説明

ピンコネクタ

【課題】開口部から管体内への異物の浸入を十分に防ぐことができ、かつ、ピンの摺動自在な領域が十分に確保されたピンコネクタを提供する。
【解決手段】一端が開口部6とされ、他端が壁部7により閉じられた管体3と、この管体3に、先端を前記開口部6から外方へ突出させた状態で、かつ、該開口部6から外方へ抜け出すことを防止された状態で、該管体3の軸線方向に摺動自在に配置された柱状のピン12と、前記管体3内に配置され、前記ピン12を前記開口部6側へ付勢する付勢部材とを備え、前記ピン12の先端部を所定の接触部材と接触させて電気的導通を取る接触端部10としたピンコネクタ1Aにおいて、前記ピン12の前記開口部6から外方へ突出する部分に傘状の張り出し部13が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器等に設けられた接触部材にピンを接続させて電気的導通を取り、各種信号を入出力するピンコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種の電子機器の信号経路等と電気的導通を取る部材として、ピンコネクタを用いることが広く行われている。
従来、この種のピンコネクタとして、以下に説明するピンコネクタが知られている。
【0003】
図2は、上記従来のピンコネクタの一例を示す断面図である。
図2に示すように、ピンコネクタ1は、中空部2を有する管体3と、管体3に挿入された円柱状のピン4と、管体3の中空部2内に配置されたスプリング5とから概略構成されている。
【0004】
管体3は、導電性の金属等からなり、一端が開口した開口部6となっており、他端が壁部7により閉じた構成となっている。また、管体3の内壁はめっき処理されており、ピン4と接触した際に良好に電気的導通が取れるように構成されている。
開口部6は、後述するようにピン4を抜け止め状態で保持するため、カシメられており、これにより管体3は、開口部6付近において、内側に折曲した折曲部11を有した構成となっている。すなわち、管体3は、開口部6近傍において、ピン4の軸線方向先端側に向かってその外径を細めるように構成されている。
また、管体3の外壁もめっき処理されており、壁部7の外側を所定の基板等と半田付けできるように構成されている。
【0005】
円柱状のピン4は、導電性の金属等からなり、径の細い柱状部8と、径の太い柱状部9とからなっており、柱状部8の先端は、電子機器等との電気的導通をとるための接触端部10とされている。
また、ピン4は、管体3の開口部6を通して管体3の中空部2内に挿入されており、先端に形成された接触端部10が外方に突出するように配置されている。
【0006】
なお、ピン4は、軸線方向への摺動自在に構成されているが、管体3がその開口部6においてカシメられているため、径の太い柱状部9がカシメられて形成された折曲部11によって移動が規制されている。すなわち、ピン4は、開口部6から外方へ抜け出すことを防止された状態で、管体3の中空部2内に挿入されている。
また、径の太い柱状部9の径は、管体3の中空部2の内径と略等しい大きさで形成されており、径の太い柱状部9と、管体3の内壁とが接触し易いように構成されている。なお、径の太い柱状部9の後端面9aは、傾斜した面となっている。
【0007】
スプリング5は、管体3の中空部2内で、壁部7とピン4の後端面9aとの間に配置されており、ピン4を中空部2内から外方へ突出する向きに付勢を与えるように構成されている。
【0008】
以上の構成をしたピンコネクタ1は、導電性のピン4の径の太い柱状部9と、めっきされた管体3の内壁とが接触することで、ピン4と管体3との電気的導通が取られている。その結果、基板等に設けられた所定の接触部材に、ピン4の接触端部10を接触させると、接触部材と管体3の壁部7の外側に設けられた所定の基板等とが電気的に導通し、各種信号を入出力することが可能となる。
【0009】
また、ピン4を管体3の中空部2内に摺動自在に配置し、かつ、ピン4を管体3の外方へ突出する向きに付勢するスプリング5を用いることで、接触端部10と接触部材との間の距離にかかわらず、スプリング5が自在に伸縮することで、良好な接続状態が得られる。
【0010】
更に、スプリング5と接触する径の太い柱状部9の後端面9aが、傾斜した面となっていることから、柱状部9が管体3の軸線方向とは少しずれて摺動するので、管体3の内壁と良好に接触することができる。
【0011】
ところで、上記従来のピンコネクタ1には、管体3の開口部6からほこり等の異物等が管体3内に浸入するという問題があった。この結果、ピン4の径の太い柱状部9と管体3の内壁との間に異物が混入し、接触不良が生じて電気的導通が得られなくなるという不都合があった。
特に、微小な異物の浸入が原因となって接触不良が生じた場合、原因究明が難航するので、異物の浸入による不都合は大きかった。
【0012】
このような不都合を解消する方法として、ピン4の径の細い柱状部8にリングを設ける方法が知られている(特許文献1)。
