説明

ファクシミリ装置、及びファクシミリ通信方法

【課題】 簡易な操作により送信前手順の所要時間を更に短縮して、送信効率を一層向上させることの可能なファクシミリ装置、及びファクシミリ通信方法を提供する。
【解決手段】 V.34モードの通信シーケンスで通信を行うファクシミリ装置において、V.8シーケンスのANSam信号のタイミングで所定のトーン信号を相手側のファクシミリ装置に送出して、V.8シーケンスに有するCM/JM/CJを省略する手段と、同一相手に対して前回使用により既に登録しているシンボルレートを使用してラインプロービングシーケンスを省略する手段と、同一相手に対して前回使用により既に登録しているデータレートを使用してイコライザトレーニングシーケンスを省略する手段と、V.8シーケンスにおいて既に判っている前記データレートを使用してコントロールチャネルシーケンスの一部を省略する手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ装置、及びファクシミリ通信方法に係り、特にITU−T勧告V.34に準拠する通信能力を有するファクシミリ装置、及びファクシミリ通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ファクシミリ装置の通信で行われるV.34モードは、国際標準規格であるITU−T準拠のT.30手順に従って実行される。このT.30手順で実行される通信手順では、呼接続、初期識別フェーズとなるV.8シーケンス、回線特性を測定してシンボルレート等を決定するラインプロービングシーケンス、受信モデムのイコライザ最適化を実行するイコライザトレーニングシーケンス、及びデータレート決定や互いの装置パラメータ交換を実行するコントロールチャネルシーケンスを経てから、画データの通信を実行するプライマリチャネルシーケンスへ移行する。
【0003】
V.34モードは、最高で33.6kbpsの高速データレートによって画データの伝送を行う為、回線の特性に合わせてモデムを最適化する必要がある。このため、上述したような冗長なシーケンスを行う必要がある。
【0004】
しかし、画データの伝送に到達するまでのシーケンスが長いことにより、画データのシーケンスを高速で実行しても、ファクシミリ通信におけるトータルの通信時間が長くなってしまい、ユーザーにとっては、その高速化の効果が見えにくいものとなってしまっている。また、一度通信を行ったことのある相手と再度通信を行う場合は、どのくらいのシンボルレート、データレートにて通信が可能であるかは判っている為、ラインプロービングの様な回線状況を行う必要は無いにも関わらず、通常のV.34モードでは、通信を行う度に、同じシーケンスを行い、非常に時間の無駄になっている。
【0005】
このため、簡易な操作により送信前手順の所要時間を短縮して送信効率を向上させることができるファクシミリ装置を利用したファクシミリ通信方法として、短縮ダイヤル又はワンタッチダイヤルの少なくとも一方に番号が登録された相手に対する初回のファクシミリ送信に際し、登録された番号と対応付けて通信前手順中の一部のステップを記憶しておき、登録された番号に対する2回目以降の通信に際し、記憶された内容を読み出して通信前手順の一部に充当することにより所要通信時間を短縮する方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。このファクシミリ通信方法で使用されるファクシミリ装置は、短縮ダイヤル及び/又はワンタッチダイヤル番号情報及びかかる番号情報に対応付けて所要情報を記憶するメモリを備える。
【0006】
【特許文献1】特開2002−247318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に開示されたファクシミリ通信方法で使用されるFAX装置では、一度通信を行ったことのある相手で、かつ短縮ダイヤル、ワンタッチダイヤルに登録されている相手への通信において、V.8シーケンスの一部、ラインプロービングシーケンス及び、イコライザトレーニングシーケンスを省略して通信を実行することにより、ファクシミリ通信全体の通信時間を短縮することが出来る。
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に開示されたファクシミリ通信方法で使用されるファクシミリ装置によるファクシミリ通信では、画データの通信を実行するプライマリチャネルシーケンスへ移行する送信前手順であるコントロールチャネルシーケンス等には、まだ短縮の余地を残している。かかる送信前手順を更に短縮することにより、ファクシミリ通信におけるトータルの通信時間を一層短縮することにより、通信費用の削減、一通信の時間の短縮による送信待ちの時間の短縮、再発呼の発生の減少も実現される。
