説明

ピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はグルタミン酸結合のピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体、その製造法、およびその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】メトトレキセート(MTXと称される)は葉酸拮抗系抗腫瘍剤として現在、臨床的に使用されている唯一の薬物である。単独で絨毛膜癌、骨肉腫および急性リンパ性白血病を中心に使用されるほか、他の抗腫瘍剤との併用療法や新しい投与法の導入によって適用範囲を拡大してきた。MTXはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)に強い阻害活性を示す。しかし、DHFRは腫瘍組織および正常な宿主組織に存在し、これらの両方に影響をおよぼす。このため、MTXは強い副作用を示し、これは臨床使用上の制約要因になっている。MTXは一般に固形腫瘍に対し治療効果は低い欠点がある。また、一定期間の使用によって腫瘍細胞は抵抗性を獲得し、薬効が著しく低下する等の欠点がある。これらはMTXの臨床的価値を低下させている。
【0003】過去40年以上にわたりこの分野において活発な研究がなされてきた。特に葉酸分子の構造変換によって多数の葉酸拮抗物質が合成され、薬理学的研究がなされた。一般に葉酸拮抗物質の分子構造は便宜上ヘテロ環部、bridge部、安息香酸部、アミノ酸部の4つの部分に分けられる。ヘテロ環部については葉酸、MTXなどにみられるごとくプテリジン環が代表的構造であり、実際、この範疇にはいる葉酸拮抗物質は数多く知られている。比較的最近、種々のデアザプテリジン化合物、例えば、5−デアザプテリジン、8−デアザプテリジン、5,8 −ジデアザプテリジン、またはこれらのジヒドロあるいはテトラヒドロ体が葉酸拮抗物質として研究され、多数公表されてきた。これら化合物の葉酸関連酵素に対する阻害や腫瘍細胞増殖阻害、さらに、担癌マウスを使って抗腫瘍効果などが測定され、今日まで構造と活性、あるいは構造と毒性との相関関係について情報が集積されてきた。これらは例えば、 AndreRosowskyによるProgress in Medicinal Chemistry, 26, 1-252(1989)、ElsevierScience Publishers に包括的かつ詳細に記載されている。これら葉酸拮抗物質の構造的特徴の第一はヘテロ環部にあり、大多数は、プテリジン環のごとく6員環が2ケ縮合した2環性ヘテロ環構造を有する点にある。一方、5員環と6員環の縮合によって形成される2環性ヘテロ環構造を有する葉酸拮抗物質については従来あまり知られていない。L.T.WeinstockによるJournal Medicinal Chemistry, 13, 995(1970) にはプテリジン環をプリン環に変換した化合物の記載があるがDHFR阻害や抗腫瘍作用は認められなかったと報告されている。このため葉酸拮抗作用を発揮できる構造要因としてプテリジンまたはその近縁構造が必要であると考えられていた。しかし最近、MiwaらのJournal Medicinal Chemistry, 34,555-560(1991) はピロロ〔2,3 −d〕ピリミジン環を有するベンゾイルグルタミン酸誘導体が葉酸拮抗作用を持ち、ヒト腫瘍細胞の増殖に対しMTXより高い阻害活性を示すことを記載している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のごとく、この分野の最近の学問的進歩にも拘わらず、MTX以後、医薬品として実用化され、臨床の場に提供されたものは未だ存在しない。従って、この系統化合物で腫瘍組織にたいする選択毒性を備え、治療効果を備えたものを発明し、有用な制癌剤として臨床の場に提供することが現在なお強く要望されている。上記実状に鑑み、本発明は優れた抗腫瘍活性を有する新規なピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体の提供を目的とする。また該化合物の製造方法および該化合物を有効成分とする医薬組成物をも提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、グルタミン酸結合のピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体が新規で有用な抗腫瘍剤になりうることを見いだし本発明を完成した。すなわち本発明は、一般式(1) で表わされるピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供するものである。
【0006】
【化6】


【0007】(式中、R1は水酸基またはアミノ基を示す。R2は水素原子、アミノ基またはメチル基を示す。X は1〜4個の原子からなる2価の直鎖状の基で置換基を有していてもよい。Y はフェニレン基、チエンジイル基、フランジイル基、チアゾールジイル基、インドールジイル基又はインドリンジイル基を示す。)また、本発明は、一般式(2)
【0008】
【化7】


【0009】(式中、R1、R2、X およびY は前記と同義である。)で表わされる化合物またはそのカルボキシル基における反応性誘導体と、一般式(3)
【0010】
【化8】


【0011】(式中、RおよびR4は同一または異なるカルボキシル基の保護基を示す。)で表される化合物とを縮合させて、一般式(4)
【0012】
【化9】


【0013】(式中、R1、R2、R3、R4、X およびY は前記と同義である。)で表されるカルボン酸エステル体を得、ついで、このエステル体を酸またはアルカリの存在下に加水分解することを特徴とする前記一般式(1) で表わされるピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の製造法を提供するものである。また本発明は、一般式(5)
【0014】
【化10】


【0015】(式中、R、R2、X およびY は前記と同義である。−COOR5 は保護基でエステル化されていてもよいカルボキシル基を示す。)で表される化合物またはその塩を提供するものである。更に本発明は、前記一般式(1) で表わされるピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗腫瘍剤を提供するものである。
【0016】上記式中においてR1が水酸基またはアミノ基である場合は、化合物(1) 、(2)、(4) および(5) はケト型−エノール型、またはイミン型−エナミン型の互換異性体が平衡状態で存在する。本明細書では表示の便宜上、エノール型(水酸基型)またはエナミン型(アミン型)が記載され、それに対する命名がなされているが、何れの場合においても本発明化合物はエノール型と共にケト型(オキソ体、即ちアミド型)、またはエナミン型と共にイミン型も包含するものとする。また、本発明化合物(1) はL−グルタミン酸部の不斉中心のほかに、X に置換基が存在する場合、置換基のつけ根の炭素原子に不斉中心が存在する可能性があるが、グルタミン酸部の不斉炭素原子の絶対配置がS(L型)である以外は、他の不斉中心の絶対配置はS,RまたはRSの混合物の何れであってもよい。この場合、化合物(1) はジアステレオアイソマーとして或いはそれらジアステレオアイソマー混合物として得られ、これらは、必要に応じて各成分を分別結晶やクロマトグラフィーなど慣用的な方法によって容易に分離精製する事が出来る。分離される何れのジアステレオアイソマーも本発明の範囲内に属する。本発明化合物(1) は一般に粉末、結晶性固体または結晶として得られる。
【0017】上記式中、X は置換基を有していてもよい1〜4個の原子からなる2価の直鎖状の基であるが、直鎖を構成する原子としては、炭素、窒素、酸素、硫黄等が挙げられ、置換基としては、炭化水素基、ハロゲン原子、置換または無置換アミノ基等が挙げられる。
【0018】上記式中、Y で示されるフェニレン基としては例えば1,4 −あるいは1,3 −フェニレン基が挙げられ、チエンジイル基、フランジイル基としては例えば2,5(または5,2)−位または3,5(または5,3)−位に結合手をもつチオフェン基またはフラン基が挙げられ、インドールジイル基およびインドリンジイル基としては例えば1,4 −位、1,5 −位または1,6 −位に結合手をもつインドール基が挙げられる。
【0019】また、R3、R4およびR5で示されるカルボキシル基の保護基としては、炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいフェニル基、または三置換シリル基などが挙げられる。ここでいうアルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基などが、置換基を有していてもよいベンジル基としてはベンジル基、ニトロベンジル基、メトキシベンジル基などが、さらに置換基を有していてもよいフェニル基としてはフェニル基、メトキシフェニル基、ニトロフェニル基などが、三置換シリル基としてはターシャリーブチルジメチルシリル基、ターシャリーブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
【0020】次に、本発明化合物(1) の製造法について説明する。本発明化合物の製造は一般に行われる適当な反応を用いて行うことができる。以下に例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。化合物(1) は、下記反応式に示すように式(2) で示されるカルボン酸またはその反応性誘導体に対し、式(3)で示されるグルタミン酸誘導体を縮合させて式(4)で表わされる中間体を得、ついでこのものを加水分解などの方法によってカルボキシル基の保護基を除くことにより得ることができる。
【0021】
【化11】


