説明

ファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板およびその製造方法

【課題】熱間圧延後の巻取りままで優れたファインブランキング性を有する高炭素熱延鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、N:0.01%以下、Al:0.10%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、組織全体に占める初析フェライト相の面積率が10%以下で、炭化物の球状化率が50%以上であるミクロ組織を有することを特徴とするファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品などの用途に好適な高炭素熱延鋼板、特に、熱間圧延後に焼鈍を施すことなく優れたファインブランキング性(精密打抜き性)を確保した高炭素熱延鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギア、ミッション、シートリクライナーなどの複雑な形状を有する自動車部品は、JIS G 4051に規定された機械構造用高炭素鋼板を切削やブランキングによって、あるいはさらに穴広げ加工などを施して、所望の形状に加工後、硬さを確保するために焼入れ焼戻し処理を施して製造されている。最近では、寸法精度の向上と製造工程の簡略化の観点から、i)ほぼ100%剪断面の平滑なブランキング端面が得られる、ii)寸法精度が高い、iii)複雑な形状を1回のブランキングで加工できるなどのメリットを有しているファインブランキングによる加工が採用されるようになっている。
【0003】
ファインブランキングは、工具間のクリアランスを通常のブランキングにおける鋼板厚みの5〜10%程度から鋼板厚みの2%以下程度にまで極めて小さく設定し、工具切刃付近の鋼板に圧縮応力を作用させてブランキングする方法である。そのため、被ブランキング材である高炭素鋼板は極めて厳しい加工を受けるので、100%剪断面の平滑なブランキング端面が得られず、ブランキング面にクラックが生じやすくなる。
【0004】
そこで、こうした問題の起きない、すなわちファインブランキング性に優れた高炭素鋼板が提案されている。例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.08〜0.19%、Si:0.50%以下、Mn:0.70〜1.50%、Cr:0.05〜0.80%、B:0.0005〜0.005%およびAl:0.08%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる複合成形加工性および短時間急速加熱焼入れ性にすぐれた精密打抜き用鋼板が開示されている。特許文献2には、質量%で、C:0.15〜0.90%、Si:0.4%以下、Mn:0.3〜1.0%、P:0.03%以下、全Al:0.10%以下、残部が実質的にFeの組成をもち、球状化率80%以上、平均粒径0.4〜1.0μmの炭化物がフェライトマトリックスに分散した組織をもち、JIS 5号引張試験片の平行部長手方向中央部における幅方向両サイドに開き角45度、深さ2mmのVノッチを入れた試験片を用いて引張試験し、平行部長手方向中央部の標点距離10mmに対する破断後の伸び率として表わされる切欠き引張伸びが20%以上である精密打抜き性に優れた高炭素鋼板が開示されている。特許文献3には、質量%で、C:0.15〜0.45%、Si:0.25%以下、Mn:0.3〜1.2%、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.01〜0.1%、N:0.008%以下を含有し、残部が不可避的不純物とFeの組成をもち、パーライト+セメンタイトの割合が10%以下、かつフェライト粒の平均粒径が10〜20μmのファインブランキング性に優れた高炭素鋼板が開示されている。特許文献4には、質量%で、C:0.1〜0.5%、Si:0.5%以下、Mn:0.2〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライトおよび炭化物を主体とする組織とを有し、前記フェライトの平均粒径が1〜10μm、前記炭化物の球状化率が80%以上で、かつ前記炭化物のうち、フェライトの結晶粒界に存在する炭化物の量Sgb={Son/(Son+Sin)}×100(Son:単位面積あたりに存在する炭化物のうち、フェライト粒界上に存在する炭化物の総占有面積、Sin:単位面積あたりに存在する炭化物のうち、フェライト粒内に存在する炭化物の総占有面積)が40%以上であるファインブランキング性に優れた鋼板が開示されている。
