フアジイ制御ル―ル自動チユ―ニング装置
【発明の詳細な説明】
(イ)産業上の利用分野 本発明は、ファジィ制御ルールに基づいて制御を行うファジィ制御装置において最適な制御ができるように、自動的にファジィ制御ルールの調整・修正を行うファジィ制御ルール自動チューニング装置に関する。
(ロ)従来の技術 ファジィ制御は、メンバシップ関数とファジィ制御ルールからなるファジィ知識に基づいて、例えば制御(応答)偏差やその差分情報から制御対象に応じた最適な操作量を演算により求めて制御を行う。これにより、従来のPID(比例,積分,微分)制御などでは得られない非線形で且つ可変ゲインが容易に実現でき、高精度の制御が可能である。このため、非常に多くの制御系への適用がなされている。
良好なファジィ制御を行うためには、制御対象に適したファジィ知識を構築する必要がある。そこで、例えば、「自己調整ファジィ制御装置の設計」(1989年、第5回ファジィシステムシンポジウム講演論文集、第89頁乃至第94頁)では、前件部変数として制御偏差、制御偏差の一階差分、制御偏差の2階差分をとり、後件部変数として操作量の1階差分をとり、3つの前件部変数を夫々N(negative:負)、Z(zero:零)、P(positive:正)にファジィ分割した結果から得られるファジィ制御ルールから構成されるファジィ制御装置において、ファジィ制御装置の入出力値を規格化するスケーリングファクタを学習により調整した後、制御動作中に制御応答がサンプリングにより得られた時点で、ファジィ制御ルールの結論部(後件部における操作量)を修正して目標の応答を得るようにファジィ制御ルールの自動チューニングを行っている。
(ハ)発明が解決しようとする課題 しかしながら、上述の自動チューニングでは、ファジィ制御ルールの結論部の基本的な修正量を、サンプリング時における理想応答波形と制御応答波形との差である応答偏差、及びそれ以前の応答偏差との変化分について、夫々正か負かあるいは零かといった情報のみによって決定しており(最終的な修正量は、基本的な修正量に各ファジィ生後ルールの成立度を掛けたもの)、応答偏差や応答偏差の変化分の大きさに応じたきめこまかなファジィ制御ルールの結論部の修正ができなかった。
このため、理想応答波形と修正前のファジィ制御ルールに基づく制御応答波形との差が大きい場合には、チューニングの収束効率は必ずしも良くはなかった。
本発明は、斯様な点に鑑みて成されたもので、理想応答と制御応答との差である応答偏差や応答偏差の変化分の大きさに応じて、ファジィ制御ルールの精密なチューニングを自動的に行うファジィ制御ルール自動チューニング装置を提供するものである。
(ニ)課題を解決するための手段 本発明は、メンバシップ関数とファジィ制御ルールに基づいて、制御応答値を予め設定された目標値へと制御するファジィ制御装置に対して、前記ファジィ制御ルールの修正を行うファジィ制御ルール自動チューニング装置であって、制御応答値を記憶する制御応答値記憶手段と、得た制御応答値に対する前記ファジィ制御ルールの成立度を記憶するルール成立度記憶手段と、ファジィ制御装置の制御において理想的な応答値を記憶する理想応答値記憶手段と、理想的な応答値と制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさに応じて前記ファジィ制御ルールの後件部の実数値を修正するためのチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールを記憶するチューニング用ファジィ知識記憶手段と、該チューニング用ファジィ知識記憶手段に記憶されたチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールに基づいて、前記ルール成立度記憶手段に記憶された前記ファジィ制御ルールの成立度と、前記理想応答値記憶手段に記憶された理想的な応答値と前記制御応答記憶手段に記憶された制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさとから前記ファジィ制御ルールの後件部の実数値を修正するチューニング用ファジィ推論手段とを備えるものである。
(ホ)作用 チューニング用ファジィ推論手段では、チューニング用ファジィ知識記憶手段に記憶されたチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールに基づいて、理想応答値記憶手段に記憶された理想的な応答値と制御応答記憶手段に記憶された制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさとからファジィ制御ルールの後件部の修正する基本的な修正量を演算し、この演算により得られた基本的な修正量とルール成立度記憶手段に記憶された前記ファジィ制御ルールの成立度とから、ファジィ制御ルールの後件部の修正を行う。これにより、応答偏差と応答偏差の大きさに応じた精密な修正がされる。
