbtおよびActで表される置換基は、前記A、AおよびAで表される置換基と同じである。Aap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つ、Aaq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つ、Aar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つ、Aas、AbsおよびAcsのうち少なくとも一つ、ならびにAat、AbtおよびActのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、Abr、Acr、Aas、Abs、Acs、Aat、AbtおよびActからの選択様式としては、(i’’)Aap、Aaq、Aar、AasおよびAat、(ii’’)Abp、Abq、Abr、AbsおよびAbt、(iii’’)Acp、Acq、Acr、AcsおよびAct、(iv’’)Aap、Aaq、Aar、Aas、Aat、Abp、Abq、Abr、AbsおよびAbt、(v’’)Aap、Aaq、Aar、Aas、Aat、Acp、Acq、Acr、AcsおよびActが好ましく、(i’’)〜(iii’’)がより好ましく、(i’’)、(iii’’)がさらに好ましく、(i’’)が特に好ましい。Aap、Aaq、Aar、AasおよびAatで表される置換基は、同じであっても異なっていてもよい。Abp、Abq、Abr、AbsおよびAbtで表される置換基は、同じであっても異なっていてもよい。Acp、Acq、Acr、AcsおよびActで表される置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0050】
本発明のピリジン化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、2.5×10〜1×10が好ましく、2.5×10〜1×10がより好ましく、2.5×10〜1×10がさらに好ましく、2.5×10〜1×10が特に好ましい。
【0051】
上記一般式(I)で表される繰り返し単位が3個以上連続して結合している構造を有する化合物は、下記式(III)で表される化合物を重合させることにより製造することができる。重合は、式(III)で表される化合物を必要に応じて有機溶媒に溶解し、アルカリや適当な触媒を用いて、有機溶媒の融点以上沸点以下の温度で反応させることにより行うことができる。
【0052】
【化14】

【0053】
〔式中、A、AおよびAは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
XおよびMは、重合に関与し得る基を表す。XおよびMは、同じであっても異なっていてもよい。〕
【0054】
また、上記一般式(II)で表される構造を有する化合物は、下記式(IIIa)で表される化合物を重合させることにより製造することができる。重合は、式(IIIa)で表される化合物を必要に応じて有機溶媒に溶解し、アルカリや適当な触媒を用いて、有機溶媒の融点以上沸点以下の温度で反応させることにより行うことができる。
【0055】
【化15】

