説明

ファインダ装置およびカメラ

【課題】2つの光学部材の間の空間からゴミを効率よく除去できるようにする。
【解決手段】コンデンサレンズ14とペンタプリズム17との間の空間SPは、四方をプリズムボックス8の壁部で囲まれた空間である。プリズムボックス8の壁部のうち上記空間SPと同位置の高さ位置に空気孔8aを設けることで、外部から空間SPに一直線状に空気を吹き込むことができるので、空気の勢いを衰えさせることなく空間SP内のゴミを効果的に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミ対策を講じたファインダ装置およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラのファインダ装置を構成する光学部品にゴミが付着すると、そのゴミがファインダ像と重なって視認されるおそれがある。特に焦点面に近い光学部品に付着したゴミは目立つため、撮影者に不快感を与える。ファインダ構成部品のうちユーザによる交換が可能な部材や、ミラーボックスに面した部位に付着したゴミは、ブロア等を用いて除去することができるが、ファインダ装置内の閉鎖された空間に面した部位に付着したゴミは、ファインダ装置を分解しないと除去できななかった。
【0003】
この問題に対し、上記閉鎖空間に高圧空気を導いてゴミを排除できるようにしたファインダ装置がある(例えば、特許文献1参照)。このファインダ装置では、2つの光学部材(コンデンサレンズとペンタプリズム)の間の空間が、周囲をファインダ保持部材で囲まれた閉鎖空間とされ、この閉鎖空間に空気を送り込むための空気孔が保持部材に設けられている。空気孔を介して閉鎖空間に高圧空気を送り込み、他の空気孔から空気を排出することで、閉鎖空間内のゴミを除去する。その後、全ての空気孔を塞ぐことで、閉鎖空間内への新たなゴミの侵入を防止する。
【0004】
【特許文献1】特開平11−109443号公報(図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、ファインダ保持部材の空気孔がペンタプリズムの側方に設けられているため、圧縮空気をコンデンサレンズとペンタプリズムの間の空間に直接送り込むことができない。すなわち、空気孔から上記空間に至るまでに折れ曲がった空気通路が存在し、空気孔から送り込んだ高圧空気は、空気通路の壁にぶつかった後に上記空間に流入する。このため空間に流入する空気の勢いが衰えてしまい、効率よくゴミを排出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るファインダ装置は、複数の光学部材を積層して保持部材に保持し、互いに対向する2つの光学部材の間に、保持部材の壁部によって周囲を囲まれた空間が形成されるものであって、保持部材の壁部には、閉鎖空間と外部とを連通する複数の空気孔が設けられ、少なくとも1つの空気孔は、複数の光学部材の積層方向において、2つの光学部材間の空間と同位置に設けられている。
本発明の他のファインダ装置では、上記少なくとも1つの空気孔を、外部からの空気が2つの光学部材間の空間にほぼ一直線状に流入可能な位置に設けて成る。
本発明に係るカメラは、上述したファインダ装置を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2つの光学部材の間の空間からゴミを効率よく除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図8により本発明の一実施の形態を説明する。
図1は本実施形態におけるデジタル一眼レフカメラの全体構成図である。1はカメラ本体、2はカメラ本体1に取り付けられる前ボディ、3は交換レンズ(不図示)が装着されるレンズマウントである。前ボディ2は、カメラ本体1内にミラーボックスMBを形成するとともに、図2に示すようにペンタユニットPUを保持する。ミラーボックスMB内に配置されたミラーユニットMUは、主ミラー4およびサブミラー5から成り、撮影光路に挿入される待機位置と、撮影光路から退避する撮影位置との間で回動可能とされる。
【0009】
