説明

フィルタおよびその製造方法

【課題】
廃棄時の環境負荷が少ない高捕集性能、低圧力損失のフィルタを提供する。
【解決手段】
複数個のヒダ山が形成された濾過部と該濾過部の外周縁に配設されたフランジ部とを有するフィルタであって、前記濾過部は複数個のヒダ山を有するヒダ状部と該ヒダ状部の側面を閉塞する側面部とを備え、前記濾過部と前記フランジ部とは生分解性を有する不織布によって構成されているフィルタとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の微細な粉塵を取り除くにあたって好適に用いられるフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
空調機器、空気清浄器、キャビンフィルタ、各種家電に組み込まれたフィルタユニットなどは、従来、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの繊維が組み合わせされて構成されており、使用した後のフィルタユニットは、焼却処理や埋没処理などによって処分していた。
【0003】
しかしながら、焼却処理では、多額の費用が必要となり、その上、焼却時の排煙や二酸化炭素の発生や有毒ガス発生の可能性があり、大気汚染や地球の温暖化という点で問題があった。また、埋没処理する場合には、濾材を構成する不織布が半永久的にその形状を維持するため、土壌汚染の原因になる可能性があるうえ、廃棄のために極めて広大な土地が必要になるといった問題があった。
【0004】
そのため、特許文献1や特許文献2に記載されるように、フィルタ用途に適用できるポリ乳酸系の成型用不織布が提案されている。しかし、これら文献に記載の不織布は、確かに生分解性を有しており廃棄時の問題は解決できるが、融着領域が散点状に形成されているため、エアフィルタとして適用された場合においては、その部分に濾過流体である空気が流れることができず、濾過性能に寄与しない部分が多いものとなり、実質的な濾過有効面積が少なくフィルタの圧力損失上昇や捕集性能の低下を招くという問題がある。
【特許文献1】特開2000−136478号公報
【特許文献2】特開2000−136479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述のような問題に鑑み、廃棄時の環境負荷が少ない高捕集性能、低圧力損失のフィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(8)を特徴とするものである。
(1)複数個のヒダ山が形成された濾過部と該濾過部の外周縁に配設されたフランジ部とを有するフィルタであって、前記濾過部は複数個のヒダ山を有するヒダ状部と該ヒダ状部の側面を閉塞する側面部とを備え、前記濾過部と前記フランジ部とは生分解性を有する不織布によって構成されていることを特徴とするフィルタ。
(2)前記フランジ部は、プレス加工されていることを特徴とする上記(1)記載のフィルタ。
(3)前記不織布が脂肪族ポリエステルからなることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のフィルタ。
(4)前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフィルタ。
(5)前記不織布は、該不織布を構成する繊維重量に対して0.1〜20重量%の範囲内の結晶化促進剤を含んでいることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルタ。
(6)前記結晶化促進剤が、結晶核剤および/または可塑剤であることを特徴とする上記(5)に記載のフィルタ。
(7)前記結晶核剤が、タルク、有機カルボン酸金属塩および有機カルボン酸アミドからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする上記(6)に記載のフィルタ。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載されたフィルタと、該フィルタを装着するフィルタ枠とを備えていることを特徴とするフィルタユニット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い捕集性能や低い圧力損失を保持しながら、廃棄時に環境負荷の少ないフィルタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のフィルタは、生分解性を有する不織布によって構成されており、たとえば図1に示すように、複数個のヒダ山3が形成された濾過部2とその濾過部の外周縁に配設されたフランジ部6とを有し、濾過部2は、複数個のヒダ山3を有するヒダ状部4と、そのヒダ状部の側面を閉塞する側面部5とからなる。そして、ヒダ状部4と側面部5とは、1つの不織布から成形型によって形成されるか、もしくは、それぞれ別に得られた部材を隙間なく接合することによって一体的に形成されている。またそれらから構成される濾過部2とフランジ部6とも、互いに隙間なく接合されている。さらに、フランジ部6はプレス加工され、強度が高められている。
【0009】
本発明に用いる生分解性を有する不織布としては、麻や綿や羊毛などのセルロースやアセテートからなる天然繊維や、脂肪族ポリエステル系やポリアミド系やビニル系などの合成繊維からなる不織布が用いられる。かかる脂肪族ポリエステル系としては、ポリヒドロキシブチレートやポリ乳酸やポリグリコール酸やポリブチレンサクシネートが好ましく使用される。ポリアミド系としてはポリエーテルアミドが好ましく使用される。ビニル系としてはポリビニルアルコールが好ましく使用される。
【0010】
