説明

フィルタの固定構造及び固定方法

【課題】接着剤を用いることなく簡易な構成で、フィルタ基材に端板を容易に組付けることができるフィルタの固定構造及び固定方法を提供する。
【解決手段】フィルタ10は、濾材シートを襞状に折曲げて形成されたフィルタ基材11の両端部11aに端板12が固定されて構成されている。前記端板12には、フィルタ基材11の端部11aが嵌入される組付孔13が貫通形成されている。フィルタ基材11と端板12とは、ともに熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン樹脂で形成されている。そして、フィルタ基材11の端部11aが端板12の組付孔13に嵌入されて形成された嵌合部が熱融着されて固定されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の車室内に外気を導入するための空気導入路に配置されるキャビンフィルタ等のフィルタの固定構造及び固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気中の不純物の除去、臭気成分の除去等を目的として、キャビンフィルタ、空調用フィルタ、脱臭フィルタ等が用いられている。これらのフィルタは、濾過性能を向上させるために、濾材シートを断面波形になるようにプリーツ成形してフィルタ基材を製作することにより表面積(濾過面積)の増大が図られている。該フィルタ基材の両端部には、フィルタ基材の形状保持とシール機能を確保するために端板がホットメルト接着剤等の接着剤で接合されている。
【0003】
しかしながら、接着剤を用いてフィルタ基材を接合する場合には、接着剤塗布装置及び適切な接着剤が必要となる上に、接着剤の加熱工程、塗布工程及び硬化工程等が必要となって作業時間が長くなると同時に、接着作業が煩雑であるという欠点があった。加えて、接着剤には臭気や揮発性有機化合物(VOC)を発生するものが多く、そのような欠点を解消する低臭気又は低VOCの接着剤は入手が困難で、コストが嵩むという欠点があった。
【0004】
そのような欠点を解消するために、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、濾材を下から支持する下部くし体とその下部くし体と協働して濾材を上から挟む上部くし体を具備し、これら下部くし体及び上部くし体は濾材の両端部に設置され、それらの間に濾材が固定されるように構成されたフィルタが開示されている。また、特許文献2には、濾材の一端に接続部を設け、該接続部を変位可能に構成するとともに、前記接続部に濾材を接続及び取外し可能な接続手段として押圧式ファスナーを設けた空調用フィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−275526号公報
【特許文献2】特開平9−75647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来構成のフィルタにおいては、下部くし体とそれに対応する上部くし体が必要である上に、両くし体はフィルタと同様の波状に成形する必要があり、その構造が複雑で成形が面倒であるという問題があった。一方、特許文献2に記載の従来構成では、部品点数が多く、押圧式ファスナーの部分では濾過することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、接着剤を用いることなく簡易な構成で、フィルタ基材に端板を容易に組付けることができるフィルタの固定構造及び固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のフィルタの固定構造は、濾材シートを襞状に折曲げて形成されたフィルタ基材の両端部に端板が固定されているフィルタの固定構造であって、前記端板にはフィルタ基材の端部が嵌入される組付孔を設け、該組付孔にフィルタ基材の端部を嵌合して固定するように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明のフィルタの固定構造は、請求項1に係る発明において、前記端板の組付孔は貫通孔であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明のフィルタの固定構造は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記フィルタ基材の端部と端板の組付孔との嵌合部が熱融着されて固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明のフィルタの固定構造は、請求項3に係る発明において、前記フィルタ基材と端板とは同種の熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明のフィルタの固定方法は、請求項1に記載のフィルタの固定構造に基づくフィルタの固定方法であって、前記フィルタ基材の両端部を端板の組付孔に嵌合して固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のフィルタの固定構造においては、端板にフィルタ基材の端部が嵌入される組付孔を設け、該組付孔にフィルタ基材の端部を嵌合して固定するように構成されている。このため、フィルタ基材の両端部をそれぞれ端板の組付孔に挿入して嵌合させることにより、フィルタ基材の両端部に端板を組付けることができる。従って、フィルタ基材の端部を端板の組付孔に嵌め込むという簡単な工程により、フィルタ基材に端板を容易に接合することができる。
【0012】