(ヘ)実施例 第1図は、本発明のファジィ制御ルール自動チューニング装置とチューニング対象となるファジィ制御装置の一実施例の概略構成図である。
(1)はファジィ制御装置で、ファジィ制御ルール及びメンバシップ関数が記憶されたファジィ制御知識ベース(2)、該ファジィ制御知識ベース(2)に記憶されたファジィ制御ルール及びメンバシップ関数に基づいて推論を行い制御対象(4)の制御を行うファジィ推論部(3)から成る。
ファジィ制御装置(1)では、ファジィ推論部(3)において、設定値rと現在のサンプル時点jにおける制御応答yjとの制御偏差ej、及びその制御偏差の1階差分Δejより、ファジィ制御知識ベース(2)に記憶されたファジィ制御ルールに基づいて操作量の1階差分Δujを算出し、更に、uj=uj-1+Δujにより操作量ujを求める。そして、制御対象(4)にこの操作量ujを加えることで制御対象(4)の制御を行う。
(5)は、ファジィ制御装置(1)のファジィ制御知識ベース(2)に記憶されたファジィ制御ルールのチューニングを自動的に行うファジィ制御ルール自動チューニング装置で、ファジィ制御推論部(3)において最新(現在)のサンプル時点jからsサンプル前までの制御応答に対して成立したファジィ制御ルールの成立度を記憶しておくルール成立度記憶手段としてのルール成立度記憶テーブル(6)、同様に最新のサンプル時点jからsサンプル前までの制御応答値を記憶しておく制御応答値記憶手段としての応答波形記憶テーブル(7)(第12図参照)、制御対象(4)に対するファジィ制御において理想的な応答値yjoが予め記憶された理想応答値記憶手段としての理想応答波形記憶テーブル(8)(第13図参照、第13図では応答偏差ejoについても示してある)、理想応答波形記憶テーブル(8)に記憶された理想的な応答値yjoから応答波形記憶テーブル(7)に記憶された実際に得られた制御応答値を引いた応答偏差ejo、およびこの応答偏差ejoとsサンプル前のej-soとの差Δejoを求める制御性能評価部(9)を備えている。更にこのファジィ制御ルール自動チューニング装置(5)は、制御性能評価部(9)で得られた応答偏差ejo、およびsサンプル間の応答偏差の変化分Δejoの大きさに基づいて、ファジィ制御ルールの後件部の値を修正するためのチューニング用ファジィルールとメンバシップ関数が記憶されたチューニング用ファジィ知識手段としてのチューニング用ファジィ知識ベース(10)、該チューニング用ファジィ知識ベース(10)に記憶されたチューニング用ファジィルールとメンバシップ関数に基づいてファジィ制御ルールの後件部の修正を行うチューニング用ファジィ推論手段としてのチューニング用ファジィ推論部(11)を備える。
まず、ファジィ制御装置(1)の動作について説明する。尚、本実施例では、簡単のために、ファジィ制御ルールには後件部が実数値であるような簡易推論を用いるものとする。
今、ファジィ制御ルールは、前件部変数に制御偏差ejと制御偏差の1階差分Δejをとり、後件部変数に操作量の1階差分Δujをとるものとする。
制御偏差ejと制御偏差の1階差分Δejのファジィ分割は任意であるが、ここでは制御偏差ejと制御偏差の1階差分Δejを、第2図に示す様に、いずれも7つ(NB:negative big、NM:negative medium、NS:negative samll、ZO:zero、PS:positive small、PM:positive medium、PB:positive big)に分割し、第3図に示すような13個のファジィ制御ルールを設定する。無論、第3図の空白部分に更にルールが追加されても構わない。
第3図に示すファジィ制御ルールは次のように表される。
R1:IF ej is NB,Δej is ZO,THEN Δuj is NBR2:IF ej is NM,Δej is ZO,THEN Δuj is NMR3:IF ej is NS,Δej is ZO,THEN Δuj is NSR4:IF ej is ZO,Δej is NB,THEN Δuj is NB …R11:IF ej is PS,Δej is ZO,THEN Δuj is PSR12:IF ej is PM,Δej is ZO,THEN Δuj is PMR13:IF ej is PB,Δej is ZO,THEN Δuj is PB 但し、最新(現在)のサンプル時点をjとし、ej=r−yj,Δej=ej−ej-1Δuj=uj−uj-1r:設定値、yj:制御応答、ej:制御偏差、Δej:制御偏差の1階差分、Δuj:操作量ujの1階差分である。
