説明

ファスナカバー

【課題】管体の接続構造の周りの作業スペースが確保され難い接続構造に対しても、容易に取り付けることが可能なファスナカバーを提供する。
【解決手段】連結部36には、管体の軸方向となる管軸方向に平行な折り目をなす方向へ折り曲げ可能な曲げ部36a,36bが間隔を空けて複数箇所に設けられ、管体側固定部34をファスナつまみ部26のスリット28内へと導入する際に、複数箇所にある曲げ部36a,36bで連結部36を曲げ変形させることにより、管体側固定部34を管軸方向と直交する平面に沿ってファスナつまみ部26のスリット28内へと案内可能な構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器やトイレ、燃料電池等の各種の装置に配される一対の管体(配管)を接続する際に使用するファスナカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の管体を接続する方法として、ファスナと呼ばれる部材(クイックファスナやクリップ等とも称される)を利用する方法が知られている。この接続方法においては、管体双方の端部を互いに突き合わせて、各管体の端部周辺に設けられたフランジ状部に、ファスナを嵌め込み、これにより、フランジ状部双方の離間を阻止して、管体双方の抜けを防止している。
【0003】
このような接続方法において利用されるファスナは、周方向の一箇所が開いたリング状の部分を有し、その開いた箇所から管体に嵌め着けられる。また、リング状の部分にはスリットが形成されており、ファスナが管体に嵌め着けられる際に、両フランジ状部がスリットに嵌め込まれ、その結果、それらフランジ状部がスリットに拘束されて離間できない状態になる。
【0004】
ところで、上記のようなファスナは、周方向の一箇所が開いた略C形のリング状とされているため、何らかの外力がファスナに加わると、簡単に拡開変形してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、このようなファスナの拡開変形を防止するために、ファスナカバーが用いられている。このファスナカバーの例としては、周方向の一箇所に開環部が設けられたカバー本体をファスナの外周面に沿うように装着し、カバー本体の開環部をアーム部材で閉じることで、開環部が拡開する方向へカバー本体が変形するのを阻止し、これにより、カバー本体がファスナの拡開変形を防止するように構成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、ファスナカバーの別の例としては、管軸方向と直交する平面に沿って開閉動作する一対の腕部をファスナの外周面に沿うように装着し、それら一対の腕部の先端を互いに固定することで、一対の腕部が拡開する方向へ動作するのを阻止し、これにより、一対の腕部がファスナの拡開変形を防止するように構成したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−22887号公報
【特許文献2】特開2008−151254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2に記載のファスナカバーをファスナに取り付けると、双方ともファスナカバーがファスナ全体を覆う状態になるため、ファスナ周りの構造がかさ高い構造になりやすく、ファスナ周りの作業空間が手狭になると、ファスナカバーの取り付けや取り外し等、ファスナ周りの作業空間で実施する作業がやりにくくなるなどの問題があった。
【0009】
しかも、特許文献1のアーム部材の自由端をカバー本体に固定する部分や、特許文献2の一対の腕部を固定する部分に対して、ファスナカバーの外部に何らかの物が当たると、固定部分の固定状態が解除されて、ファスナが拡開変形を防止できず、ファスナが管体から外れてしまうことがあった。
【0010】
