説明

ピーク流量測定装置

【課題】新規な方式を用いて、臨床または家庭環境で尿流量を測定するための低コストな器具を提供する。
【解決手段】ピーク流量測定器具は、流体を受け取るための流入口8、及び流出口3を備えた本体となる円筒1を有している。流入口8と流出口3とは、互いに間隙を形成して配置されている。円筒1の断面積は、流出口3の断面積より大きく、使用する場合、流入口8が流出口3の上方にあるように配置されている。これにより、ピーク流量測定器具で測定したピーク流量は、円筒1内の流体の最大の高さ11に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床分析用に、人間の被験者からの尿流量の最大速度、またはピーク速度を測定するために用いられる器具に関する。このような測定は、排尿障害の標準的な臨床的指標として有用である。この発明は、他の医療用途および産業用途のピーク流体流量の計測用の低コスト器具としても適用することもできる。
【背景技術】
【0002】
尿道の収縮または障害は、尿の流速を低減する。男性に一般的な状態の一例として、前立腺肥大がある。精神的外傷から生じる尿道損傷も、特に交通事故の被害者の場合に一般的である。一般に、15ml/秒を越えるピーク尿流速が、男性では一般的であると考えられる。10ml/秒未満のピーク流速は、排尿障害に関連している可能性が高い。従って、ピーク流速の測定は、医師に対して有用な診断指標を提供する。さらに、外科的手段、または薬学的手段による病気の治療の効果も、尿ピーク流速を測定することによって客観的に評価できる。
【0003】
低コストで、専門スタッフの存在を必要とせず、好ましくは患者が独力で使用可能なピーク尿流量測定の手段を提供することが望まれている。
当分野の先行技術では、本体がかなり大きかった。現在、大型の高価な電子装置を使用し、かなり高精度でピーク流量を測定し、尿サンプルを保持するための装置と組み合わせ、尿の実験解析を可能にすることも多い。このような装置は、操作するために特別に訓練したスタッフを必要とし、患者が尿サンプルを提供する際にスタッフが同席する必要がある。この患者のプライバシの侵害は、得られるテスト結果の精度に影響を与える可能性がある。特許文献1で説明されているような他の先行技術は、Willard Drakeの尿比重計に基づき、彼の1953年の特許文献2で説明されているようなマルチオリフィス設計の変形態様である。その簡単な測定容器とオリフィスの使用によって、この発明は、複雑さを著しく低減した設計と製造の容易性を提供し、排尿状態に苦しむ患者の素早いスクリーニングに適し、専門家の助けに頼る必要がなくなる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,753,249号明細書
【特許文献2】米国特許第2,648,981号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規な方式を用いて、臨床または家庭環境で尿流量を測定するための低コストな器具を提供する。その器具は、低コストな解決策が適切な他の医療または産業用途での液体流量の測定に適用することもでき、使い捨ての一度だけ使用する器具であることを選択的に含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、請求項1で指定したとおりのピーク流量測定器具を提供する。
本発明の別の形態は、請求項21で指定したとおりの流体の最大流速を決定する方法に関する。
本発明の好ましい形態は、請求項1に従属する請求項に指定されている。
本発明に係る装置は、一端が閉じ、他端が開いた中空の円筒として形成した本体を有する。使用中、円筒状の本体は垂直に保持し、その閉端を下向きにし、開端を最上部にする。閉端の小さなオリフィスによって、円筒内の液体は制限された速度で排出できる。円筒の開端は、制限されない自由な流れの条件下において、流体を導入するために利用できる。円筒の閉端内等のオリフィスを通過する流体は、流体の排出流の速度の二乗が、円筒内の流体の高さに比例するように挙動する。流体の高さとオリフィス半径の関係は、流体力学の技術における既知の式によって決定される。
【0007】
【数1】