【0009】
そこで、本発明は、従来のファクシミリ装置、及びファクシミリ通信方法が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡易な操作により送信前手順の所要時間を更に短縮して、送信効率を一層向上させることの可能な、新規かつ改良されたファクシミリ装置、及びファクシミリ通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、V.34モードの通信シーケンスで通信を行うファクシミリ装置において、V.8シーケンスのANSam信号のタイミングで所定のトーン信号を相手側のファクシミリ装置に送出して、V.8シーケンスに有するCM/JM/CJを省略する手段と、同一相手に対して前回使用により既に登録しているシンボルレートを使用してラインプロービングシーケンスを省略する手段と、同一相手に対して前回使用により既に登録しているデータレートを使用してイコライザトレーニングシーケンスを省略する手段と、V.8シーケンスにおいて既に判っている前記データレートを使用してコントロールチャネルシーケンスの一部を省略する手段と、を備えることを特徴とする、ファクシミリ装置が提供される。
【0011】
このとき、データレートを使用して省略されるコントロールチャネルシーケンスの一部は、コントロールチャネルシーケンスのE信号前に有するMPh信号の部分であることとしてもよい。
【0012】
このような構成とすることにより、V.8シーケンスのANSamのタイミングでトーン信号をぶつけることで、V.8シーケンスのCM/JM/CJの部分を省略し、また、既に回線特性が判っており、前回に適用されたシンボルレートが判っていることから、この前回のシンボルレートを用いることで、ラインプロービングのシーケンスを省略し、前回のデータレートも既に判っていることから、再度トレーニングを行う必要がないため、イコライザトレーニングシーケンスを省略することが出来る。さらに、V.8シーケンスの部分で既にデータレートが判っている為、MPh部分の信号が必要なくなり、コントロールチャネルのE信号前の部分が省略出来る。
【0013】
すなわち、一度通信を行ったことのある相手でかつ、短縮ダイヤル、ワンタッチダイヤルに登録されている相手への通信において、V.8シーケンスの一部、ラインプロービングシーケンス、イコライザトレーニングシーケンス、及びコントロールチャネルの一部を省略して通信を行い、トータルの通信時間を短縮することが出来る。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、V.34モードの通信シーケンスで通信を行うファクシミリ通信方法において、短縮ダイヤル及び/又はワンタッチダイヤルに番号が登録された相手に対する初回のファクシミリ送信に際し、登録された相手の番号と対応付けて通信前手順中の一部のステップを記憶する工程と、登録された相手の番号に対する2回目以降の通信に際して記憶された内容を読み出して通信前手順の一部に充当する工程と、を含むことを特徴とする、ファクシミリ通信方法が提供される。
【0015】
このとき、登録された番号に対応付けて記憶される通信前手順中の一部のステップが、初期識別フェーズのV.8シーケンスの一部、ラインプロービングシーケンス、イコライザトレーニングシーケンス、及びコントロールチャネルシーケンスの一部であることとしてもよい。
【0016】
また、V.8シーケンスに有するCM/JM/CJは、このV.8シーケンスに有するANSam信号のタイミングで所定のトーン信号を相手側のファクシミリ装置に送出することにより省略され、ラインプロービングシーケンスは、同一相手に対して前回使用により既に登録しているシンボルレートを使用することにより省略され、イコライザトレーニングシーケンスは、同一相手に対して前回使用により既に登録しているデータレートを使用することにより省略され、コントロールチャネルシーケンスの一部は、V.8シーケンスにおいて既に判っているデータレートを使用することにより省略し、このデータレートを使用して省略されるコントロールチャネルシーケンスの一部は、コントロールチャネルシーケンスのE信号前に有するMPh信号の部分であることとしてもよい。