前件部のメンバシップ関数は第2図に示した通りであり、後件部のメンバシップ関数を第4図に示す。本実施例では、後件部のメンバシップ関数は、実数値hi(i=1〜7)に置き換えたものである。
ファジィ制御装置の入力ej、Δejが与えられたとき、出力Δujは次式で得られる。
但し、wiはi番めのルールの、ej、Δejに対するルール成立度である。
斯様にして得られた操作量の1階差分Δujと、一つ前のサンプル時点j−1における操作量uj-1とから、これらを足して操作量ujを求める。そして、制御対象(4)にこの操作量ujを加えて、制御対象(4)の制御を行う。
次に、ファジィ制御ルールのチューニングについて説明する。ファジィ制御ルールのチューニングは、現在のサンプル時点jで観測された制御応答yJを、予め設定され理想応答波形記憶テーブル(8)に記憶されている理想応答yjoに一致させるように、現在の制御状態に影響があると考えられる現在のサンプル時点jよりsサンプル前に用いたファジィ制御ルールの後件部の実数値の修正量を応答偏差ejo、およびsサンプル間の応答偏差の変化分Δejoの符号及びその値の大きさに応じてファジィ推論することにより求め、制御ルールの後件部の実数値を増減することにより行う。
ここで、ejo=yj−yjoΔejo=ejo−ej-soejo:応答偏差、Δejo:sサンプル間の応答偏差の変化分、yjo:理想応答、yj:制御応答である。
例えば、第8図Aを例に取ると、第8図Aでは、『現時点jで応答偏差ejoはNBで、かつsサンプル前と比較して応答偏差はさらに減少して(ΔejoがN)、理想応答よりも小さい値の方向へ遠ざかっていく傾向にあるので、sサンプル前の操作量が少なすぎたと考えられ、sサンプル前に用いた制御ルールの後件部の値を大きく増加させなければならない』場合を示している。
これをチューニング用ファジィルールで表現すると、時刻jにおいて、IF ejois NB,Δejo is N,THEN Δhi is PB 但し、Δhi:i番めのファジィ制御ルールの後件部の値hjの修正量と表現される。
チューニング用ファジィルールの前件部、後件部の変数のファジィ分割は、やはり任意であるが、応答偏差ejoのファジィ分割例を第5図に、応答偏差の1階差分Δejoのファジィ分割例を第6図に示す。また、後件部のΔhiのメンバシップ関数は、第7図に示すように、チューニングのためのファジィ推論においても簡略推論を用いるので、実数値piに置き換えたものとなる。
即ち、PBはp7に対応するので、上述のチューニング用ファジィルールは、IF ejois NB,Δejo is N,THEN Δhi is p7となる。
第5図と第6図に示すファジィ分割全てに対応した、理想応答yjoに対する制御応答yjの発生の仕方を第8図A乃至Oに示す。第8図に対応するチューニング用ファジィルールを表形式で表すと第9図のようになる。
尚、チューニング用ファジィルールは第9図のように全ての場合について記述する必要はなく、例えば第10図のように、代表的なパターンに対するものだけの記述でもよい。
チューニング用ファジィ推論部(11)は、チューニング用ファジィ知識ベース(10)に記憶されたメンバシップ関数(第5図乃至第6図)や第9図(あるいは第10図)のチューニング用ファジィルールに基づいて、制御性能評価部(9)において計算された応答偏差ejo、および応答偏差の変化分(応答偏差の1階差分)Δejoが与えられたとき、簡略推論によって制御ルールの後件部の修正量Δhiとして、
(但し、チューニング用ファジィルールの総数をm個とし、k番めのチューニング用ファジィルールの、ejo、Δejoに対するルール成立度をμkとする)
を演算して求める。
そして、ファジィ制御ルールの後件部の値hiは、sサンプル前に操作量を演算するために用いられた全てのファジィ制御ルールに対して、現在のサンプル時点jで次式により修正される。
hiNEW=hiOLD+w(j-s)・Δhi 但し、w(j-s):(j−s)時点のi番めのファジィ制御ルールの成立度hiOLD:(j−s)時点で使用されたファジィ制御ルールの後件部の値hiNEW:j時点で修正されたファジィ制御ルールの後件部の値である。
w(j-s)は、(j−s)時点における操作量の1階差分Δu(j-s)を算出する際に、ファジィ推論部(3)において各ファジィ制御ルールに対して求まっており、これがルール成立度記憶テーブル(6)に記憶されている。ルール成立度記憶テーブル(6)の内容例を第11図に示す。
斯様にして得られたhiNEWに、ファジィ制御知識ベース(2)の、(j−s)時点で使用されたファジィ制御ルールの後件部の値が修正される。
このようなファジィ制御ルールのチューニングは、例えば、
