説明

フィトステリルフェルレートの製造方法

本発明は、フェルラ酸およびフィトステロール(ダイズ油デオドライザー蒸留物から単離された)を使用するフィトステリルフェルレートの製造のための合成方法であって、(a)フェルラ酸のフェルラ酸アセテートへのアセチル化;(b)フィトステロールでフェルラ酸アセテートをエステル化してフィトステリルフェルレートアセテートを得ることと;(c)フィトステリルフェルレートアセテートをフィトステリルフェルレートに脱保護することを含む方法に関する。フィトステリルフェルレートは、コメ糠油ソープストックから単離された天然のオリザノールの作用に比較してコレステロール低下作用について評価された。この試験は、フィトステリルフェルレートが上昇したコレステロールレベルを有意に低下し、またコレステロールの吸収を阻害し、その作用は天然のオリザノールの作用に匹敵し、栄養補給/食品サプリメントとして有用であることを裏付けた。従って、フィトステリルフェルレートは、幾つかの適用のために天然オリザノールの代替候補である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイズ油デオドライザー蒸留物から単離されたフェルラ酸とフィトステロールとを用いたコメ糠油ソープストック(soap-stock)から単離されたオリザノールに存在する幾つかの分子と等しい、栄養補助食品/食物サプリメントとしてのフィトステリルフェルレートの製造方法に関する。より詳しくは、本発明はまた、栄養補助食品/食物サプリメントとしてのコメ糠油ソープストックから単離された天然のオリザノールの活性と比較した、ハムスターにおけるコレステロール低下作用についてのフィトステリルフェルレートの評価に関する。
【背景技術】
【0002】
コメ糠油は、天然のオリザノールの唯一の源である。オリザノールは、コメ糠油から最初に単離され[Kaneko, R. and T. Tsuchiya; J. Chem Soc. Jpn. 57,526(1954)]; [Tsuchya, T. et al; JP 4895 (1957)]、単一成分であると推定された。オリザノールは、フェルラ酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸)とシクロアルテノール、24-メチレンシクロアルテノール、キャンペステロールおよびβ-シトステロールのエステルの混合物である(図1)[Rogers, E. J; Rice,S.M.; Nicolosi, R. J,; Carpenter, D. R.; McClelland, C. A.; Romanczyk, L. J., Jr. J. Am. Oil. Chem Soc. 70, 301-307(1993); Diack, M.; Saska, M. J. Am. Oil. Chem Soc. 71, 1211-1217 (1994); Norton, R. A. Lipids, 30, 269-274 (1995); Xu, Z.; Godrej, J. S. J. Agric. Food Chem. 47, 2724-2728 (1999)]。数十年間に亘り、植物油からのオリザノールの単離方法は改善されてきている。そのような方法は以下を含む;オリザノール抽出のための選択的な有機溶媒を使用して植物油からシクロアルテニルフェルレートを抽出とそれに続くクロマトグラフィ精製[Kimura, Goro Jap Pat 6314796 (1988) and Jap Pat 6314797 (1988)]、硫酸アルミニウムでのステリンの沈殿によるコメ糠ダーク油からのオリザノールの単離とそれに続く上清からのオリザノールの結晶化[Beso oils & fats Co. Ltd., Jap Pat 8295942 (1982)]、コメ糠およびコメ胚油からの2段階アルカリ処理からのオリザノールの高濃度分離[Shimuzu, Hisashi; Jap Pat 76123811 (1976)]:ジエチルエーテルによるpH9.5でのコメ糠ソープスタックからのオリザノールの抽出とそれに続く中性アルミナカラム上でのそのクロマトグラフィ精製[G.S. Seetharamaiah, and J. V. Prabhakar; J. Food Science Technology, 23,270 (1986)];HClによるソープストックの酸性化の後にエーテルによるコメ糠ソープスタックからのオリザノールの抽出[Tomotaro, tsuchiya et al; Jap Pat 4895 (1957)]。メタノールおよび硫酸によるコメ糠ダーク油のエステル交換反応とそれに続く溶媒メタノールおよびエーテルの混合物を溶出液として使用して前処理されたアンバーライトIRA-401上でのカラムクロマトグラフィによるオリザノールの単離[Tomaro, Tsuchiya and Osamu, Okubo; Jap Pat 13649 (1961)]。抽出溶媒として水飽和フルフラールを使用するオリザノールの20.2%濃縮溶液のヘキサン溶液の液体−液体抽出による全約35%収率の98.3%純オリザノールの単離[Watanabe, Vasuo et al; Jap Pat 7812730 (1968)]およびコメ糠、並びに発酵体、トウモロコシおよびオオムギからの原料油の比較的低温での蒸留と、それに続く残渣のヒドロキシル溶媒での蒸留によるオリザノールの抽出[Yamamoto, Takeshi, Ger Pat 1301002 (1969)]。粗ダーク酸性油(コメ糠)からのオリザノールの単離方法[Das; P.K, Chaudary; A, Kaimal; T.N.B, Bhalerao; U.T, US Pat 5,869,708 (1999)]。コメ糠油ソープストックからのオリザノールの単離方法[Rao; K.V.S.A, Rao; B.V.S.K. Kaimal; T.N.B, US Pat 6,410,762 (2002)]。コメ糠油のコレステロール低下作用は、その構成成分オリザノールと他の幾つかの成分の不鹸化物のためであることが示されている[Seetharamaiah, G.S. and Chandrasekhara, N. Atherasclerosis: 78.219 (1989)]。
【0003】