【0017】
このような構成とすることにより、一度通信を行ったことのある相手でかつ、短縮ダイヤル、ワンタッチダイヤルに登録されている相手への通信において、登録された番号と対応付けて通信前手順中の一部のステップが自動的に記憶されることにより、これら登録された番号に対する2回目以降の通信が行なわれる場合には、記憶されている内容を読み出して通信前手順の一部に利用される。このため、通信前手順の所要通信時間を大幅に短縮して実際に伝送すべきファクシミリ情報となる画信号の通信に迅速に移行可能となり、ファクシミリ通信効率を向上させることができる。かかる通信効率の向上に伴い、回線利用効率も向上し、他通信相手からの呼に対するビジー状態を減少させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、通信全体の時間を短縮する為に、一度通信を行ったことのある相手で、かつ、短縮ダイヤル、ワンタッチダイヤルに登録されている相手への通信において、V.8シーケンスの一部、ラインプロービングシーケンス及び、イコライザトレーニングシーケンスに加えて、更にコントロールチャネルシーケンスの一部を省略して通信を実行することにより、ファクシミリ通信におけるトータルの通信時間を更に短縮することが出来る。また、通信時間が短縮されることにより、通信費用の削減が計れる上に、一通信の時間が短縮される為、送信待ちの時間が短縮され、再発呼の発生を減らす効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
まず、本発明におけるファクシミリ装置の第1の実施の形態の構成について図面を使用しながら説明する。図1は、本発明のファクシミリ装置100の第1の実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0021】
本実施の形態のファクシミリ装置100は、V.34モードの通信シーケンスで通信を行うファクシミリ通信方式に用いられ、ファクシミリ送受信に必要な機能を実施する制御手段となる端末制御部102と、公衆電話回線網等の回線104との接続手段となるインターフェースである網制御部106を具備する。なお、画像検出や印字などファクシミリ装置100の基本機能については、通常のファクシミリ装置と同様であるので、図示および説明を省略する。また、本図では、送信機側のみ図示しており、受信機側の構成も送信機側と同様であるので図示および説明を省略する。
【0022】
上述の端末制御部102は、図1に示すように、モデム108、アナログ回路110、トーン信号検出回路112、起動信号生成回路114、シンボルレート決定回路116、データレート決定回路118、通信制御部120、及びメモリ122を備える。
【0023】
モデム108は、ファクシミリ通信を実行する際に通信信号の変復調を行う変復調手段であり、かかるモデム108で変復調されたアナログ信号を回線104に送受信する際に信号レベル調整を行うアナログ回路110を介して回線104とのインターフェースとなる網制御部106と接続される。
【0024】
起動信号生成回路114は、V.8シーケンスのANSam信号を検出したら通信手順省略を行う為のトーン信号を生成するトーン信号生成手段であり、トーン信号検出回路112は、手順省略を行う為の所定のトーン信号を検出し、ANSam信号を止めるトーン信号検出手段である。
【0025】
シンボルレート決定回路116は、送信の際には、どのシンボルレートで通信を行うかの決定を行い、受信の際には、トーン信号検出回路112で検出した信号の種類により、どのシンボルレートで通信を行うかの判断をする手段である。そして、データレート決定回路118は、どのデータレートで通信を行うかを決定する手段である。
【0026】
メモリ122は、短縮ダイヤル情報、ワンタッチダイヤル情報、短縮ダイヤル又はワンタッチダイヤルに登録されている相手先の前回通信時のシンボルレート、データレート、及び装置状態の情報を格納する記憶手段であり、通信制御部120は、通信全体を制御する手段である。
【0027】
次に、本実施の形態におけるファクシミリ装置100にて実行されるファクシミリ動作の順序について図面を使用しながら説明する。図2(a)は、T.30にて規定される、通常のV.34モードでの通信シーケンスの図であり、図2(b)は、図2(a)でのA部の拡大図であり、コントロールチャネルのEシーケンス前までの通信シーケンスの図である。また、図3(a)は本実施の形態にて実行される短縮手順のシーケンス図であり、図3(b)は、本実施の形態のファクシミリ装置100におけるファクシミリ通信の際のシンボルレートとトーン周波数、及びデータレートとトーン周波数の対応例を示す図であり、6種類のシンボルレート、及び14種類のデータレートが例示されている。なお、図2(a)、(b)、及び図3(a)の何れも、上段は送信側の通信シーケンス、下段は受信側の通信シーケンスを示す。