〔式中、A、AおよびAは、前記と同じである。
X’およびM’は、互いに異なり、X’は、ハロゲン原子、ニトロ基または−SOQを表し(ここで、Qは置換されていてもよい炭化水素基を表す。)、M’は、水素原子、ハロゲン原子、−B(OQ、−Si(Q、−Sn(Qまたは−Z(Zを表す(ここで、Qは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を表し、2個のQは同じであっても異なっていてもよく、2個のQは一緒になって環を形成していてもよい。Qは置換されていてもよい炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Qは置換されていてもよい炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Zは金属原子または金属イオンを表し、Zはカウンターイオンを表し、mは0以上の整数である。)。〕
【0056】
重合に関与し得る基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、−SOQ、−B(OQ、−Si(Q、−Sn(Q、−Z(Zが挙げられる。
【0057】
本発明の製造方法は、上記式(I)で表される繰り返し単位が連続して結合している構造において、ピリジン環が異なる向きで結合している構造を有する化合物の製造方法であっても、ピリジン環が同じ向きで結合しているhead−to−tail構造を有する化合物(例えば、式(II)、(IV)または(V)で表される化合物)の製造方法であってもよいが、head−to−tail構造を有する化合物の製造方法であることが好ましい。XおよびMで表される重合に関与し得る基を適切に選択することにより、head−to−tail構造を有する化合物を選択的に製造することができる。この場合、Xは、ハロゲン原子、ニトロ基または−SOQを表し(ここで、Qは置換されていてもよい炭化水素基を表す。)、Mは、水素原子、ハロゲン原子、−B(OQ、−Si(Q、−Sn(Qまたは−Z(Zを表す(ここで、Qは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を表し、2個のQは同じであっても異なっていてもよく、2個のQは一緒になって環を形成していてもよい。Qは置換されていてもよい炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Qは置換されていてもよい炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Zは金属原子または金属イオンを表し、Zはカウンターイオンを表し、mは0以上の整数である。)。
【0058】
重合に関与し得る基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0059】
−SOQにおけるQで表される置換されていてもよい炭化水素基としては、前記A、AおよびAで説明し例示したものが挙げられる。Qで表される置換されていてもよい炭化水素基における水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。−SOQで表される基の好ましい例としては、メタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が挙げられる。
【0060】
−B(OQにおけるQは、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基であり、2個のQは同じであっても異なっていてもよく、環を形成していてもよい。Qにおける置換されていてもよい炭化水素基としては、前記A、AおよびAで説明し例示したものが挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がさらに好ましい。環を形成する場合には、2個のQからなる二官能性の炭化水素基として、1,2−エチレン基、1,1,2,2−テトラメチル−1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−フェニレン基が好ましい。
【0061】
−Si(QにおけるQは、置換されていてもよい炭化水素基であり、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Qにおける置換されていてもよい炭化水素基としては、前記A、AおよびAで説明し例示したものが挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がさらに好ましい。
【0062】
−Sn(QにおけるQは、置換されていてもよい炭化水素基であり、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Qにおける置換されていてもよい炭化水素基としては、前記A、AおよびAで説明し例示したものが挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がさらに好ましい。
【0063】
(ZにおけるZは、金属原子または金属イオンであり、Zはカウンターイオンであり、mは0以上の整数である。Zとしては、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Pb、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Cd、La、Ce、Sm、Eu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hgなどの金属原子およびそのイオンを挙げることができる。Zは、好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Pb、Sc、Ti、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、Hgの金属原子およびそのイオンであり、より好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、In、Tl、Pb、Cu、Zn、Zr、Ag、Hgの金属原子およびそのイオンであり、さらに好ましくはLi、Na、K、Mg、Ca、Cu、Znの金属原子およびそのイオンである。
【0064】
としては、通常、ブレンステッド酸の共役塩基が使用され、その例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオンが挙げられる。好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオンであり、より好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオンであり、さらに好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンである。
【0065】
head−to−tail構造を有する化合物をより選択的に製造することができるので、Xは、ハロゲン原子、−SOQが好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−SOQがより好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基がさらに好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が特に好ましい。
【0066】
head−to−tail構造を有する化合物をより選択的に製造することができるので、Mは、ハロゲン原子、−B(OQ、−Si(Q、−Sn(Q、−Z(Zが好ましく、ハロゲン原子、−B(OQ、−Z(Zがより好ましく、ハロゲン原子が特に好ましい。
【0067】
重合方法としては、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”,第14巻,270−490頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1965年、“オルガニック シンセシーズ(Organic Syntheses)”,コレクティブ第6巻(Collective Volume VI),407−411頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1988年、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)、ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organomet.Chem.),第576巻,147頁(1999年)、マクロモレキュラー ケミストリー マクロモレキュラー シンポジウム(Macromol.Chem.,Macromol.Symp.),第12巻,229頁(1987年)、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第102巻,1359頁(2002年)、特開2007−246887号公報などに記載の公知の方法が挙げられる。
【0068】
重合方法としては、Suzukiカップリング反応により重合する方法、有機マグネシウム試薬と反応させてホスフィン化合物を含むニッケル錯体の存在下で重合する方法、Ni(0)錯体により重合する方法、FeClなどの酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適切な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法が挙げられる。head−to−tail構造を有する化合物を選択的に製造することができるので、Suzukiカップリング反応により重合する方法、有機マグネシウム試薬と反応させてホスフィン化合物を含むニッケル錯体の存在下で重合する方法、Ni(0)錯体により重合する方法が好ましい。
【0069】
前記有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、副反応を抑制するために十分に脱酸素処理を施したものを用いることが好ましい。また、ピリジン化合物を製造する際には、このような有機溶媒を用いて不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、前記有機溶媒には、前記脱酸素処理と同様に脱水処理を行うことが好ましい。但し、Suzukiカップリング反応などの水との2相系での反応の場合にはその限りではない。
【0070】
また、このような有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの不飽和炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化不飽和炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどのエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジンなどのアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルモルホリンオキシドなどのアミド類が例示される。これらの有機溶媒は1種を単独で、または2種以上を併用してもよい。また、このような有機溶媒の中でも、エーテル類がより好ましく、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルが更に好ましい。
【0071】
また、本発明のピリジン化合物を製造する際には、原料化合物を反応させるために、アルカリや適切な触媒を添加することが好ましい。このようなアルカリまたは触媒は、採用する重合方法などに応じて選択することができる。このようなアルカリまたは触媒としては、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。また、前記アルカリまたは触媒を混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で攪拌しながらゆっくりとアルカリまたは触媒の溶液を添加するか、逆にアルカリまたは触媒の溶液に反応液をゆっくりと添加する方法が例示される。
【0072】
反応温度は、−100℃〜溶媒の沸点であり、−80℃〜室温が好ましい。
【0073】
本発明のピリジン化合物は、置換基の導入により優れた溶解性を持たせることができる。
【0074】
本発明のピリジン化合物は、強い発光強度を有するため、電界発光素子などの先端機能材料またはその成分として特に有用である。
【0075】
<組成物>
本発明の組成物は、(a)本発明のピリジン化合物と、(b)正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群より選ばれる少なくとも1つの材料とを含む組成物である。また、本発明の組成物は、溶媒を含有することができる(溶媒を含有する本発明の組成物を、以下、「液状組成物」と言う。一般的には、インク、インク組成物と言うことがある。)。なお、本発明の組成物において、本発明のピリジン化合物、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、溶媒は、それぞれ、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の組成物において、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料の合計と、本発明のピリジン化合物との比率は、本発明のピリジン化合物100重量部に対して、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料の合計が、通常、1〜10000重量部であり、好ましくは10〜1000重量部であり、より好ましくは20〜500重量部である。
【0077】
次に、本発明の液状組成物について説明する。
【0078】
本発明の液状組成物は、本発明のピリジン化合物と溶媒とを含む。上記液状組成物における溶媒の割合は、液状組成物の全重量に対して、通常、1〜99.9重量%であり、好ましくは80〜99.9重量%である。なお、液状組成物の粘度は、印刷法によって異なるが、インクジェットプリント法等の液状組成物中が吐出装置を経由する方法を用いる場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために粘度が25℃において1〜20mPa・sが好ましい。
【0079】
上記液状組成物は、さらに、粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤を含有していてもよい。この添加剤としては、粘度を高めるための高分子量の化合物(以下、「増粘剤」と言う。)や貧溶媒、粘度を下げるための低分子量の化合物、表面張力を下げるための界面活性剤が挙げられる。
【0080】
上記増粘剤としては、本発明のピリジン化合物と同じ溶媒に可溶性であり、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートが挙げられる。また、貧溶媒を増粘剤として用いることもできる。即ち、液状組成物中の固形分に対する貧溶媒を少量添加することで、粘度を高めることができる。
【0081】
本発明の液状組成物は、保存安定性を改善するために、酸化防止剤を含有していてもよく、例えば、本発明のピリジン化合物と同じ溶媒に可溶性であり、発光や電荷輸送を阻害しない化合物が挙げられ、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。
【0082】
上記液状組成物に含まれる溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。さらに、これらの溶媒の種類は、成膜性及び素子特性が良好になるので、2種類以上が好ましく、2〜3種類がより好ましく、2種類が特に好ましい。
【0083】
上記溶媒が2種類の組み合わせである場合、それらのうちの1種類は25℃において固体状態でもよい。2種類の溶媒の組み合わせとしては、成膜性の観点からは、1種類の溶媒は沸点が180℃以上の溶媒であることが好ましく、200℃以上の溶媒であることがより好ましく、粘度の観点からは、2種類の溶媒ともに60℃において1重量%以上の濃度で本発明のピリジン化合物が溶解する溶媒であることが好ましく、少なくとも1種類の溶媒は25℃において1重量%以上の濃度で本発明のピリジン化合物が溶解する溶媒であることが好ましい。
【0084】
また、上記溶媒が3種類以上の組み合わせである場合、粘度がより適切になり、かつ、成膜性が良好になるので、これら3種類以上の溶媒の全重量に対して、最も沸点が高い溶媒が、好ましくは40〜90重量%であり、より好ましくは50〜90重量%である。
【0085】
上記液状組成物には、水、金属及びその塩を1〜1000ppm(重量基準)含んでいてもよい。金属としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム、カリウム、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、クロム、マンガン、コバルト、白金、イリジウムが挙げられる。また、上記液状組成物は、珪素、リン、フッ素、塩素、臭素を1〜1000ppm(重量基準)含んでいてもよい。
【0086】
上記液状組成物を用いると、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布方法により、本発明の薄膜を容易に作製することができる。
【0087】
<薄膜>
本発明の薄膜は、本発明のピリジン化合物を含む薄膜であり、その種類としては、発光性薄膜、導電性薄膜、有機半導体薄膜がある。
発光性薄膜は、後述の発光素子の作製において、発光層を形成する際に有用である。
導電性薄膜は、表面抵抗が1KΩ/□以下であることが好ましい。本発明の導電性薄膜は、ルイス酸、イオン性化合物等をドープすることにより、電気伝導度を高めることができる。
有機半導体薄膜は、電子移動度又は正孔移動度のうちの大きいほうが、1×10−5cm/V/秒以上であることが好ましい。また、SiO等の絶縁膜とゲート電極とを形成したSi基板上に有機半導体薄膜を形成し、Au等でソース電極とドレイン電極を形成することにより、有機トランジスタとすることができる。
【0088】
<素子>
本発明の素子は、(a)陽極及び陰極からなる電極と、(b)該電極間に設けられた、本発明のピリジン化合物を含む有機層とを備える素子であり、代表的には、発光素子である(以下、「本発明の発光素子」と言う。)。本発明の素子を備えることにより、表示装置を作製することもできる。
【0089】
本発明の発光素子は、陽極と陰極からなる一対の電極と、該電極間に発光層を有する一層(単層型)又は複数層(多層型)からなる薄膜が挟持されているものである。該薄膜層の少なくとも1層は、本発明のピリジン化合物を含有する。前記薄膜中の本発明のピリジン化合物の合計含有量は、発光層全体の重量に対して、通常、0.1〜100重量%であり、0.1〜80重量%であることが好ましい。本発明の発光素子は、前記発光層が、本発明のピリジン化合物を発光材料として含有することが好ましい。
【0090】
本発明の発光素子が単層型である場合には、前記薄膜が発光層であり、この発光層が本発明のピリジン化合物を含有する。また、本発明の発光素子が多層型である場合には、例えば、以下の構成をとる。
(a)陽極/正孔注入層(正孔輸送層)/発光層/陰極
(b)陽極/発光層/電子注入層(電子輸送層)/陰極
(c)陽極/正孔注入層(正孔輸送層)/発光層/電子注入層(電子輸送層)/陰極
【0091】
本発明の発光素子の陽極は、4.5eV以上の仕事関数を有することが好ましい。陽極の材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物を用いることができる。陽極の材料としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン類、ポリチオフェン類(PEDOT等)、ポリピロール等の有機導電性材料、これらとITOとの積層物等が挙げられる。
【0092】
本発明の発光素子の陰極の材料としては、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物又はこれらの混合物を用いることができ、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等)並びにそのフッ化物及び酸化物、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)並びにそのフッ化物及び酸化物、金、銀、鉛、アルミニウム、合金及び混合金属類(ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等)、希土類金属(イッテルビウム等)、インジウムが挙げられる。
【0093】
本発明の発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層に用いられる材料としては、公知の材料を使用できるが、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、本発明のピリジン化合物、これらを含む重合体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。これらの材料は1種単独で用いても複数の成分が併用してもよい。また、前記正孔注入層及び前記正孔輸送層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0094】
本発明の発光素子の電子注入層及び電子輸送層に用いられる材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、本発明のピリジン化合物が挙げられる。また、前記電子注入層及び前記電子輸送層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0095】
本発明の発光素子において、電子注入層、電子輸送層に用いられる材料としては、絶縁体又は半導体の無機化合物も使用することもできる。電子注入層、電子輸送層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物を使用できる。好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、CaSeが挙げられる。また、電子注入層、電子輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物、窒化物及び酸化窒化物が挙げられる。これら酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0096】
本発明の発光素子において、陰極と接する薄膜との界面領域に還元性ドーパントが添加されていてもよい。還元性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体及び希土類金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。
【0097】
本発明の発光素子の発光層は、電圧印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能、注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有する層である。本発明の発光素子の発光層は、本発明のピリジン化合物を含有することが好ましく、該化合物をゲスト材料とするホスト材料を含有させてもよい。前記ホスト材料としては、例えば、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、ジアリールアミン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物、アリールシラン骨格を有する化合物が挙げられる。前記ホスト材料のT1(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、ゲスト材料のそれより大きいことが好ましく、その差が0.2eVよりも大きいことがさらに好ましい。前記ホスト材料は低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。また、前記ホスト材料と前記金属錯体等の発光材料とを混合して塗布するか、或いは共蒸着等することによって、前記発光材料が前記ホスト材料にドープされた発光層を形成することができる。
【0098】
本発明の発光素子では、前記各層の形成方法としては、真空蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等)、スパッタリング法、LB法、分子積層法、塗布法(キャスティング法、スピンコート法、バーコート方、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェットプリント法等)等が挙げられる。これらの中では、製造プロセスを簡略化できる点で、塗布で成膜することが好ましい。前記塗布法では、本発明のピリジン化合物を溶媒に溶解させて塗布液を調製し、該塗布液を所望の層(又は電極)上に、塗布・乾燥することによって形成することができる。該塗布液中には、ホスト材料及び/又はバインダーとして樹脂を含有させてもよく、該樹脂は溶媒に溶解状態とすることも、分散状態とすることもできる。前記樹脂としては、非共役系高分子(例えば、ポリビニルカルバゾール)、共役系高分子(例えば、ポリオレフィン系高分子)を使用することができる。より具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂から目的に応じて選択できる。溶液は、任意成分として、酸化防止剤、粘度調整剤を含有してもよい。
【0099】
本発明のピリジン化合物は、光電素子の製造にも用いることができる。
光電素子としては、光電変換素子が挙げられ、該光電変換素子としては、例えば、少なくとも一方が透明又は半透明な二個の電極間に、本発明のピリジン化合物を含む層が設けられた光電変換素子や、基板上に成膜した本発明のピリジン化合物を含む層上に形成した櫛型電極を有する光電変換素子が挙げられる。本発明のピリジン化合物を含む層には、特性を向上するために、フラーレンやカーボンナノチューブを混合してもよい。
【0100】
光電変換素子の製造方法としては、特許第3146296号公報に記載の方法が挙げられ、例えば、第一の電極を有する基板上に本発明のピリジン化合物を含む層(薄膜)を形成し、その上に第二の電極を形成する方法、基板上に形成した一組の櫛型電極の上に本発明のピリジン化合物を含む層(薄膜)を形成する方法が挙げられる。第一又は第二の電極のうち一方が透明又は半透明である。
【実施例】
【0101】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【0102】
ここで、実施例で合成した化合物の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した、ポリスチレンに対する相対分子量、即ち、ポリスチレン換算の分子量である。なお、数平均分子量を「Mn」と表し、重量平均分子量を「Mw」と表す。
また、1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)プロパンを「dppp」と略す。
【0103】
<合成例1>
2−アミノ−3−(2−メトキシ−2−エトキシエトキシ)ピリジン(化合物6)の合成
ナスフラスコに、2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン 3.318g(30.1mmol)、1−ブロモ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン 6.950g(38.0mmol)および40重量%水酸化ナトリウム水溶液 30mLを加えて、室温で5分間撹拌した。そこへ、相間移動触媒としてAdogen464(シグマアルドリッチ社・登録商標)を15滴加えて、50℃で2日間撹拌した。その後反応液に水を加え、塩化メチレンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後に、クーゲルロール蒸留(155−165℃/0.3mmHg)にて精製を行い、淡黄色液体3.833g(収率60%)の化合物6を得た。
【0104】
【化16】