【0008】
ここで、Kは、開口部の構成に関する定数である。
πr2は、開口部の面積である。
gは、重力による加速度である。
hは、管内の流体の高さである。
【0009】
従って、流体が円筒内に導入される際、流体の高さは最初は上昇し、それからオリフィスを介した流出が流入と適合する高さで安定化する。所望の流速と共に、測定に寄与する所望の全体積の流量に適するように、円筒およびオリフィスの寸法を選択すれば、円筒内の流体によって実現される最大高さがピーク流入速度を示すことになる。
【0010】
円筒は好ましくは透明材料から構成し、一人の臨床医または被験者自身が、流量測定中の流体によって実現された高さを書き留めることができるようにする。このような測定を補助するために、円筒の外面は、用途に適した複雑さの刻印または印刷した目盛りを有することができる。この発明の一実施例では、三つの色付きのバーからなる簡単な目盛りを用いる。男性の尿流量の測定のために、色付きのバーは円筒の閉端から、10ml/秒の流量に適した高さまで広げることができる。異なる色付きのバーは、10ml/秒の流量に適した高さから、15ml/秒の流量に適した高さまで広げることができる。第三の色の三番目のバーは、これを越えて広げることができる。目盛りを選択的に追加し、円筒の長さ全体に広がる適切な感熱材料の帯を含めることで、円筒内の暖かい流体によって得られた高さが観察者により明確に描かれるようにすることもできる。
円筒の開端は、好ましくは張り出した受け口または漏斗に接続し、円筒内への流体の導入を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、一例として添付の図面を参照しながら、この発明の一実施例を説明する。図1はピーク流量測定装置の概略断面を示しており、前記ピーク流量測定装置はこの実施例では、真空形成プラスチックまたは同様に技術を用いて製造される。本体を構成する円筒1は、内径30mm、長さ200mmである。円筒の閉端2は、直径4mmのオリフィス3によって穴が開けられている。円筒の上端は張り出し、受け取り漏斗8を構成する。
【0012】
図2は、円筒の外観を示している。円筒の外面には、管の長手方向に延びる幅約10mmの印刷ラベル4が貼り付けられる。ラベルは、その下側の領域5を赤色、中間の領域6を黄色、上側の領域7が緑色に着色されている。赤色5と黄色6との領域の境界は、円筒に導入される流体の10ml/秒の流速の維持に適した円筒内の流体の高さに対応している。黄色6と緑7との領域の境界は、円筒に導入される流体の15ml/秒の流速の維持に適した円筒内の流体の高さに対応している。
【0013】
図3は、使用中の器具を示している。患者のピーク尿流量を測定するために円筒は便器上に垂直に保持し、オリフィス3から放出する流体9を容易に処分できるようにする。また、流体の解析を次に行う必要がある場合、容器を設けることができる。それから、患者は自分の尿10を、受け取り漏斗8を介して、円筒の開端内に導く。尿の流れが貼り合わせ円筒1に入ると、尿の流出量と流入量とが均衡するまで、その内部の尿レベルは上昇し、バランスした時点でレベル11は一定に留まる。最後に、患者の尿流量が出尽くすと、器具が再び空になるまでそのレベルは低下する。付き添いまたは患者自身が、円筒内で到達した最も高いレベル11を観察し、それがラベル4の赤色5、黄色6、または緑色7の領域のどれに対応するかを書き留める。
【0014】
適切であると考えられる場合、他の色を用いてもよく領域の数は多くても少なくてもよい。別の同様の実施例では、ラベルの着色した領域は番号を付けた領域と置き換えられる。小児科で用いる他の実施例では、円筒およびオリフィスにより小さな寸法を採用し、着色したラベルは漫画のキャラクタを有するもの等と置き換え、三つの領域を識別する。
【0015】
別の実施例では、別個にまたはラベルと並べて、液晶または同様の感熱指示フィルムの帯を取り付ける。高温で尿が体から排出されると、浸漬された円筒壁は温度上昇する。適切な温度遷移および非可逆型の指示部を選択することによって、達成された尿流量の固定的な指示を表すことができる。さらなる改良においては、熱伝達を最大にするために、壁厚を低減した円筒の領域に帯が配置される。
【0016】
さらに別の実施例では、関係のある所定の測定流速において測定精度をより高めるために、円筒の内径をその長手方向に沿って変更できる。
他の実施例は図4に示されており、図4は重要な流速に関する所定の測定高さにおいて、円筒の直径をステップ状に増大させるように示されている。その中に排尿している被験者には当然のことながら、垂直方向下向きに円筒内を見ると、各ステップの段差部に同心円状のリングが観察される。各ステップの段差部が尿内に浸漬されると、被験者は尿が到達した高さがそのステップを越えたかどうかを容易に評価できる。図4の概略では、直径4.6mmのオリフィス3は、内径16mmの中空の円筒容器2の閉端に穴を開けている。オリフィスは斜面を備え、その直径が容器の閉端の厚さ方向に増大し、流体の流出に対して流体力学的に薄いオリフィスを提示させる。オリフィス12上方の36mmの高さで、容器の直径は20mmまで広がり、さらに乾燥した46mmの高さ13で再び24mmまで広がる。これらの高さは、オリフィスにおける流出速度の各々10ml/秒と、15ml/秒に対応するように選択する。第二ステップ上では、容器はさらに受け取り漏斗8まで広がる。図5aは、容器内のレベルが第一の段差のステップより下にあるとき、被験者が見るような上から容器内への図を示している。図5bは同じ図を示しているが、両方のステップの間のレベルまで尿が管に充填されており、図5cは同じ図で、レベルが両方の段差のステップを越えている。さらにステップの視認性を改善するために、ステップの縁に一連のピラミッド状の歯14を選択的に組み込み、横から光を当て、それらが尿内に浸漬している状態をさらによく観察者に視認できるようにすることもできる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5a)】