そして、本発明においては生分解性能が高すぎないことも望ましい。すなわち、フィルタ使用中に捕集したダストに発生した微生物によりフィルタが分解されないことが必要である。その指標としては、生分解性繊維の常温土中での重量減少の半減期が、24ヶ月以上であることが好ましい。より好ましくは36ヶ月以上であり、特に好ましくは48ヶ月以上である。
【0011】
そこで、本発明における生分解性を有する不織布としては、ポリ乳酸からなる繊維を用いた不織布が好ましく使用される。かかるポリ乳酸の中でも、特に好ましくはL−乳酸を主成分とすることが好ましい。ここでL−乳酸を主成分とするとは、ポリ乳酸からなる繊維の構成成分の60重量%以上がL−乳酸からなることを意味し、40重量%以上を越えない範囲でD−乳酸などであっても差し支えない。
【0012】
かかるポリ乳酸の平均分子量は、好ましくは少なくとも5万、より好ましくは10万以上、特に好ましくは10〜30万である。平均分子量が5万よりも低い場合には、繊維の強度物性が低下しやすい。また、30万を超える場合には、紡糸時に溶融粘度が高くなり製糸性が低下しやすい。
【0013】
また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸の他に、エステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。かかる共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が好ましく使用される。
【0014】
そして、上記ポリマーを紡糸する際の溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーを内部可塑剤あるいは外部可塑剤として用いることもできる。さらには、消臭剤、難燃剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することもできる。
【0015】
本発明に好適に用いられる生分解性を有する不織布としては、厚みが1〜5mmの範囲内であるものが好ましい。厚みが1mm未満の場合には、プリーツによってヒダ形状を形成する場合において、不織布の剛軟度が著しく低く、ヒダ形状を維持しにくく、一方、厚みが5mmを越える場合には、剛軟度が高すぎてプリーツによるヒダ形状を形成しにくいといった問題がある。
【0016】
さらに、本発明に好適に用いられる生分解性を有する不織布の目付としては、60〜300g/mの範囲内であることが好ましい。目付が60g/m未満の場合には、繊維充填密度が低く、捕集性能が低くなりやすいといった問題がある。また、300g/mを越える場合には、圧力損失が高くなりやすいといった問題がある。
【0017】
また、本発明において生分解性を有する不織布は、空気中の粉塵の捕集性能を向上させるためにエレクトレット化されたものであることが好ましい。エレクトレット化の方法としては、特に限定するものではなく、たとえば熱エレクトレット、エレクトロエレクトレット、フォトエレクトレット、ラジオエレクトレット、メカエレクトレットなど既知のエレクトレットの方法を単一および組み合わせて行うことができる。
【0018】
さらに、本発明の生分解性を有する不織布は、スパンボンド不織布であることが好ましい。スパンボンド不織布は、実質的に繊維が繋がった長繊維の状態で不織布化されているため、特に成形型を用いてフィルタを形成施する場合に不織布が延伸されても成形型の形状に添い易く、不織布として目付ムラを生じ難いため、好ましい。また、スパンボンド以外の製法によって得られた不織布を用いる場合においてはスパンボンド不織布が積層されていることが前記と同様の理由において好ましい。性能向上の目的、特に捕集効率の向上においては、非常に細い繊維がその製法上の特徴であるメルトブロー不織布を用いることが好ましい。
【0019】
そして、本発明のフィルタにおいては、生分解性を有する不織布を構成する繊維重量に対して0.1〜20重量%の結晶化促進剤を含有させることが好ましい。結晶化促進剤としては、結晶核剤を含有させることにより、結合材であるポリ乳酸の結晶核の形成を促進でき、また可塑剤を含有させることによりポリ乳酸を柔軟化し動きやすくし、結晶の成長を促進させ、不織布の剛性を向上することができる。この結果、フィルタとして使用したときに風圧等による変形を抑制し、圧力損失の急激な上昇を防ぐことができる。本発明においては、結晶化促進剤として結晶核剤と可塑剤のいずれかを用いることも可能であるし、双方を併用することもできる。
【0020】
結晶核剤としては、一般にポリマーの結晶核剤として用いられるものを用いることができ、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のいずれをも使用することができる。
【0021】
無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などを挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
【0022】
有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、テレフタル酸ジアニリドなどの有機カルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸などのポリマー、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩、および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどを挙げることができる。
【0023】
本発明で使用する結晶核剤としては、上記に例示したもののなかでも、特にタルク、有機カルボン酸金属塩および有機カルボン酸アミドからなる郡から選択された少なくとも1種が好ましい。好ましいタルクとしては、平均粒径が0.5〜7μmの範囲内であり、かつ燃焼時の損失分を除いた成分中のSiOとMgOの割合が合計で93重量%以上であるタルクを挙げることができる。なお、結晶核剤は、1種のみでもよくまた2種以上を併用してもよい。