【0105】
H NMR(500MHz,DMSO−d)δ7.50(dd,J=1.4 and 4.9Hz,1H),7.03(dd,J=1.4 and 7.7Hz,1H),6.47(dd,J=4.9 and 7.7Hz,1H),5.57(br s,2H),4.07−4.06(m,2H),3.76−3.74(m,2H),3.61−3.59(m,2H),3.47−3.45(m,2H),3.24(s,3H);
13C NMR(126MHz,DMSO−d)δ151.0,140.7,138.7,116.9,112.1,71.3,69.7,68.8,67.7,58.1.
【0106】
2−アミノ−5−ブロモ−3−(2−メトキシ−2−エトキシエトキシ)ピリジン(化合物7)の合成
ナスフラスコに、上記化合物6 9.987g(47.0mmol)および乾燥塩化メチレン 150mLを加えて0℃に冷却した。そこへ、2,4,4,6−テトラブロモ−2,5−シクロヘキサジエノン 21.474g(52.4mmol)をゆっくりと加え、0℃で1時間撹拌した後、3M塩酸を加えて酸性にした。水層を塩化メチレンで洗浄した後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてアルカリ性にし、塩化メチレンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後に、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル,酢酸エチル)を行い、橙色粘性液体 9.683g(収率71%)の化合物7を得た。
【0107】
【化17】