【0005】
このうち、特許文献1に記載の鋼板は巻取りままの熱延鋼板であり、特許文献2〜4の鋼板は巻取り後の熱延鋼板を焼鈍、あるいは冷間圧延後焼鈍を行って炭化物の球状化(特許文献2、4では、球状化率80%以上)が施された高炭素鋼板である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59-76861号公報
【特許文献2】特開2000-265240号公報
【特許文献3】特開2001-140037号公報
【特許文献4】特開2007-231416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の巻取りままの熱延鋼板では、100%剪断面の平滑なブランキング端面が得られず、ブランキング面にクラックが発生しやすくなり、ファインブランキング性に劣る。特許文献2〜4の鋼板では、球状化率80%を超える炭化物の球状化が図られているため、良好なファインブランキング性が得られるが、巻取り後の熱延鋼板を焼鈍、あるいは冷間圧延後焼鈍する必要があり、コスト高である。
【0008】
本発明は、巻取り後の熱延鋼板を焼鈍、あるいは冷間圧延後焼鈍することなく、すなわち低コストで、優れたファインブランキング性を有する巻取りままの高炭素熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、巻取りままで優れたファインブランキング性が得られる高炭素熱延鋼板鋭意検討した結果、以下のことを見出した。
【0010】
i) 成分組成を適正化した上で、組織全体に占める初析フェライト相の面積率が10%以下で、炭化物の球状化率が50%以上であるミクロ組織にすれば、巻取りままでも優れたファインブランキング性が得られる。
【0011】
ii) こうしたミクロ組織は、800〜950℃の仕上温度で熱間圧延した後、650℃以上の冷却開始温度から50℃/s以上の平均冷却速度で450〜600℃の冷却停止温度まで冷却し、3s以内に巻取る方法により得られる。
【0012】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、N:0.01%以下、Al:0.10%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、組織全体に占める初析フェライト相の面積率が10%以下で、炭化物の球状化率が50%以上であるミクロ組織を有することを特徴とするファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板を提供する。
【0013】
本発明の高炭素熱延鋼板では、上記の組成に加え、質量%で、B:0.0010〜0.0050%を含有させ、かつ0.50≦(14[B])/(10.8[N])の関係を満足させることが好ましい。ただし、[B]、[N]はそれぞれB、Nの含有量(質量%)を表す。さらにまた、質量%で、Ti、Nb、Vのうちの少なくとも1種:合計で0.1%以下、Ni、Cr、Moのうちの少なくとも1種:合計で1.5%以下、Sb、Snのうちの少なくとも1種:合計で0.003〜0.10%を、個別にあるいは同時に含有させることが好ましい。
【0014】
本発明の高炭素熱延鋼板は、上記の組成を有する鋼を、800〜950℃の仕上温度で熱間圧延した後、650℃以上の冷却開始温度から50℃/s以上の平均冷却速度で450〜600℃の冷却停止温度まで冷却し、3s以内に巻取る方法により製造可能である。
【0015】
本発明の製造方法では、巻取り後の鋼板を、巻取られた状態で保熱装置に装入することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、低コストで、優れたファインブランキング性を有する巻取りままの高炭素熱延鋼板を製造できるようになった。本発明の高炭素熱延鋼板は、ギア、ミッション、シートリクライナーなどの自動車用部品に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明である高炭素熱延鋼板およびその製造方法について詳細に説明する。なお、成分の含有量の単位である「%」は特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
【0018】
1) 組成