【0024】
一方、本発明で使用する結晶化促進のための可塑剤としては、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。
【0025】
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1,3 −ブタンジオール、1,4 −ブタンジオール、1,6 −ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
【0026】
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
【0027】
多価カルボン酸エステル系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルアジピン酸エステルなどのセバシン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
【0028】
リン酸エステル系可塑剤の具体例としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレシルなどのリン酸エステルや脂肪族や芳香族の縮合リン酸エステルを挙げることができる。
【0029】
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド)ブロックおよび/またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
【0030】
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
【0031】
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、ポリカルボン酸ビニルエステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類などを挙げることができる。
【0032】
本発明で使用する可塑剤としては、上記に例示したもののなかでも、特にポリエステル系可塑剤およびポリアルキレングリコール系可塑剤から選択した少なくとも1種が好ましい。また、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系可塑剤の共重合体またはポリ乳酸とポリアルキレングリコール系可塑剤の共重合体から選択された少なくとも1種も好ましく使用できる。本発明に使用する可塑剤は、1種のみでもよくまた2種以上の併用を行ってもよい。
【0033】
本発明においては、結晶核剤と可塑剤を各々単独で用いてもよいが、両者を併用して用いることが好ましい。中でも、タルク、有機カルボン酸金属塩、有機カルボン酸アミドから選択された少なくとも1種とポリエステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系可塑剤の共重合体、ポリ乳酸とポリアルキレングリコール系可塑剤の共重合体から選択された少なくとも1種を併用することが好ましい。
【0034】
このような本発明のフィルタは、たとえば生分解性の不織布をプリーツ加工してヒダ状部4を形成し、その後側面部5およびフランジ部6を接合する方法、もしくは成形型を利用してシート状の不織布をフィルタ形状に形成する方法によって製造される。本発明ではいずれかの方法に限定するものではないが、成形型を用いる方法は少ない工程で製造できることからより好ましい。
そして、本発明においては、成形型を利用してシート状の不織布をフィルタ形状にする場合、不織布を成形型で成形すると同時に加熱し、加熱後は成形型内部の不織布の温度が100℃を下回り、その後さらに2分経過するまで成形型を閉じておくことが好ましい。また、生分解性の不織布をプリーツ加工してヒダ状部を形成し、その後側面部およびフランジ部を接合する場合は、フィルタ枠や濾過器、配管に狭持される際に空気の漏れ等が発生しないように強度を高めることを目的として、フランジ部や側面部を加熱しながらプレス加工するが、この場合もプレス機内部の不織布の温度が100℃を下回り、その後さらに2分経過するまでプレス機を閉じておくことが好ましい。生分解性を有する不織布は、加熱した後に収縮してしまい所望の寸法のフィルタ形状とすることが難しいが、このように成形型もしくはプレス機の内部の不織布の温度が100℃を下回ってからさらに2分以上の徐冷時間を設けることで、この問題を防ぐことができる。
【実施例】
【0035】
以下に本発明の実施例をさらに具体的に説明するが、実施例中に示す特性値の測定方法は次の通りである。
A.圧力損失
JIS B9908記載の形式2の測定機を用い、フィルタユニット設置部に空気の漏れの無いようにフィルタを設置し、風量3m/分のとき測定した差圧とする。
B.捕集効率
JIS B9908記載の形式2の測定機を用い、フィルタユニット設置部に空気の漏れの無いようにフィルタを設置し、風量3m/分のとき、フィルタの上下流それぞれでリオン社製パーティクルカウンターKC−01Dを用いて測定した0.3μm〜0.5μmの大気塵の個数から算出した値とする。
なお、捕集効率の算出式は以下の式1とする。
【0036】
捕集効率(E)=(1−(C2/C1))×100 (%)………式1
E:捕集効率
C1:フィルタ上流側の粒子個数
C2:フィルタ下流側の粒子個数
C.生分解性
フィルタをコンポスト中に100日間放置した。100日後のフィルタの状態を目視と手で観察し、以下の判定基準で評価した。○:十分分解され原形をとどめていない。×:原形をとどめており、分解されていない。△:○と×の間。
<実施例1>