【0028】
図2(a)に示すように、従来のV.34モードでのファクシミリ通信のシーケンスでは、まず、初期識別フェーズとなるV.8シーケンスがある。このV.8シーケンスでは、送信側と受信側の互いのファクシミリ端末でV.34モードを備えているか否かの確認を行う。V.8シーケンスにおいて、V.34モードを双方のファクシミリ端末が備えていると判断すると、次のラインプロービングシーケンスに移行する。
【0029】
ラインプロービングシーケンスでは、回線特性の測定を行い、この回線特性の測定の結果により、シンボルレートを決定する。シンボルレートは、3429、3200、3000、2800、2743、2400bpsの6種類があり、このうちの何れかが選択される。次のイコライザトレーニングシーケンスでは、ラインプロービングシーケンスにおいて決定されたシンボルレートを使用して、プライマリチャネルのためのイコライザを最適化するためにトレーニングを行う。
【0030】
コントロールチャネルでは、大きく分けて2つの機能を有する。一つ目は、図2(b)示すEシーケンス前までにプライマリチャネルで使用するデータレートを決定する機能である。ここでは、送信機及び受信機が、それぞれPPh信号を送出するとともに、受信したPPh信号に対して、MPh信号シーケンスを応答する手順となっている。このうち、MPh信号シーケンスにより、コントロールチャネルの伝送速度やプライマリチャネルの伝送速度の交換を行う。データレートは、ラインプロービングの結果とイコライザトレーニングの結果により決定される。また、データレートは、33600bpsから2400bpsまであり、2400bps刻みになっている。決定のプロセスとしては、送信側のファクシミリ装置(以降、送信機と呼称)、受信側のファクシミリ装置(以降、受信機と呼称)の両方から、設定したデータレート情報を相手側端末に送信し、その双方のファクシミリ端末で低いデータレートが選択される。
【0031】
コントロールチャネルのもう1つの機能は、T.30フェーズと呼ばれる双方の端末情報の交換がある。T.30の手順では、例えば、NSF(非標準機能)、DIS(デジタル識別信号)、NSS(非標準機能設定)、DCS(デジタル命令信号)等の信号により、用紙サイズ、画データの符号化方式等、ファクシミリの通信モードが決定される。ここでは、V.17以下の通信で実行されるフェーズBと同じ情報の交換が行われる。このとき、コントロールチャネルは1200bpsの信号でやりとりが行われる。
【0032】
コントロールチャネルの終結は、送信機側より、40ビット以上の全て"1"の情報が送信され、かかる情報を受信機側で受信できた場合に、受信機側はフラグの送信を止める。そして、送信機側は受信機側からのフラグが止まったことを検出して、送信機側からのフラグを止める。これで、コントロールチャネルが終結され、画信号を通信するプライマリチャネルシーケンスに移行する。
【0033】
以上より、V.34モードでは、ラインプロービングシーケンスにて測定した回線特性に基づいて、イコライザトレーニングシーケンスでプライマリチャネルのためのイコライザを最適化するためにトレーニングを行い、コントロールチャネルのMPh信号で、データレートを最終決定して、プライマリチャネルシーケンスに移行して画信号を通信する。
【0034】
本実施の形態のファクシミリ装置100によるファクシミリ通信方法では、V.8シーケンスのANSamのタイミングでトーン信号をぶつけることで、V.8シーケンスのCM/JM/CJの部分を省略する。既に回線特性が判っており、前回に適用されたシンボルレートが判っていることから、この前回のシンボルレートを用いることで、図3(a)に示すように、ラインプロービングのシーケンスを省略することが出来る。
【0035】
また、前回のデータレートも既に判っていることから、再度トレーニングを行う必要も無くなる。このため、図3(a)に示すように、イコライザトレーニングシーケンスをも省略することが出来る。前回のシンボルレートは、ANSamにぶつけるトーン信号の種類により、送信側から受信側に通知することで、送信側と受信側の双方の端末で情報を共有する。なお、前回のデータレートは、コントロールチャネルにて、通知されることになる。