C:0.10〜0.40%
C量が0.1%未満では自動車部品として要求される焼入れ後の硬さを得ることができなくなる。一方、C量が0.40%を超えると鋼板が硬質化し、ブランキング時の金型への負荷が大きくなりすぎ、ブランキング用金型寿命が工業的に十分なほどに確保できなくなる。したがって、C量は0.10〜0.40%とする。
【0019】
Si:1.0%以下
Si量が1.0%を超えるとフェライト相が硬質化し、ファインブランキング性が低下したり、赤スケールと呼ばれる表面欠陥が発生する。したがって、Si量は1.0%以下、好ましくは0.35%以下とする。
【0020】
Mn:2.0%以下
Mn量が2.0%を超えるとフェライト相が硬質化し、ファインブランキング性が低下する。したがって、Mn量は2.0%以下とする。なお、焼入れ性向上のために、Mn量は0.2%以上とすることが好ましい。
【0021】
P:0.03%以下
P量が0.03%を超えると粒界等に偏析し、ファインブランキング性などの加工性が低下する。したがって、P量は0.03%以下、好ましくは0.02%以下とするが、少ないほどより好ましい。
【0022】
S:0.03%以下
S量が0.03%を超えると硫化物を形成し、ファインブランキング性などの加工性が低下したり、焼入れ後の靱性が低下する。したがって、S量は0.03%以下、好ましくは0.02%以下とする。
【0023】
N:0.01%以下
NはAl等と窒化物を形成し、オーステナイト粒の粗大化を防止する作用を有するが、N量が0.01%を超えて多くなりすぎると、加工性が劣化する。したがって、N量は0.01%以下、好ましくは0.005%以下とする。
【0024】
Al:0.10%以下
Al量が0.10%を超えると鋼の清浄度が低下するだけでなく、焼入れ処理の加熱時にオーステナイト粒が微細化し過ぎ、冷却時にフェライト相の生成が促進し、焼入れ後に必要な硬さが得られなくなる。したがって、Al量は0.10%以下とする。なお、Alには、Nと結合してAlNを形成し、オーステナイト粒の粗大化を防止したり、Bによる焼入れ性を効果的に発揮させる作用を有するので、Al量は0.01%以上とすることが好ましい。
【0025】
残部はFeおよび不可避的不純物とするが、以下の理由で、B:0.0010〜0.0050%、Ti、Nb、Vのうちの少なくとも1種:合計で0.1%以下、Ni、Cr、Moのうちの少なくとも1種:合計で1.5%以下、Sb、Snのうちの少なくとも1種:合計で0.003〜0.10%を、個別にあるいは同時に含有させることが好ましい。
【0026】
B:0.0010〜0.0050%
Bは、焼入れ性を高めるとともに、焼入れ処理の加熱時にBNを形成してオーステナイト粒の粗大化を抑制し、焼入れ後の靱性を向上させる元素である。こうした効果を得るには、B量は0.0010%以上にする必要がある。一方、B量が0.0050%を超えると熱間圧延の負荷が高くなり操業性が低下するととともに、ファインブランキング性などの加工性の低下も招く。したがって、B量は0.0010〜0.0050%とすることが好ましく、0.0010〜0.0030%とすることがより好ましい。また、Bにより焼入れ性を高めるには、焼入れ処理の加熱時に固溶Bが存在していることが必要である。しかし、BはNとの親和力が大きく、熱間圧延やその後の巻取り時あるいは焼入れ処理の加熱時にBNを形成しやすいので、Bを含有させる場合は、Nに対して0.50≦(14[B])/(10.8[N])の関係を満足するようにして固溶Bを確保する必要がある。なお、ここで[B]、[N]はそれぞれB、Nの含有量(質量%)を表す。
【0027】
Ti、Nb、Vのうちの少なくとも1種:合計で0.1%以下
Ti、Nb、Vのうちの少なくとも1種の含有量が合計で0.1%を超えるとTiCなどの析出によりフェライト相が硬質化し、ブランキング用金型寿命の低下を招く。したがって、Ti、Nb、Vのうちの少なくとも1種の含有量は合計で0.1%以下とすることが好ましい。なお、Ti、Nb、Vは、Nと結合し窒化物を形成しやすく、焼入れ時のオーステナイト粒の粗大化を防止するとともに、Bにより焼入れ性の向上を図る場合は、BNの形成を防止して必要なBの添加量を少なくすることができるという効果も有するので、これらの元素のうち少なくとも1種の含有量は合計で0.01%以上とすることがより好ましい。
【0028】
Ni、Cr、Moのうちの少なくとも1種:合計で1.5%以下