重量平均分子量が約16万で、L−乳酸を98.8重量%、D−乳酸を1.2重量%含有したポリ乳酸100重量%に対して、結晶核剤であるタルク(富士タルク工業製LMS100)を3重量%混合し、210℃で溶融し計量した後、丸孔を有する紡糸用口金装置(温度210℃)を用い、単孔吐出量0.83g/分として紡糸を行った。引き続いて、冷却装置を介してエアーサッカーで紡糸糸条を2500m/分で牽引し、開繊し、移動するコンベアネットの上に堆積してポリ乳酸の不織布を得た。得られた繊度3dtexのポリ乳酸繊維からなる目付250g/m、厚み3mmのニードルパンチされたスパンボンド不織布を用い、ヒダ山形成にはプレス成形型を使用し、ヒダ山高さが15mm、ヒダ山間隔が10mm間隔、ヒダ山数が25山、プレス後の濾過部の濾材厚みが1.5mm、フランジ部の幅15mm、フランジ部のプレス後の厚みが0.8mmになるように180℃で5分間プレス成形し、その後、3分間徐冷し、濾過部面積が0.15mとなるようなフィルタを得た。
【0037】
得られたフィルタの圧力損失は70Paであり、その際の捕集効率は78%であった。また、生分解性に関しては○であった。すなわち、本実施例のフィルタは、圧力損失や捕集効率といったフィルタ性能も良好でかつ生分解性も良好なものであった。
<実施例2>
ヒダ状部として、実施例1と同様にして得られた繊度3dtexのポリ乳酸繊維からなる目付100g/m、厚み1.5mmのエレクトレット加工されたスパンボンド不織布を、幅20cm、ヒダ山高さ20mm、ヒダ山間隔7mm間隔、ヒダ山数35山にプリーツ加工した。また、側面部として、実施例1と同様にして得られた繊度2dtexのポリ乳酸繊維からなる目付300g/mの不織布を、180℃で5分間プレスし、その後、3分間徐冷し、厚さ2.0mmに平板状にし、さらにその平板から幅20mm、長さ245mmの帯状部材を2枚切り出した。また、同じ厚さ2.0mmの平板からフランジ部として幅15mmなるように材料を切り出し、ヒダ状部、側面部と接着し組合せ、フィルタを得た。
【0038】
得られたフィルタの圧力損失は85Paであり、その際の捕集効率は、81%であった。また、生分解性に関しては○であった。すなわち、本実施例のフィルタは、圧力損失や捕集効率といったフィルタ性能も良好でかつ生分解性も良好なものであった。
<比較例1>
able to check the draft.s case is going to business trip and not 繊度2dtexのポリエステル繊維からなる目付200g/m、厚み2.5mmのニードルパンチされたスパンボンド不織布を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルタを得た。得られたフィルタの圧力損失は121Paであり、その際の捕集効率は32%であった。また、生分解性に関しては×であった。すなわち、捕集効率は良好であったが圧力損失が高く、生分解性は不十分なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、空気中の微細な粉塵を取り除くために使用するフィルタの他、車載用エアクリーンユニット、車載用キャビンフィルタユニット、ビルや工場の空調用フィルタユニットおよび空気清浄機用フィルタユニットなどの分野にも好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のフィルタを模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・フィルタ
2・・・濾過部
3・・・ヒダ山
4・・・ヒダ状部
5・・・側面部
6・・・フランジ部
7・・・外周縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のヒダ山が形成された濾過部と該濾過部の外周縁に配設されたフランジ部とを有するフィルタであって、前記濾過部は複数個のヒダ山を有するヒダ状部と該ヒダ状部の側面を閉塞する側面部とを備え、前記濾過部と前記フランジ部とは生分解性を有する不織布によって構成されていることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記フランジ部は、プレス加工されていることを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記不織布が脂肪族ポリエステルからなることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項5】
前記不織布は、該不織布を構成する繊維重量に対して0.1〜20重量%の範囲内の結晶化促進剤を含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項6】
前記結晶化促進剤が、結晶核剤および/または可塑剤であることを特徴とする請求項5に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記結晶核剤が、タルク、有機カルボン酸金属塩および有機カルボン酸アミドからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載のフィルタ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載されたフィルタと、該フィルタを装着するフィルタ枠とを備えていることを特徴とするフィルタユニット。

【図1】
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【公開番号】特開2007−21428(P2007−21428A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209618(P2005−209618)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】