【0036】
さらに、本実施の形態では、V.8シーケンスにおいて既に判っているデータレートを使用することにより、コントロールチャネルのMPh信号を省略することが出来る。このため、コントロールチャネルのE信号の前までに有するプライマリチャネルで使用するデータレートをコントロールチャネルのMPh信号で決定するシーケンスを省略することができる。
【0037】
以上より、本実施の形態では、図3(a)に示すように、V.34モードの通信シーケンスで、V.8シーケンスにおけるCM/JM/CJの部分、ラインプロービングシーケンス、イコライザトレーニングシーケンス、及びコントロールチャネルシーケンスの一部が省略される。このような動作を実行する結果、短縮ダイヤル又はワンタッチダイヤルの少なくとも一方に番号が登録された相手に対するファクシミリ送信にあっては、かかる登録された番号と対応付けて通信前手順中の一部のステップが自動的に記憶され、これら登録された番号に対する2回目以降の通信が行なわれる場合には、かかる記憶されている内容を読み出して通信前手順の一部に利用される。
【0038】
したがって、通信前手順の所要通信時間を大幅に短縮して実際に伝送すべきファクシミリ情報(画信号)の通信に迅速に移行することができ、ファクシミリ通信効率を向上させることができる。これにより、回線利用効率の向上、他通信相手からの呼に対するビジー状態の減少が実現される。
【0039】
次に、本実施の形態におけるファクシミリ装置100によるファクシミリ送受信動作について図面を使用しながら説明する。図4は、本実施の形態のファクシミリ装置100での送信側の動作フローを示した図であり、図5は、本実施の形態のファクシミリ装置100での受信側の動作フローを示した図である。
【0040】
図4に示すように、送信機側の動作フローとして、まず送信機側よりダイアリングを行うが、その際に、短縮ダイヤル、又はワンタッチダイヤルであるかを判別する(工程S41)。短縮ダイヤル、ワンタッチダイヤル以外であれば、本動作フローから抜けることになり、送信機側の動作は終了する。
【0041】
上記の工程S41において、送信機側からのダイアリングが短縮ダイヤル、又はワンタッチダイヤルであると判別された場合、今回実行された通信が2回目以降の通信であるかを判別する(工程S42)。このとき、1回目の通信であれば、シンボルレート、データレート情報が存在しない為、本動作フローから抜けることになり、送信機側の動作は終了する。2回目以降の通信であれば、前回の通信にて設定されたシンボルレート、データレート値を設定する(工程S43)。かかるシンボルレート、データレートは、メモリ122に記憶されており、メモリ内の情報をシンボルレート決定回路116、データレート決定回路118が読み出し、各々の回路に設定する。
【0042】
上述したようにシンボルレート、データレートを設定後、発呼を行う(工程S44)。発呼後、受信機に接続されると、受信機側より、ANSam信号が送信される。送信機は、このANSam信号をモデム108にて検出する(工程S45)。ANSam信号が検出されると、直ちにトーン信号生成回路114から、トーン信号が送信される(工程S46)。本実施の形態で送信されるトーン信号は、シンボルレートトーン信号及びデータレートトーン信号を有し、図3(b)に示すように、シンボルレートトーン信号は少なくとも6種類存在し、データレートトーン信号は少なくとも14種類存在し、かかる周波数でこの後の通信で使用されるシンボルレート、データレートを通知している。
【0043】
上記の工程S45でANSam信号が検出されなかった場合、送信動作を停止するか否かの選択をし(工程S412)、タイムアウトする場合は、送信機側の動作は終了し、タイムアウトをしない場合は、再度ANSam信号の検出を行う(工程S45)。
【0044】
周波数とシンボルレート、データレートの関係は、図3(b)に示す通りである。このトーン信号により、受信機はANSam信号の送出を止める。送信機はトーン送出後、コントロールチャネルの送信に移る(工程S47)。送信機からのコントロールチャネルの送出に対して、V.21ch2のDIS信号が来た場合(工程S48)、送信機はコントロールチャネルの送信を止めて(工程S413)、DIS信号の受信を行う(工程S414)。
【0045】