【0108】
H NMR(500MHz,DMSO−d)δ7.58(d,J=2.0Hz,1H),7.23(d,J=2.0Hz,1H),5.87(br s,2H),4.12−4.10(m,2H),3.75−3.74(m,2H),3.59−3.58(m,2H),3.46−3.44(m,2H),3.24(s,3H);
13C NMR(126MHz,DMSO−d)δ150.1,141.4,138.5,119.2,104.4,71.2,69.7,68.7,68.2,58.1.
【0109】
2,5−ジブロモ−3−(2−メトキシ−2−エトキシエトキシ)ピリジン(化合物8)の合成
ナスフラスコに、上記化合物7 1.699g(5.84mmol)および48重量%臭化水素酸 9.0mLを加えて0℃に冷却した。そこへ臭素 0.9mL(17.6mmol)をゆっくり滴下して0℃で30分間攪拌した後、亜硝酸ナトリウム 1.214g(17.6mmol)を水5.0mLに溶解させた水溶液を滴下した。0℃で4時間撹拌し、TLCにて化合物7の消費を確認した後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液および10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えた。塩化メチレンで抽出し、有機層を10%チオ硫酸ナトリウム水溶液および水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル,塩化メチレン:ヘキサン=20:1(体積比))および再結晶(塩化メチレン,ヘキサン)を行い、白色固体0.838g(収率40%)の化合物8を得た。
【0110】
【化18】