コレステロールを低下する特性というオリザノールの重要な生物活性。脂質過酸化が、γ-オリザノールにより網膜において防止されることが示されており、これはその抗酸化特性のためである[Heramitsu, Tadahisa and Armstrong Donald, Opthalmic Res: 23, 196 (1991)]。オリザノオールを含む医薬品は、加齢した女性サカイにおいて皺を成功裏に減少したことが示されている[Tatsu et al (Eisai Co Ltd.) JP 05.30.526 (1993)]。オリザノールを含むマニキュア用エナメルは爪の変色を防ぐ[Ito, Nobumasa (Polo Chemical Industries Inc.), JP 02.290.806 (1990)]。オリザノールを含むデオドライザーは、汗および腋下からの匂いを制御することにおいて特に有効である[Kumasaka, Sadao (Human industry Corp.) JP 633322 (1988)]。オリザノールを含む製剤処方は、乗り物酔いの防止[Sakada, Hideharu; JP 82.32.229 (1982)]および神経系疾患の治療[Sun. Zhide and Cong Yizi; CN 87,101,519 (1998)]において使用される。プレトラ(plethora)またはオリザノールを含有する経皮製剤および保湿化粧品が皮膚疾患の治療のために製造されている[Courtin, Olivier (Clarins S.A.), FR 2,688,137 (1993); Tokuda, Yasuaki et al (Nisei Marine Kogyo K.K.). JP 01,290, 613 (1998); Ichimaru Co.Ltd.16, JP 81,161,315 (1981); Toyo Chemical Corp. JP 82,149,212 (1982); Zenyaku Kogyo Co Ltd., 82,42,621 (1982); Nitto Electric industrial Co. Ltd., JP 59,53,415 (1984), JP 59,184,120 (1984)]。オリザノール乳濁液は、化粧品および食品のための抗酸化剤および防腐剤として使用され、そのような乳濁剤はまた、当該製品における色の変化を防止するために有効である[Orita Yuka Co. Ltd., JP 58,45,728 (1983)]。酪酸リボフラビンを含むまたは含まない、オリザノールを含む軟カプセルが、動脈硬化を防止するために使用される[Nishin Kogaku K.K.JP 58,103,315 (1983)]。3〜20重量%のオリザノールを含む浴剤が、アトピー性皮膚炎および老人性乾皮症の治療において治療される[Inoe, Toshio and Nunokawa Senzo (Otsuka Pharm Co. Ltd., JP 05,279,272 (1993)]。オリザノールは、脂質代謝が天然性に異常な、自然発生的に高血圧なラットにおいける脂質生成性肝硬変に対して極めて有効であることが示されている[Ito, Masahiro et al; J.Clin Biochem. Nutr. 12,193 (1992)]。オリザノールの安全性評価に向けた調査が、オリザノールが遺伝毒性および発癌イニシエーター活性を持たないことを明示している[Tsushimoto Gen et al, J. Toxicol. Sci. 16, 191 (1991)]. [Tamagawa, M et al. Food. Chem. Toxicol. 30.49. (1992)]。
【0004】
オリザノール は、ヒト、特に運動選手、並びにウマおよびイヌなどの動物のための筋肉増強剤として市販されている。ウエイトトレーニングおよびエアロビクス運動プログラムに関連して、除脂肪筋肉量の改善および限定の改善を助ける天然のステロイドの代替物として個人を助けると主張されている。オリザノールの抗酸化特性は、この有利な効果の原因であると考えられている。オリザノールの主な適用は、皮脂腺におけるその作用のために化粧品におけるものである。γ-オリザノールはまた、脂質過酸化を誘導するUV線に対するその保護剤としても知られており、また日焼け止め製剤において使用されている。フェルラ酸およびそのエステルは、毛髪の成長を刺激し、皮膚の加齢を防止する[Jap Pat 08,81,352 (1996)]。毛髪および皮膚への適用のために有用な局所用製剤および1重量%のオリザノールを含む製剤は、灰色の髪を天然の黒に変えることが示されている[Sakai Tatsu et al (Eisai Co Ltd.) JP 05 225.037 (1993)]。化粧品におけるフェルラ酸およびγ-オリザノオールの複数の効果が概説されている[Jap Pat 06,48,940 (1994)]。γ-オリザノールはスクロース脂肪酸エステルおよびエトキシ化HCOの使用により飲み薬に可溶化された[Jap Pat 05,255,037 (1993)]。食用油中のトコフェロールの分解は、180℃での加熱の初期にオリザノールを添加することにより防止できる[Jap Pat 82,136,509 (1982)]。フェルラ酸は医薬、農薬、化粧品、色素および食品添加物などのための原料物質として有用であり、これは、オリザノールから製造される[Eur Pat 503,650 (1992)]。オリザノールはまた、ニトロベンゼンで得たフェルラ酸の鹸化および酸化によるバニリンの製造のために使用することもできる。オリザノールの他の多岐に亘る適用は抗菌薬、UV遮断性織物、防黴用ポリプロピレン、殺菌性繊維、ナイロン6、羊毛、綿を含む。イノシトールおよび/またはγ-オリザノールを含むコメ糠油は、調理米の品質を改善するために有用であると主張される。
【0005】
コメ糠油は、一般的な植物油の間で他に類を見ないほどγ-オリザノールを含む。高い価値の化合物が費用効率のよい方法で当該油のアルカリ精製の間に産生される安価な酸性油から単離できる。現在、多くのコメ糠油処理装置は、化学的精製の間に生じる油の高い損失を抑えるために、物理精製に移行している。高FFAコメ糠油について物理精製を適用することにより、精製機は、化学精製の間の中性油の損失を抑えることができるばかりではなく、アルカリ精製方法の間に得られる酸性油に比べたときにより純粋な形態で価値のある副産物として脂肪酸を回収することも可能である。ソープストックは、オリザノールの単離のための潜在源であるが、物理精製の間には産生されないであろう。オリザノールが有意なコレステロール低下とそれぞれの他の利点を有するために、オリザノールをそれらの栄養的価値を改善するための添加物として植物油に添加されように、同様な活性を有する代替化合物を探すために適切である。本発明において、フィトステロールが、フィトステリルフェルレートの製造のために有用であり、コメ糠油ソープストックから単離されたオリザノール中にある分子に相当する分子が存在した。ダイズおよびヒマワリデオドライザー蒸留物(deodorizer distillate)は、フィトステロールの良好な源であり、フィトステロールに基づいたフィトステリルフェルレートの製造は副産物様デオドライザー蒸留物の精製値を確実に向上する。
【0006】
[発明の目的]
本発明の主な目的は、フェルラ酸およびダイズ油デオドライザー蒸留物から単離されたフィトステロールを使用してコメ糠油ソープストックから単離されたオリザノールに存在する分子の幾つかに相当する、栄養補助食品/食品サプリメントとしてのフィトステリルフェルレートを製造するための新規の合成方法を提供することである。
【0007】
本発明のもう1つの目的は、周囲温度(25〜30℃)でピリジンなしで、無水酢酸を使用して、不均一系触媒、即ち、12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩上でフィルラ酸のアセチル化の方法を提供することである。
【0008】