で示される終了判定基準が満足されるまで、制御対象(4)の制御中、前回のチューニング後のファジィ制御ルールを初期ルールとして判定基準が満足されるまで、実時間のチューニングが繰り返し行われる。尚、δは終了判定基準の値である。
(ト)発明の効果 本発明は、以上の説明から明らかなように、ファジィ制御ルールの後件部の修正量の推論にファジィ推論を適用することにより、応答偏差ejo及び応答偏差の変化分Δejo(応答偏差の1階差分)の大きさに応じて、より精密なファジィ制御ルールのチューニングがされる。そして、理想応答と初期制御ルールによる応答との差(初期応答偏差)がある程度大きい場合のチューニングが可能になり、チューニングのロバスト性および収束効率の改善が図れる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のファジィ制御ルール自動チューニング装置とチューニング対象となるファジィ制御装置の一実施例の概略構成図、第2図は本発明一実施例に係るファジィ制御ルールの前件部のメンバシップ関数を示す図、第3図は本発明一実施例に係るファジィ制御ルールを示す図、第4図は本発明一実施例に係るファジィ制御ルールの後件部のメンバシップ関数(実数値)を示す図、第5図5図及び第6図は本発明一実施例に係るチューニング用ファジィルールの前件部のメンバシップ関数を示す図、第7図は本発明一実施例に係るチューニング用ファジィルールの後件部のメンバシップ関数(実数値)を示す図、第8図は理想応答に対する制御応答の状態を示す図、第9図及び第10図は本発明一実施例に係るチューニング用ファジィルールを示す図、第11図は本発明一実施例に係るルール成立度記憶テーブルの一例を示す図、第12図は本発明一実施例に係る応答波形記憶テーブルの一例を示す図、第13図は本発明一実施例に係る理想応答波形記憶テーブルの一例を示す図である。
(1)……ファジィ制御装置、(2)……ファジィ制御知識ベース、(3)……ファジィ推論部、(4)……制御対象、(5)……ファジィ制御ルール自動チューニング装置、(6)……ルール成立度記憶テーブル(ルール成立度記憶手段)、(7)……応答波形記憶テーブル(制御応答値記憶手段)、(8)……理想応答波形記憶テーブル(理想応答値記憶手段)、(9)……制御性能評価部、(10)……チューニング用ファジィ知識ベース(チューニング用ファジィ知識記憶手段)、(11)……チューニング用ファジィ推論部(チューニング用ファジィ推論手段)。
(イ)産業上の利用分野 本発明は、ファジィ制御ルールに基づいて制御を行うファジィ制御装置において最適な制御ができるように、自動的にファジィ制御ルールの調整・修正を行うファジィ制御ルール自動チューニング装置に関する。
(ロ)従来の技術 ファジィ制御は、メンバシップ関数とファジィ制御ルールからなるファジィ知識に基づいて、例えば制御(応答)偏差やその差分情報から制御対象に応じた最適な操作量を演算により求めて制御を行う。これにより、従来のPID(比例,積分,微分)制御などでは得られない非線形で且つ可変ゲインが容易に実現でき、高精度の制御が可能である。このため、非常に多くの制御系への適用がなされている。
良好なファジィ制御を行うためには、制御対象に適したファジィ知識を構築する必要がある。そこで、例えば、「自己調整ファジィ制御装置の設計」(1989年、第5回ファジィシステムシンポジウム講演論文集、第89頁乃至第94頁)では、前件部変数として制御偏差、制御偏差の一階差分、制御偏差の2階差分をとり、後件部変数として操作量の1階差分をとり、3つの前件部変数を夫々N(negative:負)、Z(zero:零)、P(positive:正)にファジィ分割した結果から得られるファジィ制御ルールから構成されるファジィ制御装置において、ファジィ制御装置の入出力値を規格化するスケーリングファクタを学習により調整した後、制御動作中に制御応答がサンプリングにより得られた時点で、ファジィ制御ルールの結論部(後件部における操作量)を修正して目標の応答を得るようにファジィ制御ルールの自動チューニングを行っている。
(ハ)発明が解決しようとする課題 しかしながら、上述の自動チューニングでは、ファジィ制御ルールの結論部の基本的な修正量を、サンプリング時における理想応答波形と制御応答波形との差である応答偏差、及びそれ以前の応答偏差との変化分について、夫々正か負かあるいは零かといった情報のみによって決定しており(最終的な修正量は、基本的な修正量に各ファジィ生後ルールの成立度を掛けたもの)、応答偏差や応答偏差の変化分の大きさに応じたきめこまかなファジィ制御ルールの結論部の修正ができなかった。
このため、理想応答波形と修正前のファジィ制御ルールに基づく制御応答波形との差が大きい場合には、チューニングの収束効率は必ずしも良くはなかった。