【0111】
H NMR(500MHz,DMSO−d)δ8.12(d,J=2.0Hz,1H),7.83(d,J=2.0Hz,1H),4.30−4.28(m,2H),3.78−3.76(m,2H),3.62−3.60(m,2H),3.46−3.44(m,2H),3.24(s,3H);
13C NMR(126MHz,DMSO−d)δ152.4,141.5,130.5,123.9,119.7,71.3,69.9,69.4,68.6,58.1.
【0112】
<実施例1>
PMEEOPyの合成
反応は三方コックを備えたナスフラスコを用いて窒素気流下で行った。ヒートガンを用いてナスフラスコを加熱しながら、ナスフラスコ内を減圧乾燥してアルゴン置換し、室温に戻した。これに、上記化合物8 0.1844g(0.519mmol)を加えて、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。これに乾燥THF 2.5mLを加え0℃に冷却した後に、イソプロピルマグネシウムクロライドのTHF溶液(2.0mol/L)0.26mL(0.52mmol)を加えて室温にて10時間撹拌した。(なお、この時点で上記化合物8における−Br(2位と5位の臭素原子)が−MgClに変換される。−MgClに変換された上記化合物8を少量抜き取り、水を加えると、−MgClは−H(水素原子)に変換され、その1H−NMRスペクトルを観測すると、上記化合物8の2位と5位の臭素原子が1:9で水素原子に変換されていることが確認できた。したがって、上記化合物8の2位と5位の臭素原子が1:9で−MgClに変換されていることになる。)
そこへNi(dppp)Cl 0.0088g(0.0162mmol、ジハロゲノピリジンに対して3.1mol%)を乾燥THF 2.5mLに懸濁させて加えた。室温にて撹拌したところ、反応開始後1時間で系中に固体が析出した。3時間後に水を加えて反応を停止させ、塩化メチレンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過し、減圧下溶媒を留去した後、GPCにより得られた生成物のTHF溶解部の分子量測定した(Mw=3000,Mn=2500)。
【0113】
【化19】