本発明の更なるもう1つの目的は、マイクロ波の補助条件下で不均一系触媒、即ち、12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩と無水酢酸とを使用して反応時間を3時間から10〜20分に大幅に短縮するフェルラ酸のアセチル化のための方法を提供することである。
【0009】
本発明の更なるもう1つの目的は、栄養補助食品/食品サプリメントとしての糠油ソープストックから単離された天然のオリザノールと比べたフィトステリルフェルレートのハムスターにおけるコレステロール低下作用を評価することである。
【0010】
発明の概要
従って、本発明は、一般式Iのフィトステリルフェルレート
【化1】

【0011】
の製造方法であって、16の工程;
(a)フェルラ酸をフェルラ酸アセテートにアセチル化すること;
(b)ジクロロメタン、N,N’-ジシクロヘキシル-カルボジイミド(DCC)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在において45〜48時間に亘り室温で攪拌することにより工程(a)で得られたフェルラ酸アセテートをフィトステロールでエステル化することにより副産物のジシクロヘキシル尿素(DCU)と共にフィトステリルフェルレートアセテートを得ることと;
(c)工程(b)で形成された反応産物を濾過して副産物のジシクロヘキシル尿素(DCU)をフィトステリルフェルレートアセテートから除去することと;
(d)工程(c)で得られたフィトステリルフェルレートアセテートをカラムクロマトグラフィにより精製することと;
(e)工程(d)で得られた精製されたフィトステリルフェルレートアセテートを脱保護することによりフィトステリルフェルレートを得ることと;
(f)工程(e)で得られたフィトステリルフェルレートをカラムクロマトグラフィにより精製することと
を含む方法を提供することである
本発明の1つの態様において、フェルラ酸アセテートは、攪拌または交替のマイクロ波照射による無水酢酸およびピリジンまたは無水酢酸および不均一系固体触媒12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩 [(NH4)H2PW12O40]でのフェルラ酸のアセチル化により合成された。
【0012】
本発明の更なる態様において、工程(a)における無水酢酸およびピリジンを使用するフェルラ酸のアセチル化は、85〜90℃で6〜8時間に亘り実施される。
【0013】
本発明のもう1つの態様において、工程(a)における12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩を使用するフェルラ酸のアセチル化は、周囲温度(25〜30℃)で3〜5時間に亘って実施される。
【0014】
本発明のもう1つの態様において、フェルラ酸のアセチル化のために工程(a)において使用される不均一系触媒は、反応混合物から単純濾過により分離され、当該触媒は、如何なる前処理なしで再利用された。
【0015】
本発明のもう1つの態様において、工程(a)における無水酢酸および不均一系触媒を使用するフェルラ酸のアセチル化は、また300〜800Wおよび100〜120℃で10〜20分間の条件でのマイクロ波照射下でも実施される。
【0016】
本発明のもう1つの態様において、不均一性触媒法は、単純、無毒であり、且つ当該触媒の分離は単純濾過を含み、当該触媒は再利用可能である。
【0017】
本発明のもう1つの態様において、フェルラ酸アセテートは80〜95%の範囲で得られる。
【0018】
本発明のもう1つの態様において、使用されるフィトステロールは、ダイズおよびヒマワリからなる群より選択される植物油デオドライザー蒸留物から単離される。
【0019】
本発明のもう1つの態様において、ダイズ油デオドライザー蒸留物から単離されたフィトステロールは、主にキャンペステロール (18-23%), スチグマステロール (25-35%)およびβ-シトステロール (41-56%)を含む。
【0020】
本発明のもう1つの態様において、工程(d)におけるフィトステリルフェルレートアセテートは、シリカゲルカラムからヘキサン、エチルアセテートおよびクロロホルム(容量で80:5:15)の溶媒系を使用して選択的に溶出される。
【0021】
本発明のもう1つの態様において、カラムクロマトグラフィ後のフィトステリルフェルレートアセテートの収率は、75〜80%の範囲である。
【0022】
本発明のもう1つの態様において、フィトステリルフェルレートアセテートは、容量で2:1の比のクロロホルム:メタノール中の1〜3重量%の無水炭酸カリウムと反応させ、フィトステリルフェルレートアセテートからアセテート基を除去することにより工程(e)において脱保護される。
【0023】
本発明のもう1つの態様において、フィトステリルフェルレートの収率および純度は、それぞれ85〜90%および85〜100%である。
【0024】
本発明の更なるもう1つの態様において、フィトステリルフェルレートは、溶出溶媒としてヘキサン、エチルアセテートおよびクロロホルム(容量で80:5:15)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィにより工程(f)において精製された。
【0025】
本発明の更なるもう1つの態様において、栄養補助食品/食品サプリメントとして、フェルラ酸およびダイズフィトステロールから製造される前記フィトステリルフェルレートをハムスターにおいてコレステロール低下作用について評価し、等価でコメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノールと同等なコレステロール低下作用を示す。
【0026】
本発明の更なるもう1つの態様において、前記フィトステリルフェルレートは、3つの化合物、ステリルフェルレート、スチグマステリルフェルレートおよびβ-シトステリルフェルレートのみを含むにも拘らず、5つの化合物、即ち、シクロアルタニルフェルレート、シクロアルテニルフェルレート、24-メチレンシクロアルテニルフェルレート、キャンペステリルフェルレートおよびシトステリルフェルレートを含む天然のオリザノールと同様なコレステロール低下作用を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のより良好な理解のために、図面と共に考慮される例となる態様を以下に記載する。
【図1】コメ糠油から単離されたγ−オリザノールに存在する分子。
【図2】スキーム1:フィロステリルフェルレートの製造。
【発明の詳細な説明】
【0028】
本発明は、(ダイズ油デオドライザー蒸留物から単離された)フェルラ酸およびフィトステロールを使用したコメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノール(図1)の等価物としての栄養補助食品/食品サプリメントとしてのフィトステロールのフェルラ酸エステル、即ち、フィトステリルフェルレート(スキーム1/図2)の製造のための新たな合成方法に関する。ダイズステロールは、主にキャンペステロール、スチグマステロールおよびβ-シトステロールを含むのに対して、コメ糠油ステロールは、更にトリテルペンアルコールを含む。