Ni、Cr、Moのうちの少なくとも1種の含有量が合計で1.5%を超えるとフェライト相が硬質化し、ファインブランキング性が低下する。したがって、Ni、Cr、Moのうちの少なくとも1種の含有量は合計で1.5%以下とすることが好ましい。なお、Ni、Cr、Moは焼入れ性の向上に有効に作用するので、Ni、Cr、Moのうちの少なくとも1種の含有量は合計で0.1%以上とすることがより好ましい。
【0029】
Sb、Snのうちの少なくとも1種:合計で0.003〜0.10%
焼入れ処理の加熱を空気を混合してカーボンポテンシャルを制御した雰囲気中で900℃前後で1時間程度の条件で行うと吸窒現象が起こり、鋼の表層部でAlNやBNが形成され、オーステナイト粒が微細化し過ぎたり、固溶B量が著しく減少して焼入れ性が低下する場合がある。そこで、本発明者らが、鋼の吸窒を抑制可能な元素として知られているSbやSnを添加し、焼入れ性について検討を行ったところ、Sb、Snのうち少なくとも1種の量を合計で0.003%以上にすれば、吸窒を抑制でき、表層部の焼入れ性を改善できることを見出した。しかし、Sb、Snのうち少なくとも1種の量を合計で0.10%を超えて添加すると焼入れ焼戻し時にオーステナイト粒界に偏析し靱性を著しく低下させる。さらに、これらの元素は、焼入れ処理前の素材の加工性にも影響を及ぼし、その量が合計で0.10%を超えると粒界に偏析し、ファインブランキング性などの加工性の低下も招く。したがって、Sb、Snのうち少なくとも1種の含有量は合計で0.003〜0.10%とすることが好ましい。
【0030】
2) ミクロ組織
本発明者らが、ファインブランキング端面性状に及ぼすミクロ組織の影響を調査したところ、100%剪断面の平滑な端面が得られなかったり、ブランキング端面にクラックが発生するのは、初析フェライト相とパーライトとの界面やパーライト中の破壊したセメンタイトに起因していることが明らかになった。したがって、優れたファインブランキング性を得るには、初析フェライト相やパーライトの生成を極力抑制することが効果的であるが、巻取りままの熱延鋼板に対しては、組織全体に占める初析フェライト相の面積率が10%以下で、炭化物の球状化率が50%以上であるミクロ組織にすれば、100%剪断面の平滑な端面が得られ、また端面にクラックが発生することのない優れたファインブランキング性が得られる。なお、上記初析フェライト相以外の組織はパーライトおよび/またはベイナイトである。不可避的にマルテンサイトなどその他の組織が生成する場合があるが、面積率で5%以下であれば本発明の鋼板特性に影響するものではなく、許容される。
【0031】
ここで、各組織の面積率は、走査電子顕微鏡で撮影した組織写真を画像解析ソフトを用いて解析して求めた。
【0032】
また、炭化物の球状化率は、各炭化物の最大径aと最小径bの比a/bを計算し、a/bが3以下の炭化物の数の全炭化物数に対する割合(%)として求めた。
【0033】
3) 製造条件
熱間圧延時の仕上温度:800〜950℃
仕上温度が800℃未満ではその後の冷却時に初析フェライト相が生成しやすくなり、初析フェライト相の面積率が10%を超える。一方、仕上温度が950℃を超えるとスケール厚が増大し、スケール剥離や酸洗後のスケール残りが生じて鋼板表面性状が劣化する。したがって、熱間圧延時の仕上温度は800〜950℃とする。
【0034】
熱間圧延後の冷却条件:650℃以上の冷却開始温度から50℃/s以上の平均冷却速度で450〜600℃の冷却停止温度まで冷却し、3s以内に巻取る
上記のような優れたファインブランキング性が得られるミクロ組織にするには、熱間圧延後できる限りオーステナイ単相状態を維持し、巻取り後に変態させて初析フェライト相の生成を抑制するとともに、変態熱を利用して炭化物の球状化を促進すれば可能である。そのためには、オーステナイト単相状態である650℃以上の冷却開始温度から50℃/s以上の平均冷却速度で連続変態曲線のノーズに相当する温度域450〜600℃の冷却停止温度まで冷却し、3s以内に巻取る必要がある。
【0035】
なお、巻取り後の鋼板を巻取られた状態で保熱装置に装入すると、鋼板は巻取り時の温度からより徐冷されるので、炭化物の球状化が促進され、より優れたファインブランキング性が得られる。
【0036】
また、熱間圧延後、該650℃以上の冷却開始温度までの冷却については、特に限定する必要はなく、製造ラインに合わせて適宜調整すればよい。異方性を小さくするためオーステナイト相の再結晶を充分に図る上では、空冷とすることが好ましく、また、安定して450〜600℃で冷却を停止させるためには、過冷オーステナイト単相域の下限に近い温度である650℃まで冷却することが好ましい。