(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
【0114】
H NMR(600MHz,CDCl)δ9.21(br s,1H),8.25(br s,1H),4,43(br,1.84H),4.29(br,0.16H),4.01−3.99(m,2H),3.75−3.73(m,2H),3.61−3.59(m,2H),3.39(br s,3H)
ここで、4.43ppmと4.29ppmのシグナルは、それぞれhead−to−tail結合(下記式左)とhead−to−head結合(下記式右)のプロトン(下記式でHで明示しているプロトン)に帰属でき、その強度比から、head−to−tailの構造の結合の割合は92%であり、tail−to−tailの構造の結合の割合は8%となる。上記分子量から、このポリマー(PMEEOPy)の重合度は12、結合の数は11と見積もられる。tail−to−tailの構造の結合の割合が8%であることから、一分子中に平均して、11×0.08=0.88個のtail−to−tail結合があり、残り10.12個はhead−to−tail結合である。したがって、上記ポリマーにおいて、5個以上の結合がhead−to−tail結合で連続していると言える。
【化20】

【0115】
<合成例2>
3−(2−メトキシエトキシ)−1−プロピン(化合物1)の合成
ナスフラスコに、60重量%水素化ナトリウム 6.02g(150mmol)を加え、乾燥ヘキサンで洗浄し、スクリューコックを用いてゆっくり減圧して乾燥させた。ナスフラスコ内をアルゴン置換した後に0℃に冷却し、窒素気流下で2−メトキシエタノール 9.66g(126.9mmol)の乾燥THF溶液 150mLを加えて0℃で1時間撹拌した。そこへ窒素気流下で臭化プロパギル 16.75g(140.8mmol)の乾燥THF溶液15mLを滴下して0℃で4時間撹拌した。反応液をゆっくりと氷水に入れて反応を停止させ、エーテルで抽出して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、減圧蒸留(58.0−58.5℃/18mmHg)により単離精製し、無色透明液体10.08g(収率79%)の化合物1を得た。
【0116】
【化21】

【0117】
H NMR(600MHz,CDCl)δ4.21(d,J=2.4Hz,2H),3.71−3.69(m,2H),3.59−3.57(m,2H),3.40(s,3H),2.40(t,J=2.4Hz,1H);
13C NMR(150MHz,CDCl)δ79.5,74.5,71.6,68.9,59.0,58.4;IR(neat)3257,2883,2116,1457,1101cm−1
【0118】
2−アミノ−6−[3−(2−メトキシエトキシ)−1−プロピニル]ピリジン(化合物2)の合成
ナスフラスコをヒートガンで加熱しながら減圧乾燥し、ナスフラスコ内をアルゴン置換してから、室温に戻した。ナスフラスコに塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II) 3.78g(5.4mmol)、トリフェニルホスフィン 2.88g(11.0mmol)、ヨウ化銅 2.03g(10.7mmol)および2−アミノ−6−ブロモピリジン 18.65g(107.8mmol)を加えて、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。そこに窒素気流下で乾燥THF350mLを加えてダイアフラムポンプを用いて脱気してからアルゴン置換した後、窒素気流下でトリエチルアミン22mL(158.5mmol)を加えた。その後、窒素気流下で上記化合物1 15.39g(129.4mmol)の乾燥THF 22mL溶液を加えて室温で23時間攪拌した。反応液に水を加え、さらに3M塩酸を加え、反応液を酸性にした。得られた溶液の水層をヘキサンで洗浄した後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、該溶液をアルカリ性にし、塩化メチレンで抽出して有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:酢酸エチル=4:1(体積比))にて精製単離し、薄茶色液体4.179g(収率68%)の化合物2を得た。
【0119】
【化22】