【0029】
本発明において、最初にフェルラ酸アセテート、(2)を無水酢酸およびピリジン(スキーム 1/ Fig. 2)でフィルラ酸、(1)を85〜90℃で6時間に亘って処理することにより80%の収率で製造した。反応完了後、 ピリジンをHCl水溶液によりクエンチングし、その生成物をエーテルで抽出した。この方法は、単調で非常に長く、ピリジンの取り扱いが複雑であることが分かった。反応においてピリジンを避けるために、代わりに単純な不均一系触媒を使用した。アセチル化における不均一系触媒の適応は、これらが濾過により反応生成物から容易に分離できるために好ましく、これは、固定床反応器などの連続的に操作される反応器の使用を容易にする。
【0030】
我々のグループにより製造された不均一系触媒、即ち、12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩[B.Y. Giri, K. Narasimha Rao, B.L.A. Prabhavathi Devi, N. Lingaiah, I. Suryanarayana, R.B.N. Prasad and P.S. Sai Prasad, Catalysis Communications, 6, (2005) p. 788-792]がフェルラ酸アセテートの製造のために使用された。12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩は、水性媒体中の所望量の炭酸アンモニウムで12-タングストリン酸を単純イオン交換することにより製造した。この方法の間に、水溶性12-タングストリン酸はその不溶性モノアンモニウム塩に変換する。交換後、触媒を350℃で4時間に亘りカショウした。
【0031】
フェルラ酸 (1)を5重量%の不均一系触媒、即ち、12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩の存在において3時間に亘り室温(25〜30℃)で無水酢酸で処理した。反応をTLCでモニタリングし、反応が完了した後に過剰の無水酢酸を真空下で除去した。その反応混合物をエチルアセテート中に取り入れ、触媒を濾過した。溶媒を減圧下で除去し、フェルラ酸アセテート(2)を92〜95%収率で得た(スキーム 1/Fig. 2)。
【0032】
フェルラ酸アセテートの製造を、マイクロ波照射下で12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩を使用することにより行い、10分間において92〜95%収率でフェルラ酸アセテートを得た。4-ヒドロキシ-3-メトキシ-桂皮酸 (1)、無水酢酸および12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩の混合物を100℃で10分間に亘りマイクロ波加速反応において照射した。反応混合物をTLCでモニタリングし、反応完了後、クロロホルムを反応混合物に添加した。反応混合物を濾過し、触媒を分離した。溶媒を減圧下で除去した。メタノールを添加して、加熱下で化合物を溶解し、次に25〜30℃に冷却して生成物を沈殿した。その生成物を濾過し、乾燥して、白色固体の4-アセチルオキシ-3-メトキシ-桂皮酸 (2, フェルラ酸アセテート)を収率92%で得た。生成物をNMR、IRおよびGC-MSなどの分光法により特徴づけした。12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩触媒反応は、比較的に非常に短時間の反応時間でマイクロ波反応条件下で優れた収率を与えた。
【0033】
フェルラ酸アセテート (2)を、ジクロロメタン中のジシクロヘキサカルボジイミド(DCC)とジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在におけるダイズ油デオドライザー蒸留物から単離されたフィトステロールの混合物と組み合わせて、フィトステリルフェルレートアセテート (3)を75-80%の収率で得た。この段階で、フィトステリルフェルレートアセテートの精製は、ヘキサン, エチルアセテートおよびクロロホルム(80:5:15, v/v/v)を溶離液として使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィにより最適化された。純フィトステリルフェルレートアセテート (3)を還流温度(60〜65℃)でクロロホルム/メタノール(2:1)混合物中のK2CO3で処理してアセテート基を脱保護してフィトステリルフェルレート (4)を90〜95%収率で得た。
【0034】
ダイズフィトステロールおよびフェルラ酸から製造された栄養補助食品/食品サプリメントとしてのフィトステリルフェルレートのコレステロール低下試験を、コメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノールと比較して行った。フィトステリルフェルレート(合成オリザノール)は、両方の試験計画(方法Aおよび方法B)において有意にコレステロール、LDLコレステロールおよびトリグリセリドを低下し、HDLコレステロールを増加し、フィトステリルフェルレートは高いコレステロールレベルを低下し、またコレステロールの吸収をも阻害したことを示した。その効果は、コメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノールの効果と同程度であり、フィトステリルフェルレートは、合成オリザノールとして使用でき得る。フィトステリルフェルレートは、3つの化合物、即ち、キャンペステリルフェルレート、スチグマステリルフェルレートおよびβ-シトステリルフェルレートのみを含むにも拘らず、5つの化合物、即ち、シクロアルタニルフェルレート、シクロアルテニルフェルレート、24-メチレンシクロアルテニルフェルレート、キャンペステリルフェルレートおよびシトステリルフェルレートを含む天然のオリザノールの作用と同様のコレステロール低下作用を示した。
【0035】
以下、説明のために以下の例を示すが、それにより本発明の範囲が制限されると解釈されるべきではない。
【0036】
例1
4-ヒロドキシ-3-メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)のアセチル化をピリジン(40ml)の存在において無水酢酸(40ml)でフェラル酸(1、10g)を処理することにより行った(スキーム1)。内容物を85℃で6時間加熱した。反応混合物を30℃に冷却して、水性溶液で中和し、その生成物をエーテルで抽出した。エーテル層を濃縮し、減圧下で乾燥して4-アセチルオキシ-3-メトキシ-桂皮酸(フェルラ酸アセテート、2)を80%の収率で粉末として得た。その生成物を1H および13C NMR、IR および GC-MSなどの分光法により特徴付けした。
【0037】
スペクトルデータ:
M.P.: 162-165℃
IR (KBr): 3448, 1764, 1702, 1627,1598 および 1512 Cm-1.