本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、本発明の目的は、管体の接続構造の小形化が図られ、しかもファスナカバーのファスナへの取り付け状態が保持されるファスナカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために為された請求項1に記載の発明は、それぞれフランジ状部を有し、それぞれの端部を相互に接続可能な一対の管体と、周方向の一箇所に開環部が設けられたリング状部分を有し、前記開環部から前記管体を内側へと導入することにより前記管体に嵌め着けられるファスナ本体部と、該ファスナ本体部の各周方向端部からそれぞれ周方向外方に突設されて、外力が加えられた際に前記ファスナ本体部の各周方向端部と共に変位することにより前記開環部の大きさを変化させる一対のファスナつまみ部を備え、前記ファスナ本体部と前記一対のファスナつまみ部にはスリットが形成されており、前記ファスナ本体部の前記スリットに対して前記一対の管体双方のフランジ状部が嵌め込まれることにより、それら双方のフランジ状部が離間するのを阻止する状態となって前記一対の管体を互いに固定するファスナと、を備えた接続構造において、前記ファスナに取り付けられるファスナカバーであって、前記ファスナカバーを前記ファスナ本体部に固定する本体側固定部と、前記本体側固定部の周方向両側に位置し、前記ファスナカバーを前記ファスナへ取り付けた際には、前記ファスナ本体部の外周面に沿って配される一対の腕部と、前記腕部からそれぞれ周方向外方に延出して、前記一対の腕部を前記ファスナ本体部の外周面に沿って配する際に、前記ファスナ本体部側から前記ファスナつまみ部の前記スリットをそれぞれ通り抜けて、一対の前記ファスナつまみ部の間において、互いに固定されることにより、前記ファスナカバーを前記一対の管体に固定する一対の管体側固定部と、前記本体側固定部と一対の前記腕部との間にそれぞれ配されて、前記本体側固定部と各腕部とを連結する一対の連結部と、を備えており、前記連結部には、前記管体の軸方向となる管軸方向に平行な折り目をなす方向へ折り曲げ可能な曲げ部が間隔を空けて複数箇所に設けられ、前記管体側固定部を前記ファスナつまみ部の前記スリット内へと導入する際に、前記複数箇所にある曲げ部で前記連結部を曲げ変形させることにより、前記管体側固定部を前記管軸方向と直交する平面に沿って前記ファスナつまみ部の前記スリット内へと案内可能な構造としたことを特徴とする。
【0012】
このような本発明のファスナカバーにおいては、管体側固定部双方が、一対のファスナつまみ部のスリットをそれぞれ通り抜けて、一対のファスナつまみ部の間で固定される構造であるため、管体側固定部が、一対のファスナつまみ部よりも内側に配される。これにより、ファスナカバーが一対のファスナつまみ部の間から外方に突出することが抑えられ、管体の接続構造のファスナ周りがスリムになる。しかも、管体側固定部が一対のファスナつまみ部よりも内側に配されていると、ファスナカバー付近に何らかの物(例えば作業者の手や腕、別のファスナカバー等)を当ててしまった場合に、そのような物は管体側固定部に当たる前に一対のファスナつまみ部に当たりやすくなるので、そのような物が管体側固定部に当たったことによって管体側固定部の固定状態が解除されてしまう、といったトラブルを抑制乃至防止することができる。
【0013】
また、本発明では、本体側固定部と腕部とを連結する連結部には、管軸方向に平行な折り目をなす方向へ折り曲げ可能な曲げ部が設けられており、この曲げ部の変形により、管体側固定部を管軸方向と直交する平面に沿ってファスナつまみ部のスリット内へと案内することが出来、それによって、管体の接続構造が小形化され、しかもファスナカバーのファスナへの固定状態が保持される。
【0014】
特に本発明では、曲げ部が連結部において離隔して複数設けられていることにより、連結部が多関節構造とされており、連結部を、管軸方向と直交する平面に沿って任意の複数箇所で任意の方向に曲げ変形させることが出来る。その結果、曲げ部が連結部に一つだけ設けられているものよりも、連結部は自由度の高い変形ができるようになり、管体側固定部双方をファスナつまみ部のスリット内へ導入する操作も容易に実施可能となる。
【0015】