従って、本発明のフィルタの固定構造によれば、接着剤を用いることなく簡易な構成で、フィルタ基材に端板を容易に組付けることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態におけるフィルタ基材に端板を接合する状態を示す分解斜視図。
【図2】フィルタ基材に端板を嵌め込んだ状態を示す斜視図。
【図3】フィルタ基材の端部を水平に配置された端板の組付孔に上方から嵌合する状態を示す分解斜視図。
【図4】フィルタ基材の端部を端板の組付孔に嵌合した状態を示す部分断面図。
【図5】フィルタ基材の両端部を端板に嵌め込んだ後、加熱装置で加熱し、嵌合部を熱融着した状態を示す斜視図。
【図6】第2実施形態におけるフィルタ基材に端板を接合する状態を示す分解斜視図。
【図7】フィルタ基材の上下両端部を端板の組付孔に嵌合して組付けた状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、フィルタ基材11は濾材シートを襞状(プリーツ状)に折曲げて形成されている。該フィルタ基材11の両端部11aにはそれぞれ端板12が固定され、フィルタ10が構成されるようになっている。該フィルタ10は図示しないフィルタケース内に支持される。なお、図面においては、フィルタ基材11の山部の数は実際よりも少なく描かれている。
【0015】
前記端板12には、フィルタ基材11の端部11aが嵌入される組付孔13が全体としてジグザグ状をなすように貫通形成されている。そして、フィルタ基材11の端部11aが端板12の組付孔13に嵌入された状態で、その嵌合部14の熱融着によってフィルタ基材11の端部11aと端板12とが接合されるようになっている。
【0016】
フィルタ基材11はポリプロピレン樹脂(PP、融点150〜165℃)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET、融点256〜264℃)等の熱可塑性樹脂により形成され、端板12はポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂(PE、融点107〜140℃)等の熱可塑性樹脂により形成されている。熱可塑性樹脂の熱融着物によってフィルタ基材11の端部11aと端板12との接合強度を高めるためには、フィルタ基材11を形成する熱可塑性樹脂と端板12を形成する熱可塑性樹脂とは同一の材料又は同種の材料〔ポリオレフィン樹脂(例えばポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂)〕を使用することが好ましい。また、フィルタ機能を発現するフィルタ基材11の溶融を抑えて端板12を溶融させるためには、端板12はフィルタ基材11を形成する熱可塑性樹脂より融点の低い熱可塑性樹脂で形成することが望ましい。
【0017】
次に、フィルタ基材11の両端部11aに端板12を固定するフィルタ10の固定方法について作用とともに説明する。
さて、図3に示すように、フィルタ基材11の一方の端部11aをそれぞれ一対の端板12の組付孔13に嵌め込む。続いて、図5に示すように、電磁加熱器15の発熱部16を端板12の外側面に配置し、その状態で発熱部16を発熱させる。すると、フィルタ基材11の端部11aと端板12の組付孔13との嵌合部14の温度がフィルタ基材11及び端板12を形成する熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の融点を超え、嵌合部14が溶融する。
【0018】
このとき、図4に示すように、組付孔13内において、フィルタ基材11の端部11aの溶融物と端板12の溶融物とが組付孔13の隙間を塞ぐように形成され、フィルタ基材11の端部11aと端板12とが組付孔13の部分で結合される。さらに、フィルタ基材11と端板12とが同一のポリプロピレン樹脂で形成されていることから、両溶融物が溶融時に一体化され、フィルタ基材11の端部11aと端板12とが共有結合により強固に結合される。
【0019】
その後、電磁加熱器15の発熱部16を端板12表面から取り去る。そして、その状態で冷却されると、熱融着物が固化してフィルタ基材11の端部11aに端板12が一体的に接合固定される。このように構成されたフィルタ10はエア通路に装着され、フィルタ基材11を透過するエアを濾過する。
【0020】
以上の第1実施形態により発揮される効果を以下にまとめて説明する。
(1)この第1実施形態におけるフィルタ10の固定構造においては、端板12にフィルタ基材11の端部11aが嵌入される組付孔13を設け、該組付孔13にフィルタ基材11の端部11aを嵌合した後、嵌合部14を熱融着して固定するように構成されている。このため、フィルタ基材11の両端部11aをそれぞれ端板12の組付孔13に嵌合する工程と、その嵌合部14を熱融着する工程とにより、フィルタ基材11の両端部11aに端板12を組付けることができる。従って、2つの簡単な工程により、フィルタ基材11に端板12を容易かつ強固に接合することができる。
【0021】
よって、第1実施形態のフィルタ10の固定構造によれば、ホットメルト接着剤等の接着剤や押圧式ファスナーを用いることなく簡易な構成で、フィルタ基材11に端板12を容易に組付けることができるという効果を奏する。
(2)前記端板12の組付孔13は貫通孔であることから、フィルタ基材11の端部11aを端板12の組付孔13に十分深く嵌入させることができ、フィルタ基材11の端部11aと端板12の組付孔13との接合面積を増加させて接合強度を高めることができる。