【0022】(一連の式中、R1、R2、R3、R4、X およびY は前記と同義である。)上記縮合の方法としてはペプチド形成の慣用的合成技術を適用する事ができる。例えば化合物(2) にクロル炭酸エステル類、有機酸無水物類、ジフェニルホスホリルアジド、ジエチルシアノホスフェイト、カルボニルジイミダゾール、クロルリン酸エステル類あるいはカルボジイミド類などのカルボン酸の活性化試薬を塩基の存在下または非存在下で作用させ、ついで化合物(3) を反応させることによって中間体化合物(4) を得ることが出来る。活性化試薬の化合物(2) に対する使用量は1〜25モル当量であり、好ましくは1〜5モル当量から選ばれる。活性化試薬として用いるクロル炭酸エステル類としてはクロル炭酸メチルまたはクロル炭酸エチルが、有機酸無水物類としては無水酢酸、無水クロル酢酸または混合酸無水物法などの応用が、クロルリン酸エステル類としてはジフェニルクロロホスフェイト、ジエチルクロロホスフェイトなどが使用できる。また、カルボジイミド類としては実用上ジシクロヘキシルカルボジイミドが好ましく、そのほかにジフェニルカルボジイミド、1,3 −ジパラトリルカルボジイミドまたは1−シクロヘキシル−3(2−モルホリノエチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド類の中から適宜選ぶことが出来る。
【0023】また化合物(2) をハロゲン化試薬と反応させてカルボン酸ハロゲニド(アシルハライド)に変換した後、上記と同様に化合物(3) を反応させることによって化合物(4) を得ることができる。ハロゲン化試薬としてはチオニルクロライド、オキサリルクロライド、三塩化リン、あるいはこれらに対応するフロライド、ブロマイド、アイオダイド、この他トリフェニルホスフィン−四塩化炭素、トリフェニルホスフィン−臭素などを用いることができる。
【0024】中間体化合物(4) を得る反応は溶媒の存在下に実施するのが好ましく、使用される溶媒は例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ニトリル類(アセトニトリル等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素など)、脂肪族炭化水素(ヘキサン、ペンタンなど)、アセトン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどから選ばれ、またこれら溶媒の適宜混合したものも用いうる。中間体化合物(4) を得る反応は塩基の存在下または非存在下で実施され、使用される塩基は、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどの無機塩基、またはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、トリエタノールアミンなどの有機塩基のなかから適宜選ばれる。反応温度は大略−10℃〜反応溶媒の沸点の範囲、好ましくは0〜50℃であり、反応時間は大略 0.5時間〜4日間で実施することができる。
【0025】次に、上記のような縮合工程で得られるエステル中間体(4) は加水分解をおこなう事によって遊離カルボン酸とし、化合物(1) を得ることが出来る。加水分解反応は水溶液中または場合によりメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの水親和性の有機溶媒中において、塩酸、硫酸、硝酸あるいはリン酸などの水性無機酸類あるいはトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機酸を用いるか、或いは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの水性苛性アルカリ類、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸アルカリ類、炭酸水素アルカリ類、ナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドなどの金属アルコキシド類を用いておこなう。反応温度は例えば氷冷下から使用溶媒の沸点、好ましくは10〜70℃の範囲で、反応時間としては例えば1時間〜約2日間反応させる事により行うことができる。アルカリが使用される場合、生成物はグルタミン酸部分が酸性塩または中間塩として形成される。
【0026】次に、原料化合物(2) の製造法について説明する。化合物(2) の内、R1がアミノ基である化合物は、たとえば次に示す反応工程によって製造することができる。
【0027】
【化12】


【0028】
【化13】


【0029】上記工程中、R1はアミノ基を示し、R2、R5、X およびY は前記と同義である。またZ は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を示し、R6は炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖アルキル基、フェニル基、置換フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基などの一般的な保護基を示す。R7は脂肪族あるいは芳香族チオールから−SH基を除いた残基を示す。
【0030】以下に、上記反応工程について説明する。2−シアノシクロペンテン−1−オン(7) はシクロペンテノンにトリ低級アルキルアルミニウムおよびチオフェノール等の芳香族チオールあるいは脂肪族チオール、例えば、イソプロピルチオール等を作用させた後、トシルシアニドと反応させ、次いでシリカゲルあるいは BF3−エーテル等のルイス酸を作用させることによって円滑かつ好収率で合成できる。この場合、2−シアノシクロペンテン−1−オン(7) は中間体3−アルキルチオ−2−シアノシクロペンタンを経由して生成する。
【0031】化合物(8)はω−ハロゲノアルキル結合のサイクリックカルボン酸エステル(6)を2−シアノシクロペンテン−1−オン(7) と反応させることにより合成できる。この場合、トリアルキル錫ハイドライド、あるいはトリフェニル錫ハイドライド等の錫ハイドライドあるいはトリアルキルゲルマニウムハイドライドとアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド等のラジカル開始剤の存在下で行われる。また、シアン化銅などの銅塩存在下で2−シアノシクロペンテン−1−オン(7) にω−ハロゲノアルキル結合のサイクリックカルボン酸エステル(6) と亜鉛から誘導される有機亜鉛化合物を作用させることによって同様化合物(8) を得ることもできる。
【0032】化合物(8) の別途合成法として3−トルエンスルホニルシクロペンタン1−オンを出発原料として用いる方法がある。即ち、下記の反応式で示すように、3−トルエンスルホニルシクロペンタン−1−オンにグリコールを作用させ、ジオキソラン化合物(14)に変えた後、リチウムジイソプロピルアミドの存在下、化合物(6) を作用させアルキル化する。アルキル化体(15)を酸性処理することによって3−位置換シクロペンテン−1−オン(16)を得ることができる。次にトルエンチオールと当量のトリメチルアルミニウムから得られる反応液に冷時、化合物(16)を加え、これに4−トルエンスルホニルシアニドを作用させ、得られた反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって化合物(8) を得ることができる(T.Yoshida ら, Bull.Chem. Soc. Jpn.,55, 393(1982) 。
【0033】
【化14】