ミラーユニットMUが待機位置にあるとき、撮影レンズの透過光束の一部は、主ミラー4で反射されてペンタユニットPUに導かれ、ペンタプリズム17から射出した光が接眼レンズ18〜20を介して観察される。これらのペンタユニットPUおよび接眼レンズ18〜20にてファインダ装置が構成される。一方、主ミラー4を透過した一部の光束は、サブミラー5で反射されて焦点検出モジュールAFMに導かれ、焦点検出に寄与する。撮影が指示されると、ミラーユニットMUが撮影位置に跳ね上げられ、撮影レンズの透過光束は、シャッタ6を介して撮像素子7に導かれる。
【0010】
図3はペンタユニットPUの分解斜視図、図4は組立後の断面図である。
ペンタユニットPUは、主ミラー4の反射光軸方向に積層された複数の構成部品9〜17(以下に詳述)を、保持部材としてのプリズムボックス8に保持して成る。プリズムボックス8を前ボディ2の上部に取り付けることで、ペンタユニットPUが前ボディ2に一体化される。
【0011】
フォーカシングスクリーン10は、スクリーン押さえ枠9を介してプリズムボックス8に固定される。ユーザによってフォーカシングスクリーン10が交換可能なカメラでは、フォーカシングスクリーン10を取り外すことでゴミを簡単に除去することができる。フォーカシングスクリーン10の上には、ファインダ視野範囲を制限するための視野マスク11が配置され、更にその上に拡散型液晶12が配置される。拡散型液晶12は、撮像素子7の記録範囲が変更されたとき、それに応じてファインダ像の観察範囲を変更するためのものである。拡散型液晶12の上部には、スペーサ13を介してコンデンサレンズ14が配置される。コンデンサレンズ14は、歪曲収差を補正するとともに、ピント面からの拡散光をアイポイントに集光させる役割を果たす。
【0012】
コンデンサレンズ14の上部には、スペーサ15を挟んで視野マスク16およびペンタプリズム17が配置される。スペーサ15は、例えば樹脂等の弾性部材で構成され、その弾性力でコンデンサレンズ14を常時押さえている。樹脂製のスペーサ15は、帯電し易いためゴミやケバが付着し易く、そこで、スペーサ15の内側側面に粘着剤を塗布することで、その内側側面に付着したゴミやケバがファインダ視野に入らないようにしている。視野マスク16は、液晶を用いたファインダ内表示の表示領域外をマスクするために設けられる。
【0013】
次に、ペンタユニットPUのゴミ対策について説明する。
図4から分かるように、コンデンサレンズ14とペンタプリズム17との間の空間は、四方をプリズムボックス8の壁部で囲まれた閉鎖空間SPとされ、組立時にこの空間SP内に微細なゴミが侵入すると、そのゴミがコンデンサレンズ14の上面(射出面)14aや、ペンタプリズム17の下面(入射面)に付着することがある。これらの面はフォーカシングスクリーン14、つまり焦点面に近いため、付着したゴミがファインダ観察時に比較的くっきり見えてしまい、撮影者が不快感を抱くおそれがある。
【0014】
そこで本実施形態では、空間SP内侵入したゴミを除去可能な構成とすべく、プリズムボックス8の壁部に、空間SPの内外を連通する一対の空気孔8a,8bを設けた。これらの空気孔8a,8bは、矩形状に配置されたプリズムボックス8の4つの壁部のうち、ファインダ画面の一方の短辺に対応する壁部において、空間SPと同一の高さ位置に形成される。そして、一方の空気孔8aは、外部から空間SPに空気を流入させるための孔として機能し、他方の空気孔8bは、空間SPから外部に空気を排出するための孔として機能する。
【0015】
カメラ製造時、ペンタユニットPUの組立てが完了すると、例えばエアコンプレッサを使用してごみ除去作業を行う。図4に示すように、エアコンプレッサのノズルNZを流入用の空気孔8aに正対させ、空間SPに空気を吹き込む。本実施形態では、空気孔8aが空間SPと同一の高さ位置に形成されているため、ノズルNZから発した高圧空気は、何らの部材にぶるかることもなく、勢いを保ったまま空間SPに直接、かつ一直線状に流入する。特に空気孔8aは、コンデンサレンズ14の上面(射出面)とほぼ同等の高さ位置にあるため、勢いを失っていない高圧空気は、コンデンサレンズ14の上面に沿って進み、各壁部にぶつかりつつ図5に示すような渦状の流れとなって空間内を隅々まで高速で流通し、次第に空気孔8bから外部に排出される。
【0016】
空間SP内で空気の流れの弱い箇所は殆どないので、空間内に存在していた多くのゴミ(コンデンサレンズ14の上面やペンタプリズム17の下面に付着していたゴミも含む)を外部に排出することができる。また、上述したようにスペーサ15の内側面に粘着剤を塗布しておけば、一部のゴミはそこに吸着されて留まり、コンデンサレンズ14の上面やペンタプリズム17の下面に付着することはない。
