説明

ファンフィルタユニット

【課題】エアチャンバーの積載効率が高く、搬送性、据付性の優れたファンフィルタユニットを提供する。
【解決手段】ファンフィルタユニットは、上側の送風装置1と、下側のフィルタ3と、両者に挟まれたエアチャンバー2とを備えている。エアチャンバー2を送風装置1とフィルタ3とに対して分割構造とし、エアチャンバー2の構造を縦断面で台形形状としているので、嵩張るエアチャンバー2を互いに入り込む入れ子式に積層して積載効率を向上し、搬送・貯蔵することができる。ファンフィルタユニットの設置場所において、送風装置1をエアチャンバー2に対して、その上部に設けられている開口部8に上パッキンを介してパチン錠7で気密に接続することで、容易に組み立てて設置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置、エアチャンバー及びフィルタを備えており、半導体や液晶等を製造するためのクリーンルームに設置されるファンフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶等を製造するためのクリーンルームには、清浄空気を供給するために、クリーンルーム天井面にファンフィルタユニットが設置されている。ファンフィルタユニットは、送風装置、エアチャンバー、フィルタで構成されている。送風装置からエアチャンバーに送り込まれた空気がフィルタを通されることにより清浄化され、清浄化された空気がクリーンルーム内に吹き下ろされることにより、クリーンルーム内は清浄な雰囲気に保たれる。
【0003】
従来のファンフィルタユニットは、送風装置とエアチャンバーとが一体で構成されているユニットである。ユニット全体の大きさはエアチャンバーの大きさと同じ大きさ程があり、重量は20〜30Kgにも達する。ファンフィルタユニットは、一人で扱うには大き過ぎ且つ重量も重すぎるので、ファンフィルタユニットをクリーンルームの天井面に設置する場合には、クリーンルーム内部からリフターなどを使用して1台ずつ持ち上げて設置している。また移動、設置には最低2名の作業員(通常は二人〜三人がかり)が必要となり、作業効率が悪い。
【0004】
また、ファンフィルタユニットは送風装置とエアチャンバーが一体で構成されているため、個々のファンフィルタユニットのエアチャンバー部の空洞部分が体積の大半を占めている。そのため、輸送時の積載体積はエアチャンバーの体積になっており、当該ユニットの輸送手段における積載効率が悪く、価格に占める輸送コストの割合が大きくなり、低コスト化の妨げになっている。例として、幅750×長さ1500×高さ300(各単位mm)、重量30のkgのファンフィルタユニットを4トントラックに積載する場合、50台、1500kgしか積載できず、輸送効率も著しく悪かった。
【0005】
ファン側部材とフィルタ側部材とを一体化して構成されており、ファン側部材は支持フレームのファン支持部にファンを固定しており、フィルタ側部材はエアフィルタの全体をシート材で覆って構成されたファンフィルタユニットが提案されている(特許文献1参照)。この提案においては、シート材には、ファン取付け穴とエアフィルタ開口穴とが開けられており、ファンとシート材とは、シート材のファン取付け穴にファンの外枠を入れ、締結バンドで締結することにより結合されている。また、支持フレームはエアフィルタ支持部内にエアフィルタの外枠を嵌入することによって、エアフィルタを支持し且つシート材を結合していることで、軽量で運搬時や天井への設置時の労力の軽減を図っている。
【0006】
クリーンルームの天井面等に配置される空気清浄装置に関し、設置スペースが狭い(低い)場所に設置するのに適したものが提案されている(特許文献2参照)。この空気清浄装置は、ファンユニットを内部に備えクリーンルームの天井面等に固定される本体ハウジングと、本体ハウジングの下面に取り付けられるフィルタとが分割構成されている。本体ハウジングの上面に形成されている開口部には、ファンユニットが上方から挿入されて固定される。また、ファン、モータ、ファンガード、モータサポート及び吸い込み板等をユニットに一体化し、ユニットの自重でチャンバーの開口部に配置したゲル化シートに密着させて、或いはチャンバーの開口部に設けた突起をユニットの取付け穴に挿入することで、ユニットとチャンバーとの結合を容易に実現したファンフィルタユニットが提案されている(特許文献3参照)。更にまた、本体ケース上に設ける上部補強材として、幅寸法が本体ケースの幅寸法より小さく、且つ本体ケースから突出する高さ方向寸法が、本体ケースのフィルタ取付け側端面とモータ保持ベースとの間の距離より大きい構成として、ファンフィルタユニットが直接触れることなく上部補強材を介して積み上げることを可能にして、軽量で小スペース梱包が可能なファンフィルタユニットが提案されている(特許文献4参照)。
【0007】
図5は、従来のファンフィルタユニットの積み重ねを説明する斜視図であり、(a)は1個のファンフィルタユニットを上部補強材と共に示し、(b)は上部補強材を備えた複数個のファンフィルタユニットを積み重ねた状態を示している。図5(a)に示すように、ファンフィルタユニット20は、モータとファンとを備えた送風装置1と、送風装置1が上部に取り付けられるエアチャンバー2とを備えている。ここでは、エアチャンバー2の下側に取り付けるべきフィルタはまだ取付けられていない。エアチャンバー2の上部において、送風装置1の両脇には、送風装置1の上方への出っ張りよりも背丈が高い上部補強材21,21が載置されている。図5(b)に示すように、フィルタを備えず且つ上部補強材21,21を載置したファンフィルタユニット20は、上部補強材21,21によって上下に隣合うユニット同士が接触することなく重ねられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−131507号公報