【0034】(上記反応式中、R5,X, YおよびZ は前記と同義である。)
3−置換アルキル−2−シアノシクロペンタン−1−オン(8) から低級アルキルエノールエーテル(9) への変換はジアゾメタン、 TMS・ジアゾメタンもしくはそのアナログ、2,2 −ジメトキシプロパンとパラトルエンスルホン酸、又はオルトギ酸エステル、トリアルキルオキソニウムフルオロボレートなど一般的な水酸基への保護基導入試薬を作用させることによって達成することができる。
【0035】1−アルコキシ−2−シアノ−3−置換アルキル−5−ハロゲノ−1−シクロペンテン化合物(10)は、上記のエノールエーテル(9) にN−ハロゲン化アミド(イミド)化合物を、ラジカル反応を受けにくい溶媒(例えばエーテル系溶媒あるいはベンゼン等)の存在下、熱あるいは光照射の下で作用させるとアリル位のハロゲン化が起こり化合物(10)を得ることができる。N−ハロゲン化アミド(イミド)化合物としては、例えば 1,3−ジブロモ−5,5 −ジメチルヒダントイン、N, N−ジクロロウレタン、N−クロロ−あるいはN−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−クロロ−N−シクロヘキシルベンゼンスルホンアミド、ターシャリーブチルハイポクロリド等を用いることができる。
【0036】ハロゲン化化合物(10)に脂肪族あるいは芳香族チオールを作用させることによって対応するチオール化合物(11)を得ることができる。脂肪族あるいは芳香族チオールとしてはベンゼンチオール、置換されたベンゼンチオール(置換基はアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等を挙げることができる)、各種のアルキルチオール(アルキル基はエチル基、ブチル基、オクチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等を挙げることができる)が使用される。これらの脂肪族あるいは芳香族チオールはチオールアルカリ金属塩としてこの反応に用いることもできる。この場合水性溶媒を用い、少量の相間移動触媒を存在させると好ましい結果を得ることができる場合がある。
【0037】1−アルコキシ−2−シアノ−3−置換アルキル−5−アルキルチオ(あるいはアリールチオ)−1−シクロペンテン化合物(11)は常圧下または封管中、加温下にグアニジンあるいはその塩を作用させると目的の2,4 −ジアミノ−7−メルカプト−6,7 −ジヒドロ−5H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン化合物(12,R1=NH2)を得ることができる。グアニジンはエノールエーテル(11)に対し過剰(2〜20倍モル、好ましくは5〜10倍モル)を用い、溶媒はプロティック溶媒、例えばメタノール、エタノール、メトキシエタノール、プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等の使用が好ましく、温度は50〜 200℃、好ましくは 100〜185℃、反応時間は8〜70時間が好ましい条件として挙げられる。但し、高温度、長時間の反応条件下では直接カルボン酸が得られる場合もある。次にチオエーテル(12)を過安息香酸等の過酸化物類で室温あるいは氷冷下で処理することにより対応するスルホキシドに変換することができる。このもののスルホキシド基は加熱によって脱離し対応するオレフィン化合物(13) を得ることができる。この場合トリアルキルホスファイトあるいは第3級塩基を存在させるのが好ましい。オレフィン化合物(13)は 6,7−ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン化合物(5) の他に5−置換−5H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン化合物(5a)および5−置換−7H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン化合物(5b)を含有する。これらは液体クロマトグラフィー等の通常の分離手段により各々分離できる。6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン化合物(5) のエステル基を脱保護することによって前述のカルボン酸化合物(2) を得ることができる。また化合物(5a)および化合物(5b)を酸またはアルカリ(あるいは塩基)による脱保護の過程で異性化させカルボン酸化合物(2) を得ることができる。カルボン酸エステル(5) の別途合成法として以下の反応式に示す方法を挙げることができる。
【0038】
【化15】


【0039】(上記反応式中、R1, R2, R5,R6,R7,X, Y およびZ は前記と同義である。)
即ち、シクロペンテノンにトリメチルアルミニウムと当量のトルエンチオールを作用させて得られる反応液に4−トルエンスルホニルシアニドを作用させることによってチオール付加体(17)を得ることができる。チオール付加体(17)にジアゾメタン等のアルキル化試薬を作用させエノールエーテルとした後、過酸化水素あるいは過安息香酸を作用させることによって化合物(18)を得ることができる。これをリチウムジイソプロピルアミド(LDA) などの塩基性条件下でアルキルハライド(6) と反応させることにより化合物(19)を得ることができる。これを封管中有機溶媒の存在下グアニジンまたはその酸性塩と加熱することでカルボン酸エステル(5) を得ることができる。
【0040】一般に、6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン環をもつカルボン酸(2) は、対応するカルボン酸エステル(5) を化合物(4) から化合物(1) の製造法に準じて酸またはアルカリの存在下において加水分解することによって得ることができる。
【0041】次に、化合物(5) の内、R1が水酸基である化合物は次に示す反応工程で製造出来る。
【0042】
【化16】