1H NMR (CDCl3, δ):2.3 (3H, s, OAc), 3.9 (3H, s, O-CH3), 6.5 (1H, d, J=15.9Hz, CH), 7.1 (1H, m Ar-H), 7.3 (2H, m, Ar-H) and 7.7 (1H, d, J=15.9Hz, CH).
13C NMR (CDCl3, δ):20.4 (C=O), 55.9 (OCH3), 111.7, 119.5, 121.5, 123.5, 133.3, 140.8, 143.3, 151.2, 167.6および168.4.
Mass (GC-MS): 236, 194, 179, 133および77。
【0038】
例2
不均一系酸触媒、12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩を、酸の1つのプロトンが1つのアンモニウムイオンで置き換えられるように水性媒体に計算量のアンモニウムカーボネートでの12-タングステンリン酸塩の単純なイオン交換によって製造した[B.Y. Giri, K. Narasimha Rao, B.L.A. Prabhavathi Devi, N. Lingaiah, I. Suryanarayana, R.B.N. Prasad and P.S. Sai Prasad, Catalysis Communications, 6, (2005) p. 788-792]。交換後、触媒を350℃、4時間に亘って空気中でカショウした。イオン交換後に、Keggin構造の保持をXRDおよびFT-IRによって確認した。触媒のBET表面積を液体窒素温度で全ガラス高真空装置、窒素吸着で測定した。X線回折パターンをシーメンスD-5000回折計で得た;Cu Kα使用放射線をフェルラ酸アセテートの製造に使用した。
【0039】
例3
4-ヒドロキシ-3-メトキシ-桂皮酸 (1, フェルラ酸, 20 g), 無水酢酸 (40 ml)および12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩 (1 g, 5 wt.%)の混合物を30℃で3時間に亘って撹拌した。反応混合物をTLCでモニタリングし、反応終了後、反応物を濾過し、触媒を分離した。過剰の無水酢酸を減圧下で取り除き、固体残渣を得た。メタノール(50 ml)を残渣に加え、加熱して溶解し、次に25℃まで冷却して92%収率で4-アセチルオキシ-3-メトキシ-桂皮酸 (2, フェルラ酸アセテート)を結晶化した。その生成物を1Hおよび 13C NMR、IR並びにGC-MSなどの分光法によって特徴付けし、得られたデータは例1で得られたものと同様であった。
【0040】
例4
4-ヒドロキシ-3-メトキシ-桂皮酸 (5 g) (1)、無水酢酸 (10 ml)および12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩(250 mg)の混合物にマイクロ波反応器(MARS5)、CEM Corporation、 USAを用いて300 Wで100℃で10分間に亘ってマイクロ波加速反応において照射させた。反応混合物をTLCでモニタリングし、反応完了後、 クロロホルム(25 ml)を加え、濾過して触媒を分離した。溶媒を減圧下で取り除き、加熱メタノール(10 ml)で溶解し、30℃でその生成物を結晶化した。その生成物4-アセチルオキシ-3-メトキシ-桂皮酸 (2, フェルラ酸アセテート)を92%の収率で得た。生成物を1Hおよび13C NMR、IR並びにGC-MSなどの分光法によって特徴付けし、得られたデータは例1で得られたものと同様であった。
【0041】
例5
ダイズ油デオドライザー蒸留物 (DOD)からのフィトステロールの単離:約8% フィトステロールおよび6%トコフェノールを含むダイズ油 DOD (2 kg)は、短経路蒸留ユニットを用いて減圧(0.01 mm)下にて170℃で蒸留して脂肪酸を取り除くことによってフィトステロールで強化された。残渣は、約10%の遊離を50%のトリグリセリドと共に含み、脂肪酸メチルエステルにまで同時にエステル化およびエステル交換され、且つ短経路蒸留ユニットを用いて減圧(0.01 mm)下にて120℃で当該メチルエステルを蒸留した。残渣は、約26%トコフェノールおよび46%のフィトステロールを含んでいた。フィトステロールを、溶媒として水性メタノール(5%)を用いて残渣から結晶化させた。フィトステロール混合物の組成は、HPLC分析によってキャンペステロール(19.6%)、スチグマステロール(27.1%)およびβ-シトステロール(53.4%)であることが明らかになった。このフィトステロール混合物をガンマオリザノールのための代替物としてフィトステリルフェルレートの製造のために直接に使用した。
【0042】
例6
例3において得た4-アセチルオキシ-3-メトキシ-桂皮酸(2、フェルラ酸アセテート、20 g)および例5に示したような組成を有するダイズフィトステロール(3, 38.6 g)を乾燥ジクロロメタン (30 ml)中に溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(15.0 g)および4-ジメチルアミノピリジン (1.0 g)を添加した。その反応混合物を25℃で48時間に亘って撹拌した。 反応完了後、副産物のジシクロヘキシル尿素を反応混合物から取り出した。濾液を濃縮し、真空下で乾燥した。粗生成物を、溶離液としてヘキサン、エチルアセテートおよびクロロホルムの混合物(80:5:15, v/v/v)を用いるシリカゲル(100〜200メッシュ)カラムクロマトグラフィにより精製し、純ステリル-4-アセチルオキシ-3-メトキシ-桂皮酸エステル (4, フィトステリルフェルレートアセテート)を80%収率で得た。その生成物を1Hおよび13C NMR, IR並びに質量スペクトル解析により特徴付けした。
スペクトルデータ
M.P: 197-203 ℃.