上記の工程S414でDIS信号を受信後、受信機が本発明のファクシミリ装置100に備わる機能であるV.8能力を有しているか否かを判断する(工程S415)。工程S415で、V.8能力を有していると判断した場合は、CI信号を送出して(工程S416)、通常のV.34モードの手動シーケンスに移行する(工程S417)。V.8能力を有していないと判断した場合は、V.21ch2のDCS信号を送出し(工程S418)、V.34以外のモードの実行へ移行する(工程S419)。
【0046】
上記の工程S48で、V.21ch2のDIS信号が来ない場合には、コントロールチャネルの通信を継続して行い、コントロールチャネルが完了すると(工程S49)、次にプライマリチャネルにて画信号の送信を行う(工程S420)。プライマリチャネルを送信中は、常にALT信号の検出チェックを行う(工程S421)。ALT信号はシーケンスのリカバリ起動用信号として、V.34モードにて定義されている信号である。
【0047】
本発明の本実施の形態では、データレートが判っている為、イコライザトレーニングシーケンスを省略しているが、回線状態の変化により、前回のイコライザ状態では通信が正常に出来ない場合が考えられる。その場合、受信機側より送出される、ALT信号により、リカバリのシーケンスを起動する。ALT信号が検出されない場合、プライマリチャネル送信完了を監視し(工程S425)、完了していなければ、ALT検出チェック(工程S421)に戻り、完了していれば、送信機側の動作は終了する。
【0048】
ALT信号が検出され、受信したら、送信機側はALT信号を送出する(工程S422)。これにより、リカバリシーケンス開始の整合が行われる。その後、イコライザトレーニングを実施してから(工程S423)、再度プライマリチャネルを送信して(工程S424)、送信機側の動作は終了する。
【0049】
次に、図5を参照しながら受信機側の動作フローを説明する。受信機側ではリンガ信号による着信が行われる(工程S51)。その後、ANSam信号の送出が開始される(工程S52)。ANSam信号送出中に、トーン信号の検出を行い(工程S53)、トーン信号が受信された場合、ANSam信号の送出を直ちに停止する(工程S54)。
【0050】
上記の工程S53でトーン信号が検出されなかった場合は、CM信号の検出を実行する(工程S510)。CM信号が検出されたら、通常のV.34モードのファクシミリ通信が実行され(工程S511)、受信機側の動作は終了する。
【0051】
上記の工程S510でCM信号が検出されなかった場合は、受信動作を停止するか否かの選択をし(工程S512)、受信動作をタイムアウトする場合は、V.21ch2のDIS信号を送出して(工程S513)、受信機側の動作は終了し、タイムアウトをしない場合は、再度トーン信号の検出を行う(工程S53)。
【0052】
上述したトーン信号の検出は、トーン信号検出回路112にて実行される。本実施の形態では、トーン信号の周波数から、シンボルレート及びデータレートを判断して、そのシンボルレート値及びデータレート値を設定する(工程S55)。判断と設定は、シンボルレート決定回路116、データレート決定回路118にて行われる。その後、コントロールチャネルを開始(工程S56)する。その後、コントロールチャネルが完了する(工程S57)。
【0053】
コントロールチャネルの完了後、プライマリチャネルの受信により、画信号の受信を行う(工程S520)。このとき、プライマリチャネルが復号出来ているか否かをチェックする(工程S521)。プライマリチャネルの復号が出来ていない場合は、ALT信号を送出する(工程S522)。送信機側よりのALT信号を検出したら(工程S523)、イコライザトレーニング受信の状態となり(工程S524)、その後、プライマリチャネルを再度受信して(工程S525)、受信機側の動作は終了する。
【0054】
上記の工程S521でプライマリチャネルの復号が正常に行われている場合には、プライマリチャネルの受信完了を監視し続け(工程S526)、プライマリチャネルの受信完了を確認したら、受信機側の動作は終了する。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、ファクシミリ装置に適用可能であり、特にITU−T勧告V.34に準拠する通信能力を有するファクシミリ装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明のファクシミリ装置の第1の実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、T.30にて規定される、通常のV.34モードでの通信シーケンスの図であり、図2(b)は、図2(a)でのA部の拡大図であり、コントロールチャネルのEシーケンス前までの通信シーケンスの図である。