また、管体側固定部をスリットに案内する際に、複数の曲げ部によって、連結部を周方向で折り畳むように変形させて、腕部をフランジ状部の外周側に近接させながら移動させることも出来る。これにより、管体の接続構造の周りにおいてファスナカバーの取り付けに要する作業スペースが、小形化される。
【0016】
また、本発明のファスナカバーでは、例えば請求項2に記載されているように、前記曲げ部は、前記連結部において部分的に厚さ寸法を小さくした部分により構成される構造を採用しても良い。
【0017】
このような本発明によれば、連結部と別部材である蝶番等を用いて、曲げ部を形成する必要がなくなり、それによって、ファスナカバーの軽量化や低コスト化が図られる。
また、本発明のファスナカバーでは、例えば請求項3に記載されているように、前記一対の腕部には、該腕部から周方向外方に突出して、前記腕部を変位させる操作を行う際に利用者によって把持されるカバーつまみ部が設けられている構造を採用しても良い。
【0018】
このような本発明によれば、利用者が、腕部の周方向外方に突出したカバーつまみ部を把持して、腕部を変位させる操作を行うことが出来るから、利用者が腕部を直接に把持して、手指を腕部の内周部分にかけるおそれがない。それ故、利用者が、腕部を操作する際に、手指が管体の外周面に接触し難くなり、腕部をファスナの外周面に沿って配し易くなる。
【0019】
また、本発明のファスナカバーでは、例えば請求項4に記載されているように、前記管体側固定部を前記ファスナつまみ部の前記スリット内へと導入してから、前記カバーつまみ部を前記ファスナつまみ部側へと変位させると、前記カバーつまみ部と前記ファスナつまみ部が重なる位置まで移動する構造になっており、当該移動に伴って一対の前記管体側固定部が互いに固定可能となる構成を採用しても良い。
【0020】
このような本発明によれば、ファスナとファスナカバーの双方につまみ部があり、それらを重ねるように取り付けるだけで、ファスナカバーを適正に取り付けることができる。したがって、このようなカバーつまみ部が設けられていないファスナカバーとは異なり、カバーつまみ部を目安にして利用者がファスナカバーの適正な装着方向を容易に理解でき、よりスムーズな装着作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態としてのファスナカバーを一対の管体およびファスナからなる接続構造に取り付けた状態を示す図面であって、(a)はその左斜め上から見た斜視図であり、(b)はその右斜め上から見た斜視図であり、(c)はその正面図であり、(d)はその側面図であり、(e)はその平面図である。
【図2】図1のファスナカバーを示す図面であって、(a)はその左斜め上から見た斜視図であり、(b)はその右斜め上から見た斜視図であり、(c)はその正面図であり、(d)はその側面図であり、(e)はその平面図である。
【図3】図1のファスナカバーを接続構造に対して取り付ける場合の作業工程を示す図面であって、(a)はその左斜め上から見た斜視図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその平面図である。
【図4】図1のファスナカバーを接続構造に対して取り付ける場合の作業工程を示す図面であって、(a)はその左斜め上から見た斜視図であり、(b)はその右斜め上から見た斜視図であり、(c)はその正面図であり、(d)はその側面図であり、(e)はその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1には、本発明の一実施形態としてのファスナカバー10が第1管体12aと第2管体12bとファスナ14からなる接続構造16に取り付けられた状態が示されている。なお、第1管体12aと第2管体12bは、本発明の請求項1記載の一対の管体に相当する。
[接続構造16の構成]
第1管体12aと第2管体12bにおいては、各端部付近に設けられた各フランジ状部18a,18bの径寸法が互いに同じとされ、各フランジ状部18a,18bの周囲の部分(管状部分)の径寸法が互いに同じとされた、いわゆる同径構造とされている。第1管体12aと第2管体12bとの何れか一方の端部が他方の内側に差し込まれ、各フランジ状部18a,18bが第1管体12aと第2管体12bの挿し込み方向(換言すると管体の軸方向、以下、「管軸方向」(図1中(a),(b),(c),(d)、上下)ともいう。)で互いに重ね合わされている。これにより、第1管体12a,第2管体12bが正規に組み付けられている。