IR (KBr): 2957, 2868, 1758, 1716, 1636, 1601, 1513, 1155および1031 Cm-1.
1H NMR (CDCl3, δ): 0.65 - 2.05 (ステロール部分〜48H), 2.30 (s, OAc), 3.85 (3H, s, OCH3), 4.70 (1H, m), 5.4 (1H, t), 6.27-6.35 (1H, d, J=16.10 Hz, CH), 7.60(1H, d, J=16.10 Hz, CH)および7.10 (3H, m ArH).
13C NMR (CDCl3, δ): 11.85, 11.98, 12.21, 18.78, 19.05, 19.32, 20.59, 21.05, 23.09, 24.29, 26.15, 27.9, 28.22, 29.2, 31.9, 33.97, 36.63, 37.03, 38.23, 39.75, 42.33, 45.87, 50.08, 55.88, 56.71, 74.18, 76.58, 77.0, 77.42, 111.2, 118.95, 121.17, 122.73, 123.2, 133.5, 139.64, 141.38, 143.64, 151.38, 166.15および168.68.
Mass (EI): 632, 590, 395。
【0043】
例7
例6の通りのダイズフィトステロールから得たステリル-4-アセチルオキシ-3-メトキシ-桂皮酸エステル(4, フィトステリルフェルレートアセテート、25.0 g)を、クロロホルム:メタノール(100 ml)の2:1の割合の混合物中に溶解し、炭酸カリウム(2.0 g)を添加し、65 ℃で6時間に亘って加熱した。 その反応混合物を50 mlの塩化アンモニウム水溶液で中和し、クロロホルム(3×150 ml)で抽出した。有機層を濃縮し、減圧下で乾燥して残渣を得て、カラムクロマトグラフィで精製して純フィトステリルフェルレート (5)を95-97% 収率で得た。生成物を1H および13C NMR、IR並びに質量スペクトル解析により特徴付けした。フィトステリルフェルレート組成をHPLCで測定し、キャンペステリルフェルレート(18.9%)、スチグマステリルフェルレート(29.1%)およびβ-シトステリルフェルレート (52.0%)であることを見出した。
スペクトルデータ
M.P.: 196-204℃.
IR (KBr): 3421, 2954, 2868, 1705, 1633, 1598, 1515, 1268, 1165および1029 Cm-1.
1H NMR (CDCl3, δ):0.7 - 2.0 (β-シトステロール部分〜48H), 3.95 (3H, s, O-CH3), 4.73 (1H, m), 5.4 (1H, t), 6.22 (1H, d, J=15.90 Hz, CH), 6.95-7.10 (3H, m ArH)および7.60 (1H, d, J=15.90, Hz, CH).
13C NMR (CDCl3, δ): 11.85, 11.98, 12.21, 18.78, 19.05, 19.33, 21.04, 23.09, 24.29, 26.16, 27.9, 28.22, 29.2, 31.9, 33.97, 36.63, 37.05, 38.28, 39.75, 42.33, 45.87, δ 50.08, 55.91, 56.71, 73.92, 76.57, 77.0, 77.42, 109.33, 114.72, 116.1, 122.65, 122.99, 127.12, 129.31, 139.72, 144.47, 146.77, 147.89および166.63.