【0120】
H NMR(600MHz,CDCl)δ7.38(t,J=7.7Hz,1H),6.83(d,J=7.2Hz,1H),6.46(d,J=8.2Hz,1H),4.56(br s,2H),4.43(s,2H),3.77−3.75(m,2H),3.60−3.59(m,2H),3.40(s,3H);
13C NMR(150MHz,CDCl)δ158.1,140.5,137.8,117.7,108.7,85.9,84.0,71.7,69.1,59.0,58.9;
IR(neat)3358,3189,2926,1734,1626,1592,1564,1466,1352,1243,1092,798cm−1
【0121】
2−アミノ−6−[3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]ピリジン(化合物3)の合成
ナスフラスコに5%Pd−C 4.87g(5mol%)を入れ、そこへ酢酸エチル 200mLに溶かした上記化合物2 4.18g(20.2mmol)を加えた。減圧した後にナスフラスコ内を水素置換し、室温で4時間撹拌した後に、セライトを用いて反応液をろ過した。ろ液から減圧下で溶媒を留去した後に得られた化合物を再結晶(塩化メチレン−ヘキサン)で精製し、白色板状結晶7.81g(収率80%,融点64.9−66.1℃)の化合物3を得た。
【0122】
【化23】

【0123】
H NMR(600MHz,CDCl)δ7.32(t,J=7.7Hz,1H),6.51(d,J=7.5Hz,1H),6.31(d,J=7.9Hz,1H),4.38(br s,2H),3.59−3.57(m,2H),3.55−3.53(m,2H),3.50(t,J=6.7Hz,2H),3.39(s,3H),2.67(t,J=7.7Hz,2H),1.99(quint,J=7.2Hz,2H);
13C NMR(150MHz,CDCl)δ160.3,158.0,138.0,112.8,105.7,72.0,70.8,70.0,59.0,34.5,29.4;
IR(KBr)3413,3326,3168,2984,2941,2885,2812,1650,1600,1574,1474,1357,1133,1092,1053,989,819,788cm−1
【0124】
6−アミノ−3−ブロモ−2−[3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]ピリジン(化合物4)の合成
ナスフラスコに上記化合物3 7.71g(36.7mmol)および乾燥塩化メチレン 100mLを加えて0℃に冷却した。そこへ2,4,4,6−テトラブロモ−2,5−シクロヘキサジエノン 17.5g(42.6mmol)をゆっくり加えて0℃で6時間撹拌した後、反応液に3M塩酸を加えて酸性にした。水層を塩化メチレンで洗浄した後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性にし、塩化メチレンで抽出して有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後に再結晶(塩化メチレン−ヘキサン)で精製し、白色針状結晶 9.13g(収率86%,融点109.7−110.8℃)の化合物4を得た。
【0125】
【化24】

【0126】
H NMR(600MHz,CDCl)δ7.46(d,J=8.4Hz,1H),6.23(d,J=8.4Hz,1H),4.47(br s,2H),3.61−3.59(m,2H),3.57−3.53(m,4H),3.39(s,3H),2.82(t,J=7.2Hz,2H),1.99(quint,J=7.2Hz,2H);
13C NMR(150MHz,CDCl)δ158.0,156.9,141.5,108.5,107.7,72.0,70.8,69.9,59.0,33.7,28.2;
IR(KBr)3400,3329,3184,2920,2884,1649,1586,1469,1396,1132,1090,1075,836cm−1
【0127】
3,6−ジブロモ−2−[3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]ピリジン(化合物5)の合成
ナスフラスコに上記化合物4 0.98g(3.4mmol)および48重量%臭化水素酸 5.5mLを加えて0℃に冷却した。そこへ臭素 0.53mL(10.0mmol)をゆっくり滴下して0℃で30分間攪拌した後に、水 3.0mLに溶かした亜硝酸ナトリウム 0.72g(10.0mmol)をゆっくり加えて0℃で4時間撹拌した。その後、反応液に10重量%水酸化ナトリウム水溶液および10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えた。反応液を塩化メチレンで抽出し、有機層を10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液および水で洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:酢酸エチル=3:1(体積比))で単離精製し、淡黄色液体1.03g(収率86%)の化合物5を得た。
【0128】
【化25】