本発明は、斯様な点に鑑みて成されたもので、理想応答と制御応答との差である応答偏差や応答偏差の変化分の大きさに応じて、ファジィ制御ルールの精密なチューニングを自動的に行うファジィ制御ルール自動チューニング装置を提供するものである。
(ニ)課題を解決するための手段 本発明は、メンバシップ関数とファジィ制御ルールに基づいて、制御応答値を予め設定された目標値へと制御するファジィ制御装置に対して、前記ファジィ制御ルールの修正を行うファジィ制御ルール自動チューニング装置であって、制御応答値を記憶する制御応答値記憶手段と、得た制御応答値に対する前記ファジィ制御ルールの成立度を記憶するルール成立度記憶手段と、ファジィ制御装置の制御において理想的な応答値を記憶する理想応答値記憶手段と、理想的な応答値と制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさに応じて前記ファジィ制御ルールの後件部の実数値を修正するためのチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールを記憶するチューニング用ファジィ知識記憶手段と、該チューニング用ファジィ知識記憶手段に記憶されたチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールに基づいて、前記ルール成立度記憶手段に記憶された前記ファジィ制御ルールの成立度と、前記理想応答値記憶手段に記憶された理想的な応答値と前記制御応答記憶手段に記憶された制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさとから前記ファジィ制御ルールの後件部の実数値を修正するチューニング用ファジィ推論手段とを備えるものである。
(ホ)作用 チューニング用ファジィ推論手段では、チューニング用ファジィ知識記憶手段に記憶されたチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールに基づいて、理想応答値記憶手段に記憶された理想的な応答値と制御応答記憶手段に記憶された制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさとからファジィ制御ルールの後件部の修正する基本的な修正量を演算し、この演算により得られた基本的な修正量とルール成立度記憶手段に記憶された前記ファジィ制御ルールの成立度とから、ファジィ制御ルールの後件部の修正を行う。これにより、応答偏差と応答偏差の大きさに応じた精密な修正がされる。
(ヘ)実施例 第1図は、本発明のファジィ制御ルール自動チューニング装置とチューニング対象となるファジィ制御装置の一実施例の概略構成図である。
(1)はファジィ制御装置で、ファジィ制御ルール及びメンバシップ関数が記憶されたファジィ制御知識ベース(2)、該ファジィ制御知識ベース(2)に記憶されたファジィ制御ルール及びメンバシップ関数に基づいて推論を行い制御対象(4)の制御を行うファジィ推論部(3)から成る。
ファジィ制御装置(1)では、ファジィ推論部(3)において、設定値rと現在のサンプル時点jにおける制御応答yjとの制御偏差ej、及びその制御偏差の1階差分Δejより、ファジィ制御知識ベース(2)に記憶されたファジィ制御ルールに基づいて操作量の1階差分Δujを算出し、更に、uj=uj-1+Δujにより操作量ujを求める。そして、制御対象(4)にこの操作量ujを加えることで制御対象(4)の制御を行う。
(5)は、ファジィ制御装置(1)のファジィ制御知識ベース(2)に記憶されたファジィ制御ルールのチューニングを自動的に行うファジィ制御ルール自動チューニング装置で、ファジィ制御推論部(3)において最新(現在)のサンプル時点jからsサンプル前までの制御応答に対して成立したファジィ制御ルールの成立度を記憶しておくルール成立度記憶手段としてのルール成立度記憶テーブル(6)、同様に最新のサンプル時点jからsサンプル前までの制御応答値を記憶しておく制御応答値記憶手段としての応答波形記憶テーブル(7)(第12図参照)、制御対象(4)に対するファジィ制御において理想的な応答値yjoが予め記憶された理想応答値記憶手段としての理想応答波形記憶テーブル(8)(第13図参照、第13図では応答偏差ejoについても示してある)、理想応答波形記憶テーブル(8)に記憶された理想的な応答値yjoから応答波形記憶テーブル(7)に記憶された実際に得られた制御応答値を引いた応答偏差ejo、およびこの応答偏差ejoとsサンプル前のej-soとの差Δejoを求める制御性能評価部(9)を備えている。更にこのファジィ制御ルール自動チューニング装置(5)は、制御性能評価部(9)で得られた応答偏差ejo、およびsサンプル間の応答偏差の変化分Δejoの大きさに基づいて、ファジィ制御ルールの後件部の値を修正するためのチューニング用ファジィルールとメンバシップ関数が記憶されたチューニング用ファジィ知識手段としてのチューニング用ファジィ知識ベース(10)、該チューニング用ファジィ知識ベース(10)に記憶されたチューニング用ファジィルールとメンバシップ関数に基づいてファジィ制御ルールの後件部の修正を行うチューニング用ファジィ推論手段としてのチューニング用ファジィ推論部(11)を備える。