【0023】
ファスナ14は、金属材料又は樹脂材料からなる板ばねを用いて形成されており、周方向の一箇所が開いたリング状部分22を有している。リング状部分22の周方向の略中央部分には、リング状部分22から径方向外方に向かって突出した平面視矩形の凹状又は平面視U字状の固定部24が、リング状部分22から径方向外方に向かって突設されている。これらリング状部分22と固定部24とが協働して、本発明の請求項1記載のファスナ本体部を構成する。リング状部分22の周方向端部には、把持可能なファスナつまみ部26,26がそれぞれ径方向外方に向かって突設されている。
【0024】
また、ファスナ14において、固定部24のリング状部分22から径方向外方に突出する先端の板部を左右方向(図1(e)中、左右)に挟んだ両側部分には、それぞれスリット28が形成されている。本実施形態では、各スリット28が、各ファスナつまみ部26からリング状部分22、固定部24の左右方向で対向する一対の板部にかけて、それぞれ連続して延びている。なお、スリット28は、例えば、リング状部分22や各ファスナつまみ部26、固定部24の左右方向で対向する板部にそれぞれ独立して設けられることによって、ファスナ14において周方向で複数に分断して形成されていても良い。また、ファスナ14のリング状部分22は、同径管体への組み付け用であるため、リング状部分22のスリット28を挟んだ幅方向両側の径寸法が互いに同じとされている。
【0025】
このようなファスナ14は、リング状部分22の周方向一箇所に開いた箇所から第1管体12a及び第2管体12bを内側に入れて、スリット28を挟んで幅方向一方の大径部側が第1管体12aに弾性的に嵌め着けられていると共に、スリット28を挟んで幅方向他方の小径部側が第2管体12bに弾性的に嵌め着けられている。また、ファスナ14の第1管体12aと第2管体12bへの嵌め着けに際して、スリット28が第1管体12aのフランジ状部18aと第2管体12bのフランジ状部18bとを何れも管軸方向に直交する方向に嵌め込んでいることによって、フランジ状部18aとフランジ状部18bとが管軸方向に相対的に変位するのを阻止している。接続構造16は、第1管体12a、第2管体12bおよびファスナ14を含んで構成されている。
[ファスナカバー10の構成]
ファスナカバー10は、図2に示されているように、本体側固定部30や各一対の腕部32,32、管体側固定部34,34、連結部36,36、カバーつまみ部38,38を含んで構成されており、樹脂材料を用いて形成されている。
【0026】
本体側固定部30は、平面視矩形の凹状を有している。本体側固定部30の周方向端部の内側には、それぞれ係止爪部40が設けられている。また、本体側固定部30の周方向両側には、それぞれ腕部32が配置されている。
【0027】
一対の腕部32,32は、第1管体12aおよび第2管体12bのフランジ状部18a,18bと略同じ曲率で湾曲する湾曲板形状を有している。
一対の管体側固定部34,34は、各腕部32の周方向端部から周方向外方に延出し、互いに周方向で係合される爪状の係合機構を備えている。
【0028】
一対の連結部36,36は、本体側固定部30と各腕部32との間に配されて、本体側固定部30と各腕部32とをそれぞれ連結している。
各連結部36において本体側固定部30に連結する端部側の厚さ寸法と腕部32に連結する端部側の厚さ寸法とが、連結部36の周方向中間部分の厚さ寸法に比して小さくされている。これら本体側固定部30側の薄肉部分と腕部32側の薄肉部分とが、連結部36において周方向に離隔して設けられる曲げ部としての第1曲げ部36aと第2曲げ部36bとされている。
【0029】
特に、第1曲げ部36a及び第2曲げ部36bは、連結部36の外周面に形成された各部位において周方向両側から周方向中央に向かって次第に厚さ寸法が小さくされている。これにより、第1管体12a及び第2管体12bの軸方向となる管軸方向に平行な折り目が、各第1曲げ部36a及び第2曲げ部36bの周方向略中央部分に形成されている。本体側固定部30と各腕部32とは、第1曲げ部36aと第2曲げ部36bとにおいて、管軸方向と平行な軸線回りに、それぞれ相対的に変形可能とされている。