【図5b)】

【図5c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を受け取るための流入口、及び流出口を有する中空の本体を備えるピーク流量測定装置において、
前記流入口と前記流出口とは互いに間隙を形成して配置され、前記本体の断面積は流出口の断面積より大きく、前記流入口は使用時において前記流出口の上方に配置され、測定するピーク流量は前記本体内の流体の最大の高さに対応するピーク流量測定装置。
【請求項2】
前記流出口の断面は、円形状である請求項1記載のピーク流量測定装置。
【請求項3】
前記流出口は、流体の流出に対して、流体力学的に薄いオリフィスを形成するように設計されている請求項1または2記載のピーク流量測定装置。
【請求項4】
前記本体内の流体のピーク高さを決定するための測定手段をさらに備える請求項1、2または3記載のピーク流量測定装置。
【請求項5】
前記測定手段は、少なくとも一つの目印部を有する請求項4記載のピーク流量測定装置。
【請求項6】
前記測定手段は、少なくとも二つの異なる色のバーを有し、前記バーは各々が異なるピーク流速、またはピーク流速の範囲を示す請求項4または5記載のピーク流量測定装置。
【請求項7】
前記測定手段は感熱材料を有し、流体の高さを半永久的または永久的に指示する請求項4、5または6記載のピーク流量測定装置。
【請求項8】
前記感熱材料は、前記本体の壁に貼り付けられている請求項7記載のピーク流量測定装置。
【請求項9】
前記感熱材料は、壁厚が低減された前記本体の壁の一部に貼り付けられている請求項8記載のピーク流量測定装置。
【請求項10】
前記本体は、透明材料で形成されている請求項1から9のいずれか一項記載のピーク流量測定装置。
【請求項11】
前記流入口は、漏斗に接続可能である請求項1から10のいずれか一項記載のピーク流量測定装置。
【請求項12】
前記本体は、円筒状である請求項1から11のいずれか一項記載のピーク流量測定装置。
【請求項13】
前記本体の直径は30mmであり、前記流出口が形成するオリフィスの直径は4mmである請求項12記載のピーク流量測定装置。
【請求項14】
前記本体は、それぞれ断面積が異なる少なくとも二つの部分を有する請求項1から11のいずれか一項記載のピーク流量測定装置。
【請求項15】
前記本体の断面積は、ステップ状に変化する請求項14記載のピーク流量測定装置。
【請求項16】
前記本体を通過する流体のピーク高さを決定するための測定手段は、前記本体の断面積のステップ状の変化である請求項15記載のピーク流量測定装置。
【請求項17】
前記本体のステップ状の縁に、少なくとも一つのピラミッド形状の歯が組み込まれている請求項15または16記載のピーク流量測定装置。
【請求項18】
流体は、尿である請求項1から17のいずれか一項記載のピーク流量測定装置。
【請求項19】
流出する流体を受け取るための容器をさらに備える請求項1から18のいずれか一項記載のピーク流量測定装置。
【請求項20】
実質的に図面内に示され、当該図面を参照して説明されたピーク流量測定装置。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項記載のピーク流量測定装置を用いて、流体のピーク流速を決定する方法であって、
(a)前記流入口に流体を導入する段階と、
(b)前記本体内のピーク流体レベルを決定する段階を含み、
流体のピーク流速は、前記本体内の流体の最大高さに対応する流体のピーク流速の決定方法。

【公表番号】特表2007−528493(P2007−528493A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502399(P2007−502399)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000921
【国際公開番号】WO2005/087104
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506302479)ユニバーシティ オブ ニューキャッスル アプオン タイン (1)
【Fターム(参考)】