【0129】
H NMR(600MHz,CDCl)δ7.62(d,J=8.2Hz,1H),7.18(d,J=8.2Hz,1H),3.61−3.59(m,2H),3.58−3.54(m,4H),3.39(s,3H),2.99(t,J=7.7Hz,2H),2.05(quint,J=7.7Hz,2H);
13C NMR(150MHz,CDCl)δ161.5,142.2,139.7,126.8,120.3,72.0,70.5,70.0,59.1,33.8,27.9;
IR(neat)2871,1559,1536,1418,1135,1007,818cm−1
【0130】
<比較例1>
PMEPPyの合成
反応は三方コックを備えたナスフラスコを用いて窒素気流下で行った。ヒートガンを用いてナスフラスコを加熱しながら減圧乾燥し、ナスフラスコ内をアルゴン置換してから、室温に戻した。これにモノマー上記化合物5 0.3596g(1.019mmol)および内部標準物質としてナフタレン 0.0355g(0.277mmol)を加えて、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。これに乾燥THF 5.0mLを加え0℃に冷却した後に、イソプロピルマグネシウムクロライドのTHF溶液(2.0mol/L)0.50mL(1.00mmol)を加えて、室温で24時間撹拌した。そこへNi(dppp)Cl 0.0099g(0.0183mmol、ジハロゲノピリジンに対して1.8mol%)を乾燥THF 5.0mLに懸濁させて加え室温で6時間撹拌した。反応終了後、水を加えてから塩化メチレンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、黄色固体を得た。得られた残渣をメタノールで洗浄することで白色固体を得た(Mw=58770,Mn=13500)。
【0131】
【化26】

(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
【0132】
H NMR(600MHz,CDCl)δ7.90(br s,1H),7.49(br s,1H),3.56(m,6H),3.37(s,3H),3.16(br s,2H),2.17(br s,2H).
【0133】
<測定例1>
PMEPPy(比較例1)およびPMEEOPy(実施例1)のクロロホルム溶液(いずれも1.6×10−6M:繰り返し単位の分子量から計算)をそれぞれ調製し、島津製作所の3次元分光蛍光光度計(RF−5300PC)にて、励起波長392.0nmでの発光スペクトルをスキャン範囲220−900nmで測定した。その結果、PMEEOPy(実施例1)の発光強度は、PMEPPy(比較例1)の発光強度に対してピーク面積比で約10倍であることが認められた(図1)。
また、PMEEOPy(実施例1)は、クロロホルムに溶解したことから、溶解性も優れていることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のピリジン化合物は、優れた発光強度及び溶解性を有しているため、電界発光素子などの先端機能材料として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

〔式中、A、AおよびAは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
で表される繰り返し単位が3個以上連続して結合している構造を有する化合物。
【請求項2】
、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、および置換されていてもよい炭化水素アミノ基からなる群より選ばれる置換基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、下記式(II):
【化2】

〔式中、Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、AbrおよびAcrは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
ap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
aq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
ar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
で表される構造を有する化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
下記式(III):
【化3】

〔式中、A、AおよびAは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
、AおよびAのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
XおよびMは、重合に関与し得る基を表す。XおよびMは、同じであっても異なっていてもよい。〕
で表される化合物を重合させて、
下記式(I):
【化4】

〔式中、A、AおよびAは、前記式(III)と同じである。〕
で表される繰り返し単位が3個以上連続して結合している構造を有する化合物を得ることを含む、式(I)で表される繰り返し単位が3個以上連続して結合している構造を有する化合物の製造方法。
【請求項5】
下記式(IIIa):
【化5】

〔式中、A、AおよびAは、前記と同じである。
X’およびM’は、互いに異なり、X’は、ハロゲン原子、ニトロ基または−SOQを表し(ここで、Qは置換されていてもよい炭化水素基を表す。)、M’は、水素原子、ハロゲン原子、−B(OQ、−Si(Q、−Sn(Qまたは−Z(Zを表す(ここで、Qは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を表し、2個のQは同じであっても異なっていてもよく、2個のQは一緒になって環を形成していてもよい。Qは置換されていてもよい炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Qは置換されていてもよい炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Zは金属原子または金属イオンを表し、Zはカウンターイオンを表し、mは0以上の整数である。)。〕
で表される化合物を重合させて、
下記式(II):
【化6】

〔式中、Aap、Abp、Acp、Aaq、Abq、Acq、Aar、AbrおよびAcrは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
ap、AbpおよびAcpのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
aq、AbqおよびAcqのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。
ar、AbrおよびAcrのうち少なくとも一つは、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいメルカプト基、および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基である。〕
で表される構造を有する化合物を得ることを含む、式(II)で表される構造を有する化合物の製造方法である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
(a)請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物と、(b)正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料からなる群より選ばれる少なくとも1つの材料とを含む組成物。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物と溶媒とを含む液状組成物。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物を含む薄膜。
【請求項9】
(a)陽極及び陰極からなる電極と、(b)該電極間に設けられた、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物を含む有機層とを備える素子。
【請求項10】
請求項9に記載の素子を備える表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−184320(P2011−184320A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48906(P2010−48906)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】