【0030】
一対のカバーつまみ部38,38は、腕部32の周方向中間部分の外周面からその外周面の接線方向と略平行に延びるようにして、腕部32の外方に向かって突設されている。また、腕部32の外周面には、管軸方向と略平行に延びる凹部(溝部)又は凸部が複数設けられており、これら複数の凹部又は凸部が協働して、手指がカバーつまみ部38を管軸方向と直交する平面上に変位させる際の手指のカバーつまみ部38に対する滑り止め機構を構成している。
[ファスナカバー10を接続構造16に取り付ける一例]
上述のファスナカバー10を接続構造16に取り付ける場合には、例えば、ファスナ14を第1管体12a及び第2管体12bに組み付ける前に、予めファスナカバー10に組み付け、その後、ファスナ14と共にファスナカバー10を接続構造16に取り付ける手法が採用される。
【0031】
具体的に、図3に示されているように、ファスナ14の固定部24を、ファスナカバー10の一対の管体側固定部34,34の間からファスナカバー10の内側に入れて、ファスナカバー10の本体側固定部30に嵌め込む。嵌め込んだ際に、本体側固定部30の一対の係止爪部40,40を、ファスナ14の固定部24の左右方向(図3(e)中、左右)で対向する各板部に形成された各スリット28に嵌め入れて係合させることによって、本体側固定部30がファスナ14の固定部24に固定される。
【0032】
また、ファスナ14のリング状部分22は、ファスナカバー10の各一対の腕部32,32、管体側固定部34,34、連結部36,36、カバーつまみ部38,38の内側に配されている。更に、一対のファスナつまみ部26,26において各腕部32側から周方向外方に突出する先端部分は、ファスナカバー10の一対の管体側固定部34,34の間から外方に突出している。
【0033】
このようにファスナ14にファスナカバー10を組み付けた組付け体においては、そのファスナ14の一対のファスナつまみ部26,26の間(つまりファスナ14の開環部)から第1管体12a及び第2管体12bを内側に入れて、ファスナつまみ部26,26の内壁面を第1管体12a及び第2管体12bの外周面に押し当てて、ファスナ14のリング状部分22を第1管体12a及び第2管体12bに嵌め着ける程度に拡開変形させる。
【0034】
そして、図4に示されるように、ファスナ14のリング状部分22の内周面の略全体が第1管体12a及び第2管体12bの外周面に当接すると、ファスナ14自身の弾性復元力により、ファスナ14の拡開変形が解除されると共に、ファスナ14を第1管体12a及び第2管体12bに対して弾性的に嵌め着ける。また、このような嵌め着けに際して、ファスナ14のスリット28に第1管体12a及び第2管体12bのフランジ状部18a,18b双方を嵌め込む。
【0035】
また、ファスナカバー10の一対の管体側固定部34,34を相互に固定する際には、図4(e)に示されるように、各管体側固定部34と各ファスナつまみ部26とが周方向で対向するように、各連結部36において第1曲げ部36aと第2曲げ部36bとを管軸方向に直交する平面に沿って、それぞれ曲げる。
【0036】
本実施形態では、各管体側固定部34と各ファスナつまみ部26とを周方向で対向させるために、第1曲げ部36aにおいて連結部36を本体側固定部30に近接する側に曲げ、第2曲げ部36bにおいて連結部36を第1曲げ部36aの曲げ方向と反対側に折り曲げる。
【0037】
その結果、本体側固定部30と腕部32とが、外観視、連結部36を介して周方向で折り畳まれた形態となり、各一対の腕部32,32や管体側固定部34,34、連結部36,36、カバーつまみ部38,38がファスナ14の外周側で比較的に近い位置に配される。
【0038】
なお、本実施形態では、ファスナカバー10がファスナ14に取り付けられて、ファスナカバー10に外力が加えられない初期の状態において、各管体側固定部34と各ファスナつまみ部26とを周方向で略対向させるために、上述のように第1曲げ部36aおよび第2曲げ部36bが予め曲げられた状態で、ファスナカバー10が形成されている。