【0043】
【化17】


【0044】上記工程中、R1は水酸基を示し、R2, R5, R6, R7,X, Y およびZ は前記と同義であり、R8はカルボキシル基の保護基を示す。2−カルボアルコキシ−2−シクロペンテン−1−オン(20)の合成は公知の方法で行うことができる。即ち、M.A.Guaciaroら Tetrahedrons, 47, 4661(1978)の方法に従い2−シクロペンテン−1−オンから合成するか、H.J.Reich らのJ.Am.Chem.Soc., 97, 5434(1975)の方法に従い、2−カルボエトキシシクロペンタノンから合成することによって本発明の目的に使用できる。
【0045】ケト体(21)はω−ハロゲノアルキル基結合のサイクリックカルボン酸エステル(6) をトリアルキルまたはトリフェニル錫ハイドライドとアゾビスイソブチロニトリルの存在下、2−カルボアルコキシ−2−シクロペンテン−1−オン(20)と反応させることによって合成できる。ケト体、即ち、シクロペンタノン環含有カルボン酸エステル(21)からエノールエーテル(22)への変換はジアゾメタンもしくはそのアナログ、2,2 −ジメトキシプロパンとパラトルエンスルホン酸、又はオルトギ酸エステルなど一般的な水酸基への保護基導入試薬を作用させることによって円滑に進行する。
【0046】1−アルコキシ−2−アルコキシカルボニル−3−置換アルキル−5−ハロゲノ−1−シクロペンテン化合物(23)は上記のエノールエーテル(22)にN−ハロゲン化アミド(イミド)化合物を、熱あるいは光照射の下で作用させるとアリル位のハロゲン化が起こり化合物(23)を得ることができる。N−ハロゲン化アミド(イミド)化合物としては、例えば 1,3−ジブロモ−5,5 −ジメチルヒダントイン、N, N−ジクロロウレタン、N−クロロ−あるいはN−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−クロロ−N−シクロヘキシルベンゼンスルホンアミド、ターシャリーブチルハイポクロリド等を用いることができる。
【0047】ハロゲン化化合物(23)に脂肪族あるいは芳香族チオールを作用させることによって対応するチオール化合物(24)を得ることができる。脂肪族あるいは芳香族チオールとしてはベンゼンチオール、置換されたベンゼンチオール(置換基はアルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン等の基)、各種のアルキルチオール(アルキル基はエチル、ブチル、オクチル、イソプロピル、ターシャリーブチル等の基)を使用することができる。これらの脂肪族あるいは芳香族チオールはチオールアルカリ金属塩としてこの反応に用いることもできる。
【0048】次に1N塩酸を用いてチオール化合物(24)を再びケト体、即ちシクロペンタノン環含有カルボン酸エステル(25)に変換した後、常圧下または封管中、加温下にグアニジンと反応させて閉環し、2−アミノ−4−ハイドロキシ−6,7 −ジヒドロ−5H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン化合物(26)を得ることができる。グアニジンはその塩酸塩あるいはその他の塩をカリウムt−ブトキシドあるいはその他のアルコキシドを用いて得ることができる。グアニジンはシクロペンタノン環含有カルボン酸エステル(25)に対し過剰(2〜20倍モル、好ましくは5〜10倍モル)を用い、溶媒はプロティック溶媒、例えばメタノール、エタノール、メトキシエタノール、プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等の使用が好ましく、温度は10〜 200℃、好ましくは12〜 185℃、反応時間は8〜70時間が好ましい条件として挙げられる。但し、高温度、長時間の反応条件下では直接カルボン酸が得られる場合もある。次に2−アミノ−4−ハイドロキシ−6,7 −ジヒドロ−5H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン化合物(26)を過安息香酸等の過酸化物類で室温あるいは氷冷下で処理することにより対応するスルホキシドに変換することができる。このもののスルホキシド基は加熱によって脱離し対応するオレフィン化合物(27) を得ることができる。この場合トリアルキルホスファイトあるいは第3級塩基を存在させると好ましい結果が得られることがある。オレフィン化合物(27)は 6,7−ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン化合物(5) の他に5−置換−5H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン化合物(5a)および5−置換−7H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン化合物(5b)を含有する。これらは液体クロマトグラフィー等の一般の分離操作により各々分離できる。6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン化合物(5) のエステル基を脱保護することによって前述のカルボン酸化合物(2) を得ることができる。
【0049】次に化合物(5) のうち、R1がアミノ基、X が−NH−または−NR9−(R9はアシル基、アルキル基またはY とともに縮合環を形成する2価の官能基を示す)を含む場合(X=X'−NR9−または−X'−NH−(X'はアルキレン基を示す))、化合物(5)は以下に示す反応工程で製造できる。
【0050】
【化18】


【0051】
【化19】


【0052】上記工程中、R1はアミノ基を示し、R2, R5, R6, R7, R9 , X', YおよびZ は前記と同義であり、R10 は水酸基の保護基としてのアシル基を示す。ω−ハロゲノアルキル化合物(28)を2−シアノシクロペンテン−1−オン(7)と反応させることにより3−(アシロキシアルキル)−2−シアノシクロペンタン−1−オン(29)が合成できる。この場合、反応を化合物(8) の合成法に準じて実施できる。3−(アシロキシアルキル)−2−シアノシクロペンタン−1−オン(29)から対応するエノールエーテル(30)への変換は前記化合物(8) から化合物(9) を導く反応に準じて行うことができる。以下、1−アルコキシ−2−シアノ−3−(アシロキシアルキル)−5−ハロゲノ−1−シクロペンテン化合物(31)、対応するアルキルチオ化合物(32)、2,4−ジアミノ−7−アルキルチオ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン化合物(33)は前記の化合物(10)、(11)、(12)の合成反応と合成条件に準じて実施できる。R1がアミノ基、R2が水素原子またはメチル基である場合、グアニジンの代わりにホルムアミジンまたはアセトアミジンを使用するとよい。
【0053】また、次工程の2,4−ジアミノ−6,7−ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデンアルキル化合物(34)は前記の化合物(12)から化合物(13)および化合物(5) を得る方法に準じて実施できる。R2が水素原子またはメチル基である場合も、同様の合成反応によって達成できる。化合物(33)は反応中アシル基が脱離し直接アルキルアルコール(34)が得られる場合もあるが、アシル基が脱離しない場合はアシル基の性質に基づき適切な条件処理を行い対応するアルコール体(34)を得ることができる。次いでこれにハロゲン化試薬を作用させアルキルハロゲニド(35)とした後、アシルアミノ(R9=アシル基)またはアルキルアミノ(R9=アルキル基)結合の単環性または2環性芳香族カルボン酸エステル(36)と反応させることにより対応する化合物(5) (X=−X'−NR9−, R9=アシル基またはアルキル基)を得ることができる。2環性複素環の場合、R9がY に縮合する構造をとってもよい。その場合、R9は2価の官能基(例えばエチレン基、ビニレン基等を挙げることができる)を示す。R9がアミノ基の保護基、即ちアシル基である場合、R9の脱保護処理を行うことにより目的物(X=−X'−NH−)に導くことができる。以上の如くして重要中間体であるエステル化合物(5) を得ることができる。
【0054】本発明の化合物は有機酸または無機酸と薬理学的に許容しうる塩を生成することができる。塩生成に好適な酸の例は、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、クエン酸、マロン酸、サルチル酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、アスコルビン酸、メタンスルホン酸等を挙げることができる。有機酸塩又は無機酸塩は通常の方法で遊離塩基型のものに当量の酸を加えることにより調製されうる。遊離塩基は有機酸及び無機酸の塩を塩基で処理することにより再生しうる。水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、重炭酸ナトリウムの水溶液等がこの目的に好適である。また、本発明の化合物は好適な塩基を一種以上の遊離カルボキシル基と反応させることにより薬理学的に許容可能なカルボン酸塩を生成することができる。好適な塩基はアルカリ金属の水酸化物または炭酸塩、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び相当する炭酸塩、ならびにアンモニア、トリエチルアミン等のアルキルアミンのごとき窒素塩基等も含む。
【0055】本発明化合物(1) について具体的に例示すると、たとえば、・N−{4−〔2−(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{5−〔3−(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)プロピル〕−2−テノイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔3 −(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)プロピル〕−ベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{5−〔2−(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕−2−テノイル}−L−グルタミン酸・N−{5−〔2−(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−エチル−エチル〕−2−テノイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔2−(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−エチル−エチル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{5−〔2−(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−メチル−エチル〕−2−テノイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔2−(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−メチル−エチル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{5−〔3−(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−メチル−プロピル〕−2−テノイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔3−(2,4−ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−メチル−プロピル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔2−(2−アミノ−4−オキソ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{5−〔2−(2−アミノ−4−オキソ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕−2−テノイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔N'−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕−N'−メチル〕アミノベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔3−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−フロロプロピル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔3−(2−アミノ−4−オキソ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)プロピル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{5−〔3−(2−アミノ−4−オキソ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)プロピル〕−2−テノイル}−L−グルタミン酸・N−{1−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕インドール−5−イルカルボニル}−L−グルタミン酸・N−{1−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕−2,3 −ジヒドロインドール−5−イルカルボニル}−L−グルタミン酸・N−{5−〔2−(2−アミノ−4−オキソ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−エチル−エチル〕−2−テノイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔2−(2−アミノ−4−オキソ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−エチル−エチル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸・N−{5−〔2−(2−アミノ−4−オキソ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−メチル−エチル〕−2−テノイル}−L−グルタミン酸・N−{4−〔2−(2−アミノ−4−オキソ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)−1−メチル−エチル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸などが挙げられる。
【0056】
【発明の効果】本発明化合物の効果を記述するため以下の薬理実験例を示す。
実験例1 ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)阻害活性測定方法は基本的にはD.K.Misra らの方法(Nature, 189, 39−42(1961)に準拠した。また、DHFRはマウス白血病細胞 P388 細胞より調製した。調製法はJ. M.Whiteleyらの方法 (Arch.Biochem.Biophys., 150, 15−22(1972)) に準拠した。方法はリン酸カリウム緩衝液 (pH7.5 、75mM) 、メルカプトエタノール(7.5mM)、NADPH(0.25mM) からなる溶液に精製したDHFR液を加えて全量を0.75mlとする。これに本発明化合物の系列希釈液を各々0.015ml 加え37℃で5分間の予備加温を行なう。次にジヒドロ葉酸の25μM 溶液0.015ml を加え、37℃で5分間の反応を行なう。1分間あたりの339nm の吸光度の減少を測定しテトラヒドロ葉酸の生成量を求め、対照液(化合物は加えない)との比較のもとに、各化合物の50%DHFR阻害濃度(IC50)を算出する。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】