まず、ファジィ制御装置(1)の動作について説明する。尚、本実施例では、簡単のために、ファジィ制御ルールには後件部が実数値であるような簡易推論を用いるものとする。
今、ファジィ制御ルールは、前件部変数に制御偏差ejと制御偏差の1階差分Δejをとり、後件部変数に操作量の1階差分Δujをとるものとする。
制御偏差ejと制御偏差の1階差分Δejのファジィ分割は任意であるが、ここでは制御偏差ejと制御偏差の1階差分Δejを、第2図に示す様に、いずれも7つ(NB:negative big、NM:negative medium、NS:negative samll、ZO:zero、PS:positive small、PM:positive medium、PB:positive big)に分割し、第3図に示すような13個のファジィ制御ルールを設定する。無論、第3図の空白部分に更にルールが追加されても構わない。
第3図に示すファジィ制御ルールは次のように表される。
R1:IF ej is NB,Δej is ZO,THEN Δuj is NBR2:IF ej is NM,Δej is ZO,THEN Δuj is NMR3:IF ej is NS,Δej is ZO,THEN Δuj is NSR4:IF ej is ZO,Δej is NB,THEN Δuj is NB …R11:IF ej is PS,Δej is ZO,THEN Δuj is PSR12:IF ej is PM,Δej is ZO,THEN Δuj is PMR13:IF ej is PB,Δej is ZO,THEN Δuj is PB 但し、最新(現在)のサンプル時点をjとし、ej=r−yj,Δej=ej−ej-1Δuj=uj−uj-1r:設定値、yj:制御応答、ej:制御偏差、Δej:制御偏差の1階差分、Δuj:操作量ujの1階差分である。
前件部のメンバシップ関数は第2図に示した通りであり、後件部のメンバシップ関数を第4図に示す。本実施例では、後件部のメンバシップ関数は、実数値hi(i=1〜7)に置き換えたものである。
ファジィ制御装置の入力ej、Δejが与えられたとき、出力Δujは次式で得られる。
但し、wiはi番めのルールの、ej、Δejに対するルール成立度である。
斯様にして得られた操作量の1階差分Δujと、一つ前のサンプル時点j−1における操作量uj-1とから、これらを足して操作量ujを求める。そして、制御対象(4)にこの操作量ujを加えて、制御対象(4)の制御を行う。
次に、ファジィ制御ルールのチューニングについて説明する。ファジィ制御ルールのチューニングは、現在のサンプル時点jで観測された制御応答yJを、予め設定され理想応答波形記憶テーブル(8)に記憶されている理想応答yjoに一致させるように、現在の制御状態に影響があると考えられる現在のサンプル時点jよりsサンプル前に用いたファジィ制御ルールの後件部の実数値の修正量を応答偏差ejo、およびsサンプル間の応答偏差の変化分Δejoの符号及びその値の大きさに応じてファジィ推論することにより求め、制御ルールの後件部の実数値を増減することにより行う。
ここで、ejo=yj−yjoΔejo=ejo−ej-soejo:応答偏差、Δejo:sサンプル間の応答偏差の変化分、yjo:理想応答、yj:制御応答である。
例えば、第8図Aを例に取ると、第8図Aでは、『現時点jで応答偏差ejoはNBで、かつsサンプル前と比較して応答偏差はさらに減少して(ΔejoがN)、理想応答よりも小さい値の方向へ遠ざかっていく傾向にあるので、sサンプル前の操作量が少なすぎたと考えられ、sサンプル前に用いた制御ルールの後件部の値を大きく増加させなければならない』場合を示している。
これをチューニング用ファジィルールで表現すると、時刻jにおいて、IF ejois NB,Δejo is N,THEN Δhi is PB 但し、Δhi:i番めのファジィ制御ルールの後件部の値hjの修正量と表現される。
チューニング用ファジィルールの前件部、後件部の変数のファジィ分割は、やはり任意であるが、応答偏差ejoのファジィ分割例を第5図に、応答偏差の1階差分Δejoのファジィ分割例を第6図に示す。また、後件部のΔhiのメンバシップ関数は、第7図に示すように、チューニングのためのファジィ推論においても簡略推論を用いるので、実数値piに置き換えたものとなる。