【0039】
しかし、上述のように第1曲げ部36aと第2曲げ部36bを予め曲げたファスナカバー10を形成するのではなくて、例えば、管体側固定部34を接続構造16に固定する際に、作業者がカバーつまみ部38,38を把持して、腕部32,32の変位を操作することに基づき、第1曲げ部36a及び第2曲げ部36bをそれぞれ曲げ変形させて、各管体側固定部34と各ファスナつまみ部26とを周方向で略対向させるようにしても良い。
【0040】
次に、作業者がカバーつまみ部38,38を把持して、第1曲げ部36a及び第2曲げ部36bをそれぞれ曲げ変形させつつ、カバーつまみ部38,38を各ファスナつまみ部26,26側に向かって変位させることにより、各管体側固定部34をファスナつまみ部26のスリット28に通り抜けさせる。
【0041】
さらに、各管体側固定部34をファスナつまみ部26のスリット28に通り抜けさせる方向の変位を延長して、各カバーつまみ部38をファスナつまみ部26と略重なる位置まで変位させることにより、各管体側固定部34を一対のファスナつまみ部26,26の間の隙間(ファスナ14の開環部)の周方向略中央部分まで変位させる。そして、管体側固定部34に設けられた爪状の係合機構により、一対の管体側固定部34,34を互いに係合する。
【0042】
このような管体側固定部34,34の係合状態では、各一対の腕部32,32や管体側固定部34,34、連結部36,36が、ファスナ14のリング状部分22の外周面に沿って配される。また、一対の管体側固定部34,34が、接続構造16において一対のファスナつまみ部26,26の間のフランジ状部18a,18bの外周面に沿って配される。
【0043】
これにより、ファスナカバー10がファスナ14のリング状部分22を全体に亘って外周側から嵌め付けた状態で、第1管体12a及び第2管体12bに組み付けられて、接続構造16に組みつけられる。また、一対のファスナつまみ部26,26が周方向で互いに離隔する方向に変位すると、ファスナカバー10の一部に当接することとなり、この当接作用によって、ファスナ14が第1管体12aと第2管体12bから外れる程の大きな拡開変形が、ファスナ14に生じないようになっている。
【0044】
本実施形態のファスナカバー10においては、一対の管体側固定部34,34が、一対のファスナつまみ部26,26のスリット28をそれぞれ通り抜けて、一対のファスナつまみ部26,26の間で固定される構造であるため、管体側固定部34が、ファスナ14の開環部よりも内側に配される。これにより、管体側固定部34がファスナカバー10の外部からの接触を受け難くなることから、この接触により一対の管体側固定部34,34の固定が解除され易くなることに起因して、ファスナ14が拡開変形し、ファスナ14が第1管体12aおよび第2管体12bから外れ易くなることが防止される。
【0045】
また、本実施形態のファスナカバー10では、腕部32を管軸方向と直交する平面に沿って曲げ変形させるための第1曲げ部36aと第2曲げ部36bが連結部36において離隔して設けられていることにより、連結部36が多関節な構造とされている。その結果、上述したように、腕部32や連結部36を周方向で折りたたむように変形させて、腕部32の周方向端部側に設けられた一対の管体側固定部34,34をファスナつまみ部26のスリット28を通り抜けさせて、一対のファスナつまみ部26,26の間で確実に固定することが出来る。
【0046】
特に本実施形態のファスナカバー10と異なるものを想定すると、例えば、連結部に曲げ部を一つだけを形成したものが考えられる。このようなファスナカバーでは、腕部を一つの曲げ部を起点にして管軸方向と直交する平面に沿って回動させると、管体側固定部がファスナつまみ部のスリットの周囲又はスリットの内壁部に当接して、管体側固定部がスリットを通り抜け出来ない構造となってしまう。
【0047】