【0058】実験例2 腫瘍細胞増殖阻害活性腫瘍細胞はマウス白血病細胞P388細胞、マウス白血病細胞P388/MTXr E-2細胞、マウス結腸癌細胞Colon26 細胞、ヒト鼻咽空癌細胞KB細胞を用いた。RPMI−1640培地(10%牛胎児血清) に調整された上記各癌細胞液をピペットを使い、一定量ずつ96穴マイクロプレートに入れる。これらを5%CO2 含有の炭酸ガス培養器に入れ、37℃、1日培養する。本発明化合物をDMSOで溶解後、培養液を加え系列希釈液を調製する。これらの液を培養細胞の入った各穴に一定量ずつ加えた後、37℃で3日間培養する。生細胞をMTT法で測定し、50%細胞増殖抑制濃度(IC50)を求める。測定方法はM.C.Alley らによる方法(Cancer Research, 48, 589 −601(1988))に準拠した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】


【0060】上記実験例によって本発明化合物はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)阻害作用を有し、マウス白血病細胞P388、マウス白血病細胞P388/MTXr E-2、マウス結腸癌細胞Colon26 細胞、ヒト鼻咽空癌細胞KB細胞等に明確な増殖阻害を示す。本発明化合物は、そのまま又は薬理学的に許容可能なカルボン酸塩又は酸付加塩の形態にて経口投与もしくは非経口投与により投与することができる。投与量は病状の程度;患者の体重、年令、性別、感受性差;投与方法(ルート)、投与間隔(スケジュール);有効成分の種類;医薬製剤の種類、性質等によって異なり、特に限定されない。しかし、通常1日あたりの投薬量は60kg (1.62m2/man)の体重の被験者にたいし1mg〜300mg /man 、好ましくは10mg〜150mg /manであり1日1回の連投、または週1〜3回の間欠投与が行なわれる。
【0061】本発明化合物の経口治療投与に適した形態としては錠剤、バッカル剤、カプセル、けん濁液、シロップ、トローチ等を挙げることができる。活性化合物の賦形剤に対する各製剤中の比率(%)は投薬単位の約0.5 〜50%の重量であることが便利である。このような活性化合物の量は好適な投薬量がえられるような量である。錠剤、カプセル、トローチ等はトラガントゴム、アラビアゴム、澱粉、ゼラチン、のごとき結合剤;リン酸二カルシウム、各種澱粉、アルギン酸、ステアリン酸等の賦形薬、崩壊剤、滑剤が添加されてもよい。錠剤、カプセル等は被覆剤としてメチルセルロース、シェラック、砂糖等で被覆されてもよい。本発明化合物の非経口治療投与に適した形態としては注射剤、分散液、乳化液等がある。活性化合物の溶液はヒドロキシプロピルセルロースのごとき界面活性剤と混合して水中で調製することができる。注射剤は無菌の水性溶液または分散液、および注射溶液の用時調製用−無菌粉末を含む。担体は水、エタノール、グリセロール、ポリオールそれらの混合物および植物油を含む溶媒であってもよい。分散液はグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物を含む水中および油中で調製することができる。注射溶液の用時調製用−無菌粉末の好ましい調製方法は滅菌濾過された溶液について減圧濃縮乾燥または凍結乾燥を行ない所望の活性成分とする方法等である。
【0062】
【実施例】次に製造例および実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の製造例及び実施例に限定されるものではない。尚、例中の構造式において、Meはメチル基、Etはエチル基、t-Buはtert−ブチル基を示す。
【0063】製造例12−シアノ−2−シクロペンテン−1−オンの製造
【0064】
【化20】