【図3】図3(a)は本実施の形態にて実行される短縮手順のシーケンス図であり、図3(b)は、本実施の形態のファクシミリ装置におけるファクシミリ通信の際のシンボルレートとトーン周波数、及びデータレートとトーン周波数の対応例を示す図である。
【図4】図4は、本実施の形態のファクシミリ装置での送信側の動作フローを示した図である。
【図5】図5は、本実施の形態のファクシミリ装置での受信側の動作フローを示した図である。
【符号の説明】
【0058】
100 ファクシミリ装置
102 端末制御部
104 回線
106 網制御部
108 モデム
110 アナログ回路
112 トーン信号検出回路
114 起動信号生成回路
116 シンボルレート決定回路
118 データレート決定回路
120 通信制御部
122 メモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
V.34モードの通信シーケンスで通信を行うファクシミリ装置において、
V.8シーケンスのANSam信号のタイミングで所定のトーン信号を相手側のファクシミリ装置に送出して、前記V.8シーケンスに有するCM/JM/CJを省略する手段と、
同一相手に対して前回使用により既に登録しているシンボルレートを使用してラインプロービングシーケンスを省略する手段と、
同一相手に対して前回使用により既に登録しているデータレートを使用してイコライザトレーニングシーケンスを省略する手段と、
前記V.8シーケンスにおいて既に判っている前記データレートを使用してコントロールチャネルシーケンスの一部を省略する手段と、
を備えることを特徴とする、ファクシミリ装置。
【請求項2】
前記データレートを使用して省略されるコントロールチャネルシーケンスの一部は、前記コントロールチャネルシーケンスのE信号前に有するMPh信号の部分であることを特徴とする、請求項1に記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
V.34モードの通信シーケンスで通信を行うファクシミリ通信方法において、
短縮ダイヤル及び/又はワンタッチダイヤルに番号が登録された相手に対する初回のファクシミリ送信に際し、
前記登録された相手の番号と対応付けて通信前手順中の一部のステップを記憶する工程と、
前記登録された相手の番号に対する2回目以降の通信に際して前記記憶された内容を読み出して通信前手順の一部に充当する工程と、
を含むことを特徴とする、ファクシミリ通信方法。
【請求項4】
前記登録された番号に対応付けて記憶される通信前手順中の一部のステップが、初期識別フェーズのV.8シーケンスの一部、ラインプロービングシーケンス、イコライザトレーニングシーケンス、及びコントロールチャネルシーケンスの一部であることを特徴とする、請求項3に記載のファクシミリ通信方法。
【請求項5】
前記V.8シーケンスに有するCM/JM/CJは、このV.8シーケンスに有するANSam信号のタイミングで所定のトーン信号を相手側のファクシミリ装置に送出することにより省略され、
前記ラインプロービングシーケンスは、同一相手に対して前回使用により既に登録しているシンボルレートを使用することにより省略され、
前記イコライザトレーニングシーケンスは、同一相手に対して前回使用により既に登録しているデータレートを使用することにより省略され、
前記コントロールチャネルシーケンスの一部は、前記V.8シーケンスにおいて既に判っている前記データレートを使用することにより省略される、
ことを特徴とする、請求項3又は4に記載のファクシミリ通信方法。
【請求項6】
前記データレートを使用して省略されるコントロールチャネルシーケンスの一部は、前記コントロールチャネルシーケンスのE信号前に有するMPh信号の部分であることを特徴とする、請求項5に記載のファクシミリ通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−319380(P2006−319380A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136786(P2005−136786)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】