つまり、曲げ部が各連結部に一つだけ設けられた場合のファスナカバーでは、腕部が曲げ部を起点にして回動する軌跡が一つに限定される。これにより、管体側固定部がファスナつまみ部のスリットを通り抜けるには、腕部の一つの軌跡上で管体側固定部がスリットを通り抜ける位置関係にあるファスナに対して、ファスナカバーを適用するしかなかった。このため、曲げ部が各連結部に一つだけ設けられたファスナカバーでは、ファスナつまみ部やスリットの形状や大きさが異なる複数種類のファスナに対して簡単に装着できない問題があった。
【0048】
一方、本実施形態のファスナカバー10では、第1曲げ部36aと第2曲げ部36bが連結部36において離隔して設けられていることにより、腕部32が第1曲げ部36aを起点にして回動する軌跡と第2曲げ部36bを起点にして回動する軌跡とが組み合わされる結果、曲げ部が各連結部に一つだけ設けられたファスナカバーに比して、腕部32を管軸方向と直交する平面において多くの方向に変位させることが出来る。
【0049】
従って、本実施形態のファスナカバー10では、上記腕部32が多くの方向に変位できる構造を利用して、管体側固定部34をファスナつまみ部26やスリット28の形状や大きさが異なる複数種類のファスナ14のスリット28に対しても通り抜けさせることが可能となり、それによって、ファスナカバー10を複数種類のファスナ14に対して簡単に装着することが出来る。
【0050】
また、本実施形態では、管体側固定部34をファスナつまみ部26のスリット28に案内する際に、第1曲げ部36a及び第2曲げ部36bによって、連結部36を周方向で折り畳むように変形させて、腕部32をフランジ状部18a,18bの外周側に近接させながら移動させることから、管体12の接続構造16の周りにおいてファスナカバー10の取り付けに要する作業スペースの小形化が図られる。
【0051】
また、本実施形態では、第1曲げ部36a及び第2曲げ部36bは、連結部36において部分的に厚さ寸法を小さくした部分により構成されることから、ファスナカバーの軽量化や低コスト化が図られる。
【0052】
さらに、本実施形態では、一対の腕部32,32には、腕部32を変位させる操作を行う際に利用者によって把持されるカバーつまみ部38が突設されていることから、作業者が腕部32を直接に把持して連結部36を曲げ変形させる場合に比して、手指が管体12の接続構造16と接触することが抑制される。これにより、管体側固定部34をファスナつまみ部26のスリット28内に案内する際に、「腕部32の移動が手指と接続構造16との接触により阻害されること」が防止される。
【0053】
更にまた、上述の各カバーつまみ部38は、各腕部32を介して各管体側固定部34と一体形成されていることにより、ファスナカバー10が拡開変形を伴うような(即ち、一対のカバーつまみ部38,38が互いに離間する周方向に変位するような)外力を受けた場合でも、ファスナカバー10の拡開変形は、一対の管体側固定部34,34が固定されていることによって阻止される。そして、これらカバーつまみ部38,38双方は、ファスナ14の各ファスナつまみ部26,26の外周側に、それぞれ近接した状態で配置されている。
【0054】
したがって、ファスナ14が拡開変形を伴うような(即ち、一対のファスナつまみ部26,26が互いに離間する周方向に変位するような)外力を受けた場合でも、各ファスナつまみ部26が各カバーつまみ部38に当接すると、ファスナカバー10の拡開変形が一対の管体側固定部34,34の固定されている構造で阻止されることによって、ファスナ14の拡開変形を防止することが出来る。
【0055】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能である。また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0056】
例えば、前記実施形態では、各一対の腕部32,32や管体側固定部34,34、連結部36,36、カバーつまみ部38,38が、互いに対称な形状とされていたが、勿論、非対称な形状とされていても良い。
【0057】
また、曲げ部の構成や大きさ、数、連結部における配置等は、前記実施形態に限定されるものでなく、例えば、曲げ部を管軸方向と平行に延びるピンやヒンジで構成したり、曲げ部を連結部に3つ以上設けたりすることも可能である。