【0065】p−トルエンチオール(13.7g、0.11mol)の無水塩化メチレン溶液を窒素気流中氷冷下に撹拌し、これにトリメチルアルミニウム(7.9g、0.11mol)のヘキサン溶液を加えた後、約20分撹拌した。反応液をドライアイス−アセトン浴で冷却し、これに2−シクロペンテノン(8.41g、0.10mol)の塩化メチレン溶液を滴下し、更に30分撹拌した。反応液を無水テトラヒドロフランで希釈後、−50℃以下で、p−トルエンスルホニルシアニド (22.9g、0.12mol)のテトラヒドロフラン溶液を加え、約30分撹拌した後、さらに氷浴中で約60分撹拌した。メタノール約40mlを滴下した後、ジエチルエーテルを加え、これを塩酸水、炭酸水素ナトリウム水、及び食塩水で洗った後、脱水し、濃縮し、濃縮液を静置するか、少量のn−ヘキサン:酢酸エチル=1:1混液を加えて静置しておくと、2−シアノ−3−(4−メチルフェニル)チオ−1−シクロペンタノンの結晶粉末が析出した。収量22g。
【0066】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :1.82〜2.00(m,1H),2.37(s,3H),2.30〜2.60(m,3H),3.04(d,J=9.6Hz,1H),3.68〜3.78(m,1H),7.20(d,J=8.4Hz,2H),7.42(d,J=8.4Hz,2H)先の操作で得られた化合物(10g、43mmol) をテトラヒドロフランに溶解し、シリカゲルカラムに吸着させた後、n−ヘキサン−酢酸エチル混液を展開液とするクロマトグラフィーを行い、目的物含有の分画を濃縮して無色〜黄色の油状の目的化合物を得た。収量2.9 g。
【0067】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :2.55〜2.58(m,2H), 2.90〜2.94((m,2H),8.32(t,J=2.8Hz,1H)IR(neat) ν (cm-1):2238,1728,1607製造例24−ビニル安息香酸 ターシャリーブチルエステルの製造
【0068】
【化21】


【0069】メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(18.2g、50.9mmol) を無水テトラヒドロフランに懸濁し、窒素気流中ドライアイス−アセトン冷却下にn−ブチルリチウム1.6Mヘキサン溶液(49.7mmol)を加え、しばらく撹拌後、氷冷下に約30分間撹拌した。これに、テレフタルアルデヒド酸 ターシャリーブチルエステル(10g、48.5mmol) の無水テトラヒドロフラン溶液を加え、約40分撹拌した。生成する沈澱物を濾去後、濾液を濃縮乾固し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (展開液 n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1) で精製すると目的化合物が得られた。収量8.47g。
【0070】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :1.59(s,9H),5.36(d-d,J=0.8Hz,10.8Hz,1H),5.84(d-d,J=0.8Hz,17.6Hz,1H),6.74(d-d,J=10.8Hz,17.6Hz,1H),7.43(d,J=8.0Hz,2H),7.94(d,J=8.0Hz,2H)IR(neat) ν (cm-1):2978,1710,1292,1166,916製造例34−(2−ヒドロキシエチル)安息香酸 ターシャリーブチルエステルの製造
【0071】
【化22】


【0072】4−ビニル安息香酸 ターシャリーブチルエステル(8.47g、42.1mmol) の無水テトラヒドロフラン溶液に、窒素気流中9−ボラビシクロ〔3.3.1 〕ノナン(9−BBN、5.65g、46.3mmol) の無水テトラヒドロフラン溶液を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に水15ml、ついで3N NaOH 17mlを加えた後、30%過酸化水素水を50℃以下で滴下した。そのまま1時間撹拌した後、反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、脱水後、溶媒留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムグラフィー (展開液 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製すると目的化合物が得られた。収量8.71g。
【0073】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :1.41(t,J=6.6Hz),1.59(s,9H),2.92(t,J=6.6Hz,2H),3.88(q,J=6.6Hz,2H),7.28(d,J=8.0Hz,2H),7.93(d,J=8.0Hz,2H)IR(neat) ν (cm-1):3150〜3700,2978,1713,1294,1167製造例44−(2−ブロモエチル)安息香酸 ターシャリーブチルエステルの製造
【0074】
【化23】


【0075】4−(2−ヒドロキシエチル)安息香酸 ターシャリーブチルエステル(8.7g、39.1mmlo) 及びトリエチルアミン(5.9g、58.7mmol) の塩化メチレン溶液に、ドライアイス−アセトン冷却下に、メタンスルホニルクロライド (5.8 g、50.8mmol) の塩化メチレン溶液を滴下し、氷冷下で30分撹拌した。反応液に0.5N亜硫酸水素ナトリウム水を加え撹拌後、有機層を分取した。これを食塩水で洗浄後、乾燥し、溶媒を留去するとメタンスルホン酸エステル11.7gが得られた。これを2−ブタノンに溶解し、臭化リチウム(5.1g、58.4mmol) を加え窒素気流中65℃で12時間撹拌した。室温放置し生成した析出物を濾去し、濾液を濃縮乾固後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (展開液 n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製すると目的化合物が得られた。無色〜淡褐色の結晶9.8 gを得た。
【0076】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :1.59(s,9H),3.21(t,J=7.2Hz,2H),3.58(t,J=7.2Hz,2H),7.26(d,J=8.0Hz,2H),7.94(d,J=8.0Hz,2H)製造例54−〔2−(2−シアノ−1−シクロペンタノン−3−イル)エチル〕安息香酸ターシャリーブチルエステルの製造
【0077】
【化24】


【0078】4−(2−ブロモエチル)安息香酸 ターシャリーブチルエステル(3.21g、11.3mmol) を無水ベンゼンに溶解し、加熱還流下で、製造例1で得られた2−シアノ−2−シクロペンテン−1−オン(2.41g、22.5mmol) の無水ベンゼン溶液ならびにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.05g、触媒量) 及びトリ−n−ブチルチンハイドライド(3.62g、12.4mmol) の無水ベンゼン溶液を同時に徐々に滴下した。約20分加熱還流した後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製すると目的物が得られた。収量0.43g。
【0079】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :1.59(s,9H),1.78 〜1.96(m,1H), 2.02〜2.22(m,1H), 2.24〜2.58(m,4H),2.76〜2.94(m,3H),7.26(d,J=8.2Hz,2H),7.93(d,J=8.2Hz,2H)IR(neat) ν (cm-1):2977,2933,2246,1760,1713Mass(FAB) M+H+=314製造例64−〔2−(2−シアノ−3−メトキシ−2−シクロペンテン−1−イル)エチル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステルの製造
【0080】
【化25】


【0081】4−〔2−(2−シアノ−1−シクロペンタノン−3−イル)エチル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステル(0.43g、1.37mmol) と、N,N −ジイソプロピルエチルアミン(0.21g、1.64mmol) をメタノール−アセトニトリル(1:5)混液に溶解し、これに10重量%のトリメチルシリルジアゾメタンのヘキサン溶液3.2 gを加え室温で2時間撹拌した。少量の酢酸を加え撹拌した後、溶媒を留去した。残渣をジエチルエーテルに溶解し、希塩酸、希アルカリ、食塩水で洗浄後、脱水し、濃縮乾固した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると目的物が得られた。収量0.23g。
【0082】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :1.52〜1.72(m,2H),1.59((s,9H), 2.02〜2.18(m,2H), 2.46〜2.52(m,2H),2.62〜2.82(m,2H), 2.82〜2.94(m,1H),4.05(s,3H),7.24(d,J=8.2Hz,2H),7.90(d,J=8.2Hz,2H)IR(neat) ν (cm-1):2977,2933,2203,1710,1632Mass(FAB) M+H+=328製造例74−〔3−(2−シアノ−1−シクロペンタノン−3−イル)プロピル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステルの製造
【0083】
【化26】