【特許文献2】特開2000−205621号公報
【特許文献3】特開2007−283205号公報
【特許文献4】特開2002−346327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ファンフィルタユニットにおいて、エアチャンバーは外側の枠体を備えているが、内部が空間となっており、他の送風装置やフィルタに比べて非常に嵩張る構成要素である。そこで、ファンフィルタユニットの搬送や貯蔵・保管において、エアチャンバーの集積性を高めて嵩張りを回避する点で解決すべき課題がある。
【0010】
この発明の目的は、主要な構成要素であるエアチャンバーの集積性を高めて嵩張りを回避し、輸送手段における積載効率を向上させるとともに、輸送、貯蔵・保管コストの低減を図ることができるファンフィルタユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明によるファンフィルタユニットは、送風装置とフィルタとの間に挟まれるエアチャンバーを分割構造とし、前記エアチャンバー同士を重ねられるような構造にしたことを特徴としている。
【0012】
このファンフィルタユニットによれば、上側の送風装置と、下側のフィルタと、両者に挟まれたエアチャンバーとを備えている。エアチャンバーを送風装置とフィルタとに対して分割構造とし、空洞部分が殆どを占めるエアチャンバー同士を、例えば縦断面で台形形状とするなどのように、互いに入り込み可能な重ね合わせ構造にして集積性を高めて嵩張を回避している。しかも、送風装置とエアチャンバーを別部品として構成しているので、クリーンルームの天井面に設置するときには当該設置場所にて送風装置とエアチャンバーとを簡単な作業にて組み立てることで対処可能である。クリーンルーム天井設置場所では、ファンフィルタユニットを設置するアルミフレーム枠に、最初にフィルタを設置し、その上にエアチャンバーを設置し、その上から送風装置を設置する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によるファンフィルタユニットは、嵩張るエアチャンバーを互いに入り込む重ね合わせ構造にして、積層して積載効率を向上し、搬送・貯蔵することができる。ファンフィルタユニットの設置場所において、送風装置をエアチャンバーに対して、その上部に設けられている開口部にパッキンを介してパチン錠で気密に接続することで、容易に組み立てて設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるファンフィルタユニットの一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示すファンフィルタユニットのエアチャンバーを搬送するときの搬送状態を示す図である。
【図3】図1に示すファンフィルタユニットの組立てを説明する説明図である。
【図4】ファンフィルタユニットがクリーンルームに設置されている状態を示す図である。
【図5】従来のファンフィルタユニットとその積み立て状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明によるファンフィルタユニットの一実施形態を示す構成図であり、(a)はファンフィルタユニットの平面図、(b)はその正面図、そして(c)はその側面図である。本発明に係るファンフィルタユニットは、図1に示すように、上側に配置され空気を吸入し加圧をする送風装置1と、空気の塵埃を除去する下側に配置されるフィルタ3と、送風装置1とフィルタ3を上下両側でそれぞれ接続し、送風装置1からフィルタ3に空気を供給するエアチャンバー2とを備えている。エアチャンバー2は、クリーンルーム天井面への設置まで、送風装置1とフィルタ3とに対して分割構造とされている。
【0016】
送風装置1は、中央に配置されたモータ4と、モータ4によって回転され且つ送風用の羽根を備えた環状のファンランナ5と、当該モータ4の電気的保護を行う保護装置6とを備えている。エアチャンバー2は、断面台形形状になっており、送風装置1が取り付けられる上板部分には開口部8が設けられている。送風装置1とエアチャンバー2との接続は開口部8の周縁部分に設けられた複数個(図示の例では4個)のパチン錠7により行い、工具無しで接続することが可能である。
【0017】
モータ4を電気的に駆動すると、ファンランナ5が回転し、ファンランナ5が誘起する上下方向の空気流れが外部からエアチャンバー2内へと流れ、エアチャンバー2内から更にフィルタ3を通って流れ、その際に、フィルタ3は空気中の塵埃を除去することができ、清浄な空気をクリーンルーム内に送風させることができる。
【0018】