【0037】
本発明の高炭素鋼を溶製するには、転炉、電気炉どちらも使用可能である。また、こうして溶製された高炭素鋼は、造塊−分塊圧延または連続鋳造によりスラブとされる。スラブは、通常、加熱された後、熱間圧延される。なお、連続鋳造で製造されたスラブの場合は、そのままあるいは温度低下を抑制する目的で保熱して、圧延する直送圧延を適用してもよい。また、スラブを加熱して熱間圧延する場合は、スケールによる表面状態の劣化を避けるためにスラブ加熱温度を1280℃以下とすることが好ましい。熱間圧延では、仕上温度を確保するため、熱間圧延中にシートバーヒータ等の加熱手段により被圧延材の加熱を行ってもよい。
【実施例】
【0038】
表1に示す鋼番A〜Kの組成を有する鋼を溶製し、次いで表2に示す熱延条件に従って板厚5.0mmの熱延鋼板No.1〜17を作製した。
【0039】
このようにして作製した熱延鋼板について、上記の方法により初析フェライト相の面積率と炭化物の球状化率を求め、さらに上記した方法により初析フェライト相以外の組織も観察した。
【0040】
また、ファインブランキング性については、得られた鋼板から80mm×80mmの試験片を採取し、110ton油圧プレス機を用いて60mm×40mmの鋼片を、工具間クリアランス:0.050mm(板厚の1%)、加工力:8.5ton、潤滑:有りの条件によってブランキングし、ブランキング端面が100%剪断面であり、かつ端面にクラックが無い場合を○、それ以外を×で評価した。
【0041】
結果を表2に示す。
【0042】
本発明例の熱延鋼板No.1〜4、11、12では、いずれもファインブランキング性は○で、優れていることがわかる。なお、本発明例の鋼組織は、表2の初析フェライト相以外はパーライトおよび/またはベイナイトであった。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、N:0.01%以下、Al:0.10%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、組織全体に占める初析フェライト相の面積率が10%以下で、炭化物の球状化率が50%以上であるミクロ組織を有することを特徴とするファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板。
【請求項2】
さらに、質量%で、B:0.0010〜0.0050%を含有し、かつ0.50≦(14[B])/(10.8[N])の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載のファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板;ただし、[B]、[N]はそれぞれB、Nの含有量(質量%)を表す。
【請求項3】
さらに、質量%で、Ti、Nb、Vのうちの少なくとも1種:合計で0.1%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板。
【請求項4】
さらに、質量%で、Ni、Cr、Moのうちの少なくとも1種:合計で1.5%以下を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板。
【請求項5】
さらに、質量%で、Sb、Snのうちの少なくとも1種:合計で0.003〜0.10%を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の組成を有する鋼を、800〜950℃の仕上温度で熱間圧延した後、650℃以上の冷却開始温度から50℃/s以上の平均冷却速度で450〜600℃の冷却停止温度まで冷却し、3s以内に巻取ることを特徴とするファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板の製造方法。
【請求項7】
巻取り後の鋼板を、巻取られた状態で保熱装置に装入することを特徴とする請求項6に記載のファインブランキング性に優れた高炭素熱延鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2012−25984(P2012−25984A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163469(P2010−163469)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】