【0084】4−(3−ブロモプロピル)安息香酸 ターシャリーブチルエステル(1.5g、5mmol)を出発原料とし、製造例5と同様の方法で、対応する目的物を得た。収量0.43g。
【0085】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :1.40〜1.66(m,2H),1.59(s,9H),1.70〜1.92(m,3H), 2.20〜2.56(m,4H),2.60〜2.80(m,2H),2.81(d,J=11.6Hz,1H),7.22(d,J=8.0Hz,2H),7.91(d,J=8.0Hz,2H)IR(neat) ν (cm-1):2958,2932,2248,1760,1710Mass(EI) M+=327製造例84−〔3−(2−シアノ−3−メトキシ−2−シクロペンテン−1−イル)プロピル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステルの製造
【0086】
【化27】


【0087】製造例7で得られた化合物(0.41g) を出発原料とし、製造例6と同様の方法で反応することにより目的物が得られた。収量0.31g。
【0088】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :1.30〜1.41(m,1H), 1.41〜1.55(m,1H),1.59(s,9H),1.55〜1.82(m,3H),2.02〜2.12(m,1H),2.42 〜2.48(m,2H), 2.61〜2.76(m,2H),2.82 〜2.91(m,1H),4.03(s,3H),7.22(d,J=8.0Hz,2H),7.90(d,J=8.0Hz,2H)IR(neat) ν (cm-1):2978,2935,2203,1712,1632Mass(EI) M+=341製造例94−〔3−(4−フェニルチオ−2−シアノ−3−メトキシ−2−シクロペンテン−1−イル)プロピル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステルの製造
【0089】
【化28】


【0090】製造例8で得られた4−〔3−(2−シアノ−3−メトキシ−2−シクロペンテン−1−イル)プロピル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステル(7.4g,21.7mmol)と、N,N−ジクロロウレタン(2.8ml, 23.9mmol)をベンゼンに溶解し、これに高圧水銀灯により紫外線照射下室温で1時間攪拌した。少量の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え攪拌した後、溶媒を留去した。残渣にエーテルおよびベンゼンチオール(11ml, 107mmol)と、水酸化ナトリウム(4.3g, 108mmol)の水溶液、および触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウムと臭化ベンジルトリエチルアンモニウムを加え攪拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、抽出液を乾燥後、溶媒を留去することで得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開液n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製すると目的化合物が得られた。収量6.8 g。
【0091】1H-NMR(CDCl3)δ(ppm) :7.93〜7.88(m,2H), 7.39〜7.16(m,7H),4.18(s,3H),4.02(ddd,J=0.8,6.4,9.2Hz,1H×0.7),3.94(dt,J=4.0,16.8Hz,1H×0.3), 2.77〜2.48(m,5H),1.59(s,9H),1.68〜1.47(m,4H)製造例104−〔3−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロ−7−フェニルチオ−5H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イル)プロピル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステル
【0092】
【化29】


【0093】製造例9で得られた4−〔3−(4−フェニルチオ−2−シアノ−3−メトキシ−2−シクロペンテン−1−イル)プロピル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステル(6.8g, 15mmol) と炭酸グアニジン(6.0g, 33mmol)を2−メチル−2−プロパノールに混合し、窒素雰囲気下、耐圧反応器に入れ攪拌下に 150±3℃で19時間加熱した。反応液を放冷し、沈澱物を濾去後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液 クロロホルム:メタノール=10:1)で分離精製すると目的物が1.2g(2.5mmol) 得られた。
【0094】1H-NMR(CDCl3)δ(ppm) :7.90(d,J=5Hz,2H),7.40(d,J=4Hz,2H),7.29〜7.15(m,5H),5.18(brs,2H),4.88(brs,2H×0.5),4.83(brs,2H×0.5),4.41(dd,J=6.3,7.8Hz,1H×0.5),4.35(dd,J=4.0,8.8Hz,1H×0.5), 2.95〜2.80(m,1H), 2.67〜2.56(m,3H), 2.40〜2.15(m,1H), 1.65〜1.52(m,4H),1.59(s,9H)製造例114−〔2−(4−フェニルチオ−2−シアノ−3−メトキシ−2−シクロペンテン−1−イル)エチル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステルの製造
【0095】
【化30】


【0096】製造例6で得られた4−〔2−(2−シアノ−3−メトキシ−2−シクロペンテン−1−イル)エチル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステル(3.5g, 10.7mmol) とN,N−ジクロロウレタン(1.8ml, 15.4mmol)をベンゼンに溶解し、これに高圧水銀灯により紫外線照射下室温で30分間攪拌した。少量の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え攪拌した後、溶媒を留去した。残渣にエーテル、およびベンゼンチオール(5.5ml, 54mmol)と、水酸化ナトリウム(2.1g, 53mmol)の水溶液、および触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウムと臭化ベンジルトリエチルアンモニウムを加え攪拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、抽出液を乾燥後、溶媒を留去することで得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開液n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製すると目的化合物が2.6g得られた。
【0097】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :7.89(d,J=8.0Hz,2H), 7.43〜7.29(m,5H),7.16(d,J=8.0Hz,2H),4.19(s,3H),4.04(ddd,J=1.0,6.2,9.2Hz,1H×0.8),3.79(ddd,J=1.8,2.6,8.6Hz,1H×0.2),2.81〜2.48(m,3H), 2.06〜1.86(m,2H), 1.67〜1.55(m,2H),1.59(s,9H)製造例124−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロ−7−フェニルチオ−5H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イル)エチル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステルの製造
【0098】
【化31】


【0099】製造例11で得られた4−〔2−(4−フェニルチオ−2−シアノ−3−メトキシ−2−シクロペンテン−1−イル)エチル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステルを原料に用い、製造例10と同様の方法で合成した。
【0100】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) :7.92〜7.88(m,2H), 7.49〜7.40(m,2H), 7.34〜7.16(m,5H),5.31(brs,2H),4.92(brs,2H),4.45(t,J=8Hz,1H×0.5),4.39(dd,J=4,8Hz,1H×0.5), 2.97〜2.28(m,5H), 1.70〜1.55(m,2H),1.59(s,9H)実施例14−〔3−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)プロピル〕安息香酸の製造
【0101】
【化32】