(3)前記フィルタ基材11と端板12とは同種の熱可塑性樹脂、例えば同一のポリプロピレン樹脂で形成されている。従って、フィルタ基材11の端部11aと端板12との熱融着を速やかに進行させることができるとともに、両者間の接合を強固にすることができる。
(4)フィルタ基材11の両端部11aに端板12を固定する方法は、フィルタ基材11の両端部11aを端板12の組付孔13に嵌合した後、その嵌合部14を熱融着し、フィルタ基材11の端部11aを端板12に固定することにより行われる。このため、フィルタ基材11の端部11aを端板12の組付孔13に嵌合する工程と、嵌合部14を熱融着する工程とにより、部品点数を増やすことなく、フィルタ基材11に端板12を容易かつ迅速に接合することができ、製造コストの低減を図ることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図6及び図7に基づいて説明する。この第2実施形態では、前記第1実施形態と異なる部分について主に記載する。
【0022】
図6及び図7に示すように、フィルタ基材11は、断面菊花状をなし、全体として円筒状に形成されている。このフィルタ基材11は濾材シートを襞状にしてそれを円形に巻いて形成され、そのフィルタ基材11の上下両端部11aに一対の平板環状をなす端板12が気密状に固定して構成されている。両端板12にはフィルタ基材11の端部11aが嵌入される組付孔13が貫通形成されている。また、端板12の中心部には孔12aが形成されている。
【0023】
次に、前記のように構成された第2実施形態のフィルタ基材11の端部11aに端板12を固定する固定方法について作用とともに説明する。
さて、図6に示すように、フィルタ基材11の一方の端部11aを端板12の組付孔13に嵌入する。続いて、フィルタ基材11の両端部11aと両端板12の組付孔13との嵌合部14に対して前記電磁加熱器15の発熱部16を接触させ、その状態で電磁加熱器15の発熱部16を発熱させることにより、嵌合部14を熱融着する。そして、エアはフィルタ10をその外周側から中心側に通過してダスト等が濾過される。濾過後のエアは一方の端板12の孔12aから導出される。
【0024】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(4)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
なお、前記各実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
【0025】
・ 前記フィルタ基材11の端部11aと端板12の組付孔13との嵌合部14における熱融着を省略することもできる。この場合には、フィルタ基材11の端部11aを端板12の組付孔13に嵌め込むだけで、フィルタ基材11に端板12を容易に組付けることができる。
【0026】
・ 前記組付孔13を貫通孔ではなく凹溝で構成し、該凹溝にフィルタ基材11の端部11aを嵌合してその嵌合部14を熱融着するように構成することもできる。
・ 前記組付孔13を、外端側ほど狭くなるようにテーパ状に形成することもできる。或いは、フィルタ基材11の端部11aをくさび状に形成することも可能である。これらの場合には、フィルタ基材11の端部11aを組付孔13に容易に嵌入させることができる。
【0027】
・ 前記フィルタ基材11の端部11aと端板12とを熱融着させる手段として、熱風加熱や輻射加熱、或いはレーザ光加熱等の他の方法を採用することも可能である。
・ 前記フィルタ基材11の端部11aを端板12の組付孔13に嵌入する場合、襞状に形成されたフィルタ基材11に対応する形状を有するガイド部材を用い、そのガイド部材に沿うようにフィルタ基材11を配置してその端部11aを端板12の組付孔13に嵌入するように構成することもできる。この場合、フィルタ基材11に端板12を円滑に組付けることができる。
【符号の説明】
【0028】
10…フィルタ、11…フィルタ基材、11a…端部、12…端板、13…組付孔、14…嵌合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材シートを襞状に折曲げて形成されたフィルタ基材の両端部に端板が固定されているフィルタの固定構造であって、
前記端板にはフィルタ基材の端部が嵌入される組付孔を設け、該組付孔にフィルタ基材の端部を嵌合して固定するように構成したことを特徴とするフィルタの固定構造。
【請求項2】
前記端板の組付孔は貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタの固定構造。
【請求項3】
前記フィルタ基材の端部と端板の組付孔との嵌合部が熱融着されて固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルタの固定構造。
【請求項4】
前記フィルタ基材と端板とは同種の熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項3に記載のフィルタの固定構造。
【請求項5】
請求項1に記載のフィルタの固定構造に基づくフィルタの固定方法であって、
前記フィルタ基材の両端部を端板の組付孔に嵌合して固定することを特徴とするフィルタの固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−239981(P2012−239981A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112510(P2011−112510)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】