この方法によれば、開口部から管体内に浸入しようとする異物を、リングによって防ぐことができ、ピンコネクタ内での接触不具合を低減することができる。
【特許文献1】実開昭58−91170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、異物の浸入を十分に防ぐことができないという問題があった。
すなわち、特許文献1に記載の方法では、リングをピンの径の細い柱状部に設けたことで、ピンの軸線方向先端側からの異物の浸入に対しては、ある程度防ぐことができるが、開口部付近での管体の側方からの異物の浸入に対しては、何ら防ぐことができない。
【0014】
また、異物の浸入を十分に防ぐためには、開口部から近接した位置にリングを設ける必要があるが、これではピンの摺動自在な領域が狭くなるという問題がある。すなわち、リングは、開口部よりも大きい大きさで構成されていることから、リングが開口部に接触することでピンの軸線方向管体内側への摺動を規制してしまい、摺動自在な領域を狭くしてしまうことになる。この結果、接触部材とピンの接触端部との距離によっては、接触できないという問題がある。
仮に、ピンの摺動自在な領域を十分に確保するため、開口部から遠いピンの接触端部付近にリングを設けると、今度は異物の浸入を十分に防ぐことができなくなるという問題があった。
【0015】
このような背景の下、開口部から管体内への異物の浸入を十分に防ぐことができ、かつ、ピンの摺動自在な領域が十分に確保されたピンコネクタが要望されていたが、有効適切なものは提供されていないのが実情である。
【0016】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、開口部から管体内への異物の浸入を十分に防ぐことができ、かつ、ピンの摺動自在な領域が十分に確保されたピンコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供している。
本発明のピンコネクタは、一端が開口部とされ、他端が壁部により閉じられた管体と、 この管体に、先端を前記開口部から外方へ突出させた状態で、かつ、該開口部から外方へ抜け出すことを防止された状態で、該管体の軸線方向に摺動自在に配置された柱状のピンと、前記管体内に配置され、前記ピンを前記開口部側へ付勢する付勢部材とを備え、前記ピンの先端部を所定の接触部材と接触させて電気的導通を取る接触端部としたピンコネクタにおいて、前記ピンの前記開口部から外方へ突出する部分に傘状の張り出し部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明のピンコネクタにおいては、前記張り出し部の先端縁の径が、前記管体の外径よりも大きいことが好ましい。
【0019】
また、本発明のピンコネクタにおいては、前記張り出し部は、前記ピンの先端側から径が広がるに従い、前記ピンの軸線方向管体側に向かって傾斜するように形成されていることが好ましい。
【0020】
また、本発明のピンコネクタにおいては、前記管体は、前記開口部近傍において、前記ピンの軸線方向先端側に向かってその外径を細めていることが好ましい。
【0021】
また、本発明のピンコネクタにおいては、前記付勢部材は、前記ピンの後端面に接触して該ピンを前記開口部側へ付勢するよう配置され、前記付勢部材と接触する前記ピンの後端面が傾斜した面とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
上記構成を採用した結果、ピンの先端側に傘状の張り出し部を設けたため、ピンの軸線方向先端側からだけでなく、開口部付近の管体の側方側からの異物の侵入をも防ぐことができる。これにより、ピンコネクタ内部での接触不具合を低減することができる。
また、ピンの先端側に張り出し部を設けたことで、ピンの摺動自在な領域を十分に確保することができ、かつ、開口部と張り出し部の先端縁との間の距離が狭いので、異物の浸入を十分に防ぐことができる。
【0023】
また、張り出し部の先端縁の径を、管体の外径よりも大きくしたことにより、より異物の浸入を防ぐことができる。
【0024】
また、張り出し部が、ピンの先端側から径が広がるに従い、ピンの軸線方向管体側に向かって傾斜するように形成されたことにより、より管体の側方からの異物の浸入を防ぐことができる。
【0025】
また、管体が、開口部近傍において、ピンの軸線方向先端側に向かってその外径を細めていることにより、より開口部への異物の浸入を防ぐことができる。
【0026】
また、付勢部材と接触するピンの後端面を傾斜した面としたことで、より良好にピンと管体の内壁を接触させて電気的導通を取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態であるピンコネクタについて、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるピンコネクタの概略構成を示した断面図である。