【0058】
また、前記実施形態では、ファスナカバー10が、フランジ状部18a,18bの周囲の第1管体12a及び第2管体12bの径寸法が同一の同径管体の接続構造16に対して、取り付けられるようになっていたが、径寸法が互いに異なり、一方の管体のフランジ状部を他方の管体に嵌め込んで組み付ける異径管体の接続構造に適用することも勿論可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…ファスナカバー、12…管体、14…ファスナ、16…接続構造、26…ファスナつまみ部、22…リング状部分、24…固定部、28…スリット、30…本体側固定部、32…腕部、34…管体側固定部、36…連結部、36a…第1曲げ部、36b…第2曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれフランジ状部を有し、それぞれの端部を相互に接続可能な一対の管体と、
周方向の一箇所に開環部が設けられたリング状部分を有し、前記開環部から前記管体を内側へと導入することにより前記管体に嵌め着けられるファスナ本体部と、該ファスナ本体部の各周方向端部からそれぞれ周方向外方に突設されて、外力が加えられた際に前記ファスナ本体部の各周方向端部と共に変位することにより前記開環部の大きさを変化させる一対のファスナつまみ部を備え、前記ファスナ本体部と前記一対のファスナつまみ部にはスリットが形成されており、前記ファスナ本体部の前記スリットに対して前記一対の管体双方のフランジ状部が嵌め込まれることにより、それら双方のフランジ状部が離間するのを阻止する状態となって前記一対の管体を互いに固定するファスナと、
を備えた接続構造において、前記ファスナに取り付けられるファスナカバーであって、
前記ファスナカバーを前記ファスナ本体部に固定する本体側固定部と、
前記本体側固定部の周方向両側に位置し、前記ファスナカバーを前記ファスナへ取り付けた際には、前記ファスナ本体部の外周面に沿って配される一対の腕部と、
前記腕部からそれぞれ周方向外方に延出して、前記一対の腕部を前記ファスナ本体部の外周面に沿って配する際に、前記ファスナ本体部側から前記ファスナつまみ部の前記スリットをそれぞれ通り抜けて、一対の前記ファスナつまみ部の間において、互いに固定されることにより、前記ファスナカバーを前記一対の管体に固定する一対の管体側固定部と、
前記本体側固定部と一対の前記腕部との間にそれぞれ配されて、前記本体側固定部と各腕部とを連結する一対の連結部と、
を備えており、前記連結部には、前記管体の軸方向となる管軸方向に平行な折り目をなす方向へ折り曲げ可能な曲げ部が間隔を空けて複数箇所に設けられ、前記管体側固定部を前記ファスナつまみ部の前記スリット内へと導入する際に、前記複数箇所にある曲げ部で前記連結部を曲げ変形させることにより、前記管体側固定部を前記管軸方向と直交する平面に沿って前記ファスナつまみ部の前記スリット内へと案内可能な構造としたことを特徴とするファスナカバー。
【請求項2】
前記曲げ部は、前記連結部において部分的に厚さ寸法を小さくした部分により構成されることを特徴とする請求項1に記載のファスナカバー。
【請求項3】
前記一対の腕部には、各腕部から周方向外方に突出するカバーつまみ部が設けられており、利用者が前記カバーつまみ部を摘んで前記腕部を変位させる操作を実施可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のファスナカバー。
【請求項4】
前記管体側固定部を前記ファスナつまみ部の前記スリット内へと導入してから、前記カバーつまみ部を前記ファスナつまみ部側へと変位させると、前記カバーつまみ部と前記ファスナつまみ部が重なる位置まで移動する構造になっており、当該移動に伴って一対の前記管体側固定部が互いに固定可能となることを特徴とする請求項3に記載のファスナカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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