Mass (EI): 590 (M+), 396, 193。
【0044】
例8
90 g〜110 gの範囲の体重のシリアン雄性ハムスターを本研究では試験動物として用いた。それらを各々6動物からなる3群に分けた。基礎食は、AIN 93推奨に従う精製された食餌の形態にあり、 (ref)これは1% コレステロールおよび10%ココナッツオイル(以下、高コレステロール食、この発明でHCD と呼ぶ)で栄養価が高められた。天然オリザノールおよびフィトステリルフェルレート(合成オリザノール)のそれぞれ1%とコントロール群の食餌を混合することによって試験群のための食餌を調製した、HCD。それぞれのハムスターは、全食餌管理の間、22 ± 1 ℃の一定温度および55 ± 5%の相対湿度のケージに維持された。全群の全動物に高コレステロール血症の誘導が達成されるまで5週間の期間に亘ってHCDを摂食させた。この段階で、2つの処理群におけるハムスターに、コメ糠油ソープストックから単離された1.0%の天然オリザノール、並びにそれぞれフェルラ酸およびダイズフィトステロール(合成オリザノール)から調製された1.0%のフィトステリルフェルレートを含むHCDを摂食させ、一方でコントロール群にはHCD単独を摂取させた。摂食を更に11週間の期間に亘って続けた。77日目、ハムスターを一晩絶食して、血液を麻酔下で下行性腹部大動脈を介して各ハムスターから採取した。各ハムスターの総脂質プロファイル、血清中の総コレステロール (TC)、LDL (低密度リポタンパク質)コレステロール (LDL-C)、HDL (高密度リポタンパク質)-レステロール(HDL-C)およびトリアシルグリセロール(TG)などを自動血液分析器Express Plus, Bayer Diagnostics, USAを用いて測定した。全動物の体重を週間隔基準で測定した。一般的なケージ観察もまた毎日評価した。
【0045】
このコレステロール低下作用試験の目的は、栄養補助食品/食品サプリメントとして、コレステロール低下ハムスターの上昇したコレステロールレベルを低下することにおけるフェラル酸とダイズフィトステロール(合成オリザノール)およびコメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノールから合成されたフィトステリルフェルレートの効果を評価することである。方法Aに従うコレステロール低下作用の結果を表1および2に示す。フィトステリルフェルレート(合成オリザノール)とコメ糠油ソープストックから単離されたオリザノールを含む両方の処理群においてLDLコレステロールの有意な減少(p<0.01)が、コントロール群に比較してHCDを餌にしたHCDにおいて存在する。同様の結果は、TGの場合において得られた(p<0.05)。処理群におけるTCのレベルにおける減少は、コントロール群に比較して完全に有意である(p<0.05)。これらの結果は、フィトステリルフェルレート(合成オリザノール)の活性が、LDLコレステロールの低下において、コメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノールの作用に匹敵することを示す。しかしながら、コントロール群に比較して処理群におけるHDL-Cのレベルにおいては僅かな増加がある。殆どの同じ結果がこれらの全てのパラメータにおいて両方の処理群において観察され、これは栄養補助食品/食品サプリメントとしてのフィトステリルフェルレート(合成オリザノール)のコレステロール低下作用が天然オリザノールの作用と同程度であることを示していた。同様の傾向が、処理群におけるLDL-C、TCおよびTGの減少パーセントを比較したときに観察された。フィトステリルフェルレートを含有する食餌を摂取した処理群におけるLDL-C(50.2%)、TC(22.1%)およびTG(25.2%)の減少パーセントは、天然オリザノールを含む食餌を摂取した他の処理群において観察されたものと同程度である(LDL-C、TCおよびTGのそれぞれについて55.9%、23.6%および31.2%)。これらの結果は、フィトステリルフェルレートのコレステロール低下作用が天然のオリザノールと同程度であることを示す。方法Aにおける全群におけるコレステロール低下作用試験に伴うハムスターの平均体重における増加を表3に示す。体重において等しい増加が全ての試
験群において観察された。
【表1】

【表2】

【表3】

【0046】
例9
90g〜110gの範囲の体重のシリアン雄性ハムスターを本試験における試験動物として使用した。それらを各々6動物からなる3群に分けた。各ハムスターは、全食餌管理の間中、22±1℃の一定温度および55±5%の相対湿度のケージに維持された。コントロール群はHCD食餌を摂取し、それに対して2つの処理群はそれぞれコメ糠油ソープストックから単離された1%の天然オリザノールおよびフェラル酸およびダイズフィトステロールから製造されたフィトステリルフェルレート(合成オリザノール)を含むHCDを摂取した。当該食餌は11週間の間継続された。77日目、ハムスターを一晩(16時間)絶食し、血液を各ハムスターから下行腹部大動脈を介して麻酔下で採取した。総脂質プロファイルを各ハムスターについて、血清中の総コレステロール(TC)、LDL-コレステロール(LDL-C)、HDL-コレステロール(HDL-C)およびトリアシルグリセロール(TG)などを自動血液分析器Express Plus, Bayer Diagnostics, USAを使用して測定した。全動物の体重を週間隔基準で測定した。一般的なケージ観察もまた毎日評価した。
【0047】
このコレステロール低下作用試験の目的は、コレステロール吸収の阻害率について天然オリザノールとフェラル酸およびダイズフィトステロールから製造されたフィトステリルフェルレートの効果を評価することであった。方法Bに従うコレステロール低下作用試験の結果を表4および5に示す。フェルラ酸およびダイズフィトステロールから製造されたフィトステリルフェルレート(合成オリザノール)およびコメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノールを含む両方の群において、HCDを摂取したHCDにおいて、コントロール群と比較して、LDLコレステロールの有意な減少がある(p<0.001)。しかしながら、脂質プロファイルにおける検出可能な変化は、両方の処理群において6週目に進んでから観察された。当該初期遅延期は、この計画において、ハムスターが正常であり、且つ高コレステロール血症ではないという事実のためである可能性がある。従って、天然オリザノールまたはフィトステリルフェルレート(合成オリザノール)の効果は、方法Aにおけるようには開始時から顕著ではない。しかしながら、天然オリザノールおよびフィトステリルフェルレート(合成オリザノール)の効果は、6週間の遅延期の後に明らかに見られた。TCおよびTGのレベルにおける若干の減少傾向が処理群において観察されたが、フィトステリルフェルレート(合成オリザノール)の場合では、減少は十分に有意ではない(p>0.05)。コントロール群と比較して、処理群の両方においてHDL-Cのレベルは有意な増大がある(p<0.05)。フィトステリルフェルレートを含む食餌を摂食した処理群におけるLDL-C(25.6%)、TC(22.7%)およびTG(15.1%)の減少パーセントは、天然オリザノールを含む食餌を摂食した他の処理群において得られた値と同程度である(LDL-C、TCおよびTGのそれぞれについて26.8%、24.7%および18.7%)。これらの処理群におけるHCL-Cレベルにおける増大パーセンテージでさえも、全く同程度である(25.6%対26.8%)。これらの結果は、フィトステリルフェルレート(合成オリザノール)のコレステロール低下作用が天然オリザノールの作用と同程度であることを示す。方法Bにおける全群においてコレステロール低下作用試験に伴うハムスターの平均体重の増加を表3に示す。
【0048】
体重の等しい増加が全ての試験群において観察された。
【表4】

【表5】

【表6】

【0049】
全体において、両方の試験計画において、フェルラ酸およびダイズフィトステロールから製造されたフィトステリルフェルレート(合成オリザノール)は、有意にコレステロール、LDLコレステロールおよびトリグリセリドを低下し、HDLコレステロールを増加し、これは、フェルラ酸およびダイズフィトステロールから製造されたフィトステリルフェルレート(合成オリザノール)が上昇したコレステロールレベルを低下し(治療効果)、またコレステロールの吸収を妨げる(予防効果)ことを示す。栄養補助食品/食品サプリメントとしての当該効果は、コメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノールの効果と同程度である。