即ち、PBはp7に対応するので、上述のチューニング用ファジィルールは、IF ejois NB,Δejo is N,THEN Δhi is p7となる。
第5図と第6図に示すファジィ分割全てに対応した、理想応答yjoに対する制御応答yjの発生の仕方を第8図A乃至Oに示す。第8図に対応するチューニング用ファジィルールを表形式で表すと第9図のようになる。
尚、チューニング用ファジィルールは第9図のように全ての場合について記述する必要はなく、例えば第10図のように、代表的なパターンに対するものだけの記述でもよい。
チューニング用ファジィ推論部(11)は、チューニング用ファジィ知識ベース(10)に記憶されたメンバシップ関数(第5図乃至第6図)や第9図(あるいは第10図)のチューニング用ファジィルールに基づいて、制御性能評価部(9)において計算された応答偏差ejo、および応答偏差の変化分(応答偏差の1階差分)Δejoが与えられたとき、簡略推論によって制御ルールの後件部の修正量Δhiとして、
(但し、チューニング用ファジィルールの総数をm個とし、k番めのチューニング用ファジィルールの、ejo、Δejoに対するルール成立度をμkとする)
を演算して求める。
そして、ファジィ制御ルールの後件部の値hiは、sサンプル前に操作量を演算するために用いられた全てのファジィ制御ルールに対して、現在のサンプル時点jで次式により修正される。
hiNEW=hiOLD+w(j-s)・Δhi 但し、w(j-s):(j−s)時点のi番めのファジィ制御ルールの成立度hiOLD:(j−s)時点で使用されたファジィ制御ルールの後件部の値hiNEW:j時点で修正されたファジィ制御ルールの後件部の値である。
w(j-s)は、(j−s)時点における操作量の1階差分Δu(j-s)を算出する際に、ファジィ推論部(3)において各ファジィ制御ルールに対して求まっており、これがルール成立度記憶テーブル(6)に記憶されている。ルール成立度記憶テーブル(6)の内容例を第11図に示す。
斯様にして得られたhiNEWに、ファジィ制御知識ベース(2)の、(j−s)時点で使用されたファジィ制御ルールの後件部の値が修正される。
このようなファジィ制御ルールのチューニングは、例えば、
で示される終了判定基準が満足されるまで、制御対象(4)の制御中、前回のチューニング後のファジィ制御ルールを初期ルールとして判定基準が満足されるまで、実時間のチューニングが繰り返し行われる。尚、δは終了判定基準の値である。
(ト)発明の効果 本発明は、以上の説明から明らかなように、ファジィ制御ルールの後件部の修正量の推論にファジィ推論を適用することにより、応答偏差ejo及び応答偏差の変化分Δejo(応答偏差の1階差分)の大きさに応じて、より精密なファジィ制御ルールのチューニングがされる。そして、理想応答と初期制御ルールによる応答との差(初期応答偏差)がある程度大きい場合のチューニングが可能になり、チューニングのロバスト性および収束効率の改善が図れる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のファジィ制御ルール自動チューニング装置とチューニング対象となるファジィ制御装置の一実施例の概略構成図、第2図は本発明一実施例に係るファジィ制御ルールの前件部のメンバシップ関数を示す図、第3図は本発明一実施例に係るファジィ制御ルールを示す図、第4図は本発明一実施例に係るファジィ制御ルールの後件部のメンバシップ関数(実数値)を示す図、第5図5図及び第6図は本発明一実施例に係るチューニング用ファジィルールの前件部のメンバシップ関数を示す図、第7図は本発明一実施例に係るチューニング用ファジィルールの後件部のメンバシップ関数(実数値)を示す図、第8図は理想応答に対する制御応答の状態を示す図、第9図及び第10図は本発明一実施例に係るチューニング用ファジィルールを示す図、第11図は本発明一実施例に係るルール成立度記憶テーブルの一例を示す図、第12図は本発明一実施例に係る応答波形記憶テーブルの一例を示す図、第13図は本発明一実施例に係る理想応答波形記憶テーブルの一例を示す図である。