【0028】
本実施形態のピンコネクタ1Aは、図1に示すように、中空部2を有する管体3と、管体3に挿入された円柱状のピン12と、管体3の中空部2内に配置された付勢部材であるスプリング5とから概略構成されている。
【0029】
管体3は、導電性の金属等からなり、一端が開口した開口部6となっており、他端が壁部7により閉じた構成となっている。また、管体3の内壁はめっき処理されており、ピン12と接触した際に良好に電気的導通が取れるように構成されている。
開口部6は、後述するようにピン12を抜け止め状態で保持するためカシメられており、これにより管体3は、開口部6付近において内側に折曲した折曲部11を有した構成となっている。すなわち、管体3は、開口部6近傍においてピン12の軸線方向先端側に向かってその外径を細めるように構成されている。
また、管体3の外壁もめっき処理されており、壁部7の外側を所定の基板等と半田付けできるように構成されている。
【0030】
円柱状のピン12は、導電性の金属等からなり、径の細い柱状部8と、径の太い柱状部9とから概略構成されている。また、柱状部8の先端側には傘状の張り出し部13が設けられており、張り出し部13の先端は、電子機器等との電気的導通を取るための接触端部10とされている。
また、ピン12は、管体3の開口部6を通して管体3の中空部2内に挿入されており、張り出し部13及び先端に形成された接触端部10が管体3の外方に突出するように配置されている。
【0031】
なお、ピン12は、軸線方向への摺動自在に構成されているが、管体3がその開口部6においてカシメられているため、径の太い柱状部9がカシメられて形成された折曲部11によって移動が規制されている。すなわち、ピン12は、開口部6から外部へ抜け出すことを防止された状態で管体3の中空部2内に挿入されている。
また、径の太い柱状部9の径は、管体3の中空部2の内径と略等しい大きさで形成されており、径の太い柱状部9と、管体3の内壁とが接触し易いように構成されている。なお、径の太い柱状部9の後端面9aは、傾斜した面となっている。
【0032】
張り出し部13は、柱状部8の先端側に設けられており、柱状部8の先端側から径が広がるに従い、ピン12の軸線方向後端側(管体3側)に向かって傾斜するように形成されている。
【0033】
この場合、張り出し部13の下面13aは、柱状部8から離間するに従い、ピン12の軸線方向後端側へ傾斜しており、その付け根14より先端縁15が下方に位置している。
この張り出し部13の下面13aの形状は、管体3の開口部6付近に形成された折曲部11の外面形状に対応しており、ピン12が下方に移動した際、折曲部11が張り出し部13の下面13aに相対的にしっくりと嵌り込む形状とされている。
【0034】
また、この構成において、張り出し部13の先端縁15の径は、管体3の外径より大となるように形成されている。
【0035】
なお、柱状部8の先端部、すなわち張り出し部13の先端部でもある部分は、前述したように接触端部10とされている。
【0036】
付勢部材であるスプリング5は、管体3の中空部2内で、壁部7とピン12の後端面9aとの間に設置されており、ピン12を中空部2内から外方へ突出する向きに付勢を与えるように構成されている。
【0037】
以上の構成をしたピンコネクタ1Aは、導電性のピン4の径の太い柱状部9と、めっきされた管体3の内壁とが接触することで、ピン4と管体3との電気的導通が取られている。その結果、基板等に設けられた所定の接触部材に、ピンの接触端部10を接触させると、接触部材と管体3の壁部7の外側に設けられた所定の基板等とが電気的に導通し、各種信号を入出力することが可能となる。
【0038】
また、ピン12を管体3の中空部2内に摺動自在に配置し、かつ、ピン12を管体3の外方へ突出する向きに付勢するスプリング5を用いることで、接触端部10と接触部材との間の距離にかかわらず、スプリング5が自在に伸縮することで、良好な接続状態が得られる。
【0039】
また、スプリング5と接触する径の太い柱状部9の後端面9aが、傾斜した面となっていることから、柱状部9が管体3の軸線方向とは少しずれて摺動するので、管体3の内壁と良好に接触することができる。
【0040】
更に、本実施形態のピンコネクタ1Aは、傘状の張り出し部13が設けられたため、開口部6付近における、管体3の軸線方向側のみならず側方側からの異物の浸入をも防ぐことができる。
加えて、張り出し部13が、ピン12の先端側から径が広がるに従い、ピン12の軸線方向管体3側に向かって傾斜するように形成されたことにより、より管体の側方からの異物の浸入を防ぐことができる。
すなわち、張り出し部13が、管体3の開口部6側方付近を覆うことから、側方側からの異物を開口部6に近づけないことができる。
これにより、ピンコネクタ1A内での接触不具合を低減することができる。
【0041】
また、張り出し部13の先端縁15の径を、管体3の外径よりも大きく構成したことにより、開口部6から管体3内への異物の浸入をより効果的に防ぐことができる。