【0050】
[発明の利点]
1.本発明は、ダイズ油デオドライザー蒸留物から単離されたフェトステロールとフェラル酸とを使用してコメ糠油ソープストックから単離されたオリザノールにおいて存在するのと同じ分子に対する等価物、栄養補助食品/食品サプリメントとしてのフィトステリルフェルレートの製造のための新規合成方法を提供する。
【0051】
2.本発明において製造されたフィトステリルフェルレートは、等価でコメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノールの作用と同等なハムスターにおけるコレステロール低下作用を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iのフィトステリルフェルレート
【化1】

の製造方法であって、
(a)フェルラ酸をフェルラ酸アセテートにアセチル化することと;
(b)ジクロロメタン、N,N’-ジシクロヘキシル-カルボジイミド(DCC)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在において45〜48時間に亘り室温で攪拌することにより工程(a)で得られたフェルラ酸アセテートをフィトステロールでエステル化することにより副産物のジシクロヘキシル尿素(DCU)と共にフィトステリルフェルレートアセテートを得ることと;
(c)工程(b)で形成された反応産物を濾過して副産物のジシクロヘキシル尿素(DCU)をフィトステリルフェルレートアセテートから除去することと;
(d)工程(c)で得られたフィトステリルフェルレートアセテートをカラムクロマトグラフィにより精製することと;
(e)工程(d)で得られた精製されたフィトステリルフェルレートアセテートを脱保護することによりフィトステリルフェルレートを得ることと;
(f)工程(e)で得られたフィトステリルフェルレートをカラムクロマトグラフィにより精製することと
の工程を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、工程(a)における当該フェルラ酸アセテートが、(i)無水酢酸およびピリジンでのフェラル酸のアセチル化;または(ii)攪拌による無水酢酸および不均一系触媒12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩 [(NH4)H2PW12O40 ]でのフェルラ酸のアセチル化;または(iii)マイクロ波照射による無水酢酸および不均一系触媒12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩 [(NH4)H2PW12O40 ]でのフェルラ酸のアセチル化により合成される方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、工程(a)における無水酢酸およびピリジンを使用する当該フェラル酸のアセチル化が80〜90℃の無水酢酸で6〜8時間に亘り行われる方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、工程(a)における12-タングストリン酸のモノアンモニウム塩を使用するフェルラ酸のアセチル化が周囲温度(25〜30℃)で3〜5時間に亘り行われる方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、工程(a)においてフェルラ酸のアセチル化のために使用される不均一系触媒が当該反応混合物から単純濾過により分離され、且つ当該触媒が何れの前処理を行わずに再利用される方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、工程(a)における無水酢酸および不均一系触媒を使用するフェルラ酸のアセチル化が300〜800Wおよび100〜120℃でのマイクロ波照射条件下で10〜20分間に亘り行われる方法。
【請求項7】
請求項3、4および6に記載の方法であって、当該得られたフェルラ酸アセテートの収率が80〜95%の範囲である方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、工程(b)において使用される当該フィトステロールがダイズおよびヒマワリからなる群より選択される植物油デオドライザー蒸留物から単離される方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、ダイズ油デオドライザー蒸留物から単離された当該フィトステロールが、主に、キャンペステロール(18〜23%)、スチグマステロール(25〜35%)およびβ-シトステロール(41〜56%)を含む方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、工程(d)における当該フィトステリルフェルレートアセテートがヘキサン、エチルアセテートおよびクロロホルム(容量で80:5:15)の溶媒系を使用してシリカゲルカラムから選択的に溶出される方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、当該カラムクロマトグラフィ後のフィトステリルフェルレートアセテートの収率が、75〜80%の範囲である方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、工程(e)において、当該フィトステリルフェルレートアセテートが2:1の容量比のクロロホルム:メタノール中に溶解された1〜3重量%の無水炭酸カリウムと反応して、フィトステリルフェルレートアセテートからアセテート基を除去することにより脱保護される方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、当該フィトステリルフェルレートが、ヘキサン、エチルアセテートおよびクロロホルム(容量で80:5:15)を溶出溶媒として使用する工程(f)におけるシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製される方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、工程(f)における当該フィトステリルフェルレートの収率および純度が、それぞれ85〜90%および85〜100%の範囲である方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、製造されてハムスターにおけるコレステロール低下作用が評価されたフィトステリルフェルレートが、コメ糠油ソープストックから単離された天然オリザノールと等価で同等なコレステロール低下作用を示す方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記フィトステリルフェルレートが、3つの化合物、即ち、3つの化合物、ステリルフェルレート、スチグマステリルフェルレートおよびβ-シトステリルフェルレートのみを含むが、5つの化合物、即ち、シクロアルタニルフェルレート、シクロアルテニルフェルレート、24-メチレンシクロアルテニルフェルレート、キャンペステリルフェルレートおよびシトステリルフェルレートを含む天然のオリザノールと同様なコレステロール低下作用を示す。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−518681(P2012−518681A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551570(P2011−551570)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000109
【国際公開番号】WO2010/097810
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(596020691)カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (42)
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
【Fターム(参考)】