【0017】
ここで、空間SPのうち、ゴミ除去作業中に空気の流速が低下する箇所は、空気孔8aと8bの間の部分A(図6)である。このため、空気孔8a,8bの間隔は、なるべく短い方がよい。本実施形態では、プリズムボックス8の4つの壁部のうち、ファインダ画面の一方の短辺に対応する壁部に空気孔8a,8bを設けたので、空気孔8a,8bの間隔が短くなり、図示A部を小さくすることができる。また、空気孔8a,8bはそれぞれ両角部に近い位置に形成されているので、角部における空気の淀みもない。したがって、効果的なゴミの除去が可能である。
【0018】
因みに、特許文献1のようにファインダ画面の長辺に対応する壁部に空気孔8a,8bを設けた場合は、孔8a,8bの間隔が長くなるためA部が大きくなり(図7)、また図8のように長辺において空気孔8a,8bの間隔を狭めると、角部(B部,C部)でも空気の流速が低下し、いずれもゴミ除去効果が低下する。ただし、上述のように空気孔8a,8bを空間SPと同一高さ位置に設ければ、図7,図8の構成でもゴミ除去効果はそれなりに高い。
【0019】
ゴミ除去作業後、空気孔8a,8bを粘着テープ21(図2,図3)などで塞ぐと、空間SPはほぼ密閉空間となり、カメラがユーザの手に渡ってから空間SPにゴミが侵入することはない。
【0020】
なお、空間SPが形成される箇所は、コンデンサレンズ14とペンタプリズム17の間に限定されない。また、3以上の空気孔を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態におけるデジタル一眼レフカメラの構成図。
【図2】ペンタユニットと前ボディとを示す斜視図。
【図3】ペンタユニットの分解斜視図。
【図4】ペンタユニットをカメラ正面方向から見た断面図。
【図5】ペンタユニットの空間内における空気の流れを説明する平面断面図。
【図6】実施形態における空気孔の位置が有利なことを説明する図。
【図7】他の例における空気孔の位置が不利なことを説明する図。
【図8】図7と同様の図。
【符号の説明】
【0022】
8 プリズムボックス
8a,8b 空気孔
14 コンデンサレンズ
15 スペーサ
17 ペンタプリズム
PU ペンタユニット
SP 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学部材を積層して保持部材に保持し、互いに対向する2つの光学部材の間に、前記保持部材の壁部によって周囲を囲まれた空間が形成されるファインダ装置において、
前記保持部材の壁部には、前記閉鎖空間と外部とを連通する複数の空気孔が設けられ、少なくとも1つの空気孔は、前記複数の光学部材の積層方向において、前記2つの光学部材間の空間と同位置に設けられていることを特徴とするファインダ装置。
【請求項2】
少なくとも他の1つの空気孔は、前記複数の光学部材の積層方向において、前記2つの光学部材間の空間と同位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のファインダ装置。
【請求項3】
複数の光学部材を保持部材に保持して成り、互いに対向する2つの光学部材の間に、前記保持部材の壁部によって周囲を囲まれた空間が形成されるファインダ装置において、
前記保持部材の壁部には、前記閉鎖空間と外部とを連通する複数の空気孔が設けられ、少なくとも1つの空気孔は、外部からの空気が前記2つの光学部材間の空間にほぼ一直線状に流入可能な位置に設けられていることを特徴とするファインダ装置。
【請求項4】
少なくとも他の1つの空気孔は、前記空間内の空気が外部にほぼ一直線状に流入可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のファインダ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のファインダ装置を有するカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−37140(P2009−37140A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203171(P2007−203171)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】