【0042】
また、管体3が、開口部6近傍において、ピン12の軸線方向先端側に向かってその外径を細めているので、異物が開口部6から浸入しにくくなっている。
【0043】
また、張り出し部13が、ピン12の軸線方向への摺動を制御するので、ピン12が管体3の中空部2内に埋没してしまうのを防ぐことができる。
【0044】
また、ピン4の軸線方向への摺動を制御する張り出し部13の下面13aの付け根14が、径の細い柱状部8の先端側に設けられたことにより、ピン12の軸線方向への摺動自在な領域を十分に確保することができる。
特に、張り出し部13の下面13aの形状を、開口部6付近の管体3の折曲部11の外面形状と対応させたことにより、ピン12の軸線方向中空部2内側への摺動を規制する張り出し部13の部位が、付け根14となる。これにより、張り出し部13の他の部分が、開口部6付近と接触することを抑え、ピン12の摺動領域を十分に確保することができ、かつ、張り出し部13の先端縁15が、より開口部6に近づくことができるようになり、開口部6を十分に覆うことができる。
【0045】
すなわち、張り出し部13の下面13aの形状を閉じ過ぎると、先端縁15が折曲部11と接触することでピン12の摺動が規制されるという不都合が生じ、逆に開き過ぎると、先端縁15と開口部6との距離が大きくなるという不都合が生じる。
したがって、張り出し部13の下面13aの形状を折曲部11の外面形状と対応させることで、摺動領域を広くし、かつ、異物の浸入を効果的に防ぐことができる。
【0046】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、本実施形態では、円柱状のピン12を用いて説明したが、角柱状のピンを用いても構わず、その際は、その形状に対応した中空部2を有する管体3を用いるのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、電子機器等に設けられた接触部材に、ピンを接続させて各種信号を入出力するピンコネクタに関するものであるから、電子機器を製造する電子機器製造業において幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の実施形態であるピンコネクタの概略構成を示した断面図である。
【図2】図2は、従来技術のピンコネクタの概略構成を示した断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1,1A・・・ピンコネクタ、3・・・管体、4,12・・・ピン、6・・・開口部、7・・・壁部、9a・・・後端面、10・・・接触端部、13・・・張り出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口部とされ、他端が壁部により閉じられた管体と、
この管体に、先端を前記開口部から外方へ突出させた状態で、かつ、該開口部から外方へ抜け出すことを防止された状態で、該管体の軸線方向に摺動自在に配置された柱状のピンと、
前記管体内に配置され、前記ピンを前記開口部側へ付勢する付勢部材とを備え、
前記ピンの先端部を所定の接触部材と接触させて電気的導通を取る接触端部としたピンコネクタにおいて、
前記ピンの前記開口部から外方へ突出する部分に傘状の張り出し部が設けられていることを特徴とするピンコネクタ。
【請求項2】
前記張り出し部の先端縁の径が、前記管体の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のピンコネクタ。
【請求項3】
前記張り出し部は、前記ピンの先端側から径が広がるに従い、前記ピンの軸線方向管体側に向かって傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピンコネクタ。
【請求項4】
前記管体は、前記開口部近傍において、前記ピンの軸線方向先端側に向かってその外径を細めていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のピンコネクタ。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記ピンの後端面に接触して該ピンを前記開口部側へ付勢するよう配置され、
前記付勢部材と接触する前記ピンの後端面が傾斜した面とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のピンコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−97772(P2010−97772A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266584(P2008−266584)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)