【0102】製造例10で得られた4−〔3−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロ−7−フェニルチオ−5H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イル)プロピル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステルのジクロロメタン溶液に対して、氷冷下3−クロロ過安息香酸(650mg,3.7mmol)を徐々に加えた。氷冷下15分間攪拌した後、チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え攪拌した。反応液をジクロロメタンで抽出した後、脱水し、溶媒を留去した。残渣に、亜リン酸トリメチル(2.6ml、22mmol)のトルエン溶液 (50ml)を加え、30分還流した。反応液をそのまま濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより、リンおよびイオウ由来の煩雑物を取り除いた。これに対し、1規定塩酸−酢酸溶液(10ml)を加え、3時間攪拌した。反応液を濃縮し、残渣を145 ℃で3時間乾燥させることにより目的物400 mgを得た。
【0103】TLC(Merk Art.5715) CHCl3:CH3OH:CH3CO2H=10:1:1、 Rf=0.2実施例2N−{4−〔3−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)プロピル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸 ジエチルエステルの製造
【0104】
【化33】


【0105】実施例1で得られた4−〔3−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)プロピル〕安息香酸(400mg )をN,N−ジメチルホルムアミド(4ml)に溶解させ、氷冷下、グルタミン酸ジエチルエステル塩酸塩(523mg,2.2mmol)と、アジ化ジフェニルリン酸(0.5ml,2.3mmol) と、トリエチルアミン(0.8ml,5.7mmol) を加えた。そのまま、室温で終夜攪拌した後、溶媒を留去し、薄層クロマトグラフィー(展開液 クロロホルム:メタノール=10:1)により精製し、目的物を256mg 得た。
【0106】1H-NMR(CDCl3)δ(ppm) :7.73(d,J=8Hz,2H),7.25(d,J=8Hz,2H),7.13(d,J=2Hz,1H),5.22(tt,J=2,7Hz,1H),5.16(brs,2H),5.05(brs,2H),4.78(dt,J=5,8Hz,1H),4.21(dq,J=1,7Hz,2H),4.09(dq,J=2,7Hz,2H),2.71〜2.79(m,2H), 2.37〜2.64(m,6H), 2.25〜2.34(m,1H),2.12(dt,J=8,16Hz,1H),1.28(t,J=7Hz,3H),1.20(t,J=7Hz,3H)実施例3N−{4−〔3−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)プロピル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸の製造
【0107】
【化34】


【0108】実施例2で得られたN−{4−〔3−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)プロピル〕ベンゾイル〕−L−グルタミン酸 ジエチルエステルのテトラヒドロフラン−水溶液に対して1規定水酸化ナトリウム水溶液1.5ml を加え、室温で終夜攪拌した。反応液に1規定塩酸を加えることにより結晶が沈澱した。これを濾取乾燥することにより目的物を 140mg得た。
【0109】1H-NMR(DMSO-d6)δ(ppm) :8.49(d,J=8Hz,1H),7.78(d,J=8Hz,2H),7.32(d,J=8Hz,2H),6.25(brs,2H),6.01(s,2H),5.51(t,J=8Hz,1H),4.35(dt,J=12,4Hz,1H),2.74(t,J=8Hz,2H),2.52〜2.56(m,2H),2.30〜2.45(m,6H),2.05(dt,J=12,8Hz,1H),1.92(dt,J=24,8Hz,1H)TLC(Merk Art.5715) CHCl3:CH3OH:CH3CO2H=10:3:2、 Rf=0.34実施例44−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕安息香酸の製造
【0110】
【化35】


【0111】製造例12で得られた4−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロ−7−フェニルチオ−5H−シクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イル)エチル〕安息香酸 ターシャリーブチルエステルを原料に用い、実施例1と同様の方法で目的物を合成した。
TLC(Merk Art.5715) CHCl3:CH3OH:CH3CO2H=10:1:1、 Rf=0.2実施例5N−{4−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸 ジエチルエステルの製造
【0112】
【化36】


【0113】実施例4で得られた4−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕安息香酸を原料に用い、実施例2と同様の方法で合成した。
TLC(Merk Art.5715) CH2Cl2:C2H5OH=10:1、 Rf=0.5実施例6N−{4−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸の製造
【0114】
【化37】


【0115】実施例5で得られたN−{4−〔2−(2,4 −ジアミノ−6,7 −ジヒドロシクロペンタ〔d〕ピリミジン−5−イリデン)エチル〕ベンゾイル}−L−グルタミン酸 ジエチルエステルを原料に用い、実施例3と同様の方法で合成した。
【0116】1H-NMR(DMSO-d6)δ(ppm) :8.45(d,J=8Hz,1H),7.79(d,J=8Hz,2H),7.34(d,J=8Hz,2H),6.24(brs,2H),5.99(brs,2H),5.70(t,J=8Hz,1H),4.37(dd,J=8,12Hz,1H),3.47(t,J=8Hz,2H),2.35〜2.65(4H),2.31(t,J=12Hz,2H),2.04(dt,J=8,12Hz,1H),1.92(dt,J=8,12Hz,1H)MS(FAB)m/e:426 (MH

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(1) で表わされるピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【化1】


(式中、R1は水酸基またはアミノ基を示す。R2は水素原子、アミノ基またはメチル基を示す。X は1〜4個の原子からなる2価の直鎖状の基で置換基を有していてもよい。Y はフェニレン基、チエンジイル基、フランジイル基、チアゾールジイル基、インドールジイル基又はインドリンジイル基を示す。)
【請求項2】 Xが、炭素、窒素、酸素または硫黄から選ばれる1〜4個の原子からなる2価の直鎖状の基で、炭化水素基、ハロゲン原子あるいは置換または無置換アミノ基から選ばれる置換基を有していても良い基である請求項1記載のピリミジン環縮合シクロペンチリデンまたはその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】 一般式(2)
【化2】


(式中、R1、R2、X およびY は前記と同義である。)で表わされる化合物またはそのカルボキシル基における反応性誘導体と、一般式(3)
【化3】


(式中、RおよびR4は同一または異なるカルボキシル基の保護基を示す。)で表される化合物とを縮合させて、一般式(4)
【化4】


(式中、R1、R2、R3、R4、X およびY は前記と同義である。)で表されるカルボン酸エステル体を得、ついで、このエステル体を酸またはアルカリの存在下に加水分解することを特徴とする請求項1記載のピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の製造法。
【請求項4】 一般式(5)
【化5】


(式中、R1、R2、X およびY は請求項1記載のものと同義である。−COOR5 は保護基でエステル化されていてもよいカルボキシル基を示す。)で表される化合物またはその塩。
【請求項5】 請求項1に記載のピリミジン環縮合シクロペンチリデン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗腫瘍剤。

【特許番号】特許第3244325号(P3244325)
【登録日】平成13年10月26日(2001.10.26)
【発行日】平成14年1月7日(2002.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−30203
【出願日】平成5年2月19日(1993.2.19)
【公開番号】特開平6−239840
【公開日】平成6年8月30日(1994.8.30)
【審査請求日】平成12年1月19日(2000.1.19)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)