(1)……ファジィ制御装置、(2)……ファジィ制御知識ベース、(3)……ファジィ推論部、(4)……制御対象、(5)……ファジィ制御ルール自動チューニング装置、(6)……ルール成立度記憶テーブル(ルール成立度記憶手段)、(7)……応答波形記憶テーブル(制御応答値記憶手段)、(8)……理想応答波形記憶テーブル(理想応答値記憶手段)、(9)……制御性能評価部、(10)……チューニング用ファジィ知識ベース(チューニング用ファジィ知識記憶手段)、(11)……チューニング用ファジィ推論部(チューニング用ファジィ推論手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】メンバシップ関数とファジィ制御ルールに基づいて、制御応答値を予め設定された目標値へと制御するファジィ制御装置に対して、前記ファジィ制御ルールの修正を行うファジィ制御ルール自動チューニング装置において、制御応答値を記憶する制御応答値記憶手段と、得た制御応答値に対する前記ファジィ制御ルールの成立度を記憶するルール成立度記憶手段と、ファジィ制御装置の制御において理想的な応答値を記憶する理想応答値記憶手段と、理想的な応答値と制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさに応じて前記ファジィ制御ルールの後件部の実数値を修正するためのチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールを記憶するチューニング用ファジィ知識記憶手段と、該チューニング用ファジィ知識記憶手段に記憶されたチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールに基づいて、前記ルール成立度記憶手段に記憶された前記ファジィ制御ルールの成立度と、前記理想応答値記憶手段に記憶された理想的な応答値と前記制御応答記憶手段に記憶された制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさとから前記ファジィ制御ルールの後件部の実数値を修正するチューニング用ファジィ推論手段とを備えることを特徴とするファジィ制御ルール自動チューニング装置。
【請求項1】メンバシップ関数とファジィ制御ルールに基づいて、制御応答値を予め設定された目標値へと制御するファジィ制御装置に対して、前記ファジィ制御ルールの修正を行うファジィ制御ルール自動チューニング装置において、制御応答値を記憶する制御応答値記憶手段と、得た制御応答値に対する前記ファジィ制御ルールの成立度を記憶するルール成立度記憶手段と、ファジィ制御装置の制御において理想的な応答値を記憶する理想応答値記憶手段と、理想的な応答値と制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさに応じて前記ファジィ制御ルールの後件部の実数値を修正するためのチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールを記憶するチューニング用ファジィ知識記憶手段と、該チューニング用ファジィ知識記憶手段に記憶されたチューニング用メンバシップ関数及びチューニング用ファジィルールに基づいて、前記ルール成立度記憶手段に記憶された前記ファジィ制御ルールの成立度と、前記理想応答値記憶手段に記憶された理想的な応答値と前記制御応答記憶手段に記憶された制御応答値の差である応答偏差及びその応答偏差の変化分の大きさとから前記ファジィ制御ルールの後件部の実数値を修正するチューニング用ファジィ推論手段とを備えることを特徴とするファジィ制御ルール自動チューニング装置。
【第1図】
【第2図】
【第3図】
【第4図】
【第5図】
【第6図】
【第7図】
【第9図】
【第10図】
【第12図】
【第8図】
【第11図】
【第13図】
【第2図】
【第3図】
【第4図】
【第5図】
【第6図】
【第7図】
【第9図】
【第10図】
【第12図】
【第8図】
【第11図】
【第13図】
【特許番号】第2532967号
【登録日】平成8年(1996)6月27日
【発行日】平成8年(1996)9月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−106258
【出願日】平成2年(1990)4月20日
【公開番号】特開平4−4401
【公開日】平成4年(1992)1月8日
【出願人】(999999999)三洋電機株式会社
【参考文献】
【文献】特開平2−72405(JP,A)
【文献】特開昭62−135902(JP,A)
【文献】特開昭62−241003(JP,A)
【文献】特開昭63−247801(JP,A)
【文献】特開平1−293401(JP,A)
【登録日】平成8年(1996)6月27日
【発行日】平成8年(1996)9月11日
【国際特許分類】
【出願日】平成2年(1990)4月20日
【公開番号】特開平4−4401
【公開日】平成4年(1992)1月8日
【出願人】(999999999)三洋電機株式会社
【参考文献】
【文献】特開平2−72405(JP,A)
【文献】特開昭62−135902(JP,A)
【文献】特開昭62−241003(JP,A)
【文献】特開昭63−247801(JP,A)
【文献】特開平1−293401(JP,A)
[ Back to top ]