図2は、図1に示したファンフィルタユニットのエアチャンバー2の集積・搬送状態を示す図である。上記したように、エアチャンバー2は、縦断面で見て、断面が台形形状をした枠体であって、空洞部分が殆どを占めてはいるが互いに上下に入り込み可能な重ね合わせ構造となっている。エアチャンバー2の下部はフィルタ3を装着するために開放されている。図示の状態では、送風装置1を取り付ける前の状態であるので送風装置1などが突起物として存在していないことから、エアチャンバー2同士は、上下の隣り合うエアチャンバー2を互いに入れ子式に重ねることで積み重ねることが可能であり、嵩張を回避して集積性(積載効率)が高められている。例えば、4トントラックに積載する場合、エアチャンバー2を、133台、4000kgと最大積載量まで積載することが可能となる。このように、多数のエアチャンバー2を、効率的に搬送・貯蔵することができる。
【0019】
図3は、図1に示すファンフィルタユニットの組立方法を示す。図4はファンフィルタユニットがクリーンルームに設置されている状態を示す図である。クリーンルームの天井面には縦横に配列された四角枠状のアルミフレーム9が設置されている。ファンフィルタユニットは、クリーンルームにおける天井設置場所において、最初に、フィルタ3がその周囲を当該各アルミフレーム9にパッキン22を介して設置される。次に、エアチャンバー2がフィルタ3の上面に設置される。フィルタ3上面には下パッキン11が予め貼り付けてあり、エアチャンバー2とフィルタ3との接合面はこの下パッキン11によって気密が保たれている。次に、エアチャンバー2の上に送風装置1が搭載される。送風装置1のエアチャンバー2との接合面には上パッキン12が予め貼り付けてあり、またエアチャンバー2と送風装置1の接合には開口部8に対してパチン錠7(図1参照)により行う。パチン錠7で上パッキン12を締め付けることにより、エアチャンバー2と送風装置1の接合に気密を保つことができる。
【0020】
このようにファンフィルタユニットをその構成部品に分割することにより、個々の部品(送風装置1、エアチャンバー2、及びフィルタ3)の重量は、幅750×長さ1500(各単位mm)のサイズでは約10kg程度となり、搬送からクリーンルーム天井面への設置までを一人の作業員で行うことができる。
【0021】
ファンフィルタユニットのサイズは、クリーンルームでの清浄空気の必要風量、部屋の大きさにより変化する。従来のファンフィルタユニットの場合、エアチャンバー2と送風装置1が一体構造であったため、サイズ変更に伴う部品の設計作業が多くなっていた。本発明に係るファンフィルタユニットの場合、ファンフィルタユニットのサイズ変更はエアチャンバー2のサイズ変更のみとなり設計作業は少なくなる。
【0022】
また、ファンフィルタユニットのサイズ変更は、エアチャンバー2のみの変更となるので、送風装置1のみを先行して製作することができ、送風装置1の在庫を持つことができる。よってファンフィルタユニットの短納期対応が可能となるという利点もある。
【符号の説明】
【0023】
1 送風装置 2 エアチャンバー
3 フィルタ 4 モータ
5 ファンランナ 6 保護装置
7 パチン錠 8 開口
9 アルミフレーム 10 フィルタの下流側パッキン
11 下パッキン 12 上パッキン
20 ファンフィルタユニット 21 上部補強材
22 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風装置とフィルタとの間に挟まれるエアチャンバーを分割構造とし、前記エアチャンバー同士を重ねられるような構造にしたことを特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のファンフィルタユニットにおいて、
前記エアチャンバーは縦断面が台形形状に形成された枠体構造を有しており、前記エアチャンバーの上部は前記送風装置を取り付ける開口部を備えており、前記エアチャンバーの下部は前記フィルタを装着するために開放されていること
を特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のファンフィルタユニットにおいて、
前記送風装置は、前記エアチャンバーの前記開口部に対して、パチン錠によって上パッキンを介して気密を保って取り付けられていること
を特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のファンフィルタユニットにおいて、
前記上パッキンは前記送風装置側に予め取り付けられていること
を特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載のファンフィルタユニットにおいて、
前記フィルタは、前記エアチャンバーの前記下部に対して、下パッキンを介して気密を保って取り付けられていること
を特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のファンフィルタユニットにおいて、
前記下パッキンは前記フィルタ側に予め取り付けられていること
を特徴とするファンフィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−279888(P2010−279888A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134618(P2009−134618)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】